JP2017079582A - ステッピングモータ、時計用ムーブメント、時計、ステッピングモータの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
上述のロータ収容孔周りの2か所に幅狭部を形成した一体型のステータの場合、ロータの駆動原理として、まず幅狭部を磁束飽和させてステータを磁気的に分割し2つの磁極片とした後に、ロータへ漏洩磁束が流れロータが回転する。つまり、電流供給時のコイルから発せられる磁束が幅狭部で消費されてしまう(幅狭部の磁束飽和のために電力が消費されてしまう)ため、幅狭部における磁束損失が小さくなかった。
また、ステータの外形形状に歪みが生じると、ステータの平坦度が低下し、磁心とステータとの接触面積の減少や、ロータとステータの相互位置のずれが生じやすくなる。その結果、磁気的な効率が低下する場合や、組立工程にステータが破損する場合があった。
当該知見によって得られた本発明の要旨は以下の通りである。
また、本発明の一形態のステッピングモータによれば、Cr拡散領域の低透磁率化により、ロータ自体から発せられる磁束についても当該Cr拡散領域での消費が抑制され、磁気ポテンシャルの損失を防止することができるため、ロータを磁気的に停止・保持させるための保持力を高めることができ、ロータの回転駆動の安定性を向上させることができる。
また、従来の一体型ステータでは一方の極性でロータを回転させた後に他方の極性でロータを回転させる必要があり、この場合は幅狭部の残留磁束を打消し、かつ幅狭部を磁束飽和させてステータを磁気的に分割し2つの磁極片とさせる必要がある。特に高速運針を行う場合では、短い期間に残留磁束の打消しを含めたロータの回転を終える必要があるが、本発明の一形態のステッピングモータによれば、当該領域の残留磁束が大幅に低減されることで、残留磁束打消しに要していた時間を短縮させることができるため、特に、時計の針をロータの回転力により運針する場合において高速運針を行う場合では、次のパルスを出力するまでに所定の位置にロータが静止している必要があるが、保持力を高めることでロータが静止しやすくなるため、制動に要する時間が短縮可能となり、駆動周波数を上げることができる。
さらに、本発明の一形態のステッピングモータによれば、Cr拡散領域を備えることで磁気的な二体ステータであり、かつステータは構造としては一体として形成されるため、従来の二体型ステータを製造する際に懸念されていた機械的なストレスや溶接・接合過程による歪みや部材の位置ずれの発生を回避することができ、磁気的な効率の低下やステータの破損、製品品質の低下を防止することができる。
また、さらに、本発明の一形態のステッピングモータによれば、ステータは一体として形成されるため、機械的なストレスが集中しやすい溶接部や接合部がなく、強度の劣化を防止できる。
また、従来では、低透磁率の領域を調整する場合、ステータを機械的に分割する加工方法やその条件、さらに、挿入する非磁性体の調整等、製造条件を多く変更・調整しなければならず、結果製造コストの増大を招くおそれがあったが、本発明の一形態のステッピングモータの製造方法によれば、ステータ素材に切断等の加工を施すことなく、Cr材を配置したステータ素材をCr材の溶融温度以下の温度に放置することのみで、Cr拡散領域(低透磁率化領域)を所望のものに調整できる。
尚、以下に示す図面は、本発明の実施形態に係るステッピングモータの構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際のステッピングモータの寸法関係等とは異なる場合がある。
本実施形態におけるステッピングモータ駆動装置は、ステッピングモータ105、制御回路103、駆動パルス選択回路104及び回転検出回路111により構成されている。
一般に、時計の動力源、時間基準などの装置からなる時計の機械体をムーブメントと称する。電子式のものをモジュールと呼ぶことがある。時計としての完成状態では、ムーブメントには文字板、針が取り付けられ、時計ケースの中に収容される。
ここで、発振回路101及び分周回路102は信号発生部を構成し、アナログ表示部106は時刻表示部を構成している。回転検出回路111及び負荷検出回路112は回転検出部を構成している。制御回路103及び駆動パルス選択回路104は制御部を構成している。また、発振回路101、分周回路102、制御回路103、駆動パルス選択回路104、回転検出回路111及び負荷検出回路112はステッピングモータ制御回路を構成している。
図2は、本実施形態に係るステッピングモータ105の正面模式図である。
コイル209が励磁されていない状態では、ロータ202は、図2に示すように前記位置決め部に対応する位置、換言すれば、ロータ202の磁極軸Aが、切り欠き部204、205を結ぶ線分と直交するような位置(角度θ0位置)に安定して停止(静止)している。
まず駆動パルス選択回路104から駆動パルスをコイル209の端子OUT1、OUT2間に供給して(例えば、第1端子OUT1側を正極、第2端子OUT2側を負極)、図2の矢印方向に電流iを流すと、ステータ201には破線矢印方向に磁束が発生する。
尚、ステッピングモータ105を回転駆動することによって通常動作(本発明の各実施の形態はアナログ電子時計であるため運針動作)を行わせるための回転方向(図2では反時計回り方向)を正方向とし、その逆(時計回り方向)を逆方向としている。
その後、前述と同様に、低透磁率領域であるCr拡散領域210、211が形成されていることから、容易に漏洩磁束を確保でき、ステータ201に生じた磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は前記と同一方向(正方向)に180度回転し、磁極軸が角度θ0位置で安定的に停止(静止)する。
また、従来では「幅狭部」とされていた箇所にCr拡散領域210、211を形成して低透磁率化させることにより、ロータ202自体から発せられる磁束についても当該領域での消費が抑制される。その結果、磁気ポテンシャルの損失を防止することができ、ロータ202を磁気的に停止(静止)・保持させるための保持力を高めることができる。
また、従来では「幅狭部」とされていた箇所にOUT1側(負極)の磁束で飽和させて回転させた後、OUT2側(正極)で回転させるにはOUT1側(負極)の際に生じた残留磁束を打ち消す必要があったが、当該領域での残留磁束が大幅に低減されているため、残留磁束打ち消しに要する時間が不要となり回転を収束させるまでの時間が短縮できる。そのため、高速運針を行う際の動作安定性を維持することができ、駆動周波数を上げることができる。なお、ステッピングモータ105を駆動する駆動パルスについては、後述する。
図3(b)に、Cr拡散領域210、211の形成領域近傍の拡大模式図を示す。図4(a)、(b)に、Cr拡散領域210、211の形成領域近傍の拡大模式図を示す。
Cr拡散領域210、211は、図4(a)に示すように、従来「幅狭部」とされた領域、つまり、ロータ収容孔203の端部からステータ201の端部までの領域全体にわたって形成されてもよく、図4(b)に示すように、その領域の一部に形成されていてもよい。
ロータ202を駆動させる漏洩磁束をより効率よく確保する(前述の消費電力をより低減させる)観点からは、図4(a)に示すようにロータ収容孔203の端部からステータ201の端部までの領域全体にわたってCr拡散領域210、211を形成することが望ましいが、Cr拡散領域210、211が小さい場合や、Cr拡散領域210、211の形成領域が従来「幅狭部」とされた領域中の一部だけとされても、前述の効果は享受できる。
Cr拡散領域210、211は、Cr材を配置した前記ステータ素材を、Cr材の溶融温度以下の温度に放置することで形成することができるが、放置する温度と時間によりCrの拡散量は変化し、放置する温度が高く、放置する時間が長いほど、形成されるCr拡散領域210、211は増大する。
図3(a)に、3種類のステータの時間対コイルの電流値の変化の表すグラフを示す。図3(a)において、縦軸はコイル209の電流値(mA)であり、横軸は時間(msec)である。本グラフはロータの磁石から生じる磁束の影響を除きコイルから発生した磁束のみで飽和状態を確認するため、ロータを外すことで得たグラフである。ここで、3種類のステータは、例えばヘリウムの不活性ガス雰囲気下で1200℃、1時間、Cr拡散領域210、211にCrを拡散させた第1のステータ(#1)、ヘリウムの不活性ガス雰囲気下で1200℃、24時間、Cr拡散領域210、211にCrを拡散させた第2のステータ(#2)、母材にCrのめっきを行って1200℃中でCrを拡散させていない比較例のステータ(#3)である。
波形g1は、第1のステータの時間に対する電流の変化を示す。波形g2は、第2のステータの時間に対する電流の変化を示す。波形g3は、比較例のステータの時間に対する電流の変化を示す。
第2傾き期間は、磁束が磁気抵抗の低い箇所に流れるため、第1傾き期間によってコイルから発生した磁束が幅狭部に流れる期間である。所定の電流が流れると、幅狭部の磁束が飽和する。換言すると、第2傾き期間は、幅狭部の磁束を飽和させている期間である。
第3傾き期間は、第2傾き期間によって幅狭部の磁束が飽和した後、ロータ収容孔に磁束が漏洩する状態である。換言すると、第3傾き期間は、ロータが動き始める期間である。
そして一体型ステータを有するステッピングモータでは、第3傾き期間になるとロータに磁束の反発力が働いて、ロータの回転が始まる。
図5において、波形g311と波形g312は、一体型ステータを有するステッピングモータにおいて逆転させる場合の駆動パルス波形である。また、波形g331とg332は、二体型ステータを有するステッピングモータにおいて逆転させる場合の駆動パルス波形である。波形g311、g312、g331及びg332において、横軸は時間、縦軸は信号レベルである。また、out1とout2は、ステッピングモータが有するコイルの両端の端子である。また、Vddは、例えばステッピングモータを駆動する駆動回路の電源電圧であり、Vssは0Vまたは基準電圧である。
二体型ステータには、このような効果がある反面、機械的構造として完全に分離分割されたステータでは、組立時の位置ずれによって静止位置が安定しないという問題があるため、腕時計等に用いられるステッピングモータでは、二体型ステータを用いることが困難であった。また、このような機械的分離構造のステータでは、前述したように、機械加工によりステータを2分割し、その後、溶接にて接合するため、機械的なストレスや溶接過程により歪みや部材の位置ずれが生じやすかった。このため、二体型ステータでは、ロータとステータ間の距離に誤差が生じる問題もあった。
比較例のステータでは、波形g3に示すように、図5の波形g301に示した一般的な一体型ステータと同様に3つの傾き期間を有している。例えば、時刻が0〜約0.05[ms]の期間が、第1傾き期間であり、時刻が約0.05〜0.7[ms]の期間が第2傾き期間であり、時刻が約0.7〜1.7[ms]が第3傾き期間である。
また、Crを1時間拡散させた第1のステータの波形g1は、3つの傾き期間を有している。例えば、時刻が0〜約0.05[ms]の期間が第1傾き期間であり、時刻が約0.05〜0.5[ms]の期間が第2傾き期間であり、時刻が約0.5〜1.2[ms]の期間が第3傾き期間である。
さらに、Crを24時間拡散させた第2のステータの波形g2は、図5の波形g321に示した一般的な二体型ステータと同様に2つの傾き期間を有している。例えば、時刻が0〜約0.05[ms]の期間が第1傾き期間であり、時刻が約0.05〜0.5[ms]の期間が第3傾き期間である。
なお、上述した各傾き領域や、各傾き領域の時刻や幅は、説明のための一例である。
また、破線g11で囲んだ領域の波形g1に示すように、Crを1時間拡散した第1のステータの場合、例えば、第1傾き期間端の約0.05[ms]のとき電流値が約0.002[mA]であり、約0.5[ms]のとき電流値が約0.08[mA]である。
また、破線g11で囲んだ領域の波形g1に示すように、Crを24時間拡散した第2のステータの場合、例えば、第1傾き期間端の約0.05[ms]のとき電流値が約0.0035[mA]であり、約0.5[ms]のとき電流値が約0.28[mA]である。
これにより、ステッピングモータ105を逆回転させるとき、前述したように「幅狭部」を磁気飽和させることなく、図5の波形g311とg332と同様に、二体型ステータと同様に幅Peの駆動パルスと待機期間の期間Psなしで、幅P1の駆動パルスから駆動できることを意味している。この結果、第2のステータは、逆回転時、比較例のステータより駆動パルスを短くできるので、比較例のステータより高速(高い周波数)、例えば50[Hz]で駆動することができる。また、第2のステータは、磁気飽和させるための駆動パルスが不要なので、比較例のステータより、逆回転時の消費電力を低減することができる。
Cr拡散領域210、211は、図4(a)に示すように、従来「幅狭部」とされた領域、つまり、ロータ収容孔203の端部からステータ201の端部までの領域全体にわたって形成されてもよく、図4(b)に示すように、その領域の一部に形成されていてもよい。
ロータ202を駆動させる漏洩磁束をより効率よく確保する(前述の消費電力をより低減させる)観点からは、図4(a)に示すようにロータ収容孔203の端部からステータ201の端部までの領域全体にわたってCr拡散領域210、211を形成することが望ましいが、図3(a)のグラフで示したとおり、Cr拡散領域210、211が小さい場合や、Cr拡散領域210、211の形成領域が従来「幅狭部」とされた領域中の一部だけとされても、前述の効果は享受できる。
本実施形態のステッピングモータ105は静止位置が45°になるように切り欠き部204、205を備えているため、45°が最も磁気ポテンシャルが低い。これに対して135°が最も磁気ポテンシャルが高く、ロータ202はこの角度を越えられなければ静止位置である45°に逆転してしまい、時計の運針に必要な回転力を得られないことになる。
なお、「♯1(1200℃、1時間)」および「♯2(1200℃、24時間)」の例の場合、幅狭部が非磁性領域となることで、「♯3(比較例)」とは磁束の挙動が変化する。つまり、Cr拡散領域の位置や形状等により、波形g1〜波形g3それぞれは、図6で示すグラフにおいてはそれぞれ僅かに異なる挙動(磁気ポテンシャルがピークを示す角度がずれる)を示すが、図6においては、波形g1〜波形g3それぞれの間において、前述の「ピーク差」すなわちムーブメントの保持トルクの変化を観察しやすいように、両者の各ピークが生じる角度を合致させるよう表記している。
Cr拡散領域210、211の低透磁率化の観点から、Cr拡散領域210、211において、Cr含有率が14質量%以上であり、14質量%以上かつ40質量%以下であることが好ましい。なお、40質量%以下である理由は、例えば38パーマロイにおいて、Crを母材に染み込ませる際の限界点および飽和点が40質量%程度であるためである。なお、38パーマロイとは、例えば鉄成分が52.5%〜54.5%、ニッケル成分が37.5〜38.5%、クロム成分が7.5〜8.5%程度のパーマロイ材である(例えば、特開平10−239459号公報参照)。
ここで、2極ステータ方式にて逆転駆動を実現させる場合、逆方向にロータを回転させるために、逆転パルス出力前にロータを所定の位置まで誘導するパルスが必要となり、励磁区間が正方向の場合より2〜3倍以上となる。そのため、正方向の回転と逆方向の回転とで設定できる周波数に差があるため、逆方向の回転が遅いという課題があった。しかし、3極ステータとすることで、回転方向を決定するパルス供給後、回転を行うため、正方向の回転と逆方向の回転とで同じパルス形態及び周波数で運針できるというメリットがある。
また、1回転の中で複数回パルスの極性の切り替えが生じるため、従来「幅狭部」とされている領域に生じた残留磁束を打ち消しながら回転させる必要があるという安定動作上の課題もある。
そこで、上述してきた2極ステータの場合と同様に、ロータ収容孔の周囲の磁路の少なくとも一部、このもしくは従来「幅狭部」とされている領域の少なくとも一部に、Cr拡散領域を形成して、低透磁率化を図ることで、高速運針時の安定性向上し、更なる高速運針が実現できる。
また、当該時計用ムーブメントを備えた時計についても磁気特性の向上を図ることが可能であり、例えば、カレンダ機能付きアナログ電子腕時計、クロノグラフ時計をはじめ、各種のアナログ電子時計に適用可能である。
本実施形態に係るステッピングモータ105の製造方法は、Fe−Ni合金板300に対して機械加工を行って、ロータ収容孔203とロータ収容孔203の周囲に配置された磁路Rとを有するステータ素材201aを形成する工程と、ステータ素材201aの少なくとも一部に拡散用のCr材を配置する工程と、Cr材を配置したステータ素材201aを、Cr材の溶融温度以下の温度に放置して磁路Rの内部にCr材を拡散させてCr拡散領域210、211を形成する工程と、を備える。
以下、本実施形態に係る製造方法における各条件について説明する。
また、切り欠き部(外ノッチ)206、207を形成して幅狭部213、214を設ける場合(図7参照)は、この工程で併せて形成するとよい。
図8(b)に示すように、打ち抜き加工等の機械加工を施したFe−Ni合金板300の表面300aに、磁路Rの少なくとも一部のみが露出するようにマスク冶具401、402を配置して、ステータ素材201aの表面にクロムめっき層を形成する。続いて、水素雰囲気下、または、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、Cr材の溶融温度以下の温度(例えば900℃〜1200℃)に放置して磁路Rの内部にCr材を拡散させてCr拡散領域210、211を形成する。なお、クロムめっきは、ステータ母材を覆う状態の実現性等を考慮して、Crの質量比率として80質量%を超えることはない。
なお、幅狭部213、214を設ける場合(図7参照)は、切り欠き部(外ノッチ)206、207に前述のクロムめっき層を形成してよい。
また、Cr拡散領域210、211を形成すると同時に、ニッケルめっき層421を形成した部分では、Fe−Ni合金板300の内部にNiが拡散するため、磁性が維持される。
なお、ステッピングモータ105をアナログ電子時計に用いる場合には、ステータ201及び磁心208はネジ(図示せず)によって地板(図示せず)に固定する。
図12(a)、(b)は空孔拡散を示す模式図である。図13(a)、(b)は格子間機構示す模式図である。
空孔拡散について説明する。図12(a)に示すように、金属や合金の結晶中には、原子が存在しない格子点があり、これを空孔501と言う。図12(a)、(b)に示すように、空孔501と隣接する原子502が空孔501に移動(位置を交換)することにより、原子502が拡散する。温度が高い程、結晶中に含まれる空孔501の量(濃度)が多くなり、原子502が拡散し易くなる。
次に、ステータの成分分析を行った結果の一例を説明する。なお、分析したステータは、以下の3種類であり、それぞれ約30[μm]の厚みを有する。
(#1)Crをめっきした後、ヘリウムの不活性ガス雰囲気下、1200℃に1時間放置してCrを拡散させたステータ
(#2)Crをめっきした後、ヘリウムの不活性ガス雰囲気下、1200℃に24時間放置してCrを拡散させたステータ
(#3)Crをめっきした後、Crを拡散させていないステータ
なお、ステータの材料は、38パーマロイであるため、Crを拡散していない状態でも母材には、8質量%程度のCr成分が含まれている。
Cr拡散領域210、211における、観察部分に、日本電子社製のIB−09020CP(商品名)を用いて、クロスセクションポリッシャ(CP)加工を行った。加速電圧を7kVとした。
走査型電子顕微鏡としては、電界放出型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)(商品名:JSM−7800F、日本電子社製)を用いた。
測定時のサンプルの状態は、イオンミリングによる加工断面{Ar(アルゴン)イオン、加速7kV}である。
測定環境は、真空度が10−4〜10−5Paの真空中で行った。
EDSライン分析は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製のNORAN SYSTEM7(商品名)のVer3を用いて、加圧電圧15kVの条件で行った。
図14(a)は、ヘリウムの雰囲気中で1200℃、1時間放置してCrを拡散させた(#1)ステータにおけるCr拡散領域210、211の表面210a、211aから厚み方向と垂直な断面(図4(a)、(b)において、紙面の平行方向)に沿う走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)像である。
また、Fe−Ni−Cr合金において、Crが14質量%以上になると、常温で常磁性であり、図2の点b1または図7の点b2がこの領域である。なお、常磁性とは、外部磁場が無いときには磁化を持たず、磁場を印加するとその方向に磁化する磁性である。常温で常磁性の状態とは、非磁性の状態である。このため、Crを1時間拡散した(#1)ステータでは、外端側から約5.4[μm](距離が約21[μm])までが常磁性の領域であり、図2の点a1、または図7の点a2がこの領域である。なお、Cr拡散領域に近接する領域である点cのCrの質量は8質量%程度である。
図15(a)は、ヘリウムの雰囲気中で1200℃、24時間放置Crを拡散させた(#2)ステータのCr拡散領域210、211の表面210a、211aから厚み方向と垂直な断面(図4(a)、(b)において、紙面の平行方向)に沿う走査型電子顕微鏡像である。
図15(a)において、画像g201は、(#2)ステータのCr拡散領域210、211の表面210a、211aから厚み方向と垂直な断面(図4(a)、(b)において、紙面の平行方向)に沿う走査型電子顕微鏡像である。また、画像g202は、当該走査型電子顕微鏡像のうちCr成分の像である。画像g203は、当該走査型電子顕微鏡像のうちFe成分の像である。画像g204は、当該走査型電子顕微鏡像のうちNi成分の像である。
また、破線g221で囲んだ領域は、クロムめっき層と母体との境目付近のCrの質量の変化を説明する領域である。表2に破線221で囲んだ領域において、C、O、Cr、Fe、Niそれぞれの質量の値の一部を示す。
また、図14と図15に示したように、Crを24時間拡散させた(#2)ステータの方が、Crを1時間拡散させた(#1)ステータより、Crが14質量%以上となる範囲が大きい。これは、拡散を行う時間に応じて、より離れた距離までCrが染みこんでいくためである。なお、前述したように、38パーマロイにおいて、Crを染みこませることができる質量の限界は、約40質量%である。
図16(a)は、(#3)比較例のステータのCr拡散領域210、211の表面210a、211aから厚み方向と垂直な断面(図4(a)、(b)において、紙面の平行方向)に沿う走査型電子顕微鏡像である。
図16(a)において、画像g301は、(#3)ステータのCr拡散領域210、211の表面210a、211aから厚み方向と垂直な断面(図4(a)、(b)において、紙面の平行方向)に沿う走査型電子顕微鏡像である。また、画像g302は、当該走査型電子顕微鏡像のうちCr成分の像である。画像g303は、当該走査型電子顕微鏡像のうちFe成分の像である。画像g304は、当該走査型電子顕微鏡像のうちNi成分の像である。なお、画像g301の尺度は、画像g302〜g304の約5倍である。
また、破線g321で囲んだ領域は、クロムめっき層と母体との境目付近のCrの質量の変化を説明する領域である。表3に、破線321で囲んだ領域において、C、O、Cr、Fe、Niそれぞれの質量の値の一部を示す。
102・・・分周回路
103・・・制御回路
104・・・駆動パルス選択回路(駆動手段)
105・・・ステッピングモータ
106・・・アナログ表示部
107・・・時針
108・・・分針
109・・・秒針
110・・・カレンダ表示部
111・・・回転検出回路
112・・・負荷検出回路
113・・・時計ケース
114・・・ムーブメント
201・・・ステータ
201a・・・ステータ素材
202・・・ロータ
203・・・ロータ収容孔
204、205・・・切り欠き部(内ノッチ)
206、207・・・切り欠き部(外ノッチ)
208・・・磁心
209・・・コイル
210、211・・・Cr拡散領域
213、214・・・幅狭部
OUT1・・・第1端子
OUT2・・・第2端子
R・・・磁路
Claims (15)
- 指針の回転に用いられるロータと、
磁路を構成しFeとNiとCrを含む合金製のステータであって、前記磁路における断面積が他の部分より小さい部分にCr含有率が14質量%以上のCr拡散領域が設けられるステータと、
を備えるステッピングモータ。 - 前記Cr拡散領域は、前記ロータの静止安定位置確保のためロータ収容孔に設けられる位置決め部に干渉しない部分に設けられる、請求項1に記載のステッピングモータ。
- 前記Cr拡散領域の表面は、前記他の部位における表面と連続する平面により形成される、請求項1または請求項2に記載のステッピングモータ。
- 前記Cr拡散領域のCr含有量は、40質量%以下である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のステッピングモータ。
- 前記Cr拡散領域のCr含有量は、16%以下である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のステッピングモータ。
- 前記Cr拡散領域は、Cr含有量が40質量%から14質量%に変化する分布を有する領域を備える、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のステッピングモータ。
- 前記ステータは、ニッケル成分が37.5%〜38.5%、クロム成分が7.5〜8.5%、鉄成分が52.5%〜54.5%含まれているFeとNiとCrを含む合金製である、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のステッピングモータ。
- 指針の回転に用いられるロータと、
磁路を構成しFeとNiとCrを含む合金製のステータであって、前記磁路における断面積が他の部位より小さい部分にCr拡散領域が設けられ、前記Cr拡散領域のCr含有量をX%、前記他の部位のCr含有量をY%としたとき、XとYとの差が6%以上であるステータと、
を備えるステッピングモータ。 - 請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のステッピングモータを備える時計用ムーブメント。
- 請求項9に記載の時計用ムーブメントを備える時計。
- Fe−Ni合金板に対して機械加工を行って、ロータ用貫通収容孔とロータ収容孔の周囲に配置された磁路とを有するステータ素材を形成する工程と、
前記ステータ素材の少なくとも一部に拡散用のCr材を配置する工程と、
前記Cr材を配置した前記ステータ素材を、前記Cr材の溶融温度以下の温度に放置して前記磁路の内部に前記Cr材を拡散させてCr拡散領域を形成する工程と、
を含むステッピングモータの製造方法。 - 前記Cr材を配置した前記ステータ素材を放置する温度を900℃〜1200℃、放置する時間を1時間〜24時間とする、請求項11に記載のステッピングモータの製造方法。
- 前記Cr材を配置する工程が、前記ステータ素材の表面に磁路の少なくとも一部を被覆したNiメッキを施して、被覆部を除去した後、Cr粉及びその他の調合材粉と共に不活性ガス雰囲気中に配置する、請求項11または請求項12に記載のステッピングモータの製造方法。
- 前記Cr材を配置する工程が、前記ステータ素材の磁路の一部の表面にクロムめっき層を形成して不活性ガス雰囲気中に配置する工程である、請求項11または請求項12に記載のステッピングモータの製造方法。
- 前記ステータ素材を形成する工程において、前記ステータ素材に、前記磁路の断面積が他の部位よりも狭くなる幅狭部が設けられ、
前記Cr材を配置する工程において、少なくとも前記幅狭部を含む領域に前記Cr材を配置する、請求項11から請求項14のいずれか一項に記載のステッピングモータの製造方法。
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