JP7353224B2 - ステータ、ステッピングモータ、及び時計 - Google Patents
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Description
このような二体型ステータを用いたステッピングモータでは、過飽和部を磁束飽和させることなく、ロータを駆動させる漏洩磁束を得ることができる。
一方、従来の二体型ステータでは、一体型ステータと比較して磁気的な効率を改善できるが、スリット部を形成する際に生じる機械的なストレスによりステータに変形が生じる場合がある。従来の二体型ステータでは、ステータに変形が生じた場合、ロータとステータ間の距離に誤差が生じるため、静止位置ずれなどの不具合が生じる場合がある。
また、アナログ時計部8は、輪列11、時針12、分針13、秒針14、カレンダ表示部15、時計ケース81、及び時計1用のムーブメント82を備える。なお、本実施形態では、時針12、分針13、秒針14、カレンダ表示部15のうち1つを特定しない場合、指針16という。
一般に、時計1の時間基準などの装置からなる時計の機械体をムーブメントと称する。電子式のムーブメントをモジュールと呼ぶことがある。時計としての完成状態では、例えば、文字板、指針等が取り付けられたムーブメントが、時計ケースの中に収容される。
分周回路4は、発振回路3が出力した所定の周波数の信号を所望の周波数に分周し、分周した信号を制御回路5に出力する。
時針12は、パルス駆動回路6がステッピングモータ7を駆動することによって12時間で1回転する。分針13は、パルス駆動回路6がステッピングモータ7を駆動することによって60分間で1回転する。秒針14は、パルス駆動回路6がステッピングモータ7を駆動することによって60秒間で1回転する。カレンダ表示部15は、例えば日付を表示する指針であり、パルス駆動回路6がステッピングモータ7を駆動することによって24時間で1回転する。
図2は、本実施形態に係るステッピングモータ7の概略構成例を示す斜視図である。図2に示すように、ステッピングモータ7は、ステータ201、ロータ202、磁心208、コイル209、及びネジ220を備える。
ロータ202は、ロータ収容孔203に回転可能に配置されている。
コイル209は、磁心208に巻回されている。
また、ステッピングモータ7をアナログ電子時計に用いる場合、ステータ201と磁心208とは、ネジ220によってムーブメント82の地板51に固着され、互いに接合される。
磁路Rは、コイル209を励磁した場合にロータ収容孔203(貫通孔)の周囲のステータ201の母材240に磁極を発生させる磁路である。
ステータ201を構成する母材240は、例えばFe-Ni(鉄-ニッケル)合金の磁性板材で形成されている。また、母材240は、板状である。
ステータ201は、母材240に、ロータ収容孔203、幅狭部210、幅狭部211、ネジ孔218a、およびネジ孔218bが形成されることによって構成される。
ロータ収容孔203には、切り欠き部(内ノッチ)204、205が形成されている。
幅狭部210、211は、ロータ収容孔203の周囲に形成されている。幅狭部210、211は、磁路Rの断面積が他の部位よりも狭くなるように形成されている。
断面A-A’の断面の写真例(符号g1)において、第1面f1は、非磁性領域の形成の際にレーザーが照射される面であり、第2面f2は、第1面f1に対向する面である。符号g1のように、ステータ201は、平均結晶粒径が母材240より小さい微細結晶領域251を備える。また、微細結晶領域251は、ロータ収容孔203(貫通孔)の周囲のステータ201の母材240の所定箇所に設けられている。所定箇所は、例えば幅狭部である。なお、微細結晶領域251については後述する。
ロータ収容孔203の穴径は、例えば約1.5~2mmである。幅狭部210、211の一番細い箇所の幅は、例えば約0.1mm~0.2mmである。ステータ201の厚みは、例えば約0.3~0.5mmである。長手方向の長さは、例えば約10mmである。
次に、Fe-Ni合金の片面に配置されたクロムに対してレーザー照射を行い、レーザーで溶融拡散して、クロムを15重量%以上にした後の図3の断面A-A’の組織像を図4~図6に示す。
図4において、上下方向(z軸方向)は、ステータ201の母材240の板厚方向である。レーザーは、クロムが配置されている面である第1面f1側から照射される。なお、母材240の平均結晶粒径はdである。
まずはじめに、対象の材料を研磨および琢磨した上で、表面を軽くエッチングし、エッチングした表面を顕微鏡などを用いて観察し、スケールとともに像を取得する。次に、取得した像に長さLの線を引き、線上にある結晶粒の個数Nを数える。ただし、線の両端の結晶は1/2に数える。実施形態では、この長さLを結晶粒の個数Nと倍率kで除算した値を平均結晶粒径(d=L/kN)とした。
図6は、図4の微細結晶領域251の組織像を拡大した図である。実測の結果、微細結晶領域251の平均結晶粒径は約9μmであった。また、図6のように、微細結晶領域251において、例えば、母材240の組織と微細結晶領域251との境界付近領域2511の平均結晶粒径は、内部領域2512の平均結晶粒径より小さかった。また、境界付近領域2511の平均結晶粒径は、平均結晶粒径d1より小さかった。
なお、図4~図6に示した例では、微細結晶領域251の平均結晶粒径は、母材240の平均結晶粒径の約1/4.7である。
次に、ステータの残留磁束密度について説明する。
図7は、従来構造のステータのB-H曲線と本実施形態の構造を有するステータのB-H曲線を示す図である。図7において、横軸は磁界[A/m]であり、縦軸は磁束密度[T(テスラ)]である。
従来の微細結晶領域を有していないステータのB-H曲線g110において、残留磁束密度は、点g111と点g112の大きさである。
本実施形態の微細結晶領域251を有しているステータ201のB-H曲線g120において、残留磁束密度は、点g121と点g122の大きさである。このように、本実施形態のステータ201は、従来構造のステータと比較して残留磁束密度が低下している。
また、本実施形態のステータ201のB-H曲線g120の面積は、従来のステータのB-H曲線g110の面積より小さい。従って本実施形態のステータ201は、従来のステータよりヒステリシス損が少ない。
これにより、本実施形態によれば、従来のステータと比較して、非磁性化率を向上させることができる。この結果、本実施形態によれば、後述するように、本実施形態のステータ201を有するステッピングモータ7の消費電力を低減することができる。これにより、本実施形態によれば、消費電力を低減することができるので、ステッピングモータ7の品質を向上させることができる。
次に、微細結晶領域251の深さと非磁性化率の関係について説明する。
図8は、母材240の板厚に対する微細結晶領域251の深さと非磁性化率の関係を示す図である。図8において、横軸は板厚に対する微細結晶領域251の到達深さの割合(%)であり、縦軸は非磁性化率(%)である。なお、板厚に対する微細結晶領域251の到達深さの割合とは、母材240の板厚h1に対する微細結晶領域の深さh2の割合である(図4参照)。また、非磁性化率とは、非磁性体のB-H曲線の面積に対する、磁性体のB-H曲線の面積とステータのB-H曲線の面積との差、の割合(%)である。
なお、結晶の微細化が不十分である場合には、微細結晶領域251の到達深さと非磁性化率の相関が図8の比例関係から外れ、微細結晶領域251の到達深さに対して非磁性化率は低い値を示す。
図9は、ステッピングモータ7の最小駆動電力と、ステータ201の非磁性化率の関係を示す図である。図9において、横軸は非磁性化率(%)であり、縦軸は最小駆動電力の低減率(%)である。なお、図9は、非磁性化率が0%の場合を低減率0%として表している。三角印はコギングトルクAの場合の第1のサンプルによるステッピングモータ7を示し、丸印はコギングトルクBの場合の第2のサンプルによるステッピングモータ7を示す。
図9より、非磁性化率は80%以上で非磁性化率100%とほぼ同等の性能を得られることがわかる。また、非磁性化率50%以上80%未満では、非磁性化率100%の半分程度の性能を得られることがわかる。
図10より、平均結晶粒径d1が26μmの場合の非磁性化率は約15%程度であり除算値が約1.6であり、図9のようにステッピングモータ7の最小駆動電力の低減には不十分である。
平均結晶粒径d1が18μmの場合の非磁性化率は約33%程度であり除算値が約2.3であり、図9のようにステッピングモータ7の最小駆動電力の低減に寄与する。
平均結晶粒径d1が9μm以下の場合の非磁性化率は約90%程度であり除算値が約4.7であり、図9のようにステッピングモータ7の最小駆動電力の低減率を平均結晶粒径d1が18μmより向上できる。
このように、除算値が大きい方が、非磁性化率が向上し、ステッピングモータ7の最小駆動電力の低減の効果が高くなる。
次に、ステータ201の製造方法の一例を、図13を用いて説明する。図13は、本実施形態に係るステータ201の製造方法の一例を示す工程手順例を示す図である。
Fe-Ni合金の所望の位置にクロムを配置する(S101)。クロムは粉末状やメッキ、ペースト、あるいは薄膜などにして配置する。
続けて、クロムが配置された領域にレーザーを照射する(S102)。これにより、配置したクロムが母材(Fe-Ni合金)に溶け込み、クロム重量比が15%以上となる領域が形成される。
次に、クロム重量比が例えば15%以上となった箇所がステータ201の幅狭部210、211となるように、Fe-Ni合金に対して外形加工を行う(S103)。外形加工の方法としては、プレス加工が好ましい。ただし、これに限らず、外形加工の方法としては、ワイヤー放電加工やレーザー加工などの方法を用いてもよい。
これにより、幅狭部と、それ以外の箇所とで、クロム重量比が異なるステータ201の外形が完成する。
次に、ステータ201に対して高温アニール(焼鈍)処理を行う(磁性焼鈍)(S104)。これにより、外形加工の工程などで生じる残留応力の除去・緩和などを行う。
なお、図13を用いて説明した製造方法は一例であり、これに限らない。
図14は、本実施形態に係るステッピングモータ7の正面模式図である。
図14に示すステッピングモータ7は、ロータ収容孔203、ステータ201、ロータ202、磁心208、コイル209、及び幅狭部210、211を備えている。
コイル209が励磁されていない状態では、ロータ202は、図14に示すように前記位置決め部に対応する位置、換言すれば、ロータ202の磁極軸Aが、切り欠き部204、205を結ぶ線分と直交するような位置(角度θ0位置)に安定して停止(静止)している。
以下の説明では、ステータ201において、幅狭部211の外周を点a1、幅狭部211内を点b1、幅狭部211の近傍且つ磁路Rの外周と内周との間を点cと定義する。
まずパルス駆動回路6から駆動パルス信号をコイル209の端子OUT1、OUT2間に供給して(例えば、第1端子OUT1側を正極、第2端子OUT2側を負極)、図14の矢印方向に電流iを流すと、ステータ201には破線矢印方向に磁束が発生する。
なお、本実施形態では、ステッピングモータ7を回転駆動することによって通常動作(本発明の各実施の形態はアナログ電子時計であるため運針動作)を行わせるための回転方向(図14では反時計回り方向)を正方向とし、その逆(時計回り方向)を逆方向としている。
その後、前述と同様に、非磁性領域である幅狭部210、211が形成されていることから、容易に漏洩磁束を確保でき、ステータ201に生じた磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は前記と同一方向(正方向)に180度回転し、磁極軸が角度θ0位置で安定的に停止(静止)する。
また、従来では「過飽和部」とされていた箇所に非磁性領域である幅狭部210、211を形成して低透磁率化させることにより、ロータ202自体から発せられる磁束についても当該領域での消費が抑制される。その結果、ステッピングモータ7によれば、磁気ポテンシャルの損失を防止することができ、ロータ202を磁気的に停止(静止)・保持させるための保持力を高めることができる。
これにたいして本実施形態では、ステータ201をステッピングモータ7に適用させることで、非磁性化されている微細結晶領域を磁束飽和させる必要が無いため、幅狭部を磁束飽和させるために要していた電力が不要となる。この結果、本実施形態によれば、磁束飽和のための電力が不要であるため、消費電力を低減することができる。これにより、本実施形態によれば、ステータ201をステッピングモータ7に適用することで、ステッピングモータ7の品質を向上させることができる。さらに、本実施形態によれば、ステッピングモータ7を時計1に適用することで、上述したように従来より高速運針を行うことができるので、時計1の品質を向上させることができる。
Claims (8)
- 平均結晶粒径がdである一体の磁性体によって構成され、ロータを内部に配置可能な貫通孔を有するステータの母材と、
前記貫通孔の周囲の前記ステータの母材の所定箇所に設けられ、平均結晶粒径がd1である微細結晶領域と、
を備え、
前記平均結晶粒径d1は(3/7)d未満である、
ステータ。 - 前記母材の板厚をh1としたとき、
前記母材の板厚方向に沿った前記微細結晶領域の深さh2は、少なくとも(3/4)h1である、
請求項1に記載のステータ。 - 前記母材は、第1面および、前記第1面に対向する第2面、を有し、
前記微細結晶領域は、前記母材の板厚方向に沿って前記第1面側から前記第2面側へ向かうにつれて、前記板厚方向に対して垂直方向における断面積が小さくなるように形成されている、
請求項1または請求項2に記載のステータ。 - 前記平均結晶粒径d1は(1/4)d未満であり、
前記微細結晶領域に、材料組成のクロム重量比が15%以上となっている箇所が存在している、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のステータ。 - 前記ステータは、接合箇所のない一体構造である、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のステータ。 - コイルを励磁した場合に前記貫通孔の周囲の前記ステータの母材に磁極を発生させる磁路をさらに備え、
前記所定箇所は、前記磁路の断面積が他の部位よりも狭くなるように形成された幅狭部である、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のステータ。 - 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のステータ、
を備えるステッピングモータ。 - 請求項7に記載のステッピングモータを備える時計。
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