JP2017076560A - 絶縁電線およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物で形成されながらも、耐摩耗性、導体との密着性および耐加工性に優れる絶縁層を備える絶縁電線、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】導体と、導体の外周に配置された絶縁層と、を備え、絶縁層は、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物からなり、ポリフェニレンサルファイド樹脂の結晶化度が85%以上であって、引張弾性率が2.5GPa以下となるように構成される、絶縁電線が提供される。
【選択図】図1
【解決手段】導体と、導体の外周に配置された絶縁層と、を備え、絶縁層は、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物からなり、ポリフェニレンサルファイド樹脂の結晶化度が85%以上であって、引張弾性率が2.5GPa以下となるように構成される、絶縁電線が提供される。
【選択図】図1
Description
本発明は、絶縁電線およびその製造方法に関する。
例えば、自動車には、駆動モータとして産業用モータなどの回転電機が用いられる。回転電機には、絶縁電線を巻回して形成されるコイルが組み込まれている。絶縁電線は、例えば、溶融させた熱可塑性樹脂を導体の外周上に押し出して絶縁層を形成することにより作製される。
近年、回転電機においては、小型化や軽量化だけでなく、高出力化のために駆動電圧の高圧化や動力性能向上のためにインバータ駆動化が急速に進展している。その結果、回転電機のコイルを構成する絶縁電線では、部分放電が発生し、絶縁破壊が生じる危険性が高まっている。
そこで、絶縁層の形成材料として、ポリフェニレンサルファイド樹脂(以下、PPS樹脂ともいう)が検討されている。PPS樹脂は結晶性ポリマであり、電気絶縁性に優れるだけでなく、結晶化させることにより耐薬品性や耐熱性、耐摩耗性などの諸特性を向上させることができる。
一般に、絶縁層をPPS樹脂で構成する場合、PPS樹脂の結晶化度が高くなるほど、絶縁層の伸び特性や曲げ特性が低くなり、絶縁電線を伸長して屈曲させにくくなるので、コイルに変形加工しにくくなる。そのため、PPS樹脂を用いてコイルを作製する場合、まず、PPS樹脂の結晶化度が低い状態で絶縁電線を作製する。続いて、絶縁電線をコイルに変形加工する。その後、コイルをPPS樹脂の結晶化温度以上に加熱し、PPS樹脂の結晶化度を高めることにより、耐薬品性や耐熱性、耐摩耗性などの諸特性を向上させている(例えば、特許文献1を参照)。この方法によれば、絶縁層の結晶化度が低い状態で絶縁電線を変形加工できるので、コイルへの変形加工の際に絶縁層に加わる加工ストレスを緩和することができる。
しかしながら、特許文献1のような、絶縁層の結晶化度が低い絶縁電線では、回転電機への組み立てのときに、例えばコアスロットに絶縁電線を挿入するときやコイルエンドを成形するときに、絶縁層が押し付けや擦れなどによって摩耗するおそれがある。絶縁層が摩耗すると、絶縁層の厚さが減少し、絶縁不良しやすくなってしまう。
絶縁層の摩耗を緩和するために絶縁層を結晶化度が高い状態とすることも考えられるが、上述したように、絶縁層の伸び性などが低くなり、絶縁電線をコイルに変形加工しにくくなる。また、結晶化度の高い絶縁層は、過酷な加工ストレスにより導体から剥離することがあり、導体との密着性が低い。さらに、コイルへの変形加工により割れてしまうことがあり、耐加工性が低い。
このように、PPS樹脂からなる絶縁層において、耐摩耗性とともに、導体との密着性や耐加工性を高く維持することは困難となっている。
そこで、本発明は、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物で形成されながらも、耐摩耗性、導体との密着性および耐加工性に優れる絶縁層を備える絶縁電線、およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、
導体と、
前記導体の外周に配置された絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物からなり、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂の結晶化度が85%以上であって、引張弾性率が2.5GPa以下となるように構成される、絶縁電線が提供される。
導体と、
前記導体の外周に配置された絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物からなり、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂の結晶化度が85%以上であって、引張弾性率が2.5GPa以下となるように構成される、絶縁電線が提供される。
本発明の他の態様によれば、
溶融する、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物を、導体の外周に押し出して被覆させる被覆工程と、
溶融する前記樹脂組成物を冷却硬化させて絶縁層を形成する形成工程と、を有し、
前記形成工程では、前記樹脂組成物を、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂の冷結晶化温度以上融点未満の温度で熱処理して再結晶させることにより、前記絶縁層を、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂の結晶化度が85%以上であって、引張弾性率が2.5GPa以下となるように構成する、絶縁電線の製造方法が提供される。
溶融する、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物を、導体の外周に押し出して被覆させる被覆工程と、
溶融する前記樹脂組成物を冷却硬化させて絶縁層を形成する形成工程と、を有し、
前記形成工程では、前記樹脂組成物を、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂の冷結晶化温度以上融点未満の温度で熱処理して再結晶させることにより、前記絶縁層を、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂の結晶化度が85%以上であって、引張弾性率が2.5GPa以下となるように構成する、絶縁電線の製造方法が提供される。
本発明によれば、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物で形成されており、耐摩耗性とともに導体との密着性および耐加工性に優れる絶縁層を備える絶縁電線が得られる。
本発明者らは、上記課題について検討したところ、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)を含む絶縁層においては、PPS樹脂の結晶化度が高くなるほど耐摩耗性が高くなり、所望の高い耐摩耗性を得る観点からはPPS樹脂の結晶化度が85%以上であればよいことがわかった。一方、結晶化度が高くなると、絶縁層の引張弾性率が高くなり、その伸び性や曲げ特性が低くなるため、導体との密着性や耐加工性が損なわれることがわかった。具体的には、引張弾性率が2.5GPaを超えると、諸特性が損なわれてしまう。このことから、PPS樹脂を含む絶縁層において、耐摩耗性、密着性および耐加工性を高い水準でバランスよく得るには、PPS樹脂の結晶化度を85%以上とするとともに、絶縁層の引張弾性率を2.5GPa以下となるように構成するとよいことが見出された。
本発明者らが絶縁層の引張弾性率に着目した理由は以下のとおりである。
絶縁電線は、伸長させたり屈曲させたりすることによってコイルに変形加工される。このとき絶縁層は導体とともに伸長することになるが、絶縁層は、密着する導体との界面に作用するせん断力によって伸長させられる。そのため、絶縁層の密着性や耐加工性を向上させるには、導体と絶縁層との間の接着性(せん断接着強さ)を大きくするだけでは不十分であり、絶縁層を導体の伸長に追従できるようにする必要がある。この点、引張弾性率を上記範囲とすることにより、コイルの変形加工にともなう上記課題を解決できることがわかった。
絶縁電線は、伸長させたり屈曲させたりすることによってコイルに変形加工される。このとき絶縁層は導体とともに伸長することになるが、絶縁層は、密着する導体との界面に作用するせん断力によって伸長させられる。そのため、絶縁層の密着性や耐加工性を向上させるには、導体と絶縁層との間の接着性(せん断接着強さ)を大きくするだけでは不十分であり、絶縁層を導体の伸長に追従できるようにする必要がある。この点、引張弾性率を上記範囲とすることにより、コイルの変形加工にともなう上記課題を解決できることがわかった。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、以下のとおりである。
なお、本明細書において結晶化度は以下のように定義される。結晶化度とは、コイルに変形加工する前の絶縁電線における結晶化度を示し、示差走査熱量測定による冷結晶化熱(発熱エンタルピー)をHc[J/g]、融解熱(吸熱エンタルピー)をHm[J/g]としたとき、結晶化度αは下記式(1)で示される。
結晶化度α=(1−Hc/Hm)×100・・・(1)
なお、冷結晶加熱は、樹脂組成物を室温(40℃)から昇温させながら示差走査熱量測定により測定した冷結晶化時の結晶加熱である。
結晶化度α=(1−Hc/Hm)×100・・・(1)
なお、冷結晶加熱は、樹脂組成物を室温(40℃)から昇温させながら示差走査熱量測定により測定した冷結晶化時の結晶加熱である。
<絶縁電線の構成>
以下に、本発明の一実施形態にかかる絶縁電線について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる絶縁電線の断面概略図である。
以下に、本発明の一実施形態にかかる絶縁電線について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる絶縁電線の断面概略図である。
図1に示すように、本実施形態にかかる絶縁電線1は導体11と絶縁層12とを備えて構成されている。
導体11としては、導電性の高い金属からなる金属線、例えば、低酸素銅や無酸素銅からなる銅線、アルミニウム線などを用いることができる。図1では、導体11が略矩形断面を有する平角線の場合を示すが、導体11としては平角線に限定されず、例えば円形断面を有する丸線を用いることもできる。また、導体11としては、複数の丸線を撚り合わせて形成された撚り線を用いることもできる。なお、導体11は表面に錫やニッケル等の金属メッキが施されていてもよい。
導体11の外周上には、導体11を被覆するように絶縁層12が設けられている。絶縁層12は、後述するPPS樹脂を含む樹脂組成物を導体11の外周上に押出被覆することにより形成されている。本実施形態では、絶縁層12は、PPS樹脂を含む樹脂組成物からなり、PPS樹脂の結晶化度が85%以上であって、絶縁層12の引張弾性率が2.5GPa以下となるように構成されている。つまり、絶縁層12は、結晶化度が高いながらも、引張弾性率が低くなるように構成されている。これにより、絶縁層12は、耐摩耗性に優れる一方、導体11との密着性に優れ、過酷な加工ストレスを加えても割れないような耐加工性を有することになる。
絶縁層12を形成する樹脂組成物はPPS樹脂を含む。
PPS樹脂は、p−フェニレンサルファイドからなる繰り返し単位を含み、電気絶縁性や耐熱性、機械特性、耐薬品性、耐熱性などに優れるポリマである。PPS樹脂は、本発明の効果を損ねない範囲で、上記繰り返し単位以外にスルフォキシド基やエーテル基を含んでもよく、またベンゼン環に置換基を含んでもよい。さらに、分子鎖にチオエーテル基やエーテル基などを介して分岐構造や架橋構造を有していてもよい。
PPS樹脂の結晶化度は、絶縁層12の耐摩耗性の観点から、85%以上である。結晶化度の上限値は、絶縁層12の引張弾性率が2.5GPa以下となれば、特に限定されない。本発明者らの検討によると、絶縁層12のポリマ成分としてPPS樹脂のみを用いる場合、絶縁層12の引張弾性率を2.5GPa以下とするには、PPS樹脂の結晶化度を89%以下とする必要があるので、PPS樹脂の結晶化度を85%以上89%以下とすればよい。これにより、絶縁層において耐摩耗性とともに導体との密着性および耐加工性を高い水準でバランスよく得ることができる。
樹脂組成物には、絶縁層12の伸び性を向上させ、その引張弾性率を低減させるために、エラストマを配合することが好ましい。エラストマは、PPS樹脂中に微細に分散することにより、絶縁層12の引張弾性率を改善することができる。そのため、PPS樹脂の結晶化度を、PPS樹脂のみを用いる場合よりも高くしたとしても、絶縁層12の引張弾性率を2.5GPa以下とすることができる。例えば、PPS樹脂の結晶化度を89%超100%以下とした場合であっても、引張弾性率を2.5GPa以下とすることができる。
エラストマとしては、適度な弾性率を有する成分であれば特に限定されないが、シリコーンゴムおよびフッ素樹脂の少なくとも1つであることが好ましい。
シリコーンゴムとしては、例えば、エポキシ基、カルボン基、アルキル基もしくはフェニル基などを有するシリコーンゴムを用いることができる。
フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン共重合体樹脂(PCTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体樹脂(ECTFE)、又はポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)などを用いることができる。もしくは、これらの微粒子を用いることもできる。
また、これらの樹脂に、他の熱可塑性樹脂を併用してもよい。例えば、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂(PA)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリサルフォン樹脂(PSU)、ポリフェニルサルフォン樹脂(PPSU)など、もしくは、これらの変性材料を用いることができる。
シリコーンゴムとしては、例えば、エポキシ基、カルボン基、アルキル基もしくはフェニル基などを有するシリコーンゴムを用いることができる。
フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン共重合体樹脂(PCTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体樹脂(ECTFE)、又はポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)などを用いることができる。もしくは、これらの微粒子を用いることもできる。
また、これらの樹脂に、他の熱可塑性樹脂を併用してもよい。例えば、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂(PA)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリサルフォン樹脂(PSU)、ポリフェニルサルフォン樹脂(PPSU)など、もしくは、これらの変性材料を用いることができる。
エラストマの配合量は、樹脂組成物においてPPS樹脂が主成分となる量であればよい。具体的には、樹脂組成物は、PPS樹脂およびエラストマの合計を100質量%としたとき、エラストマを5質量%以上20質量%以下、PPS樹脂を80質量%以上95質量%以下、含有することが好ましい。このような配合量であれば、PPS樹脂による特性(電気絶縁性や耐熱性など)を損なうことなく、エラストマにより絶縁層12の引張弾性率を低減することができる。
なお、樹脂組成物には、相溶化剤などの他の添加剤が配合されていてもよい。例えば、エポキシ基、水酸基、カルボン酸、酸無水物、イソシアネート基、チオール基、又はスルフィド基を含む化合物などを用いることができる。
また、図1では、絶縁層12が導体11の直上に設けられる場合について説明したが、本発明では、導体11と絶縁層12との間に、他の樹脂からなる絶縁層(図示略)を介在させてもよい。他の樹脂からなる絶縁層としては、例えば、従来から使用されているエナメル層、ポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂(PEI)、ポリエーテルイミド樹脂、エポキシ樹脂(EP)、不飽和カルボン酸樹脂、ポリウレタン樹脂(PU)、ホルマール樹脂(FM)などからなる絶縁層を用いることができる。
また、絶縁層12と導体11との密着性を向上させる密着層(図示略)を設けてもよい。密着層に用いる樹脂としては、導体11と絶縁層12との密着性をさらに向上できるものであれば特に限定されず、例えば、ポリサルフォン樹脂、ポリフェニルサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ変性オレフィン共重合体樹脂、マレイン酸変性オレフィン共重合体樹脂、または不飽和カルボン酸樹脂など、公知の樹脂が挙げられる。
<絶縁電線の製造方法>
次に、上述した絶縁電線1の製造方法について説明する。本実施形態の絶縁電線1の製造方法は、導体11および樹脂組成物を準備する準備工程と、導体11に樹脂組成物を被覆させる被覆工程と、樹脂組成物を冷却硬化させて絶縁層12を形成する形成工程とを有している。
次に、上述した絶縁電線1の製造方法について説明する。本実施形態の絶縁電線1の製造方法は、導体11および樹脂組成物を準備する準備工程と、導体11に樹脂組成物を被覆させる被覆工程と、樹脂組成物を冷却硬化させて絶縁層12を形成する形成工程とを有している。
まず、導体11を準備する。また、絶縁層12を形成するための、PPS樹脂を含む樹脂組成物を準備する。樹脂組成物には、必要に応じてエラストマを配合してもよい。
続いて、導体11の外周上に、加熱により溶融させた樹脂組成物を押し出して被覆させる。
続いて、溶融させた樹脂組成物を冷却硬化させて絶縁層12を形成する。このとき、樹脂組成物を熱処理することにより、樹脂組成物に含まれるPPS樹脂を結晶化させ、その結晶化度を85%以上に高める。ここでの熱処理とは、樹脂組成物の温度を、PPS樹脂が結晶化する温度範囲に維持することを示す。
具体的に説明すると、まず、溶融させたPPS樹脂を含む樹脂組成物を、PPS樹脂の融点(280℃)より低く、PPS樹脂が固化し始める固化開始温度(例えば190℃)まで冷却させる。これにより、PPS樹脂が結晶化し始め、樹脂組成物が固化し始めることになる。
続いて、樹脂組成物を、PPS樹脂の冷結晶化温度(例えば130℃)の近傍まで除冷する。つまり、PPS樹脂を含む樹脂組成物の温度を、PPS樹脂の固化開始温度から冷結晶化温度までの温度範囲に所定時間、維持する。この熱処理により、PPS樹脂の結晶化度を85%以上まで高める。本実施形態では、絶縁層12を、ポリマ成分としてPPS樹脂のみを用いて形成する場合、絶縁層12の引張弾性率を2.5GPa以下とするために、PPS樹脂の結晶化度が85%以上89%以下となるように熱処理を施す。絶縁層12を、PPS樹脂およびエラストマを含む樹脂組成物から形成する場合、PPS樹脂の結晶化度が85%以上100%以下となるように熱処理を施す。
最後に、樹脂組成物を冷結晶化温度よりも低い温度まで冷却させて完全に固化させることにより絶縁層12を形成する。この絶縁層12は、PPS樹脂の結晶化度が85%以上であって、絶縁層12の引張弾性率が2.5GPa以下となるように構成されることになる。
具体的に説明すると、まず、溶融させたPPS樹脂を含む樹脂組成物を、PPS樹脂の融点(280℃)より低く、PPS樹脂が固化し始める固化開始温度(例えば190℃)まで冷却させる。これにより、PPS樹脂が結晶化し始め、樹脂組成物が固化し始めることになる。
続いて、樹脂組成物を、PPS樹脂の冷結晶化温度(例えば130℃)の近傍まで除冷する。つまり、PPS樹脂を含む樹脂組成物の温度を、PPS樹脂の固化開始温度から冷結晶化温度までの温度範囲に所定時間、維持する。この熱処理により、PPS樹脂の結晶化度を85%以上まで高める。本実施形態では、絶縁層12を、ポリマ成分としてPPS樹脂のみを用いて形成する場合、絶縁層12の引張弾性率を2.5GPa以下とするために、PPS樹脂の結晶化度が85%以上89%以下となるように熱処理を施す。絶縁層12を、PPS樹脂およびエラストマを含む樹脂組成物から形成する場合、PPS樹脂の結晶化度が85%以上100%以下となるように熱処理を施す。
最後に、樹脂組成物を冷結晶化温度よりも低い温度まで冷却させて完全に固化させることにより絶縁層12を形成する。この絶縁層12は、PPS樹脂の結晶化度が85%以上であって、絶縁層12の引張弾性率が2.5GPa以下となるように構成されることになる。
熱処理の条件としては、特に限定されないが、樹脂組成物を120℃以上220℃以下の温度範囲に維持することが好ましい。熱処理時間は、熱処理の温度によって適宜変更してもよく、例えば数分から十数分の間で適宜変更するとよい。また冷却方法としては、水槽で水冷する方法などが挙げられる。
なお、本実施形態では、絶縁層12の形成工程にて、溶融させた樹脂組成物を冷却させて絶縁層12を形成するまでの間に、樹脂組成物をPPS樹脂の固化開始温度から冷結晶化温度までの所定の温度範囲に維持することにより絶縁層12の結晶化度を高めているが、本発明は、これに限定されない。例えば、絶縁層12を冷結晶化温度よりも低い温度まで急冷して絶縁層12を形成した後、絶縁層12を、冷結晶化温度(例えば130℃)以上固化開始温度(例えば190℃)以下の温度範囲まで再度加熱して結晶化を促進させてもよい。
<本発明の一実施形態にかかる効果>
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
本実施形態の絶縁電線1では、絶縁層12が、PPS樹脂を含む樹脂組成物からなり、PPS樹脂の結晶化度が85%以上であって、引張弾性率が2.5GPa以下となるように構成されている。絶縁層12は、結晶化度が高いため、耐摩耗性に優れている。また、引張弾性率が2.5GPa以下と低くなるように構成されているため、高い伸び性や曲げ特性を有し、導体11との密着性に優れている。しかも、過酷な加工ストレスでも割れにくく、耐加工性にも優れている。
絶縁層12を構成する樹脂組成物は、エラストマをさらに含むことが好ましい。エラストマは、樹脂組成物においてPPS樹脂中に分散することにより、絶縁層12の引張弾性率を低減することができる。そのため、PPS樹脂の結晶化度を、PPS樹脂のみを用いる場合よりも高くしたとしても、絶縁層12の引張弾性率を2.5GPa以下とすることができる。
絶縁層12を構成する樹脂組成物は、エラストマとして、シリコーンゴムおよびフッ素樹脂の少なくとも1つを含むことが好ましい。シリコーンゴムおよびフッ素樹脂は適度な弾性率を有するので、PPS樹脂と混合することにより絶縁層12の引張弾性率を大きく低減し、導体11との密着性や耐加工性を大きく向上させることができる。
樹脂組成物は、PPS樹脂およびエラストマの合計を100質量%としたとき、PPS樹脂を80質量%以上95質量%以下、エラストマを5質量%以上20質量%以下、含有することが好ましい。このような配合量とすることにより、PPS樹脂の減量による耐熱性などの諸特性の低下を抑制しつつ、密着性および耐加工性を向上させることができる。
本実施形態の絶縁電線1によれば、絶縁層12が耐摩耗性、導体11との密着性、および耐加工性に優れているので、コイルに変形加工する際、絶縁層12の摩耗による減厚、絶縁層12の導体11からの剥離、および絶縁層12の割れを抑制することができる。
本実施形態の絶縁電線1によれば、コイルに変形加工した後、PPS樹脂の冷結晶化温度以上融点未満の温度で再度、熱処理することにより、PPS樹脂の結晶化を促進させることができる。例えば、絶縁層12の結晶化度が90%である絶縁電線1をコイルに変形加工し、このコイルを熱処理することで、絶縁層12の結晶化度を100%まで引き上げてもよい。このようにコイルに変形加工後に結晶化を促進させることにより、絶縁層12の諸特性(電気絶縁性や耐熱性、耐薬品性など)をさらに向上させることができる。
次に、本発明について実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
<絶縁電線の作製>
(実施例1)
下記表1に示す条件で絶縁電線を作製した。
具体的には、まず、導体として、断面が厚さ1.5mm×幅3.0mmで角が湾曲した略矩形断面の平角銅線を準備した。また、PPS樹脂を80質量%と、エラストマとしてのシリコーンゴムを20質量%とを混練し、実施例1の樹脂組成物を調製した。
続いて、平角銅線を押出機のヘッド内に導入した。押出機にて、平角銅線の外周に、溶融させた実施例1の樹脂組成物を被覆厚が150μmとなるように押出被覆した。この樹脂組成物を200℃程度まで冷却させ、その後、除冷することでPPS樹脂の結晶化を促進させた。これにより、これにより、PPS樹脂の結晶化度が100%である絶縁層を形成し、実施例1の絶縁電線を作製した。
(実施例1)
下記表1に示す条件で絶縁電線を作製した。
具体的には、まず、導体として、断面が厚さ1.5mm×幅3.0mmで角が湾曲した略矩形断面の平角銅線を準備した。また、PPS樹脂を80質量%と、エラストマとしてのシリコーンゴムを20質量%とを混練し、実施例1の樹脂組成物を調製した。
続いて、平角銅線を押出機のヘッド内に導入した。押出機にて、平角銅線の外周に、溶融させた実施例1の樹脂組成物を被覆厚が150μmとなるように押出被覆した。この樹脂組成物を200℃程度まで冷却させ、その後、除冷することでPPS樹脂の結晶化を促進させた。これにより、これにより、PPS樹脂の結晶化度が100%である絶縁層を形成し、実施例1の絶縁電線を作製した。
(実施例2,3)
実施例2,3では、エラストマとしてのシリコーンゴムの配合量を10質量%、5質量%にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様に絶縁電線を作製した。
実施例2,3では、エラストマとしてのシリコーンゴムの配合量を10質量%、5質量%にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様に絶縁電線を作製した。
(実施例4)
実施例4では、エラストマの種類を、シリコーンゴムからフッ素樹脂(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)に変更した以外は、実施例1と同様に絶縁電線を作製した。
実施例4では、エラストマの種類を、シリコーンゴムからフッ素樹脂(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)に変更した以外は、実施例1と同様に絶縁電線を作製した。
(実施例5)
実施例5では、エラストマを配合せずに、PPS樹脂のみを含む樹脂組成物で絶縁層を形成するとともに、PPS樹脂の結晶化度を85%とした以外は、実施例1と同様に絶縁電線を作製した。
実施例5では、エラストマを配合せずに、PPS樹脂のみを含む樹脂組成物で絶縁層を形成するとともに、PPS樹脂の結晶化度を85%とした以外は、実施例1と同様に絶縁電線を作製した。
(比較例1)
比較例1では、エラストマを配合せずに、PPS樹脂のみを含む樹脂組成物で絶縁層を形成するとともに、PPS樹脂の結晶化度を100%とした以外は、実施例1と同様に絶縁電線を作製した。
比較例1では、エラストマを配合せずに、PPS樹脂のみを含む樹脂組成物で絶縁層を形成するとともに、PPS樹脂の結晶化度を100%とした以外は、実施例1と同様に絶縁電線を作製した。
<評価方法>
作製した絶縁電線について、以下の方法により評価した。
作製した絶縁電線について、以下の方法により評価した。
(絶縁層の引張弾性率)
絶縁層の引張弾性率は、絶縁層を模擬した試験片を作製し、この試験片に引張試験を行うことにより評価した。具体的には、まず、実施例および比較例の樹脂組成物を用いて、絶縁層を模擬した絶縁フィルム(厚さ100μm)を作製した。続いて、絶縁フィルムに対して200mm/分の引張速度で引張試験を行った。この引張試験で得られたS−S曲線の引張初期の傾きから引張弾性率を算出し、これを絶縁層の引張弾性率とした。本実施例では、引張弾性率が2.5MPa以下であれば、合格とした。
絶縁層の引張弾性率は、絶縁層を模擬した試験片を作製し、この試験片に引張試験を行うことにより評価した。具体的には、まず、実施例および比較例の樹脂組成物を用いて、絶縁層を模擬した絶縁フィルム(厚さ100μm)を作製した。続いて、絶縁フィルムに対して200mm/分の引張速度で引張試験を行った。この引張試験で得られたS−S曲線の引張初期の傾きから引張弾性率を算出し、これを絶縁層の引張弾性率とした。本実施例では、引張弾性率が2.5MPa以下であれば、合格とした。
(絶縁層の密着性)
絶縁層の密着性は、絶縁電線を急激伸長試験することにより評価した。具体的には、絶縁電線の両端をそれぞれチャックで固定した。このときチャック間の距離が25cmとなるように固定した。そして、絶縁電線の一端を引張速度1000mm/分で引っ張り、絶縁電線を急激に伸長させることにより絶縁電線を破断させた。その後、絶縁電線の破断した位置の両端部において、絶縁層の被覆浮きの長さと導体の露出長さを測定し、これらの合計長さが10mm未満であれば、密着性が高いものとして合格(○)、10mm以上であれば、密着性が不十分であるとして不合格(×)とした。
絶縁層の密着性は、絶縁電線を急激伸長試験することにより評価した。具体的には、絶縁電線の両端をそれぞれチャックで固定した。このときチャック間の距離が25cmとなるように固定した。そして、絶縁電線の一端を引張速度1000mm/分で引っ張り、絶縁電線を急激に伸長させることにより絶縁電線を破断させた。その後、絶縁電線の破断した位置の両端部において、絶縁層の被覆浮きの長さと導体の露出長さを測定し、これらの合計長さが10mm未満であれば、密着性が高いものとして合格(○)、10mm以上であれば、密着性が不十分であるとして不合格(×)とした。
(絶縁層の耐加工性)
絶縁層の耐加工性は、絶縁電線をエッジワイズ試験することにより評価した。具体的には、作製した絶縁電線から長さ10cmの試験片を採取し、この試験片を引張試験機で伸び20%(長さ12cm)まで伸長させた後、伸長させた試験片に対してエッジワイズに180°曲げ加工を施した。このとき、絶縁層に亀裂がないかを観察して評価した。本実施例では、絶縁層に亀裂がなければ、耐加工性に優れているものとして合格(○)、亀裂があれば、耐加工性に劣るものとして不合格(×)とした。
絶縁層の耐加工性は、絶縁電線をエッジワイズ試験することにより評価した。具体的には、作製した絶縁電線から長さ10cmの試験片を採取し、この試験片を引張試験機で伸び20%(長さ12cm)まで伸長させた後、伸長させた試験片に対してエッジワイズに180°曲げ加工を施した。このとき、絶縁層に亀裂がないかを観察して評価した。本実施例では、絶縁層に亀裂がなければ、耐加工性に優れているものとして合格(○)、亀裂があれば、耐加工性に劣るものとして不合格(×)とした。
<評価結果>
実施例1〜5のいずれにおいても、絶縁層の結晶化度が85%以上であり、かつ引張弾性率が2.5MPa以下であったため、耐摩耗性、密着性および耐加工性に優れていることが確認された。実施例1〜4によると、PPS樹脂の結晶化度を高くした場合であっても、エラストマを混合することにより絶縁層の引張弾性率を低くできることが確認された。また、実施例5によると、絶縁層をPPS樹脂のみで構成する場合であっても、その結晶化度を低く調整することにより、耐摩耗性、密着性および耐加工性を高い水準でバランスよく得られることが確認された。
これに対して、比較例1では、絶縁層をPPS樹脂のみで構成したが、その結晶化度を100%としたため、絶縁層の引張弾性率が2.5MPaよりも高く、密着性および耐加工性に劣ることが確認された。
実施例1〜5のいずれにおいても、絶縁層の結晶化度が85%以上であり、かつ引張弾性率が2.5MPa以下であったため、耐摩耗性、密着性および耐加工性に優れていることが確認された。実施例1〜4によると、PPS樹脂の結晶化度を高くした場合であっても、エラストマを混合することにより絶縁層の引張弾性率を低くできることが確認された。また、実施例5によると、絶縁層をPPS樹脂のみで構成する場合であっても、その結晶化度を低く調整することにより、耐摩耗性、密着性および耐加工性を高い水準でバランスよく得られることが確認された。
これに対して、比較例1では、絶縁層をPPS樹脂のみで構成したが、その結晶化度を100%としたため、絶縁層の引張弾性率が2.5MPaよりも高く、密着性および耐加工性に劣ることが確認された。
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
[付記1]
本発明の一態様によれば、
導体と、
前記導体の外周に配置された絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物からなり、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂の結晶化度が85%以上であって、引張弾性率が2.5GPa以下となるように構成される、絶縁電線が提供される。
本発明の一態様によれば、
導体と、
前記導体の外周に配置された絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物からなり、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂の結晶化度が85%以上であって、引張弾性率が2.5GPa以下となるように構成される、絶縁電線が提供される。
[付記2]
付記1の絶縁電線において、好ましくは、
前記絶縁層を構成する前記樹脂組成物がエラストマをさらに含む。
付記1の絶縁電線において、好ましくは、
前記絶縁層を構成する前記樹脂組成物がエラストマをさらに含む。
[付記3]
付記2の絶縁電線において、好ましくは、
前記エラストマがシリコーンゴムおよびフッ素樹脂の少なくとも1つである。
付記2の絶縁電線において、好ましくは、
前記エラストマがシリコーンゴムおよびフッ素樹脂の少なくとも1つである。
[付記4]
付記2又は3の絶縁電線において、好ましくは、
前記樹脂組成物は、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂および前記エラストマの合計を100質量%としたとき、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂を80質量%以上95質量%以下、前記エラストマを5質量%以上20質量%以下、含有する。
付記2又は3の絶縁電線において、好ましくは、
前記樹脂組成物は、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂および前記エラストマの合計を100質量%としたとき、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂を80質量%以上95質量%以下、前記エラストマを5質量%以上20質量%以下、含有する。
[付記5]
本発明の他の態様によれば、
溶融する、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物を、導体の外周に押し出して被覆させる被覆工程と、
溶融する前記樹脂組成物を冷却させて絶縁層を形成する形成工程と、を有し、
前記形成工程では、前記樹脂組成物を、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂の冷結晶化温度以上融点未満の温度で熱処理して再結晶させることにより、前記絶縁層を、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂の結晶化度が85%以上であって、引張弾性率が2.5GPa以下となるように構成する、絶縁電線の製造方法が提供される。
本発明の他の態様によれば、
溶融する、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物を、導体の外周に押し出して被覆させる被覆工程と、
溶融する前記樹脂組成物を冷却させて絶縁層を形成する形成工程と、を有し、
前記形成工程では、前記樹脂組成物を、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂の冷結晶化温度以上融点未満の温度で熱処理して再結晶させることにより、前記絶縁層を、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂の結晶化度が85%以上であって、引張弾性率が2.5GPa以下となるように構成する、絶縁電線の製造方法が提供される。
[付記6]
付記5の絶縁電線の製造方法において、好ましくは、
前記形成工程では、前記樹脂組成物を120℃以上220℃以下の温度で熱処理する。
付記5の絶縁電線の製造方法において、好ましくは、
前記形成工程では、前記樹脂組成物を120℃以上220℃以下の温度で熱処理する。
[付記7]
本発明のさらに他の態様によれば、
導体と、
前記導体の外周に配置された絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物からなり、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂の結晶化度が85%以上89%以下であって、引張弾性率が2.5GPa以下となるように構成される、絶縁電線が提供される。
本発明のさらに他の態様によれば、
導体と、
前記導体の外周に配置された絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物からなり、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂の結晶化度が85%以上89%以下であって、引張弾性率が2.5GPa以下となるように構成される、絶縁電線が提供される。
[付記8]
本発明のさらに他の態様によれば、
導体と、
前記導体の外周に配置された絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、ポリフェニレンサルファイド樹脂およびエラストマを含む樹脂組成物からなり、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂の結晶化度が85%以上100%以下であって、引張弾性率が2.5GPa以下となるように構成される、絶縁電線が提供される。
本発明のさらに他の態様によれば、
導体と、
前記導体の外周に配置された絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、ポリフェニレンサルファイド樹脂およびエラストマを含む樹脂組成物からなり、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂の結晶化度が85%以上100%以下であって、引張弾性率が2.5GPa以下となるように構成される、絶縁電線が提供される。
1 絶縁電線
11 導体
12 絶縁層
11 導体
12 絶縁層
Claims (6)
- 導体と、
前記導体の外周に配置された絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物からなり、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂の結晶化度が85%以上であって、引張弾性率が2.5GPa以下となるように構成される、絶縁電線。 - 前記絶縁層を構成する前記樹脂組成物が、エラストマをさらに含む、請求項1に記載の絶縁電線。
- 前記エラストマが、シリコーンゴムおよびフッ素樹脂の少なくとも1つである、請求項2に記載の絶縁電線。
- 前記樹脂組成物は、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂および前記エラストマの合計を100質量%としたとき、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂を80質量%以上95質量%以下、前記エラストマを5質量%以上20質量%以下、含有する、請求項2又は3に記載の絶縁電線。
- 溶融する、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物を、導体の外周に押し出して被覆させる被覆工程と、
溶融する前記樹脂組成物を冷却させて絶縁層を形成する形成工程と、を有し、
前記形成工程では、前記樹脂組成物を、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂の冷結晶化温度以上融点未満の温度で熱処理して再結晶させることにより、前記絶縁層を、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂の結晶化度が85%以上であって、引張弾性率が2.5GPa以下となるように構成する、絶縁電線の製造方法。 - 前記形成工程では、前記樹脂組成物を120℃以上220℃以下の温度で熱処理する、請求項5に記載の絶縁電線の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015204250A JP2017076560A (ja) | 2015-10-16 | 2015-10-16 | 絶縁電線およびその製造方法 |
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JP2015204250A JP2017076560A (ja) | 2015-10-16 | 2015-10-16 | 絶縁電線およびその製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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ID=58551452
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JP2015204250A Pending JP2017076560A (ja) | 2015-10-16 | 2015-10-16 | 絶縁電線およびその製造方法 |
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JP (1) | JP2017076560A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112166542A (zh) * | 2018-05-29 | 2021-01-01 | 米巴电动汽车有限公司 | 在电机中使用的电导线 |
US20210313090A1 (en) * | 2018-11-26 | 2021-10-07 | Hitachi Metals, Ltd. | Cable and harness |
-
2015
- 2015-10-16 JP JP2015204250A patent/JP2017076560A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US20210313090A1 (en) * | 2018-11-26 | 2021-10-07 | Hitachi Metals, Ltd. | Cable and harness |
US11854713B2 (en) * | 2018-11-26 | 2023-12-26 | Proterial, Ltd. | Cable and harness |
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