吸着コイルは大電流を流すことによりプランジャに大きな吸着力を生じさせるべく巻線径が太くなされており、その抵抗値は数Ω程度とされている。一方、保持コイルは、プランジャを開弁位置で保持するに必要かつ十分な保持力を安定して生じさせるべく巻線径が細くかつ巻線全長が長くされており、その結果保持コイルの抵抗値は数百Ω程度(例えば600Ω前後)となっている。
この保持コイルは、燃焼開始時から燃焼終了時まで駆動されるものであり、動作時の雰囲気温度が大きく変化して抵抗値が比較的大きく変動するとともに、製品としての抵抗値の許容誤差も比較的大きい。したがって、燃焼機器の設計に際しては、想定される状況下での保持コイルの最大抵抗値を推定し、この最大抵抗値である場合に開弁状態を保持することのできる電流値を保持コイルに流すよう設計している。
しかし、保持コイルが想定範囲の最大抵抗値となるのは、抵抗値の比較的大きな個体が用いられ、且つ、雰囲気温度が想定される最大温度時の場合のみであり、燃焼動作中の殆どの時間は保持コイルの実際の抵抗値は上記推定最大抵抗値よりも小さく、したがって、保持コイルには必要以上の電流が流れており、消費電力の低減、ひいては電池寿命の長期化の観点から改善の余地があった。
そこで、本発明は、コイルにより駆動する電磁弁を備えた電池式燃焼機器において、一層の消費電力の節減と電池寿命の長期化とを図ることを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、次の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明は、コイルを備えた電磁弁と、電源となる電池から前記コイルに電流を流す電流経路を有するコイル駆動回路と、制御部とを備える電池式燃焼機器において、前記電流経路の途中には、前記コイルを流れる電流を調節するよう動作する電流調節回路部が前記コイルと直列に設けられており、前記制御部は、前記コイルを流れる電流が所定の必要駆動電流以上であって該必要駆動電流に近づくよう前記コイルの抵抗値に応じて前記電流調節回路部の動作を制御するものとすることができる(請求項1)。
かかる本発明の電池式燃焼機器によれば、コイル抵抗値が変動しても、コイル電流が必要駆動電流以上であって必要駆動電流に近い電流値となるので、コイル抵抗値が比較的大きい場合でもコイルに必要駆動電流を流して電磁弁を駆動させることができるとともに、コイル抵抗値が比較的小さい場合にはコイル抵抗値に応じて電流調節回路部を動作させることによって必要以上に大きな電流がコイルを流れてしまうことを回避して、消費電力を節減し、ひいては電池寿命の長期化を図ることができる。
なお、電流調節回路部とは別に、電流経路を開閉するための電流経路開閉回路部(典型的には制御部によってオン/オフ切替制御されるスイッチング素子)を設けることができ、電流調節回路部は、電流経路開閉回路部によって電流経路が閉じているときのコイル電流を調節するものであってよいが、電流調節回路部がコイル電流を0にするよう動作可能であれば上記電流経路開閉回路部は設けなくともよい。ただし、「コイルを流れる電流を調節」とは、コイル電流が0ではない少なくとも2つの電流値の間で調節可能なものであることを意味し、コイル電流を0と0以外との間で切替可能な単に電流経路を開閉するだけのものは電流調節回路部に含まれないものとする。また、コイル抵抗値は、例えば、コイルに直列に電流制限抵抗を設けて、この電流制限抵抗とコイルとの間の電圧値に基づいて検出できる。例えば、電流経路全体の両端電圧(典型的には電池の電圧値、もしくは、電池電圧に基づいて所定電圧を生成するレギュレータの出力電圧値)が3V(既知)、コイルの負側に接続された電流制限抵抗が200Ω(既知)、電流制限抵抗とコイルとの間の電圧値が0.72V(検出値)の場合、電流経路を流れる電流、すなわちコイル電流は電流制限抵抗を流れる電流と等しいので、コイル電流=0.72/200=3.6mAとなり、コイル抵抗=(3−0.72)/3.6mA=633Ωと一義的に定まる。したがって、電流制限抵抗とコイルとの間の電圧値を検出して、該電圧値をコイル抵抗値を示すものとして用いることが可能である。
上記本発明の電池式燃焼機器において、前記電流調節回路部は、並列に接続された第1及び第2の分岐経路と、第1の分岐経路を開閉する第1のスイッチング素子とを備え、前記制御部は第1のスイッチング素子のオン/オフを前記コイルの抵抗値に応じて切替制御するものであり、第1のスイッチング素子をオフすると第1及び第2の分岐経路を介して前記コイルに電流が流れ、第1のスイッチング素子をオンすると第1の分岐経路は遮断されて第2の分岐経路を介して前記コイルに電流が流れ、第1及び第2の分岐経路の合成抵抗値と第2の分岐経路の抵抗値とが異なるものとすることができる(請求項2)。これによれば、第1のスイッチング素子をオンすることにより電流調節回路部全体の合成抵抗値が小さくなり、コイルを含む電流経路全体の抵抗値も小さくなるので、その状況下でコイルを流れる電流を比較的大きくすることができ、一方、第1のスイッチング素子をオフすることにより電流調節回路部全体の抵抗値が大きくなり、コイルを含む電流経路全体の抵抗値も大きくなるので、その状況下でコイルを流れる電流を比較的小さくすることができる。そして、コイル抵抗値が比較的小さい場合には第1のスイッチング素子をオフし、コイル抵抗値が比較的大きい場合には第1のスイッチング素子をオンすることによって、コイル抵抗値にかかわらずコイル電流をほぼ一定することができる。なお、かかる構成においては、電流調節回路部を上記電流制限抵抗として機能させることが可能である。また、第2の分岐経路にも、第2の分岐経路を開閉する第2のスイッチング素子を設けることもでき、この場合、第1のスイッチング素子のみをオンした場合、第2のスイッチング素子のみをオンした場合、第1及び第2のスイッチング素子の両方をオンした場合の3パターンに電流調節回路部全体の抵抗値を変更できる。
また、前記電流調節回路部は、並列に接続された第1及び第2の分岐経路と、第1の分岐経路を開閉する第1のスイッチング素子と、第2の分岐経路を開閉する第2のスイッチング素子とを備え、前記制御部は第1及び第2のスイッチング素子のオン/オフを前記コイルの抵抗値に応じてそれぞれ切替制御するものであり、第1の分岐経路の抵抗値と第2の分岐経路の抵抗値とが異なるものであってもよい(請求項3)。これによれば、第1のスイッチング素子をオンし且つ第2のスイッチング素子をオフすると第1の分岐経路の抵抗値が電流調節回路部全体の抵抗値となり、第1のスイッチング素子をオフし且つ第2のスイッチング素子をオンすると第2の分岐経路の抵抗値が電流調節回路部全体の抵抗値となり、第1及び第2のスイッチング素子をいずれもオンすると第1及び第2の分岐経路の合成抵抗値(並列)が電流調節回路部全体の抵抗値となる。そして、コイル抵抗値に応じて第1及び第2のスイッチング素子のオン/オフを切替制御することにより、電流調節回路部の抵抗値を変更することによって、コイル抵抗値にかかわらずコイル電流をほぼ一定に制御することができる。
なお、上記第1及び第2の分岐経路に並列にさらに一又は複数の分岐経路を備えることもでき、また、これら追加の分岐経路にも同様のスイッチング素子を設けることもできる。
また、前記電流調節回路部は第3のスイッチング素子を備え、前記制御部は、前記コイルの抵抗値に応じたデューティ比の駆動パルスで第3のスイッチング素子をパルス駆動するものであってもよい(請求項4)。これによれば、コイル抵抗値が比較的小さい場合にはデューティ比を比較的小さくして電流導通率を比較的小さくし、コイル抵抗値が比較的大きい場合にはデューティ比を比較的大きくして電流導通率を比較的大きくするように第3のスイッチング素子のオン/オフを駆動パルスによって高速で切り替えることによって、コイルを流れる電流をコイル抵抗値の大小にかかわらずほぼ一定に制御できる。なお、駆動パルスは、パルス幅変調制御(PWM制御)により生成されるものであってもよいしパルス周期変調制御(PFM制御)によって生成されるものであってもよい。また、コイル抵抗値に応じたデューティ比を予め定めておき、検出されたコイル抵抗値に応じたデューティ比に設定することによって、制御構成を簡素化して制御動作に必要な消費電力をも低減しつつ、コイル電流を最適値に制御できる。
さらに、前記制御部は、前記コイルの抵抗値並びに前記電池の電圧に応じたデューティ比の駆動パルスで第3のスイッチング素子をパルス駆動するものとすることもできる(請求項5)。これによれば、電池の消耗によって電池の出力電圧自体が低下し、この電池電圧が上記電流経路の両端に印加される場合に、電池電圧が比較的高い場合にはデューティ比を比較的小さくし、電池電圧が比較的低い場合にはデューティ比を比較的大きくすることによって、電池電圧が変動してもコイル電流をほぼ一定に制御できる。
なお、上記電磁弁は、ガス供給管路を開閉する元ガス電磁弁や安全弁などの電磁弁であってよく、電池式燃焼機器は、電磁弁の開閉動作を制御する電磁弁開閉制御部を備えて、燃焼動作時には電磁弁を開弁制御し、燃焼停止時には電磁弁を閉弁制御することができる。前記電池は、電池収容部に交換可能に収容されるものとすることができる。また、電池式燃焼機器は、電池の電圧を検出する電池電圧検出部と、前記コイルの抵抗値を検出するコイル抵抗値検出部とを備えることができる。
以上説明したように、本発明の請求項1に係る電池式燃焼機器によれば、コイル抵抗値が変動しても、コイル電流が必要駆動電流以上であって必要駆動電流に近い電流値となるので、コイル抵抗値が比較的大きい場合でもコイルに必要駆動電流を流して電磁弁を駆動させることができるとともに、コイル抵抗値が比較的小さい場合にはコイル抵抗値に応じて電流調節回路部を動作させることによって必要以上に大きな電流がコイルを流れてしまうことを回避して、消費電力を節減し、ひいては電池寿命の長期化を図ることができる。
また、本発明の請求項2に係る電池式燃焼機器によれば、第1のスイッチング素子をオンすることにより電流調節回路部全体の合成抵抗値が小さくなり、コイルを含む電流経路全体の抵抗値も小さくなるので、その状況下でコイルを流れる電流を比較的大きくすることができ、一方、第1のスイッチング素子をオフすることにより電流調節回路部全体の抵抗値が大きくなり、コイルを含む電流経路全体の抵抗値も大きくなるので、その状況下でコイルを流れる電流を比較的小さくすることができる。そして、コイル抵抗値が比較的小さい場合には第1のスイッチング素子をオフし、コイル抵抗値が比較的大きい場合には第1のスイッチング素子をオンすることによって、コイル抵抗値にかかわらずコイル電流をほぼ一定することができる。
また、本発明の請求項3に係る電池式燃焼機器によれば、第1のスイッチング素子をオンし且つ第2のスイッチング素子をオフすると第1の分岐経路の抵抗値が電流調節回路部全体の抵抗値となり、第1のスイッチング素子をオフし且つ第2のスイッチング素子をオンすると第2の分岐経路の抵抗値が電流調節回路部全体の抵抗値となり、第1及び第2のスイッチング素子をいずれもオンすると第1及び第2の分岐経路の合成抵抗値(並列)が電流調節回路部全体の抵抗値となる。そして、コイル抵抗値に応じて第1及び第2のスイッチング素子のオン/オフを切替制御することにより、電流調節回路部の抵抗値を変更することによって、コイル抵抗値にかかわらずコイル電流をほぼ一定に制御することができる。
また、本発明の請求項4に係る電池式燃焼機器によれば、コイル抵抗値が比較的小さい場合にはデューティ比を比較的小さくして電流導通率を比較的小さくし、コイル抵抗値が比較的大きい場合にはデューティ比を比較的大きくして電流導通率を比較的大きくするように第3のスイッチング素子のオン/オフを駆動パルスによって高速で切り替えることによって、コイルを流れる電流をコイル抵抗値の大小にかかわらずほぼ一定に制御できる。
また、本発明の請求項5に係る電池式燃焼機器によれば、電池の消耗によって電池の出力電圧自体が低下し、この電池電圧が上記電流経路の両端に印加される場合に、電池電圧が比較的高い場合にはデューティ比を比較的小さくし、電池電圧が比較的低い場合にはデューティ比を比較的大きくすることによって、電池電圧が変動してもコイル電流をほぼ一定に制御できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電池式ガス瞬間湯沸器(電池式燃焼機器)の全体概略構成を示しており、該電池式瞬間湯沸器は、制御基板1と、燃焼バーナ2及び熱交換器3を有する燃焼缶体4と、バーナ2に燃料ガスを供給するガス供給管路5と、ガス供給管路5の途中に設けられて該管路5を開閉する元ガス電磁弁6(電磁弁)と、熱交換器3に水道水から供給される水を導く入水管路7と、熱交換器3を通過することによって加熱された湯水を出湯する出湯管路8と、乾電池などの電池9を交換可能に収容可能な電池ケース10(電池収容部)とを備えている。本実施形態では、2個の乾電池を直列に接続することによって新品時3Vの電源電圧が得られるようにしており、仕様上、乾電池の劣化によって電源電圧が開放電圧で2.2V付近まで降下しても給湯動作を行えるように設計している。
制御基板1は、制御中枢としてのマイクロプロセッサ11(制御部)を備えており、該マイクロプロセッサ11の電源ポートVddは電源ライン12を介して電池9の正極に接続されており、これによりマイクロプロセッサ11は電池9を電源として駆動するようになっている。電源ライン12には電池電圧検出回路13が接続されており、該電池電圧検出回路13が出力する監視信号(検出電圧)はマイクロプロセッサ11の電池電圧監視信号入力ポートVrefに入力され、これによりマイクロプロセッサ11が電池電圧値を検出可能となっている(電池電圧検出機能)。なお、図示例のように電池電圧を直接マイクロプロセッサ11の電源ポートVddに印加する場合には、電池電圧検出回路13は、電池電圧に基づいて所定電圧(例えば1.5V)を生成出力するレギュレータによって構成でき、該レギュレータの出力電圧若しくは該出力電圧を分圧してなる電圧を上記監視信号としてマイクロプロセッサ11の電池電圧監視信号Vrefに入力させ、マイクロプロセッサ11が、電源ポートVddに入力する電源電圧と、電池電圧監視信号入力ポートVrefに入力する監視信号電圧とを比較することによって、電源電圧を検出できる。一方、電池電圧に基づいて所定電圧を生成出力するレギュレータの出力電圧をマイクロプロセッサ11の電源ポートVddに電源として入力させることもでき、この場合は、電池電圧検出回路13は、電池電圧を分圧してなる電池電圧に比例する電圧値の監視信号をマイクロプロセッサ11の電池電圧監視信号入力ポートVrefに出力する分圧回路などにより構成できる。
また、制御基板1には、元ガス電磁弁6の駆動回路14が設けられている。元ガス電磁弁6は、吸着コイル61及び保持コイル62(請求項1のコイル)を内蔵しており、駆動回路14は、電池9から吸着コイル61に電流を流す吸着コイル用電流経路15と、電池9から保持コイル62に電流を流す保持コイル用電流経路16(請求項1の電流経路)とを備えている。吸着コイル用電流経路15には、該経路15を開閉するためのFETやバイポーラトランジスタなどから構成されるスイッチング素子Q1が設けられており、マイクロプロセッサ11の吸着コイル制御信号出力ポートOUT1から吸着コイル用電流経路15を閉じる制御信号をスイッチング素子Q1に出力すると、吸着コイル61に所定の吸着電流が流れることによって元ガス電磁弁6が閉じた状態から開弁動作する。また、保持コイル用電流経路16にも、該経路16を開閉するためのFETやバイポーラトランジスタなどから構成されるスイッチング素子Q2(電流経路開閉回路部)が設けられており、マイクロプロセッサ11の保持コイル制御信号出力ポートOUT2から保持コイル用電流経路16を閉じる制御信号をスイッチング素子Q2に出力すると、保持コイル62に所定の保持電流が流れることによって元ガス電磁弁6を開弁した状態で保持するようになっている。吸着コイル制御信号の出力は、元ガス電磁弁6が開弁し且つ保持コイル制御信号が出力されている状態であればいつでも停止させることができ、例えば、吸着コイル制御信号は数ミリ秒間のみ出力して吸着コイル61を短時間のみ駆動させるようにすることによって消費電力を節減できる。
なお、吸着電流及び保持電流の電流値は、各電流経路15,16に印加される電源電圧値と、各コイル駆動時の各電流経路15,16の回路抵抗値とにより定まる。一般的に、吸着コイル61の抵抗値は数Ω程度、保持コイル62の抵抗値は数百Ω程度となされており、また、吸着コイル61には大きな駆動電流を流すために吸着コイル用電流経路15の全体の抵抗値は小さくなされる一方、保持コイル用電流経路16には比較的大きな電流制限抵抗が保持コイル62と直列に設けられることにより、吸着コイル61の必要駆動電流は数百mA程度、保持コイル62の必要駆動電流は数mA程度となされている。なお、図示例では電池電圧を直接各電流経路15,16に電源電圧として印加しているが、保持コイル用電流経路16には、上記レギュレータの出力電圧を電源電圧として印加するよう回路構成することもできる。
また、保持コイル用電流経路15の途中には、保持コイル62を流れる電流を調節するよう動作する電流調節回路部17が保持コイル62と直列に設けられており、本実施形態では電流調節回路部17は保持コイル62の負側で且つスイッチング素子Q2の正側に直列に接続されている。本実施形態の電流調節回路部17は、保持コイル62の電流制限抵抗として機能するものであり、並列に接続された第1及び第2の分岐経路18,19からなり、各分岐経路18,19にはそれぞれ所定の抵抗値(例えば200Ω)の抵抗器R1,R2がそれぞれ設けられている。これらの抵抗器R1,R2の抵抗値をそれぞれ異ならせても良い。また、第1の分岐経路18には、該経路18を開閉するバイポーラトランジスタやFETなどからなるスイッチング素子Q3(請求項2の第1のスイッチング素子)が抵抗器R1と直列に設けられている。スイッチング素子Q3はマイクロプロセッサ11のコイル電流制御信号出力ポートOUT3から出力されるコイル電流制御信号によって開閉駆動される。スイッチング素子Q3がオンすると、第1及び第2の分岐経路18,19の並列回路によって電流調節回路部17が構成されることとなり、電流調節回路部17の抵抗値は抵抗器R1,R2の並列接続時の合成抵抗値、すなわち(R1+R2)/2となる(R1,R2がいずれも200Ωの場合、合成抵抗値は100Ω)。一方、スイッチング素子Q3がオフすると、第2の分岐経路19のみによって電流調節回路部17が構成されることとなり、電流調節回路部17の抵抗値は抵抗器R2の抵抗値(200Ω)となる。なお、各抵抗器R1,R2の抵抗値はスイッチング素子Q1の抵抗成分よりも十分大きいため、スイッチング素子Q1の抵抗成分は無視して各電流経路15,16全体の抵抗値を求めることができるが、スイッチング素子Q3の抵抗成分をも考慮して各電流経路15,16全体の抵抗値を求めることもできる。なお、さらに一若しくは複数の追加の分岐経路を設けて、各分岐経路にスイッチング素子を設けることもでき、分岐経路の数を増やすことによって、電流調節回路部17の回路抵抗値のバリエーションを増やすことができる。
さらに、保持コイル用電流経路15の中途部の電圧信号は、直接或いは図示しない分圧回路を介してマイクロプロセッサ11の保持コイル抵抗値検出信号アナログ入力ポートINに保持コイル抵抗値検出信号として入力されており、該入力ポートINに入力された電圧信号に基づいて、マイクロプロセッサ11は保持コイル62の抵抗値を判定するよう制御構成されている(コイル抵抗値判定機能)。図示例では、保持コイル62と電流調節回路部17との間の電圧がマイクロプロセッサ11に入力されており、電源電圧値と、上記保持コイル抵抗値検出信号の電圧値と、電流調節回路部17の抵抗値とに基づいて保持コイル62の抵抗値を判定可能である。例えば、電源電圧値がα(既知)、電流調節回路部17の抵抗値がβ(既知)、保持コイル抵抗値検出信号がx(なお、xは、電源電圧値αに対する電位差、すなわち、保持コイル62の両端電圧としてマイクロプロセッサ11が検出するものとする。)とすると、保持コイル62の抵抗値=β×x/(α−x)となり、保持コイル62の抵抗値は、保持コイル抵抗値検出信号xに対して一義的に定まる関係にあるため、保持コイル抵抗値検出信号が示す電圧値に基づいて制御すれば、保持コイル62の抵抗値に応じた制御となる。このように、保持コイル62の抵抗値に対して一義的な関係にある適宜の値を検出して、該検出値に基づいて電流調節回路部17の切替動作制御、すなわちスイッチング素子Q3のオン/オフ切替制御を行うものであれば本発明に包含されるものである。
なお、保持コイル62の抵抗値の判定において、スイッチング素子Q2の抵抗成分は電流調節回路部17の抵抗値よりも十分小さいため無視することができるが、スイッチング素子Q2その他の抵抗成分をも考慮して保持コイル62の抵抗値を判定することもできる。また、本実施形態では、電源電圧検出回路13が別途設けられており、電源電圧が既知であるが、電源電圧検出回路が設けられていない場合には、電源電圧をも検出するために保持コイル62の正側の電圧信号をもマイクロプロセッサ11に入力させて、電源電圧をマイクロプロセッサ11により検出可能に構成することができる。また、レギュレータの出力電圧を保持コイル用電流経路16に電源として供給する場合には、レギュレータの出力電圧は設計時に既知であるから、該設計電圧を電源電圧値αとして用いることができる。
燃焼缶体4には、点火装置としてのイグナイタ20と、炎検出装置として熱電対21が設けられ、イグナイタ20はマイクロプロセッサ11により駆動制御されるとともに、熱電対21の検出信号はマイクロプロセッサ11に入力される。
マイクロプロセッサ11は、燃焼動作制御(給湯動作制御)を開始すると、吸着コイル制御信号を出力することにより元ガス電磁弁6の吸着コイル61を駆動して開弁動作させるとともに保持コイル制御信号出力に切り替えることで開弁状態を保持して、燃料ガスをバーナ2に供給する。また、イグナイタ20を駆動することによって点火させ、正常に点火したか否かを熱電対21の検出信号に基づいて判定する。
この点火制御時には、マイクロプロセッサ11は、コイル電流制御信号出力ポートOUT3からスイッチング素子Q3をオンさせる制御信号を出力し、これにより、電流調節回路部17全体の回路抵抗値を小さく(本実施形態では100Ω)して、点火直後の保持コイル電流が不足することを防止するよう構成している。
そして、熱電対21によって正常な点火が確認された後、場合によって所定時間(数秒程度)を経過した後、マイクロプロセッサ11は保持コイル抵抗値検出信号に基づいて保持コイル62の抵抗値を判定し、この保持コイル62の抵抗値に応じてスイッチング素子Q3のオン/オフ切替を制御することによって、保持コイル62の電流制限抵抗として機能する電流調節回路17の回路抵抗値を保持コイル62の抵抗値に応じて切替え、保持コイル62を流れる電流が必要駆動電流以上であって該必要駆動電流に近づくように調節する。すなわち、電流調節回路17の回路抵抗値が200Ωでも保持コイル62に必要駆動電流を流すことができる状態であればマイクロプロセッサ11はスイッチング素子Q3をオンするが、そうでない場合にはスイッチング素子Q3をオフするよう制御構成されている。
なお、保持コイル用電流経路16の電源電圧が一定である場合(レギュレータ出力電圧が保持コイル62に印加される場合)には、保持コイル62の抵抗値のみに基づいてスイッチング素子Q3の切替制御を行うが、電池電圧が保持コイル62に印加される場合には、電池電圧自体が変動するため、保持コイル62の抵抗値と電池電圧とに基づいて、電流調節回路の回路抵抗値が大きい場合(200Ωのとき)と小さい場合(100Ωのとき)のそれぞれの保持コイル電流を算出して、保持コイル電流が、必要駆動電流以上であってより低い電流値となるよう、スイッチング素子Q3の切替制御を行うことが好ましい。
燃焼制御中は常時保持コイル62の抵抗値を監視してスイッチング素子Q3のオン/オフ切替制御(電流調節回路部17の切替動作制御)を行うことが好ましく、具体的にはマイクロプロセッサ11の制御周期である100ミリ秒毎に保持コイル62の抵抗値に基づくスイッチング素子Q3の切替制御を行わせることができる。
本実施形態の電池式ガス瞬間湯沸器によれば、保持コイル62の抵抗値の変動を常時監視して、保持コイル62の抵抗値が比較的小さい場合には電流制限抵抗として機能する電流調節回路部17の抵抗値を比較的大きく制御することによって保持コイル62を流れる電流を必要駆動電流以上の近い電流値に制限することができ、これにより消費電力の削減、電池寿命の長期化を図ることができる。
図2は本発明の第2実施形態に係る電池式ガス瞬間湯沸器を示しており、上記第1実施形態と同様の構成については同符号を付して詳細説明を省略し、異なる構成、作用効果について説明する。
本実施形態では、吸着コイル用電流経路15には電池電圧がそのまま印加されている一方、保持コイル用電流経路16には、電池電圧に基づいて所定電圧(例えば1.5V)を生成するレギュレータ30の出力電圧が印加されている。なお、電池電圧検出回路13をレギュレータにより構成する場合には、該電池電圧検出回路13の出力電圧を保持コイル用電流経路16に印加させることもできる。
また、元ガス電磁弁6の吸着コイル61及び保持コイル62の正負極性が第1実施形態とは逆極性となされており、これらコイル61,62の負極側の電流経路31は共用とされて、該負極側電流経路31は電池9の負極端子に接続されているとともに、負極側電流経路31の途中には、FETなどのスイッチング素子Q4からなる電流調節回路部が設けられている。また、保持コイル用電流経路16の途中には電流制限抵抗R3が設けられており、図示例では保持コイル62の正極側に直列に接続されている。各電流経路15,16を開閉するスイッチング素子Q1,Q2は、それぞれ各コイル61,62の正極側で電流経路15,16の途中に設けられており、各スイッチング素子Q1,Q2の負極側とコイル61,62の負極側との間には環流ダイオードD1,D2がそれぞれ設けられている。この環流ダイオードD1,D2は、電流調節回路部を構成するスイッチング素子Q4(請求項4の第3のスイッチング素子)をパルス駆動する際にコイル電流によって大きなサージ電圧が生じることを防止するために設けられる。
保持コイル抵抗値検出信号としては、電流制限抵抗R3と保持コイル62との間の電流経路の電圧値を参照して、マイクロプロセッサ11の保持コイル抵抗値検出信号入力ポートINに入力させており、この検出電圧値をVr、レギュレータ30の出力電圧をVpとすると、保持コイル62の抵抗値=R3×Vr/(Vp−Vr)で求めることができる。
マイクロプロセッサ11は、吸着コイル61の駆動を停止した後、保持コイル62の抵抗値に応じたデューティ比の駆動パルス信号でスイッチング素子Q4をパルス駆動することにより、保持コイル62を流れる電流を必要駆動電流以上に維持して元ガス電磁弁6を開弁状態で保持するとともに、保持コイル62を流れる電流をできる限り小さくすることによって消費電力の節減を図るよう制御構成されている。すなわち、スイッチング素子Q4がオンしている期間は保持コイル62を流れる電流は増加していき、スイッチング素子Q4がオフしている期間は保持コイル62を流れる電流は減少していく。したがって、駆動パルスの周期並びにデューティ比を適切に設定することによって、保持コイル62を流れる電流を制御できる。
駆動パルスのデューティ比は、予め試験によって保持コイル62の抵抗値に応じて定めておくことができ、マイクロプロセッサ11に設けられた不揮発性メモリに抵抗値とデューティ比との対応関係を示すテーブルの形態で記憶されていてもよいし、数式の形態で記憶しておいて検出された抵抗値に基づいて随時算出するように構成することもできる。
図2に示す例ではレギュレータ30の出力を保持コイル62の電源として用いたが、電池電圧を保持コイル62の電源として用いることもできる。この場合、電池電圧の降下によって上記駆動パルスのデューティ比の最適値が変化するため、保持コイル62の抵抗値と電池電圧とに応じて駆動パルスの周期並びにデューティ比を決定するよう制御構成して、電池電圧が低下するほど駆動パルスのデューティ比を大きくするとともに、保持コイル62の抵抗値が増加するほど駆動パルスのデューティ比を大きくすることができる。
なお、駆動パルスの生成は、パルス周期が固定でオン時間を保持コイル62の抵抗値に応じて変更するものであってもよく(PWM制御)、オン時間が固定でオフ時間を保持コイル62の抵抗値に応じて変更するか、或いはオフ時間が固定でオン時間を保持コイル62の抵抗値に応じて変更するものであってもよい(PFM制御)。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更できる。例えば、本発明は、電池式ガスコンロなど、電池を電源とする適宜のガス燃焼機器に適用できる。また、電流調節回路部はその他適宜の構成とすることができ、例えば、図3に示すように、第1の分岐経路18には電流制限抵抗を設けずにスイッチング素子Q3のみを設け、第2の分岐経路19には電流制限抵抗として機能するダイオードD3を設け、この分岐経路19をもスイッチング素子Q5(請求項3の第2のスイッチング素子)によって開閉可能に構成することができる。そして、マイクロプロセッサ11を、スイッチング素子Q3,Q5オン/オフを保持コイル62の検出抵抗値に応じてそれぞれ切替制御するべく、各スイッチング素子Q3,Q5に対応する制御信号出力ポートOUT3,OUT4から制御信号を出力するよう構成できる。かかる構成では、第1の分岐経路18は実質的に無抵抗である一方、第2の分岐経路19はダイオードD3による降圧分の抵抗値が存在することとなる。すなわち、電源電圧をダイオードD3によって0.6V降圧させるか否かをスイッチング素子Q3,Q5のいずれかをオンにすることで選択的に切り替えることができ、保持コイル62の抵抗値に応じて、コイル電流を抑えたいときにはダイオードD3を介して電源電圧を保持コイル62に印加し、コイル電流を増加させたいときにはダイオードD3を介さずに電源電圧を保持コイル62に印加することができる。
また、上記実施形態ではマイクロプロセッサによって電流調節回路部の動作制御を行う例を示したが、図4に示すように、電流調節回路部17の動作制御は、比較器40(制御部)を用いて行わせることもできる。この場合でも、保持コイル62の抵抗値に応じて一義的に定まる保持コイル抵抗値検出信号と、電源電圧(本実施例の場合はレギュレータ出力電圧が好ましい。)を分圧してなる基準信号との比較によって、保持コイル62の抵抗値が所定値以上まで増加したか否かを判定して、この判定結果に応じてスイッチング素子Q3をオン/オフ切替制御することによって保持コイル62を流れる電流の大きさを適切に制御できる。