JP2017065102A - 光触媒塗装体 - Google Patents

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浩輔 高見
寛之 藤井
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Abstract

【課題】 変色度合いのばらつきが抑制された、良好な外観を有する光触媒塗装体の提供。【解決手段】第1領域及び第2領域を有する基材と、第1領域及び第2領域の上に設けられた表面層とを備えてなる光触媒塗装体。第1領域は第1の水分吸収特性を有し、第2領域は第1の水分吸収特性とは異なる第2の水分吸収特性を有する。表面層は、第1膜と第1膜と基材との間に設けられた第2膜とを含み、第1膜は光触媒粒子と2価銅化合物とを含み、前記第2膜は第1膜への水分の浸入を抑制可能なものである。光触媒塗装体の表面に4μLの水を滴下した場合、滴下直後の表面上の水量V0と滴下から5分経過後の表面上の水量V1との差を、光触媒塗装体の吸水量ΔV0−1としたときに、光触媒塗装体の第1領域に対応する表面の吸水量ΔV0−1aと、第2領域に対応する表面の吸水量ΔV0−1bの標準偏差が2μL以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、変色程度のばらつきが抑制された、良好な外観を有する光触媒塗装体に関する。
酸化チタン(TiO)を用いた光触媒は、安価で化学的安定性に優れ、高い光触媒活性(有機化合物分解性、抗菌性等)を有し、人体に無害であること等により広く用いられている。
酸化チタンに銅化合物を担持させ又は混合したものは、優れた光触媒作用又は抗ウイルス作用を有することが知られている。
特開2011−153163号公報(特許文献1)には、酸化第一銅(CuO)などの1価銅化合物と、光触媒とを含むウイルス不活化剤が開示されている。また、特開平02−006333号公報(特許文献2)には、酸化チタン粒子の表面に銅などの抗菌性金属が担持されてなる抗菌性粉末が開示されている。
酸化チタンと金属銅又は銅化合物との組合せにおいて、酸化チタンの結晶型に着目し、酸化チタンとしてアナターゼ型酸化チタンを用いることにより抗ウイルス性能を向上させることが提案されている。
特開2006−232729号公報(特許文献3)には、CuO/TiO(質量%比)=1.0〜3.5の範囲で銅を含有するアナターゼ型酸化チタンが、紫外線照射下でファージ・ウイルスを不活性化させることが記載されている。また、特許文献2には、このような酸化チタンと塗料用バインダーとを含む水溶性塗料が記載されている。
特定の結晶型(ルチル型)かつ特定の結晶性の酸化チタンと2価銅化合物とを用いて、暗所下および可視光下双方において高い抗ウイルス性能が発現されることが報告されている。
特許第5343176号公報(特許文献4)には、2価銅化合物と最も強い回折ピークの半値全幅が0.65度以下のルチル型酸化チタンの組み合わせにおいて、暗所下および可視光下双方において優れた抗ウイルス性が発現されることが記載されている。
一方、光触媒を含むコーティング組成物を塗装する基材としては、石膏ボード、スレート、コンクリート、モルタル、金属、パテなどに代表される建築部材が一般的に選択される。また、室内施工においては、内装部材として石膏ボードやスレートが適用されるケースが多いが、通常の内装壁面は基材と基材の継ぎ目部分に隙間が生じるため、この隙間を埋める目的でパテ面を設けたり、補強などの意味合いで異なる複数の部材を組み合わせて壁面を構成する場合がある。つまり、実環境下においては、光触媒を含むコーティング組成物を、スレート、石膏ボード、パテなどから選択される2種以上の部材をその構成領域として含む基材全面に塗装して光触媒塗装体を作製することが想定される。
特開2011−153163号公報 特開平02−006333号公報 特開2006−232729号公報 特許第5343176号公報
本発明者らの行った実験によれば、水酸化銅等の2価銅化合物が担持された可視光応答型光触媒粒子を含んでなる光触媒塗装体に可視光を照射すると、光触媒塗装体の表面の色が時間の経過とともに変化するという現象が見出された。具体的には、銅化合物の変質によって光触媒塗装体の表面が変色することを見出した。また、この変色現象において、CuOH等の2価銅化合物が担持された可視光応答型光触媒粒子を含むコーティング組成物を塗装する基材の種類によって変色程度が異なるという特徴があることを見出した。つまり、内装用建築部材として使用されるスレート、石膏ボード、パテなど、2種以上の部材をその構成領域として含む基材上に、水酸化銅等の2価銅化合物が担持された可視光応答型光触媒粒子を含んでなる光触媒層が設けられた光触媒塗装体に可視光を照射すると、光触媒塗装体の表面の変色程度にばらつきが生じ、塗装外観不良として認識されることを見出した。さらに、空気中に含まれる水分量が多い場合、光触媒塗装体の表面の変色が促進される傾向にあることを見出した。
本発明者らは、今般、光触媒塗装体の表面の変色程度にばらつきが生じる一因として、基材の各領域の水分(例えば、空気中に含まれる水分子に由来する)吸収特性が異なる点に着目した。また、光触媒塗装体が空気中に含まれる水分を多く吸収する場合、光触媒塗装体表面の変色が促進され、あるいは変色程度のばらつきが大きくなる傾向にあるため、基材の水分吸収特性が光触媒塗装体表面の変色現象に寄与していると考えた。そして、水分吸収特性の異なる複数の領域を含む基材と、光触媒層との間に、特定の性質を有する膜を設けることにより、光触媒塗装体を、基材の複数の領域ごとに対応した複数の領域(積層体)に分けた場合において、積層体ごとの吸水量のばらつき(標準偏差)を特定の範囲に制御することができ、その結果、光触媒塗装体表面における変色程度のばらつきが抑制された、良好な外観を有する光触媒塗装体を得ることができるとの知見を得た。本発明は斯かる知見に基づくものである。
従って、本発明は、表面の変色程度のばらつきが抑制された、良好な外観を有する光触媒塗装体の提供をその目的としている。
そして、本発明による光触媒塗装体は、
第1領域及び第2領域を有する基材と、前記第1領域及び前記第2領域の上に設けられた表面層と、を少なくとも備えてなる光触媒塗装体であって、
前記第1領域は、第1の水分吸収特性を有し、前記第2領域は、前記第1の水分吸収特性とは異なる第2の水分吸収特性を有し、
前記表面層は、第1膜と、前記第1膜と前記基材との間に設けられた第2膜と、を含み、
前記第1膜は、光触媒粒子と、2価銅化合物とを含んでなり、
前記第2膜は、第1膜への水分の浸入を抑制可能なものであり、
前記光触媒塗装体の表面に4μLの水を滴下した場合において、滴下直後の当該表面上の水量Vと滴下から5分経過後の当該表面上の水量Vとの差を、前記光触媒塗装体の吸水量ΔV0−1としたときに、前記光触媒塗装体の前記第1領域に対応する表面の吸水量ΔV0−1aと、前記第2領域に対応する表面の吸水量ΔV0−1bの標準偏差が2μL以下であることを特徴とするものである。
本発明によれば、可視光の照射による経時的な変色程度のばらつきが抑制された、良好な外観を有する光触媒塗装体が得られる。
本発明による光触媒塗装体の模式断面図である。 光触媒塗装体1〜6に含まれる3つの領域(a、b、c)それぞれの表面の吸水量、その標準偏差をプロットした図である。 光触媒塗装体1〜3に含まれる3つの領域(a、b、c)それぞれの表面のΔEab、その標準偏差をプロットした図である。 光触媒塗装体4〜6に含まれる3つの領域(a、b、c)それぞれの表面のΔEab、その標準偏差をプロットした図である。 光触媒塗装体1〜6のΔEmax−ΔEminを表す棒グラフである。 光触媒塗装体1〜6の吸水量の標準偏差(横軸)に対する、色差ΔEabの標準偏差(縦軸)を示した図である。 光触媒塗装体1〜6に含まれる3つの領域(a、b、c)それぞれの吸水量(横軸)に対する、接触角を示した図である。
光触媒塗装体
例えば図1に示すように、本発明による光触媒塗装体50は、基材70と、表面層40とを備えてなる。基材70は、第1領域70a及び第2領域70bを少なくとも有している。表面層40は、基材70の上に設けられている。すなわち、表面層40は、基材70が有する第1領域70a及び第2領域70b双方の上に設けられている。表面層40は、第1膜10と、第2膜20と、を含む。第2膜20は、基材70と第1膜10との間に設けられてなる。
本発明において、基材70から表面層40に向かう方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向に対して垂直な方向をX軸方向とし、Z軸方向及びX軸方向の両方に垂直な方向をY軸方向とする。第1領域70a及び第2領域70bは、それぞれ基材70のX−Y平面内に存在している。光触媒塗装体50においては、基材70、第2膜20、および第1膜10が、この順にZ軸方向に沿って配置されている。第1膜10及び第2膜20は、それぞれ、基材70の第1領域70a及び第2領域70bの双方の上に設けられる。
基材
基材70は、その表面に第1膜10を形成可能な材料であればよい。本発明において、基材70は、例えば図1に示すように、第1領域70a及び第2領域70bを少なくとも含む複数の領域を有してなる。この例では、基材70は、第3領域70cをさらに含んでなる。第1領域70a〜第3領域70cは互いに異なる水分吸収特性を有する。第1領域70aは、第1の水分吸収特性を有する。第2領域70bは、第2の水分吸収特性を有する。第3領域70cは、第3の水分吸収特性を有する。水分吸収特性の異なる複数の領域それぞれを構成する材料は、例えば、無機材料、有機材料を問わず種々の材料である。より具体的には、繊維強化セメント板、石膏ボード、スレート、コンクリート部材、壁紙、繊維、金属、セラミックおよびガラス等の一般的な部材、並びにパテ等のシール材が挙げられる。図1では、第1領域70aは、スレートからなり、第2領域70bは、石膏ボードからなり、第3領域70cはパテにより構成される。なお、パテは、一般に、石膏ボードまたはスレートと比べて吸水性能が低い。
第1膜
第1膜10は、光触媒粒子と、2価銅化合物とを含んでなる。
<光触媒粒子>
本発明において、光触媒粒子は、好ましくは可視光応答型光触媒粒子である。可視光応答型光触媒粒子は、可視光照射により起こる光触媒反応によって有機物を分解する活性酸素種(・O 、・O、・OH、H及び・HO等)を生成するもの、または、可視光照射により起こる光励起によって価電子帯に生じる正孔(ホール)が有機物から電子を奪い取ることができるものであれば特に限定されない。
本発明において、光触媒粒子は好ましくは酸化チタンである。この酸化チタンは、ゾル状および粒子状のいずれの形態のものを用いても良い。
<2価銅化合物>
本発明において、「2価銅化合物」とは、2価の銅の、酸化物、硫化物、または水酸化物を含む。具体的には、Cu(OH)b(ただし、1<a+b≦2である。Xは、陰イオンであり、好ましくはCl、Br等のハロゲン、(SO1/2、NO、CHCOO、OHより選択される少なくとも一種である。Xは、より好ましくは(SO1/2である)で表される水酸基を有する2価銅化合物、CuO、CuS(ただし、1≦x≦2)で表される酸化銅や硫化銅などが挙げられる。
第1膜は、2価銅化合物と光触媒粒子とを含んでいるため、明所および暗所における抗ウイルス性、明所における有機化合物分解性、および可視光応答性が十分に発現される。2価銅化合物は、1価銅化合物と比べて酸化等による変色が少ないため、可視光の照射による光触媒塗装体の変色が抑制される。
本発明の好ましい態様によれば、2価銅化合物は、水酸基を有する2価銅化合物である。例えば、一般式Cu(OH)Xおよび/または一般式Cu(OH)(式中、Xは、陰イオンであり、好ましくはCl、Br等のハロゲン、(SO1/2、NO、CHCOO、OHより選択される少なくとも一種である)で示される銅化合物を用いることができる。これにより、第1膜の変色を抑制することができ、良好な外観を有する光触媒塗装体を得ることができる。
その他の銅化合物
本発明において、第1膜は、本発明の目的を達成することが可能な範囲で、2価銅化合物以外のその他の銅化合物をさらに含んでもよい。つまり、その他の銅化合物は、第1膜中で、銅の効果(抗ウイルス性など)を発揮し、かつ変色抑制効果を有する銅化合物である。その他の銅化合物としては、0価、1価及び/又は2価の銅を含む化合物が挙げられ、より好ましい銅化合物は酸化銅である。
従って、本発明のより好ましい態様によれば、第1膜は、2価銅化合物と、酸化銅とを含んでなる。これにより、2価銅化合物のみを含む場合に比べて、抗ウイルス性に優れ、第1膜の表面の変色をさらに抑制することができ、外観がさらに良好な光触媒塗装体を得ることができる。酸化銅の好ましい具体例としては、CuO(ただし、1≦x≦2)で表される酸化銅であり、例えばCuO(酸化銅(II))、等が挙げられる。
本発明において、光触媒粒子および2価銅化合物の第1膜における存在形態としては、両者が混合した状態で存在していてもよいし、2価銅化合物が光触媒粒子に担持された状態で存在していてもよい。本発明の好ましい態様によれば、2価銅化合物は光触媒粒子に担持されている。2価銅化合物と光触媒粒子とが接していることにより、可視光応答性、すなわち光触媒活性が高められる。また、第1膜の表面の変色をより抑制することができ、抗菌、抗ウイルス性能を安定的に発現することができる。
本発明において、光触媒粒子と2価銅化合物とが混合された材料、2価銅化合物が光触媒粒子に担持された材料として、例えば、特許第5343176号、特許第5537858号に記載の可視光応答型光触媒材料を好適に用いることができる。また、特許第3885825号等に記載のアニオンドープ型の可視光応答型光触媒粒子に銅化合物が担持された材料を好適に用いることができる。
<有色顔料>
本発明の好ましい態様によれば、光触媒塗装体が備えてなる第1膜は有色顔料をさらに含んでなる。第1膜が着色顔料を含むことにより、光触媒塗装体表面の白色化を低減することができる。本発明において、「有色顔料」とは、凡そ450nm〜570nmの波長領域の光を吸収可能な顔料を意味し、CIELAB表色系において定義される知覚色度指数aおよびbがいずれもゼロ(すなわち、彩度(c)がゼロ)でなく、かつ明度Lを有するいわゆる有彩色顔料、および彩度(c)がゼロであるが明度を有するいわゆる黒に代表される無彩色顔料双方を包含するものである。なお、本発明において、光触媒粒子、少なくとも1種の2価銅化合物は、有色顔料には含まれない。
作用機序
第1膜に含まれる有色顔料は、第1膜に照射される可視光の一部を吸収する。換言すると、第1膜に含まれる光触媒粒子および少なくとも1種の2価銅化合物には、照射される可視光のうち有色顔料に吸収された以外の残りの可視光が到達する。これを2価銅化合物の立場からみると、有色顔料は2価銅化合物へ到達する可視光の量を抑えることを可能としている。その結果、人間の目によって白色化と視認されないレベルまで変色を抑制することが可能となる。他方、光触媒粒子の立場からみると、有色顔料は光触媒粒子に到達する可視光の量を減少させるが、残りの可視光は、光触媒粒子の光触媒活性、すなわち抗菌活性および抗ウイルス活性を依然良好なレベルに維持することを可能とする。つまり、光触媒粒子および少なくとも1種の2価銅化合物に加えて第1膜に有色顔料をさらに含ませることにより、可視光の照射により本来的に誘発される負の現象である白色化を抑制するとともに、正の現象である光触媒活性の低減を抑制することができる。その結果、良好な外観を有し、良好な光触媒活性が維持された光触媒層を含む光触媒塗装体を得ることができる。
本発明において、有色顔料としては、無機顔料および有機顔料のいずれも好適に利用することができる。黄色顔料の具体例としては、黄色酸化鉄、硫化亜鉛、黄鉛、亜鉛黄(亜鉛黄1種、亜鉛黄2種)、カドミウム黄、ニッケルチタン黄、ストロンチウム黄などの無機顔料、ファストイエロー、イソインドリノン、イソインドリン、アゾメチン、アントラキノン、アントロン、キサンテンなどの有機顔料などが挙げられる。黒色顔料の具体例としては、可視光の波長領域(380〜750nm)の光を概ね吸収可能な顔料が挙げられる。より具体的には、カーボンブラック、鉄黒、セレン化合物などが挙げられる。茶色顔料の具体例としては、アンバー、シェンナなどが挙げられる。
本発明において、有色顔料は、金属酸化物粒子の水分散体であることが好ましい。これにより、有色顔料を光触媒コーティング組成物中に均一に分散させることができる。その結果、有色顔料が均一に分散された光触媒塗装体を作製することができる。また、耐光性の制御に有効な波長の光を吸収可能な有色顔料粒子を、可視光応答型光触媒粒子とともに均一に分散させることができる。その結果、有色顔料として金属酸化物粒子の水分散体を用いることにより、本発明において好ましい添加量の範囲においてはとりわけ、可視光を効果的に利用することができる。金属酸化物粒子の具体例としては、黄色水和酸化鉄、鉄・マンガン複合酸化物、酸化鉄などが挙げられる。
<任意成分>
本発明において、第1膜は、本発明の目的を達成可能な範囲内において、上記以外に任意成分を含有していてもよい。任意成分としては、体質顔料、艶消し材、防腐剤などが挙げられる。
第2膜
第2膜20は、第1膜10への水分の浸入を抑制可能なものである。基材70と第1膜10の間に第2膜20を設けることにより、基材70が有する複数の領域ごとの異なる水分吸収特性の差を小さくすることができる。また、基材70の領域ごとの異なる水分吸収特性の影響を受けて、基材70の各領域に対応する光触媒塗装体50の各表面において水分のひきつけ度合いに差が生じることを抑制することができる。第2膜20の材料としては、吸水性能が低いものや、緻密な膜を形成可能なものが好ましい。吸水性能が低い材料として、一般的な下塗剤として知られている材料のうち、低い吸水性能を発現できるものを用いることができる。より好ましくは、外装用の下塗材や、内装用の下塗材を用いることができる。さらにより好ましくは、耐水性が高い外装用の下塗材を用いることができる。内装用の下塗材であっても、外装用の下塗材と同程度の高い耐水性を有する下塗材を用いることができる。主に内装に用いられる下塗材の好ましい例として、熱可塑性合成樹脂シーラーなどの合成樹脂エマルション系シーラーが挙げられる。主に外装に用いられる下塗材の好ましい例として、エポキシ変性アクリル樹脂エマルションシーラーなどのカチオン系エポキシシーラーが挙げられる。また、ノニオン性エポキシシーラー、アニオン性エポキシシーラーであっても、第2膜20の性質を発現できるものであれば用いることができる。
光触媒塗装体の吸水量
基材70と第1膜10との間に設けられた第2膜20を有する光触媒塗装体50においては、室温環境下で、マイクロシリンジを用いて、光触媒塗装体50の表面に4μLの蒸留水を滴下した場合において、滴下直後の当該表面上の水量Vと滴下から5分経過後の当該表面上の水量Vとの差を、光触媒塗装体50の吸水量ΔV0−1としたときに、光触媒塗装体50の第1領域70aに対応する表面の吸水量ΔV0−1aと、第2領域70bに対応する表面の吸水量ΔV0−1bと、の標準偏差が2μL以下である。
ここで、第1領域70aと第2領域70bとは、隣接して設けられている。本明細書において、隣接とは、隣り合い、かつ少なくとも一部が接している状態をいう。すなわち、光触媒塗装体50において、隣接する2つの領域(例えば、後述の50a、50b)の吸水量のばらつきを所定値以下に小さくすることで、変色のばらつきが視認されにくくなり、外観不良の発生を抑制できることを本発明者らは見出した。
本発明において、基材が第3領域70cをさらに有しており、光触媒塗装体50において、3つの領域(例えば、後述の50a、50b、50c)の吸水量のばらつきが所定値以下に小さいことがさらに好ましい。それによって、光触媒塗装体50の全体にわたって変色のばらつきを小さくすることができる。
図1を参照して説明すると、基材70に含まれる第1領域70a〜第3領域70cのそれぞれと、第2膜20と、第1膜10とは、Z軸方向にこの順に設けられてなる。光触媒塗装体50は、基材70の第1領域70aと第2膜20と第1膜10とから構成される領域50a、基材70の第2領域70bと第2膜20と第1膜10とから構成される領域50b、および基材70の第3領域70cと第2膜20と第1膜10とから構成される領域50cを少なくとも有する。すなわち、第1膜10及び第2膜20は、基材70の第1領域70a〜第3領域70cのそれぞれの上に設けられている。基材70の第1領域70a及び第2領域70bに対応する光触媒塗装体50の領域50aおよび50bそれぞれの表面の吸水量の標準偏差を2μL以下にすることにより、基材70の第1領域70aと第2領域70bの吸水特性が異なる場合であっても、第1膜10の変色(白色化)度合いのばらつきを小さくでき、外観不良の程度を低減することができる。また、第1領域70a〜第3領域70cに対応する光触媒塗装体50の領域50a〜50cそれぞれの表面の吸水量の標準偏差を2μL以下にすることがさらに好ましい。
上記特性を有する第2膜20を、水分の吸収特性の異なる複数の領域(例えば、第1領域70a〜第3領域70c)の上に設け、さらにその上に光触媒粒子および2価銅化合物を含んでなる第1膜10を設けることにより、例えば、第1膜10に水分が浸入することが抑制される。また、基材の上に形成される第1膜は一般に薄いため、基材70の第1領域70a〜第3領域70cの吸水程度の影響を受けて、光触媒塗装体50の対応領域50a〜50cの表面への水分の浸入量が変わる。しかし、第2膜20を設けることにより、基材70の第1領域70a〜第3領域70cの吸水程度のばらつきを小さくすることができ、その結果、光触媒塗装体50の対応領域50a〜50cの表面の吸水程度にばらつきが生じることを抑制することができる。そのため、第1膜10が変色し、その変色の程度が基材70の各領域に応じてばらつき外観不良となることが抑制される。
また、例えば、基材70において、第2領域70bが第1領域70aよりも多孔質な場合において、第1膜10を第1領域70a及び第2領域70bの上に直接形成した場合、第2領域70bの上に設けられた第1膜10の構造は、第1領域70aの上に設けられた第1膜10の構造よりも多孔質になる。そのため、第1膜の吸水量が、基材70の各領域に応じて変化し、これば変色のばらつきとなることを見出した。基材70と第1膜10との間に第2膜20を設けることで、例えば、第1領域70aと第2領域70bとのうちいずれか一方がより多孔質であっても、第1膜10の構造が基材の構造の影響を受けて、多孔質に変化することを抑制できる。そのため、第1膜10において吸水量がばらつくことが抑制され、第1膜10において変色の程度にばらつきが生じることを抑制できる。
また、第2膜20を基材70と第1膜10との間に設けることにより、光触媒塗装体50を構成する複数の領域のそれぞれの吸水量をいずれも1μL以下にすることが好ましい。図1を参照して説明すると、光触媒塗装体50の領域50a、50bおよび50cのそれぞれの吸水量をいずれも1μL以下にする。これにより、基材70が異なる吸水特性等を有する複数の領域を含んでいても、基材70に含まれる複数の領域ごとの吸水特性の影響を受けて、第1膜に浸入する水分量のばらつきに起因して、第1膜の変色(白色化)度合いにばらつきが生じることを抑制でき、外観不良の程度を低減することができる。
光触媒塗装体の耐光性
本発明の好ましい態様によれば、第2膜20を基材70と第1膜10との間に設けることにより、光触媒塗装体50を構成する複数の領域(例えば、図1における50a、50bおよび50c)それぞれの、色差ΔEabの標準偏差は1.5以下である。色差ΔEabは、例えば、光照射前と、相対湿度90%RHに制御した環境試験室内で20Wの白色蛍光灯を光源として照度7000ルクスで7日間光照射した後の、色彩値の変化から算出される。これにより、光触媒塗装体50を構成する各領域(50a、50bおよび50c)それぞれの耐光性(変色)にばらつきがない、すなわち各領域に変色自体は起こるが、その変色の程度が一様であり、変色ムラとしては視認されない、良好な外観を有する光触媒塗装体を得ることができる。本発明者らは、後述する実験により、光触媒塗装体50において、変色ムラがないことと、変色度合いのばらつきがないことが技術的に連関していることを確認している。つまり、光触媒塗装体の色差ΔEabの標準偏差が1.5以下に制御されているとき、光触媒塗装体50の表面の変色度合いのばらつきは視認され難い。色差ΔEabの測定方法について、詳細は後述する。
本発明の好ましい態様によれば、色差ΔEabの最大値と最小値との差(ΔEmax−ΔEmin)は0.5以下である。これにより、光触媒塗装体50を構成する各領域(50a、50bおよび50c)それぞれの耐光性(変色)にばらつきがない、すなわち変色ムラのない良好な外観を有する光触媒塗装体を得ることができる。つまり、光触媒塗装体のΔEmax−ΔEminが0.5以下に制御されているとき、光触媒塗装体50の表面の変色度合いのばらつきはほとんど視認されず、良好な外観が提供される。
光触媒塗装体の接触角
本発明の好ましい態様によれば、光触媒塗装体50のうち、基材70の第1領域70a〜第3領域70cに対応する領域(例えば、図1における50a、50bおよび50c)それぞれの表面において、接触角はいずれも100°以上である。光触媒塗装体50の表面の接触角が100°以上の大きい値を有することにより、光触媒塗装体50内部への水分の浸入を抑制することができる。これにより、光触媒塗装体50の表面の変色度合いのばらつきを抑制することができる。接触角は、室温にて、接触角計(例えば、協和界面科学製CA-X150)を用いて、光触媒塗装体50の表面に4μLの水を滴下し、30秒静止後の接触角をθ/2法で算出することができる。
光触媒塗装体の用途
本発明による光触媒塗装体50は、内装に用いることが好ましい。
光触媒塗装体の製造方法
<基材の用意>
本発明による光触媒塗装体50の製造方法にあっては、まず基材70を用意する。基材70についての詳細は既に説明したとおりである。本発明において、必要に応じて基材70の洗浄等の前処理を行ってもよい。
<第2膜の形成>
本発明による光触媒塗装体50の製造方法にあっては、次いで、基材70の表面に第2膜20形成用コーティング組成物を適用して液膜を形成する。ここで、「液膜」とは、基材70表面に濡れ広がったコーティング組成物からなる膜であり、適用した直後の状態から乾燥する前の状態であるものを意味する。次いで、この液膜を適宜乾燥させて第2膜20を形成する。
(第2膜形成用コーティング組成物)
本発明において、第2膜形成用コーティング組成物は、第1膜10への水分の浸入を抑制可能な第2膜20を形成可能なものを好適に用いることができる。なお、第1膜10への水分の浸入を抑制可能な材料についての詳細は、以下の説明を除き、既に説明したとおりである。
任意成分
第2膜形成用コーティング組成物は、本発明の目的を達成可能な範囲内において、上記以外に任意成分を含有してもよい。任意成分としては、防腐剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、増粘剤などが挙げられる。
<第1膜の形成>
本発明による光触媒塗装体50の製造方法にあっては、次いで、第2膜20の表面に第1膜形成用コーティング組成物を適用して液膜を形成する。次いで、この液膜を適宜乾燥させて第一膜10を形成する。
(第1膜形成用コーティング組成物)
本発明において、第1膜形成用コーティング組成物は、光触媒粒子と2価銅化合物とを含む。第1膜形成用コーティング組成物は、有色顔料と、バインダーと、分散媒とをさらに含むことが好ましい。なお、光触媒粒子、2価銅化合物、および有色顔料についての詳細は、以下の説明を除き、既に説明したとおりである。
第1膜形成用コーティング組成物に含まれる有色顔料の含有率は、第1膜形成用コーティング組成物の全体に対して0.2質量%を超え3.0質量%未満であることが好ましい。第1膜形成用コーティング組成物に含まれる有色顔料の含有率がこの範囲にあることにより、光触媒粒子の光触媒活性による抗菌性能および抗ウイルス性能を大きく低減させることなく良好なレベルに維持したまま、2価銅化合物の変質を抑制して、経時的な変色が抑制された第1膜を得ることができる。第1膜形成用コーティング組成物が有色顔料を複数種含む場合は、複数の有色顔料の合計量を意味する。
本発明において、光触媒粒子および2価銅化合物の第1膜形成用コーティング組成物における存在形態としては、両者が混合した状態で存在していてもよいし、2価銅化合物が光触媒粒子に担持された状態で存在していてもよい。本発明の好ましい態様によれば、2価銅化合物は光触媒粒子に担持されている。2価銅化合物と光触媒粒子とが接していることにより、可視光応答型光触媒粒子は可視光応答性、すなわち光触媒活性が高められる。
バインダー(結着剤)
第1膜形成用コーティング組成物はバインダーを含んでもよい。バインダーにより、光触媒粒子と2価銅化合物を第2膜20の表面に固定化することができる。バインダーは、有機系バインダー及び無機系バインダーのいずれも用いることができる。無機系バインダーには、例えば、シリカ微粒子、アルカリシリケート、アルキルシリケートなどのシリカ系バインダー等が挙げられる。これにより、光触媒粒子と2価銅化合物が基材表面に付着される。有機系バインダーには、例えば、高分子バインダー等が挙げられる。高分子バインダーは反応硬化及び溶媒揮発して高分子分散体が融着することにより薄膜を形成することができる。
高分子バインダーには、天然樹脂及び合成樹脂のいずれも使用することができる。合成樹脂には、例えば、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂等が挙げられる。さらに、これらの樹脂をシリコーン変性、あるいはハロゲン変性させた樹脂を用いることも、シリコーン樹脂を用いることもできる。これらのうち、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、及びフッ素樹脂より選択される少なくとも一種がバインダーとして好適に利用できる。本発明のより好ましい態様によれば、バインダーは、これらの樹脂がエマルション等に分散体の形態で配合され、光触媒コーティング組成物中に存在する。
バインダーの添加量は適宜決定されて良いが、第1膜形成用コーティング組成物の固形分総量に対して10質量%以上65質量%以下程度が好ましい。下限量は、より好ましくは20質量%以上、さらにより好ましくは30質量%以上である。上限量は、より好ましくは55質量%以下、さらにより好ましくは45質量%以下である。このような量とすることで、第1膜の機械的強度を保持しながら、適度に光触媒を露出させることが可能となり、明所及び暗所で優れた抗菌性、抗ウイルス性を発揮させることができる。
分散媒
第1膜形成用コーティング組成物は分散媒を含んでもよい。分散媒としては、水性媒体を用いることが好ましい。このような水性媒体としては、水、水と混合可能な有機溶剤(例えば、アルコール)、又はそれらの混合溶媒が好適に用いられ、より好ましい水性媒体は、水である。分散媒の量は適宜決定されてよいが、第1膜形成用コーティング組成物において、固形分濃度が30質量%以上80質量%以下となるように添加されることが好ましく、40質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。固形分濃度がこの範囲にあることで、第1膜形成用コーティング組成物としての安定性が得られ、場合によっては、光触媒塗装体50の隠蔽性を確保できるとの利点も得られる。
任意成分
第1膜形成用コーティング組成物は、本発明の目的を達成可能な範囲内において、上記以外に任意成分を含有してもよい。任意成分としては、体質顔料、艶消し材、防腐剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、増粘剤などが挙げられる。
第1膜形成用コーティング組成物、第2膜形成用コーティング組成物の基材70への適用は、刷毛塗り、ローラー塗布、スプレーコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、ディップコーティング、流し塗り、スクリーン印刷、スポンジ等に含浸させて手塗りする等、一般に広く行われている塗布方法を利用できる。
本発明において、第1膜10の液膜、第2膜20の液膜の乾燥は、常温乾燥させてもよく、あるいは必要に応じて加熱乾燥させてもよい。乾燥温度は5℃以上500℃以下であることが好ましい。第1膜形成用コーティング組成物に含まれるバインダーとして高分子バインダーを用いる場合や、基材の少なくとも一部が樹脂成分を含む場合は、これらの耐熱温度等を考慮し、5℃以上200℃以下で乾燥させればよい。第1膜形成用コーティング組成物に含まれるバインダーとして無機バインダーを用いる場合は、基材70の耐熱温度を上限として、2価銅化合物の耐熱温度を考慮し、500℃以下で乾燥させればよい。
第1膜形成用コーティング組成物(1−1、1−2)の調製
スラリーの作製
イオン交換水50質量%、水酸基を有する2価銅化合物および酸化銅(II)を担持した酸化チタン粒子4.3質量%、白顔料43質量%、分散剤2.2質量%、および消泡剤0.2質量%を、ビーズ(φ2mm)を用いて適宜撹拌して混合液を得た。その後、この混合液をろ過し、ビーズを除去してスラリーを作製した。
コーティング組成物の調製
作製したスラリー52質量%、シリコーン樹脂29質量%、造膜助剤1.0〜2.0質量%、体質顔料3.0質量%、艶消し材0〜5.0質量%、消泡剤0〜2.0質量%、増粘剤0.5〜3.0質量%、および分散媒残部を適宜撹拌して混合液を得た。この混合液に有色顔料を添加し、混合して第1膜形成用コーティング組成物1−1を調製した。第1膜形成用コーティング組成物1−2には有色顔料を添加しなかった。表1に、組成物1−1、1−2が含む光触媒粒子および2価銅化合物、並びに有色顔料の添加の有無を示す。
Figure 2017065102
第2膜形成用コーティング組成物(2−1、2−2、2−3)
第2膜形成用コーティング組成物2−1として、カチオン系エポキシシーラーを用いた。第2膜形成用コーティング組成物2−2として、第2膜形成用コーティング組成物2−1とは異なるカチオン系エポキシシーラーを用いた。第2膜形成用コーティング組成物2−3として、合成樹脂エマルション系シーラーを用いた。表2に、組成物2−1、2−2、2−3を示す。
Figure 2017065102
光触媒塗装体(1〜6)の作製
表3に示すように、異なる3つの材料各々からなる3つの領域、すなわちスレート(第1領域70a)、石膏ボード(第2領域70b)およびパテ(第3領域70c)、を含む基材70を用意した。この基材70の表面に、第2膜形成用コーティング組成物2−1、2−2、2−3それぞれをローラーを用いて塗装した。塗着量は、それぞれ100g/mとした。そして、1日常温で養生し、3つの第2膜塗装体を作製した。次いで、3つの第2膜塗装体それぞれの表面に、第1膜形成用コーティング組成物1−1、1−2それぞれをローラーを用いて塗装した。塗着量は、それぞれ110g/mとした。1日常温で養生し、合計6つの光触媒塗装体1〜6を作製した。表4に、光触媒塗装体1〜6を構成する第2膜および第1膜を形成するために用いたコーティング組成物の組合せを示す。
Figure 2017065102
Figure 2017065102
評価
<吸水量>
室温環境下で、マイクロシリンジを用いて光触媒塗装体1〜6の表面に4μLの蒸留水を滴下した。滴下直後の光触媒塗装体表面上に形成された半楕円体の水滴形状から水量Vを、滴下から5分経過後の光触媒塗装体表面上に残存している水滴形状から水量Vを測定し、これらの差を光触媒塗装体の吸水量ΔV0−1として算出することにより、各光触媒塗装体に含まれる3つの領域(50a〜50c)それぞれの表面の吸水量を測定した。また、それらの領域の吸水量の標準偏差を算出した。これらの結果を表5、図2に示す。ここで、光触媒塗装体に含まれる3つの領域(50a〜50c)は、基材70の第1領域70a〜第3領域70cに対応する光触媒塗装体の表面を指す。なお、第1領域(スレート)、第2領域(石膏ボード)、及び第3領域(パテ)それぞれの吸水量を表5及び図2に示す。
Figure 2017065102
図2および表5に示すように、基材と第1膜との間に、カチオン系エポキシシーラー(組成物2−1及び2−2)を含む第2膜を設けた光触媒塗装体1、2、4、5では、3つの領域(a、b、c)の吸水量の標準偏差、すなわち吸水量のばらつきが凡そ1.0μLであり、吸水量のばらつきが小さいことが確認された。また、光触媒塗装体の3つの領域(a、b、c)の表面の吸水量がいずれも1μL以下であった。すなわち、光触媒塗装体の吸水量自体も小さくできることが確認された。
これに対し、合成樹脂エマルション系シーラー(組成物2−3)を含む第2膜を設けた光触媒塗装体3、6では、吸水量の標準偏差が2.0μLを超えており、変色の度合いの領域毎のばらつきが大きいことが確認された。
<耐光性評価>
気温30℃、相対湿度90%RHに制御した環境試験室内で、光触媒塗装体1〜6の表面に、20Wの白色蛍光灯(東芝ライテック(株)製、ネオラインFL20S・W)を光源として照度7000ルクスで7日間光照射した。照度は、照度計IM−5((株)トプコン製)を用いて測定した。光照射前後において、光触媒塗装体1〜6の表面の外観変化を評価した。
外観変化は、MINOLTA SPECTROPGOTOMETER CM−3600Aを用い、標準光源をD65、ターゲットマスク:MAV(8mm)、di:2°とし、正反射光を含むSCI方式で測定した。
光照射前の光触媒塗装体1〜6に含まれる3つの領域(a、b、c)それぞれの表面の色彩値をL 、a 、b とし、7日間の光照射後の光触媒塗装体1〜6に含まれる3つの領域(a、b、c)それぞれの表面の色彩値をL 、a 、b として、光照射前後における色彩値の変化ΔL、Δa、Δbを、それぞれ、ΔL=L −L 、Δa=a −a 、Δb=b −b として算出した。このように算出したΔL、Δa、Δbから、色差ΔEabを、ΔEab=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2として算出した。また、光触媒塗装体1〜6に含まれる3つの領域(a、b、c)それぞれのΔEabから、標準偏差、およびΔEmax−ΔEminを求めた。なお、ΔEabの値が小さいほど光照射による光触媒塗装体表面の変色が小さいことを意味する。標準偏差が小さいほど、各領域の変色のばらつきが小さいことを意味する。光触媒塗装体1〜6に含まれる3つの領域(a、b、c)それぞれのΔEab、その標準偏差、およびΔEmax−ΔEminを表5、図3〜5に示す。
図3〜図5及び表5に示すように、基材と第1膜との間に、カチオン系エポキシシーラーを含む第2膜を設けた光触媒塗装体1、2、4、5では、3つの領域(a、b、c)のΔEabの標準偏差がいずれも1.0より小さかった。また、ΔEmax−ΔEminがいずれも0.5以下であった。これらの光触媒塗装体においては、全体としては変色ムラが視認されず、良好な外観を有することが確認された。
これに対し、合成樹脂エマルション系シーラーを含む第2膜を設けた光触媒塗装体3、6では、3つの領域(a、b、c)のΔEabの標準偏差がいずれも1.5を超えた。すなわち、領域毎の変色のばらつきが大きかった。また、ΔEmax−ΔEminが0.5を越えて大きかった。これらの光触媒塗装体においては、変色自体も大きく、また全体として変色ムラが視認され、外観が不良であることが確認された。
また、図3に示すように、第1膜が有色顔料を含有しない光触媒塗装体1、2においては、その表面に変色が生じるものの、各領域の表面におけるΔEの標準偏差(変色のばらつき)が一様であるため、光触媒塗装体全体として変色ムラが視認されず、良好な外観を有することが確認された。一方、図4に示すように、有色顔料を含有する光触媒塗装体4、5においては、その表面の変色自体が十分に小さかった。また、各領域の表面におけるΔEの標準偏差(変色のばらつき)も小さかった。つまり、光触媒塗装体全体として変色が視認されず、また変色ムラも視認されない良好な外観を有することが確認された。
図6に、光触媒塗装体1〜6の吸水量の標準偏差(横軸)に対する、色差ΔEabの標準偏差(縦軸)を示す。耐光性評価によって、変色ムラが視認されず、良好な外観を有することが確認された光触媒塗装体1、2、4、5は、吸水量の標準偏差が1.5μLより小さく、ΔEの標準偏差が1.0より小さいことが確認された。
<接触角>
光触媒塗装体1〜6の表面に4μLの水を滴下した。30秒静止後、接触角計(協和界面科学製CA-X150)を用いて、室温にて、各光触媒塗装体に含まれる3つの領域(a、b、c)それぞれの接触角をθ/2法で算出した。結果を表5に示す。
光触媒塗装体1、2、4、5では、3つの領域(a、b、c)それぞれの接触角はいずれも100°を超えることが確認された。これに対し、光触媒塗装体3、6では、接触角が100°より小さい領域があることが確認された。
図7に、光触媒塗装体1〜6に含まれる3つの領域(a、b、c)それぞれの吸水量(横軸)と、接触角との関係を示す。図7より、吸水量と接触角との間には、相関関係があることが確認された。つまり、本発明の光触媒塗装体においては、第2膜を設けて吸水量を小さくし、かつ、塗装体の接触角を大きくすることで、変色ムラが視認されることを抑制できることが確認された。
50:光触媒塗装体
40:表面層
10:第1膜
20:第2膜
70:基材
70a:基材の第1領域(スレート)
70b:基材の第2領域(石膏ボード)
70c:基材の第3領域(パテ)

Claims (5)

  1. 第1領域及び第2領域を有する基材と、前記第1領域及び前記第2領域の上に設けられた表面層と、を少なくとも備えてなる光触媒塗装体であって、
    前記第1領域は、第1の水分吸収特性を有し、前記第2領域は、前記第1の水分吸収特性とは異なる第2の水分吸収特性を有し、
    前記表面層は、第1膜と、前記第1膜と前記基材との間に設けられた第2膜と、を含み、
    前記第1膜は、光触媒粒子と、2価銅化合物とを含んでなり、
    前記第2膜は、第1膜への水分の浸入を抑制可能なものであり、
    前記光触媒塗装体の表面に4μLの水を滴下した場合において、滴下直後の当該表面上の水量Vと滴下から5分経過後の当該表面上の水量Vとの差を、前記光触媒塗装体の吸水量ΔV0−1としたときに、前記光触媒塗装体の前記第1領域に対応する表面の吸水量ΔV0−1aと、前記第2領域に対応する表面の吸水量ΔV0−1bの標準偏差が2μL以下である、光触媒塗装体。
  2. 前記光触媒塗装体の前記第1領域に対応する表面の吸水量ΔV0−1a、及び前記光触媒塗装体の前記第2領域に対応する表面の吸水量ΔV0−1bが、いずれも1μL以下である、請求項1に記載の光触媒塗装体。
  3. 前記光触媒塗装体の前記第1領域に対応する表面の接触角、及び前記光触媒塗装体の前記第2領域に対応する表面の接触角が、いずれも100°以上である、請求項1に記載の光触媒塗装体。
  4. 前記基材は、前記第1の吸水特性及び前記第2の吸水特性のいずれとも異なる第3の吸水特性を有する第3領域をさらに有しており、
    前記表面層は、前記第3領域の上にも設けられており、
    前記吸水量ΔV0−1a、前記吸水量ΔV0−1b、及び3領域に対応する表面の吸水量ΔV0−1cの標準偏差が2μL以下である、請求項1に記載の光触媒塗装体。
  5. 前記第1膜が、有色顔料をさらに含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。

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