JP2017061712A - 優れた熱伝導率および靱性を有する熱間工具鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高レベルの靱性や熱伝導率を兼ね備えた、ダイカストやホットスタンピングなどに適用可能な金型用鋼の提供。【解決手段】 質量%で、C:0.20〜0.60%、Si:0.50%未満、Mn:0.60超〜1.50%未満、Cr:4.00%未満、2Mo+W:3.0〜13.0%未満、ただし、Mo:0.5〜5.0%、かつ、W:4.0%未満、V:1.00%未満、Nb:1.0%未満、N:0.030%未満を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、Ceq:0.20%以上、ΔC=C−Ceqとするとき、ΔC:−0.300〜0.300%、B値:0.74〜0.94であることを特徴とする優れた熱伝導率および靱性を有する熱間工具鋼。ただし、B値=(0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nb)/Ceqである。【選択図】 なし

Description

本発明は、金型用鋼に関し、特にダイカストやホットスタンピングなどの、500℃以上の熱環境下で使用される、金型用鋼に関する。
近年、ダイカスト分野において、自動車の軽量化を目的としたアルミ部品の高強度化や、生産性向上を目的とした部品成型加工ピッチの短縮化から、ダイカスト金型への機械的および熱的負荷が増大している。その結果、金型には大割れやヒートチェックといった問題が生じやすくなっている。これらの問題に対応するため、金型材料には焼入れ性や靱性の優れる材料が求められている。また、前述した生産性向上を目的とした、生産サイクルのスピードの向上に対する、要求に応えるためには、材料の特性として高い熱伝導率が必要である。これらの点に着目した従来技術や類似技術として下記の特許文献に示す技術が挙げられるが、それぞれに問題がある。
すなわち、従来の技術としては、高い機械的強度および耐摩耗性を有する鋼の偏析による粒界の不都合な影響を軽減する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この提案の鋼の偏析による不都合な影響の軽減方法は炭化物形成に影響するNに関する限定が無いために、Nが過剰に添加された場合、マトリックス中にNが多く残存し、熱伝導性が低下する問題がある。
また、焼入性、熱伝導率および軟化抵抗の確保が可能な鋼、金型用鋼、およびこれを用いた金型に係る発明、特に大断面金型に適用しうる鋼、金型用鋼およびこれを用いた金型が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、この提案の鋼はC−Ceqで示されるΔC値が本願の発明から外れるものであり、そのためにマトリックス中に残存する合金元素量が増加し、熱伝導性が低下する問題がある。
さらに、優れた熱拡散率、靱性および完全焼入性を有する熱間工具鋼で、高熱伝導率であり機械的耐久性、並びに室温および600℃を超える高温における降伏強さの高い鋼が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、この提案の鋼の実施例に示されるMn量は、いずれも0.23%以下と少ないので、焼入れ性が不足し、靱性が低下する。
同じく、優れた熱拡散率、硬度および耐摩耗性を有する熱間工具鋼が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、この提案の鋼の実施例に示されるMn量は、いずれも0.6%以下と少ないので焼入れ性が不足し、靱性が低下する。
特表2007−538154号公報 特開2009−242820号公報 特表2012−522886号公報 特表2014−508218号公報
本願の発明が解決しようとする課題は、上記した先行技術である特許文献で提案された鋼よりも、より高いレベルの靱性や熱伝導率を兼ね備えた、ダイカストやホットスタンピングなどに適用可能な金型用鋼を提供することである。
本願の上記の課題を解決するための手段で、第1の手段は、質量%で、C:0.20〜0.60%、Si:0.50%未満、Mn:0.60超〜1.50%未満、Cr:4.00%未満、2Mo+W:3.0〜13.0%未満(ただし、Mo:0.5〜5.0%、かつ、W:4.0%未満の範囲内である。)、V:1.00%未満、Nb:1.0%未満、N:0.030%未満を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ、Ceq:0.20%以上、ΔC=C−Ceqとするとき、ΔC:−0.300〜0.300%であり、B値:0.74〜0.94であることを特徴とする優れた熱伝導率および靱性を有する熱間工具鋼である。
ただし、Ceq=0.06×%Cr+0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nbであり、この場合の%元素は各元素の質量%を示し、ΔC=C−CeqにおけるCは質量%であり、さらに、Ceqは、主に添加した各元素が全て炭化物となる場合に必要なC量の目安として用いられている炭素当量であり、そこでΔCは、鋼中のCと各炭化物形成元素量との関係から、熱伝導性の向上において重要な固溶元素量について考慮した指標である。さらに、B値=(0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nb)/Ceqであり、この場合の%元素は各元素の質量%を示す。
第2の手段は、第1の手段の元素に加えて、質量%で、Ni:2.0%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ、Ceq:0.20%以上、ΔC=C−Ceqとするとき、ΔC:−0.300〜0.300%であり、B値:0.74〜0.94であることを特徴とする優れた熱伝導率および靱性を有する熱間工具鋼である。
ただし、Ceq=0.06×%Cr+0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nbであり、この場合の%元素は各元素の質量%を示し、ΔC=C−CeqにおけるCは質量%であり、さらに、Ceqは、主に添加した各元素が全て炭化物となる場合に必要なC量の目安として用いられており、そこでΔCは、鋼中のCと各炭化物形成元素量との関係から、熱伝導性の向上において重要な固溶元素量について考慮した指標である。さらに、B値=(0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nb)/Ceqであり、この場合の%元素は各元素の質量%を示す。
第1の手段および第2の手段において、高い熱伝導率を得るためには、高い焼戻し軟化抵抗性が必要である。すなわち、比較的に高い焼戻し温度を適用することによって、鋼中の炭化物形成元素を炭化物として析出させることで、基地組織中に固溶し熱伝導率を低下させる元素を減少させ、熱伝導率を上昇させる。高い焼戻し軟化抵抗性を得るためには、MoやWの元素の添加、およびこれらの元素に続いてVやNbの元素の添加が有効である。一方で、これらの元素のみを添加した場合、焼入れ性が不足し、十分な硬度が得られ難くなるばかりでなく、焼入れ時にベイナイトなどの組織が生成し、靱性が低くなる可能性がある。一方、靱性の向上には、Crなどの焼入れ性向上効果が比較的大きい元素の添加が有効である。このような状況の下で、B値は熱伝導率と靱性とを兼備するために、添加する炭化物形成元素のバランスについて考慮した式の値である。
本願の第1の手段および第2の手段の発明とすることで、従来の熱間工具鋼に比して靱性を示す衝撃値が高く、かつ熱伝導率が高いので、ダイカストやホットスタンピングなどに適用可能な金型用鋼を得ることができる。
本発明の実施の形態について記載するに先立って、本願の請求項に係る発明の熱間工具鋼の構成要素の各成分元素およびそれらの条件などの限定理由について説明する。なお、各成分元素における%は、質量%である。
C:0.20〜0.60%
Cは、焼入れ性や焼入れ焼戻し硬さを十分に確保し、炭化物を形成することで耐摩耗性や高温強度を得るための元素である。Cが0.20%より少ないと、熱間工具鋼の硬さ、高温強度、耐摩耗性が十分に得られない。一方、Cが0.60%より多いと、熱間工具鋼中の成分および炭化物の偏析を助長し、靱性を低下させる。また、熱間工具鋼の固溶C量が増加して熱伝導性を低下させる。そこで、Cは0.20〜0.60%とする。
Si:0.50%未満
Siは、焼入れ性および硬さの向上に寄与する元素である。しかし、Siが0.50%以上に多いと、熱伝導性を大きく低下させることから、できるだけ低めが望ましい。そこで、Siは0.50%未満とする。
Mn:0.60超〜1.50%未満
Mnは、0.60%以下では焼入れ性が低くなり、焼入れ時にベイナイトなどの異常組織が形成されて、靱性を低下する。一方、Mnが1.50%以上に含有されると、熱間工具鋼のマトリックスを脆化させ靱性および熱間加工性を低下させる。そこで、Mnは0.60超〜1.50%未満とする。
Cr:4.00%未満
Crは、焼入れ性を改善する元素である。しかし、Crが4.00%以上と多く含有されると、Cr系炭化物の凝集および粗大化を助長し、靱性、高温強度および軟化抵抗性を低下させる。Crが4.00%以上に含有されると、焼戻しによる2次硬化のピークがより低温側へと移行し、焼戻し後のマトリックスに、より多くの合金元素が残存し、熱伝導性を低下させる。
Mo:0.5〜5.0%
Moは、焼入れ性や焼戻し時の2次硬化、耐摩耗性、高温強度、および軟化抵抗性に寄与する元素である。また、Moは、より高い焼戻し温度で炭化物を形成しやすく、これが影響して2次硬化のピークを高温側へ移行させる元素である。そこで、高い熱伝導率を得るためには、高い焼戻し温度を適用することが望ましいが、Moが0.5%未満では高い熱伝導率は得られない。そこで、Moは0.5%以上とする必要がある。しかし、Moが5.0%より多すぎると、マトリックスに残存するMoが増加して熱伝導性を低下させる。また、Moは炭化物の凝集・粗大化を助長し、靱性を低下させる。また、Moは高価な元素であるのでコスト高になる。そこで、Moは0.5〜5.0%とする。
W:4.0%以下
Wは、Moと同様に、焼入れ性や焼戻し時の2次硬化、耐摩耗性、高温強度、および軟化抵抗性に寄与する元素であり、また、より高い焼戻し温度で炭化物を形成しやすく、これが影響して2次硬化のピークを高温側へ移行させる元素であるため、必要に応じて添加できる。そこで、高い熱伝導率を得るためには、高い焼戻し温度を適用することが望ましいが、Wが4.0%より多いと、マトリックスに残存するWが増加して熱伝導性を低下させる。Wは炭化物の凝集・粗大化を助長し、靱性を低下させる。また、Wは高価な元素であるのでコスト高になる。そこで、Wは4.0%以下とする。
2Mo+W:3.0〜13.0%未満(ただし、上記のMo:0.5〜5.0%、かつ、W:4.0%未満の範囲内である。)
MoとWは、上記したように、焼入れ性や焼戻し時の2次硬化、耐摩耗性、高温強度、軟化抵抗性に寄与する元素である。また、MoとWは、より高い焼戻し温度で炭化物を形成しやすく、これが影響して2次硬化のピークを高温側へ移行させる元素である。ところで、MoとWは高い熱伝導率を得るために高い焼戻し温度が適用できることが望ましい。しかし、上記したMo:0.5〜5.0%、かつ、W:4.0%未満の範囲内で、2Mo+Wが、3.0%より少ないと、上記した2次硬化が得られない。一方、2Mo+Wが13.0%以上であると、熱間工具鋼のマトリックスに残存するMoやWが増加し、熱伝導性を低下させる。また、2Mo+Wが13.0%以上であると、MoやW系の炭化物の凝集および粗大化を助長し、靱性を低下させる上に、高価な元素であるのでコスト高になる。特にMoはWと同等の効果を得るためには、上記のようにMoはWの2倍の量の添加が必要である。したがって、2Mo+Wは3.0〜13.0%未満(ただし、Moは0.5〜5.0%、かつ、Wは4.0%未満の範囲内)とする。
V:1.00%未満
Vは、焼戻し時に微細で硬質なMC型炭窒化物を析出し、高温強度や耐摩耗性に寄与する元素であるため、必要に応じて添加できる。また、Vの炭窒化物は、焼入れ時には全量溶解せずに、一部は未固溶であるため、これらの炭窒化物が結晶粒の粗大化を抑制して、靱性の低下を抑制する。一方、Vは1.00%以上に含有させると、熱間工具鋼のマトリックスに残存するVが増加し、熱伝導性を低下させる。また、V系炭化物の凝集および粗大化を助長し、靱性を低下させる。また、Vは1.00%以上含有させるとコスト高となる。
Nb:1.0%未満
Nbは、Vと同様の効果を有する元素である。すなわち、Nbは、焼戻し時に微細で硬質なMC型炭窒化物を析出し、高温強度や耐摩耗性に寄与する元素であるため、必要に応じて添加できる。また、Nbの炭窒化物は、焼入れ時には全量溶解せずに、一部は未固溶であるため、これらの炭窒化物が結晶粒の粗大化を抑制して、靱性の低下を抑制する。一方、Nbは1.0%以上に含有させると、熱間工具鋼のマトリックスに残存するNbが増加し、熱伝導性を低下させる。また、Nb系炭化物の凝集および粗大化を助長し、靱性を低下させる。また、Nbは1.0%以上含有させるとコスト高となる。
N:0.030%未満
Nは、Cと同様の効果が得られる元素である。しかし、Nが0.030%以上に過剰添加されると熱間工具鋼のマトリックス中のN量が増加し、該鋼の熱伝導性を低下させる。そこで、Nは0.030%未満とする。
Ceq:0.20%以上
Ceqは、焼戻し軟化抵抗性を得るために十分な元素量を確保するために0.20以上を必要とする炭素当量であり、そこで、Ceqは0.20%以上とする。本発明において、Ceq=0.06×%Cr+0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nbである。すなわち、Ceqは、この式中の%元素で示す元素が全て炭化物となる場合に必要な炭素当量の目安を示している。
ΔC=(C−Ceq):−0.300〜0.300%、望ましくは−0.100〜0.200%
ΔCは、−0.300%未満であると十分な焼入れ焼戻し硬さを得にくくなるばかりでなく、熱間工具鋼のマトリックスに残存する合金元素量が増加し、熱伝導性を低下させる。また、合金成分の偏析を助長し、靱性を低下させる。一方、ΔCは0.300%を超えると、熱間工具鋼のマトリックス中に過剰なCやNが残存し、熱伝導性を低下させる。また、CやNの偏析や炭化物偏析を助長し、靱性を低下させる。そこで、ΔC=(C−Ceq):−0.300〜0.300%、望ましくは−0.100〜0.200%とする。なお、ΔC=(C−Ceq)のCは質量%である。
B値:0.74〜0.94
B値は、0.74より低すぎる(すなわちCeqの式からCr添加量の割合が大きい)と、高い焼戻し軟化抵抗性が得られず、すなわち高い焼戻し温度を適用することができずに、熱間工具鋼のマトリックス中に残存する合金元素の量が増加し、熱伝導性が低下する。一方、B値が0.94より高すぎると、焼入れ性が不足して、靱性を低下させる。なお、B値=(0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nb)/Ceqである。ここで%元素は各元素の質量%を示す。ところで、高い熱伝導率を得るためには、高い焼戻し軟化抵抗性が必要である。すなわち、比較的高い焼戻し温度を適用することによって、鋼中の炭化物形成元素を炭化物として析出させることで基地組織中に固溶し熱伝導率を低下させる元素を減少させ、熱伝導率を上昇させる。高い軟化抵抗性を得るためには、MoやWなどの元素、続いてVやNbの元素の添加が有効である。一方で、これらの元素のみを添加した場合、焼入れ性が不足し、十分な硬度が得られ難くなるばかりでなく、焼入れ時にベイナイトなどの組織が生成し、靱性が低くなる可能性がある。靱性の向上には、Crなどの焼入れ性向上効果が比較的大きい元素の添加が有効である。以上より解るように、B値の式は、熱伝導率と靱性とを兼備するために、添加する炭化物形成元素のバランスについて考慮した式である。
Ni:2.0%以下
Niは、本願の請求項2に係る発明において、焼入れ性の向上に必要な元素である。しかし、Niが2.0%より多いと、高価な元素であるのでコスト高となる。そこで、Niは2.0%以下とする。
次いで、本願の発明を実施するための形態について説明する。表1には、本願のNo.AないしRの18種の実施例である発明鋼と13種の比較例である比較鋼について、それぞれに含有される各元素の化学成分量を質量%で示している。本願のこれら表1に示す実施例および比較例の各化学成分の残部はFeであり、表1には示していないが、これらの鋼は、表1に示す化学成分とその残部であるFeの他に不可避的不純物を含有している。さらに、表1には、2Mo+Wの質量%、Ceq、ΔC、B値を各実施例の発明鋼のNo.A〜Rの18種と、比較例である比較鋼の1〜13の13種についてそれぞれの値を示している。
表1に示す化学成分および残部Feおよび不可避的不純物からなる実施例である発明鋼と比較例である溶鋼を溶製して、それぞれを2トンのインゴットに鋳込んだ後、熱間鍛造によって、鍛練成形比が凡そ4Sとなる断面積100mm×220mmのそれぞれのブロックに仕上げた。なお、表1の発明鋼のNo.A〜Pの16種は請求項1(第1の手段)に係る発明の実施例鋼で、表1の発明鋼のNo.Q〜Rの2種は化学成分としてNiを含有しているので請求項2(第2の手段)に係る発明の実施例の鋼である。同様に表1の比較鋼のNo.12は、本願の請求項2(第2の手段)に係る発明の比較例の鋼である。
Figure 2017061712
上記で得られた、それぞれのブロック材から試験片を採取して、980〜1080℃で焼入れを行い、焼入れ後、520〜650℃で2回焼戻しを行った。すなわち表2に示される焼入れ温度と焼戻温度を表1に示される各鋼種の試験片の熱処理に適用した。
Figure 2017061712
表2における靭性はシャルピー衝撃試験により評価を実施した。用いた試験片は、上記の鍛伸材であるブロック材の中心部の圧延方向から、試験片を採取した。これらの試験片を980〜1080℃で焼入れを行い、焼入れ後に520〜650℃で2回焼戻しを行って、45HRCに調質した後、2mmUノッチシャルピー試験片に仕上げ加工した。シャルピー衝撃試験における衝撃値が30J/cm2以上であれば靱性は◎とし、同試験における衝撃値が20J/cm2以上30J/cm2未満であれば靱性は○とし、同試験における衝撃値が20J/cm2よりも低ければ靱性は×として評価した。
熱伝導率の測定には、レーザフラッシュ法を用いた。径10mm×1mm厚の熱伝導率測定用試験片を上記のブロック材から採取して試験片に供した。これらの試験片を表2に示す焼入れ温度で焼入れし、次いで焼戻し温度とする熱処理を適用して、熱伝導率を測定した。測定した熱伝導率が、40W/m・K以上であれば◎とし、30W/m・K以上、40W/m・K未満であれば○とし、30W/m・Kよりも低ければ×として、表2に評価して示した。
本願の請求項1に係る発明および請求項2に係る発明の発明鋼では、表2に示すように、シャルピー衝撃試験による評価である靱性がNo.A〜Rに示す発明鋼では、いずれも衝撃値が20J/cm2以上30J/cm2未満である○、または衝撃値が30J/cm2以上である◎であり、さらに、レーザフラッシュ法を用いて測定した熱伝導率は30W/m・K以上で40W/m・K未満の○、または40W/m・K以上の◎であって、いずれも優れた熱伝導率および靱性を有する熱間工具鋼である。 これに反し、本願の発明の比較鋼では、表2に示すように、シャルピー衝撃試験による評価である靱性がNo.1〜13に示す比較鋼では、No.1、No.2、No.4〜6、No.8〜11は衝撃値が20J/cm2よりも低く×であり、No.3、No.7、No.12〜13の4例のみが○である。またレーザフラッシュ法を用いて測定した熱伝導率はNo.1〜3、No.6〜8、No.12、No.13が30W/m・Kよりも低くさらにNo.4、No.5、No.9〜11が30W/m・K以上で40W/m・K未満の○であって、約69%のものが靱性が低くさらに62%のものが熱伝導率の低い鋼である。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.20〜0.60%、Si:0.50%未満、Mn:0.60超〜1.50%未満、Cr:4.00%未満、2Mo+W:3.0〜13.0%未満、ただし、Mo:0.5〜5.0%、かつ、W:4.0%未満、V:1.00%未満、Nb:1.0%未満、N:0.030%未満を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、Ceq:0.20%以上、ΔC=C−Ceqとするとき、ΔC:−0.300〜0.300%、B値:0.74〜0.94であることを特徴とする優れた熱伝導率および靱性を有する熱間工具鋼。
    ただし、Ceq=0.06×%Cr+0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nb、この場合の%元素は各元素の質量%を示し、ΔC=C−CeqにおけるCは質量%、さらにCeqは、主に添加した各元素が全て炭化物となる場合に必要なC量の目安、そこでΔCは、鋼中のCと各炭化物形成元素量との関係から、熱伝導性の向上において重要な固溶元素量について考慮した指標で、B値=(0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nb)/Ceqで、この場合の%元素は各元素の質量%である。
  2. 請求項1に記載の元素に加えて、質量%で、Ni:2.0%以下を有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ、Ceq:0.20%以上、ΔC=C−Ceqとするとき、ΔC:−0.300〜0.300%、B値:0.74〜0.94であることを特徴とする優れた熱伝導率および靱性を有する熱間工具鋼。
    ただし、Ceq=0.06×%Cr+0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nb、この場合の%元素は各元素の質量%を示し、ΔC=C−CeqにおけるCは質量%、さらにCeqは、主に添加した各元素が全て炭化物となる場合に必要なC量の目安、そこでΔCは、鋼中のCと各炭化物形成元素量との関係から、熱伝導性の向上において重要な固溶元素量について考慮した指標で、B値=(0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nb)/Ceqで、この場合の%元素は各元素の質量%である。
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