JP2017061712A - 優れた熱伝導率および靱性を有する熱間工具鋼 - Google Patents
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Abstract
Description
ただし、Ceq=0.06×%Cr+0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nbであり、この場合の%元素は各元素の質量%を示し、ΔC=C−CeqにおけるCは質量%であり、さらに、Ceqは、主に添加した各元素が全て炭化物となる場合に必要なC量の目安として用いられている炭素当量であり、そこでΔCは、鋼中のCと各炭化物形成元素量との関係から、熱伝導性の向上において重要な固溶元素量について考慮した指標である。さらに、B値=(0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nb)/Ceqであり、この場合の%元素は各元素の質量%を示す。
ただし、Ceq=0.06×%Cr+0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nbであり、この場合の%元素は各元素の質量%を示し、ΔC=C−CeqにおけるCは質量%であり、さらに、Ceqは、主に添加した各元素が全て炭化物となる場合に必要なC量の目安として用いられており、そこでΔCは、鋼中のCと各炭化物形成元素量との関係から、熱伝導性の向上において重要な固溶元素量について考慮した指標である。さらに、B値=(0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nb)/Ceqであり、この場合の%元素は各元素の質量%を示す。
Cは、焼入れ性や焼入れ焼戻し硬さを十分に確保し、炭化物を形成することで耐摩耗性や高温強度を得るための元素である。Cが0.20%より少ないと、熱間工具鋼の硬さ、高温強度、耐摩耗性が十分に得られない。一方、Cが0.60%より多いと、熱間工具鋼中の成分および炭化物の偏析を助長し、靱性を低下させる。また、熱間工具鋼の固溶C量が増加して熱伝導性を低下させる。そこで、Cは0.20〜0.60%とする。
Siは、焼入れ性および硬さの向上に寄与する元素である。しかし、Siが0.50%以上に多いと、熱伝導性を大きく低下させることから、できるだけ低めが望ましい。そこで、Siは0.50%未満とする。
Mnは、0.60%以下では焼入れ性が低くなり、焼入れ時にベイナイトなどの異常組織が形成されて、靱性を低下する。一方、Mnが1.50%以上に含有されると、熱間工具鋼のマトリックスを脆化させ靱性および熱間加工性を低下させる。そこで、Mnは0.60超〜1.50%未満とする。
Crは、焼入れ性を改善する元素である。しかし、Crが4.00%以上と多く含有されると、Cr系炭化物の凝集および粗大化を助長し、靱性、高温強度および軟化抵抗性を低下させる。Crが4.00%以上に含有されると、焼戻しによる2次硬化のピークがより低温側へと移行し、焼戻し後のマトリックスに、より多くの合金元素が残存し、熱伝導性を低下させる。
Moは、焼入れ性や焼戻し時の2次硬化、耐摩耗性、高温強度、および軟化抵抗性に寄与する元素である。また、Moは、より高い焼戻し温度で炭化物を形成しやすく、これが影響して2次硬化のピークを高温側へ移行させる元素である。そこで、高い熱伝導率を得るためには、高い焼戻し温度を適用することが望ましいが、Moが0.5%未満では高い熱伝導率は得られない。そこで、Moは0.5%以上とする必要がある。しかし、Moが5.0%より多すぎると、マトリックスに残存するMoが増加して熱伝導性を低下させる。また、Moは炭化物の凝集・粗大化を助長し、靱性を低下させる。また、Moは高価な元素であるのでコスト高になる。そこで、Moは0.5〜5.0%とする。
Wは、Moと同様に、焼入れ性や焼戻し時の2次硬化、耐摩耗性、高温強度、および軟化抵抗性に寄与する元素であり、また、より高い焼戻し温度で炭化物を形成しやすく、これが影響して2次硬化のピークを高温側へ移行させる元素であるため、必要に応じて添加できる。そこで、高い熱伝導率を得るためには、高い焼戻し温度を適用することが望ましいが、Wが4.0%より多いと、マトリックスに残存するWが増加して熱伝導性を低下させる。Wは炭化物の凝集・粗大化を助長し、靱性を低下させる。また、Wは高価な元素であるのでコスト高になる。そこで、Wは4.0%以下とする。
MoとWは、上記したように、焼入れ性や焼戻し時の2次硬化、耐摩耗性、高温強度、軟化抵抗性に寄与する元素である。また、MoとWは、より高い焼戻し温度で炭化物を形成しやすく、これが影響して2次硬化のピークを高温側へ移行させる元素である。ところで、MoとWは高い熱伝導率を得るために高い焼戻し温度が適用できることが望ましい。しかし、上記したMo:0.5〜5.0%、かつ、W:4.0%未満の範囲内で、2Mo+Wが、3.0%より少ないと、上記した2次硬化が得られない。一方、2Mo+Wが13.0%以上であると、熱間工具鋼のマトリックスに残存するMoやWが増加し、熱伝導性を低下させる。また、2Mo+Wが13.0%以上であると、MoやW系の炭化物の凝集および粗大化を助長し、靱性を低下させる上に、高価な元素であるのでコスト高になる。特にMoはWと同等の効果を得るためには、上記のようにMoはWの2倍の量の添加が必要である。したがって、2Mo+Wは3.0〜13.0%未満(ただし、Moは0.5〜5.0%、かつ、Wは4.0%未満の範囲内)とする。
Vは、焼戻し時に微細で硬質なMC型炭窒化物を析出し、高温強度や耐摩耗性に寄与する元素であるため、必要に応じて添加できる。また、Vの炭窒化物は、焼入れ時には全量溶解せずに、一部は未固溶であるため、これらの炭窒化物が結晶粒の粗大化を抑制して、靱性の低下を抑制する。一方、Vは1.00%以上に含有させると、熱間工具鋼のマトリックスに残存するVが増加し、熱伝導性を低下させる。また、V系炭化物の凝集および粗大化を助長し、靱性を低下させる。また、Vは1.00%以上含有させるとコスト高となる。
Nbは、Vと同様の効果を有する元素である。すなわち、Nbは、焼戻し時に微細で硬質なMC型炭窒化物を析出し、高温強度や耐摩耗性に寄与する元素であるため、必要に応じて添加できる。また、Nbの炭窒化物は、焼入れ時には全量溶解せずに、一部は未固溶であるため、これらの炭窒化物が結晶粒の粗大化を抑制して、靱性の低下を抑制する。一方、Nbは1.0%以上に含有させると、熱間工具鋼のマトリックスに残存するNbが増加し、熱伝導性を低下させる。また、Nb系炭化物の凝集および粗大化を助長し、靱性を低下させる。また、Nbは1.0%以上含有させるとコスト高となる。
Nは、Cと同様の効果が得られる元素である。しかし、Nが0.030%以上に過剰添加されると熱間工具鋼のマトリックス中のN量が増加し、該鋼の熱伝導性を低下させる。そこで、Nは0.030%未満とする。
Ceqは、焼戻し軟化抵抗性を得るために十分な元素量を確保するために0.20以上を必要とする炭素当量であり、そこで、Ceqは0.20%以上とする。本発明において、Ceq=0.06×%Cr+0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nbである。すなわち、Ceqは、この式中の%元素で示す元素が全て炭化物となる場合に必要な炭素当量の目安を示している。
ΔCは、−0.300%未満であると十分な焼入れ焼戻し硬さを得にくくなるばかりでなく、熱間工具鋼のマトリックスに残存する合金元素量が増加し、熱伝導性を低下させる。また、合金成分の偏析を助長し、靱性を低下させる。一方、ΔCは0.300%を超えると、熱間工具鋼のマトリックス中に過剰なCやNが残存し、熱伝導性を低下させる。また、CやNの偏析や炭化物偏析を助長し、靱性を低下させる。そこで、ΔC=(C−Ceq):−0.300〜0.300%、望ましくは−0.100〜0.200%とする。なお、ΔC=(C−Ceq)のCは質量%である。
B値は、0.74より低すぎる(すなわちCeqの式からCr添加量の割合が大きい)と、高い焼戻し軟化抵抗性が得られず、すなわち高い焼戻し温度を適用することができずに、熱間工具鋼のマトリックス中に残存する合金元素の量が増加し、熱伝導性が低下する。一方、B値が0.94より高すぎると、焼入れ性が不足して、靱性を低下させる。なお、B値=(0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nb)/Ceqである。ここで%元素は各元素の質量%を示す。ところで、高い熱伝導率を得るためには、高い焼戻し軟化抵抗性が必要である。すなわち、比較的高い焼戻し温度を適用することによって、鋼中の炭化物形成元素を炭化物として析出させることで基地組織中に固溶し熱伝導率を低下させる元素を減少させ、熱伝導率を上昇させる。高い軟化抵抗性を得るためには、MoやWなどの元素、続いてVやNbの元素の添加が有効である。一方で、これらの元素のみを添加した場合、焼入れ性が不足し、十分な硬度が得られ難くなるばかりでなく、焼入れ時にベイナイトなどの組織が生成し、靱性が低くなる可能性がある。靱性の向上には、Crなどの焼入れ性向上効果が比較的大きい元素の添加が有効である。以上より解るように、B値の式は、熱伝導率と靱性とを兼備するために、添加する炭化物形成元素のバランスについて考慮した式である。
Niは、本願の請求項2に係る発明において、焼入れ性の向上に必要な元素である。しかし、Niが2.0%より多いと、高価な元素であるのでコスト高となる。そこで、Niは2.0%以下とする。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.20〜0.60%、Si:0.50%未満、Mn:0.60超〜1.50%未満、Cr:4.00%未満、2Mo+W:3.0〜13.0%未満、ただし、Mo:0.5〜5.0%、かつ、W:4.0%未満、V:1.00%未満、Nb:1.0%未満、N:0.030%未満を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、Ceq:0.20%以上、ΔC=C−Ceqとするとき、ΔC:−0.300〜0.300%、B値:0.74〜0.94であることを特徴とする優れた熱伝導率および靱性を有する熱間工具鋼。
ただし、Ceq=0.06×%Cr+0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nb、この場合の%元素は各元素の質量%を示し、ΔC=C−CeqにおけるCは質量%、さらにCeqは、主に添加した各元素が全て炭化物となる場合に必要なC量の目安、そこでΔCは、鋼中のCと各炭化物形成元素量との関係から、熱伝導性の向上において重要な固溶元素量について考慮した指標で、B値=(0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nb)/Ceqで、この場合の%元素は各元素の質量%である。 - 請求項1に記載の元素に加えて、質量%で、Ni:2.0%以下を有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ、Ceq:0.20%以上、ΔC=C−Ceqとするとき、ΔC:−0.300〜0.300%、B値:0.74〜0.94であることを特徴とする優れた熱伝導率および靱性を有する熱間工具鋼。
ただし、Ceq=0.06×%Cr+0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nb、この場合の%元素は各元素の質量%を示し、ΔC=C−CeqにおけるCは質量%、さらにCeqは、主に添加した各元素が全て炭化物となる場合に必要なC量の目安、そこでΔCは、鋼中のCと各炭化物形成元素量との関係から、熱伝導性の向上において重要な固溶元素量について考慮した指標で、B値=(0.063×%Mo+0.033×%W+0.2×%V+0.1×%Nb)/Ceqで、この場合の%元素は各元素の質量%である。
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