JP2017060426A - 水耕栽培方法、葉菜類、培養液、及び培養液濃縮組成物 - Google Patents

水耕栽培方法、葉菜類、培養液、及び培養液濃縮組成物 Download PDF

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【課題】生育障害を起こさず鉄含有量を高める葉菜類を栽培可能とする水耕栽培方法を提供する。【解決手段】水耕栽培用の普通処方培養液により葉菜類を栽培する水耕栽培方法である。収穫前の特定期間だけ、エチレンジアミン四酢酸鉄キレートを含み、普通処方培養液よりも鉄含有量が多い高鉄含有培養液により葉菜類を栽培する。この高鉄含有培養液により葉菜類を栽培する期間は、1〜4日である。また、高鉄含有培養液は、0.3mM〜6.0mMの鉄を含有する。この水耕栽培方法により栽培された葉菜類は、普通処方培養液だけで培養する場合と比較して、2.0〜15.0倍の鉄を含有する。また、高鉄含有培養液は、培養液濃縮組成物を溶媒により希釈して生成してもよい。【選択図】図2

Description

本発明は、水耕栽培方法、葉菜類、培養液、及び培養液濃縮組成物に係り、特に鉄分の含有量を高める水耕栽培方法、葉菜類、培養液、及び培養液濃縮組成物に関する。
従来から、鉄欠乏性貧血は、世界中で最も深刻な健康上の問題の一つである(非特許文献1参照)。
世界の40億人以上が鉄欠乏であり、そのうち約20億人が鉄欠乏性貧血であり、世界保健機構(WHO)によれば、鉄欠乏症が栄養障害のうち最大のものである(非特許文献2)。
WHOによると貧血は「単位容積の血液中に含まれているヘモグロビン量が基準値より減少した状態」と定義されている。鉄欠乏は、貧血を発症させ、重篤な鉄欠乏の妊婦においては低体重児の出生、小児では発達の遅延等を引き起こす。
鉄欠乏症は、食物からの鉄供給不足や腸管吸収機構の低下、鉄需要の充進、失血などに起因する(非特許文献2)。
非特許文献3によると、1日の鉄の必要量は成人男性で7mg、成人女性で10.5mg、妊娠後期で約21mgが推奨されている。日本においては、平成17年及び18年国民健康・栄養調査によれば、20〜49歳女性のヘモグロビン濃度の25パーセンタイル値は約12g/dLである。WHOによる一般成人女性の貧血の基準であるヘモグロビン濃度(12g/dL未満)を適用すると、日本の成人女性の4人に1人は貧血状態にあるといえる。また、東京都での調査によると、1990年以降、中学校ならびに高校女子生徒の貧血有病率は増加傾向にある。さらに、ヘモグロビン濃度11g/dL未満で定義される妊娠貧血の女性の有病率は、一般女性の貧血有病率よりも高い。
非特許文献4によると、1人1日当たりの鉄摂取量は減少傾向にある。1975年で13.4mgであったのが、2001年は8.2mg、2010年は7.4mgまで減少し、男性、女性とも必要量を満たしていない。
鉄摂取不足の改善策として、鉄欠乏に対する意識づけをはかることの他、食品に鉄を添加する方法が提唱されている。したがって、機能性植物の一種として、鉄含有量が高い植物ができれば、これらの問題を解決するために有効な手段の一つとなり得ると考えられる。
一般に農産物の機能性を変化させる手法としては、交雑育種や遺伝子組み換え技術、及び栽培方法の改良による手法が挙げられる。交雑育種や遺伝子組み換え技術は機能性を変化させるまでには時間とコストがかかる。
鉄含有量の高いイネを育成する試みとして、植物への鉄の取り込みに関与するニコチアナミン合成酵素の遺伝子を過剰発現させた遺伝子組み換え植物を作成し、籾の鉄含有量が高いイネを作成した研究が報告されている(非特許文献5及び非特許文献6)。
しかし、非特許文献5や非特許文献6のように遺伝子組み換え作物については、安全性に対する不安から、消費者に受け入れられ難かった。
ここで、従来の栽培方法の改良による鉄含有量を高くする手法として、特許文献1、非特許文献7、及び非特許文献8を参照すると、鉄含有量の高い植物のもやし(スプラウト)の栽培方法が報告されている。
特許文献1では、栽培時にクエン酸鉄水溶液を散布し、スプラウトの生重量100g当たり、2.5〜10mgの鉄を含有させることを可能にする。また、非特許文献7では、カイワレ大根種子を鉄の濃度が高い溶液に浸漬して栽培することで、鉄含有量の高いカイワレ大根の栽培を可能にしている。非特許文献8では、鉄貯蔵タンパク質であるフェリチン含有量の高いダイスを鉄の濃度が高い溶液を用いて栽培することで鉄含有量の高いダイズスプラウトの栽培を可能にしている。
このように種子からの栽培期間の短いスプラウト、加えて非特許文献8のようなダイズスプラウトのような場合は、鉄濃度の高い溶液での栽培によって、鉄濃度を高めたスプラウトの栽培が可能である。
特開2008−301733号公報
S. Lee他、Iron fortification of rice seeds through activation of the nicotianamine synthase gene、Proc. Natl. Acad. Sci、米国、2009、106、p.22014−22019 五十嵐香織他、ラットにおける各種鉄強化剤による鉄欠乏改善に対する効果の比較、日本栄養・食糧学会誌、2004、57、p.89−97 厚生労働省、日本人の食事摂取基準、2010年版 厚生労働省、国民健康・栄養調査報告、平成23年度 S. Lee他、Iron fortification of rice seeds through activation of the nicotianamine synthase gene、Proc. Natl. Acad. Sci、米国、2009、106、p.22014−22019 H. Masuda他、Overexpression of the Barley Nicotianamine Synthase Gene HvNAS1 Increases Iron and Zinc Concentrations in Rice Grains、Rice、2009、2 C. Saiki他、Uptake of iron by a vegetable; kaiware daikon (Japanese radish sprout)、J. Nutr. Sci. Vitaminol、2004、50、p.286−290 M. Zieliska−Dawidziak他、Study on iron availability from prepared soybean sprouts using an iron−deficient rat model、Food chemistry、2012、135、p.2622−2627 W. Van Driel、The effect of iron ethylenediaminetetraacetic acid on the growth and metabolism of tomato plants in water culture、Plant Soil、1964、20、p.85−104 清水武、原色・要素障害診断事典、農山漁村文化協会、東京、1990 矢澤進他、水耕栽培でのキレート鉄施用によるトウガラシの生理障害の発現、園芸學會雜誌、1992、60、p.905−913. M. Yamauchi他、Iron toxicity and stress−induced ethylene production in rice leaves、Plant Soil、1995、173、p.21−28
しかしながら、鉄含有量の高い植物を栽培するために、種子からの栽培期間がスプラウトよりも長い野菜等の植物、特に葉菜類を鉄濃度が高い条件で栽培すると、生育障害が起こるという問題があった。
このため、一般に行われている栽培方法に加えて鉄の施肥量を増やすだけでは、高い鉄含有量を持つ葉菜類を栽培することはできなかった。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の問題を解消することを目的とする。
本発明の水耕栽培方法は、水耕栽培用の普通処方培養液により葉菜類を栽培し、収穫前の特定期間だけ、前記普通処方培養液よりも鉄含有量が多い高鉄含有培養液により前記葉菜類を栽培することを特徴とする。
本発明の水耕栽培方法は、前記高鉄含有培養液により前記葉菜類を栽培する前記特定期間は、1〜4日であることを特徴とする。
本発明の水耕栽培方法は、前記高鉄含有培養液は、0.3mM〜6.0mMの鉄を含有することを特徴とする。
本発明の水耕栽培方法は、前記高鉄含有培養液は、pHが4.5〜7.5であることを特徴とする。
本発明の水耕栽培方法は、前記高鉄含有培養液は、エチレンジアミン四酢酸鉄キレートを含むことを特徴とする。
本発明の葉菜類は、前記水耕栽培方法により栽培され、前記普通処方培養液だけで培養する場合と比較して、2.0〜15.0倍の鉄が含有されていることを特徴とする。
本発明の培養液は、葉菜類を栽培するための水耕栽培用の培養液であって、0.3mM〜6.0mMの鉄を含有することを特徴とする。
本発明の培養液濃縮組成物は、溶媒による希釈により、葉菜類を栽培するための水耕栽培用の培養液となる培養液濃縮組成物であって、希釈後の前記培養液が0.3mM〜6.0mMの鉄を含有するよう調整されたことを特徴とする。
本発明によれば、収穫前の特定期間だけ、高鉄含有培養液により栽培することで、生育に影響をあたえることなく、可食部の鉄含有量を高めた葉菜類を栽培可能となる水耕栽培方法を提供することができる。
本発明の実施例に係る試験例1の鉄濃度及び特定期間が異なる水耕栽培方法で栽培したコマツナのベビーリーフの新鮮重を示すグラフである。 本発明の実施例に係る試験例1のコマツナのベビーリーフの鉄含有量を示すグラフである。 本発明の実施例に係る試験例1のミズナのベビーリーフの新鮮重を示すグラフである。 本発明の実施例に係る試験例1のミズナのベビーリーフの鉄含有量を示すグラフである。 本発明の実施例に係る試験例3の通常の大きさのレタスの鉄含有量を示すグラフである。 本発明の実施例に係る試験例3の通常の大きさのレタスの鉄含有量を示すグラフである。
<実施の形態>
上述したように、鉄含有量を高めるために鉄濃度が高い条件下で植物を栽培した場合、生育障害が発生することが明らかになっている。このため、一般に行われている栽培方法に加えて鉄の施肥量を増やすだけでは高い鉄含有量を持つ野菜、特に葉菜類を栽培することはできなかった。
このため、本発明の発明者らは鋭意研究を行い、水耕栽培の栽培期間中に水耕液の組成を変化させ、培地の鉄濃度と鉄施用の時期を調節することにより、植物体内における鉄含有量の増加に伴う生長障害を起こさずに、収穫時の可食部における単位新鮮重あたりの鉄含有量を従来の栽培方法で栽培したものよりも増加させることが可能な葉菜類の栽培方法を確立するに至った。
以下、本発明の実施の形態に係る水耕栽培方法(葉菜類の製造方法)、及びこの水耕栽培方法に使用する培養液の詳細、培養液の製造方法(並びに培養液濃縮組成物)、及び栽培される葉菜類について説明する。
本発明の実施の形態に係る水耕栽培方法は、水耕栽培用の普通処方培養液により葉菜類を栽培し、収穫前の特定期間だけ、水耕栽培用の培養液よりも鉄含有量が多い高鉄含有培養液により葉菜類を栽培することを特徴とする。
ここで、本発明の実施の形態に係る水耕栽培方法で栽培される葉菜類としては、例えば、レタス(Lactuca sativa)、ルッコラ(Eruca vesicaria)、水菜(Brassica rapa var. laciniifolia)、ほうれん草(Spinacia oleracea)、小松菜(Brassica rapa var. perviridis)、春菊(Glebionis coronaria)等が挙げられる。ここで、本実施形態のレタスは、ヘッドレタス(L.s.var.capitata)、リーフレタス (L.s.var.crispa)、立ちレタス(L.s.var.longifoli)、カッティングレタス(L.s.var.crispa)、ステムレタス (L.s.var.angustana)等を用いることが可能である。このヘッドレタスとしては、例えば、サラダ菜等を用いることが可能である。また、立ちレタスとしては、例えば、ロメインレタス等を用いることが可能である。また、リーフレタスとしては、例えば、グリーンリーフ、フリルレタス、シルクレタス、リボンレタス、フレアーリーフレタス、サニーリーフレタス等を用いることが可能である。また、カッティングレタスとしては、例えば、チマ・サンチェ等を用いることが可能である。
また、本発明の実施の形態に係る水耕栽培方法の栽培の葉菜類の植物体の生育ステージは、ベビーリーフ及び通常の大きさの植物体のどちらにも適用可能である。後述する実施例1及び実施例2に示すように、ベビーリーフの鉄含有量(図2、図4、表4参照)と、通常の大きさの植物体(図6参照)とを比較すると、植物体の小さいベビーリーフの方が、鉄含有量の増加程度は大きくなる。一方で、市場では通常の大きさの葉菜類は需要も大きく使用用途の範囲も広い。このため、本実施形態の葉菜類の植物体の生育ステージとしては、ベビーリーフ、通常の大きさの葉菜類のいずれとも利用可能である。
また、本発明の実施の形態に係る葉菜類の栽培方法では、栽培期間中の培地の養分組成を容易に変更できる水耕栽培方法を用いて栽培することが好適である。つまり、土耕栽培では、収穫前短期間のみに土壌中の鉄の含有量を増やすような処理を行うと、次の作付けの時に土壌の入れ替えを行わなければならず難しい。これに対して、水耕栽培方法では、高鉄含有培養液の培養液を取り換えるだけで済む。このため、本実施形態の葉菜類の栽培方法は、ビニールハウスや植物工場等の施設栽培での水耕栽培について、好適に用いることが可能である。
より具体的には、本実施形態の水耕栽培方法においては、後述する収穫前の特定期間の前までの栽培期間では、水耕栽培用の普通処方培養液によって葉菜類を水耕栽培する。
この普通処方培養液は、養液栽培で使われている通常の配合割合の培養液を使用可能である。たとえば、この水耕栽培用の普通処方培養液は、葉菜類の培養栽培向けの多量必須元素及び微量必須元素を含有する。この多量必須元素は、例えば、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、イオウの6元素である。また、微量必須元素は、例えば、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデン、ホウ素、塩素の7元素である。
このように、収穫前の特定期間になるまで、多量必須元素及び微量必須元素を含有する普通処方培養液だけで、葉菜類を通常の栽培方法で水耕栽培することができ、特に特別な処理をする必要がないため、コストを抑えることができる。
また、本実施形態の水耕栽培方法においては、葉菜類の種子を催芽させた後、この水耕栽培用の普通処方培養液によって水耕栽培する。この際、温度、日照時間、培養液の電気伝導度(EC)、pH等は、栽培する葉菜類の種類に合わせて適宜調整する。
また、本実施形態の水耕栽培方法として、例えば、噴霧水耕方式又は湛液方式で栽培してもよい。湛液方式の場合、培養液の流れを作らない静置状態で栽培してもよいし、流れのある培養液で栽培してもよい。これは、下記で説明する特定期間でも同様である。
また、本実施形態の水耕栽培方法は、太陽光を利用した通常のハウス水耕栽培等に適用されても、LED(Light Emitting Diode)を利用した植物工場での水耕栽培等に適用されてもよい。
また、本発明の実施の形態に係る水耕栽培方法においては、収穫前のごく短期間の特定期間だけ、例えば、各種鉄化合物として、エチレンジアミン四酢酸鉄キレート(以下、「Fe−EDTA」という。)等を含み、水耕栽培用の普通処方培養液よりも鉄含有量が多い高鉄含有培養液により葉菜類を栽培することを特徴とする。
ここで、本実施形態の水耕栽培方法においては、この高鉄含有培養液により葉菜類を栽培する特定期間は、1〜4日であることが好適である。
より具体的には、特定期間として、ベビーリーフでは、収穫1日前、通常の大きさの葉菜類では収穫1日〜4日前に、高鉄含有培養液に換えて、収穫日まで水耕栽培する。この特定期間よりも短い期間、高鉄含有培養液で培養しても、葉菜類の鉄含有量を十分高めることができない。また、この特定期間よりも長い期間、高鉄含有培養液で培養すると、枯死、しおれ、葉の黄変や斑点等の生育障害(生理障害)を起こす確率が高まる。また、通常の大きさの葉菜類では、特定期間が3日程度であると、最も鉄含有量を高められる。
また、本発明の実施の形態に係る高鉄含有培養液は、葉菜類を栽培するための水耕栽培用の培養液であって、0.3mM〜6.0mMのFe−EDTA等を含有することが好適である。
具体的には、本実施形態の高鉄含有培養液は、一般の水耕栽培用の普通処方培養液に比べ非常に高い鉄濃度である、Fe−EDTA等の濃度が0.3mM以上、6.0mM以下の特定濃度であることが好適である。ここで、Fe−EDTA等で0.3mM以上、6.0mM以下の特定濃度は、重量あたりの金属鉄換算で16.7mg/L以上334.8mg/L以下となる。すなわち、特に最適なFe−EDTA等の濃度は3.0mM程度(金属鉄換算で167.4mg/L)の前後であり、葉菜類の種類により調整可能である。濃度が0.3mM未満であると鉄分を十分に葉菜類の植物体に含ませることができず、濃度が6.0mMより大きいと生育障害を起こす確率が高まる。
また、本実施形態の高鉄含有培養液に含まれる鉄としては、水耕栽培用に使用される各種鉄化合物として塩化鉄、硫酸鉄、ピロリン酸鉄、及びこの塩並びに水和物等を使用可能であるものの、特にFe−EDTAのようなキレート鉄を用いることが好ましい。このキレート鉄を用いることで、上述の収穫前の特定期間だけ葉菜類を栽培するだけで、葉菜類の鉄含有量をより高めることができる。また、Fe−EDTAは、植物の培養に使用可能と認められている化合物であり、食品添加物としても使用可能であるため、安全に高鉄含有培養液に含まれる鉄として用いることが可能である。
クエン酸鉄アンモニウム等の別の鉄化合物を100mg/L以上使用した場合には、生育障害が発生する可能性がある。これに対して、本実施形態に係るFe−EDTA等を特定期間だけ使用する場合、上述のように334.8mg/L程度までは生育障害を起こす確率を低くすることができる。
なお、本実施形態のFe−EDTAとしては、EDTA(Ethylenediamine−N,N,N',N'−tetraacetic acid)のナトリウム塩(Na2−EDTA)と硫酸鉄(FeSO4)の水溶液を反応させて生成させても、Fe(III)−EDTAの各種塩をそのまま使用等してもよい。
また、本実施形態の各種鉄化合物として、クエン酸鉄及びこの塩については、特に葉菜類のベビーリーフでない植物体において生育障害を起こす確率が、Fe−EDTA等より高くなるため、本実施形態では使用しないことが好適である。
また、本実施形態の高鉄含有培養液は、他に、上述の普通処方培養液と同様に、葉菜類の栽培に用いられる通常量のカリウム、マグネシウム、リン、カルシウム、及び窒素の多量要素と、通常量の亜鉛、ホウ素、銅、モリブデンの微量要素を含有している。
なお、本実施形態の高鉄含有培養液は、浸透圧等を下げ、葉菜類に鉄を多く含有させるため、葉菜類の種類に合わせて適宜、多量要素の濃度を上述の普通処方培養液よりも低くしてもよい。
また、本実施形態の高鉄含有培養液は、pHが4.5〜7.5となることが好適である。pHが4.5〜7.5の弱酸性〜ほぼ中性の状態で、Fe−EDTA等を含む高鉄含有培養液を加えることで、鉄含有量を好適に増やすことができる。pHが4.5より低い、例えば、pH3以下、又はアルカリ性であると、生育障害が発生しやすくなり植物体の新鮮重が低下する、又は、鉄含有量が低下する。
また、本実施形態の高鉄含有培養液は、培養液濃縮組成物が溶媒により希釈されて製造してもよい。
この培養液濃縮組成物は、溶媒による希釈により、水耕栽培用培養液を製造することが可能な水耕栽培用培養液の濃縮物である。この溶媒としては、普通処方培養液又は水が好適に用いられる。また、溶媒が水の場合、本実施形態の培養液濃縮組成物は、普通処方培養液と同様の多量要素及び微量要素を含める。また、上述したように、この培養液濃縮組成物は、希釈時にFe−EDTA等が特定濃度になるような容量含まれている。
なお、本実施形態の高鉄含有培養液は、上述の普通処方培養液に水耕液内に上述のFe−EDTA等を溶解する、又は、鉄が溶解された濃縮液を上述の普通処方培養液で希釈することで製造してもよい。また、高鉄含有培養液及び培養液濃縮組成物は、各成分を高濃度で含有する溶液として提供されても、溶媒に溶解させるための粉末や顆粒等の固体形状で提供されてもよい。
また、本発明の実施の形態に係る葉菜類は、上述の水耕栽培方法により栽培され、上述の普通処方培養液にて培養する場合と比較して、2.0〜15.0倍の鉄が含有されていることを特徴とする。すなわち、本実施形態の水耕栽培方法により栽培された葉菜類は、通常の普通処方培養液にて全ての期間培養して栽培した場合と比べて、2.0〜15.0倍の無機鉄及び有機鉄化合物を含ませることができる。この栽培された葉菜類は、生食が可能であり、更に、各種料理や加工食品に、通常の葉菜類と同様に用いることが可能である。
また、本実施形態の葉菜類は、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の含有量も増加させることができる。これは、Fe−EDTA等によるキレート作用等により、他の金属イオンも取り込みやすくなり、細胞毒性を低下させることができるためと考えられる。
また、本実施形態の水耕栽培方法で栽培された葉菜類中の成分は、公知の測定方法により分析することが可能である。この分析により、既存の通常の水耕栽培方法で栽培された鉄含有量が高くない葉菜類と区別可能である。この分析としては、例えば、生の野菜を手や撹拌機で物理的に潰し、絞り汁中の各成分を各種測定機器で分析する簡易分析、野菜を乾燥機で乾燥して粉砕し、酸を加えて振とう、抽出ろ過し、分光光度計やクロマトグラフィー等の測定機器で分析する詳細分析、及びこれらの組み合わせが挙げられるものの、これに限定されない。
以上のように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
従来、一般に農産物の機能性を変化させる手法としては、交雑育種や遺伝子組み換え技術が挙げられるが、両者とも長い時間と多くのコストがかかる。また遺伝子組み換え技術は、市場では受け入れられていなかった。
これに対して、栽培条件を改良して植物に機能性を付加する方法もある。しかし植物の鉄含有量を高めるために鉄濃度が高い条件下で植物を栽培した場合には、生育障害が発生することが明らかになっているため、一般に行われている栽培方法に加えて鉄の施肥量を増やすだけでは高い鉄含有量を持つ植物を栽培することはできなかった。
具体的には、従来、鉄含有量の高い植物を栽培するために、種子からの栽培期間がスプラウトよりも長い野菜の栽培を鉄濃度が高い条件で植物を栽培すると、生育障害が起こることが明らかになっていた。
たとえば、非特許文献9によると、10ppmの鉄を含む溶液でトマトを栽培すると、葉に斑点がみられたことが報告されていた。
また、非特許文献10によると、通常、鉄過剰はほとんど発生しないが、水耕栽培ではキレート鉄を多量に投与するとキュウリでは葉緑が黄化するとともに上葉は下向きにカッピングし、葉脈間の所々が黄変していた。また、ピーマンやエダマメでは葉に褐色の斑点が生じていた。高鉄分条件下における生育障害はトウガラシ(非特許文献11)やイネ(非特許文献12)等、多数報告されていた。
また、従来の鉄含有量の高い植物を栽培する水耕栽培方法において、クエン酸鉄アンモニウム等を使用して処理すると、種によって異なるものの、処理前と比較して処理期間に植物体の新鮮重が5%から15%程度低下し、生育障害が発生していた。この際、根からのカリウムイオンを主とする陽イオンの流出が認められ、吸水量も低下していた。これは、クエン酸鉄アンモニウム処理が根の細胞膜構造を破壊していると考えられた。このため、クエン酸鉄アンモニウムによる処理は、根の機能が低下しない短時間に行う必要があった。
また、従来から、一般に野菜類を水耕栽培する際には、栽培期間中に水耕液の電気伝導度(EC)を測定し、植物が養分を吸収することで電気伝導度が低下すると、養液成分を均一の割合で追加し、ECを維持する栽培方法が行われている。
したがって、従来の水耕栽培方式では、栽培期間中は、均一の養液組成の下で野菜の栽培が行われる。このため、鉄濃度の高い水耕液で野菜の水耕栽培を行うことにより、生育障害をおこしていた。
これに対して、本発明の実施の形態に係る水耕栽培方法においては、植物体の生育に影響をあたえることなく、可食部の鉄含有量が高い葉菜類を栽培することができる。すなわち、本実施形態の水耕栽培方法によって、従来のものと比較して鉄過剰障害を起こすことなく、可食部の生長を維持しつつ、収穫時の鉄含有量が高い葉菜類を提供することが可能となる。
また、本発明の実施の形態に係る水耕栽培方法においては、レタスでは、新鮮重において鉄処理と無処理の間に差が発生せず、生育障害も発生しなくなる。また、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の無機質の含有量も増えるため、栄養価が高まる。
このため、市場価値が高まる。また、流通上でも新鮮な期間を長くすることができるため、売れ残りの廃棄コスト等も少なくすることができる。
また、本発明の実施の形態に係る水耕栽培方法では、収穫前の特定期間だけ栽培環境を変化させることで農作物の機能性を向上させることができる。また、水耕液成分の置換によって葉菜類において生育障害を出さず可食部の鉄含有量を増加させることが可能であり、既存の施設や水耕液成分以外の栽培技術をそのまま利用できる。
このため、機能性の葉菜類を栽培する際のコストを抑えることができ、環境への悪影響を少なくすることができる。
また、本実施形態の水耕栽培方法は植物工場等の栽培施設に適用することが可能であり、大規模なレベルで安定的、恒常的に葉菜類を生産させることが可能である。よって、鉄欠乏の消費者に向けて合理的な値段での葉菜類の提供が可能となる。
このため、本実施形態の水耕栽培方法で製造した高鉄含有葉菜類を提供することで、世界40億人の鉄欠乏性貧血の症状緩和に貢献できる。
なお、上述の高鉄含有培養液に含有される鉄の濃度は、特定期間内で培養する際に段階的に増加又は減少させることも可能である。このように構成することで、より生育障害を起こしにくく、鉄含有量を高めた葉菜類を栽培することが可能となる。
次に図面に基づき本発明を実施例によりさらに説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
〔試験例1:特定期間と鉄濃度の検討〕
(実験目的)
コマツナ、ミズナのベビーリーフを用いて、生育障害がなく、且つ生産物の鉄含有量が多くなるようなFe−EDTAを含む高鉄含有培養液による栽培(以下、「鉄処理」という。)の条件を検討した。
(材料と方法)
材料として晩成コマツナ(Brassica rapa var. perviridis、品種:ピノグリーン)とミズナ(Brassica rapa var. nipposinica)を用いた。
(1)栽培条件
ろ紙を敷いたシャーレに薬さじで種子を散布し、蒸留水をかけた後、ふたをし、湿度70%、明期12時間(20℃)、暗期12時間(20℃)のグロースチャンバー(MLR−350H、SANYO社製)内で4日間、催芽した。催芽した植物体をピンセットでスポンジにはさみ、水耕液の上に浮かべた発泡スチロール板の穴に差し込んで、7L容バットで各8個体ずつ、湿度70%、明期12時間(18℃)、暗期12時間(14℃)の人工気象室で12日間水耕栽培した。通常処方の水耕液(普通処方培養液)として、水道水7Lとハイポニカ肥料A、B液(協和株式会社製)の500倍希釈液を用いた。水耕液には十分に通気を行った。栽培期間は移植後12日間とした。
(2)処理区
0mM区(対照区)、0.03mM区、0.3mM区、3mM区、6mMの異なる鉄濃度処理区を設け、収穫1日前(移植後11日目)、3日前(移植後9日目)、又は6日前(移植後6日目)に、通常処方の水耕液にFe−EDTA(同仁化学研究所製、エチレンジアミン−N,N,N',N'−四酢酸鉄(III)ナトリウム塩三水和物、Ethylenediamine−N,N,N',N'−tetraacetic acid, iron(III), sodium salt, trihydrate.)を通常の水耕液に含有させた水耕液(高鉄含有培養液)に入れ替えた。なお、収穫1日前、3日前処理区は、人工気象室への移植後1週間後に、通常処方の水耕液と入れ替えた。
(3)測定方法
12日間の水耕栽培後に双葉を除く地上部を収穫し、新鮮重を測定した。その後80 ℃の乾燥機で十分に乾燥させた。乾燥させたサンプルをるつぼに入れ定量し、550℃のマッフル炉(FUL220FA、ADVANTEC社製)で6時間燃焼し灰化した。灰化したサンプルの入ったるつぼに1M硝酸5mL加え、15mL遠心チューブに移した。これをもう1度行った後、1M硝酸を4mL、15mL遠心チューブに加え合計14mLとした。この溶液7mLを新しい15mL遠心チューブに移し、1M硝酸7mL加え、2倍溶液希釈した。希釈した溶液の鉄含有量をICP発光分光分析装置(iCAP 6000 SERIES、Thermo社製)で測定し、新鮮重100gあたりの鉄含有量を算出した。
(コマツナの試験結果)
本実施例の試験1のコマツナの試験結果について、下記の表1に示す。
Figure 2017060426
結果として、収穫1日前の6mM処理区では萎凋症状が、3日前3mM処理区では枯死と萎凋症状、6日前3mM処理区では枯死と錆色斑点症が見られた。
次に、図1により、コマツナの新鮮重を測定した結果について説明する。図1は、収穫1日前、3日前、6日前に異なる濃度で鉄処理したコマツナについて、収穫時の各処理区の新鮮重を示す。各値は、新鮮重の平均値±標準誤差を示す。「***」、「**」は対照区とt検定で比較して、それぞれ0.1、1%水準で有意差があることを示す。
結果として、収穫時の新鮮重は、鉄濃度が濃く、期間が長くなるほど減少する傾向にあった。収穫1日前に鉄を処理した場合、対照区(0mM区)と比較して0.3mM処理区、3mM処理区で新鮮重に有意差はなかった。
一方、収穫1日前に鉄処理した場合、対照区と比較して 0.03mM処理区で有意に増加し、6mM処理区で有意に減少した。また、収穫3日前及び6日前に鉄を処理した場合、0.3mM処理区では有意差がなかったが、対照区と比較して、3mM処理区で有意に減少した。
次に、図2により、コマツナの鉄含有量を測定した結果について説明する。図2は、収穫1日前、3日前、及び6日前に異なる濃度で鉄処理したコマツナにおける、収穫時の新鮮重100gあたりの鉄含有量(mg)を示す。各値は、新鮮重の平均値±標準誤差を示す。「***」、「*」は対照区とt検定で比較してそれぞれ0.1%、5%水準で有意差があることを示す。
結果として、各処理区における鉄含有量は、収穫1日前に鉄を処理した場合、0.3mM処理区で対照区の1.6倍、3mM区で6.7倍、6mM区で9.0倍となった。また、収穫3日前に鉄処理した場合、0.3mM区で3.2倍、3mM区で6.2倍となった。また、収穫6日前に鉄処理した場合、3mM区で2.5倍増加した。一方で収穫1日前に0.03mMで鉄処理した場合、及び収穫1日前に0.3mMで鉄処理した場合は、対照区と比較して鉄含有量に有意差は認められなかった。
以上の結果より、コマツナにおいては、収穫1日前に鉄3mMの高鉄含有培養液に移植することで、生育障害が出ず、鉄含有量が有意に増加する。すなわち、これが、鉄含有量を増加させるうえで最も有効な処理条件であった。
(ミズナの試験結果)
コマツナの結果より、ミズナの実験区は、収穫1日前及び6日前処理区に限定した。
このミズナの試験結果について、下記の表2に示す。
Figure 2017060426
なお、収穫6日前の6mMで鉄処理した場合は、植物体は全て枯死し、サンプルは採れなかった。また、収穫6日前に0.3mM及び3mMで鉄処理した場合は、枯死が見られた。
次に、図3に収穫時の各処理区の新鮮重を示す。具体的には、図3は、収穫1日前、6日前に異なる濃度の鉄を処理したミズナの新鮮重である。各値は、新鮮重の平均値±標準誤差を示す。「***」は、対照区とt検定で比較して0.1%水準で有意差があることを示す。
結果として、ミズナは、コマツナ同様、鉄濃度が濃く、期間が長くなるほど新鮮重が減少する傾向にあった。ミズナにおいては、収穫1日前鉄処理0.3mM区及び3mM区で有意に新鮮重が減少した。収穫1日前鉄処理0.03mM区、0.3mM区、及び3mM区においては、有意差はなかった。
図4に鉄含有量を示す。具体的には、図4は、収穫1日前、6日前に異なる濃度の鉄を処理したミズナにおける収穫時の新鮮重100gあたりの鉄含有量(mg)を示す。各値は、新鮮重の平均値±標準誤差を示す。「**」、「*」は対照区とt検定で比較してそれぞれ1.5%水準で有意差があることを示す。
結果として、ミズナにおいては、対照区と比較して、収穫1日前鉄処理0.3mM区以外で鉄含有量は増加した。収穫1日前鉄処理0.3mM区で対照区の1.6倍、3mM区で2.8倍、収穫、6日前鉄処理0.3mM区で2.5倍増加した。
よって、枯死せず、鉄含有量が有意に増加した、収穫1日前の3mM処理が、ミズナにおいても最も有効な鉄処理条件であった。
〔試験例2:栽培方法の他品種への適応〕
(実験目的)
試験例1において、どちらも収穫1日前にFe−EDTAを含む高鉄含有培養液を3mM加えた鉄処理が有効であったため、この濃度の鉄処理を、他種の葉菜類のベビーリーフに適用できるか否かを試験した。
(材料と方法)
材料として、ホウレンソウ(Spinacia oleracea L)、レタス(Lactuca sativa L.、品種:レッドロメイン)、カラシナ(Brassica juncea (L.) Czern. et Coss. var. cernua Jorb. et Hem、品種:レッドマスタード)、ルッコラ(Eruca vesicaria)を用いた。
(1)栽培条件
栽培条件は試験例1と同様であった。なお、各葉菜類の催芽日数、水耕栽培日数を、下記の表3に示す。
Figure 2017060426
(2)処理区
試験例1で確立した栽培方法と同様に、0mM区(対照区)、3mM区を設け、収穫1日前に、高鉄含有培養液に入れ替えることで鉄処理した。なお、人工気象室への移植後1週間後に、普通処方培養液に入れ替えた。
(3)測定方法
測定方法は試験例1に従い鉄含有量の測定を行った。
(試験結果)
下記の表4に、試験例2の鉄処理による可食部の鉄含有量の変化を示す。
Figure 2017060426
対照区と比較し、ホウレンソウでは2.6倍、レタスでは12.6倍、カラシナでは5.3倍、ルッコラでは12倍、有意に増加した。
〔試験例3:通常の大きさの植物体への適応〕
(実験目的)
試験例1と試験例2において、ベビールーフで有効な栽培法を確立したため、鉄処理を通常の大きさの植物体に適用できるか検討した。
(材料と方法)
材料としてリーフレタス(学名 Lactuca sativa var. crispa、品種:ノーチップ、横浜植木株式会社社製)を供試した。
(1)栽培条件
種子を葉菜用培地(スポンジ)に播種し、湿度70%、明期12時間(20℃)、暗期1時間(20℃)のグロースチャンバー(MLR−350、SANYO社製)内で10日間発芽処理をした。発芽した植物体を8個体選抜し、発砲スチロール板の穴に差し込み、水耕液の入った7Lバットの上に移植した。空気ポンプを用いて、水耕液に十分に酸素を送った。人工気象室(KODIC−2100、KOITO社製)内で、湿度70%、明期12時間(18℃)、暗期12時間(14℃)の条件で、4週間水耕栽培した。普通処方培養液はハイポニカ肥料(A、B液、協和株式会社社製)の500倍希釈液を用いた。普通処方培養液は、1週間ごとに交換した。普通処方培養液には十分に通気を行った。栽培期間は移植後21日間とした。
(2)処理区
試験例1で確立した栽培方法と同様に、Fe−EDTAを含む高鉄含有培養液の0mM区(対照区)、3mM区を設け、収穫1日前及び3日前に、通常処方の水耕液に鉄を処理した水耕液に入れ替えた。
(3)測定方法
測定方法は試験例1と同様に、鉄含有量の測定を行った。
(試験結果)
図5に収穫時の各処理区の新鮮重を示す。具体的に、図5は、収穫1日前及び2日前において、3mMで鉄処理したレタスの新鮮重を示す。各値は、新鮮重の平均値±標準誤差を示す。
結果として、対照区と比較して、鉄を収穫1日前及び2日前に処理した処理区では、新鮮重に有意差は認められなかった。
図6に鉄含有量を示す。具体的には、収穫1日前及び2日前に3mMの鉄処理したレタスにおける収穫時の新鮮重100gあたりの鉄含有量(mg)を示す。各値は、新鮮重の平均値±標準誤差を示す。「***」は、対照区とt検定で比較して0.1%水準で有意差があることを示す。
結果として、鉄含有量は、収穫1日前鉄処理した処理区において対照区の2.7倍、収穫2日前処理区では対照区の5.6倍に増加した。収穫2日前鉄処理した処理区では、収穫時に数枚の葉で錆び状斑点の見られた植物体もあった。収穫したものの根を切り取り、暗所4度で3日間保存したが、収穫1日前処理区及び2日前処理区の植物体では対照区との外見的な差は認められなかった。
これらの結果、通常の大きさの葉菜類においてはベビーリーフと同様に収穫1日前に鉄処理を行うことで鉄含有量を高められる。また、僅かに生育障害が出る可能性もあるものの、鉄含有量を高めるために収穫2日前に鉄処理を行うことも好適であった。
(結果のまとめ)
本発明の試験例1〜試験例3では、収穫の短期間に鉄を適切な濃度で処理することで、生育障害を起こすことなくベビーリーフ及び通常の大きさの植物体において鉄含有量を大きく増加させることが可能になった。
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。
本発明の水耕栽培方法は、世界的に重大な栄養障害の鉄欠乏症を改善することを高鉄含有の葉菜類を提供することを可能とするため、産業上に利用することができる。

Claims (8)

  1. 水耕栽培用の普通処方培養液により葉菜類を栽培し、
    収穫前の特定期間だけ、前記普通処方培養液よりも鉄含有量が多い高鉄含有培養液により前記葉菜類を栽培する
    ことを特徴とする水耕栽培方法。
  2. 前記高鉄含有培養液により前記葉菜類を栽培する前記特定期間は、1〜4日である
    ことを特徴とする請求項1に記載の水耕栽培方法。
  3. 前記高鉄含有培養液は、0.3mM〜6.0mMの鉄を含有する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水耕栽培方法。
  4. 前記高鉄含有培養液は、pHが4.5〜7.5である
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水耕栽培方法。
  5. 前記高鉄含有培養液は、エチレンジアミン四酢酸鉄キレートを含む
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水耕栽培方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水耕栽培方法により栽培され、
    前記普通処方培養液だけで培養する場合と比較して、2.0〜15.0倍の鉄が含有されている
    ことを特徴とする葉菜類。
  7. 葉菜類を栽培するための水耕栽培用の培養液であって、
    0.3mM〜6.0mMの鉄を含有する
    ことを特徴とする培養液。
  8. 溶媒による希釈により、葉菜類を栽培するための水耕栽培用の培養液となる培養液濃縮組成物であって、
    希釈後の前記培養液が0.3mM〜6.0mMの鉄を含有するよう調整された
    ことを特徴とする培養液濃縮組成物。
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