JP6422188B2 - 水耕栽培方法、葉菜類の製造方法、培養液、及び培養液製造方法。 - Google Patents
水耕栽培方法、葉菜類の製造方法、培養液、及び培養液製造方法。 Download PDFInfo
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Description
また、生体にて唯一の血糖降下作用を示すホルモンであるインスリンは、膵β細胞から分泌される。膵β細胞は生体内でもっとも高い亜鉛含有量を示すため、亜鉛と糖尿病の関係は以前から関心が集まっている(非特許文献2参照)。
しかし、日本人の主な亜鉛供給源は、穀物、魚介類、肉類であり、カルシウムと同様に動物性食品への依存度が比較的高いため、通常の食生活において十分な亜鉛摂取を確保することは難しいと考えられる。したがって、日本において亜鉛は、公衆栄養的な意味で強化食品に存在意義がある数少ない栄養素と思われる。また、世界的に見ると約15億人が亜鉛欠乏状態にあると報告されている(非特許文献4参照)。
特許文献1の技術により、アブラナ科植物の葉に含まれる亜鉛含有量を増加させることができる。
また、特許文献1に記載されているグルタチオンだけを用いる方法では、亜鉛含有量を高める割合が低かった。
本発明の水耕栽培方法は、前記高亜鉛含有培養液は、2ppm〜50ppmのグルタチオンを更に含有することを特徴とする。
本発明の水耕栽培方法は、前記高亜鉛含有培養液は、硫酸亜鉛を含むことを特徴とする。
本発明の葉菜類の製造方法は、葉菜類を、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水耕栽培方法により栽培することを特徴とする。
本発明の培養液は、葉菜類を栽培するための水耕栽培用の培養液であって、2ppm〜10ppmの亜鉛を含有し、収穫の3〜10日前から使用されることを特徴とする。
本発明の培養液は、2ppm〜50ppmのグルタチオンを更に含有することを特徴とする。
本発明の培養液製造方法は、培養液濃縮組成物を溶媒により希釈し、請求項5又は6に記載の培養液を製造することを特徴とする。
上述したように、亜鉛含有量を高めるために、亜鉛濃度が高い条件下で植物を栽培した場合、生育障害(生理障害)が発生することが明らかになっている。このため、一般に行われている栽培方法に加えて亜鉛の施肥量を増やすだけでは、高い亜鉛含有量を持つ植物を栽培することはできなかった。
このため、本発明の発明者らは鋭意研究を行い、水耕栽培の栽培期間中に水耕液(培養液)の組成を変化させ、培養液の亜鉛濃度と亜鉛施用の時期を調節することで、従来の手法で栽培したものと比較して植物体内における亜鉛含有量の増加に伴う生長障害を起こさせず、収穫時の可食部における単位新鮮重あたりの亜鉛含有量を従来の栽培方法で栽培したものよりも増加させることが可能な葉菜類の栽培方法を確立するに至った。加えて、亜鉛濃度と亜鉛施用の時期において、グルタチオンで処理することにより、更に亜鉛含有量を増加させることを可能とした。
この普通処方培養液は、養液栽培で使われている通常の配合割合の培養液を使用可能である。たとえば、この普通処方培養液は、葉菜類の培養栽培向けの多量必須元素及び微量必須元素を含有する。このうち、多量必須元素は、例えば、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、イオウの6元素である。また、微量必須元素は、例えば、鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデン、ホウ素、塩素の7元素である。
このように、収穫前の特定期間になるまで、多量必須元素及び微量必須元素を含有する普通処方培養液だけで、葉菜類を通常の栽培方法で水耕栽培することができ、特に特別な処理をする必要がないため、コストを抑えることができる。
また、本実施形態の水耕栽培方法として、例えば、噴霧水耕方式又は湛液方式で栽培してもよい。湛液方式の場合、培養液の流れを作らない静置状態で栽培してもよいし、流れのある培養液で栽培してもよい。これは、収穫前の特定期間でも同様である。
また、本実施形態の水耕栽培方法は、太陽光を利用した通常のハウス水耕栽培等に適用されても、LED(Light Emitting Diode)を利用した植物工場での水耕栽培等に適用されてもよい。
具体的には、本実施形態の高亜鉛含有培養液に、グルタチオンを濃度が2ppm〜50ppmになるよう更に加える。この際、最適な濃度は5ppm程度であり、葉菜類の種類により調整可能である。これにより、栽培された葉菜類の亜鉛含有量を亜鉛のみ調整した場合よりも増加させることができる。グルタチオンの濃度が2ppm未満であると、亜鉛を十分に葉菜類の植物体に含ませることができず、濃度が50ppmより大きいと、生育障害を起こす確率が高まる。
なお、後述する実施例では、酸化型グルタチオン(Glutathione−S−S−Glutathione、以下、「GSSG」と呼ぶ。)を用いたが、本発明において用いるグルタチオンの種類は、酸化型グルタチオン若しくは還元型グルタチオン(Glutathione−SH、以下、「GSH」と呼ぶ。)のどちらでもよい。
また、本実施形態の高亜鉛含有培養液は、他に、上述の普通処方培養液と同様に、葉菜類の栽培に用いられる通常量のカリウム、マグネシウム、リン、カルシウム、及び窒素の多量要素と、通常量の亜鉛、ホウ素、銅、モリブデンの微量要素を含有している。また、本実施形態の高亜鉛含有培養液は、pHが4.5〜7.5となることが好適である。
なお、本実施形態の高亜鉛含有培養液は、浸透圧等を下げ、葉菜類に亜鉛を多く含有させるため、葉菜類の種類に合わせて適宜、多量要素の濃度を上述の普通処方培養液よりも低くしてもよい。
この培養液濃縮組成物は、溶媒による希釈により、水耕栽培用培養液を製造することが可能な水耕栽培用培養液の濃縮物である。この溶媒としては、普通処方培養液又は水が好適に用いられる。また、溶媒が水の場合、本実施形態の培養液濃縮組成物は、普通処方培養液と同様の多量要素及び微量要素を含める。
なお、本実施形態の高亜鉛含有培養液は、上述の普通処方培養液に上述の亜鉛を溶解する、又は、亜鉛が溶解された濃縮液を上述の普通処方培養液で希釈することで製造してもよい。
また、高亜鉛含有培養液及び培養液濃縮組成物は、各成分を高濃度で含有する溶液として提供されても、溶媒に溶解させるための粉末や顆粒等の固体形状で提供されてもよい。
具体的には、本実施形態の水耕栽培方法では、葉菜類を通常処方の水耕液(普通処方培養液)によって水耕栽培し、収穫の3日から10日前に養液内に亜鉛を溶解し、又は、亜鉛を溶解した濃縮液を養液に希釈することで、養液内の亜鉛濃度を上述のように調整した高亜鉛含有培養液で栽培する。加えて、高亜鉛含有培養液で栽培される特定期間においては、亜鉛の他にグルタチオンを溶解して含ませる等のグルタチオン処理を行ってもよい。また、この特定期間は、7日を最適期間として、葉菜類の種類、ベビーリーフか否か等により調整可能である。ここで、特定期間が3日より前だと十分に亜鉛の含有量を増やすことができず、10日より長いと生育障害を起こす可能性が高まる。
本実施形態の水耕栽培方法で栽培された葉菜類中の成分は、公知の測定方法により分析することが可能である。この分析により、既存の通常の水耕栽培方法で栽培された亜鉛含有量が高くない葉菜類と区別可能である。この分析としては、例えば、生の野菜を手や撹拌機で物理的に潰し、絞り汁中の各成分を各種測定機器で分析する簡易分析や、野菜を乾燥機で乾燥して粉砕し、酸を加えて振とう、抽出ろ過し、分光光度計やクロマトグラフィー等の測定機器で分析する詳細分析や、これらの組み合わせが挙げられるものの、これに限定されない。
従来、一般に農産物の機能性を変化させる手法としては、交雑育種や遺伝子組み換え技術が挙げられるが、両者とも長い時間と多くのコストがかかる。また遺伝子組み換え技術は、市場では受け入れられていなかった。
したがって、従来の水耕栽培方式では、栽培期間中は、均一の養液組成の下で野菜の栽培が行われる。このため、亜鉛濃度の高い水耕液で野菜の水耕栽培を行うと生育障害をおこしていた。
また、本発明の実施の形態に係る水耕栽培方法においては、亜鉛と同時にグルタチオンを適切な濃度で培養液に含有させることで、さらに亜鉛含有量を増加させることが可能になる。
このため、機能性の葉菜類を栽培する際のコストを抑えることができ、環境への悪影響を少なくすることができる。
また、本実施形態の水耕栽培方法は植物工場等の栽培施設に適用することが可能であり、大規模なレベルで安定的、恒常的に葉菜類を生産させることが可能である。よって、亜鉛欠乏の消費者に向けて合理的な値段での葉菜類の提供が可能となる。
このため、本実施形態の水耕栽培方法で製造した高亜鉛含有葉菜類を提供することで、世界15億人の亜鉛欠乏性貧血の症状緩和に貢献できる。
(実験目的)
リーフレタスを用いて、生育障害がなく、かつ亜鉛含有量が多くなるよう、硫酸亜鉛を含む高亜鉛含有培養液による栽培(以下、「亜鉛処理」という)の条件を検討した。
材料としてリーフレタス(学名:Lactuca sativa var. crispa、品種:ノーチップ、横浜植木株式会社製)を供試した。
種子を葉菜用培地(スポンジ)に播種し、湿度70%、明期12時間(20℃)、暗期1時間(20℃)のグロースチャンバー(MLR−350、SANYO社製)内で10日間発芽処理をした。発芽した植物体を8個体選抜し、発砲スチロール板の穴に差し込み、培養液の入った7Lバットの上に移植した。空気ポンプを用いて培養液に十分に酸素を送った。人工気象室(KODIC−2100、KOITO社製)内で、湿度70%、明期12時間(18℃)、暗期12時間(14℃)の条件で、4週間水耕栽培した。普通処方培養液として、ハイポニカ肥料(A液とB液・協和株式会社製)の500倍希釈液を用いた。培養液は、1週間ごとに交換した。培養液には十分に通気を行った。栽培期間は移植後28日間とした。
目的を達成するために以下のI.〜III.の実験を行い、それぞれにおいて培養液中の亜鉛濃度又は、亜鉛処理の期間が異なる処理区を設定した。なお、普通処方培養液(対照区、通常栽培の培養液)の亜鉛濃度は0.02ppmであった。
I.栽培期間(4週間)を通して、通常処方の水耕液に硫酸亜鉛を含有させた高亜鉛含有培養液中の亜鉛濃度を0.5ppm、5ppmに調整した亜鉛処理区、及び無処理区(対照区)。
II.収穫1、3、7、14日前から培養液中の亜鉛濃度が5ppmになるよう調整した高亜鉛含有培養液で栽培した亜鉛処理区、及び対照区。
III.収穫7日前から培養液中の亜鉛濃度が25ppm、50ppmになるよう調整した高亜鉛含有培養液で栽培した亜鉛処理区、及び対照区。
28日間栽培した後収穫し、植物の地上部の新鮮重を測定した。80℃の乾燥機(FC−610、ADVANTEC社製)で5日間乾燥し、乾物重を測定した後、50mL遠沈管にサンプルを入れ、アルミナボールを用いてサンプルを粉末状になるまで砕いた。粉末状になったサンプルを、るつぼに約0.3g入れ正確に定量し、550℃の電気マッフル炉(FUL220FA、ADVANTEC社製)で6時間焼いた。焼いたサンプルの入ったるつぼに1M硝酸5mL加え、15mL容遠心チューブに移した。これを2回行った後、さらに4mL加え合計14mLとした。この溶液700μLを別の15mL容遠心チューブに移し、さらに13.3mLの1M硝酸を加え、20倍希釈した。この溶液をICP発光分光分析装置(iCAP6000SERIES、Thermo社製)で測定し、亜鉛含有量を測定した。
I.栽培期間を通して、培養液中の亜鉛濃度を0.5ppm、5ppmに調整した処理をした場合:
図1に、収穫時の可食部の新鮮重を示す。具体的には、栽培期間を通して培養液中に異なる濃度の亜鉛を処理した場合の新鮮重を示す。各値は、平均値±標準誤差を示す。***は、対照区とt検定で比較して0.1%水準で有意差があることを示す。
結果として、地上部の生長は対照区と比較して0.5ppm区では変化はみられず、5ppm区では対照区の約30%に減少した。
結果として、可食部の亜鉛含有量は、0.5ppm区では対照区の約5倍、5ppm区では対照区の約43倍と、培養液中の亜鉛濃度が高くなるほど増加した。
これに対して、生育障害を起こすことなく亜鉛含有量をさらに増加させる方法を検討した。以下では、生育障害の出た培養液中の亜鉛濃度を5ppm、又は、それ以上とした場合の亜鉛処理の期間を検討した。
図3に、収穫時の可食部の新鮮重を示す。具体的には、収穫前の異なる期間に培養液中の亜鉛濃度を5ppmに処理した場合の新鮮重を示す。各値は、平均値±標準誤差を示す。*及び***は、対照区とt検定で比較して、それぞれ5%及び0.1%水準で有意差があることを示す。
結果として、地上部の新鮮重は対照区と比較して1日前処理区では対照区の約1.8倍に、3日前処理区では対照区の約2.4倍に、7日前処理区では対照区の約1.5倍に増加した。一方、14日前処理区では、地上部の生長は対照区と比較して、対照区の約47%に減少し、葉が褐色になる可視障害も認められた。したがって、収穫7日前よりも早く亜鉛を処理すると、生育障害が出ることが明らかになった。
結果として、収穫1、3、7、14日前に処理した場合、可食部の亜鉛含有量は、対照区と比較して、それぞれ、約1.6倍、1.6倍、8倍、36倍と有意に増加した。
図5に、収穫時の可食部の新鮮重を示す。具体的には、収穫7日前に培養液中に異なる濃度の亜鉛を処理した場合の新鮮重を示す。各値は、平均値±標準誤差を示す。**及び***は、対照区とt検定で比較して、それぞれ1%及び0.1%水準で有意差があることを示す。
結果として、地上部の新鮮重は対照区と比較して、25ppm区では対照区の約16%に、50ppm区では対照区の約18%に減少した。したがって、高亜鉛処理では生育障害が出ることが明らかになった。
結果として、収穫7日前に培養液へ亜鉛25ppm、50ppmが含有されるよう処理した場合、対照区の約41倍、64倍であり、II.の実験で示した5ppm処理した場合と比較して、亜鉛含有量は約5倍、約7.8倍と有意に増加した。
III.の実験の結果より、収穫7日前に培養液へ亜鉛25、50ppmの高濃度処理した場合、亜鉛含有量はいずれも有意に増加したが、新鮮重は有意に減少した。したがって、亜鉛処理が高濃度の場合、亜鉛含有量は顕著に増加するが、生育障害が出たと考えられる。このため、栽培条件として適切ではないと考えられた。
(実験目的)
リーフレタスを用いて、酸化型グルタチオン(GSSG)を培養液に含有させる処理した時、生育と亜鉛含有量の変化を検討した。
試験例1と同様に行った。
また、(1)栽培条件、(3)測定方法については、試験例1と同様に行った。
以下のIとIIの実験を行い、普通処方培養液(通常栽培の培養液)にGSSGが特定濃度含有されるように加えて調整する処理(以下、「GSSG処理」という。)をした。普通処方培養液(対照区)の亜鉛濃度は0.02ppmであった。
I.栽培期間28日間(4週間)を通して、培養液中に10、100、1000ppmのGSSG処理した処理区、及び無処理区(対照区)。
II.収穫21、14、7日前に10ppmのGSSG処理をした処理区、及び無処理区(対照区)。
I.栽培期間28日間(4週間)を通して、10、100、1000ppmの含有量のGSSG処理した場合:
図7に収穫時の可食部の新鮮重を示した。具体的には、栽培期間を通して培養液中に異なる濃度のGSSGを処理した場合の新鮮重を示す。各値は、平均値±標準誤差を示す。***は、対照区とt検定で比較して0.1%水準で有意差があることを示す。
結果として、対照区と比較すると、高濃度のGSSG処理ほど地上部の生育が阻害された。10ppm区では対照区の約56%に、100ppm区では対照区の約22%に、1000ppm区では対照区の約3%に減少した。したがって、栽培期間を通してGSSG処理し続けると、生育障害が出ることが明らかになった。
結果として、可食部の亜鉛含有量は、100ppm区では対照区と有意差がなかったが、10ppm区、1000ppm区では対照区より有意に増加した。
以上の結果より、栽培期間全体でのGSSG処理では、亜鉛含有量が増加する場合もあるが、生育が阻害されるため有効でないことが明らかとなった。
II.収穫21、14、7日前に10ppmのGSSG処理をした場合:
図9に、収穫時の可食部の新鮮重を示す。具体的には、収穫前の異なる期間に培養液中のGSSG濃度を10ppmとなるよう処理した場合の新鮮重を示す。各値は、新鮮重の平均値±標準誤差を示す。
結果として、地上部の生長は、いずれの処理区においても対照区と比較して有意差は認められなかった。
結果として、可食部の亜鉛含有量は、各処理区において、対照区よりも有意に低下した。
すなわち、I.とII.より、普通処方培養液での栽培時にGSSG処理すると、亜鉛含有量に有効な効果がない、又は生育が阻害されることが明らかになった。
(実験目的)
リーフレタスを用いて、試験例1で有効であった亜鉛処理と同時に、グルタチオン処理した際の生育と亜鉛含有量の変化を検討した。
試験例1、試験例2と同様に行った。
また、(1)栽培条件、(3)測定方法については、試験例1、試験例2と同様に行った。
試験例1の結果より収穫7日前に通常の培養液(普通処方培養液)に亜鉛処理をし、さらにGSSG処理をした。
・収穫7日前に普通処方培養液に硫酸亜鉛を溶解し、亜鉛濃度を5ppmに調整し、同時にGSSGを溶解し濃度を10ppmに調整した処理区(処理区A)
・収穫7日前に普通処方培養液に硫酸亜鉛を溶解し、亜鉛濃度を5ppmに調整し、同時にGSSGを溶解し濃度を25ppmに調整した処理区(処理区B)
・無処理区(対照区)
I.亜鉛処理とGSSG処理を同時行った場合:
図11に、収穫時の可食部の新鮮重を示す。具体的には、収穫7日前に培養液中の亜鉛濃度を5ppmに処理し同時にGSSGを溶解し濃度を10ppm(処理区A)又は、25ppmに調整した(処理区B)場合の新鮮重を示す。各値は、平均値±標準誤差を示す。
結果として、地上部の生長は、いずれの処理区においても、対照区と比較して有意差は認められなかった。
結果として、処理区A及び処理区Bでは、収穫時の可食部の亜鉛含有量が対照区の16倍になった。これを試験例1で収穫7日前に培養液中の亜鉛濃度のみを5ppmに調整した場合と比較すると、亜鉛含有量は2倍であった。
(実験目的)
試験例1及び試験例3で示された条件を他品種、他種の葉菜類に適応して栽培し、生育と亜鉛含有量の変化を検討した。
材料として、レッドリーフレタス(学名:Lactuca sativa var. crispa、品種:ロザンナ、横浜植木株式会社製)、コマツナ(学名:Brassica rapa var.perviridis、品種:楽天、タキイ種苗株式会社製)を供試した。
試験例1、試験例2と同様に行った。ただし、コマツナは栽培期間を移植後21日間とした。
試験例1の結果より収穫7日前に亜鉛処理し、さらにGSSG処理した以下の処理区を設定した。また収穫3日前に亜鉛処理のみを行う処理区も設定した。
(処理区)
・収穫3日前に培養液に硫酸亜鉛を溶解し亜鉛濃度を5ppmに調整した処理区(処理区C)
・収穫7日前に培養液に硫酸亜鉛を溶解し亜鉛濃度を5ppmに調整した処理区(処理区D;試験例1の最適条件)
・収穫7日前に培養液に硫酸亜鉛とGSSGを溶解し亜鉛濃度を5ppm、GSSG濃度を10ppmに同時に調整した処理区(処理区E;試験例3の最適条件処理区Aと同じ)
・対照区
なお、普通処方培養液(対照区、通常栽培の培養液)の亜鉛濃度は0.02ppmであった。
試験例1と同様に行った。
図13に、収穫時の可食部の新鮮重を示す。具体的には、レッドリーフレタスを用いて、収穫3日前に培養液中の亜鉛濃度を5ppmに処理(処理区C)、収穫7日前に培養液中の亜鉛濃度を5ppmに処理(処理区D)、及び収穫7日前に培養液中の亜鉛濃度を5ppmに処理し同時にGSSGを溶解し濃度を10ppmに処理(処理区E)した場合の新鮮重を示す。各値は、平均値±標準誤差を示す。*は、対照区とt検定で比較して5%水準で有意差があることを示す。
結果として、地上部の生長は、処理区C及び処理区Eでは対照区と比較して有意な差は認められなかった。一方で、処理区Dにおいては、対照区と比較して有意な減少が認められた。
結果として、亜鉛含有量は、対照区と比較して処理区Cで6.6倍、処理区Dで9.8倍、処理区Eで20倍と、いずれの処理区においても有意に増加した。
以上の結果より、処理区Eにおいて生育障害を起こさず亜鉛含有量を最も効率的に上昇させることができ、これは試験例3で示した結果と一致した。
図15に、収穫時の可食部の新鮮重を示す。具体的には、コマツナを用いて、収穫3日前に培養液中の亜鉛濃度を5ppmに処理(処理区C)、収穫7日前に培養液中の亜鉛濃度を5ppmに処理(処理区D)、及び収穫7日前に培養液中の亜鉛濃度を5ppmに処理し同時にGSSGを溶解し濃度を10ppmに処理(処理区E)した場合の新鮮重を示す。各値は、平均値±標準誤差を示す。*は、対照区とt検定で比較して5%水準で有意差があることを示す。
結果として、地上部の生長は、処理区Cでは対照区と比較して有意な差は認められなかった。一方、処理区D及び処理区Eにおいては、対照区と比較して有意な減少が認められた。
結果として、亜鉛含有量は、対照区と比較して処理区Cで14倍、処理区Dで62倍、処理区Eで75倍と、いずれの処理区においても有意に増加した。
以上の結果により、亜鉛のみを収穫3日前に処理した処理区Cが生育障害を起こさず亜鉛含有量を上昇させることができた。この結果は、レタスを用いた場合の結果と異なった。
一方で収穫7日前に培養液に亜鉛を処理した処理区D及び培養液に亜鉛とGSSGを処理した処理区Eにおいても、生育は低下したが、対照区と比べて亜鉛含有量の増加率が大きく、利用価値があると考えられる。
Claims (7)
- 水耕栽培用の普通処方培養液により葉菜類を栽培し、
収穫の3〜10日前から、2ppm〜10ppmの亜鉛を含有する高亜鉛含有培養液により前記葉菜類を栽培する
ことを特徴とする水耕栽培方法。 - 前記高亜鉛含有培養液は、
2ppm〜50ppmのグルタチオンを更に含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の水耕栽培方法。 - 前記高亜鉛含有培養液は、硫酸亜鉛を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水耕栽培方法。 - 葉菜類を、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水耕栽培方法により栽培する
ことを特徴とする葉菜類の製造方法。 - 葉菜類を栽培するための水耕栽培用の培養液であって、
2ppm〜10ppmの亜鉛を含有し、
収穫の3〜10日前から使用される
ことを特徴とする培養液。 - 2ppm〜50ppmのグルタチオンを更に含有する
ことを特徴とする請求項5に記載の培養液。 - 培養液濃縮組成物を溶媒により希釈し、請求項5又は6に記載の培養液を製造する
ことを特徴とする培養液製造方法。
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