JP2017060421A - ピキア酵母を用いた遺伝子組換えによるアスパルティックプロテアーゼの製造方法 - Google Patents

ピキア酵母を用いた遺伝子組換えによるアスパルティックプロテアーゼの製造方法 Download PDF

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【課題】ピキア酵母を用いて、活性体のアスパルティックプロテアーゼを遺伝子工学的手法により、安定的に大量に製造する製造方法の提案。【解決手段】(1)アスパルティックプロテアーゼを分泌するAspergillus属糸状菌からアスパルティックプロテアーゼ遺伝子をクローニングする工程と、(2)ピキア酵母での異種タンパク質の発現・制御可能なプラスミドの構築工程と、(3)前記プラスミドをピキア酵母に導入して形質転換体を調製する工程と、(4)形質転換体を培養してアスパルティックプロテアーゼを産生する工程と、(5)産生した前記プロテアーゼを成熟化させる工程と、を含む、活性体アスパルティックプロテアーゼの製造方法。アスパルティックプロテアーゼを産生する工程(4)において培養にメタノール水溶液を使用し、前記メタノール水溶液の濃度が0.1〜1.0重量%の範囲である、活性体アスパルティックプロテアーゼの製造方法。【選択図】図4

Description

本発明は、ピキア酵母を用いた遺伝子組換えによるアスパルティックプロテアーゼの製造方法に関する。
アスパルティックプロテアーゼはプロテアーゼの一種で、弱酸性条件下において安定かつ高活性を示す酵素タンパク質である。
アスパルティックプロテアーゼに属するプロテアーゼは、キモシンに代表されるように乳中のカゼインタンパク質を限定分解することにより、凝乳を引き起こすことからチーズ製造に用いられている(特許文献1)。
また、当該ファミリーに属する酵素の中には、ミオグロビンやヘモグロビンを部分分解することにより、それらを含む溶液の脱色を引き起こすプロテアーゼも存在する(非特許文献1)。
ところでミオグロビンやヘモグロビンを含む溶液の脱色に関わるプロテアーゼを糸状菌等から調製する場合、種菌の調製から糖類を多量に含むペプトン-酵母エキス-麦芽エキス-グルコース培地での培養、各種クロマトグラフィーによる培養上清中からの精製には、数週間を要する(特許文献2)。
よって、純度の高い酵素製剤としての供給法として糸状菌等の培養上清からの調製は必ずしも効率的とは断言できない状況にある。
一方、糸状菌由来アスパルティックプロテアーゼを親株より調製する代替製造方法として、遺伝子組換え技術を利用する方法が試みられている。
例えば宿主として大腸菌を用いる方法が報告されている。
前記宿主として大腸菌を用いる方法としては、まず、組み換えアスパルティックプロテアーゼを不溶性タンパク質として得て、酸性条件下でリフォールディングと自己触媒的な活性化、カラムクロマトグラフィーによる前駆体タンパク質の回収など、活性体を得るまでに数ステップのステップが必要である(非特許文献2)。
また、宿主としてBacillus brevisを用いてアスパルティックプロテアーゼを産生する方法も知られている。
まず、前駆体タンパク質を得て、酸性条件下(pH 2)でのインキュベートを行うことで組み換えタンパク質の活性化を行う。大腸菌を宿主として用いる方法と比較し、組み換えプロテアーゼを菌体外に分泌させることが可能であるが、培養液1Lあたり50 mg程度の前駆体タンパク質しか得ることができない(非特許文献3)。
特開平6−261753号公報 特開2009−219483号公報
J.Sci.Food Agric.93巻 1349〜1355(2013年) J. Biochem. 120、974〜981(1993年) Eur. J. Biochem. 237巻、719〜725(1996年)
本発明の目的は、ピキア酵母を用いて、活性体のアスパルティックプロテアーゼを遺伝子工学的手法により、安定的にかつ大量に製造できる製造方法を確立することにある。
前記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、Aspergillus属糸状菌からアスパルティックプロテアーゼ遺伝子をクローニングする工程を含む活性体アスパルティックプロテアーゼの製造方法が、前記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
[1](1)アスパルティックプロテアーゼを分泌するAspergillus属糸状菌からアスパルティックプロテアーゼ遺伝子をクローニングする工程と、
(2)ピキア酵母での異種タンパク質の発現・制御可能なプラスミドの構築工程と、
(3)前記プラスミドをピキア酵母に導入して形質転換体を調製する工程と、
(4)形質転換体を培養してアスパルティックプロテアーゼを産生する工程と、
(5)産生した前記プロテアーゼを成熟化させる工程と、
を含むことを特徴とする、活性体アスパルティックプロテアーゼの製造方法を提供するものである。
また本発明の一つは、
[2]前記アスパルティックプロテアーゼを分泌するAspergillus属糸状菌からクローニングされるアスパルティックプロテアーゼ遺伝子の塩基配列数が900から1200bpの範囲である、前記[1]に記載の活性体アスパルティックプロテアーゼの製造方法を提供するものである。
また本発明の一つは、
[3]前記Aspergillus属糸状菌が、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに受託番号NITE P−73菌株として寄託されているAspergillus repens(アスペルギルス レペンス) MK82および同受託番号NITE AP−02122菌株として寄託されているAspergillus glaucus(アスペルギルス グラウカス) MA0196の少なくとも一方である、前記[1]または[2]に記載の活性体アスパルティックプロテアーゼの製造方法を提供するものである。
また本発明の一つは、
[4]形質転換体を培養してアスパルティックプロテアーゼを産生する工程(4)において培養にメタノール水溶液を使用し、前記メタノール水溶液の濃度が0.1〜1.0重量%の範囲である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の活性体アスパルティックプロテアーゼの製造方法を提供するものである。
また本発明の一つは、
[5]前記活性体アスパルティックプロテアーゼが、ヘモグロビンおよびミオグロビンの少なくとも一方の分解用活性体アスパルティックプロテアーゼである、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の活性体アスパルティックプロテアーゼの製造方法を提供するものである。
本発明の活性体アスパルティックプロテアーゼの製造方法によれば、ピキア酵母を用いて、活性体のアスパルティックプロテアーゼを遺伝子工学的手法により、安定的にかつ大量に製造できる。
特にAspergillus属糸状菌としてAspergillus repens MK82およびAspergillus glaucus MA0196の少なくとも一種を使用した場合には、Aspergillus repens MK82およびAspergillus glaucus MA0196の少なくとも一種由来のアスパルティックプロテアーゼと同じ完全分子構造を有し、しかもプロテアーゼ活性も同一である組換えアスパルティックプロテアーゼを、安定的にかつ大量に製造することができる。
図1は、MK82プロテアーゼ発現形質転換株のプロテアーゼ遺伝子のコピー数を示したグラフである。 図2は、MK82プロテアーゼ発現形質転換株のプロテアーゼ活性を示したグラフである。 図3は、MK82プロテアーゼ発現形質転換株(No.8)を培養し、その上清をSDS−PAGEにて調べた結果を示したものである。 図4は、MK82プロテアーゼ発現形質転換株の生育と培養上清のプロテアーゼ活性を示したグラフである。 図5は、BMMY培地で培養して得られたMK82プロテアーゼ(プロ−成熟タンパク質)とその活性化物(成熟タンパク質)を示したものである。 図6は、MA0196プロテアーゼ発現形質転換株(No.50−5)を培養し、その上清をSDS−PAGEにて調べた結果を示したものである。 図7は、MA0196プロテアーゼ発現形質転換株の生育と培養上清のプロテアーゼ活性を示したグラフである。 図8は、BMMY培地で培養して得られたMA0196プロテアーゼ(プロ−成熟タンパク質)とその活性化物(成熟タンパク質)を示しめしたものである。 図9は、組み換えMK82プロテアーゼを冷蔵庫、30℃、37℃、50℃で放置した際の残存活性を示したグラフである。
本発明の製造方法により得られる活性体アスパルティックプロテアーゼは、例えば、色素タンパク質を部分分解して脱色する用途に使用することができる。
前記色素タンパク質を部分分解できる酵素をコードする遺伝子としては、例えばAspergillus repens MK82、Aspergillus glaucus MA0196由来のアスパルティックプロテアーゼ遺伝子等を用いることができる。
これらは、公知の脱色活性測定法により色素タンパク質に対する活性を確認することができ、NBRC等の微生物株保存機関の分譲株に対して本発明の方法を適用することにより、同等の酵素と遺伝子を取得することができ、色素タンパク質の部分分解用途に利用可能である。
なお脱色活性測定法はJ.Sci.Food Agric.93巻、1349から1355、2013年に報告されている。この脱色活性測定法を利用して本発明の製造方法により得られる活性体アスパルティックプロテアーゼによる色素タンパク質の部分分解の性能を定量的に測定することができる。
また本発に使用するAspergillus repens MK82、Aspergillus glaucus MA0196等の糸状菌の培養には公知の培地用成分を使用することができる。
例えば、培養に使用する炭素源としては、グルコース、マンノース、フラクトース、マンノース、リボース、キシロース等のアルドース類、グルコン酸、マンノン酸等のアルドン酸類、グルカル酸、マンナル酸等のアルダル酸類、ソルビトール、マンニトール等のアルジトール類、グルクロン酸、マンヌロン酸等のウロン酸類等、
植物、動物由来のでんぷん、抽出液等、
エタノール、グリセリン等の水酸基含有化合物等を挙げることができる。
また培養に使用する窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素等を挙げることができる。
また培養に使用するリン源としては、リン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム等を挙げることができる。
また培養に使用するカリウム源としては、塩化カリウム、硝酸カリウム等を挙げることができる。
前記炭素源、窒素源、リン源、カリウム源等は一種もしくは二種以上を使用することができる。
前記培地用成分として、必要に応じてpHを調整するための緩衝成分、ポリアクリル酸誘導体等のゲル化成分等を配合することができる。
前記糸状菌を培養するときの条件は以下の通りである。
前記糸状菌の培養を行うときの温度は、15〜55℃の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは25〜45℃の範囲である。
前記糸状菌の培養を行うときの時間は、12時間〜12日の範囲であることが好ましく、より好ましくは2〜11日の範囲であり、さらに好ましくは3〜10日の範囲である。
前記糸状菌の培養を行うときのpHは、2〜8の範囲の範囲が好ましく、より好ましくは3〜7の範囲であり、さらに好ましくは4〜6の範囲である。
前記糸状菌の培養の際に使用する水に特に限定はなく、イオン交換水、蒸留水、水道水、通常の水道水から塩素を除去した工業用水等が使用される。
次に発現系としては、プロモーター、シグナル配列の選択が重要である。プロモーターはピキア酵母において異種蛋白質の発現、すなわち異種蛋白質の分泌を制御可能なものとして通常利用されているものであれば特に限定されない。具体的にはアルコールオキシダーゼ由来のプロモーター等が例示される。
プロ−成熟タンパク質の配列としては、Aspergillus repens MK82由来、Aspergillus glaucus MA0196由来等のネイティヴな配列(cDNA:相補的DNA)を用いることができる。
例えば、MVNTSLLAALTAで示されるアミノ酸配列をコードする遺伝子である。
前記シグナル配列としては上記のアミノ酸配列に対応するコドンを有する塩基配列であれば特に限定されない。
その一例として、表1に示すプライマー(MK82_expression_FとMK82_expression_R、MA0196_expression_FとMA0196_expression_R。これらは配列表に記載される配列表番号1〜4にそれぞれ対応する。)などが例示される。
Figure 2017060421
前記糸状菌である遺伝子供与体からのcDNAの調製は、市販のキット、具体的には、キアゲン社製RNeasy Plant Mini Kitによる糸状菌の菌体からのトータルRNAの抽出、TaKaRaバイオ社製PrimeScript 1st strand cDNA Synthesis kitを用いることにより調製可能である。
また、ターミネーター、選択マーカーなども公知のものを利用することができる。
ターミネーターとしてはAOX1ターミネーターなどが例示される。
選択マーカーとしてはピキア酵母由来のARG4、HIS4、パン酵母由来のSUC2、LEU2、URA3などのアミノ酸/核酸合成遺伝子またはゼオシン、G418などの薬剤耐性遺伝子等が例示される。
また、発現用プラスミドを宿主の染色体上に導入する場合は相同領域を用いることができる。相同領域としては上記のアミノ酸/核酸合成遺伝子、アルコールオキシダーゼ遺伝子、ribosomeDNA遺伝子、Ty因子、その他のピキア酵母の既知遺伝子などが例示される。
発現用プラスミド(発現ベクター)は、プロモーターの下流にシグナル配列、アスパルティックプロテアーゼをコードする遺伝子、ターミネーター、選択マーカー、相同領域などを連結することにより調製することができる。
前記発現用プラスミドの具体例については、例えば、市販品キット(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、pPICZ A, B, & C Pichia Vectors、製品番号V190−20等、https://www.thermofisher.com/order/catalog/product/V19020)を参考に再現することができる。
宿主としては、例えばピキア酵母(ピキア・パストリス)を用いることができる。
具体的にはPichia pastoris GS115株(ライフテクノロジーズ社より入手可能。)などが例示される。
プラスミドをピキア酵母に導入し形質転換体を調製する手段としては、前述の発現用プラスミドを制限酵素BstX Iで処理し、線状にしたものを宿主の染色体上に組み込む方法がある。
なお、形質転換体は前記発現用プラスミドを1つ組み込んだものが良い。
前記発現用プラスミドを宿主細胞内に導入する(宿主染色体に組込む)方法は公知の手法を用いることができる。
例えば、エレクトロポレーション法が例示される。
前記エレクトロポレーション法を実施する方法としては、例えば、Bio Rad社製Gene Pulser Xcellを使用して、200 V, 25mF, 200 Ω, 2 mm等の条件により実施することができる。
[培養(産生)工程]
次に培養工程について説明する。前記培養工程は形質転換体を培地で培養して組換えアスパルティックプロテアーゼを産生させる工程である。
培地としてはピキア酵母の培養に通常用いられるものであれば、特に限定されるものではない。
例えば、MMH培地(イーストナイトロジェンベース、ヒスチジンおよびビオチンからなる)、BMMH培地(リン酸塩、イーストナイトロジェンベース、ヒスチジン、ビオチンからなる)、BMMY培地(酵母エキス、ペプトン、リン酸塩、イーストナイトロジェンベース、ヒスチジンおよびビオチンからなる)などが例示される(表2)。
Figure 2017060421
前記培地を使用した培養工程における形質転換体の培養には、前記培地にメタノール水溶液を使用することが好ましい。
前記メタノール水溶液の濃度としては0.1〜1.0重量%の範囲が好ましく、0.3〜0.7重量%の範囲がより好ましく、0.5重量%であれば最も好ましい。
培養はpH4.5〜6.0の条件下で行われることが好ましい。また、培養後の上清をpH4.0の20mM酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液にて透析すると、プロ配列の自己消化を進めることができる。
培養条件としては培養温度10〜45℃程度で、培養時間2〜8日間程度が例示される。培養様式としてはバッチ培養、フェドバッチ培養(フェドバッチ)などを用いることができる。
なお、前記培養工程に先立って前培養を行うことが好ましい。前培養用の培地としては、例えば、BMYG培地が例示される(表2)。
また、前培養の培養条件としては温度20〜40℃の範囲であれば好ましい。また濁度(600nm)が6になるまで培養することが好ましい。
[精製工程]
次に精製工程について説明する。前記精製工程は培養上清から回収された活性体の組換えアスパルティックプロテアーゼを精製する工程である。
その精製方法としては、例えば、pH5.0の20mM酢酸緩衝液にて透析後、アセトン分画に代表される有機溶媒による分画法やゲル濾過法が例示される。
アセトンによる分画法では、例えば、0から4℃の範囲で酵素液を冷却後、撹拌しながら流速0.5から1.0ML/hの流速にてアセトンを80%(V/V)となるように添加し、その後30分撹拌後、遠心分離(15,000×g、15min)で沈殿として回収できる。
ゲル濾過処理は、ゲル濾過用担体を用いて分子量の違いにより目的とする組換えアスパルティックプロテアーゼを精製・回収するものである。ゲル濾過用担体としてはアガロース、架橋デキストラン(例えば、セルロファインなど)などを用いることができる。
組換えアスパルティックプロテアーゼの分子量を考慮して、前記ゲル濾過用担体は分画分子量領域が10kDa〜1000kDa程度にあるものを用いることが好ましい。具体的には、東ソー社製Toyopearl(登録商標) HW−55ゲル濾過用樹脂等を用いて夾雑タンパク質を除くことが可能である。
上述した各工程を経て、遺伝子組換えによるアスパルティックプロテアーゼを製造することができる。
以下に実施例に基づき本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
Aspergillus repens MK82からのアスパルティックプロテアーゼ遺伝子の発現、組み換えタンパク質の生産
なお、本実施例において、SDS−PAGE(Sodium dodecyl sulfate−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)による分析は以下の条件で行った。以下の実施例についても同様である。
還元条件で被験体をSDS−PAGEにより分離し、クマーシーブリリアントブルーによる染色により検出した。分子量マーカーとして14〜79kDaの組換え蛋白(和光純薬社製、中分子量マーカー)を用いた。
プロテアーゼ活性および脱色活性の測定は既報の方法に従った(J.Sci.Food Agric.93巻、1349から1355、2013年)。
また本実施例に使用したAspergillus repens(アスペルギルス レペンス) MK82は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに受託番号NITE P−73菌株として寄託されている。
まずAOX1(アルコールオキシダーゼ1)プロモーターの制御下でアスパルティックプロテアーゼが発現される発現ベクターの構築について説明する。
(1)アスパルティックプロテアーゼ遺伝子のクローニング工程
PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応法)によりプロテアーゼcDNAを5’および3’末端にそれぞれ制限酵素KpnI(商品名。ニュー・イングランド・バイオラボ・ジャパン株式会社製)およびXbaI(商品名。ニュー・イングランド・バイオラボ・ジャパン株式会社製)サイト(MK82株プロテアーゼ用)を付加するように増幅した。
PCRプライマー用オリゴDNAは表1に示すプライマーを用いた。
鋳型DNAにはAspergillus repens MK82由来のcDNALibraryを用い、PCR法によりDNAを増幅した結果、プロテアーゼcDNAに相当する1.2kbのPCR産物を得た。
Aspergillus repens MK82由来DNAは、プロ配列と成熟タンパク質配列390アミノ酸残基をコードする。
このAspergillus repens MK82由来DNAの遺伝子配列を、配列表番号5として配列表に記載した。
本発明に使用するアスパルティックプロテアーゼを分泌するAspergillus属糸状菌からクローニングされるアスパルティックプロテアーゼ遺伝子(DNA)の塩基配列数は900から1200bpの範囲であることが好ましい。
(2)ピキア酵母での異種タンパク質の発現・制御可能なプラスミドの構築工程
ピキア酵母発現ベクターであるpPICZα A(商品名。インビトロジェン社)を前記制限酵素KpnIおよび前記制限酵素XbaI(MK82プロテアーゼ用)で消化して得られた断片に、上記のPCR産物を同制限酵素で消化したプロテアーゼcDNA断片を挿入し、発現ベクターを構築した。
前記発現ベクターは、プロテアーゼcDNA、AOX1ターミネーター、ゼオシン耐性遺伝子を含んでいる。
(3)前記プラスミドをピキア酵母に導入して形質転換体を調製する工程
本発明において、この工程ではアスパルティックプロテアーゼ発現ベクターを用いて酵母形質転換体を作製する。ここではMK82アスパルティックプロテアーゼ発現ベクターを用いて酵母形質転換体を作製した。なお組み換え酵素をMK82プロテアーゼと称する。
発現ベクター用いて、選択マーカーを利用してピキア酵母を形質転換していくことにより、ピキア酵母発現株を作製した。
まず、ピキア酵母発現ベクターを制限酵素BstXI(商品名。ニュー・イングランド・バイオラボ・ジャパン株式会社製)で消化、線状化し、ジーンパルサーにてピキア酵母GS115に導入した。
選択寒天培地(ゼオシン添加YPDS培地)に生育したクローンよりSingleColony Isolationを行い、プロテアーゼ発現形質転換体の単一クローンを得た。
クローンの分離の際、ゼオシン濃度50microg/mlの選択培地から形質転換体(MK82プロテアーゼ発現株、No.8とNo.2−6)、200μg/mlの選択培地から形質転換体(MK82プロテアーゼ発現株、No.6)を得た。
定量PCRにてそれぞれの形質転換株のプロテアーゼ遺伝子コピー数を調べたところ、No.6が一番多かった。
図1は、MK82プロテアーゼ発現形質転換株3株(No.6、No.8、No.2−6)についてプロテアーゼ遺伝子のコピー数を示したグラフである。
また図2は、MK82プロテアーゼ発現形質転換株3株(No.6、No.8、No.2−6)についてBMGY培地で培養した際のプロテアーゼ活性を示したグラフである。
形質転換体はYPD培地で30℃、48時間培養し、遠心(2800rpm×10分)にて集菌し、20%グリセロールを分散溶媒として1mLずつチューブに分注し、−80℃で保存した。
(4)形質転換体を培養してアスパルティックプロテアーゼを産生する工程
以上のようにして作製した組換えアスパルティックプロテアーゼ発現形質転換体をMMH培地、BMMH培地、BMMY培地、BMGY培地を用いて500ML坂口フラスコにて振とう(タイテック社製振とう培養機BR−3000LF、140rpm、30℃)培養した。
また、24時間ごとに終濃度で0.5重量%となるようにメタノールを添加した。
[アスパルティックプロテアーゼ産生量を向上させる条件の検討]
・培地組成の検討
BMGY培地(7ml/tube)にて、30℃、140 rpmで培養し、OD600が6の時点で遠心分離アスパルティックプロテアーゼ発現形質転換株を集菌した。
なお、OD600とは600nmの波長の可視光が培養液の濁度により散乱され透過光が減少する割合を示したものであり、前記培養液に含まれる菌濃度を測る尺度となる。
OD600が1となるようにMMH培地、BMMH培地またはBMMY培地(7ml/tube)に懸濁し、30℃、140 rpmで培養した。24時間毎に最終濃度0.5%(v/v)となるようにメタノールを添加した。培養96時間後に培養液を回収し、遠心分離により上清と沈殿に分けた。比較例として形質転換していないGS115も培養した。
表3は、MK82プロテアーゼ生産形質転換株における酵素生産に与える培地組成の影響試験結果を示したものである。
また図3は、MK82プロテアーゼ発現形質転換株(No.8)を培養し、その上清をSDS−PAGEにて調べた結果を示したものである。
図3におけるレーンMは、分子量マーカーであり、Lysozyme(14,000)、Trypsin Inhibitor(20,000)、Carbonic AnhydraseII(30,000)、Aldolase(42,000)、BSA(79,000)からなる。
また図3におけるレーン1〜レーン12の内容はそれぞれ次の通りである。
・レーン1 :MMH培地培養上清
・レーン2 :BMMH培地(7ml/tube、pH4.5)
・レーン3 :BMMH培地(7ml/tube、pH5.0)
・レーン4 :BMMH培地(7ml/tube、pH6.0)
・レーン5 :BMMY培地(7ml/tube、pH4.5)
・レーン6 :BMMY培地(7ml/tube、pH5.0)
・レーン7 :BMMY培地(7ml/tube、pH6.0)
・レーン8 :BMMY培地(50ml/500mlフラスコ、pH6.0)
・レーン9 :BMMY培地(70ml/500mlフラスコ、pH6.0)
・レーン10:BMMY培地(100ml/500mlフラスコ、pH6.0)
・レーン11:BMMY培地(100ml/500mlフラスコ、pH5.0)
・レーン12:BMGY培地
Figure 2017060421
・培地量の検討
BMGY培地(100ml/500ML坂口フラスコ)にて30℃、140 rpmで培養し、OD600が6の時点で遠心分離アスパルティックプロテアーゼ発現形質転換株を集菌した。OD600が1となるようにBMMY培地(50、70、100ml/500ML坂口フラスコ)に懸濁し、30℃、140 rpmで培養した。24時間毎に最終濃度0.5%(v/v)となるようにメタノールを添加した。培養96時間後に培養液を回収し、遠心分離により上清と沈殿に分けた。
結果を表3および図3に示す。
試験した中で、BMMY培地で培養して得られた培養上清のプロテアーゼ活性が高かった(表3)。さらに、SDS−PAGEにて純度を調べたところ、同プロテアーゼはプロ配列−成熟タンパク質複合体として分泌されていることがわかった(図3)。
よって、プロ−成熟タンパク質であっても活性を示すことがわかった。
・培養時間の検討
BMGY培地(100ml/500ML坂口フラスコ)にて30℃、140 rpmで培養し、OD600が6の時点で遠心分離アスパルティックプロテアーゼ発現形質転換株を集菌した。OD600が1となるようにBMMY培地(50、70、100ml/500ML坂口フラスコ)に懸濁し、30℃、140 rpmで培養した。24時間毎に最終濃度0.5%となるようにメタノールを添加した。培養は、7から10日間行い、培養液を回収し、遠心分離により上清と沈殿に分けた。
図4は、MK82プロテアーゼ発現形質転換株の生育と培養上清のプロテアーゼ活性を示したグラフである。
培養は、140rpmで振とうしながら、BMMY培地(100ml/500ML坂口フラスコ)で行い、24時間ごとに終濃度0.5%となるようにメタノールを添加した。 図4中の黒丸印(参照符号1)は形質転換株の生育量、白丸印(参照符号2)はプロテアーゼ活性を示す。
生育は培養5日目で一定となったが、プロテアーゼ量は増大し、11日以降に一定となった。
(5)産生した前記プロテアーゼを成熟化させる工程
・透析による組み換え酵素の成熟化
BMGY培地(100ml/500ML坂口フラスコ)にて9日間培養した後、培養上清を回収し20 mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)で透析した。遠心分離により沈殿を除き、上清をSDS-PAGEに供し、成熟タンパク質酵素の単一性を確認した。
図5は、BMMY培地で培養して得られたMK82プロテアーゼ(プロ−成熟タンパク質)とその活性化物(成熟タンパク質)を示したものである。
図5中のレーンMは、分子量マーカーであり、Lysozyme(14,000)、Trypsin Inhibitor(20,000)、Carbonic AnhydraseII(30,000)、Aldolase(42,000)、BSA(79,000)からなる。
図5中のレーン1から4は培養上清を20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)にて透析することで成熟体としたサンプルを示す。
図5レーン5および6は培養上清を示す。
結果を図5に示す。
・組み換え酵素の回収
20 mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)にて透析した酵素液100mlを冷蔵保存し、同酵素液に対して撹拌しながら1.0ML/hの流速にてアセトンを80%(V/V)となるように添加し、その後30分撹拌後、遠心分離(15,000×g、15min)で沈殿として回収した。
表4に、培養上清、透析による成熟タンパク質の調製、アセトン分画によるプロテアーゼの回収結果を示した。
Figure 2017060421
上記の操作により活性体アスパルティックプロテアーゼを得た。
この活性体アスパルティックプロテアーゼが、遺伝子組換えによるアスパルティックプロテアーゼである。
親株から得られる精製酵素溶液は培養液100mlあたり15から16Uであるが(J.Sci.Food Agric.93巻、1349から1355、2013年)、組み換え体では培養液100mlあたり220Uの酵素液がえられた。
・活性体アスパルティックプロテアーゼの特性について
先の工程(5)により回収した組み換えMK82プロテアーゼ(活性体アスパルティックプロテアーゼ)の特性は次の通りである。
既報の方法に従い(前記非特許文献1)、親株(Aspergillus repens MK82)由来プロテアーゼと調製したMK82プロテアーゼについて酵素特性を比較して親株酵素と類似した結果を得た。
表5にAspergillus repens MK82由来プロテアーゼIIと組み換えMK82プロテアーゼとの特性比較を示した。
また表6にAspergillus repens MK82由来プロテアーゼII(同表中に「プロテアーゼII」と記載した)と組み換えMK82プロテアーゼ(同表中に「組み換えプロテアーゼ」と記載した)との脱色活性およびプロテアーゼ活性比較を示した。
Figure 2017060421
Figure 2017060421
特に、ミオグロビンやヘモグロビンに対する分解能や脱色活性については親株由来酵素と同程度であった。
組み換えMK82プロテアーゼの保存性を調べたところ、4℃では1か月以上保存可能であることを確認した。
図9は、組み換えMK82プロテアーゼを冷蔵庫、30℃、37℃、50℃で放置した際の残存活性を示したグラフである。黒丸(参照符号5)は4℃、白四角(参照符号6)は30℃、黒三角(参照符号7)は37℃、白丸(参照符号8)は50℃における残存活性を示す。
MK82プロテアーゼ安定性を継時的に調べた結果を示す(図9)。
Aspergillus glaucus MA0196からのアスパルティックプロテアーゼ遺伝子の発現、組み換えタンパク質の生産
AOX1(アルコールオキシダーゼ1)プロモーターの制御下でアスパルティックプロテアーゼが発現される発現ベクターの構築
(1)アスパルティックプロテアーゼ遺伝子のクローニング工程
実施例1の場合と同様の操作により実施した。
まずPCR法(ポリメラーゼ連鎖反応法)によりプロテアーゼcDNAを5’および3’末端に制限酵素KpnIおよび制限酵素EcoRI(商品名。ニュー・イングランド・バイオラボ・ジャパン株式会社製)サイト(MA0196株プロテアーゼ用)を付加するように増幅した。
PCRプライマー用オリゴDNAは表1に示すプライマーを用いた。
鋳型DNAにはAspergillus glaucus MA0196由来のcDNALibraryを用い、PCR法によりDNAを増幅した結果、プロテアーゼcDNAに相当する約1.2kbのPCR産物を得た。
Aspergillus glaucus MA0196由来DNAは、プロ配列と成熟タンパク質配列386アミノ酸残基をコードする。
このAspergillus glaucus MA0196由来DNAの遺伝子配列を、配列表番号6として配列表に記載した。
なお本実施例に使用したAspergillus glaucus(アスペルギルス グラウカス) MA0196は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに受託番号NITE AP−02122菌株として寄託されている。
(2)ピキア酵母での異種タンパク質の発現・制御可能なプラスミドの構築工程
ピキア酵母発現ベクターであるpPICZα A(商品名。インビトロジェン社)を前記制限酵素KpnIおよび前記制限酵素EcoRI(MA0196プロテアーゼ用)で消化して得られた断片に、上記のPCR産物を同制限酵素で消化したプロテアーゼcDNA断片を挿入し、発現ベクターを構築した。
前記発現ベクターは、プロテアーゼcDNA、AOX1ターミネーター、ゼオシン耐性遺伝子を含んでいる。
(3)前記プラスミドをピキア酵母に導入して形質転換体を調製する工程
MA0196アスパルティックプロテアーゼ発現ベクターを用いて酵母形質転換体を作製した。なお組み換え酵素をMA0196プロテアーゼと称する。
MA0196プロテアーゼ発現株の取得、培養条件の検討については、先に説明した実施例1における方法と同様の方法に従った。変更点、相違点を以下に述べる。
MA0196プロテアーゼ発現株の取得にはゼオシン濃度50microg/mlの選択培地のみを使用し、形質転換体No.50−5を取得した。
(4)形質転換体を培養してアスパルティックプロテアーゼを産生する工程
アスパルティックプロテアーゼ産生量を向上させる条件を検討した。
先に説明した実施例1における方法と同様の方法により前培養を行い、MMH培地、BMMH培地またはBMMY培地の3種で検討した。
MMH培地およびメタノール無添加のBMGY培地では、遺伝子発現はほとんど見られなかった。
一方メタノールを添加したBMMH、BMMY培地で培養して得られた培養上清には顕著なプロテアーゼ活性が見られた。
その中でも、BMMY培地では得られた培養上清のプロテアーゼ活性が最も高かった。
表5に、MA0196プロテアーゼ生産形質転換株における酵素生産に与える培地組成の影響試験結果を示した。
Figure 2017060421
培養上清をSDS-PAGEに供したところ、培地の種類によって異なる分子質量のタンパク質バンドが見られ、組換え酵素は翻訳後プロ配列が切断されていない状態で細胞外へ分泌され、自己消化によりプロ配列が切断されると推測された。
図6は、MA0196プロテアーゼ発現形質転換株(No.50−5)を培養し、その上清をSDS−PAGEにて調べた結果を示したものである。
レーンMは、分子量マーカーであり、Carbonic AnhydraseII(30,000)、Aldolase(42,000)、BSA(79,000)からなる。
またレーン1〜レーン7の内容はそれぞれ次の通りである。
・レーン1:MMH培地
・レーン2:BMMH培地(7ml/tube、pH4.5)
・レーン3:BMMH培地(7ml/tube、pH5.0)
・レーン4:BMMH培地(7ml/tube、pH6.5)
・レーン5:BMMY培地(7ml/tube、pH4.5)
・レーン6:BMMY培地(7ml/tube、pH5.0)
・レーン7:BMMY培地(7ml/tube、pH6.5)
結果を図6に示す。
先に説明した実施例1における条件と同様の条件でメタノールを添加しながら培養(BMMY培地、70ml/500ML坂口フラスコ)を行い、培養液を回収後、遠心分離により上清と沈殿に分けた。
メタノール添加を続けながら、形質転換株の培養を継続し、生育と培養上清中のプロテアーゼ活性の推移を調べたところ、定常期に入った培養3日目以降もプロテアーゼの生産は続いた。
図7は、MA0196プロテアーゼ発現形質転換株の生育と培養上清のプロテアーゼ活性を示したグラフである。
培養は、140rpmで振とうしながら、BMGY培地(70ml/500ML坂口フラスコ)で行い、24時間ごとに終濃度0.5%となるようにメタノールを添加した。
図7中の黒丸印(参照符号3)は形質転換株の生育量、白丸印(参照符号4)はプロテアーゼ活性を示す。
(5)産生した前記プロテアーゼを成熟化させる工程
BMGY培地(100ml/500ML坂口フラスコ)にて9日間培養した後、培養上清を回収し20 mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)で透析した。遠心分離により沈殿を除き、上清をSDS-PAGEに供し、成熟タンパク質酵素の単一性を確認した。
図8は、BMMY培地で培養して得られたMA0196プロテアーゼ(プロ−成熟タンパク質)とその活性化物(成熟タンパク質)を示しめしたものである。
図8中のレーンMは、分子量マーカーであり、Trypsin Inhibitor(20,000)、Carbonic AnhydraseII(30,000)、Aldolase(42,000)からなる。
図8中のレーン1から2は培養上清、レーン3および4は培養上清を20mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)にて透析することで成熟体としたサンプルを示す。
また、得られたプロテアーゼ総活性に変化はなかった。
結果を表8に示す。
Figure 2017060421
上記の操作により活性体アスパルティックプロテアーゼを得た。
この活性体アスパルティックプロテアーゼが、遺伝子組換えによるアスパルティックプロテアーゼである。
・活性体アスパルティックプロテアーゼの特性について
先の工程(5)により回収した組み換えMA0196プロテアーゼ(活性体アスパルティックプロテアーゼ)の特性は次の通りである。
培養条件を検討した結果、BMMY培地(pH 6.5)が最適で、7日間培養で親株MA0196株の培養系と比較して約12倍の生産を達成することができた。また、培養上清に含まれる主要なタンパク質もMA0196プロテアーゼのみであった。
先に説明した方法に従い、親株(Aspergillus glaucus MA0196)由来プロテアーゼと調製したMA0196プロテアーゼについて酵素特性を比較し、至適温度やpHについて同程度であることを確認した。
表9にAspergillus repens MA0196由来プロテアーゼと組み換えMA0196プロテアーゼの特性比較をしめす。
Figure 2017060421
また、組み換えMA0196プロテアーゼの保存性を調べ、4℃では1か月以上保存可能であることを確認した。
本発明によれば、ミオグロビンやヘモグロビンなどの色素タンパク質の分解と色素タンパク質溶液の脱色ができるアスパルティックプロテアーゼを安定的にかつ大量に製造することができる。
1 形質転換株の生育量
2 プロテアーゼ活性
3 形質転換株の生育量
4 プロテアーゼ活性
5 4℃
6 30℃
7 37℃
8 50℃

Claims (5)

  1. (1)アスパルティックプロテアーゼを分泌するAspergillus属糸状菌からアスパルティックプロテアーゼ遺伝子をクローニングする工程と、
    (2)ピキア酵母での異種タンパク質の発現・制御可能なプラスミドの構築工程と、
    (3)前記プラスミドをピキア酵母に導入して形質転換体を調製する工程と、
    (4)形質転換体を培養してアスパルティックプロテアーゼを産生する工程と、
    (5)産生した前記プロテアーゼを成熟化させる工程と、
    を含むことを特徴とする、活性体アスパルティックプロテアーゼの製造方法。
  2. 前記アスパルティックプロテアーゼを分泌するAspergillus属糸状菌からクローニングされるアスパルティックプロテアーゼ遺伝子の塩基配列数が900から1200bpの範囲である、請求項1に記載の活性体アスパルティックプロテアーゼの製造方法。
  3. 前記Aspergillus属糸状菌が、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに受託番号NITE P−73菌株として寄託されているAspergillus repens(アスペルギルス レペンス) MK82および同受託番号NITE AP−02122菌株として寄託されているAspergillus glaucus(アスペルギルス グラウカス) MA0196の少なくとも一方である、請求項1または2に記載の活性体アスパルティックプロテアーゼの製造方法。
  4. 形質転換体を培養してアスパルティックプロテアーゼを産生する工程(4)において培養にメタノール水溶液を使用し、前記メタノール水溶液の濃度が0.1〜1.0重量%の範囲である、請求項1〜3のいずれかに記載の活性体アスパルティックプロテアーゼの製造方法。
  5. 前記活性体アスパルティックプロテアーゼが、ヘモグロビンおよびミオグロビンの少なくとも一方の分解用活性体アスパルティックプロテアーゼである、請求項1〜4のいずれかに記載の活性体アスパルティックプロテアーゼの製造方法。
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