JP2017059771A - 静電チャック装置及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一主面を板状試料を載置する載置面とするとともに静電吸着用内部電極を内蔵した静電チャック部と、接着層と、前記静電チャック部を所望の温度に調整する温度調整用ベース部とをこの順に有し、前記接着層に対して160℃、100時間の条件で加熱を行ったとき、該接着層の該加熱前の20℃におけるヤング率E1(20)及び該加熱後の20℃におけるヤング率E2(20)が、下記(1)式を満たす静電チャック装置である。
【選択図】なし
Description
半導体素子の高集積化や高性能化に伴い、ウエハの加工の微細化が進んでおり、生産効率が高く、大面積の微細加工が可能なプラズマエッチング技術がよく用いられている。静電チャック装置に固定されたウエハにプラズマを照射すると、このウエハの表面温度が上昇する。そこで、この表面温度の上昇を抑えるために、静電チャック装置の温度調整用ベース部に水等の冷却媒体を循環させてウエハを下側から冷却しているが、この際、プラズマによるウエハへの入熱のウエハ面内のばらつきにより、ウエハの面内で温度分布が発生する。例えば、ウエハの中心部では温度が高くなり、縁辺部では温度が低くなる傾向にある。
このヒータ機能付き静電チャック装置は、ウエハ内に局所的に温度分布を作ることができるので、ウエハの面内温度分布を膜堆積速度やプラズマエッチング速度に合わせて設定することにより、ウエハ上へのパターン形成などの局所的な膜形成や局所的なプラズマエッチングを効率よく行なうことができる。
そして、このヒータ内蔵あるいはヒータを取り付けた静電チャック部と温度調整用ベース部とを有機系接着剤を用いて接着一体化することで、ヒータ機能付き静電チャック装置が得られる。
〔1〕一主面を板状試料を載置する載置面とするとともに静電吸着用内部電極を内蔵した静電チャック部と、接着層と、前記静電チャック部を所望の温度に調整する温度調整用ベース部とをこの順に有し、
前記接着層に対して160℃、100時間の条件で加熱を行ったとき、該接着層の該加熱前の20℃におけるヤング率E1(20)及び該加熱後の20℃におけるヤング率E2(20)が、下記(1)式を満たす静電チャック装置。
|(E2(20)−E1(20))/E1(20)|≦2.0 ・・・ (1)
〔2〕前記接着層の、前記加熱前の180℃におけるヤング率E1(180)及び前記加熱後の180℃におけるヤング率E2(180)が、下記(2)式を満たす〔1〕に記載の静電チャック装置。
|(E2(180)−E1(180))/E1(180)|≦2.0 ・・・ (2)
〔3〕前記接着層の、前記加熱後の20℃、180℃におけるヤング率E2(20)、E2(180)が、ともに20MPa以下である〔1〕または〔2〕に記載の静電チャック装置。
〔4〕前記接着層が接着剤を用いて形成され、該接着剤がシリコーン系樹脂及びフッ素系樹脂から選ばれる1種以上を含む〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の静電チャック装置。〔5〕前記接着層が、平均粒子径が1μm以上10μm以下のフィラーを含む〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の静電チャック装置。
〔6〕前記フィラーの前記接着剤中の含有量が、接着剤全体積基準で5体積%以上30体積%以下である〔5〕に記載の静電チャック装置。
〔7〕前記接着剤がシリコーン系樹脂を含み、さらに1種以上を反応性希釈剤を含む〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の静電チャック装置。
〔8〕前記反応性希釈剤の含有量が、接着剤全体積基準で5体積%以上30体積%以下である〔7〕に記載の静電チャック装置。
〔9〕一主面を板状試料を載置する載置面とするとともに静電吸着用内部電極を内蔵した静電チャック部と、該静電チャック部を所望の温度に調整する温度調整用ベース部とを、接着剤を介して接着する工程と、
前記接着剤により静電チャック部及び温度調整用ベース部間に形成された接着層を、100℃以上200℃以下の温度で80時間以上熱処理する工程と、を有する静電チャック装置の製造方法。
<静電チャック装置>
本発明の静電チャック装置は、一主面を板状試料を載置する載置面とするとともに静電吸着用内部電極を内蔵した静電チャック部と、接着層と、前記静電チャック部を所望の温度に調整する温度調整用ベース部とをこの順に有し、前記接着層に対して160℃、100時間の条件で加熱を行ったとき、該接着層の該加熱前の20℃におけるヤング率E1(20)及び該加熱後の20℃におけるヤング率E2(20)が、下記(1)式を満たすことを特徴とする。
|(E2(20)−E1(20))/E1(20)|≦2.0 ・・・ (1)
まず、本発明の静電チャック装置を図面を用いて説明する。
この静電チャック装置1は、円板状の静電チャック部2と、この静電チャック部2を所望の温度に調整する厚みのある円板状の温度調整用ベース部3と、図面において静電チャック部2の下面(他の主面)に設けられた所定のパターンを有するヒータエレメント5と、温度調整用ベース部3の上面に接合層6を介して接合された絶縁部材7と、静電チャック部2の下面のヒータエレメント5と温度調整用ベース部3上の絶縁部材7とを対向させた状態でこれらを接着一体化する接着剤を用いた接着層8とにより主として構成されている。
この載置板11の載置面には、直径が板状試料の厚みより小さい突起部16が複数個形成され、これらの突起部16が板状試料Wを支える構成になっている。
この静電吸着用内部電極13は、酸化アルミニウム−炭化タンタル(Al2O3−Ta4C5)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−タングステン(Al2O3−W)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al2O3−SiC)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タングステン(AlN−W)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タンタル(AlN−Ta)導電性複合焼結体、酸化イットリウム−モリブデン(Y2O3−Mo)導電性複合焼結体等の導電性セラミックス、あるいは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属により形成されている。
この給電用端子15は、絶縁性を有する碍子17により温度調整用ベース部3に対して絶縁されている。そして、この給電用端子15は支持板12に接合一体化され、さらに、載置板11と支持板12とは、静電吸着用内部電極13及び絶縁材層14により接合一体化されて静電チャック部2を構成している。
温度調整用ベース部3を構成する材料としては、熱伝導性、導電性、加工性に優れた金属、またはこれらの金属を含む複合材であれば特に制限はなく、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銅(Cu)、銅合金、ステンレス鋼(SUS) 等が好適に用いられる。この温度調整用ベース部3の少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理が施されているか、あるいはアルミナ等の絶縁膜が成膜されていることが好ましい。
ヒータエレメント5では、これら内ヒータ5a及び外ヒータ5bをそれぞれ独立に制御することにより、載置板11の載置面に静電吸着により固定されている板状試料Wの面内温度分布を精度良く制御するようになっている。
ヒータエレメント5は、例えば厚みが0.2mm以下、好ましくは0.1mm以下の一定の厚みを有する非磁性金属薄板、例えば、チタン(Ti)薄板、タングステン(W)薄板、モリブデン(Mo)薄板等をフォトリソグラフィー法により、所望のヒーターパターンにエッチング加工することで形成される。
また、絶縁部材7は、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の絶縁性及び耐電圧性を有するフィルム状またはシート状の樹脂であり、この絶縁部材7の面内の厚みのバラツキは10μm以内が好ましい。
この接着層8の厚みを上記の範囲とした理由は、接着層8の厚みが50μmを下回ると、静電チャック部2と温度調整用ベース部3との間の熱伝導性は良好となるものの、熱応力緩和が不充分となり、割れやクラックが生じ易くなるからであり、一方、接着層8の厚みが500μmを超えると、静電チャック部2と温度調整用ベース部3との間の熱伝導性を十分確保することができなくなるからである。
|(E2(20)−E1(20))/E1(20)|≦2.0 ・・・ (1)
上記式(1)の左辺が2.0を超えると、80℃以上の高温で長時間使用したときに、静電チャック部2の変形が大きくなり載置面における面内温度の均一性を確保することができない。式(1)の左辺は1.5以下であることが好ましく、0.70以下であることがより好ましく、0.3以下であることがさらに好ましい。なお、式(1)の左辺の下限は理想的には0であることが望ましいが、実際上は0.01程度である。
|(E2(180)−E1(180))/E1(180)|≦2.0 ・・・ (2)
上記式(2)の左辺が2.0以内であれば、80℃以上の高温で長時間使用したときに、静電チャック部2の変形をより少なくすることができ、載置面における面内温度の均一性をより高めることができる。式(2)の左辺は0.8以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましい。なお、式(2)の左辺の下限も理想的には0であることが望ましいが、実際上は0.01程度である。
なお、上記ヤング率の測定法については、後述する。
上記シリコーン系樹脂としては、静電チャック部2と温度調整用ベース部3の温度の違いによる熱膨張差を緩和させる点より、1成分および2成分の縮合型または付加型の反応機構を持つシリコーン系樹脂が好ましく、一般的に下記一般式(1)で表されるものが用いられている。
炭素数2〜5のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられる。
炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を表し、更に、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
シリコーン系樹脂は、市販のシリコーン接着剤(シリコーン粘着剤を含む)であってもよく、例えば、東レ・ダウコーニング社製、シリコーン粘着剤(例えば、SD 4580 PSA、SD 4584 PSA、SD 4585 PSA、SD 4587 L PSA、SD 4560 PSA等)、モメンティブ社製、シリコーン接着剤(例えば、XE13−B3208、TSE3212、TSE3261−G、TSE3280−G、TSE3281−G、TSE3221、TSE326、TSE326M、TSE325等)、信越シリコーン社製、シリコーン接着剤(例えば、KE−1820、KE−1823、KE−1825、KE−1830、KE−1833等)等が挙げられる。
シリコーン系樹脂の反応性希釈剤は、シリコーンメーカー各社より販売されているが、側鎖に反応基を有し、ケイ素を含むものである。モノマーベースではシランカップリング剤、ポリマーではレジンやオイルなど、さらにその中間にあるオリゴマーなどが存在する。本発明ではそれらのいずれを使用してもよいが、特にシリコーンオリゴマー、シリコーンオイルを含む反応性希釈剤を用いることが、上記効果が有効に得られるため望ましい。
反応性希釈剤の含有量は、接着剤全体積基準で5体積%以上25体積%以下であることがより好ましく、10体積%以上20体積%以下であることがさらに好ましい。
これらのポリマーの例として、テトラフルオロエチレンとテトラフルオロプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンを共重合体、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体、テトラフルオロエチレンとプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレンとビニルエーテルの共重合体、テトラフルオロエチレンとパーフロロビニルエーテルの共重合体、クロロトリフルオロエチレンとビニルエーテルの共重合体、クロロトリフルオロエチレンとパーフロロビニルエーテルの共重合体等を挙げることができる。
液状である上記フッ素化ポリエーテルは、その主鎖の末端に反応性官能基を有し、硬化剤あるいは重合開始剤により反応硬化するものであることが好ましい。例えば、末端の官能基がアルケニル基であれば、ヒドロシリル基および触媒によるヒドロシリル化反応で硬化させることができる。また、末端官能基がイソシアネート基であれば、アミノ基あるいはヒドロキシル基などと反応硬化させることができる。液状のフッ素化ポリエーテルの具体例として、例えば信越化学工業(株)製の商品名「SIFEL(登録商標)」シリーズが挙げられる。
なお、これらのフッ素系樹脂の質量平均分子量は1000以上50000以下程度であることが好ましい。
この表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子は、接着層の熱伝導性を改善するために混入されるものであるが、その混入率を調整することにより、接着層8の高温での使用におけるヤング率の変動をより抑えることができ、その結果高温使用時における静電チャック部2の変形をさらに低減させることができる。
さらに、この表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子は、窒化アルミニウム(AlN)粒子の表面が、優れた耐水性を有する酸化ケイ素(SiO2)からなる被覆層により被覆されているので、窒化アルミニウム(AlN)が大気中の水により加水分解される虞が無く、窒化アルミニウム(AlN)の熱伝達率が低下するおそれもなく、接着層8の耐久性が向上する。なお、この表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子は、半導体ウエハ等の板状試料Wへの汚染源となることもなく、この点からも好ましいフィラーということができる。
フィラー粒子の平均粒子径が1μmを下回ると、粒子同士の接触が不十分となり、結果的に熱伝達率が低下することがあり、また、粒子径が細か過ぎると、取扱等の作業性の低下を招くこととなり好ましくない。一方、平均粒子径が10μmを越えると、接着層の厚みにばらつきが生じ易くなるので好ましくない。
本発明の静電チャック装置の製造方法は、一主面を板状試料を載置する載置面とするとともに静電吸着用内部電極を内蔵した静電チャック部と、該静電チャック部を所望の温度に調整する温度調整用ベース部とを、接着剤を介して接着する工程と、前記接着剤により静電チャック部及び温度調整用ベース部間に形成された接着層を、100℃以上200℃以下の温度で80時間以上熱処理する工程と、を有するものである。
まず、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al2O3−SiC)複合焼結体または酸化イットリウム(Y2O3)焼結体により板状の載置板11及び支持板12を作製する。この場合、炭化ケイ素粉末及び酸化アルミニウム粉末を含む混合粉末または酸化イットリウム粉末を所望の形状に成形し、その後、例えば1400℃〜2000℃の温度、非酸化性雰囲気、好ましくは不活性雰囲気下にて所定時間、焼成することにより、載置板11及び支持板12を得ることができる。
続いて、給電用端子15を、支持板12の固定孔に密着固定し得る大きさ、形状となるように作製する。この給電用端子15の作製方法としては、例えば、給電用端子15を導電性複合焼結体とした場合、導電性セラミックス粉末を、所望の形状に成形して加圧焼成する方法等が挙げられる。このとき、給電用端子15に用いられる導電性セラミックス粉末としては、静電吸着用内部電極13と同様の材質からなる導電性セラミックス粉末が好ましい。また、給電用端子15を金属とした場合、高融点金属を用い、研削法、粉末治金等の金属加工法等により形成する方法等が挙げられる。
上記塗布液の塗布法としては、均一な厚さに塗布する必要があることから、スクリーン印刷法等を用いることが望ましい。また、他の方法としては、蒸着法あるいはスパッタリング法により上記の高融点金属の薄膜を成膜する方法、上記の導電性セラミックスあるいは高融点金属からなる薄板を配設して静電吸着用内部電極形成層とする方法等がある。
このホットプレスにより、静電吸着用内部電極形成層は焼成されて導電性複合焼結体からなる静電吸着用内部電極13となる。同時に、支持板12及び載置板11は、絶縁材層14を介して接合一体化される。また、給電用端子15は、高温、高圧下でのホットプレスで再焼成され、支持板12の固定孔に密着固定される。
そして、これら接合体の上下面、外周およびガス穴等を機械加工し、静電チャック部2とする。
次いで、この接合部上に、厚みが0.2mm以下、好ましくは0.1mm以下の一定の厚みを有する、例えば、チタン(Ti)薄板、タングステン(W)薄板、モリブデン(Mo)薄板等の非磁性金属薄板を貼着し、この非磁性金属薄板をフォトリソグラフィー法により、所望のヒーターパターンにエッチング加工し、ヒータエレメント5とする。
これにより、支持板12の表面(下面)に所望のヒーターパターンを有するヒータエレメント5が形成されたヒータエレメント付き静電チャック部が得られる。
また、給電用端子22を金属とした場合、高融点金属を用い、研削法、粉末治金等の金属加工法等により形成する方法等が挙げられる。
この温度調整用ベース部3の少なくともプラズマに曝される面には、アルマイト処理を施すか、あるいはアルミナ等の絶縁膜を成膜することが好ましい。
次いで、この接合層6上に、接合層6と同一の平面形状のポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の絶縁性及び耐電圧性を有するフィルム状またはシート状の樹脂を貼着し、絶縁部材7とする。
また、上記接着剤の塗布方法としては、ヘラ等を用いて手動で塗布する他、バーコート法、スクリーン印刷法等が挙げられるが、温度調整用ベース部3上の所定領域に精度良く形成する必要があることから、スクリーン印刷法等を用いることが好ましい。
次いで、静電チャック部2と温度調整用ベース部3との間隔がスペーサの厚みになるまで落し込み、押し出された余分な接着剤を除去する(接着工程)。
また熱処理時間も、80時間未満では十分な熱処理効果を得ることができない。熱処理時間は90時間以上であることが好ましく、100時間以上であることがより好ましい。
接着層8の温度は、例えば温度調整用ベース部3に設けられた温度センサーなどを用いて確認してもよい。
このようにして得られた静電チャック装置1は、ヒータエレメント5がシート状またはフィルム状の接合部4を介して接合された静電チャック部2と、温度調整用ベース部3とを、接着層8及びシート状またはフィルム状の絶縁部材7を介して接着一体化した構成であり、静電チャック部2と温度調整用ベース部3との間の絶縁を良好に維持することができる。また、静電チャック部2にヒータエレメント5を接合した構成のため、静電チャック部2の載置面における面内温度の均一性を高めることができ、ヒータエレメント5の耐電圧性をより向上させることができるものである。
(1)接着層のヤング率
接着層8のヤング率は、以下のように測定した。具体的には、接着層形成用の樹脂組成物をフィルム状にキャストし、前記熱処理工程と同条件で熱硬化させ、厚さ100μmのフィルム状硬化体を得、これから幅4mmの試験片を切り出し、これをDMA法により測定した。ここで「DMA」とは、動的粘弾性分析をいい、例えばJIS C 6481に規定されるものをいう。測定条件は、各測定温度条件にて、スパン40mmにて試験片の長手方向に10gの引張加重を加えた状態から,振幅16μm、周波数11Hzで長手方向に正弦波をかけ貯蔵弾性率を求め、その値をヤング率とした。
静電チャック部2の載置面に直径300mmのシリコンウエハを静電吸着させ、温度調整用ベース部3に20℃の冷却水を循環させながら、外側のヒータエレメント5bのみに通電することにより、シリコンウエハの温度を25℃から80℃まで3℃/秒の昇温速度で昇温し、80℃に5分間保持し、その後、ヒータエレメント5への通電を停止して25℃まで冷却する熱サイクルを500回負荷した。その後、静電チャック装置を観察し以下の基準により耐久性を評価した。
○:静電チャック装置には何等異常は認められない。
△:静電チャック上面で、中央部が外周部に対して100μm以下の凸形状であり、吸着特性などに影響を与えない。
×:静電チャック上面で、中央部が外周部に対して100μmより大きい凸形状となり、吸着特性などに影響を与え始める。
以下のa及びbの測定により、上記耐久性試験前後のシリコンウエハの面内温度均一性、面内形状均一性を各々調べた。
a.静電チャック部2の載置面に直径300mmのシリコンウエハを静電吸着させ、温度調整用ベース部3に20℃の冷却水を循環させながら、シリコンウエハの中心温度が60℃となるようにヒータエレメント5の外ヒータ5b及び内ヒータ5aに通電し、このときのシリコンウエハの面内温度分布(中心からの面方向の距離に対する各位置のシリコンウエハ上面温度)をサーモグラフィTVS−200EX(日本アビオニクス社製)を用いて測定した。
b.直径300mmのシリコンウエハについて、三次元形状測定機(東京精密社製、XYZAXシリーズ)を用いてシリコンウエハ表面の凹凸形状の分布(中心からの面方向の距離に対する各位置の変位)を測定した。
(静電チャック装置の作製)
公知の方法により、図1に示すような静電チャック装置を作製した。
まず、内部に厚み20μmの静電吸着用内部電極3が埋設された静電チャック部2を作製した。この静電チャック部2の載置板11は、炭化ケイ素を8.5質量%含有する酸化アルミニウム−炭化ケイ素複合焼結体であり、直径は298mm、厚みは0.5mmの円板状であった。また、この載置板11の静電吸着面を、高さが40μmの多数の突起部16を形成することで凹凸面とし、これらの突起部16の頂面を板状試料Wの保持面とし、凹部と静電吸着された板状試料Wとの間に形成される溝に冷却ガスを流すことができるようにした。
一方、直径350mm、高さ30mmのアルミニウム製の温度調整用ベース部3を、機械加工により作製した。この温度調整用ベース部3の内部には冷媒を循環させる流路(図示略)を形成した。また、幅2000μm、長さ2000μm、高さ200μmの角形状のスペーサを、酸化アルミニウム焼結体にて作製した。
次に、温度調整用ベース部3の静電チャック部2との接合面を、アセトンを用いて脱脂、洗浄し、この接合面上の所定位置に、接合層6として厚み20μmのエポキシ樹脂からなるシート接着剤を貼着し、次いで、このシート接着剤上に、絶縁部材7として厚み50μmのポリイミドフィルムを貼着した。
なお、窒化アルミニウム粉末は、湿式篩により選別した粒径が平均7〜20μmのものを用いた。この表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粉末の被覆層である酸化ケイ素(SiO2)の厚みは0.008μmであった。
その後、静電チャック装置全体を恒温槽により160℃で100時間保持(熱処理)し、実施例1の静電チャック装置を作製した。なお、上記熱処理工程において、温度調整用ベース部3の温度センサーにより接着層8の温度が160℃となっていることを確認した。
なお、前記シリコンウエハの面内温度均一性、面内形状均一性に関しては、a、bの測定の結果を図3、図4に示すが、図中、実線は耐久性試験前のシリコンウエハの一直径方向の面内温度分布及び面内形状分布を、破線は耐久性試験後のシリコンウエハの上記の一直径方向の面内温度分布及び面内形状分布を、それぞれ示している。これらのa、bの測定結果によれば、シリコンウエハの面内温度が±0.5℃未満の範囲内で良好に制御され、面内形状も耐久性試験前後でほとんど変化なく均一であることがわかった。
実施例1の静電チャック装置の作製において、接着層8を形成するための接着剤の配合、熱処理の温度等を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして静電チャック装置の作製、評価を行った。なお表中の接着層の記載において、フィラーに関して「−」とあるのは接着剤としてシリコーン樹脂またはフッ素樹脂のみを用いた場合を示し、希釈剤については実施例1における接着剤となる樹脂組成物調製時に併せて配合されるものである。
結果をまとめて表1に示す。
実施例2の静電チャック装置の作製において、アクリル接着剤を用いて静電チャック部と温度調整用ベース部とを接合させた後、熱処理を行わないで静電チャック装置を作製した以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に併せて示す。
なお、前記シリコンウエハの面内温度均一性、面内形状均一性に関しては、a、bの測定の結果を、実施例1と同様に図5、図6に示すが、これらのa、bの測定結果によれば、シリコンウエハの面内温度が耐久性試験後で±2℃超の範囲でばらつき、面内形状も耐久性試験後で中央部が外周部に対して100μmを超える変位の凸形状となっていることがわかった。
実施例2の静電チャック装置の作製において、シリコーン系樹脂組成物を用いて静電チャック部と温度調整用ベース部とを接合させた後、熱処理を行わないで静電チャック装置を作製した以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に併せて示す。
・シリコーン樹脂:TSE3221、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製
・フッ素樹脂:SIFEL2614、信越化学(株)製
・フィラー(F1):表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粉末 TOYALNITE、東洋アルミニウム(株)製、平均粒子径;8μm
・反応性希釈剤(D1):ME91、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製
2 静電チャック部
3 温度調整用ベース部
5 ヒータエレメント
5a 内ヒータ
5b 外ヒータ
6 接合層
7 絶縁部材
8 接着剤層
11 載置板
12 支持板
13 静電吸着用内部電極
14 絶縁材層
Claims (9)
- 一主面を板状試料を載置する載置面とするとともに静電吸着用内部電極を内蔵した静電チャック部と、接着層と、前記静電チャック部を所望の温度に調整する温度調整用ベース部とをこの順に有し、
前記接着層に対して160℃、100時間の条件で加熱を行ったとき、該接着層の該加熱前の20℃におけるヤング率E1(20)及び該加熱後の20℃におけるヤング率E2(20)が、下記(1)式を満たす静電チャック装置。
|(E2(20)−E1(20))/E1(20)|≦2.0 ・・・ (1) - 前記接着層の、前記加熱前の180℃におけるヤング率E1(180)及び前記加熱後の180℃におけるヤング率E2(180)が、下記(2)式を満たす請求項1に記載の静電チャック装置。
|(E2(180)−E1(180))/E1(180)|≦2.0 ・・・ (2) - 前記接着層の、前記加熱後の20℃、180℃におけるヤング率E2(20)、E2(180)が、ともに20MPa以下である請求項1または2に記載の静電チャック装置。
- 前記接着層が接着剤を用いて形成され、該接着剤がシリコーン系樹脂及びフッ素系樹脂から選ばれる1種以上を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
- 前記接着層が、平均粒子径が1μm以上10μm以下のフィラーを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
- 前記フィラーの前記接着剤中の含有量が、接着剤全体積基準で5体積%以上30体積%以下である請求項5に記載の静電チャック装置。
- 前記接着剤がシリコーン系樹脂を含み、さらに1種以上を反応性希釈剤を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の静電チャック装置。
- 前記反応性希釈剤の含有量が、接着剤全体積基準で5体積%以上30体積%以下である請求項7に記載の静電チャック装置。
- 一主面を板状試料を載置する載置面とするとともに静電吸着用内部電極を内蔵した静電チャック部と、該静電チャック部を所望の温度に調整する温度調整用ベース部とを、接着剤を介して接着する工程と、
前記接着剤により静電チャック部及び温度調整用ベース部間に形成された接着層を、100℃以上200℃以下の温度で80時間以上熱処理する工程と、を有する静電チャック装置の製造方法。
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