本発明は、例えばホログラム素子等を含む回折素子を利用して映像光(画像光)を取り出すにあたって、輝度斑を低減させて高品質な映像を視認させることを可能にする虚像表示装置を提供することを目的とする。
本発明に係る虚像表示装置は、映像光となるべき光を発光する発光装置と、発光装置からの光を偏向して取り出すための回折素子とを備え、発光装置は、互いに異なる波長帯域のうちの一の波長帯域内の光であって近接した異なる波長の光をそれぞれ発光する複数の発光部を含み、回折素子での入射角度に対する選択波長帯域全体の波長分布よりも広い帯域の光を発光する。
上記虚像表示装置では、発光装置において、映像光となるべき光(ホログラム素子に入射させる照明光)として、一の波長帯域内、すなわち同系色の波長帯域内において、近接しているが波長の異なる光をそれぞれ発する複数の発光部を有することにより、発光装置全体としては、一の波長帯域の光として、例えばトップハット型の波長分布を有するブロードな光を発生させることができる。この際に、上記虚像表示装置では、発光装置により発せられる光の波長分布に関して、回折素子での各入射角度に対応して定まる選択波長帯域の全体での波長分布よりも広い帯域となるようにすることで、ホログラム素子等で構成される回折素子での作用において、各入射角度の回折効率をほぼ均一になるようにし、映像として視認されるべき範囲(虚像としての画像面内に相当)の全体について輝度斑を確実に低減させることが可能になる。
本発明の具体的な側面では、発光装置において、互いに異なる波長帯域には、赤色、緑色及び青色の3つの波長帯域が含まれる。
本発明の別の側面では、回折素子は、ホログラム素子を含む。この場合、ホログラム素子を利用して視認させるべき映像光の取出しが可能となる。
本発明のさらに別の側面では、発光装置は、赤色、緑色及び青色の3つの波長帯域の全て波長帯域の光を発光する。この場合、カラーの映像光を視認させることができる。
本発明のさらに別の側面では、発光装置において、複数の発光部は、LED光源、有機EL光源、またはレーザー光源を発光素子として含む。この場合、各種光源を利用して、複数の発光部において、同系色の波長帯域として十分に広い波長帯域が含まれるようにできる。
本発明のさらに別の側面では、発光装置は、複数の発光部を構成する各発光素子として異なるピーク波長を発生させるマルチモードタイプのレーザー光源を含む。この場合、マルチモードタイプのレーザー光源を用いることで十分に広い波長帯域が確保される。
本発明のさらに別の側面では、発光装置は、青色光源と、蛍光体とを含む。この場合、青色光源と蛍光体とを組み合わせることで、カラーの光源の形成が可能となる。
本発明のさらに別の側面では、発光装置からの光を均一化する光結合部材をさらに備える。この場合、光結合部材により、例えば波長の異なる光を十分に均一化した状態にして射出させられる。
本発明のさらに別の側面では、光結合部材は、拡散素子、ロッドインテグレータ、または合波器である。この場合、拡散素子、ロッドインテグレータ、または合波器により、例えば光源の特性に応じて適した光の均一化を行うことができる。
本発明のさらに別の側面では、発光装置は、複数の発光部を構成する発光素子として、複数の領域に分割して設けられた各画素から異なる波長帯域の光をそれぞれ発生する有機EL光源を含む。この場合、有機EL光源を利用して複数の領域に分割した各画素から異なる波長帯域の光を発生させることで、同系色の波長帯域として十分に広い波長帯域が含まれるようにできる。
本発明のさらに別の側面では、回折素子が設けられ、発光装置からの光を回折素子に導光する導光部材をさらに備える。この場合、導光部材により光の導光を行うことができる。
本発明のさらに別の側面では、発光装置からの光を反射して被照射領域に向けて照射するMEMSミラーをさらに備える。この場合、MEMSミラーにより光の導光を行うことができる。
本発明のさらに別の側面では、発光装置において、複数の発光部は、近接した異なる波長の光について隣接するピーク波長の差を、10nm以上30nm以内としている。この場合、合成した時にトップハット形状を維持し、かつ、近接した異なる波長の光が、同系色の波長帯域として十分に広い波長帯域のものとなる。
本発明のさらに別の側面では、発光装置における発光状態を制御してホワイトバランスを調整するための画像処理を行う画像処理部をさらに備える。この場合、例えば映画鑑賞といった特に質の高い良好な画像の提供に対応可能になる。
本発明のさらに別の側面では、発光装置を構成する複数の発光部のうち、回折素子の特性に対して最も輝度の高くなる発光素子のみを用いるモードに変更するモード変更部をさらに備える。この場合、十分な輝度の画像の提供が可能になる。
〔第1実施形態〕
以下、図1等を参照して、本発明の第1実施形態に係る本実施形態に係る虚像表示装置100について説明する。
虚像表示装置100は、観察者に虚像による映像光(画像光)を認識させるとともに、観察者に外界像をシースルーで観察させるものであり、映像表示装置(映像素子)10と、投射光学系である投射レンズ40と、導光装置20とを一組として備え、また、制御部80を備える。これらのうち、映像表示装置10、投射レンズ40及び導光装置20は、通常観察者の右眼および左眼に対応して一組ずつ設けられるが、右眼用と左眼用とでは左右対称であるので、ここでは左眼用のみを示し、右眼用については図示を省略している。なお、虚像表示装置100は、全体としては、例えば一般の眼鏡のような外観(不図示)を有するものとなっている。
映像表示装置10は、2次元的な照明光を射出する照明装置31(バックライト光源)と、透過型の空間光変調装置である液晶表示デバイス32とを有する。照明装置31は、映像光となるべき光を発光する発光装置RRと、照明装置31からの光を拡散させることで均一化する板状の光結合部材である拡散素子(光拡散板)DPとを有する。ここでは特に、発光装置RRは、複数の発光部R1〜R3を備えるものとなっている。発光部R1〜R3は、LED光源で構成される発光素子であり、互いに近接しているが異なる波長帯域の光をそれぞれ発光する。見方を変えると、発光装置RRは、LED光源による複数の発光素子で構成されていることになる。拡散素子DPは、各発光部R1〜R3から射出された各成分を均一化して(よく混ぜ合わせて)液晶表示デバイス32を照射するバックライトとなる照明光を形成し、液晶表示デバイス32に向けて射出する。液晶表示デバイス32は、照明装置31からの照明光を空間的に変調して動画像等の表示対象となるべき映像光GLを形成する。
投射レンズ40は、映像表示装置10の液晶表示デバイス32上の射出面32aの各点から射出された映像光GLを平行状態の光束にするコリメートレンズである。
導光装置20は、映像光GLを取り込んで導くとともに観察者に射出させるための部材であり、全体として一方に延びる平板状の外形を有している。導光装置20は、光束全体としての映像光GLを平板の延びるZ方向に導く。ここでは、このZ方向を導光方向と呼ぶものとする。導光装置20は、本体部分である導光部材としての光透過性の板状部材PLと、板状部材PLの面上に貼り付けることで構成されるシート状の第1ホログラム素子21及び第2ホログラム素子23とを有して形成されるものである。
第1ホログラム素子21及び第2ホログラム素子23は、例えば、フォトポリマー材料等で作製されるフィルム状の部材であり、回折及び干渉の作用により入射した光のうち特定成分について偏向させて視認させるべき映像光GLの成分を導光装置20から取り出すための偏向素子である。また、その機能的側面から、第1ホログラム素子21及び第2ホログラム素子23は、回折素子、さらには干渉型の素子でもあると言える。図示のように、第1ホログラム素子21は、光入射側に設けられる一方、第2ホログラム素子23は、光射出側に設けられているが、第1ホログラム素子21及び第2ホログラム素子23は、一対の部材であり両者での回折作用等が協働することで光路の調整を行い、映像表示装置10から導光装置20に入射した光を観察者に視認可能な虚像として取り出す作用を示すものとなっている。
以下、導光装置20の構造について光学部材としての機能的側面から説明する。導光装置20は、光学的な機能を有する部分として、光入射部D1と、導光部D2と、光射出部D3とを備える。光入射部D1は、光入射面IFと第1ホログラム素子21とを有し、映像表示装置10からの映像光GLを光入射面IFから取り込むとともに、取り込んだ映像光GLを導光部D2に向けて折り曲げるように第1ホログラム素子21を作用させる。導光部D2は、板状部材PLの主要部である全反射面形成部22を有し、光入射部D1で取り込まれた映像光GLを光射出部D3に向けて伝播させる。より具体的には、全反射面形成部22の第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて全反射を繰り返させることで、導光部D2が光束全体として導く方向である導光方向(Z方向)について高効率に映像光GLの導光を行う。光射出部D3は、画像取出部(あるいは角度変換部)である第2ホログラム素子23と光射出面OFとを有し、導光部D2で導光方向に伝播された映像光GLの角度変換を第2ホログラム素子23での作用により行い光射出面OFから映像光GLを射出させる。見方を変えると、導光部材である板状部材PLは、回折素子である第1及び第2ホログラム素子21,23が貼り付けられることで、第1及び第2ホログラム素子21,23と協働して照明装置31からの光を導光している。
ここで、以上のように第1及び第2ホログラム素子21,23での回折及び干渉を利用して画像の取出しを行う場合、ホログラム素子の波長選択性及び角度選択性を考慮する必要がある。一般に、ホログラム素子は、高い波長選択性及び角度選択性を示し、例えば上記の構成では、映像光の画角に相当するホログラム素子への光の入射角度に対する選択波長帯域は狭く、かつ、入射角度によって回折効率がピークになる波長が異なる(すなわち回折効率の波長分布が異なる)という性質がある。このため、画像位置によって回折効率が下がり暗くなってしまうところが存在してしまうというおそれがある。また、このような差異についての度合いは、例えば光源の種類による製造誤差や、ホログラム素子作製(露光)時に用いる装置の精度、また、ホログラムの設計上において要求される精度等の違いによって様々にことなってくる。これに対して、本実施形態では、近接して異なる波長帯域の光をそれぞれ発光する複数の発光部R1〜R3を備えることで、十分に広いピーク範囲を有する光を形成し、例えば入射角度によって回折効率のピークが異なる、さらにはこれらの間についても製造誤差が生じることがあるといったことへの対応を可能としている。
制御部80は、例えばCPUや記憶装置、あるいは回路基板等により構成され、上記光学系による画像形成を行うために映像表示装置10の駆動に関する各種処理(画像信号の変換処理やパネルの調光や光の強度調整等)を行う。ここでは一例として、制御部80は、例えば、ガンマ補正等を含む表示画像に関する各種画像処理(信号の変換処理等)を行う画像処理部81や、液晶表示デバイス32を駆動させるためのパネル駆動部82、照明装置31を駆動させるための光源駆動部83、さらには、視認させるべき画像のデータを格納する画像データ記憶部84等を備える。制御部80は、パネル駆動部82や光源駆動部83により映像表示装置10の映像光GLを生じさせるための各種動作を行う。また、その前提として、映像表示装置10の光源特性に応じた画像処理を画像処理部81において行っている。
以下、図2を参照して、映像表示装置10の構造のうち、主に発光装置RRについて詳細に説明する。既述のように、また、図2に示すように、本実施形態の発光装置RRは、複数の発光部R1〜R3を有している。また、複数の発光部R1〜R3は、LED光源でそれぞれ構成される複数の発光素子である。したがって、複数の発光部R1〜R3を複数の発光素子S1〜S3とみることもできる。ここでは説明を簡単にするために、一例として、複数の発光部R1〜R3(あるいは複数の発光素子S1〜S3)を、赤色、緑色及び青色の3つの波長帯域のうちの赤色の波長帯域内の光であって近接した異なる波長の光をそれぞれ発光するものとする。より具体的には、第1発光部R1(S1)は、613nmをピーク波長とするLED光源であり、第2発光部R2(S2)は、630nmをピーク波長とするLED光源であり、第3発光部R3(S3)は、647nmをピーク波長とするLED光源であるものとする。これらは、略同一の強度の光を発するように(例えば制御部80により)調整されているものとする。
図3は、上記した各発光部R1〜R3(発光素子S1〜S3)で発生する光について波長分布を概念的に示すグラフ、すなわち発光装置RRの発光特性について示すグラフである。なお、グラフの横軸は、波長(単位:nm)を示し、縦軸は光の強度を示している。図3において、曲線Rp1は、第1発光部R1から発生する光の発光特性を示し、曲線Rp2は、第2発光部R2から発生する光の発光特性を示し、曲線Rp3は、第3発光部R3から発生する光の発光特性を示している。これらLED光源で構成される各発光部R1〜R3からの光は、ある程度の波長帯域に亘ったブロードな光であるが、そのピーク範囲はそれほど広くなく、いわゆるトップハット型とはなっていない。これに対して、本実施形態では、上記した照明装置31において、発光装置RRを構成する第1〜第3発光部R1〜R3からそれぞれ発光された光が、拡散素子DPにおいて均一化される。結果的に照明装置31からは、発光部R1〜R3からの光が混ざり合って合成され、結果的に比較的広い帯域の光を発光する赤色光が射出されるものとなる。具体的には、図3において曲線Rptに示すトップハット型の波長分布を有するブロードな光すなわちピーク範囲の広い光を発生させるものとなる。
一方、既述のように、第1及び第2ホログラム素子21,23による光の偏向に際しては、照明装置31(発光装置RR)からの光が入射する際の入射角度(画角に相当)に対する依存性が大きい。図4(A)は、ホログラム素子における赤色光の波長帯域における入射角度ごとの選択波長分布の特性を示すグラフである。なお、グラフの横軸は、波長(単位:nm)を示し、縦軸は回折効率の強さを示している。この図から、回折効率がピークとなる波長が入射角度によって異なっており、各範囲も狭いものであることが分かる(典型的な一例としては、各波長分布の半値幅が10nm以下であることが想定される)。各回折効率の波長分布についてより具体的に説明すると、図中において、曲線DCは、ホログラム素子に対して入射角度0°であるすなわち垂直入射する場合の回折効率の波長分布を示している。これに対して、曲線DL,DRは、入射角度が±10°である場合の回折効率の波長分布をそれぞれ示している。図示の場合、曲線DLと曲線DRにおいて回折効率が最も高くなるピーク波長が曲線DCの場合に比べて互いに反対方向にシフトしていることが分かる。なお、図示を省略するが、入射角度が0°から±10°までの範囲における回折効率の波長分布は、曲線DLのピークから曲線DRのピークまでの範囲内にピークを有するものとなっている。また、この入射角度±10°の範囲が第2ホログラム素子23において取り出され視認されるべき映像についての画角に相当(2.5m先に40インチの画像が見えることに相当)し、これだけの画角があれば、視認させるべき映像の範囲として十分なものとすることができる。しかしながら、最終的に得られる映像としての光の強度は光源側のピークと回折効率のピークとを掛け合わせたものとなる。このため、回折効率のピーク波長やその近辺の波長の成分について、仮に、供給側である光源での発生が弱いものであると、部分的に十分な強度の映像光が得られなくなり、その部分に相当する画像が暗くなってしまうことになる。これは、映像として考えた場合、光の入射角度すなわち映像における画角として反映され、例えば画像の中心側は明るいが周辺側は暗い、といった輝度斑となって現れてしまう。このような事態を回避すべく、本実施形態では、ホログラム素子についての上記特性に応じた光を発生させるように図3について示した状態で発光をするものとなっている。
以下、ホログラム素子における入射角度ごとの選択波長分布の特性と発光装置の発光特性との関係についてより詳細に説明する。まず、図4(A)を参照して説明したホログラム素子の回折効率に関する入射角度依存性に対して、本実施形態の発光装置RRを含む照明装置31からの光の発光特性は、既述のように、図4(B)(図3に示すものに相当)に示す曲線Rptに示すトップハット型の波長分布を有するブロードなものとなっている。従って、図4(C)に示すように、図4(A)と図4(B)とを重ねあわせた場合に、曲線DC,DL,DRの全てのピーク位置の波長が、曲線Rptに示すトップハット型の波長分布の広いピーク範囲内に収まるようにできる。すなわち、発光装置RRは、近接した異なる波長の光をそれぞれ発光する複数の発光部R1〜R3を含むことで、第1及び第2ホログラム素子21,23での入射角度に対する選択波長帯域全体の波長分布よりも広い帯域の光を発光するものとなっている。したがって、画角によって輝度斑が発生することを抑制でき、良好な画像の形成が可能となる。ここで、複数の発光部R1〜R3については、近接した異なる波長の光について隣接するピーク波長の差が、10nm以上30nm以内となっていることが望ましい。この場合、近接した異なる波長の光が、同系色(上記の場合赤色系)の波長帯域として、ホログラム素子の入射角度に対する選択波長帯域全体の波長分布に対応するものとして十分に広い波長帯域のものとしつつ、光源側の光の特性を曲線Rptに示すようなトップハット型の形状に維持することができる。なお、上記の場合、最もピーク波長の短い第1発光部R1(ピーク波長:613nm)と最もピーク波長の長い第3発光部R3(ピーク波長:647nm)とでは、34nmの差があり、隣接するピーク波長の差が17nmずつある。
なお、以上の説明は、一例であり、ホログラムの特性の違い等によって種々の設計変更(数値変更等)が可能である。例えば、ホログラムの特性等によっては、図4(A)に例示するホログラム素子の入射角度に対する選択波長帯域全体の幅(シフトレンジ)が、上記のような±10度の画角(2.5m先に40インチの場合に相当)において、例えば30〜40nm程度と大きくなる(の幅で分離する)ような態様も生じ得る。これに対して、複数個の光源を合成した波長両端のピーク波長差である最も短いピーク波長から最も長いピーク波長までの差は、上記シフトレンジに対し+10nm程度あることがより好ましい。すなわち、シフトレンジが30〜40nm程度となるような場合には、50nm以上の幅を有するトップハット型の光を光源側において形成させることが必要となる可能性がある。このような場合は、図3に示す場合と同様に、ピーク波長が互いに近接して異なる光源を3つ(あるいは3つ以上)用いれば、隣接するピーク波長の差が10〜30nmの範囲にあるという条件を維持しつつ、所望の光を発生させることが可能である(例えば3つの光源として隣接するピーク波長の差が25nm程度となるようなものを用意する)。
図5は、比較例の発光装置の発光特性についての一例を示すグラフである。図5(A)は、比較例として、トップハット型ではなく通常のLED光源における波長分布を示すものである。すなわち、図中の曲線Rpは、通常の1つのLED光源から発生する光の発光特性を示すものであり、ある程度の波長帯域に亘ったブロードな光であるが、そのピーク範囲はそれほど広くなく、いわゆるトップハット型とはなっていない。この場合、例えば図4(A)に示したものと同様の特性を有するホログラム素子を適用すると、図5(B)に示すように、曲線Rpのピークの範囲の影響を受けて、曲線Rpにおいて強い強度の波長成分となっている曲線DCについては十分な回折効率が得られる一方、低い強度の波長成分となっている曲線DLや曲線DR十分な回折効率が得られないことになる。これは、画像で言えば中心側は明るいが、周辺側は暗くなり、輝度斑が発生していることを示している。これに対して、本実施形態では、上記のように第1及び第2ホログラム素子21,23での入射角度に関する角度依存性に対応して、十分に広いピーク範囲を有するトップハット型の発光特性を有する光を形成させている。これにより、対象となる画角範囲の全体に亘って十分な回折効率でホログラム素子における偏向を行って輝度斑を抑制している。
図6は、発光装置RRを含む映像表示装置10の一変形例の構成を概念的に示す斜視図であり、図2に対応する図である。上記の説明では、説明の簡略化のために、赤色光波長帯域の成分についての発光のみで説明していたが、赤色、緑色及び青色の3つの波長帯域の全て波長帯域の光を発光するものとしてもよい。具体的には、例えば図6に示すように、照明装置31において、発光装置として、赤色光の発光用の発光装置RRのほか、緑色光の発光用の発光装置GG及び青色光の発光用の発光装置BBを有し、発光装置GG及び発光装置BBが、各色の同系色の波長帯域内において、LED光源で構成され互いに近接して異なる波長帯域の光をそれぞれ発光する複数の発光部G1〜G3,B1〜B3で構成されていてもよい。各発光装置RR,GG,BBから射出された光は、拡散素子DPにおいて均一化されて照明光が形成される。なお、液晶表示デバイス32は、赤色、緑色及び青色のうち一の色の波長帯域の光を取り出すとともに他の波長帯域の成分をカットして各色の画素をマトリクス状に形成させるためのカラーフィルターを有している。この場合、カラーの映像光を視認させることができる。なお、図2に示した場合のように、赤色光のみとすることも可能である。同様に、緑色光のみや青色光のみとすることも可能である。また、図2や図6の例では、各色光について互いに異なる波長帯域の光を発生させるLED光源として3つの光源をそれぞれ示しているが、光源の個数も3つに限らず、例えば2つとする、あるいは3つよりも多くする等、種々のものとすることができる。また、図6のように、複数色の光源とする場合、ある色(1つまたは2つ)については、単数のLED光源で構成し、他の色(2つまたは1つ)についてのみ互いに異なる波長帯域の光を発生させる複数の発光部を使用する、という態様とすることもできる。
以下、図1等に戻って、制御部80による各種制御のうち、上記した特性を有する照明装置からの照明光との関係での制御について説明する。特に、上述したようなカラー画像を形成可能な構成とする場合、各色内において、トップハット型の特性が維持されるように、一の波長帯域内における各発光部間での光の強度のバランス調整がなされているとともに、各色間での色バランスの制御が必要となる。このため、制御部80の画像処理部81において、ガンマ補正その他の画像処理を施し、その際に、照明装置31すなわち発光装置RR等における発光状態を制御して、ホワイトバランスの調整を行うものとすることができる。この場合、例えば映画鑑賞といった特に質の高い良好な画像の提供に対応可能になる。
以上のように、本実施形態に係る虚像表示装置100では、照明装置31を構成する発光装置RR等の発光装置において、映像光となるべき光(ホログラム素子に入射させる照明光)として、一の波長帯域内、すなわち同系色の波長帯域内において、近接しているが波長の異なる光をそれぞれ発する複数の発光部R1〜R3等を有することにより、発光装置全体としては、一の波長帯域の光としてトップハット型の波長分布を有するブロードな光を発生させることができる。この際に、照明装置31により発せられる光の波長分布が、第1及び第2ホログラム素子21,23での入射角度に対応して定まる選択波長帯域の全体での波長分布よりも広い帯域となっている。従って、ホログラム素子での作用において回折効率をほぼ均一になるようにし、映像として視認されるべき範囲、すなわち虚像としての画像面内に相当する範囲の全体について輝度が落ちる箇所が発生することを抑制し、輝度斑を確実に低減させることが可能になる。また、トップハット型の波長分布を有するブロードな光を形成するにあたって、種々の製造誤差まで含めてこれよりも広いものとすることで、多少の製造誤差が生じるものであっても確実に画像の輝度斑を抑制でき、製造の歩留まりを向上させることができる。
〔第2実施形態〕
以下、図7を参照して、第1実施形態を変形した第2実施形態について説明する。本実施形態に係る虚像表示装置は、照明装置において、発光装置適用する光源として自発光型の素子である有機EL光源(あるいはOLED)を用いている。なお、虚像表示装置のうち照明装置に関する構造以外の構造については、図1等に示す虚像表示装置100と同様の構造を有するため、各要素については説明等を省略する。
図7(A)は、本実施形態における虚像表示装置に組み込まれる照明装置231について、発光装置の構造を説明するための図である。本実施形態では、照明装置231として、自発光型の素子である多数の有機EL光源素子を含む多数の画素PXをマトリクス状に配置して構成される画素マトリクスによってパネル面を形成している。ここでは、一例として、図示のように1つの画素PXを9つの発光素子S1〜S9で形成している。より具体的に説明すると、画素PXのうち、発光素子S1〜S3は、同系色としての赤色光の波長帯域内において互いに近接して異なる波長帯域の光をそれぞれ発光する複数の発光部R1〜R3として機能し、発光素子S4〜S6は、同系色としての緑色光の波長帯域内において互いに近接して異なる波長帯域の光をそれぞれ発光する複数の発光部G1〜G3として機能し、発光素子S7〜S9は、同系色としての青色光の波長帯域内において互いに近接して異なる波長帯域の光をそれぞれ発光する複数の発光部B1〜B3として機能する。以上により、各画素から射出される各色の成分について、十分に広いピーク範囲を有するトップハット型の発光特性を有する(図3等参照)ものとなるようにできる。
図7(B)は、上述した照明装置231の一変形例である。図7(A)では9つの発光素子S1〜S9を利用するものとしているが、例えば、1つの発光素子SSについて9つの領域に塗り分けたカラーフィルターによって、複数の発光部R1〜R3,G1〜G3,B1〜B3を分割して形成するものとしてもよい。すなわち、発光装置が、複数の発光部R1〜R3,G1〜G3,B1〜B3を構成する発光素子SSとして、複数の領域に分割して設けられた各画素から異なる波長帯域の光をそれぞれ発生するものとしてもよい。この際、例えば塗り分けた領域ごとにおけるカラーフィルターの透過波長帯域や透過率を調整することで、所望のトップハット型の発光特性とすることができる。
なお、図7に示す1つの画素内の発光素子の配置は一例であり、1画素内における発光素子の配置については、種々のものが可能であり、例えば上記の場合以外の配置の一例として、各色(R,G,B)のそれぞれの領域を正方形の形状とすることで、垂直、水平方向のそれぞれから出射される光の輝度を均一化して視野角特性を改善するようにしてもよい。
〔第3実施形態〕
以下、図8等を参照して、第3実施形態について説明する。本実施形態では、発光装置の光源としてマルチモードタイプのレーザー光源とMEMSミラーとを用いて、発光装置からの光を偏向して取り出すための回折素子としてのホログラム素子323を照射している。
以下、本実施形態に係る虚像表示装置300の構成について説明する。虚像表示装置300は、観察者に虚像による映像光(画像光)を認識させるとともに、観察者に外界像をシースルーで観察させるものであり、照明光を形成する照明装置331と、投射レンズ340と、MEMSミラーMEと、回折素子であるホログラム素子323とを一組として備え、また、制御部380を備える。これらのうち、制御部380以外の上記各部は、通常観察者の右眼および左眼に対応して一組ずつ設けられるが、右眼用と左眼用とでは左右対称であるので、ここでは一方の眼用のみを示し、もう一方の眼用については図示を省略している。なお、図示において照明装置331が観察者の鼻側(中央側)に設置されるものである場合は、本図は左眼用を示すものとなり、照明装置331が観察者の耳側(側面側)に設置されるものである場合は、本図は右眼用を示すものとなる。
照明装置331は、レーザー光源で構成される発光素子である複数の発光部R1〜R3を有する発光装置RRと、発光装置RRからの光を合成して均一化する光結合部材である合波器COとを備える。発光装置RRは、制御部380による制御下で所定のタイミングでパルス状のレーザー光を射出する。また、発光装置RRを構成する複数の発光部R1〜R3は、同系色(例えば赤色)であって互いに近接しているが異なる波長帯域の光をそれぞれ発光する多波長レーザアレイである。合波器COは、例えば光合成ファイバーによって形成され、各発光部R1〜R3から射出される各成分を例えば時系列に繋いで合成することで均一化し照明光ILを形成するとともに、均一化された照明光ILを投射レンズ340に向けて射出する。
投射レンズ340は、照明装置331からの照明光ILを平行状態の光束にするコリメートレンズであり、コリメート化した照明光ILをMEMSミラーMEに向けて照射する。
MEMSミラーMEは、制御部380による制御下でパルス状のレーザー光の射出タイミングに同期させたタイミングで、入射した照明光ILをホログラム素子323に向けて反射し、その際、ホログラム素子323上の面内を2次元的に走査するように照射する。
ホログラム素子323は、MEMSミラーMEによって照射された照明光ILに対して回折及び干渉の作用をして偏向(反射)するとともに所期の画像を視認させるべき映像光GLを観察者の眼EYに向けて射出する。
ここで、上記のようなレーザー光源を用いた場合、一般に波長帯域の幅が狭くなるが、マルチモードタイプのレーザー光源を用いた場合、複数の発光部R1〜R3は、図9(A)に示すように、1〜2nmの波長帯域の幅に光が分布特性を持つものとすることができる。さらに、上記の例では、複数の発光部R1〜R3として、同様のマルチモードタイプのレーザー光源であって近接して異なる波長帯域の光をそれぞれ発光する複数のレーザー光源を適用し、これらを上述のように合波器COによって時間的に重なり合せることができる。このようなものとすれば、照明装置331は、図9(B)に示すように、広い波長帯域に広がった分布特性を有してよりフラット化された照明光を射出することができる。この光の特性(分布)について外装した曲線Rptとして捉えれば、当該照明光は、十分に広いピーク範囲を有するトップハット型の発光特性を有するものと言える。すなわち、上記のような発光装置RRを適用することで、レーザー光源を利用する場合においても第1実施形態等の場合と同様に、ホログラム素子323での作用において回折効率をほぼ均一になるようにでき、輝度斑を低減できる。
なお、上記の説明では、説明の簡略化のために、赤色光波長帯域の成分についての発光のみで説明していたが、第1実施形態の場合と同様に、赤色、緑色及び青色の3つの波長帯域の全て波長帯域の光を発光するものとしてもよい。
また、上記では、マルチモードタイプのレーザー光源を適用しているが、例えば、近接して異なる波長帯域の光を発生する複数のシングルモードタイプのレーザー光源を適用するものとしても良い。
上記態様では、MEMSミラーMEによって直接回折素子であるホログラム素子323に光を照射する、すなわち回折素子の有効領域を被照射領域として照射するものとしているが、これに限らず種々の態様が可能である。上記態様の一変形例として、例えば、MEMSミラーと回折素子との間に導光のための部材としてのミラーを設けた構成としてもよい。すなわち、MEMSミラーは、当該ミラーの反射面を被照射領域として当該ミラーに向けて照射し、最終的に回折素子に光が照射されるものとしてもよい。また、MEMSミラーで反射する前、または反射した後に画像取出しの際の回折素子での収差を補正するための回折素子(例えばホログラム素子323と同様の特性を有する回折素子)を設けてもよい。
〔その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。上記では、回折素子として、ホログラム素子を用いているが、ホログラム以外の回折素子を適用することも可能である。また、ホログラム素子の例として反射型のものを適用しているが、透過型のホログラム素子を適用することも可能である。
上記の説明では、例えば第1実施形態においてバックライトの光源としてLEDを適用しているが、所期の発光特性を有する光を形成できれば、他の光源を利用してもよく、例えばOLED(有機EL)なども適用可能である。さらに、OLED(有機EL)を適用する場合において、第2実施形態の図7(A)において1画素の構成として示した複数色のそれぞれについて、同系色の波長帯域内の光であって近接した異なる波長の光をそれぞれ発光する素子を適用してもよく図7(B)に示したようにカラーフィルターを適用することも考えられる。また、この他、例えば照明装置(発光装置)として、青色光源と蛍光体とを含むものを適用することも可能である。より具体的には、例えば図10に示すように、近接して異なるLED光源で構成される発光素子S1〜S3として、青色光の波長帯域内において互いに近接して異なる波長帯域の光をそれぞれ発光する複数の発光部BL1〜BL3を複数の蛍光体(黄色蛍光体)YPとともに拡散素子DPに埋め込むことで白色光を形成する照明装置31(発光装置)を構成するものとしてもよい。また、青色光源と蛍光体とを含むものとしては、青色光源として青色レーザー光源と当該青色レーザー光源の成分の一部を黄色蛍光体に照射することで3色の光を含む照明装置(発光装置)を構成するものとしてもよい。
また、図11に示すように、例えば赤色、緑色及び青色の3つの波長帯域の全て波長帯域の光を発光する照明装置31を備えた場合において、制御部80は、入力手段(例えば観察者が操作する各種UI(図示略)に設けられたボタン等)としてのモード変更部MCから送信されるモード変更信号を受け付けるモード変更受付部CAをさらに有し、送信されたモード変更信号に応じて画像表示を行うものとしてもよい。モード変更の種類については、種々のものが考えられるが、例えば複数の発光部R1等のうち第1及び第2ホログラム素子21,23の特性に対して最も輝度の高くなる発光素子のみを用いるモードに変更することができるようにすることが考えられる。この場合、より効率的に十分な輝度の(輝度斑の少ない)画像の提供が可能になる。上記のようなモード変更については、例えば表示するコンテンツに応じておこなうものとしてもよい。具体的には、映画を見る場合は、赤色、緑色及び青色の3つの近接した異なる波長の光を用いて色斑を極力抑えられるモードとし、文書等文字を見る場合は、最も輝度の高い発光素子のみを用いるモードとし、効率的に十分な輝度を得るように切り替え可能とすることが考えられる。
上記の説明では、例えば第1実施形態において、異なる波長の光を均一化する光結合部材として拡散素子(光拡散板)PDを適用しているが、照明光の均一化のための光結合部材としては、適用する光源等に応じで種々のものが適用可能であり、例えばロッドインテグレータや、フライアイレンズ、光ファイバー(あるいはライトパイプ)といったものが考えられる。
上記の説明では、映像表示素子として、透過型の液晶表示デバイス32を用いているが、画像表示素子としては、透過型の液晶デバイスに限らず種々のものを利用可能である。例えば、反射型の液晶パネルを用いた構成も可能であり、液晶表示デバイス32に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。また、上記第3実施形態の変形例として、レーザー光源と例えばポリゴンミラーとを組みあわせたレーザースキャナーを用いた構成も可能である。
上記の説明では、回折素子として、光入射側と光射出側とにそれぞれ1枚ずつホログラム素子(1枚の第1ホログラム素子21及び1枚の第2ホログラム素子23)を設けた構成としているが、回折素子の構成としてはそれ以外にも種々の態様が可能であり、例えば図12に一例を概念的に示すように、光入射側に第1ホログラム素子21として2枚のホログラム21t(透過型ホログラム)及びホログラム21r(反射型ホログラム)を設けて画像を入射させる構成も考えられる。
上記の説明では、虚像表示装置100は、右眼及び左眼の双方に対応して、一組ずつ映像表示装置10及び導光装置20を備えるとしているが、右眼又は左眼のいずれか一方に対してのみ映像表示装置10と導光装置20とを設け画像を片眼視する構成にしてもよい。
上記の説明では、実施形態の導光装置20は、虚像表示装置100がヘッドマウントディスプレイであるとして具体的な説明を行ったが、実施形態の虚像表示装置100をヘッドアップディスプレイとし、これに適用することもできる。
また、上記では、観察者に虚像による映像光(画像光)を認識させるとともに、観察者に外界像を透過させることで視認させるシースルータイプの虚像表示装置としているが、これに限らず、例えばビデオシースルーのようなカメラで現実世界を撮影したものを外界像とし、その外界像に対して映像光を合成し、合成画像を表示するようなものにおいて適用することもできる。この際、ビデオシースルーのタイプとしてヘッドマウント(頭部搭載型)のようなものに限らず、例えば双眼鏡のような手持ち型のものに適用することも可能である。
上記の説明では、第1実施形態の導光部D2を構成する第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて、例えば表面上にミラーやハーフミラー等を施すことなく空気との界面により映像光を全反射させて導くものとすることが考えらえるが、本願発明における全反射については、第1及び第2の全反射面22a,22b上の全体又は一部にミラーコートや、ハーフミラー膜が形成されてなされる反射も含むものとする。例えば、映像光の入射角が全反射条件を満たした上で、全反射面22a,22bの全体又は一部にミラーコート等が施され、実質的に全ての映像光を反射する場合も含まれる。また、十分な明るさの映像光を得られるのであれば、多少透過性のあるミラーによって全反射面22a,22bの全体又は一部がコートされていてもよい。
また、上記では、発光装置または発光部において、波長帯域として、赤色の波長帯域の光のほか、緑色や青色の波長帯域の光を発光するものとしているが、この他の可視光波長帯域の光として、例えば黄色等の中間色の光を利用する構成としてもよい。
また、上記では、板状部材PLにより導光部材を構成しているが、導光部材は、板状のものに限らず、例えば、光射出部や導光部が互いに平行な曲面を有するもので構成されていてもよい。
また、回折素子の形成について、板状の導光部材に貼り付けて構成するもののほか、例えば導光板自体に直接回折素子を設ける構成としてもよい。より具体的には、エッチング等でレリーフ型回折素子を設ける構成が考えられる。
また、上記の通り、導光部材については、発光装置からの光を回折素子に導光するだけでなく、回折素子から出た光をさらに導光する場合も含むものであり、また一方で、回折素子も、導光部材と協働することで導光に寄与しており、このような態様となる種々の構成の導光部材及び回折素子が適用可能である。