JP2017056486A - 熱間プレス機及びそれを用いた熱間プレス成形品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】上金型及び下金型を有する熱間プレス機において、より高い寸法精度の熱間プレス成形品を、より高い生産性で製造可能な構成を実現する。
【解決手段】熱間プレス機1は、下金型21と、下金型21の上方に下金型21に対向して配置され、内部に冷媒流路12が形成されているとともに下金型21側の表面に冷媒流路12の出口である複数の冷媒噴出孔11bが形成された上金型11と、上金型11と下金型21との間の遮蔽位置と、上金型11と下金型21との間から退避した退避位置とに移動可能に構成された遮蔽板6とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱間プレス成形に用いる熱間プレス機に関する。
近年、高張力鋼板を用いた自動車部品材等の鋼板成形手段として熱間プレス成形が採用されている。熱間プレス成形は、鋼板を高温でプレス成形した後、急冷することによって焼入れ硬化させる。そのため、プレス機が下死点まで到達した後(以下、単に成形後という)の変形等の不具合を生じることなく、高強度で形状精度の高い部品等を得ることができる。
一般に、熱間プレス成形では、予め加熱炉等によってAc3変態点以上の所定温度に加熱された鋼板を、金型のダイス上に載置した状態または金型に内蔵したリフター等の治具により浮上させた状態で、金型のポンチを下死点まで降下させることにより所定の形状に成形した後、型締めした状態で内部に冷却媒体(冷媒)が流れる金型によって急速に冷却することにより、焼入れする。しかし、このように内部を冷媒が流れる金型を用いて鋼板成形品(鋼板を金型によって成形することにより得られた成形品)を冷却する構成では、再び熱間プレス成形可能な温度まで金型を冷却するための時間を要することから、生産性が低い。また、熱間プレス成形される鋼板の板厚が厚いと、冷却能力が不足するため、鋼板成形品を焼入れすることができない。
これに対し、鋼板成形品と金型との間に、例えば水などの冷媒を供給することにより、鋼板成形品を急速に冷却する方法がある。この方法に用いられる金型には、表面に、一定の高さを有する複数の独立した凸部及び冷媒の冷媒噴出孔が設けられている。また、前記金型の内部には、前記冷媒噴出孔に連通する冷媒の流路と、前記金型に供給した冷媒を吸引するための流路とが設けられている。
このような構成を有する金型を鋼板成形品の冷却に用いた冷却方法では、該金型内の流路に冷媒を流して鋼板成形品を冷却している間は、該流路に供給する冷媒の流量は一定に維持される。よって、鋼板成形品の冷却期間中は、金型の各冷媒噴出孔から噴出する冷媒の流量は同じである。
上述のように鋼板成形品と金型との間に冷媒を流すことにより鋼板成形品を冷却する冷却方法を採用すれば、金型の冷却時間の確保が不要になるため、鋼板の板厚が大きい場合でも冷媒流量を増やすことにより焼入れ可能になる。しかしながら、冷媒の流量を増加した場合、鋼板成形品の部位によって、熱間プレス成形品の形状や硬度にばらつきが生じる場合がある。このようなばらつきの原因としては、金型の冷媒噴出孔付近とその周辺の部分とで、冷媒の流れが同じではないことに起因して冷却条件が異なることが考えられる。すなわち、鋼板成形品の冷却条件が不均一であるため、該鋼板成形品に熱応力が生じ、その結果、熱間プレス成形品の冷却後の寸法精度や硬度を含む品質にばらつきが生じると考えられる。
例えば特許文献1には、金型の冷媒噴出孔を中心として、円環状に冷却むらが生じることが開示されている。また、特許文献1には、このような冷却むらは、鋼板成形品を冷却する際に、冷却当初から所定の噴出量で冷却媒体を噴出させた場合、突沸や空気の巻き込みが冷媒噴出孔を中心として同心円状に発生することが原因である点も開示されている。
上述のような課題に対し、特許文献1には、冷媒を金型の冷媒噴出孔に供給して鋼板成形品を冷却する際に、単位時間当たりの噴出量を抑制したプレ冷却を行った後に、前記冷媒噴出孔からの冷媒の単位時間当たりの噴出量を増加させて本冷却を行う構成が開示されている。
国際公開第2015/037657号
ところで、特許文献1に開示されている冷却方法によって鋼板成形品を冷却した場合でも、熱間プレス対象部品の形状によっては、寸法精度の悪化が生じる可能性がある。例えば、熱間プレス対象部品の形状が、鋼板の厚み方向に大きく変形した深皿形状のような場合には、熱間プレス用金型内の冷媒流路が長い部分では鋼板成形品に冷媒が到達するタイミングが他の部分よりも遅くなる。そのため、鋼板成形品の冷却の初期段階において、該鋼板成形品の冷却むらが生じて、その結果、該鋼板成形品に予期せぬ内部応力が発生し、寸法精度の悪化を招く可能性がある。
これに対し、特許文献1の構成において、プレ冷却の期間を長くすることにより、冷却むらを低減する方法が考えられる。プレ冷却の期間を長くする場合、熱間プレス用金型内の冷媒流路が長く、冷却タイミングが他の部分に比べて遅い部分において、冷媒が冷媒噴出孔に到達した後、本冷却に切り替えられる。そのため、冷媒による急冷開始のタイミングが熱間プレス用金型内で同じタイミングになる。よって、プレ冷却の期間を長くすることにより、熱間プレス成形品の寸法精度の悪化を低減することができる。
しかしながら、上述のようにプレ冷却の期間を長くした場合、冷却の初期段階から冷却された部分は、Ar3変態点よりも冷却された後、急冷される可能性がある。すなわち、急冷開始後に、鋼板のオーステナイト相の割合が均一ではないため、焼入れが不均一になる。
本発明の目的は、上金型及び下金型を有する熱間プレス機において、より高い寸法精度の熱間プレス成形品を、より高い生産性で製造可能な構成を実現することにある。
本発明者らは、鋭意検討の結果、熱間プレス成形品の形状不良の原因となる冷却不均一には、主に2つの原因があることを見出した。冷却不均一の原因の一つは、特許文献1にも開示されている、熱間プレス用金型の冷媒噴出孔を中心とした円環状の冷却むらである。そして、冷却不均一のもう一つの原因は、熱間プレス用金型の各冷媒噴出孔から冷媒を噴出する際のタイミングのずれである。
例えば、図10に断面で示す熱間プレス用金型201を用いて、鋼板2からハット状の部材を熱間プレス成形する場合、上金型211及び下金型221の各表面の凹凸の差はdである。ここで、上金型211及び下金型221には、それぞれ、内部に冷媒流路212,222が形成されているとともに、金型表面に冷媒流路212,222に繋がる冷媒噴出孔211b,221bが形成されている。上述のように、上金型211及び下金型221の各表面の凹凸の差がdであれば、冷媒噴出孔211b,221bに繋がる冷媒流路212,222の長さの差もdである。
そうすると、冷媒流路212,222の長さの差であるdを冷媒が移動する時間分、各冷媒噴出孔211b,221bから冷媒を噴出するタイミングにずれが生じる。このような冷媒の噴出タイミングのずれが生じると、鋼板2が熱間プレスされた後の鋼板成形品において、早いタイミングで冷媒が噴出される部位が先に収縮する。これにより、熱間プレス成形品には、早いタイミングで冷却された部位が内側になるとともに、遅いタイミングで冷却された部位が外側になるように、反りが生じる。
また、図12に示すように、断面ハット状で一方向に長い形状を有する熱間プレス成形品203を熱間プレス成形する場合、熱間プレス成形品203の長手方向でも熱間プレス用金型に形成される冷媒流路の長さが異なる場合がある(図11参照)。そのため、鋼板成形品を冷却する際に、該鋼板成形品の長手方向でも冷却タイミングにずれが生じる。よって、下側金型または上側金型のいずれか一方のみから冷媒を供給した場合には、図12に矢印で示すように、熱間プレス成形品203の長手方向にも反りが生じる。
図11に、図10に示す熱間プレス用金型201の斜視図を示す。図10及び図11に示す熱間プレス用金型201を用いて、上金型211及び下金型221の両方から冷媒を供給した場合には、熱間プレス成形品の冷却タイミングのずれが上金型211と下金型221とで異なる。そのため、上金型211及び下金型221におけるそれぞれの冷却タイミングのずれが相殺されて、熱間プレス成形品に生じる反りは小さくなる。
よって、上金型211及び下金型221の両方から鋼板成形品に対して冷媒を供給することにより、冷却タイミングの差による反りの発生はあるものの、鋼板成形品の上下両面における冷却タイミングの差を縮小できるとともに、該鋼板成形品の冷却速度を向上することができる。このように、上金型211及び下金型221の両方から冷却することにより鋼板成形品の冷却速度が向上し、その結果、該鋼板成形品の冷却が完了するまでの時間を短縮することができるとともに、熱間プレス成形品に生じる反りを小さくすることができる。
しかしながら、上述のように上金型及び下金型の両方から冷媒を供給した場合でも、各冷媒噴出孔からの冷媒の噴出タイミングが異なるため、冷却タイミングのずれによって、熱間プレス成形品の寸法精度の悪化を抑制することはできない。また、特許文献1に開示されているようなプレ冷却を長く行うことによって、本冷却による急冷開始のタイミングを合わせた場合、急冷開始時にAr3変態点よりも低い温度で冷却される箇所が生じ、焼入れのむらを生じる可能性がある。
以上の点を踏まえ、本発明者らは、熟慮の結果、鋼板成形品の冷却開始時に、各冷媒流路において冷媒噴出孔の近傍まで冷媒が到達していれば、各冷媒噴出孔からの冷媒の供給タイミングのずれがなくなり、鋼板成形品の冷却タイミングのずれもなくなる点を見出した。また、本発明者らは、このように各冷媒噴出孔で冷媒が冷媒噴出孔の近傍まで到達していれば、特許文献1に開示されているようなプレ冷却を行う場合でも、急冷のタイミングを合わせることができるため、速やかにプレ冷却から本冷却へ切り替えられると考えた。
よって、本発明では、上述の思想を実現するために、上金型の下方に遮蔽体を配置して、前記冷媒噴出孔から流出する冷媒が鋼板に当たらないように前記遮蔽体によって前記冷媒を受け止めながら前記上金型内の冷媒流路に冷媒を供給することにより、前記冷媒流路内を前記冷媒噴出孔まで冷媒で満たす一方、上金型と下金型とによって鋼板をプレスする際には前記遮蔽体を上金型と下金型との間から退避位置に退避させる。
具体的には、本発明の一実施形態に係る熱間プレス機は、下金型と、前記下金型の上方に前記下金型に対向して配置され、内部に冷媒流路が形成されているとともに前記下金型側の表面に前記冷媒流路の出口である複数の冷媒噴出孔が形成された上金型と、前記上金型と前記下金型との間の遮蔽位置と、前記上金型と前記下金型との間から退避した退避位置とに移動可能に構成された遮蔽体とを備える(第1の構成)。
上述のように、上金型と下金型とによって鋼板を熱間プレスしていない状態では、遮蔽体が遮蔽位置にあるため、該遮蔽体が、上金型の冷媒噴出孔と鋼板との間で、該冷媒噴出孔から流出する冷媒を受け止めることができる。よって、鋼板が冷媒によって冷却されることなく、上金型の冷媒流路内を冷媒で満たすことができる。
したがって、鋼板を熱間プレスして得られた鋼板成形品の冷却開始時に、上金型から冷媒を噴出するタイミングを合わせることができ、鋼板を冷却する際の冷却むらを抑制することができる。よって、熱間プレス成形によって成形される熱間プレス成形品の寸法精度の悪化を抑制することができる。
しかも、特許文献1に開示されている構成のようにプレ冷却及び本冷却を行う場合でも、上述の構成により、各冷媒流路から冷媒を供給するタイミングを合わせることが可能になる。そのため、本冷却のタイミングを合わせるためにプレ冷却の期間を長くする必要がなくなる。よって、熱間プレス成形の冷却期間が長くなり、鋼板がAr3変態点よりも冷却されるのを防止できる。したがって、熱間プレス成形の生産性と品質(寸法精度及び焼入れむらの回避)の向上を図れる。
一方、上金型と下金型とによって鋼板をプレスする際には、遮蔽体を、上金型と下金型との間の遮蔽位置から該上金型と下金型とに挟まれない退避位置に退避させることができる。これにより、前記遮蔽体が上金型及び下金型によるプレスの動作を妨げるのを防止できる。
前記第1の構成において、前記遮蔽体は、前記遮蔽位置において、前記上金型の前記冷媒噴出孔の下方で前記上金型と対向する受け面を有する。前記受け面は、前記遮蔽体が前記遮蔽位置にある状態で、前記退避位置側が前記遮蔽位置側よりも下方になるように傾斜している(第2の構成)。
これにより、上金型の冷媒噴出孔から遮蔽体の受け面上に落ちた冷媒は、該受け面を退避位置側から遮蔽位置側に向かって流れる。これにより、遮蔽体上の一方向に冷媒を流すことができる。しかも、上述の構成により、遮蔽体が遮蔽位置から退避位置まで移動する際に、遮蔽体の受け面上の冷媒は、退避位置側、すなわち遮蔽体が遮蔽位置から退避位置に移動する際の移動方向に流れる。よって、遮蔽体の受け面上の冷媒が鋼板上に落ちるのを防止できる。
前記第1または第2の構成において、前記遮蔽体は、前記上金型及び前記下金型によって前記鋼板を熱間プレスしている間は、前記退避位置にある一方、前記熱間プレスの前で且つ前記上金型と前記下金型とが離間している準備状態のときには、前記遮蔽位置にある(第3の構成)。
これにより、熱間プレス前で且つ上金型と下金型とが離間した準備状態では、遮蔽体によって上金型から流出する冷媒を受け止めて、鋼板が冷媒により冷却されるのを回避することができる。一方、上金型及び下金型によって鋼板をプレスする際には、遮蔽体が上金型及び下金型によるプレスの動作を妨げるのを防止できる。
前記第1から第3の構成のうちいずれか一つの構成において、前記遮蔽体は、平板によって構成されている(第4の構成)。これにより、遮蔽体を簡単な構成によって実現できるとともに、上金型から流出した冷媒を遮蔽体によってより確実に受け止めることができる。よって、上金型から流出した冷媒によって、鋼板が冷却されるのを防止できる。
本発明の一実施形態に係る熱間プレス成形品の製造方法は、下金型と、前記下金型の上方に前記下金型に対向して配置され、内部に冷媒流路が形成されているとともに前記下金型側の表面に前記冷媒流路の出口である複数の冷媒噴出孔が形成された上金型とを用いて、熱間プレス成形品を製造する方法である。この製造方法は、遮蔽体が前記上金型と前記鋼板との間の遮蔽位置にある状態で、前記上金型内に冷媒を供給する準備工程と、前記遮蔽体が前記上金型と前記下金型との間から退避した退避位置にある状態で、前記上金型と前記下金型との間で前記鋼板を熱間プレスする熱間プレス工程と、前記鋼板を前記上金型と前記下金型との間で型締めした状態で、前記上金型の前記冷媒流路に対する冷媒の供給量及び前記冷媒流路内の冷媒の圧力の少なくとも一方を増大させる冷却工程とを有する(第1の方法)。
この方法により、上金型の冷媒流路内を冷媒噴出孔まで冷媒で満たした後、該上金型と下金型とによって熱間プレスされた鋼板に対して、前記上金型の冷媒噴出孔から同じタイミングで冷媒を噴出させることができる。すなわち、準備工程では、上金型の冷媒噴出孔と鋼板との間に遮蔽体がある状態で、該上金型内の冷媒流路に冷媒を供給することにより、前記上金型の冷媒噴出孔から流出した冷媒が鋼板を冷却することなく、前記冷媒流路内を冷媒噴出孔まで冷媒で満たすことができる。
一方、上金型及び下金型によって鋼板の熱間プレスを行う熱間プレス工程では、遮蔽体を退避位置に退避させることにより、該遮蔽体が前記上金型及び前記下金型によるプレスの動作を妨げるのを防止できる。そして、このように前記上金型及び前記下金型によって前記鋼板を型締めした状態で、該上金型の冷媒流路内の冷媒の供給量及び圧力の少なくとも一方を増大させることにより、各冷媒噴出孔から同じタイミング且つ高い冷却性能で冷媒を噴出することができる。これにより、鋼板成形品を冷却する際の冷却むらを抑制することができる。したがって、熱間プレス成形品の寸法精度を向上させることができる。
本発明の一実施形態に係る熱間プレス機によれば、熱間プレス機は、上金型と下金型との間の遮蔽位置と、前記上金型と下金型との間から退避した退避位置とに移動可能な遮蔽体を有する。これにより、より高い寸法精度の熱間プレス成形品を、より高い生産性で製造することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る熱間プレス機の概略構成を示す断面図である。 図2は、本発明の実施形態に係る熱間プレス機を用いて成形された熱間プレス成形品の斜視図である。 図3は、本発明の実施形態に係る熱間プレス機の上金型の冷媒流路から流出した冷媒を遮蔽板によって受け止めた状態を模式的に示す図である。 図4は、遮蔽板を退避位置に移動させる様子を模式的に示す図である。 図5は、遮蔽板の移動装置の一例を示す図である。 図6は、本発明の実施形態に係る熱間プレス機の制御装置の概略構成を示す図である。 図7は、本発明の実施形態に係る熱間プレス機の動作の概略を示すフローである。 図8は、本発明の実施形態に係る熱間プレス機の動作の概略を示すフローである。 図9は、本発明の実施形態に係る熱間プレス機の動作の概略を示すフローである。 図10は、従来の熱間プレス用金型の概略構成を示す図1相当図である。 図11は、従来の熱間プレス用金型の概略構成を示す図2相当図である。 図12は、従来の熱間プレス用金型における下金型または上金型のいずれか一方のみから冷媒を供給した場合に、熱間プレス成形品に生じる反りを、模式的に示す図である。
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
(熱間プレス機の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る熱間プレス機1の概略構成を示す図である。この熱間プレス機1は、上金型11及び下金型21を有する熱間プレス用金型10と、上金型11と下金型21との間に移動可能に配置される遮蔽板6(遮蔽体)と、制御装置30(図6参照)とを備える。この熱間プレス機1を用いることにより、熱間で鋼板2をプレス成形する熱間プレス成形が実現される。
具体的には、熱間プレス用金型10の上金型11及び下金型21によって、加熱された鋼板2を挟み込むことにより、該鋼板2は熱間でプレスされる。鋼板2が熱間でプレスされることにより、鋼板成形品が得られる。そして、鋼板成形品を型締めした状態で冷却することにより焼き入れ等が行われ、所定の材料特性(強度、硬度)を有する熱間プレス成形品3(図2)が得られる。
なお、図1は、断面ハット状の熱間プレス成形品3を成形する場合に用いられる熱間プレス機1の概略構成を断面で示している。以下では図1の構成に基づいて説明するが、断面ハット状以外の熱間プレス成形品を成形する熱間プレス機に、本実施形態の構成を適用してもよい。
図1に示すように、熱間プレス用金型10の上金型11及び下金型21は、一方向(図1では紙面方向)に長い形状を有する。上金型11は、幅方向(図1において横方向)の中央部分に凹部11aを有する。凹部11aは、上金型11の長手方向に延びる溝状に形成されている。すなわち、上金型11は、雌金型である。
下金型21は、上金型11との間に鋼板2の板厚相当またはそれよりも所定の隙間を有する断面ハット状の空間を形成するように、幅方向中央部分で上方に膨出する膨出部21aを有する。この膨出部21aは、上金型11と下金型21とを組み合わせた状態で、該上金型11の凹部11aに対応するように、該凹部11aに対向して設けられている。すなわち、膨出部21aも、下金型21の長手方向に延びている。よって、下金型21は、雄金型である。
上金型11及び下金型21は、鋼板2を挟み込む側に、該鋼板2と接触する接触面11c,21cを有する。すなわち、鋼板2は、接触面11c,21cの間に挟み込まれることにより、断面ハット状に成形される。
なお、特に図示しないが、上金型11及び下金型21には、鋼板2と接触する接触面11c,21cに、微小な凹凸が形成されている。上金型11及び下金型21の接触面11c,21cにこのような凹凸を設けることにより、後述するように上金型11及び下金型21に設けられた冷媒流路12,22から供給される冷媒を、上金型11と鋼板2との間、及び、下金型21と鋼板2との間に流すことができる。
図1に示すように、上金型11及び下金型21の内部には、それぞれ、複数の冷媒流路12,22が設けられている。これらの冷媒流路12,22は、熱間プレス機1によって鋼板2の熱間プレス成形を行う際に、該鋼板2を急冷するための冷媒を供給するための流路である。ここで、冷媒は、例えば冷却水など、鋼板2を冷却可能な液体であれば、どのような液体であってもよい。
冷媒流路12,22は、それぞれ、上金型11及び下金型21内に設けられた冷媒供給路13,23に繋がるように形成されている。冷媒供給路13,23は、それぞれ、上金型11及び下金型21の内部に、幅方向に延びるように設けられている。冷媒供給路13,23には、それぞれ、複数の冷媒流路12,22が接続されている(図1参照)。
冷媒供給路13,23は、それぞれ、熱間プレス用金型10の外部に設けられた図示しないポンプに配管4を介して接続されている。ポンプは、外部の貯水槽等(図示省略)に溜められた冷却水を配管4に供給する。これにより、冷媒流路12,22は、それぞれ、冷媒供給路13,23及び配管4を介して、外部の貯水槽等に接続されており、該貯水槽等からポンプによって冷却水が供給される。なお、図1において、符号5は、配管4の冷却水の流量を調整するための流量調整弁である。
冷媒流路12,22は、それぞれ、上金型11及び下金型21の表面に開口するように設けられている。すなわち、上金型11及び下金型21には、それぞれ、鋼板2と接触する接触面11c,21cに、冷媒流路12,22から供給される冷媒(本実施形態では冷却水。以下では、冷媒を冷却水として説明する。)を噴出する出口としての冷媒噴出孔11b,21bが形成されている。
冷媒流路12,22は、熱間プレス成形の際に鋼板成形品の冷却が必要な箇所に冷媒噴出孔11b,21bが形成されるように、上金型11及び下金型21内に設けられる。また、冷媒流路12,22は、冷媒噴出孔11b,21bの形成位置に応じて、1本の配管から分岐するように設けられてもよい。なお、図1には、冷媒流路12,22の分岐流路を、符号12a,22aで示す。
上金型11と下金型21との間には、遮蔽板6が横方向に移動可能に配置されている。遮蔽板6は、平面視で鋼板2または上金型11から冷媒が流れ落ちる範囲のうち広い方よりも大きな寸法を有する平板状の部材であり、外周部には上方に向かって折り曲げられた外周壁部6aを有する。なお、遮蔽板6において、横方向の一方側(遮蔽板6が後述する遮蔽位置に配置された状態で、退避位置側の部分)の少なくとも一部には外周壁部6aが形成されていない。
遮蔽板6は、熱間プレス前で且つ上金型11と下金型21とが離間している準備状態において、該上金型11と下金型21との間にある。なお、遮蔽板6は、上金型11と下金型21との間に鋼板2が配置されている場合には、該上金型11と鋼板2との間にある(図1参照)。すなわち、遮蔽板6は、前記準備状態において、上金型11を下方から見て、該上金型11の冷媒噴出孔11bと鋼板2との間の遮蔽位置にある。
一方、遮蔽板6は、上金型11と下金型21とによって鋼板2を熱間プレスする際には、上金型11及び下金型21に対して横方向に退避して、退避位置にある。この退避位置は、上金型11と下金型21とが鋼板2をプレスする際に、遮蔽板6が該上金型11及び下金型21による熱間プレスの動作の妨げにならないような位置である(図4参照)。
遮蔽板6は、該遮蔽板6を横方向に移動可能な移動装置50によって、上金型11と下金型21との間の遮蔽位置と、上金型11と下金型21との間から退避した退避位置とを移動する。図5に、移動装置50の一例の概略構成を示す。
移動装置50は、2本のレール51と、遮蔽板6に設けられた4つの車輪52と、該遮蔽板6と上金型11とを接続する接続機構53と、遮蔽板6に対して接続機構53とは反対側で接続される錘54とを備える。2本のレール51は、上面視で、上金型11及び下金型21に対して重ならない位置に配置されている。また、2本のレール51は、遮蔽板6に設けられた4つの車輪52が該2本のレール51上を移動可能なように、所定の間隔で配置されている。
接続機構53は、滑車55と、該滑車55と遮蔽板6とを接続する第1ワイヤ56と、滑車55と上金型11の上部または上金型11ないしは熱間プレス機1のスライド機構(図示省略)に設けられたブラケット上部(図示省略)とを接続する第2ワイヤ57とを備える。滑車55は、円盤状の大滑車55aと該大滑車55aよりも小径の円盤状の小滑車55bとが組み合わされることにより構成されている。すなわち、大滑車55a及び小滑車55bを回転中心が重なるように厚み方向に重ね合わせるように配置することにより、滑車55が構成されている。
第1ワイヤ56は、一方の端部が滑車55の大滑車55aの外周部分に接続されていて、他方の端部が遮蔽板6の移動方向の一方側の端部(遮蔽板6が遮蔽位置に配置された状態で、退避位置側の部分)に接続されている。第2ワイヤ57は、一方の端部が滑車55の小滑車55bの外周部分に接続されていて、他方の端部が、上金型11の上部、または、上金型11ないしは熱間プレス機1のスライド機構(図示省略)に設けられたブラケット上部(図示省略)に接続されている。
上述のような接続機構53の構成により、上金型11aが下方へ移動した場合には、接続機構53の第1ワイヤ56及び第2ワイヤ57によって、遮蔽板6が退避位置側に引っ張られる。
錘54には、第3ワイヤ58の一方の端部が接続されている。第3ワイヤ58の他方の端部は、遮蔽板6の移動方向の他方側の端部(遮蔽板6が退避位置に配置された状態で、遮蔽位置側の部分)に接続されている。
これにより、上金型11が上方に移動した場合には、遮蔽板6に対する第1ワイヤ56及び第2ワイヤ57のテンションが低下する一方、第3ワイヤ58を介して錘54によって遮蔽板6が遮蔽位置側に引っ張られる。よって、遮蔽板6が退避位置から遮蔽位置に移動する。
上述のような移動装置50の構成により、遮蔽板6は、遮蔽板6上に溜まった冷却水を溢さないように姿勢を維持したまま移動する。
移動装置50及び遮蔽板6は、熱間プレス機1の上金型11側に支持されるのが好ましい。また、上金型11から流出した冷却水の飛散を考慮すると、遮蔽板6は、上述のように、上金型11と一体で上下動するのが好ましい。作動原理上、接続機構53の滑車55は、上金型11とは別の固定位置で固定される。第2ワイヤ56及び第3ワイヤ58は、2本のレール51と同様、上面視で、上金型11及び下金型21に対して重ならない位置に配置されている。
なお、遮蔽板6の移動装置は、遮蔽板6を遮蔽位置と退避位置とに移動可能な構成であれば、上述の構成に限らず、どのような構成であってもよい。例えば、遮蔽板6に設けられた車輪52をモータによって駆動させたり、遮蔽板6をエアシリンダー等によって位置を変更させたりする構成であってもよい。一般的には、熱間プレス機の周囲には柱等の構造物があるため、遮蔽板6の移動は、該遮蔽板6の端部を中心とした旋回ではなく、平行移動が好ましい。
なお、遮蔽板6は、板部材によって構成されていなくてもよい。例えば、不燃性シートを遮蔽板6の代わりに利用してもよい。具体的には、不燃性シートを、前記準備状態において上金型11の下方に張った後、熱間プレスを行う際に、上金型11と下金型21との間から離れた位置に巻き取ることにより、本発明を実施することができる。
遮蔽板6は、前記準備状態において前記遮蔽位置にあることにより、上金型11の冷媒噴出孔11bから下方に流出する冷却水を受け止める。すなわち、遮蔽板6の上面は、冷却水を受け止める受け面6bを構成する。
また、遮蔽板6は、前記遮蔽位置にある状態で外周のうち退避位置側以外の部分に、外周壁6aを有するため、受け面6bで受けた冷却水が、退避位置側以外の部分から遮蔽板6の外方に流れ落ちるのを防止できる。よって、遮蔽板6の移動中に、該遮蔽板6から鋼板2に冷却水が流れ落ちるのを防止できる。
以上の構成により、前記準備状態において、上金型11の冷媒流路12内を冷媒噴出孔11bまで冷却水で満たすことが可能になる。すなわち、前記準備状態では、遮蔽板6によって、上金型11の冷媒噴出孔11bから流出する冷却水が受け止められるため、常に冷媒噴出孔11bから冷却水が流出している状態である。
したがって、上金型11と下金型21とによってプレスされた状態の鋼板成形品を冷却する際に、該鋼板成形品に対して、上金型11の複数の冷媒噴出孔11bから冷却水を同じタイミングで供給することが可能になる。よって、鋼板成形品を冷却する際の冷却むらを抑制することができる。これにより、冷却むらに起因する熱間プレス成形品3の寸法精度の悪化を抑制することができる。
しかも、下金型21の冷媒流路22内も冷媒噴出孔21bまで冷却水で満たすことにより、型締めされた状態の鋼板成形品を冷却する際に、該鋼板成形品に対し、上金型11内の冷媒流路12及び下金型21内の冷媒流路22から、同時に冷却水を供給することが可能になる。よって、鋼板成形品を冷却する際の冷却むらをより確実に抑制することができる。これにより、冷却むらに起因する熱間プレス成形品3の寸法精度の悪化をより確実に抑制することができる。
なお、同時に冷却水を供給するとは、冷媒噴出孔11b,21bから完全に同時に冷却水を噴出する場合だけなく、熱間プレス成形品3の寸法精度が悪化しない程度の噴出タイミングのずれも含む。
一方、遮蔽板6は、上金型11と下金型21とによって鋼板2が熱間プレスされている際には、前記退避位置にある。これにより、遮蔽板6が、上金型11及び下金型21によるプレスの動作を妨げるのを防止できる。
遮蔽板6の受け面6bは、横方向の一方側が他方側よりも下方になるように傾斜している。すなわち、遮蔽板6の受け面6bは、該遮蔽板6が遮蔽位置にある状態で、退避位置側が遮蔽位置側よりも下方になるように傾斜していることが好ましい。これにより、上金型11から流出した冷却水は、遮蔽板6の受け面6bに受け止められた後、該受け面6b上を退避位置側に流れる。よって、上金型11から流出した冷却水が直接、下金型21及び鋼板2上に落ちるのを防止できる。
また、遮蔽板6の受け面6bを上述のように構成することにより、該遮蔽板6を遮蔽位置から退避位置に移動させる際に、該遮蔽板6の受け面6b上の冷却水は、該受け面6bの退避位置側に流れ落ちる。これにより、上金型11から流出した冷却水が下金型21及び鋼板2上に落ちるのをより確実に防止できる。
上述の構成を有する熱間プレス機1は、制御装置30によって動作が制御される。図6に、制御装置30の概略構成のブロック図を示す。制御装置30は、熱間プレス機1の駆動制御を行う。制御装置30は、金型制御部31と、鋼板移動制御部32と、冷却水制
御部33と、タイマ34と、遮蔽板移動制御部35と、遮蔽板位置検出部36と、金型位置検出部37と、鋼板位置検出部38とを備える。
なお、図6に示す制御装置30は、遮蔽板6の移動制御を、上金型11の移動制御とは別に、モータやアクチュエータなどの移動体によって行う場合の構成である。図5に示すような移動装置50によって遮蔽板6を移動させる場合には、遮蔽板移動制御部35及び遮蔽位置検出部36は不要である。
金型制御部31は、上金型11を下金型21に対して上下動させる。すなわち、鋼板2をプレスする際には、上金型11を下金型21に対して近づけるように、下方に移動させる。一方、熱間プレス成形品3を上金型11と下金型21との間から取り出す際には、上金型11を下金型21に対して離間させるように上方へ移動させる。金型制御部31は、上金型11の駆動装置(図示省略)に対して信号出力を行うことにより、該上金型11の上下動を制御する。
金型位置検出部37は、上金型11が下死点にあることを検出する。すなわち、金型位置検出部37は、上金型11が下死点にある場合には、下死点検出信号を出力する。金型位置検出部37から出力された下死点検出信号は、金型制御部31に入力される。金型制御部31は、上金型11を下死点まで移動させる場合、金型位置検出部37から下死点検出信号が入力されるまで上金型11を下方に移動させる。
鋼板移動制御部32は、上金型11及び下金型21に対する鋼板2及び熱間プレス成形品3の移動を制御する。すなわち、鋼板移動制御部32は、鋼板2を上金型11及び下金型21によって熱間プレスする前に、該鋼板2を上金型11と下金型21との間に移動させる。また、鋼板移動制御部32は、熱間プレス成形によって鋼板2から熱間プレス成形品3を得た後に、上金型11と下金型21との間から熱間プレス成形品3を移動させる。鋼板移動制御部32は、搬送装置(図示省略)に対して信号出力を行うことにより、鋼板2及び熱間プレス成形品3の移動を制御する。
鋼板位置検出部38は、鋼板2がプレス位置(鋼板2が上金型11と下金型21とによってプレス成形される所定位置)にあることを検出する。すなわち、鋼板位置検出部38は、鋼板2がプレス位置にある場合には、プレス位置検出信号を出力する。鋼板位置検出部38から出力されたプレス位置検出信号は、鋼板移動制御部32に入力される。鋼板移動制御部32は、鋼板2をプレス位置に移動させる場合、鋼板位置検出部38からプレス位置検出信号が入力されるまで鋼板2を移動させる。
冷却水制御部33は、上金型11及び下金型21に対する冷却水の供給を制御する。冷却水制御部33は、図示しないポンプ及び流量調整弁5に対して冷却水の供給量を指示する信号を出力する。
具体的には、冷却水制御部33は、遮蔽板6が遮蔽位置にあるときには、上金型11及び下金型21に対して少量の冷却水を供給するように信号(例えば、ポンプ回転ON及び流量調整弁開度小の信号)を出力する。一方、冷却水制御部33は、上金型11と下金型21とによって鋼板2をプレスしている状態では、該上金型11及び下金型21の冷媒流路12,22に対する冷却水の供給量を増大させるように信号(例えば、ポンプ回転ON及び流量調整弁開度大の信号)を出力する。また、冷却水制御部33は、後述するタイマ34によって計測された時間(冷却水の供給量を増大させている時間)が所定時間、経過した場合に、上金型11及び下金型21に対する冷却水の供給を停止するように停止信号を出力する。
タイマ34は、冷却水制御部33によって冷却水の供給量を増大させた時点から、時間をカウントする。具体的には、タイマ34は、上金型11と下金型21とが熱間プレスしている状態で冷却水制御部33から冷却水の供給量増大の信号が出力された時点からの経過時間をカウントする。
また、タイマ34は、カウントした時間が所定時間を経過した場合に、冷却水制御部33に信号を出力する。冷却水制御部33は、タイマ34から信号が入力されると、冷却水の供給を停止する信号(例えばポンプ回転OFFまたは流量調整弁開度閉の信号)を出力する。
なお、タイマ34は、冷却水供給停止の信号が冷却水制御部33から出力されると、カウントしていた時間をリセットする。
ここで、前記所定時間は、所定の材料特性を有する熱間プレス成形品3が得られるような鋼板成形品の冷却時間に設定される。
遮蔽板移動制御部35は、遮蔽板6の移動を制御する。具体的には、遮蔽板移動制御部35は、熱間プレス前で且つ上金型11と下金型21とが離間している準備状態のときに、遮蔽板6が上金型11と下金型21との間の遮蔽位置にあるように移動体(遮蔽板6を移動させるためのモータやアクチュエータなど)に対して信号出力する。また、遮蔽板移動制御部35は、上金型11と下金型21とによって鋼板2を熱間プレスする前に、遮蔽板6を退避位置に移動させるように移動体に対して信号出力する。遮蔽板移動制御部35は、後述の遮蔽板位置検出部36によって、遮蔽板6が前記遮蔽位置または前記退避位置に移動したことが検出されるまで、該遮蔽板6を移動させる。
遮蔽板位置検出部36は、遮蔽板6が遮蔽位置または退避位置にあることを検出する。すなわち、遮蔽板位置検出部36は、遮蔽板6が遮蔽位置にある場合には、遮蔽位置検出信号を出力する一方、遮蔽板7が退避位置にある場合には、退避位置検出信号を出力する。遮蔽板位置検出部36から出力された信号は、遮蔽板移動制御部35に入力される。
(熱間プレス機の動作)
次に、上述のような制御装置30を有する構成の熱間プレス機1の動作を、図7から図9を用いて説明する。なお、図7は、準備工程を含むフローである。また、図8は、準備工程後に行われる熱間プレス工程を含むフローである。図9は、熱間プレス工程後に行われる冷却工程を含むフローである。
まず、図7に示すフローがスタートすると(スタート)、熱間プレス成形を開始する指示信号(例えば、熱間プレス機1の操作装置等からの出力信号)が制御装置30に入力される(ステップS1)。そうすると、制御装置30の遮蔽板移動制御部35は、遮蔽板6が遮蔽位置に位置しているか、すなわち遮蔽板位置検出部36から遮蔽位置検出信号が出力されているかを判定する(ステップS2)。
前記ステップS2において、遮蔽板6が遮蔽位置にあると判定された場合(YESの場合)には、ステップS4以降に進んで、冷却水制御部33によって、上金型11及び下金型21に対して冷却水を供給する制御を行う。一方、前記ステップS2において、遮蔽板6が遮蔽位置にないと判定された場合(NOの場合)には、ステップS3に進んで、遮蔽板移動制御部35が、遮蔽板6を遮蔽位置まで移動させるように移動体に対して指示(信号出力)を行う。その後、ステップS2で遮蔽板6が遮蔽位置にあると判定されるまで、ステップS3の動作を行う。
ステップS2において遮蔽板6が遮蔽位置にあると判定された場合に進むステップS4では、冷却水制御部33が、上金型11及び下金型21に対して少量の冷却水を供給するように図示しないポンプ及び流量調整弁5に指示(信号出力)を行う。その後、ステップS5において、鋼板移動制御部32が、鋼板2を、上金型11と下金型21との間のプレス位置(鋼板2が上金型11と下金型21とによってプレス成形される所定位置)まで移動させるように鋼板2の搬送装置(図示省略)に対して指示(信号出力)を行う。
続くステップS6では、鋼板位置検出部38が、鋼板2がプレス位置にあるか、すなわち、鋼板位置検出部38からプレス位置検出信号が出力されているかを判定する。このステップS6において、鋼板2がプレス位置にあると判定された場合(YESの場合)には、ステップS7以降に進んで、遮蔽板6を退避位置に移動させる。一方、ステップS6において、鋼板2がプレス位置にないと判定された場合(NOの場合)には、ステップS5に戻って、再度、搬送装置に対して鋼板2をプレス位置まで移動させるように指示(信号出力)を行う。
なお、ステップS6後の熱間プレス機1の状態(図7及び図8におけるX)が、熱間プレスの前で且つ上金型11と下金型21とが離間している準備状態である。
ステップS6において鋼板2がプレス位置にあると判定された後に進むステップS7では、遮蔽板移動制御部35が、遮蔽板6を退避位置に移動させるように移動体に対して指示(信号出力)を行う。その後、ステップS8では、遮蔽板移動制御部35が、遮蔽板6が退避位置にあるか、すなわち遮蔽板位置検出部36から退避位置検出信号が出力されているかを判定する。
ステップS8において、遮蔽板6が退避位置にあると判定された場合(YESの場合)には、ステップS9以降に進んで、上金型11及び下金型21によって鋼板2を熱間プレスする。一方、ステップS8において、遮蔽板6が遮蔽位置に位置していないと判定された場合(NOの場合)には、ステップS7に戻って、遮蔽板移動制御部35が遮蔽板6を退避位置に移動させるように移動体に信号出力を行った後、再度、ステップS8の判定を行う。ステップS8で遮蔽板6が退避位置にあると判定されるまで、ステップS7及びS8の動作を繰り返す。
ステップS8において遮蔽板6が退避位置にあると判定された場合に進むステップS9では、金型制御部31が、上金型11を下方に移動させるように上金型11の駆動装置(図示省略)に対して指示(信号出力)を行う。これにより、上金型11と下金型21との間で鋼板2が熱間プレスされる。
続くステップS10では、金型位置検出部37が、上金型11の位置が下死点であるか、すなわち、金型位置検出部37から下死点検出信号が出力されているかどうかを判定する。このステップS10において、上金型11の位置が下死点であると判定された場合(YESの場合)には、ステップS11以降に進んで、上金型11及び下金型21の冷媒流路12,22に対する冷却水の供給量を増大させる。
一方、ステップS10において、上金型11の位置が下死点ではないと判定された場合(NOの場合)には、ステップS9に戻って、再度、上金型11の駆動装置に対して指示(信号出力)を行う。ステップS10で上金型11が下死点にあると判定されるまで、ステップS9及びS10の動作を繰り返す。
なお、ステップS10後の熱間プレス機1の状態(図8及び図9におけるY)が、鋼板成形品を上金型11と下金型21との間で型締めした状態である。
図9に示すように、ステップS11では、冷却水制御部33が、上金型11及び下金型21の冷媒噴出孔11b,21bから冷媒が噴出するように、ポンプ及び流量調整弁5に上金型11及び下金型21の冷媒流路12,22に対する冷却水の供給量を増大させる指示(冷却水量大の信号出力)を行う。
次に、ステップS12で、タイマ34によって、冷却水制御部33が冷却水の供給量を増大させる指示(信号出力)を行った時点から経過した時間を計測する。続くステップS13で、タイマ34によって計測した時間が所定時間を経過したかどうかを判定する。
ステップS13でタイマ34によって計測した時間が所定時間を経過したと判定された場合(YESの場合)には、ステップS14に進んで、冷却水制御部33が、上金型11及び下金型21に対する冷却水の供給を停止する指示(停止信号の出力)を行う。
一方、ステップS13でタイマ34によって計測した時間が所定時間を経過していないと判定された場合(NOの場合)には、ステップS13で所定時間を経過したと判定されるまで、該ステップS13の判定を繰り返す。
前記ステップS14で上金型11及び下金型21に対する冷却水の供給を停止した後に進むステップS15では、金型制御部31が、上金型11を下金型21に対して上昇させるように上金型11の駆動装置に指示(信号出力)を行う。これにより、上金型11と下金型21とが離間する。
続くステップS16では、鋼板移動制御部32が、上金型11と下金型21との間から、熱間プレス成形品3を横方向に移動させるように、搬送装置に指示(信号出力)を行う。これにより、熱間プレス機1から熱間プレス成形品3を取り出すことができる。その後、このフローを終了する(End)。
ここで、遮蔽板6が遮蔽位置にある状態で、上金型11及び下金型21の冷媒流路12,22内に冷却水を供給するステップS4が準備工程に対応する。また、遮蔽板6が退避位置にある状態で、上金型11を下金型21に向かって移動させることにより、該上金型11と下金型21との間で鋼板2を熱間プレスするステップS8が熱間プレス工程に対応する。さらに、鋼板成形品を上金型11と下金型21との間で型締めした状態で、該上金型11及び下金型21の冷媒流路12,22に対する冷却水の供給量を増大させることにより、上金型11及び下金型21の冷媒噴出孔11b,21bから鋼板成形品に対して冷却水を噴出させるステップS9が冷却工程に対応する。
以上のような熱間プレス機1の構成により、熱間プレス前で且つ上金型11と下金型21とが離間した準備状態では、上金型11の冷媒噴出孔11bと鋼板2との間に遮蔽板6が配置される。これにより、上金型11の冷媒流路12内に供給された冷却水が上金型11の冷媒噴出孔11bから落下しても、冷却水は遮蔽板6によって受け止められる。したがって、鋼板2が冷却水によって冷却されることなく、上金型11の冷媒流路12内を冷媒噴出孔11bまで冷却水によって満たすことができる。
上金型の冷媒流路に冷却水を満たしつつ、下金型21の冷媒流路22内にも冷媒噴出孔21bまで冷却水を満たすことにより、鋼板2を上金型11及び下金型21によって熱間プレスした後に鋼板成形品を冷却する際に、該鋼板成形品に対して上金型11及び下金型21の冷媒噴出孔11b,21bから冷却水を同時に供給することができる。
したがって、鋼板成形品を均一に冷却することができるため、冷却むらに起因する熱間プレス成形品3の寸法精度の悪化を抑制できる。
なお、上金型11及び下金型21から噴出する冷却水の水量は、同等が好ましいが、熱間プレス成形品3の形状と目標形状との乖離に応じて、上金型11から噴出する冷却水の水量と下金型21から噴出する冷却水の水量とを変えても良い。また、冷却水の水量ではなく、冷却水の圧力を変えても良い。
上述の熱間プレス機1では、遮蔽板6は、上金型11と下金型21とによって鋼板2を熱間プレスする際には、退避位置にある。これにより、遮蔽板6が、上金型11及び下金型21によるプレスの動作を妨げるのを防止できる。
以上の説明では、図6に示す制御装置30を使用した場合の熱間プレス機1の動作の一例を説明した。図5に記載の移動装置50を使用する場合には、熱間プレス機1の動作を簡略化することができる。このように熱間プレス機1の動作を簡略化した場合であっても、準備工程では、遮蔽板6(遮蔽体)が上金型11と下金型21との間にある状態で冷媒流路12内を冷却水で満たすべく、上金型11に冷却水が該上金型11から流出するまで冷却水を供給する。また、熱間プレス工程では、遮蔽板6(遮蔽体)が上金型11と下金型21との間から退避した状態で鋼板2が上金型11及び下金型21で熱間プレスされることにより、鋼板成形品になる。冷却工程では、鋼板成形品が上金型11及び下金型21で型締めされた状態で、鋼板成形品が焼入れされるべく、前記準備工程よりも大きな圧力または流量の冷却水によって冷却される。
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
前記実施形態では、遮蔽体としての遮蔽板6は、平板状の部材によって構成されている。しかしながら、上金型11を下方から見て該上金型11の冷媒噴出孔11bを覆うことが可能な部材であれば、遮蔽板のような板状部材ではなく、他の形状の部材(例えば、前述の不燃性シートなど)によって遮蔽体を構成してもよい。
前記実施形態では、遮蔽板6の外周には外周壁6aが設けられている。しかしながら、遮蔽板6の外周に外周壁6aが設けられていなくてもよい。
前記実施形態では、遮蔽板6の受け面6bは、該遮蔽板6が遮蔽位置に位置付けられた状態で、退避位置側が遮蔽位置側よりも下方に位置するように傾斜している。しかしながら、受け面6bは、退避位置側が遮蔽位置側よりも下方に位置するように傾斜していなくてもよい。また、受け面6上に溜まった冷却水を直接、吸引して排出してもよい。すなわち、遮蔽板6が遮蔽位置から退避位置に退避する際に、鋼板2に受け面6上の冷却水がかからないような構成であれば、どのような構成であってもよい。
前記実施形態では、ステップS7において、遮蔽板6が退避位置にあることを、遮蔽板位置検出部36から出力される退避位置検出信号によって判定している。しかしながら、遮蔽板6が上金型11と下金型21との間から退避した状態を検出し、その状態を、遮蔽板6が退避位置にあると判定してもよい。すなわち、遮蔽板6が上金型11と下金型21との間から退避していれば、ステップS8以降のフローに進んでもよい。
前記実施形態では、ステップS9において、上金型11及び下金型21の冷媒流路12,22に対する冷却水の供給量を増大させている。しかしながら、冷媒流路12,22内の冷却水の圧力を増大させてもよい。冷媒流路12,22内の冷却水の圧力を増大させることにより、鋼板成形品と冷却水との間に形成される該冷却水の蒸気膜を、冷却水が破って、鋼板成形品を冷却する。これにより、高い冷却速度で鋼板成形品を冷却することができる。
前記実施形態では、ステップS12において、冷却水制御部33が上金型11及び下金型21に対する冷却水の供給を停止する。しかしながら、冷却水制御部33が冷却水の圧力増大の信号出力を停止して、熱間プレス前で且つ上金型11と下金型21とが離間した準備状態での冷却水の供給量に戻してもよい。
前記実施形態では、熱間プレス用金型1において、上金型11が雌金型であり、下金型21が雄金型21である。しかしながら、上金型を雄金型とし、下金型を雌金型としてもよい。
本発明は、熱間プレス成形に用いられる熱間プレス機に利用可能である。
1 熱間プレス機
2 鋼板
3、203 熱間プレス成形品
6 遮蔽板(遮蔽体)
6a 外周壁
6b 受け面
10、201 熱間プレス用金型
11、211 上金型
11b、21b、211b、221b 冷媒噴出孔
11c、21c 接触面
12、22、212、222 冷媒流路
13 冷媒供給路
21、221 下金型
30 制御装置
31 金型制御部
32 鋼板移動制御部
33 冷却水制御部
35 遮蔽板移動制御部

Claims (5)

  1. 下金型と、
    前記下金型の上方に前記下金型に対向して配置され、内部に冷媒流路が形成されているとともに前記下金型側の表面に前記冷媒流路の出口である複数の冷媒噴出孔が形成された上金型と、
    前記上金型と前記下金型との間の遮蔽位置と、前記上金型と前記下金型との間から退避した退避位置とに移動可能に構成された遮蔽体とを備える、熱間プレス機。
  2. 前記遮蔽体は、前記遮蔽位置において、前記上金型の前記冷媒噴出孔の下方で前記上金型と対向する受け面を有し、
    前記受け面は、前記遮蔽体が前記遮蔽位置にある状態で、前記退避位置側が前記遮蔽位置側よりも下方になるように傾斜している、請求項1に記載の熱間プレス機。
  3. 前記遮蔽体は、前記上金型及び前記下金型によって前記鋼板を熱間プレスしている間は、前記退避位置にある一方、前記熱間プレスの前で且つ前記上金型と前記下金型とが離間している準備状態のときには、前記遮蔽位置にある、請求項1または2に記載の熱間プレス機。
  4. 前記遮蔽体は、平板によって構成されている、請求項1から3のいずれか一つに記載の熱間プレス機。
  5. 下金型と、前記下金型の上方に前記下金型に対向して配置され、内部に冷媒流路が形成されているとともに前記下金型側の表面に前記冷媒流路の出口である複数の冷媒噴出孔が形成された上金型とを用いて、熱間プレス成形品を製造する方法であって、
    遮蔽体が前記上金型と前記鋼板との間の遮蔽位置にある状態で、前記上金型内に冷媒を供給する準備工程と、
    前記遮蔽体が前記上金型と前記下金型との間から退避した退避位置にある状態で、前記上金型と前記下金型との間で前記鋼板を熱間プレスすることにより鋼板成形品を得る熱間プレス工程と、
    前記鋼板成形品を前記上金型と前記下金型との間で型締めした状態で、前記上金型の前記冷媒流路に対する冷媒の供給量及び前記冷媒流路内の冷媒の圧力の少なくとも一方を増大させる冷却工程とを有する、熱間プレス成形品の製造方法。
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