以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
(熱間プレス機の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る熱間プレス機1の概略構成を示す図である。この熱間プレス機1は、上金型11及び下金型21を有する熱間プレス用金型10と、上金型11と下金型21との間に移動可能に配置される遮蔽板6(遮蔽体)と、制御装置30(図6参照)とを備える。この熱間プレス機1を用いることにより、熱間で鋼板2をプレス成形する熱間プレス成形が実現される。
具体的には、熱間プレス用金型10の上金型11及び下金型21によって、加熱された鋼板2を挟み込むことにより、該鋼板2は熱間でプレスされる。鋼板2が熱間でプレスされることにより、鋼板成形品が得られる。そして、鋼板成形品を型締めした状態で冷却することにより焼き入れ等が行われ、所定の材料特性(強度、硬度)を有する熱間プレス成形品3(図2)が得られる。
なお、図1は、断面ハット状の熱間プレス成形品3を成形する場合に用いられる熱間プレス機1の概略構成を断面で示している。以下では図1の構成に基づいて説明するが、断面ハット状以外の熱間プレス成形品を成形する熱間プレス機に、本実施形態の構成を適用してもよい。
図1に示すように、熱間プレス用金型10の上金型11及び下金型21は、一方向(図1では紙面方向)に長い形状を有する。上金型11は、幅方向(図1において横方向)の中央部分に凹部11aを有する。凹部11aは、上金型11の長手方向に延びる溝状に形成されている。すなわち、上金型11は、雌金型である。
下金型21は、上金型11との間に鋼板2の板厚相当またはそれよりも所定の隙間を有する断面ハット状の空間を形成するように、幅方向中央部分で上方に膨出する膨出部21aを有する。この膨出部21aは、上金型11と下金型21とを組み合わせた状態で、該上金型11の凹部11aに対応するように、該凹部11aに対向して設けられている。すなわち、膨出部21aも、下金型21の長手方向に延びている。よって、下金型21は、雄金型である。
上金型11及び下金型21は、鋼板2を挟み込む側に、該鋼板2と接触する接触面11c,21cを有する。すなわち、鋼板2は、接触面11c,21cの間に挟み込まれることにより、断面ハット状に成形される。
なお、特に図示しないが、上金型11及び下金型21には、鋼板2と接触する接触面11c,21cに、微小な凹凸が形成されている。上金型11及び下金型21の接触面11c,21cにこのような凹凸を設けることにより、後述するように上金型11及び下金型21に設けられた冷媒流路12,22から供給される冷媒を、上金型11と鋼板2との間、及び、下金型21と鋼板2との間に流すことができる。
図1に示すように、上金型11及び下金型21の内部には、それぞれ、複数の冷媒流路12,22が設けられている。これらの冷媒流路12,22は、熱間プレス機1によって鋼板2の熱間プレス成形を行う際に、該鋼板2を急冷するための冷媒を供給するための流路である。ここで、冷媒は、例えば冷却水など、鋼板2を冷却可能な液体であれば、どのような液体であってもよい。
冷媒流路12,22は、それぞれ、上金型11及び下金型21内に設けられた冷媒供給路13,23に繋がるように形成されている。冷媒供給路13,23は、それぞれ、上金型11及び下金型21の内部に、幅方向に延びるように設けられている。冷媒供給路13,23には、それぞれ、複数の冷媒流路12,22が接続されている(図1参照)。
冷媒供給路13,23は、それぞれ、熱間プレス用金型10の外部に設けられた図示しないポンプに配管4を介して接続されている。ポンプは、外部の貯水槽等(図示省略)に溜められた冷却水を配管4に供給する。これにより、冷媒流路12,22は、それぞれ、冷媒供給路13,23及び配管4を介して、外部の貯水槽等に接続されており、該貯水槽等からポンプによって冷却水が供給される。なお、図1において、符号5は、配管4の冷却水の流量を調整するための流量調整弁である。
冷媒流路12,22は、それぞれ、上金型11及び下金型21の表面に開口するように設けられている。すなわち、上金型11及び下金型21には、それぞれ、鋼板2と接触する接触面11c,21cに、冷媒流路12,22から供給される冷媒(本実施形態では冷却水。以下では、冷媒を冷却水として説明する。)を噴出する出口としての冷媒噴出孔11b,21bが形成されている。
冷媒流路12,22は、熱間プレス成形の際に鋼板成形品の冷却が必要な箇所に冷媒噴出孔11b,21bが形成されるように、上金型11及び下金型21内に設けられる。また、冷媒流路12,22は、冷媒噴出孔11b,21bの形成位置に応じて、1本の配管から分岐するように設けられてもよい。なお、図1には、冷媒流路12,22の分岐流路を、符号12a,22aで示す。
上金型11と下金型21との間には、遮蔽板6が横方向に移動可能に配置されている。遮蔽板6は、平面視で鋼板2または上金型11から冷媒が流れ落ちる範囲のうち広い方よりも大きな寸法を有する平板状の部材であり、外周部には上方に向かって折り曲げられた外周壁部6aを有する。なお、遮蔽板6において、横方向の一方側(遮蔽板6が後述する遮蔽位置に配置された状態で、退避位置側の部分)の少なくとも一部には外周壁部6aが形成されていない。
遮蔽板6は、熱間プレス前で且つ上金型11と下金型21とが離間している準備状態において、該上金型11と下金型21との間にある。なお、遮蔽板6は、上金型11と下金型21との間に鋼板2が配置されている場合には、該上金型11と鋼板2との間にある(図1参照)。すなわち、遮蔽板6は、前記準備状態において、上金型11を下方から見て、該上金型11の冷媒噴出孔11bと鋼板2との間の遮蔽位置にある。
一方、遮蔽板6は、上金型11と下金型21とによって鋼板2を熱間プレスする際には、上金型11及び下金型21に対して横方向に退避して、退避位置にある。この退避位置は、上金型11と下金型21とが鋼板2をプレスする際に、遮蔽板6が該上金型11及び下金型21による熱間プレスの動作の妨げにならないような位置である(図4参照)。
遮蔽板6は、該遮蔽板6を横方向に移動可能な移動装置50によって、上金型11と下金型21との間の遮蔽位置と、上金型11と下金型21との間から退避した退避位置とを移動する。図5に、移動装置50の一例の概略構成を示す。
移動装置50は、2本のレール51と、遮蔽板6に設けられた4つの車輪52と、該遮蔽板6と上金型11とを接続する接続機構53と、遮蔽板6に対して接続機構53とは反対側で接続される錘54とを備える。2本のレール51は、上面視で、上金型11及び下金型21に対して重ならない位置に配置されている。また、2本のレール51は、遮蔽板6に設けられた4つの車輪52が該2本のレール51上を移動可能なように、所定の間隔で配置されている。
接続機構53は、滑車55と、該滑車55と遮蔽板6とを接続する第1ワイヤ56と、滑車55と上金型11の上部または上金型11ないしは熱間プレス機1のスライド機構(図示省略)に設けられたブラケット上部(図示省略)とを接続する第2ワイヤ57とを備える。滑車55は、円盤状の大滑車55aと該大滑車55aよりも小径の円盤状の小滑車55bとが組み合わされることにより構成されている。すなわち、大滑車55a及び小滑車55bを回転中心が重なるように厚み方向に重ね合わせるように配置することにより、滑車55が構成されている。
第1ワイヤ56は、一方の端部が滑車55の大滑車55aの外周部分に接続されていて、他方の端部が遮蔽板6の移動方向の一方側の端部(遮蔽板6が遮蔽位置に配置された状態で、退避位置側の部分)に接続されている。第2ワイヤ57は、一方の端部が滑車55の小滑車55bの外周部分に接続されていて、他方の端部が、上金型11の上部、または、上金型11ないしは熱間プレス機1のスライド機構(図示省略)に設けられたブラケット上部(図示省略)に接続されている。
上述のような接続機構53の構成により、上金型11aが下方へ移動した場合には、接続機構53の第1ワイヤ56及び第2ワイヤ57によって、遮蔽板6が退避位置側に引っ張られる。
錘54には、第3ワイヤ58の一方の端部が接続されている。第3ワイヤ58の他方の端部は、遮蔽板6の移動方向の他方側の端部(遮蔽板6が退避位置に配置された状態で、遮蔽位置側の部分)に接続されている。
これにより、上金型11が上方に移動した場合には、遮蔽板6に対する第1ワイヤ56及び第2ワイヤ57のテンションが低下する一方、第3ワイヤ58を介して錘54によって遮蔽板6が遮蔽位置側に引っ張られる。よって、遮蔽板6が退避位置から遮蔽位置に移動する。
上述のような移動装置50の構成により、遮蔽板6は、遮蔽板6上に溜まった冷却水を溢さないように姿勢を維持したまま移動する。
移動装置50及び遮蔽板6は、熱間プレス機1の上金型11側に支持されるのが好ましい。また、上金型11から流出した冷却水の飛散を考慮すると、遮蔽板6は、上述のように、上金型11と一体で上下動するのが好ましい。作動原理上、接続機構53の滑車55は、上金型11とは別の固定位置で固定される。第2ワイヤ56及び第3ワイヤ58は、2本のレール51と同様、上面視で、上金型11及び下金型21に対して重ならない位置に配置されている。
なお、遮蔽板6の移動装置は、遮蔽板6を遮蔽位置と退避位置とに移動可能な構成であれば、上述の構成に限らず、どのような構成であってもよい。例えば、遮蔽板6に設けられた車輪52をモータによって駆動させたり、遮蔽板6をエアシリンダー等によって位置を変更させたりする構成であってもよい。一般的には、熱間プレス機の周囲には柱等の構造物があるため、遮蔽板6の移動は、該遮蔽板6の端部を中心とした旋回ではなく、平行移動が好ましい。
なお、遮蔽板6は、板部材によって構成されていなくてもよい。例えば、不燃性シートを遮蔽板6の代わりに利用してもよい。具体的には、不燃性シートを、前記準備状態において上金型11の下方に張った後、熱間プレスを行う際に、上金型11と下金型21との間から離れた位置に巻き取ることにより、本発明を実施することができる。
遮蔽板6は、前記準備状態において前記遮蔽位置にあることにより、上金型11の冷媒噴出孔11bから下方に流出する冷却水を受け止める。すなわち、遮蔽板6の上面は、冷却水を受け止める受け面6bを構成する。
また、遮蔽板6は、前記遮蔽位置にある状態で外周のうち退避位置側以外の部分に、外周壁6aを有するため、受け面6bで受けた冷却水が、退避位置側以外の部分から遮蔽板6の外方に流れ落ちるのを防止できる。よって、遮蔽板6の移動中に、該遮蔽板6から鋼板2に冷却水が流れ落ちるのを防止できる。
以上の構成により、前記準備状態において、上金型11の冷媒流路12内を冷媒噴出孔11bまで冷却水で満たすことが可能になる。すなわち、前記準備状態では、遮蔽板6によって、上金型11の冷媒噴出孔11bから流出する冷却水が受け止められるため、常に冷媒噴出孔11bから冷却水が流出している状態である。
したがって、上金型11と下金型21とによってプレスされた状態の鋼板成形品を冷却する際に、該鋼板成形品に対して、上金型11の複数の冷媒噴出孔11bから冷却水を同じタイミングで供給することが可能になる。よって、鋼板成形品を冷却する際の冷却むらを抑制することができる。これにより、冷却むらに起因する熱間プレス成形品3の寸法精度の悪化を抑制することができる。
しかも、下金型21の冷媒流路22内も冷媒噴出孔21bまで冷却水で満たすことにより、型締めされた状態の鋼板成形品を冷却する際に、該鋼板成形品に対し、上金型11内の冷媒流路12及び下金型21内の冷媒流路22から、同時に冷却水を供給することが可能になる。よって、鋼板成形品を冷却する際の冷却むらをより確実に抑制することができる。これにより、冷却むらに起因する熱間プレス成形品3の寸法精度の悪化をより確実に抑制することができる。
なお、同時に冷却水を供給するとは、冷媒噴出孔11b,21bから完全に同時に冷却水を噴出する場合だけなく、熱間プレス成形品3の寸法精度が悪化しない程度の噴出タイミングのずれも含む。
一方、遮蔽板6は、上金型11と下金型21とによって鋼板2が熱間プレスされている際には、前記退避位置にある。これにより、遮蔽板6が、上金型11及び下金型21によるプレスの動作を妨げるのを防止できる。
遮蔽板6の受け面6bは、横方向の一方側が他方側よりも下方になるように傾斜している。すなわち、遮蔽板6の受け面6bは、該遮蔽板6が遮蔽位置にある状態で、退避位置側が遮蔽位置側よりも下方になるように傾斜していることが好ましい。これにより、上金型11から流出した冷却水は、遮蔽板6の受け面6bに受け止められた後、該受け面6b上を退避位置側に流れる。よって、上金型11から流出した冷却水が直接、下金型21及び鋼板2上に落ちるのを防止できる。
また、遮蔽板6の受け面6bを上述のように構成することにより、該遮蔽板6を遮蔽位置から退避位置に移動させる際に、該遮蔽板6の受け面6b上の冷却水は、該受け面6bの退避位置側に流れ落ちる。これにより、上金型11から流出した冷却水が下金型21及び鋼板2上に落ちるのをより確実に防止できる。
上述の構成を有する熱間プレス機1は、制御装置30によって動作が制御される。図6に、制御装置30の概略構成のブロック図を示す。制御装置30は、熱間プレス機1の駆動制御を行う。制御装置30は、金型制御部31と、鋼板移動制御部32と、冷却水制
御部33と、タイマ34と、遮蔽板移動制御部35と、遮蔽板位置検出部36と、金型位置検出部37と、鋼板位置検出部38とを備える。
なお、図6に示す制御装置30は、遮蔽板6の移動制御を、上金型11の移動制御とは別に、モータやアクチュエータなどの移動体によって行う場合の構成である。図5に示すような移動装置50によって遮蔽板6を移動させる場合には、遮蔽板移動制御部35及び遮蔽位置検出部36は不要である。
金型制御部31は、上金型11を下金型21に対して上下動させる。すなわち、鋼板2をプレスする際には、上金型11を下金型21に対して近づけるように、下方に移動させる。一方、熱間プレス成形品3を上金型11と下金型21との間から取り出す際には、上金型11を下金型21に対して離間させるように上方へ移動させる。金型制御部31は、上金型11の駆動装置(図示省略)に対して信号出力を行うことにより、該上金型11の上下動を制御する。
金型位置検出部37は、上金型11が下死点にあることを検出する。すなわち、金型位置検出部37は、上金型11が下死点にある場合には、下死点検出信号を出力する。金型位置検出部37から出力された下死点検出信号は、金型制御部31に入力される。金型制御部31は、上金型11を下死点まで移動させる場合、金型位置検出部37から下死点検出信号が入力されるまで上金型11を下方に移動させる。
鋼板移動制御部32は、上金型11及び下金型21に対する鋼板2及び熱間プレス成形品3の移動を制御する。すなわち、鋼板移動制御部32は、鋼板2を上金型11及び下金型21によって熱間プレスする前に、該鋼板2を上金型11と下金型21との間に移動させる。また、鋼板移動制御部32は、熱間プレス成形によって鋼板2から熱間プレス成形品3を得た後に、上金型11と下金型21との間から熱間プレス成形品3を移動させる。鋼板移動制御部32は、搬送装置(図示省略)に対して信号出力を行うことにより、鋼板2及び熱間プレス成形品3の移動を制御する。
鋼板位置検出部38は、鋼板2がプレス位置(鋼板2が上金型11と下金型21とによってプレス成形される所定位置)にあることを検出する。すなわち、鋼板位置検出部38は、鋼板2がプレス位置にある場合には、プレス位置検出信号を出力する。鋼板位置検出部38から出力されたプレス位置検出信号は、鋼板移動制御部32に入力される。鋼板移動制御部32は、鋼板2をプレス位置に移動させる場合、鋼板位置検出部38からプレス位置検出信号が入力されるまで鋼板2を移動させる。
冷却水制御部33は、上金型11及び下金型21に対する冷却水の供給を制御する。冷却水制御部33は、図示しないポンプ及び流量調整弁5に対して冷却水の供給量を指示する信号を出力する。
具体的には、冷却水制御部33は、遮蔽板6が遮蔽位置にあるときには、上金型11及び下金型21に対して少量の冷却水を供給するように信号(例えば、ポンプ回転ON及び流量調整弁開度小の信号)を出力する。一方、冷却水制御部33は、上金型11と下金型21とによって鋼板2をプレスしている状態では、該上金型11及び下金型21の冷媒流路12,22に対する冷却水の供給量を増大させるように信号(例えば、ポンプ回転ON及び流量調整弁開度大の信号)を出力する。また、冷却水制御部33は、後述するタイマ34によって計測された時間(冷却水の供給量を増大させている時間)が所定時間、経過した場合に、上金型11及び下金型21に対する冷却水の供給を停止するように停止信号を出力する。
タイマ34は、冷却水制御部33によって冷却水の供給量を増大させた時点から、時間をカウントする。具体的には、タイマ34は、上金型11と下金型21とが熱間プレスしている状態で冷却水制御部33から冷却水の供給量増大の信号が出力された時点からの経過時間をカウントする。
また、タイマ34は、カウントした時間が所定時間を経過した場合に、冷却水制御部33に信号を出力する。冷却水制御部33は、タイマ34から信号が入力されると、冷却水の供給を停止する信号(例えばポンプ回転OFFまたは流量調整弁開度閉の信号)を出力する。
なお、タイマ34は、冷却水供給停止の信号が冷却水制御部33から出力されると、カウントしていた時間をリセットする。
ここで、前記所定時間は、所定の材料特性を有する熱間プレス成形品3が得られるような鋼板成形品の冷却時間に設定される。
遮蔽板移動制御部35は、遮蔽板6の移動を制御する。具体的には、遮蔽板移動制御部35は、熱間プレス前で且つ上金型11と下金型21とが離間している準備状態のときに、遮蔽板6が上金型11と下金型21との間の遮蔽位置にあるように移動体(遮蔽板6を移動させるためのモータやアクチュエータなど)に対して信号出力する。また、遮蔽板移動制御部35は、上金型11と下金型21とによって鋼板2を熱間プレスする前に、遮蔽板6を退避位置に移動させるように移動体に対して信号出力する。遮蔽板移動制御部35は、後述の遮蔽板位置検出部36によって、遮蔽板6が前記遮蔽位置または前記退避位置に移動したことが検出されるまで、該遮蔽板6を移動させる。
遮蔽板位置検出部36は、遮蔽板6が遮蔽位置または退避位置にあることを検出する。すなわち、遮蔽板位置検出部36は、遮蔽板6が遮蔽位置にある場合には、遮蔽位置検出信号を出力する一方、遮蔽板7が退避位置にある場合には、退避位置検出信号を出力する。遮蔽板位置検出部36から出力された信号は、遮蔽板移動制御部35に入力される。
(熱間プレス機の動作)
次に、上述のような制御装置30を有する構成の熱間プレス機1の動作を、図7から図9を用いて説明する。なお、図7は、準備工程を含むフローである。また、図8は、準備工程後に行われる熱間プレス工程を含むフローである。図9は、熱間プレス工程後に行われる冷却工程を含むフローである。
まず、図7に示すフローがスタートすると(スタート)、熱間プレス成形を開始する指示信号(例えば、熱間プレス機1の操作装置等からの出力信号)が制御装置30に入力される(ステップS1)。そうすると、制御装置30の遮蔽板移動制御部35は、遮蔽板6が遮蔽位置に位置しているか、すなわち遮蔽板位置検出部36から遮蔽位置検出信号が出力されているかを判定する(ステップS2)。
前記ステップS2において、遮蔽板6が遮蔽位置にあると判定された場合(YESの場合)には、ステップS4以降に進んで、冷却水制御部33によって、上金型11及び下金型21に対して冷却水を供給する制御を行う。一方、前記ステップS2において、遮蔽板6が遮蔽位置にないと判定された場合(NOの場合)には、ステップS3に進んで、遮蔽板移動制御部35が、遮蔽板6を遮蔽位置まで移動させるように移動体に対して指示(信号出力)を行う。その後、ステップS2で遮蔽板6が遮蔽位置にあると判定されるまで、ステップS3の動作を行う。
ステップS2において遮蔽板6が遮蔽位置にあると判定された場合に進むステップS4では、冷却水制御部33が、上金型11及び下金型21に対して少量の冷却水を供給するように図示しないポンプ及び流量調整弁5に指示(信号出力)を行う。その後、ステップS5において、鋼板移動制御部32が、鋼板2を、上金型11と下金型21との間のプレス位置(鋼板2が上金型11と下金型21とによってプレス成形される所定位置)まで移動させるように鋼板2の搬送装置(図示省略)に対して指示(信号出力)を行う。
続くステップS6では、鋼板位置検出部38が、鋼板2がプレス位置にあるか、すなわち、鋼板位置検出部38からプレス位置検出信号が出力されているかを判定する。このステップS6において、鋼板2がプレス位置にあると判定された場合(YESの場合)には、ステップS7以降に進んで、遮蔽板6を退避位置に移動させる。一方、ステップS6において、鋼板2がプレス位置にないと判定された場合(NOの場合)には、ステップS5に戻って、再度、搬送装置に対して鋼板2をプレス位置まで移動させるように指示(信号出力)を行う。
なお、ステップS6後の熱間プレス機1の状態(図7及び図8におけるX)が、熱間プレスの前で且つ上金型11と下金型21とが離間している準備状態である。
ステップS6において鋼板2がプレス位置にあると判定された後に進むステップS7では、遮蔽板移動制御部35が、遮蔽板6を退避位置に移動させるように移動体に対して指示(信号出力)を行う。その後、ステップS8では、遮蔽板移動制御部35が、遮蔽板6が退避位置にあるか、すなわち遮蔽板位置検出部36から退避位置検出信号が出力されているかを判定する。
ステップS8において、遮蔽板6が退避位置にあると判定された場合(YESの場合)には、ステップS9以降に進んで、上金型11及び下金型21によって鋼板2を熱間プレスする。一方、ステップS8において、遮蔽板6が遮蔽位置に位置していないと判定された場合(NOの場合)には、ステップS7に戻って、遮蔽板移動制御部35が遮蔽板6を退避位置に移動させるように移動体に信号出力を行った後、再度、ステップS8の判定を行う。ステップS8で遮蔽板6が退避位置にあると判定されるまで、ステップS7及びS8の動作を繰り返す。
ステップS8において遮蔽板6が退避位置にあると判定された場合に進むステップS9では、金型制御部31が、上金型11を下方に移動させるように上金型11の駆動装置(図示省略)に対して指示(信号出力)を行う。これにより、上金型11と下金型21との間で鋼板2が熱間プレスされる。
続くステップS10では、金型位置検出部37が、上金型11の位置が下死点であるか、すなわち、金型位置検出部37から下死点検出信号が出力されているかどうかを判定する。このステップS10において、上金型11の位置が下死点であると判定された場合(YESの場合)には、ステップS11以降に進んで、上金型11及び下金型21の冷媒流路12,22に対する冷却水の供給量を増大させる。
一方、ステップS10において、上金型11の位置が下死点ではないと判定された場合(NOの場合)には、ステップS9に戻って、再度、上金型11の駆動装置に対して指示(信号出力)を行う。ステップS10で上金型11が下死点にあると判定されるまで、ステップS9及びS10の動作を繰り返す。
なお、ステップS10後の熱間プレス機1の状態(図8及び図9におけるY)が、鋼板成形品を上金型11と下金型21との間で型締めした状態である。
図9に示すように、ステップS11では、冷却水制御部33が、上金型11及び下金型21の冷媒噴出孔11b,21bから冷媒が噴出するように、ポンプ及び流量調整弁5に上金型11及び下金型21の冷媒流路12,22に対する冷却水の供給量を増大させる指示(冷却水量大の信号出力)を行う。
次に、ステップS12で、タイマ34によって、冷却水制御部33が冷却水の供給量を増大させる指示(信号出力)を行った時点から経過した時間を計測する。続くステップS13で、タイマ34によって計測した時間が所定時間を経過したかどうかを判定する。
ステップS13でタイマ34によって計測した時間が所定時間を経過したと判定された場合(YESの場合)には、ステップS14に進んで、冷却水制御部33が、上金型11及び下金型21に対する冷却水の供給を停止する指示(停止信号の出力)を行う。
一方、ステップS13でタイマ34によって計測した時間が所定時間を経過していないと判定された場合(NOの場合)には、ステップS13で所定時間を経過したと判定されるまで、該ステップS13の判定を繰り返す。
前記ステップS14で上金型11及び下金型21に対する冷却水の供給を停止した後に進むステップS15では、金型制御部31が、上金型11を下金型21に対して上昇させるように上金型11の駆動装置に指示(信号出力)を行う。これにより、上金型11と下金型21とが離間する。
続くステップS16では、鋼板移動制御部32が、上金型11と下金型21との間から、熱間プレス成形品3を横方向に移動させるように、搬送装置に指示(信号出力)を行う。これにより、熱間プレス機1から熱間プレス成形品3を取り出すことができる。その後、このフローを終了する(End)。
ここで、遮蔽板6が遮蔽位置にある状態で、上金型11及び下金型21の冷媒流路12,22内に冷却水を供給するステップS4が準備工程に対応する。また、遮蔽板6が退避位置にある状態で、上金型11を下金型21に向かって移動させることにより、該上金型11と下金型21との間で鋼板2を熱間プレスするステップS8が熱間プレス工程に対応する。さらに、鋼板成形品を上金型11と下金型21との間で型締めした状態で、該上金型11及び下金型21の冷媒流路12,22に対する冷却水の供給量を増大させることにより、上金型11及び下金型21の冷媒噴出孔11b,21bから鋼板成形品に対して冷却水を噴出させるステップS9が冷却工程に対応する。
以上のような熱間プレス機1の構成により、熱間プレス前で且つ上金型11と下金型21とが離間した準備状態では、上金型11の冷媒噴出孔11bと鋼板2との間に遮蔽板6が配置される。これにより、上金型11の冷媒流路12内に供給された冷却水が上金型11の冷媒噴出孔11bから落下しても、冷却水は遮蔽板6によって受け止められる。したがって、鋼板2が冷却水によって冷却されることなく、上金型11の冷媒流路12内を冷媒噴出孔11bまで冷却水によって満たすことができる。
上金型の冷媒流路に冷却水を満たしつつ、下金型21の冷媒流路22内にも冷媒噴出孔21bまで冷却水を満たすことにより、鋼板2を上金型11及び下金型21によって熱間プレスした後に鋼板成形品を冷却する際に、該鋼板成形品に対して上金型11及び下金型21の冷媒噴出孔11b,21bから冷却水を同時に供給することができる。
したがって、鋼板成形品を均一に冷却することができるため、冷却むらに起因する熱間プレス成形品3の寸法精度の悪化を抑制できる。
なお、上金型11及び下金型21から噴出する冷却水の水量は、同等が好ましいが、熱間プレス成形品3の形状と目標形状との乖離に応じて、上金型11から噴出する冷却水の水量と下金型21から噴出する冷却水の水量とを変えても良い。また、冷却水の水量ではなく、冷却水の圧力を変えても良い。
上述の熱間プレス機1では、遮蔽板6は、上金型11と下金型21とによって鋼板2を熱間プレスする際には、退避位置にある。これにより、遮蔽板6が、上金型11及び下金型21によるプレスの動作を妨げるのを防止できる。
以上の説明では、図6に示す制御装置30を使用した場合の熱間プレス機1の動作の一例を説明した。図5に記載の移動装置50を使用する場合には、熱間プレス機1の動作を簡略化することができる。このように熱間プレス機1の動作を簡略化した場合であっても、準備工程では、遮蔽板6(遮蔽体)が上金型11と下金型21との間にある状態で冷媒流路12内を冷却水で満たすべく、上金型11に冷却水が該上金型11から流出するまで冷却水を供給する。また、熱間プレス工程では、遮蔽板6(遮蔽体)が上金型11と下金型21との間から退避した状態で鋼板2が上金型11及び下金型21で熱間プレスされることにより、鋼板成形品になる。冷却工程では、鋼板成形品が上金型11及び下金型21で型締めされた状態で、鋼板成形品が焼入れされるべく、前記準備工程よりも大きな圧力または流量の冷却水によって冷却される。
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
前記実施形態では、遮蔽体としての遮蔽板6は、平板状の部材によって構成されている。しかしながら、上金型11を下方から見て該上金型11の冷媒噴出孔11bを覆うことが可能な部材であれば、遮蔽板のような板状部材ではなく、他の形状の部材(例えば、前述の不燃性シートなど)によって遮蔽体を構成してもよい。
前記実施形態では、遮蔽板6の外周には外周壁6aが設けられている。しかしながら、遮蔽板6の外周に外周壁6aが設けられていなくてもよい。
前記実施形態では、遮蔽板6の受け面6bは、該遮蔽板6が遮蔽位置に位置付けられた状態で、退避位置側が遮蔽位置側よりも下方に位置するように傾斜している。しかしながら、受け面6bは、退避位置側が遮蔽位置側よりも下方に位置するように傾斜していなくてもよい。また、受け面6上に溜まった冷却水を直接、吸引して排出してもよい。すなわち、遮蔽板6が遮蔽位置から退避位置に退避する際に、鋼板2に受け面6上の冷却水がかからないような構成であれば、どのような構成であってもよい。
前記実施形態では、ステップS7において、遮蔽板6が退避位置にあることを、遮蔽板位置検出部36から出力される退避位置検出信号によって判定している。しかしながら、遮蔽板6が上金型11と下金型21との間から退避した状態を検出し、その状態を、遮蔽板6が退避位置にあると判定してもよい。すなわち、遮蔽板6が上金型11と下金型21との間から退避していれば、ステップS8以降のフローに進んでもよい。
前記実施形態では、ステップS9において、上金型11及び下金型21の冷媒流路12,22に対する冷却水の供給量を増大させている。しかしながら、冷媒流路12,22内の冷却水の圧力を増大させてもよい。冷媒流路12,22内の冷却水の圧力を増大させることにより、鋼板成形品と冷却水との間に形成される該冷却水の蒸気膜を、冷却水が破って、鋼板成形品を冷却する。これにより、高い冷却速度で鋼板成形品を冷却することができる。
前記実施形態では、ステップS12において、冷却水制御部33が上金型11及び下金型21に対する冷却水の供給を停止する。しかしながら、冷却水制御部33が冷却水の圧力増大の信号出力を停止して、熱間プレス前で且つ上金型11と下金型21とが離間した準備状態での冷却水の供給量に戻してもよい。
前記実施形態では、熱間プレス用金型1において、上金型11が雌金型であり、下金型21が雄金型21である。しかしながら、上金型を雄金型とし、下金型を雌金型としてもよい。