まず図1及び図2を参照して、本発明の一実施の形態における部品実装装置について説明する。部品実装装置1は、基板2に部品3を実装する機能を有する。以下、基板2の水平な搬送方向をX方向、X方向と水平面内において直交する方向をY方向、XY平面に対して垂直な方向をZ方向と定義する。部品実装装置1が備える基台4の上面には、X方向に延びた一対の搬送コンベアを備えた基板搬送機構5が設けられている。基板搬送機構5は、基板2を搬送して所定の作業位置に位置決めする。
基板搬送機構5のY方向における両側の位置には、部品供給部6が夫々設けられている。前方側(紙面下側)の部品供給部6には、複数のテープフィーダ7がX方向に並列した状態で配置されている。図2において、テープフィーダ7は台車8の上方にセットされており、複数の部品3を保持したキャリアテープ9を間欠送りすることで、部品3を所定の部品供給位置に供給する。テープフィーダ7の供給対象としては、0603等の微小なチップ部品が挙げられる。
図1において、後方側(紙面上側)の部品供給部6には、複数のテープフィーダ7と、トレイフィーダ10がX方向に並列した状態で配置されている。図2において、トレイフィーダ10は、パレット(図示省略)に保持された複数のトレイ11を収納するトレイ収納部12と、水平方向と上下方向に移動自在に設けられトレイ11を保持可能なトレイ保持部13を備えている。トレイ11には複数の部品3が格納されている。トレイフィーダ10は、トレイ収納部12からトレイ保持部13によってトレイ11を引き出して、後述する実装ヘッド17による部品3の取り出し位置まで供給する機能を有している。トレイフィーダ10の供給対象としては、電解コンデンサのような大型の部品が挙げられる。
図1において、基台4のX方向における端部にはY軸ビーム14が設けられており、Y軸ビーム14には複数のX軸ビーム15がY方向に移動自在に設けられている。それぞれのX軸ビーム15には板状のプレート部材16がX方向にスライド自在に装着されており、プレート部材16には実装ヘッド17が取り付けられている。Y軸ビーム14とX軸ビーム15を駆動させることによって、実装ヘッド17はXY方向に移動することができる。実装ヘッド17は、テープフィーダ7又はトレイフィーダ10から部品3を取り出して基板2に実装する機能を有している。
プレート部材16には、撮像視野を下方に向けた第1の認識カメラ18が設けられている。第1の認識カメラ18は、作業位置に位置決めされた基板2に形成された基板マーク(図示省略)等を撮像する。基台4において、基板搬送機構5と部品供給部6との間には、撮像視野を上方に向けた第2の認識カメラ19と、アダプタストッカ20が設けられている。第2の認識カメラ19は、その上方を移動する実装ヘッド17に保持された部品3を下方から撮像する。アダプタストッカ20は、後述するアダプタ50(図8)を収納する。
次に図3を参照して、実装ヘッド17の構成について説明する。実装ヘッド17は複数(ここでは3個)の単位ヘッド17A,17B,17Cから構成される。単位ヘッド17A,17Bは、ヘッド本体部21と、ヘッド本体部21の下端部に装着された吸着ノズル22を含んで構成される。ヘッド本体部21には、吸着ノズル22を水平方向に回転させる回転機構(図示省略)等が内蔵されている。吸着ノズル22は、ヘッド本体部21の上方に配置されたノズル昇降機構23によりZ方向に移動、すなわち昇降する。吸着ノズル22は、テープフィーダ7から供給される部品3を吸着によって保持し、基板2に移送搭載する。なお、本説明においては、実装ヘッド17は複数の単位ヘッド17A,17B,17Cから構成されているが、一つの単位ヘッド17Cのみで構成されていてもよい。
図3及び図4において、単位ヘッド17Cは、ヘッド本体部24と、ヘッド本体部24の下方において鉛直方向(Z方向)を軸心として水平方向に回転自在に装着されたチャックユニット25を含んで構成される。便宜上、図4では単位ヘッド17A,14Bの図示を省略している。プレート部材16には、Z方向に延びたレール部材26が設けられており、レール部材26にはスライダ(図示省略)がZ方向にスライド自在に装着されている。ヘッド本体部24には、スライダを昇降させるZ軸昇降モータ27(図16)が内蔵されている。単位ヘッド17Cは、Z軸昇降モータ27の駆動によって、スライダを介してレール部材26に沿って昇降する(矢印a)。また、チャックユニット25は、ヘッド本体部24に内蔵された水平回転機構28(図16)の駆動によって、水平方向に回転する(矢印b)。図4で示すチャックユニット25は、図3で示すチャックユニット25の姿勢から90°回転させた状態をあらわしている。
チャックユニット25はベース部30を主体としている。ベース部30は、上下方向に開口した略円筒状の円筒部30aと、円筒部30aの下方において垂直方向に延び、互いに対向して配置された2つの平板状の壁部30b,30cを含んで構成される。図5(b)において、壁部30b,30cの下方には、略L字状に屈曲した屈曲部材31が相対向した状態で設けられている。屈曲部材31は、垂直方向に延びた垂直部31aと、垂直部31aの下方から壁部30b,30cが対面する方向に延出した延出部31bから構成される。夫々の延出部31b,31bの間には、所定の隙間Sが形成されている。
図5(a)において、一方の壁部30bの他方の壁部30cと対向する面には、水平方向に延びたレール部材32が固定されており、レール部材32には複数(ここでは2つ)のスライダ33が長手方向にスライド自在に装着されている。レール部材32の上方には、当該レール部材32と平行に延びたボールネジ34がブラケット(図示省略)を介して壁部30bに設けられている。ボールネジ34は、長手方向を軸心として回転自在となっている。ボールネジ34には互いに逆螺子となる第1の螺子溝34aと第2の螺子溝34bが長手方向に並んで形成されている。これらの螺子溝34a,34bにはブロック体35がそれぞれ螺合している。ボールねじ34は伝動ベルト36を介して駆動モータ37と接続されている。ボールネジ34は駆動モータ37の駆動によって回転する。便宜上、図5(b)では、駆動モータ37と伝動ベルト36の図示を省略している。
1つのスライダ33とブロック体35には、略L字状のチャックホルダ38が固着しており、各チャックホルダ38にはそれぞれチャック爪39がネジ40を介して固定されている。一対のチャック爪39は、部品3を把持するための把持面Aを互いに向けた状態となっている。一対のチャック爪39は、駆動モータ37の駆動によって互いに接近或いは離反する方向に同期してボールネジ34に沿って移動する(矢印c)。
チャック爪39は部品3をチャック(把持)するものであり、合成樹脂等で成形されている。図6(a),(b)において、チャック爪39は略L字状の基部41と、基部41の下方から鉛直方向に延びた爪部42を含んで構成される。基部41には複数の孔部41aが形成されており、孔部41aを介してネジ40(図5(b))がチャックホルダ38のネジ穴(図示省略)に螺合している。
図5(a),(b)において、爪部42はベース部30の下方から露呈しており、2つの屈曲部材31の間に形成された隙間Sに沿って移動する。爪部42の把持面Aと反対側の面には係止溝42aが形成されている。係止溝42aは、後述するアダプタ50を装着する際に用いられる。爪部42の下方には、平板状の補助爪43が設けられている。補助爪43は、爪部42が部品3を把持しない箇所に当接することによって、部品3の把持を補助する機能を有する。なお、この補助爪43は省略してもよい。
ベース部30の内部にはプッシャ44が昇降自在に設けられている。プッシャ44はヘッド本体部24に内蔵されたプッシャ昇降機構45(図16)の駆動によって昇降する(図5(a)に示す矢印d)。プッシャ44は、一対のチャック爪39により把持した部品3に対して下降することで、部品3を押し下げる。
次に図7を参照して、チャックユニット25を用いた部品3の把持及び基板2への実装動作を説明する。以下に説明する動作は、部品実装装置1の制御部70(図16)が駆動モータ37を含む各種機構を制御することによってなされる。図7(a)に示すように、チャックユニット25の作業対象となる部品3は、ボディ部3aの下面に一対のリード3bを備えた大型の部品であり、トレイフィーダ10により供給される。トレイ11には、一対のリード3bと対応する位置に凹部11aが設けられており、この凹部11aにリード3bが挿入されることによって、部品3はトレイ11に格納された状態となっている。部品3は、このような状態でトレイフィーダ10により供給される。
まず、図7(a)に示すように、一対のチャック爪39は、互いに離反する方向に予め移動した状態で(破線で示すチャック爪39を参照)、トレイ11に格納された部品3に対して下降することで、ボディ部3aを両側から囲いこむ。次いで、一対のチャック爪39は互いに接近する方向に移動することで(矢印e)、ボディ部3aを挟み込む。これにより、一対のチャック爪39は部品3を把持した状態となる。このように、一対のチャック爪39は、部品3を挟み込んで把持する一対の第1の把持部材となっている。また、レール部材32、スライダ33、ボールネジ34、ブロック体35、チャックホルダ38、伝動ベルト36、駆動モータ37は、一対の第1の把持部材を接近或いは離反する方向にそれぞれ移動させる把持部材移動手段となっている。なお、一対のチャック爪39は双方が移動可能な構成にしなくてもよい。すなわち、少なくとも一つのチャック爪39を他方のチャック爪39に対して接近或いは離反する方向に移動させることで、一対のチャック爪39の間隔を変更できるような構成であればよい。
その後、部品3を把持した状態の一対のチャック爪39は、予め作業位置に位置決めされた基板2の上方に移動する。次いで図7(b)に示すように、一対のチャック爪39は基板2に対して下降することで、基板2に形成された開口部2aにリード3bを挿入させつつ、ボディ部3aの下面を基板2に接触させる。次いで、一対のチャック爪39は互いに離反する方向に移動することで(矢印f)、部品3の把持を解除する。次いで、プッシャ44は下降することで(矢印g)、基板2に部品3を押さえつける。その後、リード3bはクリンチ機構(図示省略)によってクリンチされる。これにより、基板2に部品3が実装される。
次に図8〜図11を参照して、チャック爪39に着脱自在なアダプタ50について説明する。アダプタ50は、チャック爪39に替わって部品3を把持するものであり、鍔部51と、鍔部51の下方に設けられた把持部52を含んで構成される。鍔部51は、長手方向における両端に切り欠き部51aがそれぞれ形成された略H形状の部材である。切り欠き部51aは、後述するアダプタストッカ20にアダプタ50を収納する際に用いられる。鍔部51の平面視して略中心には、チャック爪39を長手方向から挿入するために上下方向に開口した開口部51bが形成されている。開口部51bは、長手方向からみたチャック爪39の爪部42に対応した大きさに設定されている。
図9(a)において、把持部52は多面体構造のブロック部材53を主体としており、一側面が多段に成形されている。ブロック部材53には、上面が開口された第1の開口部53aが鍔部51の開口部51bと連通した状態で形成されている。第1の開口部53aも、長手方向からみたチャック爪39の爪部42に対応した大きさに設定されており、これにより開口部51bと第1の開口部53aは上下方向に連続した状態で一つの開口部を形成している。すなわち、アダプタ50は、上面が開口した開口部(開口部51b、第1の開口部53a)を有する。ブロック部材53の一側面の上方には、第2の開口部53bが第1の開口部53aと連通した状態で形成されている。図9(b)に示すように、爪部42がブロック部材53の深部まで挿入された状態では、係止溝42aが第2の開口部53bを通じて露呈した状態となる。
ブロック部材53の一側面において、第2の開口部53bの下方の位置には、板バネ部材54を取り付けるための溝53cが上下方向に延びて形成されている。溝53cに対応する位置にはネジ穴53dが形成されており、板バネ部材54に形成された孔部54aを介してネジ55をネジ穴53dに螺合させることで、板バネ部材54がブロック部材53に取り付けられる(図8(a))。
板バネ部材54は、第2の開口部53bに対応する位置まで延びた矩形平板状の弾性体である。板バネ部材54の自由端である上端部の第2の開口部53bと対応する位置には、ブロック部材53の内部側に屈曲した屈曲部54bが形成されている。板バネ部材54に外部からの力が作用していない状態では、屈曲部54bは、その一部が第2の開口部53bを通過してさらに第1の開口部53aまで入り込んだ状態となっている。
ブロック部材53の第2の開口部53bが形成された一側面と反対の他側面であって、チャック爪39の把持面Aに対応する面は、部品3を把持する把持面Bとなっている。ここで、チャック爪39の部品3を把持する把持面Aと、アダプタ50の部品3を把持する把持面Bの形状やサイズは異なる。すなわち、アダプタ50は、作業対象となる部品3の形状、サイズや重さ等に応じて把持面Bの形状、サイズが任意に設計される。そして、部品3の形状・サイズに応じた把持面Bを有するアダプタ50をチャック爪39に装着させることで、様々な種類の部品3を安定して把持することができる。本実施の形態において、ブロック部材53の把持面Bには、ウレタンゴム等の弾性の部材をシート状にしたシート状部材56が貼着されている。シート状部材56は、把持面Bに対応した形状に成形されている。部品3を把持する際、シート状部材56が部品3に接触することで、部品3に傷を与えないようになっている。なお、シート状部材56は省略してもよい。
次に図11を参照して、チャック爪39にアダプタ50を装着する際の態様について説明する。図11は、アダプタ50とチャック爪39の断面図を示している。まず、チャック爪39を鍔部51の開口部51bに先端部から挿入させる。そして図11(a)に示すように、チャック爪39の爪部42がブロック部材53の第1の開口部53aを通過する過程で、屈曲部54bは爪部42の表面(係止溝42aの非形成箇所)によって屈曲方向とは逆方向に押される。そして図11(b)に示すように、爪部42の係止溝42aが第2の開口部53bに対応する所定の位置に達したタイミングで、屈曲部54bは屈曲方向に復元して係止溝42aに嵌入する。これにより、屈曲部54bが係止溝42aに係止され、アダプタ50はずれ落ちることなくチャック爪39に装着される。このように、アダプタ50が有する屈曲部54bは、チャック爪39が有する係止溝42aに係止可能な係止部として機能する。なお、アダプタ50をチャック爪39から取り外す場合は、アダプタ50を板バネ部材54の弾性力に抗してチャック爪39に対して下方にずらす。これにより、屈曲部54bと係止溝42aの係合が強制的に解除されてアダプタ50がチャック爪39から離脱する。
アダプタ50による部品3の把持は、チャック爪39による部品3の把持と同様である。すなわち、図12に示すように、一対のチャック爪39にそれぞれ装着されたアダプタ50は、トレイ11上の部品3のボディ部3aを両側から囲んだ状態から、互いに接近する方向に移動することで部品3のボディ部3aを挟み込んで把持する。このように、アダプタ50は、チャック爪39(第1の把持部材)に着脱自在であり、チャック爪39に替わって部品3を把持する第2の把持部材となっている。また、第2の把持部材の把持面Bは、弾性の部材(シート状部材56)で被覆されている。
アダプタ50は、例えば、チャック爪39では部品3を安定して把持できないような大型の部品3を作業対象とする場合に用いられる。すなわち、チャック爪39はチャックユニット25に組み込まれているため、チャック爪39の交換作業には所定の時間がかかるとともにオペレータに多大な手間が発生する。そのため、本実施の形態では、部品3のサイズや形状に対応した把持面Bを有するアダプタ50をチャック爪39に装着し、アダプタ50を用いて部品3を把持するようにしている。すなわち、実装対象となる部品3に応じてアダプタ50(第2の把持部材)をチャック爪39(第1の把持部材)に装着し、アダプタ50を用いて部品3を把持することで、オペレータによる交換作業が必要なく、部品3に応じて簡単に部品の把持態様を変更することができる。また、係止溝42aに屈曲部54b(係止部)を嵌入させ、若しくは係止溝42aへの屈曲部54bの嵌入を解除することによって、チャック爪39にアダプタ50を着脱する構成を採用することで、アダプタ50の着脱が簡単になる。
オペレータは、様々な部品3の形状やサイズに応じた把持面Bを有する複数のアダプタ50を生産現場に用意する。そして、部品3に適したアダプタ50をチャック爪39に適宜装着させて実装基板の生産を行う。このように、実装対象となる部品3に応じてアダプタ50(第2の把持部材)をチャック爪39(第1の把持部材)に装着し、アダプタ50を用いて部品3を把持して基板2に実装することで、様々な部品3の種類に応じてフレキシブルな生産を実現することができる。
次に図13を参照して、アダプタ50の変形例について説明する。図13(a)に示すアダプタ50Aは、上述したアダプタ50の構成に加えて、鍔部51の上面から上方に突出した突出部57をさらに含んで構成される。図13(a),(b)に示すように、突出部57は、チャック爪39にアダプタ50が装着される際、チャック爪39の基部41の下面に当接する。これにより、アダプタ50がチャック爪39に対して過度に挿入されないようになっている。
次に図14を参照して、アダプタストッカ20について説明する。アダプタストッカ20は、第2の把持部材であるアダプタ50を収納する把持部材収納手段として機能する。本例では、突出部57が設けられていないアダプタ50を収納対象としたアダプタストッカ20について説明する。アダプタストッカ20は、支持ブラケット60aによって基台4に支持された収納ブロック60を備えている。収納ブロック60には、アダプタ50を起立姿勢で収納保持するための複数(ここでは4つ)の収納開口60bが格子配列で設けられている。収納開口60bはX方向に延びており、一対のアダプタ50が収納保持される。すなわち、本例のアダプタストッカ20は、計4組の一対のアダプタ50を収納可能となっている。
収納開口60bのY方向における長さ寸法R1は、図8(b)に示すアダプタ50のブロック部材53の長手方向の径寸法L1よりも大きく、且つ図8(a)に示すアダプタ50の鍔部51の長手方向の径寸法L2よりも小さくなるように設定されている。したがって、アダプタ50を収納ブロック60に収納保持させた状態では、鍔部51の両端部が収納ブロック60の上面に当接するとともに、ブロック部材53が収納開口60bに収まった状態となる(図15(a),(b))。
収納ブロック60の上面には、上に凸状の凸部61が収納開口60bをY方向から挟んで対をなして設けられている。対をなす凸部61の間隔は、鍔部51の切り欠き部51aと対応する間隔に設定されている。凸部61の厚さ寸法は、後述する係止プレート62と収納ブロック60の上面との間の所定隙間よりも小さくなるように設定されており、本実施の形態では、図8(a)に示す鍔部51の厚さ寸法L3と略同一に設定されている。凸部61に鍔部51の切り欠き部51aを係合させることによって、収納ブロック60に収納保持されたアダプタ50は水平面内における位置が固定された状態となる(図15(a))。すなわち、凸部61と鍔部51の切り欠き部51aは、アダプタ50の収納位置を固定するための収納位置固定手段となっている。
収納ブロック60の上方には、収納ブロック60の略全範囲を覆う形状の係止プレート62が、収納ブロック60の上面との間に所定隙間を保って水平方向にスライド自在に設けられている。係止プレート62の一端部は、収納ブロック60の下面に設けられたスライド機構63が有するロッド63aに結合されている。スライド機構63は、駆動モータ(図示省略)の駆動によってロッド63aを突没させる。これにより、係止プレート62は収納ブロック60の上方において往復動する(矢印h)。係止プレート62と収納ブロック60の上面との間の所定隙間は、鍔部51の厚さ寸法L3(図8(a))及び凸部61の厚さ寸法よりも大きくなるように設定され、アダプタ50が収納ブロック60に収納保持された状態で係止プレート62のスライドを妨げないようになっている。
係止プレート62には、複数の収納開口60bの配列に対応した位置に複数の開口部64が設けられている。開口部64は、複数(ここでは2つ)のアダプタ挿通開口64aと、複数のアダプタ挿通開口64aの中心をX方向に貫通した逃し用開口64bから構成され、これらの開口は連続して形成されている。アダプタ挿通開口64aは、Y方向における開口幅寸法R2がアダプタ50の鍔部51の長手方向の径寸法L2(図8(a))よりも大きく、且つX方向における開口寸法幅R3が図8(a)に示す鍔部51の幅方向の径寸法L4よりも大きく設定されている。したがってアダプタ挿通開口64aは、アダプタ50を上下方向に挿通可能な大きさとなっている。2つのアダプタ挿通開口64aは、一対のチャック爪39にそれぞれ装着された状態のアダプタ50に対応した間隔で配置されており、一対のチャック爪39に装着されたアダプタ50を同時に挿通させることができるようになっている。
逃し用開口64bは、鍔部51の開口部51bと上下方向に連通可能な大きさを有している。したがって、係止プレート62を任意の方向にスライドさせても、収納ブロック60に収納保持されたアダプタ50の鍔部51の開口部51bは、アダプタ挿通開口64aと逃し用開口64bの何れかと常に上下方向に連通した状態となる(図15(a),(c))。したがって、係止プレート62を任意の方向に移動させた状態であっても、チャック爪39の爪部42と係止プレート62の本体が干渉せず、鍔部51の開口部51bに対して爪部42を挿抜させることができるようになっている。
次に図15を参照して、係止プレート62の機能について説明する。図15(a),(b)は、アダプタストッカ20に2組の一対のアダプタ50が収納された状態を示している。アダプタ50は、鍔部51の切り欠き部51aに凸部61を係合させ、ブロック部材53を収納開口60bに収めた状態で収納ブロック60に収納保持される。このとき、係止プレート62は逃し用開口64bが鍔部51と上下方向に重なり合わない位置にあって、且つアダプタ挿通開口64aがアダプタ50と上下方向において重なり合うことで、係止プレート62がアダプタ50の挿通を阻害しない状態となっている。すなわちこの状態では、既に収納保持されたアダプタ50をアダプタストッカ20から取り出すことが可能であり、また、アダプタ50が収納されていない空の収納開口60bに新たにアダプタ50を収納保持させることもできる。
図15(c),(d)は、スライド機構63を駆動して係止プレート62を矢印i方向にスライドさせた状態を示している。すなわち、係止プレート62は、スライド機構63の駆動によって移動し、これにより係止プレート62の本体は収納ブロック60の上面に当接した鍔部51の両端部を含む領域と上下方向において重なり合った状態となる。この状態では、アダプタ50は係止プレート62によって上方への移動が規制される。言い換えれば、アダプタ50はアダプタストッカ20が備える係止プレート62によって係止された状態となる。なお、鍔部51の開口部51bは、係止プレート62がスライドしても、逃し用開口64bと上下方向に連通した状態となる。これにより、アダプタ50が係止プレート62によって係止された状態でも、チャック爪39にアダプタ50を着脱させることができるようになっている。
次に図16を参照して、部品実装装置1の制御系の構成について説明する。部品実装装置1が備える制御部70は、記憶部71、機構駆動部72、認識処理部73を含んで構成される。また、制御部70は、基板搬送機構5、テープフィーダ7、トレイフィーダ10、Y軸ビーム14、X軸ビーム15、実装ヘッド17、第1の認識カメラ18、第2の認識カメラ19、Z軸昇降モータ27、水平回転機構28、駆動モータ37、プッシャ昇降機構45、スライド機構63と接続されている。
記憶部71は、基板2に部品3を実装するために必要な各種の生産データを記憶する。機構駆動部72は、制御部70によって制御されて、基板搬送機構5、テープフィーダ7、トレイフィーダ10、Y軸ビーム14、X軸ビーム15、実装ヘッド17、第1の認識カメラ18、第2の認識カメラ19、Z軸昇降モータ27、水平回転機構28、駆動モータ37、プッシャ昇降機構45を駆動する。これにより、部品実装作業が行われる。また、機構駆動部72は、Y軸ビーム14、X軸ビーム15、実装ヘッド17、Z軸昇降モータ27、水平回転機構28、駆動モータ37、スライド機構63を駆動する。これにより、チャック爪39にアダプタ50を着脱させるための作業が行われる。
認識処理部73は、第1の認識カメラ18、第2の認識カメラ19によって取得した画像を認識処理することにより、基板2に形成された基板マーク(図示省略)、テープフィーダ7により部品供給位置に供給された部品3、実装ヘッド17に保持された部品3を検出する。基板マークと部品3の検出結果は、部品3の実装時に実装ヘッド17を基板2に対して位置合わせする際に用いられる。
本実施の形態における部品実装装置1は以上のように構成される。次に図17を参照して、チャック爪39に対するアダプタ50の装着動作について説明する。まず図17(a)に示すように、単位ヘッド17Cはアダプタストッカ20の上方まで移動し、一対のチャック爪39を装着対象となる一対のアダプタ50の上方に位置合わせする(ST1:位置合わせ工程)。次いで図17(b)に示すように、単位ヘッド17Cは下降することで、鍔部51の開口部51bにチャック爪39の爪部42を先端から挿入させる(ST2:挿入工程)。なお、(ST2)を実行する前に、係止プレート62はアダプタ50とアダプタ挿通開口64aが上下方向に一致するように予め移動しておく(図15(a),(b))。
その後、チャック爪39の爪部42がブロック部材53の第1の開口部53aを通過する過程における所定のタイミングで、板バネ部材54の屈曲部54bは爪部42の係止溝42aに嵌入して係止される(図11(b))。これにより、チャック爪39にアダプタ50が装着される。次いで図17(c)に示すように、単位ヘッド17Cは上昇することで、チャック爪39に装着されたアダプタ50がアダプタストッカ20から取り出される。
このように、本実施の形態では、アダプタストッカ20(把持部材収納手段)に収納された状態のアダプタ50(第2の把持部材)の上方からチャック爪39(第1の把持部材)を下降させて開口部(開口部51b、第1の開口部53a)にチャック爪39が挿入されることにより、チャック爪39にアダプタ50を装着するようになっている。これにより、部品3のサイズに応じて把持部材(チャック爪39、アダプタ50)を短時間で簡単に切り替えることができる。また、一対のアダプタ50をオペレータの手作業によらず自動でチャック爪39に一括して装着することができる。
次に図18及び図19を参照して、チャック爪39に装着されたアダプタ50の取り外し動作について説明する。まず図18(a)に示すように、単位ヘッド17Cはアダプタストッカ20の上方まで移動し、一対のアダプタ50を収納先となる収納開口60bの上方に位置合わせする(ST11:位置合わせ工程)。次いで図18(b)に示すように、単位ヘッド17Cは下降することで、ブロック部材53を収納開口60bに収めるとともに、鍔部51の両端部を収納ブロック60の上面に当接させる。これにより、アダプタ50は収納ブロック60に収納保持される(ST22:収納工程)。このとき、鍔部51の切り欠き部51aに凸部61が係合することで、アダプタ50の水平面内における位置が固定される。なお、(ST22)を実行する前に、係止プレート62は一対のチャック爪39に装着されたアダプタ50とアダプタ挿通開口64aが上下方向に一致するように予め移動しておく(図15(a),(b))。
次いで図18(c)に示すように、係止プレート62はスライドすることで(矢印j)、収納保持されたアダプタ50を係止する(ST23:係止工程)(図15(c),(d)も併せて参照)。これにより、アダプタ50は上方への移動が規制された状態となる。次いで図19に示すように、単位ヘッド17Cは上昇することで、チャック爪39からアダプタ50が取り外される(ST24:取り外し工程)。すなわち、単位ヘッド17Cが上昇する過程で、鍔部51は係止プレート62の本体下面と接触して上方への移動が妨げられる。そして、単位ヘッド17Cがさらに上昇することによって、屈曲部54bと係止溝42aの係止状態が強制的に解除され、アダプタ50がチャック爪39から離脱する。これにより、アダプタ50はチャック爪39から取り外される。
次に、トレイフィーダ10によって供給される部品3を基板に実装する部品実装方法について説明する。まず、制御部70は、実装対象となる部品3がチャック爪39によって把持可能なものであるか否か判定する(ST21:判定工程)。(ST21)で把持可能なものでないと判定された場合、制御部70は部品3の把持に適したアダプタ50をチャック爪39に装着させるための処理を実行する(ST22:把持部材装着工程)。すなわち、単位ヘッド17Cはアダプタストッカ20にアクセスする。そして、アダプタストッカ20に収納保持されたアダプタ50の上方からチャック爪39を下降させて開口部にチャック爪39を挿入させることにより、チャック爪39にアダプタ50を装着する。
次いで、実装ヘッド17はトレイフィーダ10による部品3の供給位置まで移動し、この位置でチャック爪39によって部品3を把持する(ST23:部品把持工程)。次いで、実装ヘッド17は所定の作業位置に予め位置決めされた基板2の上方まで移動する。次いで、単位ヘッド17Cは下降することで、チャック爪39に把持された部品3を基板2に実装する(ST24:実装工程)。すなわち、この工程(ST24)では、チャック爪39に装着されたアダプタ50を用いて部品3を把持して基板2に実装する。このように、本実施の形態によれば、部品3の把持に適したアダプタ50をチャック爪39に自動で装着し、当該アダプタ50を用いて部品3を把持して基板2に実装することで、様々な部品3の種類に応じてフレキシブルな生産を実現することができる。
本発明における部品実装装置はこれまで説明した実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施することができる。例えば、係止プレート62の開口部64は、一対のアダプタ50を同時に挿通可能であって、且つチャック爪39の爪部42と係止プレート62との干渉を防止するための逃し用開口を含んだものであればどのような形状でも構わない。
また、本発明における実施の形態では、チャックユニット25の作業対象となる部品3は、ボディ部3aの下面に一対のリード3bを備えた大型の部品であり、トレイフィーダ10により供給されると説明した。しかし、トレイフィーダ10以外で供給される部品をチャックユニット25の作業対象としてもよい。具体的には、ラジアル部品やアキシャル部品を搬送し、チャックユニット25に供給するラジアルフィーダやアキシャルフィーダ等で供給してもよい。