以下、鉄筋固定具の一実施形態を例に挙げて説明するが、本願発明はこれに限定されるものではない。
(1)第1実施形態
第1実施形態の鉄筋固定具1について、鉄筋8、9に固定した状態の外観斜視図を図1に、第1部材10の外観斜視図を図2に、第1部材10を第2板状部分12側から見た図を図3(図3では、第2凹部13aの位置を点線で示している)に、第1部材10を第3板状部分13側から見た図を図4に、第1部材10を第1板状部分11側から見た図を図5に、第1部材10を第1板状部分11の長手方向一端側から見た図を図6に、図4のAで示す部分の部分拡大図を図7に、それぞれ示す。
鉄筋固定具1が固定される鉄筋としては、特に限定されるものではなく、例えば、図16に記載のような鉄筋籠100において円周状に配置されており互いに平行に延びた主筋8に対して固定されてもよいし、主筋8を異なる位置に置いて周囲から囲う円周状のフープ筋9に対して固定されてもよい。また、鉄筋籠100以外の鉄筋に対して固定されてもよい。なお、鉄筋としては、例えば、D19mm以上の鉄筋であることが好ましく、D51mm以下の鉄筋であることが好ましく、D41mm以下の鉄筋であることがより好ましい。
第1実施形態の鉄筋固定具1は、1本の鉄筋(例えば、主筋8またはフープ筋9)を締め付けるように固定されて用いられる。
鉄筋固定具1は、第1部材10と、第2部材20と、締め付け具30と、を備えている。
第1部材10は、第1板状部分11と、第2板状部分12と、第3板状部分13と、を有している。第1部材10は、特に限定されないが、特定の形状に加工された1枚の板金を折り曲げて形成されているものであることが好ましく、当該板金の厚みは、1.5mm以上3mm以下であり、2mmであることが好ましい。
例えば、第1部材10は、図8に示すような板状形状に加工された共通板金7において、第2板状部分12および第3板状部分13に相当する部分を、紙面の奥側に折り込むことで得るようにしてもよい。
第1板状部分11は、略四角形状の板状部分である。第1板状部分11には、コンクリート充填用開口11aと、締め付け用開口11bと、シングル表記11cが形成されている。コンクリート充填用開口11aは、鉄筋固定具1が鉄筋8、9に固定された状態で鉄筋8、9と鉄筋固定具1に対してコンクリートが流し込まれるように鉄筋固定具1が用いられる場合に、鉄筋固定具1の第1部材10と第2部材20との間にもコンクリートが十分に行き渡りやすくするために設けられている開口である。特に限定されないが、コンクリート充填用開口11aは、本実施形態では第1板状部分11の長手方向に並ぶように2箇所(第1板状部分11の板厚方向に貫通するように)設けられている。締め付け用開口11bは、後述する締め付け具30による締め付けを行うために設けられている開口であり、具体的にはボルト31を貫通させるための開口である。締め付け用開口11bは、本実施形態では、コンクリート充填用開口11aよりも第1板状部分11の長手方向外側において2箇所に設けられている。シングル表記11cは、第1部材10が1本の鉄筋に対して用いられるものであることを示すために(後述の第2実施形態の第1部材50と区別することができるように)、第1部材10の任意の箇所に行われる刻印であり、本実施形態では第1板状部分11の中央近傍に設けられている。なお、このシングル表記11cは、第1部材10の他の形状部分が作り上げられた後に最終的に付与されることが好ましい。この第1板状部分11の長手方向の長さ(図3のa+b)は140mm程度であり、長手方向に垂直な方向の長さ(図6のd)は36mm程度である。
第2板状部分12は、第1板状部分11の長手方向に垂直な方向における一端側の縁部10xから第1板状部分11の板厚方向の一方側に向けて延びた板状部分である。第2板状部分12は、第1板状部分11に対して溶接されてもよいが、図8に示すような特定の形状に加工された板状の共通板金7において縁部10xで折り曲げて形成されたものであることが望ましい。第2板状部分12には、第1板状部分11側とは反対側端部に設けられており、鉄筋8、9の一部を案内させて位置させるために第1板状部分11側に向けて凹んだ第1凹部12aが形成されている。第1凹部12aは、第2板状部分12の先端において略二等辺三角形の形状(底辺を第1板状部分11側とは反対側とする)を切り抜いて得られる二等辺部分に相当する箇所に形成されている。そして、第1凹部12aにおいては、当該二等辺部分において辺に垂直な方向に凹凸した凹凸形状が連なるように構成されている。第2板状部分12における第1板状部分11の板厚方向における長さ(図6のe)は18mm程度である。第2板状部分12における第1凹部12aの中心位置12aaは、第1凹部12aのうちで最も第1板状部分11側に近い箇所であり、第1板状部分11の上面からの距離(図3のc)が8mm程度である。そして、第1凹部12aの中心位置12aaは、第2板状部分12において中心からずれて配置されており(第1板状部分11の長手方向における中心からずれて配置されており)、第1板状部分11の長手方向において、一端側からの距離(図3のa)が53.5mm程度、他端側からの距離(図3のb)が86.5mm程度となっている。第1板状部分11の長手方向における、第2板状部分12中の第1凹部12aの割合は、3割以上6割以下が好ましく、4割以上5割以下がより好ましい。
第3板状部分13は、第1板状部分11の長手方向に垂直な方向における他端側の縁部10yから第1板状部分11の板厚方向であって第2板状部分12が伸び出している方向と同じ方向に向けて延びた板状部分である。第3板状部分13についても、特定の形状に加工された板状の板金において縁部10yで折り曲げて形成されたものであることが望ましい。第3板状部分13には、第1板状部分11側とは反対側端部に設けられており、鉄筋8、9の一部を案内させて位置させるために第1板状部分11側に向けて凹んだ第2凹部13aが形成されている。第2凹部13aは、第3板状部分13の先端において略二等辺三角形の形状(底辺を第1板状部分11側とは反対側とする)を切り抜いて得られる二等辺部分に相当する箇所に形成されている。そして、第2凹部13aにおいては、当該二等辺部分における各辺に垂直な方向に凹凸した凹凸形状が連なるように構成されている。第3板状部分13における第1板状部分11の板厚方向における長さや、第3板状部分13における第2凹部13aの中心位置13aaの第1板状部分11の上面からの距離については、第2板状部分12と同様である。そして、第2凹部13aの中心位置13aaは、第3板状部分13において中心からずれて配置されており(第1板状部分11の長手方向における中心からずれて配置されており)、第1板状部分11の長手方向において、上記他端側からの距離が53.5mm程度、上記一端側からの距離が86.5mm程度となっている。第1板状部分11の長手方向における、第3板状部分13中の第2凹部13aの割合は、3割以上6割以下が好ましく、4割以上5割以下がより好ましい。第3板状部分13の第2凹部13aの当該凹凸形状は、図7に示すように、凹凸の1つ1つを構成する各辺の長さ(図7のf、g)が2mm程度であり、上記二等辺三角形の底辺に対する傾斜角度(図7のh)が62.5°の辺と、傾斜角度(図7のi)が27.5°の辺と、によって構成されている。なお、第2板状部分12の第1凹部12aの当該凹凸形状についても、第3板状部分13の第2凹部13aの凹凸形状と同様である。
なお、第2板状部分12と第3板状部分13とは、点対称の関係にあることが好ましい。また、第2板状部分12の第1凹部12aと第3板状部分13の第2凹部13aとは、第1板状部分11の長手方向に垂直な方向から見た場合に、一部が重なって配置されていることが好ましい。
以上のようにして、第1板状部分11の長手方向における第1凹部12aの中心位置12aaと、第1板状部分11の長手方向における第2凹部13aの中心位置13aaとは、第1板状部分11の長手方向においてずれるように構成されている。なお、第1板状部分11の板厚方向から見た場合に、第1凹部12aの中心位置12aaと第2凹部13aの中心位置13aaとを結ぶ線が、第1板状部分11の長手方向となす角のうち角度の小さい方が40°以上50°以下であることが好ましく、45°程度であることがより好ましい。
第2部材20は、第4板状部分21と、第5板状部分22と、第6板状部分23と、を有している。第2部材20は、特に限定されないが、特定の形状に加工された1枚の板金を折り曲げて形成されているものであることが好ましく、当該板金の厚みは、1.5mm以上3mm以下であり、2mmであることが好ましく、第1部材10の厚みと同じであることが好ましい。
例えば、第2部材20は、図8に示すような板状形状に加工された共通板金7において、第5板状部分22および第6板状部分23に相当する部分を、紙面の手前側に折り込むことで得るようにしてもよい。
なお、後述するように、第2実施形態の鉄筋固定具2の第2部材20と、第1実施形態の鉄筋固定具1の第2部材20とは、同じものであるため、図1等において現れていない部分は、図9等を参照のこと。
第4板状部分21は、略四角形状の板状部分である。第4板状部分21には、コンクリート充填用開口21aと、締め付け用開口が形成されている。コンクリート充填用開口21aは、第1部材10のコンクリート充填用開口11aと同様である。締め付け用開口は、第1部材10の締め付け開口10bと同様であり、後述する締め付け具30による締め付けを行うために設けられている開口であり、具体的にはボルト31を貫通させるための開口であり、ナットの外径よりも小さな開口径を有している。なお、この第4板状部分21の長手方向の長さや長手方向に垂直な方向の長さは、第1部材10の第1板状部分11と同様である。
第5板状部分22は、第4板状部分21の長手方向に垂直な方向における一端側の縁部20xから第4板状部分21の板厚方向の一方側に向けて延びた板状部分である。第5板状部分22は、第4板状部分21に対して溶接されてもよいが、図8に示すような特定の形状に加工された板状の共通板金7において縁部20xで折り曲げて形成されたものであることが望ましい。第5板状部分22には、第4板状部分21側とは反対側端部に設けられており、鉄筋8、9の一部を案内させて位置させるために第4板状部分21側に向けて凹んだ第3凹部22aが形成されている。第3凹部22aは、第5板状部分22の先端において略二等辺三角形の形状(底辺を第4板状部分21側とは反対側とする)を切り抜いて得られる二等辺部分に相当する箇所に形成されている。そして、第3凹部22aにおいては、当該二等辺部分における各辺に垂直な方向に凹凸した凹凸形状が連なるように構成されている。当該凹凸形状は、第1部材10の第1凹部12aや第2凹部13aと対応した形状となっている。第5板状部分22における第4板状部分21の板厚方向における長さや、第5板状部分22における第3凹部22aの中心位置の第4板状部分21の上面からの距離は、第1部材10と同様である。そして、第3凹部22aの中心位置が、第5板状部分22において中心からずれて配置されている点(第4板状部分21の長手方向における中心からずれて配置されている点)は第1部材10の第1凹部12aと同様である。なお、第4板状部分21の長手方向における、第5板状部分22中の第3凹部22aの割合は、3割以上6割以下が好ましく、4割以上5割以下がより好ましい。
第6板状部分23は、第4板状部分21の長手方向に垂直な方向における他端側の縁部20yから第4板状部分21の板厚方向であって第5板状部分22が伸び出している方向と同じ方向に向けて延びた板状部分である。第6板状部分23についても、特定の形状に加工された板状の板金において縁部20yで折り曲げて形成されたものであることが望ましい。第6板状部分23には、第4板状部分21側とは反対側端部に設けられており、鉄筋8、9の一部を案内させて位置させるために第4板状部分21側に向けて凹んだ第4凹部23aが形成されている(第4凹部23aについては図9参照)。第4凹部23aは、第6板状部分23の先端において略二等辺三角形の形状(底辺を第4板状部分21側とは反対側とする)を切り抜いて得られる二等辺部分に相当する箇所に形成されている。そして、第4凹部23aにおいては、当該二等辺部分における各辺に垂直な方向に凹凸した凹凸形状が連なるように構成されている。当該凹凸形状は、第1部材10の第1凹部12aや第2凹部13aと対応した形状となっている。第6板状部分23における第4板状部分21の板厚方向における長さや、第6板状部分23における第4凹部23aの中心位置の第4板状部分21の上面からの距離は、第1部材10と同様である。そして、第4凹部23aの中心位置が、第6板状部分23において中心からずれて配置されている点(第4板状部分21の長手方向における中心からずれて配置されている点)は第1部材10の第2凹部13aと同様である。なお、第4板状部分21の長手方向における、第6板状部分23中の第4凹部23aの割合は、3割以上6割以下が好ましく、4割以上5割以下がより好ましい。
なお、第5板状部分22と第6板状部分23とは、点対称の関係にあることが好ましい。また、第5板状部分22の第3凹部22aと第6板状部分23の第4凹部23aとは、第4板状部分21の長手方向に垂直な方向から見た場合に、一部が重なって配置されていることが好ましい。
以上のようにして、第4板状部分21の長手方向における第3凹部22aの中心位置と、第4板状部分21の長手方向における第4凹部23aの中心位置とは、第4板状部分21の長手方向においてずれるように構成されている。なお、第4板状部分21の板厚方向から見た場合に、第3凹部22aの中心位置と第4凹部23aの中心位置とを結ぶ線が、第4板状部分21の長手方向となす角のうち角度の小さい方が40°以上50°以下であることが好ましく、45°程度であることがより好ましい。
締め付け具30は、第1部材10と第2部材20とにより鉄筋8,9を挟んだ状態で締め付けるためのものであり、本実施形態においてはボルト31とナット32を備えている(ナット32については図9参照)。ボルト31は、第1部材10の締め付け用開口11bと第2部材20の締め付け用開口とのいずれ側から差し込まれてもよく、他方側においてナット32により締め付けることで、第1部材10と第2部材20の距離を近づける。これにより、鉄筋8、9は、第1部材10と第2部材20によって締め付けられ、鉄筋固定具1は鉄筋8、9に固定される。なお、ボルト31またはナット32のいずれか一方は、第1部材10か第2部材20のいずれかに対して予め溶接等により固定されていてもよく、ナット32が予め第1部材10か第2部材20のいずれかに対して予め固定されていることが好ましい。この場合において、例えば、締め付ける鉄筋8、9の外径の大きさに応じた長さのボルト31が複数種類用意されている場合に、締め付ける鉄筋8、9の外径の大きさに応じた長さのボルト31を選びつつ、ナット32については予め固定されていることで紛失等を避けて操作性を向上させることができる。
以上の構成において、第1部材10の第1凹部12aおよび第2凹部13aと第2部材20の第3凹部22aおよび第4凹部23aとを鉄筋8、9に押し当てている固定状態において、第1凹部12aは第3凹部22aと対向し、第2凹部13aは第4凹部23aと対向する位置に設けられている。具体的には、鉄筋固定具1では、第1板状部分11の板厚方向から見た場合に、第1部材10の第1凹部12aの中心位置12aaと第2部材20の第3凹部22aの中心位置とが対向し、第1部材10の第2凹部13aの中心位置13aaと第2部材20の第4凹部23aの中心位置とが対向するように構成されている。
以上の第1実施形態の鉄筋固定具1によれば、第1部材10と第2部材20によって鉄筋8,9が挟み込まれた状態で締め付け具30によって締め付けることで、第1部材10の第1凹部12aおよび第2凹部13aと第2部材20の第3凹部22aおよび第4凹部23aを鉄筋8、9に対して押し付けることができ、鉄筋8,9に対して鉄筋固定具1に固定することができる。
ここで、第1凹部12aの中心位置12aaと第2凹部13aの中心位置13aaとがずれるように配置されているため、これらがそろっている場合と比べて、第1凹部12aの中心位置12aaと第2凹部13aの中心位置13aaとの間の距離を長くすることができ、第1部材10は、鉄筋8、9におけるより離れた位置を押さえ付けることができている。例えば、仮に、第1板状部分11の長手方向における同じ位置に第1凹部12aの中心位置12aaと第2凹部13aの中心位置13aaが設けられている場合(ずれていない場合)には、中心位置間の距離が短くなり、鉄筋8,9に対して固定された鉄筋固定具のぐらつきが生じるおそれがある。これに対して、第1凹部12aの中心位置12aaと第2凹部13aの中心位置13aaとをずらすことで、これらの間の距離を長くすることができているため、特に、第1板状部分11の長手方向に垂直な方向の幅が小さく、第1部材10が細長い形状となっている場合であっても、鉄筋8,9に対して固定された鉄筋固定具1のぐらつきを抑制することが可能になっている。以上の点は、第2部材20においても同様である。
また、鉄筋固定具1が鉄筋8、9に固定された状態では、第1板状部分11や第4板状部分41等は鉄筋8、9とは接していないため、第1部材10や第2部材20が鉄筋8、9の外周面と面接触することが避けられており、第1部材10の第1凹部12aおよび第2凹部13aと第2部材20の第3凹部22aおよび第4凹部23aにおいて集中的に鉄筋8,9に対する押し付け力を作用させることが可能になっている。しかも、第1板状部分11に対して第2板状部分12や第3板状部分13が折り込まれているため、比較的平面的な形状の部材により鉄筋8、9を挟み込む場合と比較して、第1板状部分11等のしなりが生じにくい(第4板状部分21に対して第5板状部分22や第6板状部分23が折り込まれている点も同様)。このため、固定強度を増大させようとして第1部材10や第2部材20の厚みを増大させることが不要になり、軽量化させることが可能になる。
また、第1部材10では、第1板状部分11だけでなく、第1板状部分11からその板厚方向に向けて板厚分以上に延びた第2板状部分12と第3板状部分13を有している。同様に、第2部材20では、第4板状部分21だけでなく、第4板状部分21からその板厚方向に向けて板厚分以上に延びた第5板状部分22と第6板状部分23を有している。このように板状部分による平坦面が多く形成されているため、第1部材10や第2部材20に対して他の金属部材(たとえば、セパレータ99)を溶接する際の溶接しろを確保しやすい。なお、溶接対象となる他の金属部材としては、鉄筋以外であれば特に限定されず、棒状物や板状体であってもよく、例えば、コンクリート流し込み用の型枠のパネルを位置決めさせるセパレータ等が挙げられる。なお、図1では、第2部材20の第5板状部分22の平面部分に対して他の金属部材としてのセパレータ99の一部を溶接固定した様子を例示しているが、他の金属部材は、第1部材10の第1板状部分11の平面部分、第2板状部分12の平面部分、第3板状部分13の平面部分、第2部材20の第4板状部分21の平面部分、第6板状部分23の平面部分に対して他の金属部材を溶接固定してもよい。また、第1部材10の第2板状部分12と第2部材20の第5板状部分22の両方において溶接箇所が生じるように固定してもよいし、第1部材10の第3板状部分13と第2部材20の第6板状部分23の両方において溶接箇所が生じるように固定してもよい。
(2)第2実施形態
第2実施形態の鉄筋固定具2について、複数の鉄筋8、9に固定した状態の外観斜視図を図9に、第1部材50の外観斜視図を図10に、第1部材50を第2板状部分52側から見た図を図11(図11では、第2凹部53aの位置を点線で示している)に、第1部材50を第3板状部分53側から見た図を図12に、第1部材50を第1板状部分51側から見た図を図13に、第1部材50を第1板状部分51の長手方向一端側から見た図を図14に、図12のBで示す部分の部分拡大図を図15に、それぞれ示す。
第2実施形態の鉄筋固定具2の第1部材50は、上述のように、第1実施形態の鉄筋固定具1の第1部材10と同じ形状に加工された共通板金7を用いて製造されてもよい。このような共通板金7としては、例えば、図8に示す形状に加工された板金が挙げられる。
また、第2実施形態の鉄筋固定具2の第2部材20は、第1実施形態の鉄筋固定具1の第2部材20と同じものである。
例えば、第1部材50および第2部材20は、図8に示すような板状形状に加工された共通板金7において、第2板状部分52および第3板状部分53に相当する部分や第5板状部分22および第6板状部分23に相当する部分を、紙面の手前側に折り込むことで得るようにしてもよい。
そして、第2実施形態の鉄筋固定具2の第1部材50は、第2部材20と実質的に同じ寸法および同じ形状であり主としてその姿勢や用い方だけが異なっていることが好ましいが、これに限られるものではない。なお、上記第1実施形態では、第1部材10等の好ましい厚みは2mmであるとしたが、第2実施形態における互いに非平行に配置された複数の鉄筋8,9を挟み込む鉄筋固定具2の第1部材50や第2部材20の厚みとしては2.3mm程度とすることが好ましい。
鉄筋固定具2が固定される鉄筋としては、特に限定されるものではなく、例えば、第1実施形態において説明した鉄筋8、9と同様のものが挙げられる。鉄筋固定具2が固定される対象となる複数の鉄筋としては、外径が共通の複数の鉄筋であってもよいし、外径が異なるものが含まれた複数の鉄筋であってもよい。外径が異なる複数の鉄筋の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば、1本のD22mmの鉄筋と1本のD13mmの鉄筋の組み合わせや、1本のD38mmと2本のD19mmの鉄筋の組み合わせ等が挙げられる。
以下、鉄筋固定具2について詳細に説明する。
鉄筋固定具2は、第1部材50と、第2部材20と、締め付け具30と、を備えている。
第1部材50は、第1板状部分51と、第2板状部分52と、第3板状部分53と、を有している。
第1板状部分51は、略四角形状の板状部分である。第1板状部分51には、コンクリート充填用開口51aと、締め付け用開口51bが形成されている。コンクリート充填用開口51aと締め付け用開口51bは、それぞれ第1実施形態のコンクリート充填用開口11aと締め付け用開口51bと同様である。また、鉄筋固定具2の第1部材50には、第1実施形態の鉄筋固定具1の第1部材10とは異なり、シングル表記11cは設けられていない。この第1板状部分51の長手方向の長さ、長手方向に垂直な方向の長さについても、第1実施形態の第1部材10と同様である。
第2板状部分52は、第1板状部分51の長手方向に垂直な方向における一端側の縁部50xから第1板状部分51の板厚方向の一方側に向けて延びた板状部分である。第2板状部分52には、第1板状部分51側とは反対側端部に設けられており、鉄筋8、9の一部を案内させて位置させるために第1板状部分51側に向けて凹んだ第1凹部52aが形成されている。第1凹部52aは、第2板状部分52の先端において略二等辺三角形の形状(底辺を第1板状部分51側とは反対側とする)を切り抜いて得られる二等辺部分に相当する箇所に形成されている。そして、第1凹部52aにおいては、当該二等辺部分において辺に垂直な方向に凹凸した凹凸形状が連なるように構成されている。第2板状部分52における第1凹部52aの中心位置52aaは、第1凹部52aのうちで最も第1板状部分51側に近い箇所である。なお、第2板状部分52における第1板状部分51の板厚方向における長さや、第1板状部分51の上面から第1凹部52aの中心位置52aaまでの距離等は、第1実施形態の第1部材10と同様である。そして、第1凹部52aの中心位置52aaは、第2板状部分52において中心からずれて配置されており(第1板状部分51の長手方向における中心からずれて配置されており)、第1板状部分51の長手方向において、一端側からの距離(図11のj)が86.5mm程度、他端側からの距離(図11のk)が53.5mm程度となっている。第1板状部分11の長手方向における、第2板状部分12中の第1凹部12aの割合は、3割以上6割以下が好ましく、4割以上5割以下がより好ましい。なお、第1凹部52aの凹凸の1つ1つを構成する各辺の長さや傾斜角度については、上記第1実施形態の第1凹部12aや第2凹部13aにおける長さや傾斜角度と同様である。
第3板状部分53は、第1板状部分51の長手方向に垂直な方向における他端側の縁部50yから第1板状部分51の板厚方向であって第2板状部分52が伸び出している方向と同じ方向に向けて延びた板状部分である。第3板状部分53には、第1板状部分51側とは反対側端部に設けられており、鉄筋8、9の一部を案内させて位置させるために第1板状部分51側に向けて凹んだ第2凹部53aが形成されている。第2凹部53aは、第3板状部分53の先端において略二等辺三角形の形状(底辺を第1板状部分51側とは反対側とする)を切り抜いて得られる二等辺部分に相当する箇所に形成されている。そして、第2凹部53aにおいては、当該二等辺部分における辺に垂直な方向に凹凸した凹凸形状が連なるように構成されている。第3板状部分53における第2凹部53aの中心位置53aaは、第2凹部53aのうちで最も第1板状部分51側に近い箇所である。なお、第3板状部分53における第1板状部分51の板厚方向における長さや、第1板状部分51の上面から第2凹部53aの中心位置53aaまでの距離等は、第1実施形態の第1部材10と同様である。そして、第2凹部53aの中心位置53aaは、第3板状部分53において中心からずれて配置されており(第1板状部分51の長手方向における中心からずれて配置されており)、第1板状部分51の長手方向において、上記他端側からの距離が86.5mm程度、上記一端側からの距離が53.5mm程度となっている。第1板状部分51の長手方向における、第3板状部分53中の第2凹部53aの割合は、3割以上6割以下が好ましく、4割以上5割以下がより好ましい。なお、第2凹部53aの凹凸の1つ1つを構成する各辺の長さや傾斜角度については、上記第1実施形態の第1凹部12aや第2凹部13aにおける長さや傾斜角度と同様である。
なお、第2板状部分52と第3板状部分53とは、点対称の関係にあることが好ましい。また、第2板状部分52の第1凹部52aと第3板状部分53の第2凹部53aとは、第1板状部分51の長手方向に垂直な方向から見た場合に、一部が重なって配置されていることが好ましい。
以上のようにして、第1板状部分51の長手方向における第1凹部52aの中心位置52aaと、第1板状部分51の長手方向における第2凹部53aの中心位置53aaとは、第1板状部分51の長手方向においてずれるように構成されている。なお、第1板状部分51の板厚方向から見た場合に、第1凹部52aの中心位置52aaと第2凹部53aの中心位置53aaとを結ぶ線が、第1板状部分51の長手方向となす角のうち角度が小さい方について40°以上50°以下であることが好ましく、45°程度であることがより好ましい。
なお、第2実施形態に係る鉄筋固定具2における第2部材20は、上記第1実施形態に係る鉄筋固定具1の第2部材20と実質的に同じであるため、説明を省略する。
なお、第2実施形態に係る鉄筋固定具2における締め付け具30についても、上記第1実施形態に係る鉄筋固定具1の締め付け具30と実質的に同じであるため、説明を省略する。
上記第1実施形態の鉄筋固定具1では、第1板状部分11の板厚方向から見た場合に、第1部材10の第1凹部12aの中心位置12aaと第2部材20の第3凹部22aの中心位置とが対向し、第1部材10の第2凹部13aの中心位置13aaと第2部材20の第4凹部23aの中心位置とが対向するように構成されている。これに対して、第2実施形態の鉄筋固定具2では、第1板状部分51の板厚方向から見た場合に、第1部材50の第1凹部52aの中心位置52aaと第2部材20の第3凹部22aの中心位置とは対向せずにずれており、第1部材50の第2凹部53aの中心位置53aaと第2部材20の第4凹部23aの中心位置とも対向せずにずれるように構成されている。そして、第2実施形態の鉄筋固定具2では、第1板状部分51の板厚方向から見た場合(締め付け具30による締め付けにより第1部材50と第2部材20とが互いに近づくように移動する締め付け方向から見た場合)に、第1部材50の第1凹部52aの中心位置52aaと第1部材50の第2凹部53aの中心位置53aaとを結ぶ線と、第2部材20の第3凹部22aの中心位置と第2部材20の第4凹部23aの中心位置とを結ぶ線と、の交点が、第1部材50の第1板状部分51と重なり、第2部材20の第4板状部分21とも重なるように構成されている。なお、第1板状部分51の板厚方向から見た場合の当該2つの線がなす角のうち角度の小さい方の角が40°以上50°以下であることが好ましく、45°であることがより好ましい。
また、図9では、第1部材50の第2板状部分52の平面部分に対して他の金属部材としてのセパレータ99の一部を溶接固定した様子を例示しているが、他の金属部材は、第1部材50の第1板状部分51の平面部分、第3板状部分53の平面部分、第2部材20の第4板状部分21の平面部分、第5板状部分22の平面部分、第6板状部分23の平面部分に対して他の金属部材を溶接固定してもよい。また、第1部材50の第2板状部分52と第2部材20の第5板状部分22の両方において溶接箇所が生じるように固定してもよいし、第1部材50の第3板状部分53と第2部材20の第6板状部分23の両方において溶接箇所が生じるように固定してもよい。
この第2実施形態に係る鉄筋固定具2では、第1部材50において互いに離れて配置された第1凹部52aおよび第2凹部53aが複数の鉄筋8、9のうちの鉄筋9(フープ筋9)のみに押し付けられ、第2部材20において互いに離れて配置された第3凹部22aおよび第4凹部23aが複数の鉄筋8、9のうちの鉄筋8(主筋8)のみに押し付けられ、これにより鉄筋8と鉄筋9が互いに押し付け合うため、鉄筋8、9同士を安定的に固定させることができている。
ここで、鉄筋8と鉄筋9が押し付け合う位置は、締め付け具30による締め付け方向から見た場合に第1凹部52aと第2凹部53aの間であって、第3凹部22aと第4凹部23aの間に位置している。このため、第1部材50が当接している鉄筋9については、第1部材50の第1凹部52aと第2凹部53aと、その第1凹部52aと第2凹部53aの間において反対側から押し付ける鉄筋8(第2部材20が当接している鉄筋8)と、によって安定的に支持される。また、第2部材20が当接している鉄筋8については、第2部材20の第3凹部22aと第4凹部23aと、その第3凹部22aと第4凹部23aの間において反対側から押し付ける鉄筋9(第1部材50が当接している鉄筋9)と、によって安定的に支持される。
以上により、第2実施形態に係る鉄筋固定具2によれば、複数の鉄筋8、9をまとめて安定的に固定しつつ、当該固定箇所に対して鉄筋固定具2をより強固に固定することが可能になっている。なお、第1部材50と第2部材20が挟む複数の鉄筋の種類は特に限定されないため、例えば、第1部材50が鉄筋8に当接しており、第2部材20が鉄筋9に当接していてもよい。
また、第2実施形態に係る鉄筋固定具2においても、第1実施形態に係る鉄筋固定具1と同様に、鉄筋に対する押し付け状態を安定化させた強固な固定が可能であり、部材の肉厚化を避けて軽量化させることも可能になっており、他の金属部材との溶接しろを確保しやすい点は同様である。
(3)他の実施形態
(3−1)
上述したように、第1実施形態の鉄筋固定具1の第1部材10と第2部材20との両方を、図8に示す共通板金7から製造するという製造方法も有用である。
また、第1実施形態の鉄筋固定具1の第1部材10と第2実施形態の鉄筋固定具2の第1部材50との両方を、図8に示す共通板金7から製造するという製造方法も有用である。
さらには、第1実施形態の鉄筋固定具1の第1部材10および第2部材20と、第2実施形態の鉄筋固定具2の第1部材50および第2部材20の全てを、図8に示す共通板金7から製造するという製造方法も有用である。
これらの場合には、図8に示す共通板金7を製造するまでの工程を共通化させることができ、製造コストを削減することが可能になる。
(3−2)
上記各実施形態では、略三角形状が切り取られたような形状の第1〜第4凹部を例に挙げて説明した。
しかし、第1〜第4凹部としては、鉄筋をより安定的に保持できれば具体的な形状に限定されるものではなく、例えば、円弧状に凹んだ凹部であってもよい。
(3−3)
上記各実施形態では、ボルト31とナット32からなる締め付け具30を例に挙げて説明した。
しかし、締め付け具としては、第1部材10、50と第2部材20とを間に鉄筋を介在させた状態で締め付けることが可能なものであれば特に限定されるものではない。
(3−4)
上記第2実施形態では、鉄筋固定具2が、主として鉄筋8と鉄筋9の2本を挟む場合を例に挙げて説明した。
しかし、鉄筋固定具2は、第1部材50と第2部材20とのいずれか一方に複数本の鉄筋が当接するようにして用いてもよいし、第1部材50においても複数本の鉄筋が当接し第2部材20において複数本の鉄筋が当接するようにして用いてもよい。