JP2017051906A - 凝集沈殿制御装置、凝集沈殿制御方法及びコンピュータプログラム - Google Patents

凝集沈殿制御装置、凝集沈殿制御方法及びコンピュータプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】沈降性のより良いフロックを形成することができる凝集沈殿制御装置、凝集沈殿制御方法及びコンピュータプログラムを提供することである。【解決手段】実施形態の凝集沈殿制御装置は、吸光度取得部と、凝集状態取得部と、制御部と、を持つ。吸光度取得部は、被処理水の吸光度を計測する吸光度計測部から前記被処理水の吸光度を示す吸光度情報を取得する。凝集状態取得部は、前記吸光度取得部によって取得された吸光度情報に基づいて、前記被処理水に含まれる凝集物の凝集状態を取得する。制御部は、前記凝集状態取得部によって取得された前記凝集物の凝集状態に基づいて、前記被処理水中の不要物を前記凝集物として凝集させるために注入される薬剤の注入量を制御するための制御情報を生成する。【選択図】図4

Description

本発明の実施形態は、凝集沈殿制御装置、凝集沈殿制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
上下水道、排水処理、用水供給などの分野においては、さまざまな方法で水の浄化処理が行われている。浄化処理とは、具体的には処理対象の水(以下、「被処理水」という。)に含まれる固形物や溶解物などの不要物を除去する処理である。被処理水から不要物を除去する方法の代表的なものとして、重力によって沈殿した不要物を被処理水から分離する沈降分離や、被処理水中の不要物を気泡によって分離する加圧分離法、多孔質のセラミクスや樹脂を用いてろ過する膜分離、微生物に有機物などを捕食させる活性汚泥法などが挙げられる。このような分離法のうち沈降分離や加圧分離法では、薬剤によって不要物を凝集させた後に分離する凝集法が用いられるのが一般的である。上記方法の中でも、凝集法を組み合わせた沈降分離は凝集沈殿法と呼ばれ、薬剤の投入、撹拌、沈殿物除去という比較的単純な操作で良好な浄化効果を得やすいことから広く普及している。
凝集沈殿法による水の浄化処理において、薬剤によって凝集した不要物(以下、「フロック」という。)の沈降性は、フロックの凝集状態に左右される。そして、フロックの凝集状態は、同じ操作が行われた場合であっても、除去対象となる不要物の種類によって異なる。そのため、従来の凝集沈殿法では、必ずしも沈降性のよいフロックを形成できない場合があった。
特開2005−241338号公報
本発明が解決しようとする課題は、沈降性のより良いフロックを形成することができる凝集沈殿制御装置、凝集沈殿制御方法及びコンピュータプログラムを提供することである。
実施形態の凝集沈殿制御装置は、吸光度取得部と、凝集状態取得部と、制御部と、を持つ。吸光度取得部は、被処理水の吸光度を計測する吸光度計測部から前記被処理水の吸光度を示す吸光度情報を取得する。凝集状態取得部は、前記吸光度取得部によって取得された吸光度情報に基づいて、前記被処理水に含まれる凝集物の凝集状態を取得する。制御部は、前記凝集状態取得部によって取得された前記凝集物の凝集状態に基づいて、前記被処理水中の不要物を前記凝集物として凝集させるために注入される薬剤の注入量を制御するための制御情報を生成する。
一般的な凝集沈殿プロセスを実現する凝集沈殿装置の具体例を示す図。 第1の実施形態における凝集沈殿装置の制御の概要を示す概略図。 フローセル210を流れる被処理水の吸光度を計測する方法の具体例を示す図。 第1の実施形態の凝集沈殿制御装置の機能構成を示す機能ブロック図。 凝集過程における被処理水の吸光度の変化の具体例を示す図。 第2の実施形態における凝集沈殿装置の制御の概要を示す概略図。 フローセル210を流れる被処理水を撮像する方法の具体例を示す図。 第2の実施形態の凝集沈殿制御装置の機能構成を示す機能ブロック図。 フロックが撮像された画像の具体例を示す図。 フロックが撮像された画像の具体例を示す図。 フロックが撮像された画像の具体例を示す図。 フロックが撮像された画像の具体例を示す図。
以下、実施形態の凝集沈殿制御装置、凝集沈殿制御方法及びコンピュータプログラムを、図面を参照して説明する。
(概略)
凝集沈殿法では、アルミニウム塩や鉄塩などの無機化合物や、ポリアクリルアミドなどの有機高分子に正又は負の電荷をもつ官能基を導入した有機化合物などが凝集剤として用いられる。これらの凝集剤(薬剤)は、被処理水中の不要物をフロック(凝集物)に凝集させるとともに、フロックをより大きく形成する作用を持つ。このような凝集処理は、様々な水処理施設で行われている。例えば、浄水場においては、砂や粘土質の土壌成分、植物の破片、藻類などのプランクトン、着色原因となる高分子の溶解物などが除去対象となる。また、下水処理場においては、汚泥の脱水性を向上する為の凝集処理が行われている。また、工場排水処理においては、様々な工場から排出される多種多様な不要物が除去対象となる。
このように、凝集処理の対象が多種多様であるにも関わらず、処理方法のパターンは比較的少ないのが現状である。例えば、浄水場における凝集処理では、被処理水にPAC(ポリ塩化アルミニウム)や硫酸ばん土などの無機のアルミニウム塩を凝集剤として注入し、急速撹拌及び緩速撹拌の二段階の撹拌を行うことによってフロックを形成する。また、下水処理や工場排水処理における凝集処理は、上記の無機凝集剤の他に、ポリアクリルアミドなどの有機高分子に正又は負の電荷をもつ官能基を導入した高分子凝集剤を用いる点は異なるが、薬剤注入後の撹拌によってフロックを形成する点は浄水場における凝集処理と同じである。
従来、このような比較的単純なプロセスの中で、除去対象に応じた薬剤の注入量やpHの制御方法、薬剤の官能基量や分子量の調整方法などが、水処理エンジニアリングにおける技術及びノウハウとなってきた。そして、形成されたフロックの状態の評価は、従来、フロックの大きさに重きを置いた評価が行われてきた。フロックの大きさを評価指標に用いるのは、フロックの沈降性の評価に以下のストークスの式を基本則として用いる為である。
式(1)において、vは終端速度、Dは粒子径、ρは粒子の比重、ρは液体の比重、gは重力加速度、ηは流体の粘度を表す。式(1)から、粒子径が大きいほど沈降速度が大きくなり、沈降性が高くなることが分かる。すなわち、凝集処理の目的はより大きなフロックを形成することであるといえる。そのため、従来、フロックの形成状態に関して、フロックの大きさに重きを置いた評価がなされてきた。しかしながら、この評価の考え方では、粒子の比重には重きが置かれていない。これは、一般に除去対象となる物質はそれなりに大きな比重(泥質や土壌成分などの場合は1.4〜2.7程度)を持ち、大きなフロックが形成されることによって被処理水から容易に分離することができるためである。
しかしながら、コロイド粒子のような細かく沈降性の悪い粒子を除去対象とする場合、一般的な凝集法では十分な沈降性を持つフロックを形成することができない可能性がある。その結果、フロックの形成に多くの薬剤を要する、形成されたフロックの沈降性が悪く分離に時間を要する、凝集の反応自体に時間がかかる、長い滞留時間を確保するために大きな水槽が必要となり設備の大型化を招く、などの問題が発生する。
このような問題を解決するため、実施形態の凝集制御装置は、フロックの大きさに加えて、被処理水の吸光度又はフロックの形状に基づいて凝集処理を制御する。以下、実施形態の凝集制御装置について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、一般的な凝集沈殿プロセスを実現する凝集沈殿装置の具体例を示す図である。
凝集沈殿装置100は、貯留槽110、第1凝集槽120、薬剤貯留槽130、薬剤注入ポンプ140、攪拌機150、第2凝集槽160、攪拌機170及び沈殿槽180を備える。貯留槽110、第1凝集槽120、第2凝集槽160及び沈殿槽180は、図のとおりに隣接して設置され、各水槽間には被処理水を輸送するための流路(図示せず)が設けられている。貯留槽110に貯留された水は、高低差(以下、「ヘッド差」という。)やポンプ等を利用することによって、第1凝集槽120、第2凝集槽160及び沈殿槽180の順に輸送される。
貯留槽110は、被処理水を貯留するための水槽である。第1凝集槽120は、被処理水に薬剤を投入し、不要物を凝集させるための水槽である。薬剤貯留槽130は、不要物を凝集させる薬剤を貯留する水槽である。薬剤注入ポンプ140は、薬剤貯留槽130に貯留された薬剤を第1凝集槽120に注入するポンプである。第1凝集槽120は、これらの薬剤の他、フロックの形成を促進させるためのpH調整剤として、塩酸や硫酸などの酸類や、消石灰や苛性ソーダなどのアルカリ類が添加される場合もある。
攪拌機150は、第1凝集槽120に流入する被処理水を攪拌する。攪拌機150は、モータ151の駆動によって攪拌翼152を回転させることによって被処理水と薬剤とを均一に混合する。この攪拌機150による攪拌は、一般に急速攪拌プロセスと呼ばれ、凝集剤の拡散を早めるとともに、薬剤と懸濁粒子状の固形物との衝突確率を向上させる作用を有する。その結果、凝集剤に含まれるゾル成分が被処理水中の固形物と結合しながらゲル化し、フロックS1が形成される。
第1凝集槽120における被処理水の滞留時間は場合によってさまざまであるが、例えば1〜20分間程度取られることが一般的である。そして、第1凝集槽120で形成されるフロックは数十μm程度の大きさであり、非常に細かく沈降性が悪いフロックである。
第2凝集槽160は、第1凝集槽120において形成されたフロックS1をさらに大きなフロックS2に成長させるための水槽である。
攪拌機170は、第2凝集槽160に流入する被処理水を攪拌する。攪拌機170は、モータ171の駆動によって攪拌翼172を回転させることによって被処理水を攪拌する。攪拌機170による攪拌は、フロックS1同士を衝突させる作用を有する。一般に、攪拌機170は、攪拌機150に比べて緩やかな攪拌強度で被処理水を攪拌する。その結果、第1凝集槽120で形成された細かいフロックは、緩やかな撹拌の中で周囲のフロックと衝突又は結合し次第に大きなフロックになっていく。第2凝集槽160における被処理水の滞留時間も場合によってさまざまであるが、10分〜1時間程度取られることが一般的である。なお、図1では、凝集沈殿装置100は、攪拌機170による機械攪拌を行う構成となっているが、迂流式の流路を用いた流れによる撹拌を行うように構成されてもよい。
沈殿槽180は、第2凝集槽160において形成されたフロックS2を沈殿させるための水槽である。沈殿槽180では、比重差によって重力沈降させることにより被処理水からフロックを分離する。なお、分離速度を早めるため、沈殿槽180には傾斜板やスラッジブランケットなどの補助手段が備えられてもよい。凝集沈殿装置100は、沈殿槽180において不要物が沈殿した被処理水の上澄み液を取得することによって、不要物が除去された被処理水(以下、「処理水」という。)を取得する。
図2は、第1の実施形態における凝集沈殿装置の制御の概要を示す概略図である。
図2において、破線矢印は凝集沈殿装置100から被処理水の一部が分取されていることを表している。分取流路200は、凝集沈殿装置100から分取された被処理水の流路を模式的に示した図である。分取流路200の途中に設けられているフローセル210は、分取された被処理水を撮像可能にするための管路である。フローセル210は、その一部がガラス等の透明な材料で構成され、中を流れる被処理水が撮像可能なように構成される。分取流路200を流れる被処理水は流入口211からフローセル210に流入し、流出口212から分取流路200に流出する。なお、被処理水は、第1凝集槽120、第2凝集槽160及び沈殿槽180のいずれの水槽から分取されてもよいし、各水槽のどの部分から分取されてもよい。ただし、制御における時間遅れを考慮すると、なるべく早い時点での検査が望ましいため、本実施形態では、第1凝集槽120から被処理水を分取するものと仮定する。
吸光度計測装置300は、フローセル210を流れる被処理水の吸光度を計測する。吸光度計測装置300は、被処理水の吸光度を連続的に取得する。吸光度計測装置300は、計測した吸光度を示す吸光度情報を凝集沈殿制御装置1に出力する。
凝集沈殿制御装置1は、吸光度計測装置300から吸光度情報を取得する。凝集沈殿制御装置1は、吸光度情報が示す吸光度に基づいて、被処理水中のフロックの凝集状態を取得する。凝集沈殿制御装置1は、取得した凝集状態に基づいて、凝集沈殿装置100による凝集処理を制御するための制御情報を生成し、凝集沈殿装置100に出力する。
図3は、フローセル210を流れる被処理水の吸光度を計測する方法の具体例を示す図である。
図3におけるフローセル210内の丸は、被処理水中のフロックを表している。凝集沈殿装置100から分取された被処理水は、分取流路を流れてフローセル210に流入する。光源310は、フローセル210に特定波長の光を照射する。例えば、光源310は、LED(Light Emitting Diode)である。吸光度計測装置300は、光源310によって照射された光のうちフローセル210を透過した光を計測することによって、被処理水の吸光度を計測する。なお、光源310にハロゲンランプやキセノンランプなどの一般的な光源を用いる場合、分光器やバンドパスフィルタなどの分光手段を用いて特定の波長の光を取り出すように構成されてもよい。また、複数波長の光を用いる場合、光源310は、特定波長の光のみを発する複数の光源を切り替えるように構成されてもよいし、上記分光器を用いて複数の波長の光を取り出すように構成されてもよいし、異なる波長を透過させる複数のフィルタを切り替えるように構成されてもよい。このように、フローセル210を流れる被処理水の吸光度を計測できれば、吸光度計測装置300及び光源310はどのような構成であってもよい。
図4は、第1の実施形態の凝集沈殿制御装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
凝集沈殿制御装置1は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、制御プログラムを実行する。凝集沈殿制御装置1は、制御プログラムの実行によって吸光度取得部11、凝集状態取得部12及び制御情報生成部13を備える装置として機能する。なお、凝集沈殿制御装置1の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。制御プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
吸光度取得部11は、凝集沈殿装置100から分取された被処理水の吸光度を示す吸光度情報を吸光度計測装置300から取得する。吸光度取得部11は、取得した吸光度情報を凝集状態取得部12に出力する。
凝集状態取得部12は、吸光度取得部11によって取得された吸光度情報に基づいて、フロックの凝集状態を取得する。
図5は、凝集過程における被処理水の吸光度の変化の具体例を示す図である。
図5は、100μL/Lの墨汁水溶液をPACを用いて中性域で凝集させたときの吸収スペクトルを示している。図5において横軸は被処理水に照射された光の波長を表し、縦軸は各波長の光について計測された吸光度を表す。また、図5に示された複数の系列は、図右の凡例が示す各経過時間における波長と吸光度との関係を表している。なお、ここでは、凝集プロセスの開始時点(図中の0min)において凝集剤を注入し、同じタイミングで攪拌を開始した。また、ここでの攪拌は、最初の11分間を150rpm(周速約0.6m/s)の急速攪拌、その後を50rpm(周速約0.2m/s)緩速攪拌とした。
一般に、凝集沈殿によって除去対象となる不要物は、0.01μm〜100μm程度の径の粒子である。それ以上の大きさの粒子は凝集させなくても自然沈降によって分離することができる。粒子径が1000nm以下の粒子はコロイドと呼ばれ、ブラウン運動の影響により重力によって沈降しない。墨汁水溶液は、このようなコロイドの一例であり、100nm程度の粒子径を持つ。また一般に、吸光度の測定には、200nm〜1000nm程度の波長を持つ光(紫外線〜近赤外線)が用いられる。被処理水に照射された光が被処理水中の粒子によってどのように散乱されるかは、照射された光の波長と、被処理水中の粒子の粒子径との大小関係による。
一般に、光の波長と粒子径が吸光度に及ぼす影響は次のように説明することができる。まず、光の波長に対して粒子径が十分に大きい場合、光の散乱は幾何光学的に近似することが可能である。この場合、吸光度に対する散乱光の影響はほとんどなく、吸光度は粒子の濃度との高い相関を持つ。そのため、このような場合、赤色光などの長波長の光を用いて吸光度を計測することにより凝集状態を判断することができる。
次に、粒子径が光の波長と同程度である場合、光の散乱においてはミー散乱が支配的になる。この場合、吸光度に対する散乱光の影響が増加するものの、吸光度は粒子の濃度とある程度の相関を持つ。そのため、このような場合、光の波長に対して粒子径が十分に大きい場合と同様に、赤色光などの長波長の光を用いて吸光度を計測することにより凝集状態を判断することができる。
次に、粒子径が光の波長に対して十分に小さい場合、光の散乱にレイリー散乱が含まれるようになる。この場合、吸光度に対する散乱光の影響が大きくなり、吸光度と粒子の濃度との相関が低下する。そのため、このような場合、赤色光などの長波長の光を用いた吸光度の計測のみでは凝集状態の判断が難しくなる。
このような波長と粒子径の関係は、図5を見ても明らかである。例えば図5の場合、長波長領域においては、凝集状態の変化に対する吸光度の変化が小さい。すなわちこれは、長波長領域では、吸光度が粒子の吸光係数と濃度とに依存することを表している。一方、短波長領域においては、凝集状態の変化に対する吸光度の変化が大きい。例えば、攪拌開始後の3分間では吸光度に変化が無く、開始後5分以降では凝集が進むに従い吸光度が低下していることが分かる。そして、開始後11分間には吸光度の低下がほぼ収束し、それ以降の緩速撹拌では吸光度の変化が小さいことが分かる。すなわち、短波長領域においては、粒子径が吸光度に与える影響が凝集状態に応じて変化することが分かる。特に特徴的なのは270nmの波長において、吸光度が0.5から0.2まで低下していることである。そのため、このような特徴的な吸光度の変化を、凝集状態の変化を表す指標として予め計測しておくことにより目標とする凝集状態を吸光度によって制御することができる。例えば、このような吸光度を用いた指標値は次の式(2)によって定義される。
式(2)において、Aは原水吸光度を表し、Aは凝集槽内の吸光度を表す。原水吸光度は、凝集処理が行われる前の初期状態における被処理水の吸光度である。Aは、原水吸光度に対する凝集処理中の被処理水の吸光度の割合として表される指標値であり、フロックの凝集が進むにつれて減少する値である。例えば、図5の例の場合、このような指標値Aを、予め計測された270nmの波長の吸光度に基づいて計算する。そして、計算された指標値Aを制御目標値として、予め制御情報生成部13に設定しておく。具体的には、時刻t=0[min]のときの吸光度(すなわち原水吸光度)をA、時刻t=11[min]のときの吸光度をAとして計算される指標値Aを予め計算しておく。
一方、凝集状態取得部12は、凝集処理中に計測される吸光度に基づいて、上記の指標値Aを計算する。凝集状態取得部12は、取得した指標値Aを、その時点における凝集状態を示す凝集状態情報として制御情報生成部13に出力する。
制御情報生成部13は、凝集状態取得部12によって取得された凝集状態情報に基づいて、凝集沈殿装置100を制御するための制御情報を生成する。具体的には、制御情報生成部13は、予め設定された制御目標値と、現時点での凝集状態とに基づいて、薬剤注入量又は攪拌条件を制御するための制御情報を生成する。例えば、凝集沈殿制御装置1に、制御目標値と現時点での凝集状態との比に応じた適正な薬剤注入量を予め記憶させておく。この場合、制御情報生成部13は、制御目標と凝集状態との比に応じた薬剤注入量又は攪拌条件となるように凝集沈殿制御装置1を制御する制御情報を生成する。例えば、制御情報生成部13は、現在の指標値が、目標指標値よりも高い場合には凝集剤が不足していると判断して、凝集剤の注入量を増加させる制御情報を生成する。また、逆の場合には、凝集剤が過剰であると判断して、凝集剤の注入量を減少させる制御情報を生成する。また、制御情報生成部13は、凝集剤の注入量に代えて、攪拌機の攪拌条件(強度又は時間)を制御する制御情報を生成してもよい。
なお、上記のように凝集状態の取得に吸光度を用いた場合、例えばフロックの破片などがフローセルに付着することによって吸光度の計測値が全体的に上昇してしまうドリフトと呼ばれる現象が発生する場合がある。このような場合、上述した270nmの波長の計測値に加えて、例えば270nmよりも長い500nmの波長の計測値を予め取得しておけば、次の式(3)、式(4)及び式(5)によって得られる統計値を用いた正規化によってドリフトの影響を排除することができる。
式(3)において、Aは第1波長によって計測された原水吸光度を表し、Bは第2波長によって計測された原水吸光度を表す。例えば第1波長は270nmであり、第2波長は第1波長より長い波長であり、例えば500nmである。式(4)においてAは第1波長によって計測された凝集槽内の吸光度を表し、Bは第2波長によって計測された凝集槽内の吸光度を表す。
この場合、式(3)のC(−1≦C≦1)は、原水中に含まれる不要物の量を示す指標値となり、Cは攪拌時間の経過に伴って初期値Cから減少していく。すなわち、式(4)のCは凝集状態の指標値となる。そのため、予め制御目標値としてC=Cが得られている場合、計測されるCと目標値Cとの比較により、薬剤量や攪拌強度を制御することができる。例えば、計測値Cが目標値Cよりも大きい場合には、薬剤量が不足している、又は攪拌強度が不足していると判断し、薬剤投入量を増加させたり、攪拌強度を強めたりすればよい。また、計測値Cが目標値Cよりも小さい場合には、薬剤量が過剰である、又は攪拌強度が過剰であると判断し、薬剤投入量を減少させたり、攪拌強度を弱めたりすればよい。
式(5)は上述した指標値の変化に応じて、薬剤の注入率や攪拌強度の制御値を決定する式の一例である。式(5)においてk及びαは、指標値の計測値Cと、指標値の目標値Cとに応じて、制御値を一意に定める係数である。これらの係数は、制御対象となる凝集処理系の性質や特性に応じて設定される。
なお、原水の水質が連続的に変化するような連続系の場合には、原水の水質の変化に応じて制御目標を切り換えるようにしてもよい。一般に、水処理システムでは、凝集沈殿装置100に送られる被処理水の水質を濁度などの指標を用いて計測している。そこで、この原水の濁度と制御目標値との関係を取得し、予め制御情報生成部13に設定しておく。制御情報生成部13は、原水の濁度に応じた制御目標と、現時点での凝集状態とに基づいて制御情報を生成する。このように制御情報が生成されることによって、凝集沈殿制御装置1は、凝集沈殿装置100を連続系に対応させることが可能となる。
このように構成された第1の実施形態の凝集沈殿制御装置1は、フロックの凝集状態を被処理水の吸光度に基づいて取得する。被処理水の吸光度は、被処理水の性質に応じた特定波長の光において顕著な変化を見せる。そのため、このような特定波長の光を用いた吸光度に基づけば、コロイド粒子などの粒子径が小さい不要物についてもより精度の良く凝集状態を評価することができる。凝集沈殿制御装置1は、このような吸光度に基づく制御を行うことにより、沈降性のより良いフロックが形成されるように凝集沈殿装置100を制御することが可能となる。
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態における凝集沈殿装置の制御の概要を示す概略図である。
第1の実施形態の凝集沈殿制御装置1は、被処理水の吸光度に基づいてフロックの凝集状態を判断した。これに対して、第2の実施形態の凝集沈殿制御装置1aは、被処理水が撮像された画像に基づいてフロックの凝集状態を判断する。
撮像装置400(撮像部)は、フローセル210を撮像することによって、凝集沈殿装置100から分取された被処理水の画像を取得する。撮像装置400は、取得した被処理水の画像を凝集沈殿制御装置1に出力する。
凝集沈殿制御装置1は、撮像装置400によって取得された被処理水の画像に基づいて、フロックの凝集状態を取得する。凝集沈殿制御装置1は、取得した凝集状態に基づいて、フロックの凝集状態がより良い状態となるように凝集沈殿制御装置1を制御するための制御情報を生成する。凝集沈殿制御装置1は、生成した制御情報を凝集沈殿装置100に出力する。
図7は、フローセル210を流れる被処理水を撮像する方法の具体例を示す図である。
凝集沈殿装置100から分取された被処理水は、分取流路を流れてフローセル210に流入する。光源310は、フローセル210に光を照射する。撮像装置400は、光源310によって照らされたフローセル210を撮像することによって、分取された被処理水の画像を取得する。撮像装置400は、取得した被処理水の画像を凝集沈殿制御装置1に出力する。
図8は、第2の実施形態の凝集沈殿制御装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
凝集沈殿制御装置1aは、吸光度取得部11に代えて画像取得部14を備える点、凝集状態取得部12に代えて凝集状態取得部12aを備える点、制御情報生成部13に代えて制御情報生成部13aを備える点で、第1の実施形態の凝集沈殿制御装置1と異なる。
画像取得部14は、撮像装置400から被処理水が撮像された画像を取得する。画像取得部14は、取得した被処理水の画像を凝集状態取得部12aに出力する。
凝集状態取得部12aは、画像取得部14によって取得された被処理水の画像に基づいて、フロックの凝集状態を取得する。具体的には、凝集状態取得部12aは、画像からフロックの輪郭を識別する。凝集状態取得部12aは、識別したフロックの輪郭に基づいてフロックの形状を示す形状係数を取得する。例えば、形状係数は、真円度やフラクタル次数などで表されてもよいし、単純に大きさ(例えば面積)で表されてもよい。フロックは、真円度が高い方ほど沈降性が良く、フラクタル次数が低いほど沈降性が良い。また、大きさは大きいほど沈降性が良い。なお、画像からフロックを識別する手法には、既存の任意の画像認識技術が用いられても良い。凝集状態取得部12aは、取得したフロックの形状係数を、その時点における凝集状態を示す凝集状態情報として制御情報生成部13aに出力する。
なお、画像からフロックの輪郭を識別するためには、フロックは画像内で適切な大きさとなるように撮像される必要がある。そのため、撮像装置400は、レンズの倍率やイメージセンサの解像度、光学サイズなどが被写体に応じて適切に設定される必要がある。例えば、フローセル210を通過するフロックが数10μmの大きさである場合、撮影範囲を数100μm〜数mm角程度とし、数倍〜数100倍の倍率を持つレンズを用いるようにすればよい。また、フロックの輪郭が取得しにくい場合には、必要に応じて位相差顕微鏡や同軸落射光などを用いることによって、フロックをより鮮明に撮像することができる。
制御情報生成部13aは、凝集状態取得部12aによって取得された凝集状態情報に基づいて、凝集沈殿装置100を制御するための制御情報を生成する。具体的には、制御情報生成部13は、予め設定された制御目標値と、現時点での凝集状態とに基づいて、薬剤注入量又は攪拌条件を制御するための制御情報を生成する。例えば、フロックが十分な大きさに形成されていない場合、薬剤注入量を増加するような制御情報を生成してもよい。また、フロックが十分に沈降性の良い形状となっていない場合、急速攪拌の強度を強めるような制御情報を生成してもよい。また、制御情報生成部13aは、攪拌強度に代えて攪拌時間を制御する制御情報を生成してもよい。
図9〜図12は、フロックが撮像された画像の具体例を示す図である。
図9〜図12のいずれも、100μL/Lの墨汁水溶液を、PACを用いて中性域で凝集させたときの画像である。なお、各図中の複数の画像は、同じ凝集沈殿処理において形成されたフロックを複数撮像した画像である。
図9は、攪拌に平羽根攪拌機を用い、150rpm(周速約0.6m/s)での急速撹拌後、50rpm(周速約0.2m/s)での緩速撹拌を行った場合に撮像されたフロックの画像である。図からも明らかなように、この場合のフロックはいびつな不定形であり、比較的大きなフロックが形成されている。
図10は、スクリュー羽根攪拌機を用いた1000rpm(周速約1.5m/s)での急速撹拌の後、平羽根攪拌機を用いた50rpm(周速約0.2m/s)での緩速撹拌を行った場合に撮像されたフロックの画像である。図からも明らかなように、フロックは図9と同様にいびつな不定形であり、比較的大きなフロックが形成されている。
図11は、スクリュー羽根攪拌機を用いた3000rpm(周速約4.5m/s)での急速撹拌の後、平羽根攪拌機を用いた50rpm(周速約0.2m/s)での緩速撹拌を行った場合に撮像されたフロックの画像である。図からも明らかなように、この場合のフロックは、図9及び図10の場合とは異なり輪郭に丸みを帯びている。またこの場合、比較的小さなフロックが形成されている。
図12は、スクリュー羽根攪拌機を用いた6000rpm(周速約9m/s)での急速撹拌の後、平羽根攪拌機を用いた50rpm(周速約0.2m/s)での緩速撹拌を行った場合に撮像された画像である。図からも明らかなように、この場合のフロックの形状は図7、図8よりも図9に近く、輪郭に丸みを帯びている。またこの場合、比較的大きなフロックが形成されている。
このような凝集沈殿処理によって得られたフロックの沈降性は、図10、図9、図8、図7の順に良好であった。すなわち、急速撹拌の撹拌強度を強くした場合の方が、分離性の良いフロックを形成できる結果を得られた。
このように、フロックの形状や大きさはフロックの沈降性を大きく左右する。そのため、凝集状態取得部12aは、このようなフロックの形状や大きさを示す形状係数を、被処理水が撮像された画像から取得する。実施形態の凝集沈殿制御装置1aは、このような形状係数に基づいて凝集沈殿装置100の攪拌条件を制御する。このような制御によって、凝集沈殿装置100は、沈降性のより良いフロックを形成することが可能となる。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、画像又は吸光度に基づいて取得された被処理水中のフロックの凝集状態に基づいて、被処理水に注入される薬剤の注入量又は薬剤が注入された被処理水の攪拌条件を制御する制御部を持つことにより、沈降性のより良いフロックを形成することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1,1a…凝集沈殿制御装置、11…吸光度取得部、12,12a…凝集状態取得部、13,13a…制御情報生成部、14…画像取得部、100…凝集沈殿装置、110…貯留槽、120…第1凝集槽、130…薬剤貯留槽、140…薬剤注入ポンプ、150…攪拌機、151…モータ、152…攪拌翼、160…第2凝集槽、170…攪拌機、171…モータ、172…攪拌翼、180…沈殿槽、200…分取流路、210…フローセル、211…流入口、212…流出口、300…吸光度計測装置、310…光源、400…撮像装置

Claims (11)

  1. 被処理水の吸光度を計測する吸光度計測部から前記被処理水の吸光度を示す吸光度情報を取得する吸光度取得部と、
    前記吸光度取得部によって取得された吸光度情報に基づいて、前記被処理水に含まれる凝集物の凝集状態を取得する凝集状態取得部と、
    前記凝集状態取得部によって取得された前記凝集物の凝集状態に基づいて、前記被処理水中の不要物を前記凝集物として凝集させるために注入される薬剤の注入量を制御するための制御情報を生成する制御部と、
    を備える凝集沈殿制御装置。
  2. 前記凝集状態取得部は、処理前の被処理水の吸光度である原水吸光度と、処理中の被処理水の吸光度である被処理水吸光度と、の比を前記凝集状態として取得し、
    前記制御部は、前記原水吸光度と前記被処理水吸光度との比に基づいて前記制御情報を生成する、
    請求項1に記載の凝集沈殿制御装置。
  3. 前記吸光度情報は、異なる波長を持つ複数の光について取得された前記被処理水の吸光度を示す情報であり、
    前記凝集状態取得部は、前記複数の光について取得された前記原水吸光度及び前記被処理水吸光度に基づく統計値を前記凝集状態として取得し、
    前記制御部は、前記統計値に基づいて前記制御情報を生成する、
    請求項1に記載の凝集沈殿制御装置。
  4. 被処理水の吸光度を計測する吸光度計測部から前記被処理水の吸光度を示す吸光度情報を取得する吸光度取得ステップと、
    前記吸光度取得ステップにおいて取得された吸光度情報に基づいて、前記被処理水に含まれる凝集物の凝集状態を取得する凝集状態取得ステップと、
    前記凝集状態取得ステップにおいて取得された前記凝集物の凝集状態に基づいて、前記被処理水中の不要物を前記凝集物として凝集させるために注入される薬剤の注入量を制御するための制御情報を生成する制御ステップと、
    を有する凝集沈殿制御方法。
  5. 被処理水の吸光度を計測する吸光度計測部から前記被処理水の吸光度を示す吸光度情報を取得する吸光度取得ステップと、
    前記吸光度取得ステップにおいて取得された吸光度情報に基づいて、前記被処理水に含まれる凝集物の凝集状態を取得する凝集状態取得ステップと、
    前記凝集状態取得ステップにおいて取得された前記凝集物の凝集状態に基づいて、前記被処理水中の不要物を前記凝集物として凝集させるために注入される薬剤の注入量を制御するための制御情報を生成する制御ステップと、
    をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
  6. 被処理水を撮像する撮像部から前記被処理水の画像を取得する画像取得部と、
    前記画像取得部によって取得された前記被処理水の画像に基づいて、前記被処理水に含まれる凝集物の凝集状態を取得する凝集状態取得部と、
    前記凝集状態取得部によって取得された前記凝集物の凝集状態に基づいて、不要物を前記凝集物として凝集させるための薬剤が注入された前記被処理水の攪拌条件を制御するための制御情報を生成する制御部と、
    を備える凝集沈殿制御装置。
  7. 前記凝集状態取得部は、前記被処理水の画像から前記凝集物を識別し、識別した前記凝集物の形状を前記凝集状態として取得し、
    前記制御部は、前記凝集物の形状に基づいて前記制御情報を生成する、
    請求項6に記載の凝集沈殿制御装置。
  8. 前記攪拌条件は、急速攪拌における攪拌強度である、
    請求項6又は7に記載の凝集沈殿制御装置。
  9. 前記攪拌条件は、急速攪拌における攪拌時間である、
    請求項6から8のいずれか一項に記載の凝集沈殿制御装置。
  10. 被処理水を撮像する撮像部から前記被処理水の画像を取得する画像取得ステップと、
    前記画像取得ステップにおいて取得された前記被処理水の画像に基づいて、前記被処理水に含まれる凝集物の凝集状態を取得する凝集状態取得ステップと、
    前記凝集状態取得ステップにおいて取得された前記凝集物の凝集状態に基づいて、不要物を前記凝集物として凝集させるための薬剤が注入された前記被処理水の攪拌条件を制御するための制御情報を生成する制御ステップと、
    を備える凝集沈殿制御方法。
  11. 被処理水を撮像する撮像部から前記被処理水の画像を取得する画像取得ステップと、
    前記画像取得ステップにおいて取得された前記被処理水の画像に基づいて、前記被処理水に含まれる凝集物の凝集状態を取得する凝集状態取得ステップと、
    前記凝集状態取得ステップにおいて取得された前記凝集物の凝集状態に基づいて、不要物を前記凝集物として凝集させるための薬剤が注入された前記被処理水の攪拌条件を制御するための制御情報を生成する制御ステップと、
    をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
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