本発明のメタクリル樹脂(A)は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を99質量%以上含有するものである。メタクリル樹脂(A)において、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量は、好ましくは99.5質量%以上、より好ましくは100質量%である。メタクリル樹脂(A)のメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量は、メタクリル樹脂(A)をメタノール中で再沈殿することにより精製した該樹脂を、熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて熱分解および揮発成分の分離を行い、得られたメタクリル酸メチルと他の共重合成分とのピーク面積の比から算出することができる。
メタクリル酸メチルに由来する構造単位以外の構造単位としては、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリル酸フェニルなどのアクリル酸アリールエステル;アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルネニルなどのアクリル酸シクロアルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリルアミド;メタクリルアミド;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;などの一分子中に重合性の炭素−炭素二重結合を一つだけ有するビニル系単量体に由来する構造単位が挙げられる。これらの中で、共重合し易く、高い透明性を有する樹脂が得られるという点から、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位が好ましい。
メタクリル酸メチルに由来する構造単位以外の構造単位の含有量は1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が最も好ましい。
特に、アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量は、0質量%〜1質量%である。好ましくは、0質量%、すなわち含有しないことが望ましい。アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量が1質量%超となると、メタクリル樹脂(A)の酢酸換算の酸価が大きくなる傾向がある。
本発明のメタクリル樹脂(A)は、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が、53%〜57%であり、好ましくは54%〜56%である。シンジオタクティシティが57%より大きいと、メタクリル樹脂のガラス転移温度が高くなる一方、成形加工温度が高くなり発泡し易くなる。一方、シンジオタクティシティが53%未満であると、ガラス転移温度が低く、耐熱性の低い樹脂になってしまう。
ここで、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)について説明する。ポリマー分子中の構造単位の連鎖(2連子、diad)において立体配置が同じものをメソ(meso)、逆のものをラセモ(racemo)と称し、それぞれm、rと表記する。連続する3つの構造単位の連鎖(3連子、triad)が有する2つの連鎖(2連子、diad)が、ともにラセモ(rrと表記する)である割合が、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)(以下、単に「シンジオタクティシティ(rr)」と称する)である。
三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)(%)は、重水素化クロロホルム中、30℃で、1H-NMRスペクトルを測定し、そのスペクトルからTMSを0ppmとした際の、0.6〜0.95ppmの領域の面積(X)と0.6〜1.35ppmの領域の面積(Y)とを計測し、式:(X/Y)×100にて算出した値である。
本発明のメタクリル樹脂(A)は、重量平均分子量(以下、「Mw」と称する)が好ましくは50000〜150000、より好ましくは60000〜120000、さらに好ましくは70000〜100000である。かかるMwが50000以上であることで得られるフィルムは耐衝撃性および靭性に優れる傾向となる。150000以下であることでメタクリル樹脂の成形加工性が高まるので、得られるフィルムの厚さが均一で且つ表面平滑性に優れる傾向となる。また、メタクリル樹脂(A)を連続塊状重合で生産する場合、重合の制御のし易さの観点から、Mwは100000以下であることが好ましい。
本発明のメタクリル樹脂(A)は、Mwと数平均分子量(以下、「Mn」と称する)の比(Mw/Mn:以下、この値を「分子量分布」と称する)が、好ましくは1.2〜2.5、より好ましくは1.5〜2.0である。分子量分布が1.2以上であることでメタクリル樹脂の流動性が向上し、得られるフィルムは表面平滑性に優れる傾向となり、2.5以下であることで得られるフィルムは耐衝撃性および靭性に優れる傾向となる。なお、MwよびMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したよるクロマトグラムを標準ポリスチレンの分子量に換算した値である。
本発明のメタクリル樹脂(A)は、JIS K7210に準拠して、230℃、3.8kg荷重の条件において測定される、メルトフローレートが、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.5〜30g/10分、さらに好ましくは1.0〜20g/10分、最も好ましくは1.2〜5g/10分である。
本発明のメタクリル樹脂(A)のガラス転移温度は、好ましくは118℃以上、より好ましくは119℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。該メタクリル樹脂のガラス転移温度の上限は通常125℃以下であり、好ましくは124℃以下、より好ましくは123度以下である。ガラス転移温度は、分子量やシンジオタクティシティ(rr)を調節することによって制御することができる。ガラス転移温度がこの範囲にあると、得られるフィルムの熱収縮などの変形が起こり難く、フィルム等の成形体の成形時における樹脂の熱分解を抑制しやすい。
本発明のメタクリル樹脂(A)の酢酸換算の酸価は、耐熱分解性が良好であるという観点から40ppm以下であり、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下である。酢酸換算の酸価が高い場合、耐熱分解性に劣るだけでなく、成形時に他の化合物と反応してゲルなどを発生させ、成形体のブツ欠点になる恐れがあり、好ましくない。
酸価の評価は、JIS−K−0070−1992の酸価をKOH換算ではなく酢酸量に換算した後、メタクリル樹脂(A)の重量に対して含有している酢酸量として算出した値である。具体的には実施例に記載の方法で測定すれば良い。
本発明のメタクリル樹脂(A)の空気雰囲気、温度290℃一定、時間10分で測定した熱重量保持率は、耐熱分解性の観点から、92%以上が好ましく、93%以上がより好ましく94%以上が最も好ましい。
熱重量保持率の測定は、熱重量測定装置(島津製作所製、TGA)を用いて、空気雰囲気下、メタクリル樹脂(A)を、乾燥空気の流速50ml/分にて、50℃から290℃まで20℃/分で昇温させた後、空気雰囲気化のまま290℃にて20分間保持する条件にて熱重量減少を測定すればよい。50℃の重量(X1)を基準(保持率100%)にして、290℃にて5分間保持した時の重量(X2)をもとに、下記式で耐熱分解性を評価できる。重量保持率が高いほど耐熱分解性が高いと言える。
重量保持率(%)=X2/X1×100(%)
メタクリル樹脂(A)の製造方法は、限定されないが、着色が少なく、酢酸換算の酸価が小さく、耐熱分解性が良好で、また生産性が良好であるという観点から、ラジカル重合法が好ましい。
該ラジカル重合法は、低不純物濃度のメタクリル樹脂(A)が得られるという観点から無溶媒で行う、塊状重合が好ましい。特に生産性の観点から、連続塊状重合が好ましい。成形体にシルバーや着色が発生するのを抑制する観点から、重合反応は溶存酸素量を低くして行うことが好ましい。また、重合反応は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
メタクリル樹脂(A)の製造のためのラジカル重合法において用いられる重合開始剤は、反応性ラジカルを発生するものであれば特に限定されない。例えば、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエ−ト、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエ−ト、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ベンゾイルパーオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。これらのうち、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)が好ましい。
かかる重合開始剤の1時間半減期温度は好ましくは60〜140℃、より好ましくは80〜120℃である。また、メタクリル樹脂(A)の製造のために用いられる重合開始剤は、水素引抜き能が、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。このような重合開始剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合開始剤の使用量は、重合反応に供される単量体100質量部に対して好ましくは0.0001〜0.02質量部、より好ましくは0.001〜0.01質量部、さらに好ましくは0.005〜0.007質量部である。
なお、水素引抜き能は重合開始剤製造業者の技術資料(例えば日本油脂株式会社技術資料「有機過酸化物の水素引抜き能と開始剤効率」(2003年4月作成))などによって知ることができる。また、α−メチルスチレンダイマーを使用したラジカルトラッピング法、即ちα−メチルスチレンダイマートラッピング法によって測定することができる。当該測定は、一般に、次のようにして行われる。まず、ラジカルトラッピング剤としてのα−メチルスチレンダイマーの共存下で重合開始剤を開裂させてラジカル断片を生成させる。生成したラジカル断片のうち、水素引抜き能が低いラジカル断片はα−メチルスチレンダイマーの二重結合に付加して捕捉される。一方、水素引抜き能が高いラジカル断片はシクロヘキサンから水素を引き抜き、シクロヘキシルラジカルを発生させ、該シクロヘキシルラジカルがα−メチルスチレンダイマーの二重結合に付加して捕捉され、シクロヘキサン捕捉生成物を生成する。そこで、シクロヘキサン、またはシクロヘキサン捕捉生成物を定量することで求められる、理論的なラジカル断片発生量に対する水素引抜き能が高いラジカル断片の割合(モル分率)を水素引抜き能とする。
メタクリル樹脂(A)の製造のためのラジカル重合法において用いられる連鎖移動剤としては、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス−(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネートなどのアルキルメルカプタン類などが挙げられる。これらのうちn−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンなどの単官能アルキルメルカプタンが好ましい。これら連鎖移動剤は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
かかる連鎖移動剤の使用量は重合反応に供される単量体100質量部に対して好ましくは0.1〜1質量部、より好ましくは0.15〜0.8質量部、さらに好ましくは0.2〜0.6質量部、最も好ましくは0.2〜0.5質量部である。また、該連鎖移動剤の使用量は、重合開始剤100質量部に対して好ましくは2500〜10000質量部、より好ましくは3000〜9000質量部、さらに好ましくは3500〜6000質量部である。連鎖移動剤の使用量を上記範囲にすると、得られるメタクリル樹脂(A)は良好な成形加工性と高い力学強度を有する傾向となる。
重合反応時の温度は好ましくは105〜127℃、より好ましくは110〜125℃、さらにより好ましくは112〜123℃である。重合温度が105℃以上であることで、重合速度の向上、重合液の低粘度化などに起因して生産性が向上する傾向となる。また重合温度が127℃以下であることで、重合速度の制御が容易になり、さらに副生成物の生成が抑制され、また所望のガラス転移温度を有するメタクリル樹脂が得られる。重合反応時の温度は反応器のジャケットの温度や、重合転化率によって制御することができる。
重合反応の時間は好ましくは0.5〜4時間、より好ましくは1.5〜3.5時間、さらに好ましくは1.5〜3時間である。なお、連続流通式反応装置の場合は、かかる重合反応の時間は反応器における平均滞留時間である。重合反応時の温度および重合反応の時間が上記範囲にあると、透明性に優れたメタクリル樹脂(A)を高効率で生産できる。
メタクリル樹脂(A)の製造のためのラジカル重合法における重合転化率は、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%、さらに好ましくは35〜65質量%である。重合転化率が20質量%以上であることで、残存する未反応単量体の除去が容易となり、得られるメタクリル樹脂が発泡し難く、得られる成形体の外観が良好となる傾向がある。重合転化率が70質量%以下であることで、重合液の粘度が低くなり生産性が向上する傾向がある。
ラジカル重合は回分式反応装置を用いて行ってもよいが、生産性の観点から連続流通式反応装置を用いて行うことが好ましい。連続流通式反応では、例えば窒素雰囲気下などで重合反応原料(単量体、重合開始剤、連鎖移動剤などを含む混合液)を調製し、それを反応器に一定流量で供給し、該供給量に相当する流量で反応器内の液を抜き出す。反応器として、栓流に近い状態にすることができる管型反応器および/または完全混合に近い状態にすることができる槽型反応器を用いることができる。また、1基の反応器で連続流通式の重合を行ってもよいし、2基以上の反応器を繋いで連続流通式の重合を行ってもよい。本発明においては少なくとも1基は連続流通式の槽型反応器を採用することが好ましい。重合反応時における槽型反応器内の液量は、槽型反応器の容積に対して好ましくは1/4〜3/4、より好ましくは1/3〜2/3である。反応器には通常、撹拌装置が取り付けられている。撹拌装置としては静的撹拌装置、動的撹拌装置が挙げられる。動的撹拌装置としては、マックスブレンド式撹拌装置、中央に配した縦型回転軸の回りを回転する格子状の翼を有する撹拌装置、プロペラ式撹拌装置、スクリュー式撹拌装置などが挙げられる。これらのうちでマックスブレンド式撹拌装置が均一混合性の点から好ましく用いられる。
重合終了後、必要に応じて、未反応単量体等の揮発分を除去する。除去方法は特に制限されないが、加熱脱揮が好ましい。脱揮法としては、平衡フラッシュ方式や断熱フラッシュ方式が挙げられる。断熱フラッシュ方式による脱揮温度は、好ましくは200〜270℃、より好ましくは220〜260℃である。断熱フラッシュ方式で樹脂を加熱する時間は、好ましくは0.3〜5分間、より好ましくは0.4〜3分間、さらに好ましくは0.5〜2分間である。このような温度範囲および加熱時間で脱揮させると、着色の少なく、酢酸換算の酸価の少ないメタクリル樹脂(A)を得やすい。除去した未反応単量体は、回収して、再び重合反応に使用することができる。回収された単量体のイエロインデックスは回収操作時などに加えられる熱によって高くなっていることがある。回収された単量体は、蒸留やカラムによる吸着精製など適切な方法で精製して、酢酸換算の酸価およびイエロインデックスを小さくすることが好ましい。
また、前記重合後に得られた重合体と未反応単量体の樹脂混合物を、前記反応器から、ベントを備えた二軸押出機に連続的に移送することができる。続いて、二軸押出機入り口により平衡フラッシュまたは断熱フラッシュさせ、さらにそれに続いて二軸押出機ベントにより脱揮を行うことができる。
前記の断熱フラッシュにおける、フラッシュ直前の樹脂溶融体の圧力は、好ましくは1.5〜3.0MPa、より好ましくは2.0〜2.5MPaである。1.5MPa未満ではフラッシュが不十分となり、残存単量体が多くなる傾向がある。逆に3.0MPaを超えると安定生産を得難くなる傾向がある。
本発明に用いられる二軸押出機はベントを備えるものであることが好ましい。ベントは真空ベントまたはオープンベントであることが好ましい。ベントは重合体流入部より下流側に少なくとも1個設ける。なお、真空ベントにおける圧力は、30Torr以下が好ましく、15Torr以下がより好ましく、9Torr以下がさらに好ましく、6Torr以下がもっとも好ましい。該真空ベントにおける圧力が上記範囲内であれば、脱揮効率がよく、メタクリル樹脂(A)中に残存する未反応単量体、二量体、三量体等を少なくすることができる。
前記二軸押出機のスクリューは、同方向二軸スクリューであることが好ましい。単軸の場合に比べ、樹脂に与えるせん断エネルギーが大きく、表面更新の程度が大きいことから脱揮を効率良く行えるため、残存する未反応単量体、二量体、三量体等を少なくできる。またそのスクリュー構成はスクリュー全長に対して5%以上の混練セグメント部位を有していることが好ましい。混練セグメントとしては、ロータセグメント、正送りニーディングディスク、逆送りニーディングディスク、ミキシングギアなどが挙げられる。
前記二軸押出機のシリンダ加熱温度は、210〜270℃が好ましく、220〜260℃がより好ましく、230〜250℃がさらに好ましい。210℃未満では脱揮に時間を要し、脱揮不十分になりやすい。脱揮が不十分なときには成形品成形体にシルバーなどの外観不良を起こすことがある。逆に270℃を超えると、メタクリル樹脂(A)において末端二重結合量が多くなり、また酢酸換算の酸価を増大させ、耐熱分解性を確保する事が困難となる。また、前述の二量体および三量体の生成が多くなることもある。
本発明のメタクリル樹脂(A)は、メタクリル樹脂のみからなることが好ましいが、実際にはメタクリル樹脂(A)として得た場合に、製造条件に起因する他の任意成分が微量存在していることがある。この製造条件に起因する他の任意成分としては、未反応単量体、二量体、三量体、連鎖移動剤などが挙げられる。本明細書では、これら他の任意成分を含有したものも含めて、便宜上、メタクリル樹脂(A)と称する。
本発明のメタクリル樹脂(A)は、上記他の任意成分の含有量が、メタクリル樹脂(A)中に、1質量%以下であることが好ましい。
本発明のメタクリル樹脂(A)は、残存する未反応単量体のうち、残存するメタクリル酸メチルの量がメタクリル樹脂(A)中に0.5質量%以下である。好ましくは、0.4質量%以下である。
残存する単量体は、実施例に記載の方法で測定することができる。
本発明のメタクリル樹脂(A)に、紫外線吸収剤を加えてメタクリル樹脂組成物(B)として用いることができる。すなわち、メタクリル樹脂組成物(B)は、メタクリル樹脂(A)と、紫外線吸収剤を含有するものとすることができる。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は、熱可塑性樹脂に配合されることがある公知の紫外線吸収剤である。紫外線吸収剤の分子量が200以下であると、メタクリル樹脂組成物(B)を成形する際に発泡が発生するなどの問題が生じることがあるため、紫外線吸収剤の分子量の下限値は好ましくは300以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは600以上である。
本発明のメタクリル樹脂組成物(B)に含有し得る紫外線吸収剤の量は、メタクリル樹脂(A)の100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.5〜3質量部より好ましく、1〜2質量部がさらに好ましい。
一般に、紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物である。紫外線吸収剤は、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有すると言われる化合物である。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、ホルムアミジン類などを挙げることができる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ベンゾトリアゾール類(ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物)、トリアジン類(トリアジン骨格を有する化合物)が好ましい。ベンゾトリアゾール類またはトリアジン類は、紫外線による樹脂の劣化(例えば、黄変など)を抑制する効果が高い。
ベンゾトリアゾール類としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN329)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN234)、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール〕(ADEKA社製;LA−31)、2−(5−オクチルチオ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどを挙げることができる。
トリアジン類としては、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(ADEKA社製;LA−F70)や、その類縁体であるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製;CGL777、TINUVIN460、TINUVIN479など)、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジンなどを挙げることができる。
その他に、波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが1200dm3・mol-1cm-1以下である紫外線吸収剤を好ましく用いることができる。このような紫外線吸収剤としては、2−エチル−2’−エトキシ−オキサルアニリド(クラリアントジャパン社製;商品名サンデユボアVSU)などを挙げることができる。
WO2011/089794A1、WO2012/124395A1、特開2012−012476号公報、特開2013−023461号公報、特開2013−112790号公報、特開2013−194037号公報、特開2014−62228号公報、特開2014−88542号公報、特開2014−88543号公報等に開示される複素環構造の配位子を有する金属錯体(例えば、式(D)で表される構造の化合物など)を紫外線吸収剤として用いることができる。
〔式(D)中、Mは金属原子である。
Y1、Y2、Y3およびY4はそれぞれ独立に炭素原子以外の二価基(酸素原子、硫黄原子、NH、NR5など)である。R5はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロアラルキル基、アラルリル基などの置換基である。該置換基は、該置換基にさらに置換基を有してもよい。
Z1およびZ2はそれぞれ独立に三価基(窒素原子、CH、CR6など)である。R6はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロアラルキル基、アラルリル基などの置換基である。該置換基は、該置換基にさらに置換基を有してもよい。
R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、ハロゲノ基、アルキルスルホニル基、モノホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基、チオモルホリノスルホニル基、ピペラジノスルホニル基などの置換基である。該置換基は、該置換基にさらに置換基を有してもよい。a、b、cおよびdはそれぞれR1、R2、R3およびR4の数を示し且つ1〜4のいずれかの整数である。〕
当該複素環構造の配位子としては、2,2’−イミノビスベンゾチアゾール、2−(2−ベンゾチアゾリルアミノ)ベンゾオキサゾール、2−(2−ベンゾチアゾリルアミノ)ベンゾイミダゾール、(2−ベンゾチアゾリル)(2−ベンゾイミダゾリル)メタン、ビス(2−ベンゾオキサゾリル)メタン、ビス(2−ベンゾチアゾリル)メタン、ビス[2−(N−置換)ベンゾイミダゾリル]メタン等およびそれらの誘導体を挙げることができる。このような金属錯体の中心金属としては、銅、ニッケル、コバルト、亜鉛が好ましく用いられる。また、これら金属錯体を紫外線吸収剤として用いるために、低分子化合物や重合体などの媒体に金属錯体を分散させることが好ましい。該金属錯体の添加量は、本発明の樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜5質量部、より好ましくは0.1〜2質量部である。前記金属錯体は380nm〜400nmの波長におけるモル吸光係数が大きいので、十分な紫外線吸収効果を得るために添加する量が少なくて済む。添加量が少なくなればブリードアウト等による成形体外観の悪化を抑制することができる。また、前記金属錯体は耐熱性が高いので、成形加工時の劣化や分解が少ない。さらに前記金属錯体は耐光性が高いので、紫外線吸収性能を長期間保持することができる。
なお、紫外線吸収剤のモル吸光係数の最大値εmaxは、次のようにして測定する。シクロヘキサン1Lに紫外線吸収剤10.00mgを添加し、目視による観察で未溶解物がないように溶解させる。この溶液を1cm×1cm×3cmの石英ガラスセルに注入し、日立製作所社製U−3410型分光光度計を用いて、波長380〜450nmでの吸光度を測定する。紫外線吸収剤の分子量(MUV)と、測定された吸光度の最大値(Amax)とから次式により計算し、モル吸光係数の最大値εmaxを算出する。
εmax=〔Amax/(10×10-3)〕×MUV
本発明のメタクリル樹脂(A)に、ポリカーボネート樹脂を加えてメタクリル樹脂組成物(B)として用いることができる。すなわち、メタクリル樹脂組成物(B)は、メタクリル樹脂(A)と、ポリカーボネート樹脂を含有するものとすることができる。
ポリカーボネート樹脂を含有することによって、位相差の調整が容易なメタクリル樹脂組成物(B)を得ることができる。ポリカーボネート樹脂の量は、メタクリル樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜7質量部、さらに好ましくは0.8〜4質量部である。
〔ポリカーボネート樹脂〕
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、多官能ヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成性化合物との反応によって得られる重合体である。該ポリカーボネート樹脂は、メタクリル樹脂との相溶性、得られる樹脂層の透明性がよいという観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、メタクリル樹脂との相溶性、並びに得られるフィルムの透明性および面内均一性の観点から、300℃、1.2KgでのMVR値が、好ましくは130〜250cm3/10分、より好ましくは150〜230cm3/10分、さらに好ましくは180〜220cm3/10分である。MVR値はJIS K7210に準拠して、300℃、1.2kg荷重、10分間の条件で、測定される値である。
また、本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、重量平均分子量Mwpが、好ましくは15000〜28000、より好ましくは18000〜27000、さらに好ましくは20000〜24000である。なお、ポリカーボネート樹脂のMVR値や重量平均分子量の調節は末端停止剤や分岐剤の量を調整することによって行うことができる。なお、Mwpは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定した標準ポリスチレン換算の分子量である。
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは135℃以上、さらに好ましくは140℃以上である。該ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度の上限は、好ましくは180℃である。
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、その製造方法によって特に限定されない。例えば、ホスゲン法(界面重合法)、溶融重合法(エステル交換法)などを挙げることができる。また、本発明に好ましく用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂は、溶融重合法で製造したポリカーボネート樹脂に末端ヒドロキシ基量を調整するための後処理を施したものであってもよい。
ポリカーボネート樹脂を製造するための原料である多官能ヒドロキシ化合物としては、置換基を有していてもよい4,4'−ジヒドロキシビフェニル類;置換基を有していてもよいビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類;置換基を有していてもよいビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル類;置換基を有していてもよいビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド類;置換基を有していてもよいビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド類;置換基を有していてもよいビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン類;置換基を有していてもよいビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン類;置換基を有していてもよいビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類;置換基を有していてもよいジヒドロキシ−p−ターフェニル類;置換基を有していてもよいジヒドロキシ−p−クォーターフェニル類;置換基を有していてもよいビス(ヒドロキシフェニル)ピラジン類;置換基を有していてもよいビス(ヒドロキシフェニル)メンタン類;置換基を有していてもよいビス〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン類;置換基を有していてもよいジヒドロキシナフタレン類;置換基を有していてもよいジヒドロキシベンゼン類;置換基を有していてもよいポリシロキサン類;置換基を有していてもよいジヒドロパーフルオロアルカン類などを挙げることができる。
これらの多官能ヒドロキシ化合物の中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、4,4'−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、α,ω−ビス〔3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピル〕ポリジメチルシロキサン、レゾルシン、2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましく、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
炭酸エステル形成性化合物としては、ホスゲンなどの各種ジハロゲン化カルボニルや、クロロホーメートなどのハロホーメート、ビスアリールカーボネートなどの炭酸エステル化合物を挙げることができる。この炭酸エステル形成性化合物の量は、多官能ヒドロキシ化合物との反応における化学量論比を考慮して適宜調整すればよい。
重合反応は、通常、酸結合剤の存在下に溶媒中で行われる。酸結合剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、ジメチルアニリンなどの三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリブチルベンジルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイドなどの四級アンモニウム塩;テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイドなどの四級ホスホニウム塩などを挙げることができる。さらに、所望により、この反応系に亜硫酸ナトリウムやハイドロサルファイドなどの酸化防止剤を少量添加してもよい。酸結合剤の量は、反応における化学量論比を考慮して適宜調整すればよい。具体的には、原料の多官能ヒドロキシ化合物の水酸基1モルに対して、酸結合剤は、好ましくは1グラム当量もしくはそれより過剰な量、好ましくは1〜5グラム当量を使用する。
また、反応には、公知の末端停止剤や分岐剤を用いることができる。末端停止剤としては、p−tert−ブチル−フェノール、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、p−パーフルオロノニルフェノール、p−(パーフルオロノニルフェニル)フェノール、p−(パーフルオロへキシルフェニル)フェノール、p−tert−パーフルオロブチルフェノール、1−(P−ヒドロキシベンジル)パーフルオロデカン、p−〔2−(1H,1H−パーフルオロトリドデシルオキシ)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル〕フェノール、3,5−ビス(パーフルオロヘキシルオキシカルボニル)フェノール、p−ヒドロキシ安息香酸パーフルオロドデシル、p−(1H,1H−パーフルオロオクチルオキシ)フェノール、2H,2H,9H−パーフルオロノナン酸、1,1,1,3,3,3−テトラフロロ−2−プロパノールなどを挙げることができる。
分岐剤としては、フロログリシン、ピロガロール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−3−ヘプテン、2,4−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス〔4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル〕プロパン、2,4−ビス〔2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス〔4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノキシ〕メタン、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、シアヌル酸、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール、5−クロロイサチン、5,7−ジクロロイサチン、5−ブロモイサチンなどを挙げることができる。
ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート単位以外に、ポリエステル構造、ポリウレタン構造、ポリエーテル構造もしくはポリシロキサン構造などを有する単位を含有するものであってもよい。
本発明のメタクリル樹脂(A)に、フェノキシ樹脂を加えてメタクリル樹脂組成物(B)として用いることができる。すなわち、メタクリル樹脂組成物(B)は、メタクリル樹脂(A)と、フェノキシ樹脂を含有するものとすることができる。
フェノキシ樹脂を含有することによって、位相差の調整が容易なメタクリル樹脂組成物を得ることができる。フェノキシ樹脂の量は、メタクリル樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜7質量部、さらに好ましくは0.8〜4質量部である。
〔フェノキシ樹脂〕
フェノキシ樹脂は熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂である。フェノキシ樹脂は、例えば、式(1)で表される構造単位を1種以上含み、かつ式(1)で表される構造単位を50質量%以上含む。
式(1)中、Xは少なくとも一つのベンゼン環を含む2価基であり、Rは、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基である。式(1)で表される構造単位は、ランダム、交互、若しくはブロックのいずれの形態で繋がっていてもよい。
フェノキシ樹脂は、式(1)で表される構造単位を10〜1000個含むことが好ましく、より好ましくは15〜500個、さらに好ましくは30〜300個含むことが好ましい。
フェノキシ樹脂は、末端にエポキシ基を有しないものが好ましい。末端にエポキシ基を有しないフェノキシ樹脂を用いるとゲル欠点が少ないフィルムを得やすい。
フェノキシ樹脂の数平均分子量は、好ましくは3000〜2000000、より好ましくは5000〜100000、最も好ましくは10000〜50000である。数平均分子量がこの範囲にあることで、耐熱性が高く、強度が高いメタクリル樹脂組成物を得ることができる。
フェノキシ樹脂のガラス転移温度は、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、95℃以上が最も好ましい。フェノキシ樹脂のガラス転移温度が低いと、得られるメタクリル樹脂組成物の耐熱性が低くなってしまう。フェノキシ樹脂のガラス転移温度の上限は、特に規定しないが、一般的には、150℃である。フェノキシ樹脂のガラス転移温度が高すぎると、得られるメタクリル樹脂組成物よりなる成形体が脆くなってしまう。
フェノキシ樹脂は、2価フェノール化合物とエピハロヒドリンとの縮合反応、あるいは2価フェノール化合物と2官能エポキシ樹脂との重付加反応から得ることができる。該反応は溶液中あるいは無溶媒下に行うことができる。
フェノキシ樹脂の製造に用いる2価フェノール化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、4,4−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)プロパン、1、3−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル)ベンゼン、1、4−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル)ベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1、1−3、3、3−ヘキサフルオロプロパン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどを挙げることができる。これらの中でも物性、コスト面から特に4,4−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、又は9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが好ましい。
フェノキシ樹脂の製造に用いる2官能エポキシ樹脂類としては、上記の2価フェノール化合物とエピハロヒドリンとの縮合反応で得られるエポキシオリゴマー、例えば、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールSタイプエポキシ樹脂、ビスフェノールAタイプエポキシ樹脂、ビスフェノールFタイプエポキシ樹脂、メチルハイドロキノンジグリシジルエーテル、クロロハイドロキノンジグリシジルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルオキシドジグリシジルエーテル、2,6−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ジクロロビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAタイプエポキシ樹脂、9,9’−ビス(4)−ヒドロキシフェニル)フルオレンジグリシジルエーテル等を挙げることができる。これらの中でも、物性、コスト面から特にビスフェノールAタイプエポキシ樹脂、ビスフェノールSタイプエポキシ樹脂、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールFタイプエポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAタイプエポキシ樹脂、又は9,9’−ビス(4)−ヒドロキシフェニル)フルオレンジグリシジルエーテルが好ましい。
フェノキシ樹脂の製造において用いることができる反応溶媒としては、非プロトン性有機溶媒、例えば、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトフェノン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホランなどを好適に用いることができる。
フェノキシ樹脂の製造に用いることのできる反応触媒としては、従来公知の重合触媒として、アルカリ金属水酸化物、第三アミン化合物、第四アンモニウム化合物、第三ホスフィン化合物、及び第四ホスホニウム化合物が好適に使用される。
本発明に好ましく用いられるフェノキシ樹脂は、式(1)中のXが、式(2)〜(8)に示す化合物に由来する2価基であることが好ましい。
なお、2価基を構成する2つの結合の手の位置は化学的に可能な位置であれば特に限定されない。式(1)中のXは、式(2)〜(8)に示す化合物中のベンゼン環上から2つの水素原子が引き抜かれてできる結合の手を有する二価基であることが好ましい。特に、式(3)〜(8)に示す化合物中のいずれか二つのベンゼン環上からそれぞれ1つの水素原子が引き抜かれてできる結合の手を有する二価基であることが好ましい。
式(2)中、R4は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基であり、pは、1〜4のいずれかの整数である。
式(3)中、R1は、単結合、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、または炭素数3〜20のシクロアルキリデン基である。
式(3)および(4)中、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基であり、nおよびmは、それぞれ独立に、1〜4のいずれかの整数である。
式(5)および(6)中、R6及びR7は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、または炭素数3〜20のシクロアルキリデン基である。
式(5)、(6)、(7)および(8)中、R5及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基であり、q及びrは、それぞれ独立に、1〜4のいずれかの整数である。
式(1)中、Xは、複数のベンゼン環が脂環またはヘテロ環と縮合してなる化合物に由来する2価基であっても良い。例えば、下記のようなフルオレン構造やカルバゾール構造を有する化合物に由来する2価基を挙げることができる。
上記式(2)から(8)で表される化合物に由来する2価基の例としては、以下のようなものを挙げることができる。なお、この例示は、本願発明におけるXがこれらに限定されることを意味しない。
式(1)で表される構造単位は、好ましくは式(9)若しくは(10)で表される構造単位、より好ましくは式(11)で表される構造単位である。好ましい態様のフェノキシ樹脂は当該構造単位を10〜1000個含むことが好ましい。
式(9)中、R9は、単結合、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、または炭素数3〜20のシクロアルキリデン基である。
式(9)または(10)中、R10は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基である。
これらフェノキシ樹脂としては、新日鉄住金化学のYP−50やYP−50S、三菱化学のjERシリーズ、InChem社のフェノキ樹脂であるPKFEやPKHJ等を用いることができる。
本発明のメタクリル樹脂(B)は、ポリカーボネート樹脂とフェノキシ樹脂の双方を含んでも良い。ポリカーボネート樹脂とフェノキシ樹脂の合計の含有量は、ガラス転移温度及び位相差の調整の観点から、メタクリル樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜7質量部、さらに好ましくは0.8〜4質量部である。
本発明のメタクリル樹脂(A)に、架橋ゴムを加えてメタクリル樹脂組成物(B)として用いることができる。すなわち、メタクリル樹脂組成物(B)は、メタクリル樹脂(A)と、架橋ゴムを含有するものとすることができる。
架橋ゴムを含有することによって、耐衝撃性の高いフィルムを得ることができる。メタクリル樹脂組成物(B)における架橋ゴムの含有量は、メタクリル樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは5〜30質量部、より好ましくは10〜25質量部、さらに好ましくは15〜20質量部である。
〔架橋ゴム〕
本発明に用いられる架橋ゴムは、架橋性単量体に由来する構造単位によって高分子鎖が架橋されてなるゴム弾性を示す重合体である。なお、架橋性単量体は、1つの単量体中に2つ以上の重合性官能基を有するものである。
架橋性単量体としては、例えば、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、1−アクリロキシ−3−ブテン、1−メタクリロキシ−3−ブテン、1,2−ジアクリロキシ−エタン、1,2−ジメタクリロキシ−エタン、1,2−ジアクリロキシ−プロパン、1,3−ジアクリロキシ−プロパン、1,4−ジアクリロキシ−ブタン、1,3−ジメタクリロキシ−プロパン、1,2−ジメタクリロキシ−プロパン、1,4−ジメタクリロキシ−ブタン、トリエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−ペンタジエン、トリアリルイソシアネートなどを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
架橋ゴムとしては、アクリル系架橋ゴム、ジエン系架橋ゴムなどを挙げることができ、より具体的には、アクリル酸アルキルエステル単量体と架橋性単量体とその他のビニル系単量体との共重合体ゴム、共役ジエン系単量体と架橋性単量体とその他のビニル系単量体との共重合体ゴム、アクリル酸アルキルエステル単量体と共役ジエン系単量体と架橋性単量体とその他のビニル系単量体との共重合体ゴムなどを挙げることができる。
本発明において架橋ゴムは粒子形態にてメタクリル樹脂組成物(B)に含まれていることが好ましい。
架橋ゴム粒子は、架橋ゴムのみからなる単層粒子であってもよいし、架橋ゴムと他の重合体とからなる多層粒子であってもよい。架橋ゴムと他の重合体とからなる多層粒子の形態としては、架橋ゴムからなるコアとそれ以外の重合体からなるシェルとを含んで成るコアシェル型粒子が好ましい。
本発明に好適に用いられる架橋ゴム粒子は、中でもアクリル系多層重合体粒子であることが好ましい。アクリル系多層重合体粒子は、コア部とシェル部とを有するものである。コア部は、センターコアと、必要に応じてセンターコアを略同心円状に覆ってなる1層以上のインナーシェルとを有する。シェル部は、コア部を略同心円状に覆ってなる1層のアウターシェルとを有する。該アクリル系多層重合体粒子は、センターコア、インナーシェルおよびアウターシェルの相互間が隙間無く繋がっていることが好ましい。
アクリル系多層重合体粒子は、センターコアおよびインナーシェルのうちの、少なくとも1つが架橋ゴム重合体(i)を含有して成るものであり、残り部分が重合体(iii)を含有して成るものである。
センターコアおよびインナーシェルのうちの少なくとも2つが架橋ゴム重合体(i)を含有して成るものであるとき、それらに含まれる架橋ゴム重合体(i)は同じ重合体物性を有するものであってもよいし、異なる重合体物性を有するものであってもよい。また、センターコアおよびインナーシェルのうちの残部分が2つ以上である場合、それらに含まれる重合体(iii)は同じ重合体物性を有するものであってもよいし、異なる重合体物性を有するものであってもよい。
前記の架橋ゴム重合体(i)は、アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する単位および/または共役ジエン系単量体に由来する単位と、架橋性単量体に由来する単位とを少なくとも有するものである。
アクリル酸アルキルエステル単量体は、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単量体であることが好ましい。アクリル酸アルキルエステル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
共役ジエン系単量体としては、ブタジエンおよびイソプレンを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
架橋ゴム重合体(i)におけるアクリル酸アルキルエステル単量体に由来する単位および/または共役ジエン系単量体に由来する単位の量は、架橋ゴム重合体(i)の全質量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70〜99質量%、さらに好ましくは80〜98質量%である。
架橋性単量体は、1つの単量体中に2つ以上の重合性官能基を有するものである。架橋性単量体としては、例えば、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、1−アクリロキシ−3−ブテン、1−メタクリロキシ−3−ブテン、1,2−ジアクリロキシ−エタン、1,2−ジメタクリロキシ−エタン、1,2−ジアクリロキシ−プロパン、1,3−ジアクリロキシ−プロパン、1,4−ジアクリロキシ−ブタン、1,3−ジメタクリロキシ−プロパン、1,2−ジメタクリロキシ−プロパン、1,4−ジメタクリロキシ−ブタン、トリエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−ペンタジエン、トリアリルイソシアネートなどを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
架橋ゴム重合体(i)における架橋性単量体に由来する単位の量は、架橋ゴム重合体(i)の全質量に対して、好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.5〜7質量%、さらに好ましくは1〜5質量%である。
架橋ゴム重合体(i)は、その他のビニル系単量体に由来する単位を有してもよい。架橋ゴム重合体(i)におけるその他のビニル系単量体は前記のアクリル酸アルキルエステル単量体および架橋性単量体に共重合可能なものであれば特に限定されない。架橋ゴム重合体(i)におけるその他のビニル系単量体の例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのメタクリル酸エステル単量体;スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体;およびN−プロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−o−クロロフェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体;を挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
架橋ゴム重合体(i)におけるその他のビニル系単量体に由来する単位の量は、アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する単位、共役ジエン系単量体に由来する単位および架橋性単量体に由来する単位の合計量に対する残部である。
前記の重合体(iii)は、架橋ゴム重合体(i)以外のものであれば特に制限されないが、メタクリル酸アルキルエステル単量体に由来する単位を有するものであることが好ましい。重合体(iii)は、その他の単位として、架橋性単量体に由来する単位および/またはその他のビニル系単量体に由来する単位を含有してもよい。
重合体(iii)に用いられるメタクリル酸アルキルエステル単量体は、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単量体であることが好ましい。メタクリル酸アルキルエステル単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、メタクリル酸メチルが好ましい。
重合体(iii)におけるメタクリル酸アルキルエステル単量体に由来する単位の量は、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは85〜99質量%、さらに好ましくは90〜98質量%である。
重合体(iii)に用いられる架橋性単量体としては、前述の架橋ゴム重合体(i)において例示した架橋性単量体と同じものを挙げることができる。重合体(iii)における架橋性単量体に由来する単位の量は、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0.01〜3質量%、さらに好ましくは0.02〜2質量%である。
重合体(iii)におけるその他のビニル系単量体は、前記のメタクリル酸アルキルエステル単量体および架橋性単量体と共重合可能なものであれば特に限定されない。重合体(iii)におけるその他のビニル系単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステル単量体;酢酸ビニル;スチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのα,β−不飽和カルボン酸;およびN−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系単量体を挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合体(iii)におけるその他のビニル系単量体に由来する単位の量は、メタクリル酸アルキルエステル単量体に由来する単位、および架橋性単量体に由来する単位の合計量に対する残部である。
アクリル系多層重合体粒子は、アウターシェルが、熱可塑性重合体(ii)を含有して成るものである。
前記の熱可塑性重合体(ii)は、メタクリル酸アルキルエステル単量体に由来する単位を有するものである。熱可塑性重合体(ii)は、その他のビニル系単量体に由来する単位を有してもよい。
熱可塑性重合体(ii)におけるメタクリル酸アルキルエステル単量体は、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単量体であることが好ましい。
メタクリル酸アルキルエステル単量体としては、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ブチルなどを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちメタクリル酸メチルが好ましい。
熱可塑性重合体(ii)におけるメタクリル酸アルキルエステル単量体に由来する単位の量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
熱可塑性重合体(ii)におけるその他のビニル系単量体としては、前述の重合体(iii)において例示したその他のビニル系単量体と同じものを挙げることができる。
熱可塑性重合体(ii)におけるその他のビニル系単量体に由来する単位の量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
アクリル系多層重合体粒子のコア部とシェル部の構成態様としては、例えば、
センターコアが架橋ゴム重合体(i)で、アウターシェルが熱可塑性重合体(ii)である2層重合体粒子、
センターコアが重合体(iii)で、インナーシェルが架橋ゴム重合体(i)で、アウターシェルが熱可塑性重合体(ii)である3層重合体粒子、
センターコアがある1種の架橋ゴム重合体(i)で、インナーシェルが別の1種の架橋ゴム重合体(i)で、アウターシェルが熱可塑性重合体(ii)である3層重合体粒子、
センターコアが架橋ゴム重合体(i)で、インナーシェルが重合体(iii)で、アウターシェルが熱可塑性重合体(ii)である3層重合体粒子、
センターコアが架橋ゴム重合体(i)で、内側インナーシェルが重合体(iii)で、外側インナーシェルが架橋ゴム重合体(i)で、アウターシェルが熱可塑性重合体(ii)である4層重合体粒子などを挙げることができる。
これらの中で、センターコアが重合体(iii)で、インナーシェルが架橋ゴム重合体(i)で、アウターシェルが熱可塑性重合体(ii)である3層重合体粒子が好ましい。
係る3層重合体粒子は、センターコアの重合体(iii)が、メタクリル酸メチル80〜99.95質量%、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単量体0〜19.95質量%および架橋性単量体0.05〜2質量%の共重合体であり、インナーシェルの架橋ゴム重合体(i)が、炭素原子数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単量体80〜98質量%、芳香族ビニル単量体1〜19質量%および架橋性単量体1〜5質量%の共重合体であり、且つアウターシェルが熱可塑性重合体(ii)がメタクリル酸メチル80〜100質量%および炭素原子数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単量体0〜20質量%の共重合体であるものがより好ましい。
アクリル系多層重合体粒子の透明性の観点から、隣り合う層の屈折率の差が、好ましくは0.005未満、より好ましくは0.004未満、さらに好ましくは0.003未満になるように各層に含有される重合体を選択することが好ましい。
アクリル系多層重合体粒子におけるアウターシェル部の割合は、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは15〜50質量%、さらに好ましくは20〜40質量%である。コア部において、架橋ゴム重合体(i)を含有してなる層が占める割合は、好ましくは20〜100質量%、より好ましくは30〜70質量%である。
本発明に用いられる架橋ゴム粒子の体積基準平均粒子径は、好ましくは0.02〜1μm、より好ましくは0.05〜0.5μm、さらに好ましくは0.1〜0.3μmである。
このような体積基準平均粒子径を有する架橋ゴム粒子成分を用いると、成形品の外観上の欠点を著しく低減できる。なお、本明細書における体積基準平均粒子径は、光散乱光法によって測定される粒径分布データに基いて算出される値である。
架橋ゴム粒子は、どのような製造方法によって得られるものであってもよい。粒子径制御、多層構造の製造しやすさなどの観点から、乳化重合法、またはシード乳化重合法が好適である。乳化重合法は、所定の単量体を乳化させて重合することによって重合体粒子を含むエマルジョンを製造できる方法である。シード乳化重合法は、所定の単量体を乳化させ重合することによってシード粒子を得、該シード粒子の存在下に別の所定の単量体を乳化させ重合することによって、シード粒子とそれを略同心円状に被覆するシェル重合体とを有するコアシェル重合体粒子を含むエマルジョンを製造できる方法である。コアシェル重合体粒子の存在下にさらに別の所定の単量体を乳化させ重合することを所望の回数で繰り返すによって、シード粒子とそれを略同心円状に被覆する複数のシェル重合体とを有するコアシェル多層重合体粒子を含むエマルジョンを製造できる。
乳化重合法に用いられる乳化剤としては、例えば、アニオン系乳化剤であるジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジラウリルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩; ノニオン系乳化剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなど; ノニオン・アニオン系乳化剤であるポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウムなどのアルキルエーテルカルボン酸塩;を挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、ノニオン系乳化剤およびノニオン・アニオン系乳化剤の例示化合物におけるエチレンオキシド単位の平均繰返し単位数は、乳化剤の発泡性が極端に大きくならないようにするために、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。
乳化重合に用いられる重合開始剤は特に限定されない。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系開始剤;パースルホキシレート/有機過酸化物、過硫酸塩/亜硫酸塩などのレドックス系開始剤を挙げることができる。
乳化重合によって得られるエマルジョンからの架橋ゴム粒子の分離取得は、塩析凝固法、凍結凝固法、噴霧乾燥法などの公知の方法によって行うことができる。これらの中でも、架橋ゴム粒子に含まれる不純物を水洗により容易に除去できる点から、塩析凝固法および凍結凝固法が好ましく、凍結凝固法がより好ましい。凍結凝固法においては凝集剤を用いないので耐水性に優れたアクリル系樹脂フィルムが得られやすい。
なお、凝固工程前に、目開き50μm以下の金網などでエマルジョンを濾過すると、エマルジョンに混入した異物を除去することができるので、好ましい。
架橋ゴム粒子とメタクリル樹脂(A)との溶融混練において架橋ゴム粒子を均一に分散させ易いという観点から、架橋ゴム粒子を1000μm以下の凝集体で取り出すことが好ましく、500μm以下の凝集体で取り出すことがより好ましい。なお、架橋ゴム粒子凝集体の形態は特に限定されず、例えば、シェル部で相互に融着した状態のペレット状でもよいし、パウダー状やグラニュー状でもよい。
本発明のメタクリル樹脂組成物には、架橋ゴム粒子をメタクリル樹脂組成物に含有させたときに、架橋ゴム粒子同士が膠着などで凝集せず、粒子ひとつひとつが均一に分散するようにするために、分散補助粒子を添加することができる。分散補助粒子としてはメタクリル系樹脂粒子などを挙げることができる。分散補助粒子は、架橋ゴム粒子の平均粒子径よりも小さい平均粒子径を有するものであることが好ましい。具体的に、分散補助粒子の体積基準平均粒子径は、好ましくは0.04〜0.12μm、より好ましくは0.05〜0.1μmである。
分散効果などの観点から、分散補助粒子の量は架橋ゴム粒子に対する質量比([分散補助粒子]/[架橋ゴム粒子])で、好ましくは0/100〜60/40、より好ましくは10/90〜50/50、さらに好ましくは20/80〜40/60である。
本発明のメタクリル樹脂組成物(B)には、メタクリル樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂及び架橋ゴム以外に、他の重合体が含有されていてもよい。
他の重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリノルボルネンなどのポリオレフィン樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂などのスチレン系樹脂;メチルメタクリレート系重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマーなどのポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン変性樹脂;アクリルゴム、シリコーンゴム、アクリル系ブロック共重合体、;SEPS、SEBS、SISなどのスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDMなどのオレフィン系ゴムなどを挙げることができる。本発明のメタクリル樹脂組成物(B)に含有し得る他の重合体の量は好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。
本発明に係るメタクリル樹脂組成物(B)には、紫外線吸収剤のほかに、フィラー、酸化防止剤、熱劣化防止剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、蛍光体などの通常の樹脂に配合されることがある添加剤が含まれていてもよい。
フィラーとしては、炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。本発明のメタクリル樹脂組成物に含有し得るフィラーの量は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは0質量%である。
酸化防止剤は、酸素存在下においてそれ単体で樹脂の酸化劣化防止に効果を有するものである。例えば、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などを挙げることができる。これらの酸化防止剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。中でも、着色による光学特性の劣化防止効果の観点から、リン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤との併用がより好ましい。
リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用する場合、リン系酸化防止剤の使用量:ヒンダードフェノール系酸化防止剤の使用量は、質量比で、1:5〜2:1が好ましく、1:2〜1:1がより好ましい。
リン系酸化防止剤としては、2,2−メチレンビス(4,6−ジt−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(ADEKA社製;商品名:アデカスタブHP−10)、トリス(2,4−ジt−ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製;商品名:IRGAFOS168)、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサー3,9−ジホスファスピロ〔5.5〕ウンデカン(ADEKA社製;商品名:アデカスタブPEP−36)などが好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(BASF社製;商品名IRGANO01010)、オクタデシル−3−(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASF社製;商品名IRGANO01076)などが好ましい。
熱劣化防止剤は、実質上無酸素の状態下で高熱にさらされたときに生じるポリマーラジカルを捕捉することによって樹脂の熱劣化を防止できるものである。
該熱劣化防止剤としては、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGM)、2,4−ジt−アミル−6−(3’,5’−ジt−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGS)などが好ましい。
光安定剤は、主に光による酸化で生成するラジカルを捕捉する機能を有すると言われる化合物である。好適な光安定剤としては、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格を持つ化合物などのヒンダードアミン類を挙げることができる。
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアロアミド酸、メチレンビスステアロアミド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、パラフィンワックス、ケトンワックス、オクチルアルコール、硬化油などを挙げることができる。
離型剤としては、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステルなどを挙げることができる。本発明においては、離型剤として、高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用することが好ましい。高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用する場合、その割合は特に制限されないが、高級アルコール類の使用量:グリセリン脂肪酸モノエステルの使用量は、質量比で、2.5:1〜3.5:1が好ましく、2.8:1〜3.2:1がより好ましい。
高分子加工助剤は、平均重合度が3,000〜40,000の高分子化合物であり、好ましくはメタクリル酸メチル単位60質量%以上およびこれと共重合可能なビニル系単量体単位40質量%以下からなるものである。なお、高分子加工助剤の平均重合度は自動希釈型毛細管粘度計(ウベローデ型)を用い、クロロホルムを溶媒として20℃で測定して、PMMA換算重合度で求めることができる。
高分子加工助剤としては、通常、乳化重合法によって製造できる、0.05〜0.5μmの粒子径を有する重合体粒子を用いることができる。該重合体粒子は、単一組成比および単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよいし、また組成比または極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。この中でも、内層に低い極限粘度を有する重合体層を有し、外層に5dl/g以上の高い極限粘度を有する重合体層を有する2層構造の粒子が好ましいものとして挙げられる。高分子加工助剤は、極限粘度が3〜6dl/gであることが好ましい。極限粘度が小さすぎると成形性の改善効果が低い傾向がある。極限粘度が大きすぎるとメタクリル樹脂組成物の成形加工性の低下を招く傾向がある。具体的には、三菱レイヨン社製メタブレン−Pシリーズやダウ・ケミカル社製パラロイドシリーズを挙げることができる。
有機色素としては、紫外線を可視光線に変換する機能を有する化合物が好ましく用いられる。
光拡散剤や艶消し剤としては、ガラス微粒子、ポリシロキサン系架橋微粒子、架橋ポリマー微粒子、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどを挙げることができる。
蛍光体としては、蛍光顔料、蛍光染料、蛍光白色染料、蛍光増白剤、蛍光漂白剤などを挙げることができる。
本発明のメタクリル樹脂組成物(B)に含有し得る、酸化防止剤、熱劣化防止剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、および蛍光体の合計量は、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。
本発明のメタクリル樹脂組成物(B)は、本発明のメタクリル樹脂(A)を50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましい。
本発明のメタクリル樹脂組成物(B)は、重量平均分子量が好ましくは50000〜150000、より好ましくは60000〜120000、さらに好ましくは70000〜100000である。
本発明のメタクリル樹脂組成物(B)は、Mwと数平均分子量(以下、「Mn」と称する)の比が、好ましくは1.2〜5.0、より好ましくは1.5〜3.0である。分子量分布が1.2以上であることでメタクリル樹脂組成物の流動性が向上し、得られるフィルムは表面平滑性に優れる傾向となり、5.0以下であることで得られるフィルムは耐衝撃性および靭性に優れる傾向となる。
本発明のメタクリル樹脂組成物(B)は、JIS K7210に準拠して、230℃、3.8kg荷重の条件において測定される、メルトフローレートが、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.5〜30g/10分、さらに好ましくは1.0〜20g/10分、最も好ましくは1.2〜5g/10分である。
本発明のメタクリル樹脂組成物(B)のガラス転移温度は、好ましくは118℃以上、より好ましくは119℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。該メタクリル樹脂組成物のガラス転移温度の上限は通常125℃以下あり、好ましくは124℃以下、より好ましくは123℃以下である。
本発明のメタクリル樹脂組成物(B)の酢酸換算の酸価は、耐熱分解性が良好であるという観点から40ppm以下が好ましく、30ppm以下がより好ましく、20ppm以下がさらに好ましい。
酸価の評価は、JIS0070:1992の酸価をKOH換算ではなく酢酸量に換算した後、メタクリル樹脂組成物(B)の重量に対して含有している酢酸量として算出した値である。
本発明のメタクリル樹脂組成物(B)の空気雰囲気、温度290℃一定、時間5分で測定した熱重量保持率は、耐熱分解性の観点から、92%以上が好ましく、93%以上がより好ましく94%以上が最も好ましい。
本発明のメタクリル樹脂(A)またはメタクリル樹脂組成物(B)は、3.2mm厚さのヘイズが、3.0%以下が好ましく、2.0%以下がより好ましく、1.5%以下がさらに好ましい。
本発明のメタクリル樹脂(A)またはメタクリル樹脂組成物(B)は、保存、運搬、または成形時の利便性を高めるために、ペレットなどの形態にすることができる。
本発明のメタクリル樹脂(A)またはメタクリル樹脂組成物(B)は公知の方法により、高分子反応させることができる。高分子反応としては、特開2010−254742号や特開2010−261025号に記載のイミド化反応や、特開2012−201831号に記載のグラフト化反応が挙げられる。
本発明のメタクリル樹脂(A)またはメタクリル樹脂組成物(B)は公知の成形方法によって成形体とすることができる。成形方法としては、例えば、Tダイ法(ラミネート法、共押出法など)、インフレーション法(共押出法など)、圧縮成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、真空成形法、射出成形法(インサート法、二色法、プレス法、コアバック法、サンドイッチ法など)などの溶融成形法ならびに溶液キャスト法などを挙げることができる。
これらの成型方法では、一般に樹脂を成形するために成形型が用いられる。例えば、シート成形用ロール、フィルム成形製膜用ロール、圧縮成形用金型、ブロー成形用金型、カレンダーロール、真空成形用金型、射出成形用金型、キャスト重合用鋳型反応釜などの成形型を挙げることができる。成形型は金属製であることが多いが、金属以外の、例えばゴムロール、強化ガラスなども存在する。
本発明の成形体の用途としては、例えば、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板などの看板部品;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイなどのディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリアなどの照明部品;ペンダント、ミラーなどのインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根などの建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバーなどの輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機用ディスプレイカバーなどの電子機器部品;保育器、レントゲン部品などの医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、観察窓などの機器関係部品;ディスプレイ装置のフロントライト用導光板およびフィルム、バックライト用導光板及びフィルム、液晶保護板、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面板、拡散板、反射材などの光学関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音壁などの交通関係部品;自動車内装用表面材、携帯電話の表面材、マーキングフィルムなどのフィルム部材;洗濯機の天蓋材やコントロールパネル、炊飯ジャーの天面パネルなどの家電製品用部材;その他、温室、大型水槽、箱水槽、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスクなどが挙げられる。
本発明の成形体は、耐候性に優れ、また紫外線吸収剤のブリードアウトが抑制される点から、例えば、各種カバー、各種端子板、プリント配線板、スピーカー、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、また、映像・光記録・光通信・情報機器関連部品としてカメラ、VTR、プロジェクションTV等のファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ、各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LD等)基板の保護フィルム、光スイッチ、光コネクター、液晶ディスプレイ、液晶ディスプレイ用導光フィルム・シート、フラットパネルディスプレイ、フラットパネルディスプレイ用導光フィルム・シート、プラズマディスプレイ、プラズマディスプレイ用導光フィルム・シート、電子ペーパー用導光フィルム・シート、位相差フィルム・シート、偏光フィルム・シート、偏光板保護フィルム・シート、偏光子保護フィルム・シート、波長板、光拡散フィルム・シート、プリズムフィルム・シート、反射フィルム・シート、反射防止フィルム・シート、視野角拡大フィルム・シート、防眩フィルム・シート、輝度向上フィルム・シート、液晶やエレクトロルミネッセンス用途の表示素子基板、タッチパネル、タッチパネル用導光フィルム・シート、各種前面板と各種モジュール間のスペーサーなど、各種の光学用途へ特に好適に適用可能である。
具体的には、例えば、携帯電話、デジタル情報端末、ポケットベル、ナビゲーション、車載用液晶ディスプレイ、液晶モニター、調光パネル、OA機器用ディスプレイ、AV機器用ディスプレイ等の各種液晶表示素子やエレクトロルミネッセンス表示素子あるいはタッチパネルなどに用いることができる。また、耐候性に優れている点から、例えば、建築用内・外装用部材、カーテンウォール、屋根用部材、屋根材、窓用部材、雨どい、エクステリア類、壁材、床材、造作材、道路建設用部材、再帰反射フィルム・シート、農業用フィルム・シート、照明カバー、看板、透光性遮音壁など、公知の建材用途へも特に好適に適用可能である。
本発明の成形体は、太陽電池用途として太陽電池表面保護フィルム、太陽電池用風刺フィルム、太陽電池用裏面保護フィルム、太陽電池用基盤フィルム、ガスバリアフィルム基材、ガスバリアフィルム用保護フィルムなどへも適用可能である。
成形体の一形態である本発明のフィルムは、その製法によって特に限定されない。本発明のフィルムは、例えば、前記メタクリル樹脂(A)またはメタクリル樹脂組成物(B)を、溶液キャスト法、溶融流延法、押出成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法などの公知の方法にて製膜することによって得ることができる。これらのうち、押出成形法が好ましい。押出成形法によれば、改善された靭性を持ち、取扱い性に優れ、靭性と表面硬度および剛性とのバランスに優れたフィルムを得ることができる。押出機から吐出されるメタクリル樹脂(A)またはメタクリル樹脂組成物(B)の温度は好ましくは160〜270℃、より好ましくは220〜260℃に設定する。
これら公知の方法にて製膜する場合、前記メタクリル樹脂(A)またはメタクリル樹脂組成物(B)をダイスプレートに供給する前に、ポリマーフィルターで濾過を行うことが好ましい。ポリマーフィルターを押出成形機先端部に備え付けることで異物を効果的に除去することができる。ポリマーフィルターは、濾過精度が、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下、さらに好ましくは2μm以上3μm以下である。ポリマーフィルターとしては、リーフディスクタイプやキャンドルタイプなど公知のものを用いることができる。熱分解し易いメタクリル樹脂の場合、ポリマーフィルターで濾過する際の発熱により、熱分解が起こり、発泡しフィルムの品位が損なわれる場合がある。
押出成形法のうち、良好な表面平滑性、良好な鏡面光沢、低ヘイズのフィルムが得られるという観点から、前記メタクリル樹脂(A)またはメタクリル樹脂組成物(B)を溶融状態でTダイから押出し、次いでそれを二つ以上の鏡面ロールまたは鏡面ベルトで挟持して成形することを含む方法が好ましい。鏡面ロールまたは鏡面ベルトは、金属製であることが好ましい。一対の鏡面ロールまたは鏡面ベルトの間の線圧は、好ましくは2N/mm以上、より好ましくは10N/mm以上、さらにより好ましくは30N/mm以上である。
また、鏡面ロールまたは鏡面ベルトの表面温度は共に130℃以下であることが好ましい。また、一対の鏡面ロール若しくは鏡面ベルトは、少なくとも一方の表面温度が60℃以上であることが好ましい。このような表面温度に設定すると、押出機から吐出される前記メタクリル樹脂(A)またはメタクリル樹脂組成物(B)を自然放冷よりも速い速度で冷却することができ、表面平滑性に優れ且つヘイズの低いフィルムを製造し易い。
本発明のフィルムは延伸処理を施したものであってもよい。延伸処理によって、機械的強度が高まり、ひび割れし難いフィルムを得ることができる。延伸方法は特に限定されず、一軸延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、チュブラー延伸法などを挙げることができる。延伸時の温度は、均一に延伸でき、高い強度のフィルムが得られるという観点から、100〜200℃が好ましく、120℃〜160℃がより好ましい。延伸は、通常長さ基準で100〜5000%/分で行われる。延伸は、面積比で1.5〜8倍になるように行うことが好ましい。延伸の後、熱固定を行うことによって、熱収縮の少ないフィルムを得ることができる。
本発明のフィルムの厚さは、特に制限されないが、光学フィルムとして用いる場合、その厚さは、好ましくは1〜300μm、より好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜40μmである。
本発明のフィルムは、厚さ40μmにおけるヘイズが、好ましくは0.2%以下、より好ましくは0.1%以下である。これにより、表面光沢や透明性に優れる。また、液晶保護フィルムや導光フィルムなどの光学用途においては、光源の利用効率が高まり好ましい。さらに、表面賦形を行う際の賦形精度に優れるため好ましい。
本発明のフィルムの表面に機能層を設けてもよい。機能層としては、ハードコート層、アンチグレア層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層、防眩層、静電気防止層、防汚層、微粒子などの易滑性層等が挙げられる。
本発明のフィルムは、耐熱分解性が高く、成形時の発泡が少なく、耐熱性を有するので、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、液晶保護板、携帯型情報端末の表面材、携帯型情報端末の表示窓保護フィルム、導光フィルム、銀ナノワイヤーやカーボンナノチューブを表面に塗布した透明導電フィルム、各種ディスプレイの前面板用途などに好適である。特に本発明のフィルムは位相差を小さくできるため、偏光子保護フィルムに好適である。
本発明のフィルムは、透明性、耐熱性を有しているので、光学用途以外の用途として、IRカットフィルムや、防犯フィルム、飛散防止フィルム、加飾フィルム、金属加飾フィルム、太陽電池のバックシート、フレキシブル太陽電池用フロントシート、シュリンクフィルム、インモールドラベル用フィルム、ガスバリアフィルム基材用フィルムに使用することができる。
本発明の偏光板は、本発明の偏光子保護フィルムを少なくとも1枚含むものである。好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂から形成される偏光子と本発明の偏光子保護フィルムが接着剤層を介して積層されてなるものである。
本発明の好ましい一実施形態に係る偏光板は、偏光子11の一方の面に、接着剤層12、および本発明の偏光子保護フィルム14がこの順で積層され、偏光子11のもう一方の面に、接着剤層15、および光学フィルム16がこの順で積層されてなるものである。接着剤層12と接する本発明の偏光子保護フィルム14の表面には、図1に示すように、易接着層13を設けても良い。
上記ポリビニルアルコール系樹脂から形成される偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性物質(代表的には、ヨウ素、二色性染料)で染色して一軸延伸することによって得られる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂を任意の適切な方法(例えば、樹脂を水または有機溶媒に溶解した溶液を流延成膜する流延法、キャスト法、押出法)にて製膜することによって得ることができる。
該ポリビニルアルコール系樹脂は、重合度が、好ましくは100〜5000、さらに好ましくは1400〜4000である。また、偏光子に用いられるポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚さは、偏光板が用いられるLCDの目的や用途に応じて適宜設定され得るが、代表的には5〜80μmである。
本発明の偏光板に設けることができる接着剤層は光学的に透明であれば特に制限されない。接着剤層を構成する接着剤として、例えば、水系接着剤、溶剤系接着剤、ホットメルト系接着剤、UV硬化型接着剤などを用いることができる。これらのうち、水系接着剤およびUV硬化型接着剤が好適である。
水系接着剤としては、特に限定されないが、例えば、ビニルポリマー系、ゼラチン系、ビニル系ラテックス系、ポリウレタン系、イソシアネート系、ポリエステル系、エポキシ系等を例示できる。このような水系接着剤には、必要に応じて、架橋剤や他の添加剤、酸等の触媒も配合することができる。前記水系接着剤としては、ビニルポリマーを含有する接着剤などを用いることが好ましく、ビニルポリマーとしては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。またポリビニルアルコール系樹脂には、ホウ酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミン、シュウ酸などの水溶性架橋剤を含有することができる。特に偏光子としてポリビニルアルコール系のポリマーフィルムを用いる場合には、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する接着剤を用いることが、接着性の点から好ましい。さらには、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂を含む接着剤が耐久性を向上させる点からより好ましい。前記水系接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5〜60質量%の固形分を含有してなる。
また前記接着剤には、金属化合物フィラーを含有させることができる。金属化合物フィラーにより、接着剤層の流動性を制御することができ、膜厚を安定化して、良好な外観を有し、面内が均一で接着性のバラツキのない偏光板が得られる。
接着剤層の形成方法は特に制限されない。例えば、上記接着剤を対象物に塗布し、次いで加熱または乾燥することによって形成できる。接着剤の塗布は本発明の偏光子保護フィルムまたは光学フィルムに対して行ってもよいし、偏光子に対して行ってもよい。接着剤層を形成した後、偏光子保護フィルム若しくは光学フィルムと偏光子とを押し合わせることによって両者を積層することができる。積層においてはロールプレス機や平板プレス機などを用いることができる。加熱乾燥温度、乾燥時間は接着剤の種類に応じて適宜決定される。
接着剤層の厚さは、乾燥状態において、好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.03〜5μmである。
本発明の偏光板に施すことができる易接着処理は、偏光子保護フィルムと偏光子とが接する面の接着性を向上させるものである。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、低圧UV処理等の表面処理を挙げることができる。
また、易接着層を設けることも可能である。易接着層としては、例えば、反応性官能基を有するシリコーン層を挙げることができる。反応性官能基を有するシリコーン層の材料は、特に制限されないが、例えば、イソシアネート基含有のアルコキシシラノール類、アミノ基含有アルコキシシラノール類、メルカプト基含有アルコキシシラノール類、カルボキシ含有アルコキシシラノール類、エポキシ基含有アルコキシシラノール類、ビニル型不飽和基含有アルコキシシラノール類、ハロゲン基含有アルコキシラノール類、イソシアネート基含有アルコキシシラノール類を挙げることができる。これらのうち、アミノ系シラノールが好ましい。シラノールを効率よく反応させるためのチタン系触媒や錫系触媒を上記シラノールに添加することにより、接着力を強固にすることができる。また上記反応性官能基を有するシリコーンに他の添加剤を加えてもよい。他の添加剤としては、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン-フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂などの粘着付与剤;紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤等を挙げることができる。また、易接着層として、セルロースアセテートブチレート樹脂をケン化させたものからなる層も挙げられる。
上記易接着層は公知の技術により塗工、乾燥して形成される。易接着層の厚さは、乾燥状態において、好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは10〜50nmである。塗工の際、易接着層形成用薬液を溶剤で希釈してもよい。希釈溶剤は特に制限されないが、アルコール類を挙げることができる。希釈濃度は特に制限されないが、好ましくは1〜5質量%、より好ましくは1〜3質量%である。
光学フィルム16は本発明の偏光子保護フィルムであってもよいし、別の任意の適切な光学フィルムであってもよい。用いられる光学フィルムは、特に制限されず、例えば、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、メタクリル樹脂等からなるフィルムを挙げることができる。
セルロース樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネート等を挙げることができる。これらのなかでも、セルローストリアセテートが特に好ましい。セルローストリアセテートは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。セルローストリアセテートの市販品の例としては、富士フイルム社製の商品名「UV−50」、「UV−80」、「SH−80」、「TD−80U」、「TD−TAC」、「UZ−TAC」や、コニカミノルタ社製の「KCシリーズ」等を挙げることができる。
環状ポリオレフィン樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂を挙げることができる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびに、それらの水素化物などを挙げることができる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーを挙げることができる。
環状ポリオレフィン樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、ポリプラスチックス株式会社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品名「APEL」を挙げることができる。
光学フィルム16を構成するメタクリル樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切なメタクリル樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリメタクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)を挙げることができる。
光学フィルム16を構成するメタクリル樹脂の具体例として、例えば、三菱レイヨン株式会社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2013−033237やWO2013/005634号公報に記載のメタクリル酸メチルとマレイミド系単量体を共重合したアクリル樹脂、WO2005/108438号公報に記載の分子内に環構造を有するアクリル樹脂、特開2009−197151号公報に記載の分子内に環構造を有するメタクリル樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高ガラス転移温度(Tg)メタクリル樹脂を挙げることができる。
光学フィルム16を構成するメタクリル樹脂として、ラクトン環構造を有するメタクリル樹脂を用いることもできる。高い耐熱性、高い透明性、二軸延伸することにより高い機械的強度を有するからである。
ラクトン環構造を有するメタクリル樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有するメタクリル樹脂を挙げることができる。
本発明の偏光板は、画像表示装置に使用することができる。画像表示装置の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)のような自発光型表示装置、液晶表示装置を挙げることができる。液晶表示装置は、液晶セルと、当該液晶セルの少なくとも片側に配置された上記偏光板とを有する。
この際、本発明の偏光子保護フィルムは、上記偏光板の少なくとも液晶セル側に設けられることが好ましい。
本発明のメタクリル樹脂(A)またはメタクリル樹脂組成物(B)を原料に用いて、変性樹脂を合成してもよい。変性樹脂としては、主鎖にグルタルイミド単位を有するイミド樹脂が挙げられる。イミド樹脂は、メタクリル樹脂(A)またはメタクリル樹脂組成物(B)を、公知の技術を用いてイミド化することにより合成することができる。
イミド化方法の具体例としては、例えば、特開2008−273140 、特開2008−274187記載の方法など公知の方法をあげることができる。
以下、実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、物性値等の測定は以下の方法によって実施した。
(重合転化率)
島津製作所社製ガスクロマトグラフ GC−14Aに、カラムとしてGL Sciences Inc.製 Inert CAP 1(df=0.4μm、0.25mmI.D.×60m)を繋ぎ、インジェクション温度を180℃に、検出器温度を180℃に、カラム温度を60℃(5分間保持)から昇温速度10℃/分で200℃まで昇温して、10分間保持する条件に設定して、測定を行い、この結果に基づいて重合転化率を算出した。
(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)にて下記の条件でクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンの分子量に換算した値を算出した。ベースラインはGPCチャートの高分子量側のピークの傾きが保持時間の早い方から見てゼロからプラスに変化する点と、低分子量側のピークの傾きが保持時間の早い方から見てマイナスからゼロに変化する点を結んだ線とした。
GPC装置:東ソー株式会社製、HLC−8320
検出器:示差屈折率検出器
カラム:東ソー株式会社製のTSKgel SuperMultipore HZM−Mの2本とSuperHZ4000を直列に繋いだものを用いた。
溶離剤: テトラヒドロフラン
溶離剤流量: 0.35ml/分
カラム温度: 40℃
検量線:標準ポリスチレン10点のデータを用いて作成
(三連子表示のシンジオタクティシティ(rr))
メタクリル樹脂の1H−NMRスペクトルを、核磁気共鳴装置(Bruker社製 ULTRA SHIELD 400 PLUS)を用いて、溶媒として重水素化クロロホルムを用い、室温、積算回数64回の条件にて、測定した。そのスペクトルからTMSを0ppmとした際の0.6〜0.95ppmの領域の面積(X)と、0.6〜1.35ppmの領域の面積(Y)とを計測し、次いで、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)を式:(X/Y)×100にて算出した。
(残存単量体)
島津製作所社製ガスクロマトグラフ GC−14Aに、カラムとしてGL Sciences Inc.製 INERT CAP 1(df=0.4μm、0.25mmI.D.×60m)を繋ぎ、下記分析条件にて分析を行い、それに基づいて算出した。含有揮発分については、リテンションタイムに基づき種類ごとに測定可能である。
<分析条件>
injection温度:250℃
detector温度:250℃
カラム温度条件:
初期温度 :60℃
初期温度保持時間:5分間
昇温速度 :10℃/分
最高温度 :250℃
最高温度保持時間:10分間
(ガラス転移温度Tg)
メタクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂およびメタクリル樹脂組成物を、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量測定装置(島津製作所製、DSC−50(品番))を用いて、230℃まで1回目の昇温をし、次いで室温まで冷却し、その後、室温から230℃までを10℃/分で2回目の昇温をさせる条件にてDSC曲線を測定した。2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を本発明におけるガラス転移温度とした。
(MFR)
樹脂試料について、ISO1133に準拠して、温度230℃、荷重37.3Nでメルトフローレート(MFR)を測定した。
(熱重量保持率による耐熱分解性評価)
樹脂試料について、熱重量測定装置(島津製作所製、TGA−50(品番))を用いて、空気雰囲気下、乾燥空気の流速50ml/分にて、50℃から290℃まで20℃/分で昇温させた後、空気雰囲気化のまま290℃にて20分間保持する条件にて熱重量減少を測定した。50℃の重量(X1)を基準(保持率100%)にして、290℃にて5分間保持した時の重量(X2)をもとに、下記式で耐熱分解性を評価した。 重量保持率(%)=X2/X1×100(%)
(酢酸換算の酸価) 樹脂試料をクロロホルムに溶解させ、JIS−K0070−1992に記載の方法に準じて、水酸化カリウム水溶液で滴定することにより測定した酸価(mg/g)を測定し、クロロホルムのみの酸価を引いた数字を酸価(mg/g)とした。
下記式(I)を用いて、得られた酸価を酢酸換算に換算した値を用いた。
酢酸換算の酸価(ppm)=(酸価/1000)×(60/56)×1000000 (I)
なお、式(I)における数値の意味は以下の通りである。
1000 :ミリク゛ラムをク゛ラムに変換
60 :酢酸の分子量
56 :水酸化カリウムの分子量
1000000:ppm単位に換算
(実施例1−1)(メタクリル樹脂〔A−1〕の製造)
攪拌機および採取管が取り付けられたオートクレーブ内を窒素で置換した。これに、精製されたメタクリル酸メチル100質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル(水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.0065質量部、およびn−オクチルメルカプタン0.290質量部を入れ、撹拌して、原料液を得た。かかる原料液中に窒素を送り込み、原料液中の溶存酸素を除去した。
オートクレーブと配管で接続された槽型反応器に容量の2/3まで原料液を入れた。温度を120℃に維持して先ずバッチ方式で重合反応を開始させた。重合転化率が55質量%になったところで、平均滞留時間120分となる流量で、原料液をオートクレーブから槽型反応器に供給し、且つ原料液の供給流量に相当する流量で、反応液を槽型反応器から抜き出して、温度120℃に維持し、連続流通方式の重合反応に切り替えた。切り替え後、定常状態における重合転化率は45質量%であった。
定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、平均滞留時間2分間となる流量で内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入し、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去して、溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂を内温230℃の二軸押出機に供給してストランド状に吐出し、ペレタイザーでカットして、ペレット状の、Mwが83000で、分子量分布が1.87で、シンジオタクティシティ(rr)が55%で、ガラス転移温度が121℃で、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が100質量%であるメタクリル樹脂〔A−1〕を得た。メタクリル樹脂〔A−1〕の酸価は16ppm、重量保持率は88%であった。
(比較例1−1)(メタクリル樹脂〔X−1〕の製造)
攪拌機および採取管が取り付けられたオートクレーブ内を窒素で置換した。これに、精製されたメタクリル酸メチル100質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル(水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.0080質量部、およびn−オクチルメルカプタン0.22質量部を入れ、撹拌して、原料液を得た。かかる原料液中に窒素を送り込み、原料液中の溶存酸素を除去した。
オートクレーブと配管で接続された槽型反応器に容量の2/3まで原料液を入れた。温度を180℃に維持して先ずバッチ方式で重合反応を開始させた。重合転化率が55質量%になったところで、平均滞留時間120分となる流量で、原料液をオートクレーブから槽型反応器に供給し、且つ原料液の供給流量に相当する流量で、反応液を槽型反応器から抜き出して、温度180℃に維持し、連続流通方式の重合反応に切り替えた。切り替え後、定常状態における重合転化率は55質量%であった。
定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、平均滞留時間2分間となる流量で内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入し、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去して、溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂を内温230℃の二軸押出機に供給してストランド状に吐出し、ペレタイザーでカットして、ペレット状の、Mwが85000で、分子量分布が1.91で、シンジオタクティシティ(rr)が46%で、ガラス転移温度が118℃で、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が100質量%であるメタクリル樹脂〔X−1〕を得た。メタクリル樹脂〔X−1〕の酸価は51ppmであった。
(比較例1−2)(メタクリル樹脂〔X−2〕の製造)
攪拌機および採取管が取り付けられたオートクレーブ内を窒素で置換した。これに、精製されたメタクリル酸メチル100質量部、アクリル酸メチル8質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル(水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.0070質量部、およびn−オクチルメルカプタン0.13質量部を入れ、撹拌して、原料液を得た。かかる原料液中に窒素を送り込み、原料液中の溶存酸素を除去した。
オートクレーブと配管で接続された槽型反応器に容量の2/3まで原料液を入れた。温度を150℃に維持して先ずバッチ方式で重合反応を開始させた。重合転化率が55質量%になったところで、平均滞留時間120分となる流量で、原料液をオートクレーブから槽型反応器に供給し、且つ原料液の供給流量に相当する流量で、反応液を槽型反応器から抜き出して、温度150℃に維持し、連続流通方式の重合反応に切り替えた。切り替え後、定常状態における重合転化率は50質量%であった。
定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、平均滞留時間2分間となる流量で内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入し、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去して、溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂を内温230℃の二軸押出機に供給してストランド状に吐出し、ペレタイザーでカットして、ペレット状の、Mwが130000で、分子量分布が1.92で、シンジオタクティシティ(rr)が46%で、ガラス転移温度が114℃で、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が94質量%であるメタクリル樹脂〔X−2〕を得た。メタクリル樹脂〔X−2〕の酸価は140ppmであった。
(比較例1−3)(メタクリル樹脂〔X−3〕の製造)
撹拌翼と三方コックが取り付けられた5Lのガラス製反応容器内を窒素で置換した。これに、室温下にて、トルエン1600質量部、1,2−ジメトキシエタン80質量部、濃度0.45Mのイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムのトルエン溶液73.3質量部、および濃度1.3Mのsec−ブチルリチウムの溶液(溶媒:シクロヘキサン95%、n−ヘキサン5%)8.44質量部を仕込んだ。撹拌しながら、これに、15℃にて、蒸留精製したメタクリル酸メチル550質量部を30分間かけて滴下した。滴下終了後、15℃で90分間撹拌した。溶液の色が黄色から無色に変わった。この時点におけるメタクリル酸メチルの重合転化率は100%であった。
得られた溶液にトルエン1500質量部を加えて希釈した。次いで、希釈液をメタノール100000質量部に注ぎ入れ、沈澱物を得た。得られた沈殿物を80℃、140Paにて24時間乾燥して、Mwが70000で、分子量分布が1.06で、シンジオタクティシティ(rr)が75%で、ガラス転移温度が131℃で、且つメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が100質量%であるメタクリル樹脂〔X−3〕を得た。メタクリル樹脂〔X−3〕の酸価は46ppm、重量保持率は40%であった。
(比較例1−4)(メタクリル樹脂〔X−4〕の製造)
コンデンサー、温度計および撹拌機を備えたグラスライニングを施した容量100Lの反応槽に、イオン交換水48000質量部を投入し、次いで界面活性剤(花王株式会社製「ペレックスSS−H」)252質量部を投入して溶解させた。反応槽を70℃に昇温した。その後、これに、2%過硫酸カリウム水溶液160質量部を添加し、次いでメタクリル酸メチル3040質量部、およびn−オクチルメルカプタン15.2質量部からなる混合物を一括添加して乳化重合を開始させた。重合反応による発熱が無くなった時点から30分間撹拌を続けた。
その後、2%過硫酸カリウム水溶液160質量部を添加し、次いでメタクリル酸メチル27400質量部、およびn−オクチルメルカプタン98質量部からなる混合物を2時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、60分間放置して乳化重合を行った。得られたエマルジョンを室温まで冷やした。このようにして、体積基準平均粒径0.12μm、極限粘度0.44g/dlのメタクリル樹脂を40%含有するエマルジョンを得た。
得られたエマルジョンを−20℃で2時間かけて凍結させた。凍結したエマルジョンをその2倍量の80℃の温水に投入して氷解させてスラリーを得た。該スラリーを80℃にて20分間保持し、次いで脱水し、70℃で乾燥して、メタクリル樹脂〔X−4〕を得た。
実施例1−1、比較例1−1〜1−4で得られたメタクリル樹脂〔A−1〕、〔X−1〕〜〔X−4〕
について、評価結果を表1に示す。
(全光線透過率、ヘイズ)
実施例で得たフィルムから試験片を切り出し、その全光線透過率をJIS K7361−1に準じて、ヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM−150)を用いて測定した。またメタクリル樹脂組成物の評価は、3.2mm厚の成形体を熱プレスにて成形し、同様にして全光線透過率を測定した。
(厚さ方向位相差Rth)
実施例で得られた二軸延伸フィルムから40mm×40mmの試験片を切り出した。この試験片を、自動複屈折計(王子計測社製 KOBRA−WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、40°傾斜方向の位相差値から3次元屈折率nx、ny、nzを求め、前述した式より厚さ方向位相差Rthを計算した。試験片の厚さd(nm)は、デジマティックインジケータ(ミツトヨ社製)を用いて測定し、屈折率nは、デジタル精密屈折計(カルニュー光学工業社製 KPR−20)で測定した。
メタクリル樹脂組成物の製造にあたり、以下の材料を使用した。
PC:直鎖のポリカーボネート樹脂(住化スタイロンポリカーボネート社製、301−40(品番));MVR(300℃、1.2Kg、10分間;JIS K7210準拠)=40cm3/10分、Mw=33300、Mw/Mn=1.91、ガラス転移温度=148℃、粘度平均分子量=16200)
フェノキシ樹脂:Phenoxy(新日鉄住金化学社製、YP−50S(品番));MFR(230℃、3.8Kg、10分間;JIS K7210準拠)=22g/10分、Mn=22000、Mw=55000、Mw/Mn=2.5、ガラス転移温度=96℃)
高分子加工助剤:株式会社三菱レイヨン社製メタブレンP550A;平均重合度=7734、組成比=MMA88質量%/BA12質量%
紫外線吸収剤:2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(ADEKA社製;LA−F70)
(実施例2−1) (メタクリル樹脂組成物〔1〕の製造)
メタクリル樹脂〔A−1〕100質量部、及び紫外線吸収剤の0.9質量部を混ぜ合わせ、二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)で250℃にて混練押出してメタクリル樹脂組成物〔1〕を製造した。
(実施例2−2) (メタクリル樹脂組成物〔2〕の製造)
メタクリル樹脂〔A−1〕100質量部、及びPCの2.5質量部を混ぜ合わせ、実施例2−1と同様にしてメタクリル樹脂組成物〔2〕を製造した。
(実施例2−3) (メタクリル樹脂組成物〔3〕の製造)
メタクリル樹脂〔A−1〕100質量部、フェノキシ樹脂の3.0質量部、及び高分子加工助剤の2.0質量部を混ぜ合わせ、実施例2−1と同様にしてメタクリル樹脂組成物〔3〕を製造した。
実施例2−1〜実施例2−3で得られたメタクリル樹脂組成物〔1〕〜〔3〕について、その構成と評価結果を表2に示す。
(実施例3−1) (フィルム〔1〕の製造)
実施例2−1で得られたメタクリル樹脂組成物〔1〕を80℃で12時間乾燥させた後、L/D34の50mmΦベント式1軸押出機を用いて吐出量30kg/hrにて溶融混錬した。溶融混錬後、ギアポンプを用いて、濾過面積0.75m2、濾過精度5μmのリーフディスクフィルタに通し、幅130mmのTダイより温度280℃にて押出し、90℃の金属鏡面ロール上でフィルムを成形し、20m/minの速度にて引取り、厚み160μmの樹脂単層フィルム〔1〕を製膜した。得られたフィルムは、発泡がなく、良好は表面外観であった。
前記の手法にて得られた厚さ160μmの未延伸フィルムを、二辺が押出方向と平行となるように100mm×100mmの小片に切り出し、パンタグラフ式二軸延伸試験機(東洋精機(株)製)により、ガラス転移温度+10℃の延伸温度、一方向150%/分の延伸速度、一方向2倍の延伸倍率で押出方向と平行な方向を先に、次いでその垂直方向という順に逐次二軸延伸し(面積比で4倍)、10秒間保持の条件で延伸し、次いで室温下に取り出すことで急冷して、厚さ40μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムについての測定結果を表2に示す。
(実施例3−2〜実施例3−3) (フィルム〔2〕〜〔3〕の製造)
メタクリル樹脂組成物〔1〕の代わりにメタクリル樹脂組成物〔2〕〜〔3〕を用いた以外は実施例3−1と同じ方法で未延伸フィルム並びに二軸延伸フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
(比較例3−1〜比較例3−4) (フィルム〔4〕〜〔7〕の製造)
メタクリル樹脂組成物〔1〕の代わりにメタクリル樹脂(X−1〜X−4)を用いた以外は実施例3−1と同じ方法で未延伸フィルムを製膜したが、いずれも発泡してしまい良好は品位の未延伸フィルムは得られなかった。