JP2017048180A - メソポーラスシリカ粒子 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、腫瘍(癌腫と肉腫を含む)をターゲットとした免疫療法において、他の免疫刺激活性物質を用いることなく、高い細胞性免疫応答を惹起することができる免疫アジュバント機能を有する特定構造及び特定粒径のメソポーラスシリカ粒子を提供することにある。【解決手段】本発明において、真円率が20%以下の粒子の割合が65%以上で粒子径50〜5,000nmの球状メソポーラスシリカ粒子が、腫瘍免疫療法において、高い細胞性免疫応答を惹起し、かつ抗腫瘍免疫を強く刺激できることを明らかにした。【選択図】なし

Description

本発明は、単独で腫瘍(癌腫と肉腫を含む)の免疫療法用の免疫アジュバントとなるメソポーラスシリカ粒子に関する。より具体的には、他の免疫刺激物質を共存させることなく、単独で腫瘍細胞特異的な細胞性獲得免疫を刺激できる免疫アジュバントとなる球状メソポーラスシリカ粒子に関する。本発明の球状メソポーラスシリカ粒子は、腫瘍の治療及び/又は予防などを含む腫瘍の免疫療法などに利用することができる。
腫瘍の治療法には、外科治療、放射線治療、化学療法、免疫療法があり、免疫療法は、本来生体が有している免疫力を生かして腫瘍と闘う治療法である。腫瘍の免疫療法は、近年、従来型の外科療法、放射線療法、化学療法で奏効しなかったいくつかの腫瘍に対して高い有効性が示されるに至り、免疫療法を主治療法に据えた腫瘍治療法の開発が進みつつある等、腫瘍の免疫療法は急速に発展している。
ところで病原性の微生物やウイルスは、通常、抗原と免疫刺激物質の2要素が一体化されており、抗原と共存する免疫刺激物質によって体内の免疫システムが活性化され、自然免疫や抗原特異的な獲得免疫が誘導される。典型的な免疫刺激物質は、病原体に共通してみられる分子パターン (pathogen-associated molecular pattern;PAMP)等のトル様受容体(Toll-like receptor;TLR)アゴニストを挙げることができる。一方、腫瘍は抗原を持つが、免疫刺激物質を含まないことや免疫逃避機構が働くことにより、抗原性が低く、抗原特異的な獲得免疫が誘導されにくい。そのため、腫瘍抗原特異的な獲得免疫を誘導するには、腫瘍抗原に加えて、PAMPやその他のトル様受容体アゴニストを主体とした免疫アジュバントの併用が必須である(非特許文献1,2)。
一般に免疫アジュバントは、その作用機序からみて2つに大別できる(非特許文献3,4)。ひとつは、ワクチン抗原の時間的、場所的又は濃度的な変化と減衰に影響を与えて、免疫細胞が抗原を活用しやすくしたり、或いは活用する機会を増大させる作用である(S1)。もう一つは、抗原特異的免疫細胞が抗原を認識する際に、その抗原特異的免疫細胞に補助刺激を与える作用である(S2)。換言すれば前者S1は抗原のデリバリーや抗原の保護作用である。S1が主作用の免疫アジュバントにはW/Oエマルジョン、リポソーム、リン酸カルシウム等がある。また後者S2は、直接に免疫細胞そのものを活性化する作用である。S2が主作用の免疫アジュバントには病原体関連分子パターン(PAMP)、トル様受容体等のパターン認識受容体のアゴニスト、熱ショックタンパク、傷害関連分子パターン(DAMP)、各種サイトカイン等が分類される。S1とS2の両方の作用を有する免疫アジュバントもある。
免疫アジュバントと抗原を混合することにより、ワクチン等の免疫原性組成物になる。免疫アジュバントとしては従来からセラミック系、すなわち無機性のものであれば、アルミニウム化合物(アラム)、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム等が利用され医療に応用されてきた。死細菌や弱毒化病原体は、それ自身が免疫アジュバントであるPAMPと抗原の一体化物であるため、それ自身でワクチンになる。
また別の観点として、免疫アジュバントが免疫刺激する対象で分類すると、液性の自然免疫(A)、液性の獲得免疫即ち抗体産生(B)、細胞性の自然免疫(C)、及び細胞性の獲得免疫(D)の4対象に分けられる(非特許文献5)。例えば、水酸化アルミニウムやリン酸アルミニウムといった免疫刺激用アルミニウム化合物(アラム)が免疫刺激する対象は主に液性の獲得免疫(B)である。また、PAMPには効果的に細胞性の獲得免疫(D)を刺激するものが多い。
腫瘍の免疫療法用アジュバントとしては、細胞性の自然免疫(C)を担うナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞を刺激するもの、細胞性の自然免疫(C)と細胞性の獲得免疫(D)に跨る樹状細胞を刺激するもの,細胞性の獲得免疫(D)を担うI型ヘルパーT細胞,キラーT細胞を刺激するものであることが好ましい。
非晶質の焼成シリカ(SiO2)は細孔を有する無機ポーラス物質であって吸着性を有し、生体毒性もないため健康食品や医薬品への添加物などとして、古くから用いられていた。近年、2nm〜50nmの多数の微細孔(メソ気孔)を形成させた「メソポーラスシリカ」が、比表面積が高いため吸着性能に優れており注目されている。特に、両親媒性のブロックコポリマーを用いて製造された六角形の均一で規則的な2次元構造を有するメソポーラスシリカSBA-15がロッド状などに成形されて免疫アジュバントとして用いることが提案されている(特許文献1,非特許文献6〜7)。タンパク質、生物活性ペプチド、毒素、ウイルスなどの抗原をSBA-15の細孔内にカプセル化した免疫原性複合体をワクチン製剤として用いることが記載されているが、この複合体ではSBA-15が抗原由来の免疫刺激物質と共存している(特許文献1)。いずれの文献にも腫瘍をターゲットとした免疫療法用に用いることは記載されていない(特許文献1,非特許文献6〜7)。
シリカ系の免疫アジュバントは、腫瘍の免疫療法においても細胞性免疫応答を導く免疫アジュバント(S2+D)活性があることが期待される物質の例として列記されることはあった(特許文献2)が、実際に単独で腫瘍をターゲットとした免疫アジュバントとして用いられた例はない。腫瘍の免疫療法に利用可能な免疫アジュバントとして「メソポーラスシリカ」粒子を用いる場合は、ツベルクリン、BCG菌製剤などPAMP又はトル様受容体アゴニスト、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などを細孔内に担持させた組成物を免疫アジュバントとして用いている(特許文献3,4)。
これらの免疫アジュバント組成物の作用効果は十分満足いくものであったが、医薬品基準を満たす製品化に際しては問題が山積していた。すなわち、保存性、安定性に問題のない無機物質であるメソポーラスシリカ粒子に対し、PAMP又はトル様受容体アゴニストなどの生体由来物質や生理活性タンパク質などを担持させた場合には、工程が煩雑になることに加えて、冷蔵保存が要求されるなどの取扱いや流通に不便を生じるばかりでなく、均一かつ安定な品質を長期間保つことが極めて困難であった。
特許第5091863号 特表2009−500454号公報 特表2015−516398号公報 特開2013−129655号公報
Joseph N.Blattman et al.,Science,9 July 2004, Vol.305,200-205 Achal Pashine et al.,Nature Medicine Supplement,Vol.11,No.4,April 2005,S63-S68 Riberio C.M.et al., Methods in Mol. Biol. 2010; 626: 1-14. Schijns, V.E.J.C, Crit Rev Immunol. 2001; 21(1-3): 75-85 Delves, P.J.; Martin, S.J.; Burton D.R.; Roitt I.M.;宮坂昌之監訳;ロアット、カラー基本免疫学、西村書店、2011 Mercuri, L.P. et al., Small. 2006 Feb; 2(2): 254-6. Kupferschmidt N. et al., Nanomedicine(Lond). 2014; 9(12): 1835-1846
本発明の課題は、腫瘍をターゲットとした免疫療法においても、PAMP又はトル様受容体アゴニストなどの免疫刺激物質を用いることなく、単独で、高い細胞性免疫応答を誘導することができる免疫アジュバント機能を有する特定構造及び特定粒径のメソポーラスシリカ粒子を提供することにある。
本発明者らはケイ素原材料、焼成方法を適宜調整することでメソポアの有無、形状、粒径を様々に変化させた異なる種々のシリカ微粒子を製造し、それぞれの免疫アジュバント作用を、鋭意研究した。具体的には、各種形状、粒径、構造の異なるシリカ微粒子をモデル抗原(ニワトリ卵白由来のアルブミン(以下OVAと記載する))と共に生理食塩水に懸濁させてマウスに皮内注射投与し、投与後8日目に回収したリンパ球が産生するIFNγ、IL-2、IL-4、及びIL-10の産生量を比較した。その結果、真円率が20%以下の粒子の割合が65%以上で粒子径50〜5,000nmの球状メソポーラスシリカ粒子が単独で液性の獲得免疫、細胞性の獲得免疫を強く刺激できることを明らかにした。
具体的には、本発明で得られた金属含有もしくは非含有の球状メソポーラスシリカ粒子は、単独でモデル腫瘍抗原OVA投与マウスのリンパ球のIFNγ、IL-2、IL-4及び/又はIL-10産生量を増強させるか、もしくは、マウス肺癌由来LLC細胞破砕物を腫瘍抗原として又はOVAモデル腫瘍抗原としてマウスの皮下に形成させた腫瘍の成長を効果的に抑制することができることを確認した。次いで、形成されたLLC腫瘍組織を摘出して自家腫瘍抗原として用いた再発予防モデルマウスでの腫瘍再発防止効果を確認し、かつ免疫記憶を司るエフェクター記憶T細胞数の有意な増加を確認した。また、マウス大腿皮下に腫瘍細胞GL261-mKOを播種して形成させた腫瘍をX線照射で変性後に球状メソポーラスシリカ粒子を6回投与し、照射24時間後の脳にGL261-mKOを播種したモデル再発マウスでの経過観察を行ったところ、有意差をもって生存期間が延長できた。
以上の知見が得られたことで、本発明は完成された。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
〔1〕 球状メソポーラスシリカを含む腫瘍免疫療法用アジュバントであって、非意図的に混入する0.1EU/mg以下のエンドトキシン以外の免疫刺激作用物質は含まず、単独でも免疫刺激作用がある、腫瘍免疫療法用アジュバント。
ここで、典型的な免疫刺激作用物質としては、トル様受容体アゴニスト、サイトカイン、Cタイプレクチン受容体アゴニスト、NOD様受容体アゴニスト、RIG様受容体アゴニスト、環状GMP-AMPシンターゼに結合する外因性のDNA、外因性のアラーミンが挙げられる。
〔2〕 球状メソポーラスシリカとして真円率20%以下の粒子が65%以上含まれており、かつ粒子径が50〜5,000nmである、前記〔1〕に記載の腫瘍免疫療法用アジュバント。
〔3〕 球状メソポーラスシリカが中空状であることを特徴とする、前記〔1〕ないし〔2〕のいずれかに記載の腫瘍免疫療法用アジュバント。
〔4〕 中空状の球状メソポーラスシリカが、10〜200nmの厚さの外殻を有し、かつ外殻内に直径2〜50nmのメソポアを有していることを特徴とする、前記〔3〕に記載の腫瘍免疫療法用アジュバント。
〔5〕 球状メソポーラスシリカが、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ナトリウム、カリウム、リン、ホウ素及びアルミニウムの中から選ばれた少なくとも一種類の金属を、金属/ケイ素モル比0〜20mol%で含有することを特徴とする、前記〔1〕ないし〔4〕のいずれかに記載の腫瘍免疫療法用アジュバント。
〔6〕 腫瘍抗原と共にヒトを含む哺乳類動物の体内に投与して該腫瘍抗原に対する全身性免疫反応を誘導するための、前記〔1〕ないし〔5〕のいずれかに記載の腫瘍免疫療法用アジュバント。
〔7〕 腫瘍抗原が、腫瘍組織、腫瘍細胞、腫瘍細胞溶解物もしくはこれらの変性物、腫瘍細胞成分、腫瘍抗原タンパク、腫瘍抗原ペプチドからなる群から選ばれる、前記〔6〕に記載の腫瘍免疫療法用アジュバント。
〔8〕 ヒトを含む哺乳類動物の腫瘍組織を物理的手段で変性させた後に該腫瘍組織内に投与することにより抗腫瘍免疫反応を誘導するための請求項1ないし5のいずれかに記載の腫瘍免疫療法用アジュバントであって、物理的手段がマイクロウエーブ照射、ラジオフリークエンシー凝固法、凍結凝固法、電気メス加熱、熱水注入、アルコール注入、塞栓法、放射線照射、レーザー光照射、及び超音波破壊からなる群から選ばれる1種又は2種以上の手段である腫瘍免疫療法用アジュバント。
〔9〕 前記〔1〕ないし〔5〕のいずれかに記載の腫瘍免疫療法用アジュバントと腫瘍抗原とを含むワクチン。
〔10〕 (1)前記〔1〕ないし〔8〕のいずれかに記載の腫瘍免疫療法用アジュバント又は前記〔9〕に記載のワクチンと共に、(2)免疫チェックポイント阻害剤を含有することを特徴とする、腫瘍の治療及び/又は予防用組成物。
〔11〕 免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体 、抗PD-L2抗体 、抗CTLA-4抗体、抗CD40抗体、抗CD137抗体、抗OX40抗体、抗TGF-β抗体、抗LAG3抗体、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、抗TIM3抗体、抗CD96抗体、抗TIGIT抗体から選ばれる1又は2以上の抗体である、前記〔10〕に記載の腫瘍の治療及び/又は予防用組成物。
〔12〕 (1)前記〔1〕ないし〔8〕のいずれかに記載の腫瘍免疫療法用アジュバント又は前記〔9〕に記載のワクチンと、(2)免疫チェックポイント阻害剤とを組み合わせてなる、腫瘍の治療及び/又は予防用医薬。
ここで、当該組み合わせてなる腫瘍の治療及び/又は予防用医薬は、(1)及び(2)を別々にあるいは同時に、薬理学的に許容可能な担体、賦形剤、添加物などと混合して製剤化し、医薬組成物として投与できる。別々に製剤化した場合に、両者を使用時に希釈剤などを用いて混合して投与することもできるが、両者を別々に、同時に、又は時間差をおいて投与してもよい。
〔13〕 免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体 、抗PD-L2抗体 、抗CTLA-4抗体、抗CD40抗体、抗CD137抗体、抗OX40抗体、抗TGF-β抗体、抗LAG3抗体、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、抗TIM3抗体、抗CD96抗体、抗TIGIT抗体から選ばれる1又は2以上の抗体である、前記〔12〕に記載の腫瘍の治療及び/又は予防用医薬。
本発明により提供される粒子径が50nm〜5000nmで真円率が20%以下の粒子が65%以上の球状メソポーラスシリカ粒子は、免疫刺激物質の添加無しでも、腫瘍細胞に対して有効な細胞性獲得免疫を刺激できるので、単独で腫瘍の免疫療法用免疫アジュバントとして用いることができる。安定性の低い免疫刺激物質の添加が不要であることから、易製造性、保存性、品質安定性に優れた免疫アジュバント製剤として、腫瘍の治療及び/又は予防を含む腫瘍の免疫療法などに利用することができる。
実施例1で実施した、モデル抗原OVAを各微粒子と同時に皮内投与したマウスから回収したリンパ球を体外でOVA刺激して培養し、その培養液中のサイトカインの定量結果を各々示した図である。(A):IFNγ、(B):IL-2、(C):IL-4、(D):IL-10を示す。試料名(a)〜(k)は表1と対応する。 実施例2で調製した各試料の透過型電子顕微鏡像を示した図である。試料名(l)(m) (h)(n)(o)(p)は表1と対応する。 実施例2で調製した各試料の細孔分布及び窒素吸着等温線を示した図である。試料名(l)(m) (h)は表1と対応する。 実施例3で実施した球状メソポーラスシリカの抗腫瘍免疫刺激作用を検討した動物実験の結果を示した図である。(A):試料(h)における直径15mm以上(半球近似)の腫瘍発生をエンドポイントとするカプランマイヤー曲線、(B):試料(h)における腫瘍の直径から算出した腫瘍体積の経時変化を示す。図中の*は2群間のp値が0.05未満であることを示す。(C):試料(g) (n)(o)(p)における直径15mm以上(半球近似)の腫瘍発生をエンドポイントとするカプランマイヤー曲線、(D):試料(g)(n)(o)(p)おける腫瘍の直径から算出した腫瘍体積の経時変化を示す 実施例4で実施した再発予防モデルでの球状メソポーラスシリカ(h)の抗腫瘍免疫刺激作用の動物実験の結果を示した図である。 実施例5で実施した、実施例4の動物実験後のマウスの骨髄から採取した免疫細胞中のエフェクター記憶T細胞の存在割合を示した図である。図中の*は両側t検定により求められた2群間のp値が0.05未満であることを示す。(A):CD4陽性細胞に対する結果、(B):CD8陽性細胞に対する結果を示す。 実施例6で実施した、大腿部腫瘍組織を物理的手段(エックス線照射)で変性後に球状メソポーラスシリカ(h)を変性腫瘍組織に投与し、その後、脳に腫瘍細胞を播種したマウスの生存曲線 E.G7-OVA細胞が形成する腫瘍平均直径15 mm以下のマウスの割合を、OVA局所投与のみの陰性対照群、球状メソポーラスシリカ(h)とOVAの混合物の局所投与に抗PD-1抗体の全身投与を組み合わせた組み合わせ医薬群、及び抗PD-1抗体単独の全身投与群で比較したカプランマイヤー曲線。 E.G7-OVA細胞が形成する腫瘍平均直径15 mm以下のマウスの割合を、OVA局所投与のみの陰性対照群、球状メソポーラスシリカ(h)とOVAと抗PD-1抗体を混合した組成物群、及び抗PD-1抗体単独の全身投与群で比較したカプランマイヤー曲線。 E.G7-OVA細胞が形成する腫瘍総体積1690 mm3 (平均直径15 mmに相当)以下のマウスの割合を、OVA局所投与のみの陰性対照群、球状メソポーラスシリカ(h)とOVAの混合物の局所投与に抗PD-L1抗体の全身投与を組み合わせた組み合わせ医薬群、及び抗PD-L1抗体単独の全身投与群で比較したカプランマイヤー曲線。 E.G7-OVA細胞が形成する腫瘍総体積1690 mm3 (平均直径15 mmに相当)以下のマウスの割合を、OVA局所投与のみの陰性対照群、球状メソポーラスシリカ(h)とOVAと抗PD-L1抗体を混合した組成物群、及び抗PD-L1抗体単独の全身投与群で比較したカプランマイヤー曲線。 E.G7-OVA細胞が形成する腫瘍平均直径15 mm以下のマウスの割合を、OVA局所投与のみの陰性対照群、球状メソポーラスシリカ(q)とOVAの混合物の局所投与に抗PD-1抗体の全身投与を組み合わせた組み合わせ医薬群、及び抗PD-1抗体単独の全身投与群で比較したカプランマイヤー曲線。 E.G7-OVA細胞が形成する腫瘍平均直径15 mm以下のマウスの割合を、OVA局所投与のみの陰性対照群、球状メソポーラスシリカ(q)とOVAと抗PD-1抗体を混合した組成物群、及び抗PD-1抗体単独の全身投与群で比較したカプランマイヤー曲線。
1.本発明の球状メソポーラスシリカ粒子について
(1)メソポーラスシリカとは
IUPACでは直径2〜50nmの細孔をメソ孔と定義する。本発明において「メソポーラスシリカ」とはメソ孔を有する二酸化ケイ素であり、該二酸化ケイ素には金属/ケイ素=0〜20mol%、好ましくは0〜15mol%、より好ましくは0〜10mol%の割合で、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ナトリウム、カリウム、リン、ホウ素、アルミニウムが含有されていても良い。含有金属としては、カルシウム、マグネシウム又は亜鉛が好ましい。多数のメソ孔が規則正しく配列していれば、粉末X線回折法により、2〜50nmの格子間隔に相当する位置にピークが出現するかどうかで、メソ孔があると判断することができる。このようなピークは、CuKαによるX線回折法であれば、2θが0.5〜3.0o の範囲に出現する。メソ孔が不規則に配列する場合は透過型電子顕微鏡により、メソ孔を確認することができる。あるいは自動比表面積/細孔分布測定装置を用いて細孔径を測定することもできる。メソポーラスシリカはテトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ケイ酸ナトリウムなどをケイ素源の原材料、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)-ポリ(エチレンオキシド)といったブロック共重合体やヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドといった長鎖アルキルアンモニウムなどに代表される界面活性剤をメソ孔のテンプレートに使用し、20〜150℃の条件下で、液性を酸性もしくは塩基性にし、好ましくはpH1.0以下あるいはpH12.0以上に調整して、ケイ素源の原材料を加水分解反応させた後、テンプレートを抽出法または燃焼により除去する等の種々の方法で作製できる。この作製工程において、ケイ素源の原材料に金属硝酸塩や金属アルコキシドを混合しておけば、金属が添加されたメソポーラスシリカが合成できるが、金属の添加方法についてはこれに限るものでもない。
(2)球状メソポーラスシリカ粒子について
本発明により、単独でも免疫刺激作用がある球状メソポーラスシリカが提供される
本発明は、「球状メソポーラスシリカ粒子」を対象とするが、メソポーラスシリカ微粒子が「球状」であるか否かは電子顕微鏡画像で観察した際の、粒子の真円率とその含有量に基づいて決められる。本発明で粒子の真円率は「中心を同一にする外接円及び内接円で粒子の輪郭を挟んだときに、これら二円の間隔が最小になる場合における二円の直径差の外接円直径に対する割合」である。本発明で球状メソポーラスシリカは、電子顕微鏡で観察した際に真円率が20%以下のメソポーラスシリカ粒子が、65%以上、好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上含有されるメソポーラスシリカである。メソポーラスシリカ粒子が観察できれば、電子顕微鏡は走査型であるか透過型であるかは問わない。
また、本発明の球状メソポーラスシリカは、メソ孔を有しているだけでなく、さらに内部が中空状態(中空タイプ)であることが好ましい。内部が中空状態であることで、免疫刺激作用が高まるばかりではなく、内部に抗原を吸着するための内部容量が大きくなるため、抗原のデリバリーや抗原の保護作用効果(S1作用)にも優れる。
(3)中空状メソポーラスシリカ粒子について
本発明で「中空状」のメソポーラスシリカ(中空タイプ)とは、透過型電子顕微鏡で観察したとき、粒子内の電子線透過率が高い明部の面積が粒子断面積の5%以上有り、外殻がメソポーラスであるシリカである(Teng J. et al., Chem Mater. 2013; 25: 98-105など)。外殻の気孔はメソポア(5〜50nm)だけから構成されていても良いし、メソポアとメソポアより大きい気孔で構成されていても良い。メソポアより大きい気孔があれば、抗原等を中空内部に容易に担持しやすいS1作用に優れた中空状のメソポーラスシリカが提供される。
メソポーラスシリカが中空状であるか否かは透過型電子顕微鏡で確認することができる。内部に中空空間が無い場合は電子線の透過率が粒子中心部と辺縁部で大きな差が無いので、透過型電子顕微鏡像は、中心部と辺縁部に明暗差が無いか或いは辺縁部のほうが明るくなる。内部に中空空間があれば、中心部の中空空間は電子線透過率が高いために明るく、辺縁部は電子線の透過率が低いために暗くなる。この辺縁部の電子線透過率が低い部分が外殻である。
中空状のメソポーラスシリカの外殻の厚さは、粒子径、抗原等の担持の利便性、及び使用目的によって適宜変更できるが、好ましくは10〜200nmであり、より好ましくは10〜80nmである。下限値が10nmである理由はメソポア(2〜50nm)が外殻に存在できる必要があるためである。
(4)球状メソポーラスシリカ粒子の粒径について
免疫刺激作用の発現には、粒子が細胞による貪食可能なサイズであることが必要である。本発明の実験結果でも、免疫刺激作用は粒子径に依存することが確認できた。本発明の好ましい形態によれば、粒子径が50nm〜5000nm、好ましくは50nm〜900nm、より好ましくは100〜500nm、さらに好ましくは170〜420nmである。
(5)球状メソポーラスシリカ粒子の製造方法
本発明の球状メソポーラスシリカ粒子の典型的な製造方法を以下に示すが、この方法に限られるものではない。
本発明の球状メソポーラスシリカ粒子は、既知のRaduらの方法(J Am Chem Soc. 2004; 126: 13216-7)やTengらの方法(Chem Mater. 2013; 25: 98-105)等を参考として製造することができる。具体的には、テンプレート剤として、例えばヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(Pluronic P-123)などが利用可能である。テンプレート剤を塩基性または酸性の溶液に溶解し、20〜150 ℃で激しく撹拌しながらオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を添加し、そのまま2〜48時間撹拌し続ける。オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)に代えて、オルトケイ酸テトラメチル、オルトケイ酸テトラプロピル、ケイ酸ナトリウム等を用いても良い。
本実施例では、TEOS:CTAB:アンモニア:超純水:エタノール(99.5%)をモル比で1.00:0.0922:2.96:621:115に設定した。この設定値は、TEOSは0.10〜2.00、CTABは0.03〜0.20、アンモニアは1.00〜5.00、超純水は60〜2000、エタノール(99.5%)は20〜2000の範囲で適宜設定できる。
この操作で得られる白沈を遠心分離により回収し、エタノール(99.5%)で複数回洗浄後、TEOS含有溶液(1 mL/超純水480 mL)に分散させ、20〜100℃で攪拌処理を行う。その間の自発的な形状変化により球状の微粒子を形成させるが、その際の処理条件を下記のように変化させることで、外殻の厚さを調節することができる。得られた微粒子を遠心分離で回収し、超純水とエタノール(99.5%)で洗浄後乾燥(80 ℃)し、焼成(550 ℃、5時間)してCTABを除去する。
外殻の厚さを調節する具体的な処理条件は温度条件と処理時間を適宜変化させることで、外殻の厚さを調整することができる。具体的には、常温(20〜30℃)で1〜3時間処理した場合は外殻を形成しない(緻密タイプ)が、高温(50〜100℃)で10分〜3時間処理すると外殻が100〜10nm形成される(中空タイプ)。
(6)金属含有球状メソポーラスシリカ粒子の製造方法
別の観点からは、上記球状メソポーラスシリカに免疫応答、生体適合性や生体吸収性を制御する金属を含有させた球状メソポーラスシリカが提供される。これら金属はカルシウム、マグネシウム、亜鉛、ナトリウム、カリウム、リン、ホウ素、アルミニウムから選ばれる金属であり、金属/ケイ素=0〜20mol%の割合で、より好ましくは金属/ケイ素=0〜12 mol%添加される。金属を二酸化ケイ素に固溶させて金属酸化物結晶として析出させないという観点から上限は20mol%である。
本発明の金属含有球状メソポーラスシリカ粒子の典型的な製造方法を以下に示すが、この方法に限られるものではない。
本発明の金属含有球状メソポーラスシリカ粒子は、既知のLiらの方法(Micropor Mesopor Mater 2007; 102: 151-158)を参考とし、含有させる金属を適宜変更することによって製造することができる。具体的には、テンプレート剤(CTAB)を水酸化ナトリウム溶液に溶解し、70℃を維持しつつ激しく撹拌しながらTEOSと金属硝酸塩溶液(例えば、硝酸カルシウム溶液、硝酸マグネシウム溶液、硝酸亜鉛溶液など)を0.01〜20mol%で滴下する。滴下後加水分解による白色沈殿を得るまで撹拌を続行し(5時間)、沈殿を遠心分離後、純水とエタノールで十分洗浄し、乾燥(80℃)する。乾燥物は、焼成(550 ℃、5時間)してCTABを除去する。
2.本発明の腫瘍の免疫療法用の免疫アジュバント製剤について
(1)本発明の球状メソポーラスシリカ粒子が単独で発揮できる抗腫瘍免疫刺激作用について
本発明で、免疫刺激作用とは抗原特異的免疫細胞が対象となる腫瘍抗原を認識する際に、その抗原特異的免疫細胞に補助刺激を与える上記S2作用のことであり液性の獲得免疫、細胞性の獲得免疫、抗腫瘍免疫を含んでいる。
S2作用を有していれば、ワクチン抗原の時間的、場所的又は濃度的な変化と減衰に影響を与えて、免疫細胞が抗原を活用しやすくしたり、或いは活用する機会を増大させるS1作用を有していてもよい。
本発明の球状メソポーラスシリカ粒子が「単独でも免疫刺激作用が有る」というとき、非意図的に混入する0.1EU/mg以下のエンドトキシン以外にはS2作用物質を含有しない状態であっても免疫刺激作用S2があるという意味である。ちなみに該S2作用物質とは、具体的にはCpG-ODNやPoly(I:C)等のトル様受容体アゴニスト、GM-CSFやインターフェロンβ等のサイトカイン類、βグルカン等のCタイプレクチン受容体アゴニスト、ムラミルジペプチド等のNOD様受容体アゴニスト、ウイルスRNA等のRIG様受容体アゴニスト、環状GMP-AMPシンターゼに結合する外因性のDNA、熱ショックタンパクやHMGB1やS100タンパク等の外因性のアラーミン(alarmin)であるが、これらに限るものでもない。
(2)エンドトキシンの測定法と規定の仕方
作製されたメソポーラスシリカのエンドトキシン混入量は、日本薬局方、米国薬局方、欧州薬局方に記載されているエンドトキシン試験法、すなわち、カブトガニの血球抽出成分より調製されたライセート試薬を用いて定量する。定量の方法は、エンドトキシンの作用によるライセート試薬のゲル形成を、ゲル化法、比濁法又は比色法で測定する。比濁法と比色法は、エンドポイント測定でもカイネティック測定でも良い。いずれの測定にもエンドトキシン標準品を使用するが、エンドトキシン標準品の力価は世界保健機関のエンドトキシン国際標準品を基準として標定される。エンドトキシン単位はEUで示し、1EUは1エンドトキシン国際単位(IU)に等しい。このようにしてメソポーラスシリカのエンドトキシン混入量は、メソポーラスシリカ1mg当たりのエンドトキシン量(EU)として規定される。本発明において、球状メソポーラスシリカに混入するエンドトキシン量は0.1EU/mg以下であり、0.06EU/mg以下であることが好ましい。
3.本発明の球状メソポーラスシリカ粒子を免疫アジュバントとして用いた腫瘍の免疫療法
(1)本発明の球状メソポーラスシリカ粒子からなる免疫アジュバント製剤
本発明の球状メソポーラスシリカ粒子は、腫瘍抗原とともにヒトを含む哺乳類動物の体内に投与して該抗原に対する全身性免疫反応を誘導するための免疫アジュバントとして有用である。その際、本発明の球状メソポーラスシリカ粒子を他の免疫刺激作用(S2作用)がある物質を併用することなく、単独で腫瘍の免疫療法用の免疫アジュバント製剤とすることができる。単独製剤とすることで、安定性の低い免疫刺激物質の添加が不要であることから、製造工程の煩雑さがなく、得られた製剤は、保存性、品質安定性に優れる利点を有する。マイクロウエーブ照射、ラジオフリークエンシー凝固法、凍結凝固法、電気メス加熱、熱水注入、アルコール注入、塞栓法、放射線照射、レーザー光照射、超音波破壊、抗がん剤治療、外科手術治療中、マイクロ波治療中又は治療後に単独もしくは腫瘍抗原と共に投与することで、治療効果を高めると共に、予後の再発防止効果を高めることができる。免疫チェックポイント阻害剤と併用して治療効果を高めることもできる。
投与方法は、マイクロウエーブ照射、ラジオフリークエンシー凝固法、凍結凝固法、電気メス加熱、熱水注入、アルコール注入、塞栓法、放射線照射、レーザー光照射、超音波破壊、抗がん剤治療のように、治療後に体内に変性した腫瘍組織が残る場合は、注射や内視鏡等の方法で該変性腫瘍組織に直接投与する。投与した球状メソポーラスシリカの免疫刺激作用(S2作用)により、変性腫瘍組織を腫瘍抗原とする抗腫瘍免疫を誘導する。また、違った投与方法としては、外科手術等で取り出した後に変性させた腫瘍組織や腫瘍細胞、若しくは腫瘍抗原タンパクやペプチドと球状メソポーラスシリカを混合、均質化して皮内、皮下、粘膜下等の抗原提示細胞が多数存在する組織に注射等で投与することもできる。
投与時期と回数は、腫瘍の状態、腫瘍抗原の種類と状態、症状の重軽、患者の状態等によって適宜決められる。例えば、アルコール注入等の他の腫瘍の治療と同時、又はその後に1時間〜10週間の範囲内で、1回で全て投与しても数回に分けて投与しても良いが、これに限るものでもない。
投与量も、腫瘍の状態、腫瘍抗原の種類と状態、症状の重軽、患者の状態等によって、安全性と有効性の観点から適宜決められる。例えば、0.4〜9.4mg/体重kgの投与量で投与することが出来るが、この範囲に限るものでもなく、体重でなく体表面積で規格化する場合は、違った値の投与量になってもよい。
腫瘍抗原ペプチドやその他の合成腫瘍抗原と、球状メソポーラスシリカ粒子単独からなる免疫アジュバントとを併用する場合、これらの合成腫瘍抗原と組み合わせてキット化することもできる。
本発明において対象となる腫瘍の種類は、特に限定されず、固形癌、細胞癌、血液癌のいずれであってもよく、悪性度が高くても低くても、良性の肉腫であってもよい。また、本発明は主としてヒトを対象としているが、ヒトに限られるものではなく、サルなど霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、マウスなどの齧歯類など広く哺乳動物の腫瘍を対象とする。
(2)抗腫瘍ワクチン
腫瘍由来抗原(腫瘍抗原)としては、腫瘍組織、腫瘍細胞、腫瘍細胞溶解物もしくはこれらの変性物、腫瘍細胞成分、腫瘍抗原タンパク、腫瘍抗原ペプチド、またはこれらの精製物、加工された調製物などが挙げられる。本発明の免疫アジュバントは、これらの1種又は2種以上の腫瘍抗原と共に、既知の薬理学的に許容可能な担体、賦形剤、添加物などと製剤化して抗腫瘍ワクチン組成物とすることもできる。その場合は、本発明の免疫アジュバントの抗原デリバリー機能、保護機能(S1作用)を活用することができる。
本発明で用いる腫瘍抗原としては、対象となる腫瘍の種類によって異なる。既知の腫瘍抗原、エピトープ、ペプチドの場合(例えば、MAGE-A4、Survivin、WT1、MUC1、LMP2、HER-2/neu、 MAGE-A3、NY-ESO-1、Glypican-3、SVN-2B、IMP-3等の抗原、エピトープ、ペプチド)、このような精製されたものを用い、あらかじめ抗腫瘍ワクチン製剤としておくことができる。また、生検や外科手術で採取した患者本人の腫瘍組織や腫瘍細胞を変性させた後に腫瘍抗原として用いることで、患者特異的な抗腫瘍ワクチンを提供することができる。
また、患者本人の生体内の腫瘍組織を下記(3)の物理的手段によって変性させた後、本発明の免疫アジュバントまたはワクチンを投与することにより、患者の体内に生残している腫瘍細胞に対して抗腫瘍免疫反応を誘導する腫瘍の免疫療法剤として使用することができる。
(3)変性後の腫瘍組織への免疫アジュバント投与法
ヒトを含む哺乳類動物の腫瘍組織を物理的手段で変性させた後に本発明の球状メソポーラスシリカ粒子を含む免疫アジュバント製剤を、該腫瘍組織内に投与することにより抗腫瘍免疫反応を誘導することができる。腫瘍組織を変性するための物理的手段としては、マイクロウエーブ照射、ラジオフリークエンシー凝固法、凍結凝固法、電気メス加熱、熱水注入、アルコール注入、塞栓法、放射線照射、レーザー光照射、及び超音波破壊等の手段を採用することができる。もっとも、物理的変性手段はこれらに限定されるものではなく、腫瘍組織内にある腫瘍細胞の細胞死を誘導することができる手段であればいかなるものを用いてもよい。2以上の物理的手段を適宜組み合わせてもよい。
(4)免疫チェックポイント阻害剤の併用について
免疫抑制状態を解除するための免疫チェックポイント阻害剤を併用した抗腫瘍免疫の誘導方法、並びに腫瘍の治療及び/又は予防用組成物、もしくは腫瘍の治療及び/又は予防用の組み合わせ医薬が提供される。組み合わせ医薬で別々に製剤化した場合、別々に製剤化したものを使用時に混合して投与することもできるが、別々に製剤化したものを別々に、同時に、又は時間差をおいて同一対象に投与しても良い。この発明の好ましい態様によれば、チェックポイント阻害剤が抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体 、抗PD-L2抗体 、抗CTLA-4抗体、抗CD40抗体、抗CD137抗体、抗OX40抗体、抗TGF-β抗体、抗LAG3抗体、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、抗TIM3抗体、抗CD96抗体、抗TIGIT抗体から選ばれる1又は2以上のチェックポイント阻害剤であり、免疫チェックポイント阻害剤の効果を高め、若しくは免疫チェックポイント阻害剤の使用量を低減した腫瘍の治療及び/又は予防の方法、並びに腫瘍の治療及び/又は予防用組成物若しくは腫瘍の治療及び/又は予防用の組み合わせ医薬が提供される。
(5)他の免疫刺激物質との併用について
本発明の球状メソポーラスシリカ粒子は、他の免疫刺激物質(S2作用)を添加することなく、腫瘍細胞に対して、単独で免疫性アジュバントとして有効な免疫刺激活性(S2作用)を発揮するが、他の免疫刺激物質との併用を妨げるものではない。他の免疫刺激物質と併用することで、より高い免疫刺激活性(S2作用)を発揮できる。
4.抗原特異的免疫刺激作用の測定方法及び評価法
(1)本発明の免疫刺激作用の評価
本発明の免疫刺激作用は、本発明の明細書に具体的に説明した方法及び以下に説明する方法により当業者が容易に測定可能である。一例として抗原としてニワトリ卵白由来のアルブミン(以下OVAと記載する)を使用し、OVAと被験物質であるメソポーラスシリカをマウスに皮下投与する。投与数数日から数週間後にリンパ節等のリンパ組織や骨髄からリンパ球を採取して培養し、その際OVAを加えて刺激する。OVA刺激によりリンパ球が産生するサイトカインの種類と量から、抗原特異的な細胞性の獲得免疫や液性免疫の活性化を確認することができる。例えばIL-2、IFNγ、TNFβは細胞性の獲得免疫を、IL-4、IL-5及びIL-10は液性免疫を特徴づけるサイトカインである。
(2)抗腫瘍免疫反応誘導作用の評価法−1
抗原特異的細胞性獲得免疫のなかでも抗腫瘍免疫反応を誘導するかどうかは、例えば、以下のようにして確認することができる。
腫瘍抗原として2.5×105個のマウス肺癌由来のLewis肺癌細胞(LLC)株を粉砕し、本発明の球状メソポーラスシリカを混合した後、背部左側マウス皮下に投与する。さらに7、11日後に本発明の球状メソポーラスシリカを同一箇所に投与する。15日後に1×104個の生細胞のLLCを右下肢皮下に播種し、その後30日間に渡って腫瘍が形成するかどうか経過観察する。対照群においては、腫瘍抗原として粉砕した2.5×105個のLewis肺癌細胞(LLC)株を背部左側マウス皮下に投与し、15日後に1×104個の生細胞のLLCを右下肢皮下に播種し、その後30日間に渡って腫瘍が形成するかどうか経過観察する。本発明の球状メソポーラスシリカが腫瘍抗原特異的な免疫反応を誘導する活性があれば、対照群に比較して、腫瘍の成長が阻止または抑制される。もっとも、球状メソポーラスシリカと腫瘍抗原、及び球状メソポーラスシリカの投与時期、観察期間も適宜設定できる。さらに、腫瘍抗原やモデル腫瘍抗原と、該抗原を発現する腫瘍細胞を用いても良い。例えば、最初に投与する抗原をOVAとし、その後に播種する生細胞をOVA抗原発現マウスリンパ腫細胞(E.G7-OVA)としても良い。
(3)抗腫瘍免疫反応誘導作用の評価法−2
さらに、別の方法として抗腫瘍免疫反応を誘導するかどうかは、例えば、以下のようにして確認することができる。
C57BL/6Jマウス左後背部皮下に5×105個のLewis肺癌細胞(LLC)を播種して7〜10日間飼育して腫瘍組織を形成したのち、該腫瘍組織を摘出して液体窒素で凍結凝固により固定化処理して粉砕し、本発明の球状メソポーラスシリカを混合した後、腫瘍摘出術の3日後にマウス皮下に投与する。さらに腫瘍摘出術の7、14日後に本発明の球状メソポーラスシリカを同一箇所に投与する。腫瘍摘出術の4週後に、右後背部に再度5×105個のLLCを播種し、その後30日間に渡って腫瘍が形成するかどうか経過観察する。対照群においては、腫瘍摘出術3日後に粉砕した摘出腫瘍のみ若しくは摘出腫瘍とアラムの混合物を投与し、7、14日後に摘出腫瘍群には生理食塩水を、摘出腫瘍とアラムの混合物群にはアラムを投与し、その後30日間に渡って腫瘍が形成するかどうか経過観察する。本発明の球状メソポーラスシリカが抗腫瘍免疫反応を誘導する活性があれば、対照群に比較して、腫瘍の成長が阻止または抑制される。もっとも、使用する腫瘍細胞はLLCに限るものではなく、最初の腫瘍の固定化処理は凍結凝固に限らないし、球状メソポーラスシリカと摘出腫瘍、及び球状メソポーラスシリカの投与時期、観察期間も適宜設定できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
本発明におけるその他の用語や概念は、当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものであり、本発明を実施するために使用する技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。また、各種の分析などは、使用した分析機器又は試薬、キットの取り扱い説明書、カタログなどに記載の方法を準用して行った。
なお、本明細書中に引用した技術文献、特許公報及び特許出願明細書中の記載内容は、本発明の記載内容として参照されるものとする。
(実施例1)形状、粒径、構造の異なるシリカ微粒子の免疫刺激作用
下記(表1)に示す各種の形状、粒径、構造の異なるシリカ微粒子(表1(c)〜(k))の免疫刺激作用(細胞性免疫及び/または体液性免疫)を調べた。2 mgの水酸化アルミニウム粉末(アラム)(表1(b))及び表1のシリカ微粒子((c)〜(k))を100μLの生理食塩水に懸濁させマウス(C57BL/6J、6〜10週齢、雌)の尾の付け根部分(50μL)及び両足底球(各25μL)に注入した。各微粒子を懸濁させる生理食塩水に抗原となるOVAを0.5 mg/mLの濃度で添加するOVA刺激群と添加しない非刺激群の2群を準備した。陰性対照として微粒子を添加しない生理食塩水(表1(a2))を投与する群も併せて検討した。投与後8日目に摘出した流入領域リンパ節を粉砕してリンパ球の単一懸濁液を得た。回収したリンパ球は10% FBS添加RPMI1640培養液中で、OVA刺激を行いながら72時間培養を行った。一連の作業後のリンパ球の免疫活性は、リンパ球が産生するサイトカイン、具体的にはIFNγ、IL-2、IL-4及びIL-10量によって比較した。IL-2及びIFNγの産生量が増加すれば細胞性免疫が、IL-4及びIL-10の産生量が増加すれば体液性免疫が活性化されたと評価した。
図1に流入領域リンパ節から回収したリンパ球のOVA刺激後の各サイトカイン産生量を示す。図1Aには、IFNγ、図1BはIL-2、図1CはIL-4、図1DはIL-10の産生量が示されている。メソポアのないシリカ微粒子((c)〜(f))はアラム((b))と同等以下のサイトカイン産生量を示すのに対し、メソポーラスシリカはサイトカイン産生量が多くなる傾向があり、単独で免疫刺激作用があることが認められた。球状粒子である(g)(h)(i)が単独でも免疫刺激作用が高く、特に(g)はIL-2 及びIL-10産生量が高く、(i)はIL-2産生量が高く、(h)は、IFNγ、IL-2、IL-4及びIL-10の全ての産生量が高く、細胞性免疫活性及び液性免疫活性のいずれに対しても増強作用が強いことが示された。
(実施例2)球状メソポーラスシリカ微粒子の合成法
(2−1)中空及び緻密質メソポーラスシリカ球状粒子の合成
中空及び緻密質メソポーラスシリカ球状粒子(表1(l)(m)(h))を合成し、中空構造、外殻の厚さ、メソポア径の制御を行った。テンプレート剤であるヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(C19H42BrN、別名:cetyltrimethylammonium bromide、以下「CTAB」と略す)を、28%アンモニア水を添加したエタノール(99.5%)に溶解し、その溶液を35 ℃に加温した。温度を維持しつつ溶液を激しく撹拌したうえでオルトケイ酸テトラエチル(Si(OC2H5)4、別名:Tetraethyl orthosilicate、以下TEOSと略す)を素早く添加し、そのまま24時間撹拌し続けた。この溶液の各化学成分の混合比はモル比でTEOS:CTAB:アンモニア:超純水:エタノール(99.5%)が1.00:0.0922:2.96:621:115に設定した。この操作で得られた白沈は遠心分離(4400 rpm、10分間)により回収し、さらにエタノール(99.5%)で3回洗浄した。この白沈を、超純水480 mLに対してTEOSを1 mL添加した溶液中で撹拌処理を行い、その後の処理条件を変えることによって起こる自発的な形状変化により微粒子の外殻の厚さを3段階に調節した。得られた3種類の微粒子は、それぞれ遠心分離(4400 rpm、10分間)により回収し、さらに超純水とエタノール(99.5%)で洗浄した。その後80 ℃で乾燥し、更に550 ℃で5時間焼成することでCTABを除去した。外殻の厚さを調節するための具体的な処理条件は(表2:中空メソポーラスシリカ微粒子の外殻厚の調整条件)に示す。
(2−2)金属含有で緻密質のメソポーラスシリカ球状粒子の合成
金属含有で緻密質のメソポーラスシリカ球状粒子(表1(n)(o)(p))はLiらの方法(Micropor Mesopor Mater 2007; 102: 151-158)を参考に以下のように合成した。
水酸化ナトリウム0.28gとテンプレート剤であるCTAB1gを480mLの水に溶解した。CTABが完全に溶解したことを目視で確認した後、溶液を70℃に加温した。温度を維持しつつCTAB溶液を激しく撹拌したうえでTEOSと硝酸カルシウム溶液、TEOSと硝酸マグネシウム溶液、若しくはTEOSと硝酸亜鉛溶液の何れかの組合せを滴下した。その際、金属/ケイ素モル比は10mol%と設定した。滴下後5時間撹拌を続行し、加水分解による白色沈殿を得た。沈殿は遠心分離し、純水とエタノールで十分洗浄し、80℃で乾燥した。乾燥物は550℃で5時間焼成することでCTABを除去した。生成物を酸で溶解して誘導結合プラズマ発光分光分析で化学分析したところ、(n)のCa/Siモル比は7.4±0.3 mol% 、(o)のMg/Siモル比は9.6±0.3 mol%、(p)のZn/Siモル比は 10.7±0.1 mol%であった。
(2−3)各メソポーラスシリカ球状粒子の形状及び特性
図2にメソポーラスシリカ(l)(m)(h)(n)(o)(p)の透過型電子顕微鏡像を示す。いずれの微粒子も直径は100〜200 nm程度の球状であり、(l) (n)(o)(p)は粒子内に電子線透過率が高い部分が無く、外殻の存在しない内部まで緻密なメソポーラス粒子(緻密タイプともいう。)である。(m)は粒子中心部の電子線透過率が高いために明るく、辺縁部は電子線の透過率が低いために暗い。この暗い部分は外殻であり70 nm程度の厚さである。すなわち(m)は厚さ70nmの外殻を有する球状の中空メソポーラスシリカ粒子(中空タイプともいう。)である。同様に(h)は30 nm〜40 nm程度の外殻を有する球状の中空メソポーラスシリカ(中空タイプ)であった。更に高倍率で観察することによりおおよそ数nm周期の微細な濃淡の変化が認められ、外殻がメソポーラス体であることが示された。さらに電子顕微鏡像の真円率測定から、(l)(m)(h)(n)(o)(p)のいずれも真円率20%以下の球状メソポーラスシリカが80%以上含有されていることが判る。(l)(m)(h)(n)(o)(p)以外の微粒子についても同様に電子顕微鏡像から直径と真円率を測定した。それらの結果は上記(表1)に示す。
図3A,B及びCのそれぞれに(l),(m)及び(h)の細孔分布及び窒素吸着等温線の測定結果を示す。透過型電子顕微鏡像での観察を裏付けるように、細孔分布測定結果ではいずれの微粒子も直径2〜6 nmにピークが存在すること、及びすべての微粒子の窒素吸着等温線はIUPACによる吸脱着等温線の分類のIV型に類似することより、(l),(m)及び(h)はメソポーラス体であることが示された。(表3)に、「中空メソポーラスシリカの比表面積」を示す。特に、中空タイプの (m)及び(h)は、緻密タイプの(l)よりBET比表面積が高く、窒素吸着量でのヒステリシスループが大きいことからみて、さらに外殻の内表面へも窒素の吸着が起こることが実証された。このことは、抗原の吸着、デリバリーや保護に有利に働くことを示す(図3A〜C)。
(実施例3)球状メソポーラスシリカの抗原特異的抗腫瘍免疫刺激作用の評価
(3−1)球状メソポーラスシリカ粒子の抗腫瘍免疫刺激作用の評価
球状メソポーラスシリカが単独で免疫刺激作用、特に細胞性獲得免疫刺激作用を発揮することを確認するため、マウスをモデル動物として抗腫瘍免疫刺激作用を検討した。腫瘍抗原としてはLLC細胞(細胞番号RCB0558:理研バイオリソースセンター)の破砕物を使用した。0.8 mgの球状メソポーラスシリカ(h) とLLC 2.5×105個分の破砕物を含有する0.1 mLの生理食塩水をマウス(C57BL/6J、6〜10週齢、雌、n=5)の背部左側皮下に注入した。更に7日後及び11日後に再び0.8 mgの(h)を含む0.1 mLの生理食塩水を同一箇所に皮下注入した。同一の操作を、LLC 2.5×105個分の破砕物を含む生理食塩水のみを注入する陰性対照群(n=5)にも行った。15日後に生細胞として得たLLC(1×104個)を同マウス右下肢の皮下に注入し、その後の腫瘍形成を1ヵ月間経過観察した。LLC が生着しなければ、抗腫瘍免疫が成立していると評価した。
図4A、図4Bに球状メソポーラスシリカ(h)の抗腫瘍免疫刺激作用の評価結果を示す。触診により腫瘍の存在が確認された場合に、これをエンドポイントとしてカプランマイヤー曲線(図4A、図4C)を作成した。(h)群では腫瘍阻止率が観察期間中100%を維持し続けたのに対して生理食塩水群は12日後に腫瘍発生が認められ、30日の経過期間後に実施したlog-rank検定でも有意差が検出されたことからも(h)単独での明瞭な抗原特異的抗腫瘍免疫刺激作用が示された(図4A,B)。
抗原と球状メソポーラスシリカだけの混合物の投与によって、抗原特異的な抗腫瘍免疫(細胞性の獲得免疫)が誘導されて、腫瘍の成長を効果的に抑制できたことが証明できた。
(3−2)金属含有の緻密質球状メソポーラスシリカ粒子の抗腫瘍免疫刺激作用の評価
金属含有の緻密質球状メソポーラスシリカが単独で免疫刺激作用、特に細胞性獲得免疫刺激作用を発揮することを確認するため、マウスをモデル動物として抗腫瘍免疫刺激作用を検討した。モデル腫瘍抗原としてOVAを使用した。2 mgの金属含有緻密質球状メソポーラスシリカ(n)(o)(p)又は金属非含有緻密質球状メソポーラスシリカ(g)と150μgのOVAを含有する0.1 mLの生理食塩水をマウス(C57BL/6J、6〜10週齢、雌、n=5)の背部左側皮下に注入した。更に3日後及び10日後に再び2 mgの(n)(o)(p) (g)を含む0.1 mLの生理食塩水を同一箇所に皮下注入した。同一の操作を、生理食塩水(OVAは含まない)のみを注入する陰性対照群(n=5)にも行った。14日後に生細胞として得たE.G7-OVA (American Type Culture Collection (ATCC))の5×105個を同マウス右背部の皮下に注入し、その後の腫瘍形成を1ヵ月間経過観察した。E.G7-OVA が生着しない、若しくは腫瘍が直径15mm未満(半球近似による直径)に留まっていれば、抗腫瘍免疫が成立していると評価した。
図4C、図4Dに金属含有の球状メソポーラスシリカ(g) (n)(o)(p)の抗腫瘍免疫刺激作用の評価結果を示す。15 mm以上の直径にまで腫瘍の成長が見られた場合をエンドポイントとしてカプランマイヤー曲線を作成した。その結果、(g) (n)(o)(p)の全ての場合において、単独での抗原特異的抗腫瘍免疫刺激作用が示された(図4C、D)。
抗原と金属含有の球状メソポーラスシリカだけの混合物の投与によって、抗原特異的な抗腫瘍免疫(細胞性の獲得免疫)が誘導されて、腫瘍の成長を効果的に抑制できたことが証明できた。
(実施例4)再発予防モデルでの球状メソポーラスシリカの抗腫瘍免疫刺激作用の評価
さらに、球状メソポーラスシリカ(h)について、単独での抗腫瘍免疫刺激作用を再発防止モデルで検討した。すなわち、0.1 mLの生理食塩水に懸濁させた5×105個のLLC をマウス(C57BL/6J、6〜10週齢、雌、n=12)を背部左側皮下に注入し、7〜10日後に形成された腫瘍組織を外科的に摘出した。摘出した腫瘍組織は液体窒素に30分間投入した後、粉砕して自家腫瘍抗原として使用した。腫瘍組織摘出から3日後、0.8 mgの球状メソポーラスシリカ(h) と自家腫瘍抗原を含有する0.1 mLの生理食塩水を上記外科処置したマウスの背部左側皮下(腫瘍摘出部)に注入した。更に7日後及び14日後に再び0.8 mgの(h)を含む0.1 mLの生理食塩水を同一箇所に皮下注入した。自家腫瘍抗原のみ(n=11)、及びアラムを添加した自家腫瘍抗原の生理食塩水懸濁液(n=12)を注入する2つの対照群にも同一の操作を行った。4週後に改めて生細胞懸濁液として得たLLC(5×105個/0.1 mL生理食塩水)を、腫瘍再発巣を模擬して同マウス背部右側皮下に注入し(モデル再発)、その後の腫瘍形成を1ヵ月間経過観察した。腫瘍が形成されなければ、腫瘍再発防止効果が示されたと評価した。
図5に球状メソポーラスシリカ(h) 単独での腫瘍再発防止効果の評価結果を示す。触診により背部右側での腫瘍発生が確認された時点をエンドポイントとみなしてカプランマイヤー曲線を作成した。(h)群の腫瘍再発防止率は3群の中で最も高い傾向があった。この結果は、球状メソポーラスシリカ単独を腫瘍抗原である腫瘍組織粉砕物と混合するだけで、細胞性の獲得免疫である抗腫瘍免疫を誘導し、腫瘍再発率を低減させることが出来ることを示している。
(実施例5)球状メソポーラスシリカの免疫記憶効果の評価
球状メソポーラスシリカがどの様に免疫誘導に関与しているかを検討するため、球状メソポーラスシリカ(h) について免疫記憶の観点から評価した。
球状メソポーラスシリカ(h) によって癌の再発を抑制可能ということからは、(h)が免疫記憶をつかさどるエフェクター記憶T細胞数を増加させ癌の再発抑制期間延長に寄与することが予想される。そこで、CD44を高度に発現し、CD62Lをほとんど発現していないとされるエフェクター記憶T細胞の特徴を基に存在割合を確認した。(実施例4)で2回目にLLCを投与した後に観察期間終了時まで生存したマウス(n=3)から、安楽死後に骨髄を採取し、単一細胞懸濁液を調製した後に0.5%ウシ血清アルブミン/PBS(-)で洗浄した。回収した骨髄細胞は事前に抗CD16/CD32抗体(BDバイオサイエンス)でFcレセプターをブロックした後、CD4、CD8、CD44及びCD62Lの発現の有無をフローサイトメトリーにより計数した。
図6AにCD4陽性(ヘルパーT細胞に該当)、図6BにCD8陽性(キラーT細胞に該当)エフェクター記憶T細胞の、骨髄から採取した総細胞数に占める割合を示す。
(h)単独と自家腫瘍抗原の混合物を投与したマウスにおいては、アラムと自家腫瘍抗原の混合物、あるいは自家腫瘍抗原のみを含む生理食塩水を投与したマウスと比較して、エフェクター記憶T細胞数が多くなり、特にCD4陽性細胞の場合は有意差が認められた。この結果は、(h)が単独で免疫記憶にも関与し、腫瘍抗原に対して成立した細胞性獲得免疫を長期にわたって持続する効果をもたらすことを示している。
(実施例6)腫瘍組織を物理的手段で変性した後に球状メソポーラスシリカを投与する抗腫瘍免疫刺激作用
C57BL/6アルビノマウスの片側大腿皮下に、クサビラオレンジを発現した腫瘍細胞GL261-mKOを1×10個播種した。IVISで腫瘍サイズをモニターし、播種10日後に、腫瘍局所に物理的手段として20Gyのエックス線を照射して腫瘍を変性した。次に照射4,7,11,14,18,21日後に球状メソポーラスシリカ(h)0.1mgを、エックス線照射した大腿部の変性腫瘍部に投与し、照射24日後にモデル再発として脳に6×10個のGL261-mKO細胞を播種した(6回投与群; 10匹)。コントロールの無投与群(16匹)では、同一の細胞数とスケジュールにて、大腿部皮下での腫瘍形成、エックス線照射による大腿部腫瘍の変性、及び脳への細胞播種を行った。脳への腫瘍細胞播種後は、IVISで大腿部と脳の腫瘍サイズをモニターしつつ、経過観察を行った。
図7に、エックス線という物理手段で変性した腫瘍組織に球状メソポーラスシリカ(h) を単独投与し、モデル再発として脳に腫瘍細胞を播種したマウスの生存曲線を示す。コントロールである球状メソポーラスシリカ無投与群では全生存期間平均値が59.8日であった。これに対して、球状メソポーラスシリカ(h)の6回投与群では全生存期間平均値が76.3日(p=0.038)であり、物理手段で変性した腫瘍部への(h)単独の投与により、全生存期間が延長する傾向が有意差をもって観察された。
(実施例7)メソポーラスシリカのエンドトキシン混入量の測定
球状メソポーラスシリカ(h)11.4mgを秤量して15mLチューブに入れた。ここに注射用蒸留水を11.4mL添加して、均一な懸濁液とした。この懸濁液100μLをサンプルとし、カブトガニ血球抽出成分を用い、カイネッティック比色法で定量した。エンドトキシン標準品としては日本薬局方エンドトキシン標準品(JP-RSE)を使用し、標準品の表示力価に基づき10000 EU/mLの標準原液を調製して、測定に使用した。2回の測定で、サンプルのエンドトキシン濃度は0.05EU/mL以下であると測定された。したがって、球状メソポーラスシリカ(h)のエンドトキシン混入量は0.05EU/mg以下であることが判明した。すなわち、球状メソポーラスシリカ(h)に非意図的に混入したエンドトキシンは0.1EU/mg以下であった。
(実施例8)球状メソポーラスシリカと抗PD-1抗体を含有する組成物の腫瘍治療効果、及び球状メソポーラスシリカと抗PD-1抗体の組み合わせ医薬の腫瘍治療効果
球状メソポーラスシリカ(h)と免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-1抗体を含有する組成物、及び球状メソポーラスシリカ(h)と抗PD-1抗体の組み合わせ医薬による腫瘍の治療及び/又は予防の効果を検討した。具体的には、抗PD-1抗体と球状メソポーラスシリカ(h)の投与量と投与方法を変えて投与し、オボアルブミン(OVA)を発現するリンパ腫細胞E.G7-OVA(ATCC(登録商標) CRL2113TM)の腫瘍に対する成長阻害効果を経時的に観察した。なお、本実施例では抗PD-1抗体として抗マウスPD-1抗体を使用した。
5×105個のE.G7-OVAを懸濁した0.1 mLの生理食塩水をマウス(C57BL/6J、7週齢、雌、n=5)の背部右側皮下に注入した。細胞注入以降3日後、10日後及び17日後にモデル腫瘍抗原であるOVA、抗PD-1抗体及び球状メソポーラスシリカ(h)を(表4)に示す1回あたりの投与量及び投与方法でマウスに投与した。GA1が陰性対照群である。GA2が球状メソポーラスシリカ(h)とOVAの混合物の局所投与に抗PD-1抗体の全身投与を組み合わせた組み合わせ医薬群、GA3及びGA4が抗PD-1抗体全身投与群、そしてGA5が球状メソポーラスシリカ(h)とOVAと抗PD-1抗体を混合した組成物群(球状メソポーラスシリカ(h)と抗PD-1抗体を含有する組成物群)である。なお、条件をそろえるため全ての群にOVAを投与した。マウス背部右側に形成される腫瘍の成長の経過観察は、E.G7-OVA投与以降6日後から28日後まで週2〜3回実施し、腫瘍の平均直径(短径と長径の長さの和の半分の値)が15 mmを超えた時点でエンドポイントを迎えたと判定して、経過観察終了後にカプランマイヤー曲線を作成した。
球状メソポーラスシリカと抗PD-1抗体の組み合わせ医薬による腫瘍の治療及び/又は予防の効果はGA1〜GA4の比較で確認した。作成したカプランマイヤー曲線を(図8A)に示す。
OVA局所投与のみの陰性対照群(GA1)では、E.G7-OVAの注入から16日後にはエンドポイントに至るケースが初確認され、その後どの群よりも早く27日目までにすべてのマウス背部右側に形成された腫瘍の平均直径が15 mmを超えた。既存療法と同様に抗PD-1抗体のみを全身投与した群(GA3及びGA4)では、エンドポイント初確認は21日にまで遅延できるものの、観察期間終了時まで腫瘍平均直径が15 mm以下にとどまったマウスの割合は最終的に0.0〜0.2まで低下した。球状メソポーラスシリカ(h)とOVAの混合物の局所投与にGA4と同量の抗PD-1抗体を全身投与する組み合わせ医薬群の場合(GA2)も、エンドポイント初確認は21日目であったが、加えて観察期間終了時まで腫瘍平均直径が15 mm以下にとどまったマウスの割合は比較した4群中最も高い0.4を維持した。
この結果は、抗PD-1抗体の既存療法時に球状メソポーラスシリカを組み合わせ医薬として併用することによって、抗PD-1抗体のみで治療するよりも優れた腫瘍の治療及び/又は予防の効果が得られることを示している。
球状メソポーラスシリカと抗PD-1抗体を含有する組成物による腫瘍の治療及び/又は予防の効果はGA1、GA3及びGA5の比較で確認した。作成したカプランマイヤー曲線を(図8B)に示す。OVA局所投与のみの陰性対照群(GA1)ではE.G7-OVAの注入から16日後にはエンドポイントに至るケースが初確認されたのに対し、球状メソポーラスシリカ(h)とOVAと抗PD-1抗体を混合した組成物の局所投与群(GA5)は、既存療法と同様に抗PD-1抗体のみを全身投与した群(GA3)に類似して、エンドポイントの初確認を21日にまで遅延できた。更にGA5では、比較した3群中で唯一観察期間終了時まで腫瘍平均直径が15 mm以下にとどまったマウスの割合が0.0まで低下せず0.4を維持した。
この結果は、球状メソポーラスシリカ(h)と抗PD-1抗体の両者を含有する組成物にして局所投与することにより、既存療法時より抗PD-1抗体の使用量を低減させた状態でも腫瘍の治療及び/又は予防の効果があることを示している。また抗PD-1抗体の全身投与の必要がなく、抗PD-1抗体の使用量が低減され、副作用として懸念される全身的な免疫の異常活性化のリスクを低減させることが可能になる。逆の観点では、本実施例によれば、球状メソポーラスシリカを単独で使用する場合にも認められる腫瘍の治療及び/又は予防の効果が免疫チェックポイント阻害剤を混合し、両者を含有する組成物とすることで増幅する可能性が示唆される。
(実施例9)球状メソポーラスシリカと抗PD-L1抗体を含有する組成物の腫瘍治療効果、及び球状メソポーラスシリカと抗PD-L1抗体の組み合わせ医薬の腫瘍治療効果
(実施例8)では免疫チェックポイント阻害剤として抗PD-1抗体を選択し、球状メソポーラスシリカと抗PD-1抗体の組み合わせ医薬、及び球状メソポーラスシリカと抗PD-1抗体を含有する組成物の腫瘍の治療及び/又は予防の効果を検討したが、別種の免疫チェックポイント阻害剤で同等の組み合わせ医薬又は組成物を構成した場合に、(実施例8)と同様に相乗的な腫瘍の治療及び/又は予防の効果が得られるか否かを、(実施例8)と類似の条件下で抗PD-L1抗体を用いて検討した。なお、本実施例においては抗PD-L1抗体として抗マウスPD-L1抗体を使用した。
5×105個のE.G7-OVAを懸濁した0.1 mLの生理食塩水をマウス(C57BL/6J、7週齢、雌、実験開始時の匹数n=10)の背部右側皮下に注入した。細胞注入以降3日後、10日後、16日後及び24日後にモデル腫瘍抗原であるOVA、抗PD-L1抗体及び球状メソポーラスシリカ(h)を(表5)に示す1回あたりの投与量及び投与方法でマウスに投与した。GB1(n=9)が陰性対照群である。GB2(n=10)が球状メソポーラスシリカ(h)とOVAの混合物の局所投与に抗PD-L1抗体の全身投与を組み合わせた組み合わせ医薬群、GB3(n=10)及びGB4(n=10)が抗PD-L1抗体全身投与群、そしてGB5(n=9)が球状メソポーラスシリカ(h)とOVAと抗PD-L1抗体を混合した組成物群(球状メソポーラスシリカ(h)と抗PD-L1抗体を含有する組成物群)である。なお、条件をそろえるため全ての群にOVAを投与した。マウス背部右側に形成される腫瘍の成長の経過観察は、E.G7-OVA投与以降3日後から28日後まで週2〜3回実施し、腫瘍総体積が1690 mm3(腫瘍平均直径15 mmの場合の体積)を超えた時点でエンドポイントを迎えたと判定して、経過観察終了後にカプランマイヤー曲線を作成した。なお、経過観察期間終了を待たずに死亡したマウスに関しては、背部に形成された腫瘍に対する治療効果が得られなかったことが直接的な死因と結論できない場合においては脱落扱いとして実験結果から除外したため、群によってn数が異なる。
球状メソポーラスシリカと抗PD-L1抗体の組み合わせ医薬による腫瘍の治療及び/又は予防の効果はGB1〜GB4の比較で確認した。作成したカプランマイヤー曲線を(図9A)に示す。OVA局所投与のみの陰性対照群(GB1)の場合、E.G7-OVAの注入から15日後にはエンドポイントに至るケースが初確認され、その後もエンドポイントに至るマウス数はどの群よりも早く増加した。OVA局所投与と中用量(100 μg)の抗PD-L1抗体の全身投与群(GB4)ではエンドポイントに至るケースの初確認は多少遅延し17日後だったが、中用量の全身投与且つ球状メソポーラスシリカ(h)とOVAの混合物の局所投与を組み合わせた組み合わせ医薬群(GB2)の場合は、高用量(200 μg)の抗PD-L1抗体の全身投与群(GB3)と同様に、エンドポイントに至るマウスの初確認時期を20日後にまで遅延できた。それ以降の経過はGB2〜GB4でおおむね同等であった。すべてのマウスがエンドポイントに至る以前の13日目において、腫瘍総体積を比較したところ、(表6)に示すようにGB2(球状メソポーラスシリカ(h)とOVAの混合物の局所投与に抗PD-L1抗体の全身投与を組み合わせた組み合わせ医薬群)及びGB3(高用量の抗PD-L1抗体のみを既存療法と同様に全身投与した群)の総腫瘍体積の平均値はGB1(OVA局所投与のみの陰性対照群)の42〜46%程度であった。
この結果も腫瘍の成長が遅延したことを示しており、その効果がGB2とGB3でほぼ同等であることが分かる。以上の結果は、球状メソポーラスシリカと抗PD-L1抗体の組み合わせ医薬により腫瘍の治療及び/又は予防の効果を得ようとする場合、腫瘍形成後の比較的早い段階での効果が顕著であること、また組み合わせ医薬とすることでその効果を維持しつつ抗PD-L1抗体の使用量を半量にできること示している。
球状メソポーラスシリカと抗PD-L1抗体を含有する組成物を局所投与することによる腫瘍の治療及び/又は予防の効果はGB1、GB3及びGB5の比較で確認した。作成したカプランマイヤー曲線を(図9B)に示す。OVA局所投与のみの陰性対照群(GB1)はE.G7-OVAの注入から15日後にはエンドポイントに至るケースが初確認されたのに対し、球状メソポーラスシリカ(h)とOVAと低用量(25 μg)抗PD-L1抗体を混合した組成物の局所投与群(GB5)では20日後にまでエンドポイントの初確認時期を遅延でき、遅延効果は高用量の抗PD-L1抗体の全身投与群(GB3)と同等だった。GB5では、観察終了までエンドポイントに至らないマウスが存在し、この点もGB3と類似している。
この結果は、球状メソポーラスシリカ(h)と抗PD-L1抗体の両者を含有する組成物を局所投与することにより、全身投与で腫瘍治療効果が認められた抗PD-L1抗体の使用量を1/8に低減させても同等の腫瘍の治療及び/又は予防の効果を発揮することを示している。また抗PD-L1抗体の全身投与の必要がなく、抗PD-L1抗体の使用量が低減され、タンパクレベルでPD-L1を発現する正常細胞に不用意に作用する、即ち副作用を起こすリスクを低減させることが可能になる。逆の観点では、本実施例の結果も、球状メソポーラスシリカを単独で使用する場合にも認められる腫瘍の治療及び/又は予防の効果が免疫チェックポイント阻害剤を混合し、両者を含有する組成物とすることで増幅する可能性が示唆される。
(実施例10)球状メソポーラスシリカの違いによる抗PD-1抗体を含有する組成物、及び抗PD-1抗体との組み合わせ医薬の腫瘍治療効果
(実施例8)及び(実施例9)では球状メソポーラスシリカとして、いずれも(実施例1)の(表1)に記載した球状メソポーラスシリカ(h)を使用したが、特許請求の範囲の内で形状、構造及び粒径を変更した球状メソポーラスシリカ(以下、記号を(q)とする)を用いた場合についても、同様に免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-1抗体を含有する組成物、及び抗PD-1抗体との組み合わせ医薬による腫瘍の治療及び/又は予防の効果が得られることを示す。実験条件は(実施例8)を参考に設定した。なお、本実施例でも抗PD-1抗体として抗マウスPD-1抗体を使用した。
本実施例で用いた球状メソポーラスシリカ(q)と、(実施例8)及び(実施例9)で用いた球状メソポーラスシリカ(h)との形状、構造及び粒径を(表7)にて比較した。粒径は球状メソポーラスシリカ(q)の方がおおよそ2倍大きくなっている。真円率及び真円率が20%以下の粒子の割合の値は両メソポーラスシリカで比較的近い値であった。
※平均値±標準偏差
5×105個のE.G7-OVAを懸濁した0.1 mLの生理食塩水をマウス(C57BL/6J、7週齢、雌、n=5)の背部右側皮下に注入した。細胞注入以降3日後、10日後及び17日後にモデル腫瘍抗原であるOVA、抗PD-1抗体及び球状メソポーラスシリカ(q)を(表8)に示す1回あたりの投与量及び投与方法でマウスに投与した。GC1が陰性対照群である。GC2が球状メソポーラスシリカ(q)とOVAの混合物の局所投与に抗PD-1抗体の全身投与を組み合わせた組み合わせ医薬群、GC3及びGC4が抗PD-1抗体全身投与群、そしてGC5が球状メソポーラスシリカ(q)とOVAと抗PD-1抗体を混合した組成物群(球状メソポーラスシリカ(q)と抗PD-1抗体を含有する組成物群)である。なお、条件をそろえるため全ての群にOVAを投与した。マウス背部右側に形成される腫瘍の成長の経過観察は、E.G7-OVA投与以降6日後から28日後まで週2〜3回実施し、腫瘍の平均直径(短径と長径の長さの和の半分の値)が15 mmを超えた時点でエンドポイントを迎えたと判定して、経過観察終了後にカプランマイヤー曲線を作成した。
球状メソポーラスシリカ(q)と抗PD-1抗体の組み合わせ医薬による腫瘍の治療及び/又は予防の効果はGC1〜GC4の比較で確認した。作成したカプランマイヤー曲線を(図10A)に示す。低用量(50 μg)の抗PD-1抗体の全身投与群(GC4)では、OVA局所投与のみの陰性対照群(GC1)に類似してE.G7-OVAの注入から17日後にはエンドポイントに至るケースが初確認され、その後26日目までにすべてのマウス背部右側に形成された腫瘍の平均直径が15 mmを超えた。球状メソポーラスシリカ(q)とOVAの混合物の局所投与にGC4と同量の抗PD-1抗体を全身投与する組み合わせ医薬群の場合(GC2)、エンドポイント初確認は高用量(200 μg)の抗PD-1抗体の全身投与群(GC3)と同じで21日目にまで遅延された。加えてGC2では観察期間終了時まで腫瘍平均直径が15 mm以下にとどまったマウスの割合は比較した4群中唯一0.4を維持した。
GC2とGC4では投与した抗PD-1抗体量が同一であることから、組み合わせ医薬として球状メソポーラスシリカ(q)を組み合わせたことによって腫瘍の治療及び/又は予防の効果が得られたものと考えられる。また、組み合わせ医薬として抗PD-1抗体の既存療法時に使用することで腫瘍の治療及び/又は予防の効果が得られる球状メソポーラスシリカは、適切に形状、構造及び粒径を調節すれば球状メソポーラスシリカ(h)に限られるものではないことを示している。
球状メソポーラスシリカ(q)と抗PD-1抗体を含有する組成物による腫瘍の治療及び/又は予防の効果はGC1、GC3及びGC5の比較で確認した。作成したカプランマイヤー曲線を(図10B)に示す。OVA局所投与のみの陰性対照群(GC1)ではE.G7-OVAの注入から16日後にはエンドポイントに至るケースが初確認されたのに対し、球状メソポーラスシリカ(q)とOVAと抗PD-1抗体を混合した組成物の局所投与群(GC5)は、エンドポイントの初確認を24日目にまで遅延し、既存療法と同様に抗PD-1抗体のみを全身投与した群(GC3)よりも遅延された。更にGC5では、比較した3群中で唯一観察期間終了時まで腫瘍平均直径が15 mm以下にとどまったマウスの割合が0.0まで低下せず0.4を維持した。
この結果から、球状メソポーラスシリカ(q)の場合も、これと抗PD-1抗体の両者を含有する組成物にして局所投与することにより、既存療法時より抗PD-1抗体の使用量を低減させた状態で腫瘍の治療及び/又は予防の効果があること、抗PD-1抗体の全身投与の必要がなく且つ抗PD-1抗体の使用量が低減できることから副作用として懸念される全身的な免疫の異常活性化のリスクの低減が可能になることが示された。また、抗PD-1抗体を含有する組成物として使用する球状メソポーラスシリカとして適切に形状、構造及び粒径を調節すれば球状メソポーラスシリカ(h)に限らずとも腫瘍の治療及び/又は予防の効果が得られることも示している。

Claims (13)

  1. 球状メソポーラスシリカを含む腫瘍免疫療法用アジュバントであって、非意図的に混入する0.1EU/mg以下のエンドトキシン以外の免疫刺激作用物質は含まず、単独でも免疫刺激作用がある、腫瘍免疫療法用アジュバント。
  2. 球状メソポーラスシリカとして真円率20%以下の粒子が65%以上含まれており、かつ粒子径が50〜5,000nmである、請求項1に記載の腫瘍免疫療法用アジュバント。
  3. 球状メソポーラスシリカが中空状であることを特徴とする、請求項1ないし2のいずれか一項に記載の腫瘍免疫療法用アジュバント。
  4. 中空状の球状メソポーラスシリカが、10〜200nmの厚さの外殻を有し、かつ外殻内に直径2〜50nmのメソポアを有していることを特徴とする、請求項3に記載の腫瘍免疫療法用アジュバント。
  5. 球状メソポーラスシリカが、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ナトリウム、カリウム、リン、ホウ素及びアルミニウムの中から選ばれた少なくとも一種類の金属を、金属/ケイ素モル比0〜20mol%で含有することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の腫瘍免疫療法用アジュバント。
  6. 腫瘍抗原と共にヒトを含む哺乳類動物の体内に投与して該腫瘍抗原に対する全身性免疫反応を誘導するための、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の腫瘍免疫療法用アジュバント。
  7. 腫瘍抗原が、腫瘍組織、腫瘍細胞、腫瘍細胞溶解物もしくはこれらの変性物、腫瘍細胞成分、腫瘍抗原タンパク、腫瘍抗原ペプチドからなる群から選ばれる、請求項6に記載の腫瘍免疫療法用アジュバント。
  8. ヒトを含む哺乳類動物の腫瘍組織を物理的手段で変性させた後に該腫瘍組織内に投与することにより抗腫瘍免疫反応を誘導するための請求項1ないし5のいずれか一項に記載の腫瘍免疫療法用アジュバントであって、物理的手段がマイクロウエーブ照射、ラジオフリークエンシー凝固法、凍結凝固法、電気メス加熱、熱水注入、アルコール注入、塞栓法、放射線照射、レーザー光照射、及び超音波破壊からなる群から選ばれる1種又は2種以上の手段である腫瘍免疫療法用アジュバント。
  9. 請求項1ないし5のいずれか一項に記載の腫瘍免疫療法用アジュバントと腫瘍抗原とを含むワクチン。
  10. (1)請求項1ないし8のいずれか一項に記載の腫瘍免疫療法用アジュバント又は請求項9に記載のワクチンと共に、(2)免疫チェックポイント阻害剤を含有することを特徴とする、腫瘍の治療及び/又は予防用組成物。
  11. 免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体 、抗PD-L2抗体 、抗CTLA-4抗体、抗CD40抗体、抗CD137抗体、抗OX40抗体、抗TGF-β抗体、抗LAG3抗体、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、抗TIM3抗体、抗CD96抗体、抗TIGIT抗体から選ばれる1又は2以上の抗体である、請求項10に記載の腫瘍の治療及び/又は予防用組成物。
  12. (1)請求項1ないし8のいずれか一項に記載の腫瘍免疫療法用アジュバント又は請求項9に記載のワクチンと、(2)免疫チェックポイント阻害剤とを組み合わせてなる、腫瘍の治療及び/又は予防用医薬。
  13. 免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体 、抗PD-L2抗体 、抗CTLA-4抗体、抗CD40抗体、抗CD137抗体、抗OX40抗体、抗TGF-β抗体、抗LAG3抗体、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、抗TIM3抗体、抗CD96抗体、抗TIGIT抗体から選ばれる1又は2以上の抗体である、請求項12に記載の腫瘍の治療及び/又は予防用医薬。
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