JP2017047701A - 運転支援装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車両Vの前輪7の転舵角θFに対するステアリングホイール1の操舵角θHのギア比Rを変更可能なVGR3と、このVGR3を制御する制御ユニット10とを備えた運転支援装置において、旋回操舵中の運転者の運転席側の腕の肘が伸びた状態に対応した操舵角θHから肘が胴体に接触した状態に対応した操舵角θHまでの操舵角範囲によって設定された快適運転範囲Aを逸脱した不快運転状態を判定可能な不快運転状態判定部10bを有し、制御ユニット10は、不快運転状態判定部10bによって不快運転状態が判定されたとき、ギア比Rを低下させる。
【選択図】 図2
Description
このようなステアリング装置では、高車速域において、伝達レシオを大きく設定(スローレシオ化)することにより、ステアリングホイールを大きく操舵しても車輪の転舵量を小さくして走行安定性を向上させることができ、駐車時等の低車速域において、伝達レシオを小さく設定(クイックレシオ化)することにより、少ない操舵量でも車輪の転舵量を大きくして操縦利便性を向上させている。
図8に示すように、肘角θ1と、腋角θ2とを夫々規定し、肘角θ1を変化させたときの筋発揮トルクと腋角θ2を変化させたときの筋発揮トルクとを夫々測定した。
肘角θ1は、100°付近に筋発揮トルクの頂点を有し、頂点から離れる程筋発揮トルクが低下する特性である。関節受動抵抗よりも上方に位置することにより肘角θ1に応じた発揮トルクを確保できる有効発揮トルク範囲は、50°〜170°の肘角範囲であった。
腋角θ2は、80°付近に筋発揮トルクの頂点を有し、頂点から離れる程筋発揮トルクが低下する特性である。関節受動抵抗よりも上方に位置することにより腋角θ2に応じた発揮トルクを確保できる有効発揮トルク範囲は、−10°〜120°の腋角範囲であった。
これにより、運転者は、50°〜170°の肘角範囲、−10°〜120°の腋角範囲において有効な(身体動作的に無理が生じない)操舵操作を実行できることが判明した。
実験車両は運転席が右側に配設された右側ハンドル車両であり、操舵角が−120°〜120°までの範囲において20°毎に運転者の右腕関節に関する角度を計測している。
図9に操舵角と肘角θ1との相関関係、図10に操舵角と腋角θ2との相関関係を夫々示す。尚、操舵角において、プラス側は右側操舵、マイナス側は左側操舵である。
図9に示すように、操舵角が−60°のとき、肘角θ1が有効発揮トルク範囲の上限値である170°に到達している。これは、運転者の右腕(右肘)が伸びた状態である。即ち、これ以上の左方向への操舵角の増加はステアリング位置を持ち変える等しなければ人体構造上困難であり、運転者の感性を悪化させる。
図10に示すように、操舵角が60°のとき、腋角θ2が有効発揮トルク範囲の下限値である−10°に到達している。これは、運転者の右腕(右肘)が腹部に接触した状態である。これ以上の右方への操舵角増加は肘と腹部との干渉解消動作を行わなければ困難であり、運転者の感性を悪化させる。
前述した快適運転範囲に関する知見を踏まえて運転者の人的要因及び外的要因に基づき運転者の操舵感性を直接的且つ根本的に改善する提案は未だなされていない。
これによれば、快適運転範囲を操舵感性に直接的に作用する操縦に対する発揮トルクと操作性に基づいて設定しているため、高い精度で運転者の不快運転状態を判定することができる。
これによれば、人体構造上困難な操舵動作を確実に減少させることができ、運転状況に拘らず運転者の操舵感性を簡単な構成で改善することができる。
これによれば、今後起こり得る不快運転状態の発生を事前に予測することにより、運転者の操舵感性と走行安定性とを両立させることができる。
これによれば、伝達レシオ低下に伴う修正操舵の発生を事前に抑制することができるため、運転者の操舵感性と走行安定性とを両立させることができる。
以下の説明は、本発明を車両に適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
図1に示すように、車両Vは、車体右側に配設されたステアリングホイール1を備えた右側ハンドル車両であり、このステアリングホイール1には、ステアリングシャフト2の上端部が連結されている。ステアリングシャフト2の下端には伝達レシオ可変機構(以下、VGRと略す)3が連結されている。このVGR3には、中間シャフト4の上端が連結され、この中間シャフト4の下端には、ステアリング機構5が設けられている。
ステアリング機構5は、ラック・ピニオン機構(図示略)で構成され、このピニオンには、中間シャフト4の下端が連結されている。一方、ラックの左右両端部には左右1対のタイロッド6を夫々介して左右1対の前輪7が連結されている。
また、ステアリング機構5には、ステアリング機構5のピニオン側に力を付与する電動モータ8が設けられている。
中間シャフト4には、ステアリングホイール1の操舵角θHを検出可能な舵角センサ9が取り付けられている。舵角センサ9は制御ユニット10(制御手段)に電気的に接続され、舵角センサ9によって検出された操舵角θHの出力値が制御ユニット10に出力されている。
DSCユニット11は、車速を検知する車速センサ、ヨーレイトを検知するヨーレイトセンサ、横加速度を検知する横加速度センサ、ブレーキペダルの踏込操作を検知するブレーキペダルスイッチ、スロットル開度を検知するスロットル開度センサ(何れも図示略)、及び舵角センサ9からの検知信号を入力している。
DSCユニット11は、各々のセンサから得られる情報に基づいて前輪7及び後輪12への制動力やエンジン出力を制御している。このDSCユニット11は制御ユニット10に電気的に接続され、各々のセンサから得られる出力値が制御ユニット10に出力されている。
ノーマルレシオモードは、ギア比Rを、例えば14.5に設定しているため、ステアリングホイール1を所定角度操舵しても前輪転舵角が増加し難い特性に規定されている。
クイックレシオモードでは、ノーマルレシオモードのギア比Rを15%〜30%の範囲で低下させている。ギア比Rの低下量が15%未満の場合、効果が期待できず、ギア比Rの低下量が30%超の場合、運転者が違和感を覚えるためである。
クイックレシオモードは、例えば11.0に設定しているため、ノーマルレシオモードに比べてステアリングホイール1の操舵角θHに対する前輪転舵の応答性が良く、前輪転舵角θFが増加し易い特性に規定されている。
このクイックレシオモードのとき、制御ユニット10は、電動モータ8に指令を出力することよってノーマルレシオモードのときよりもアシスト傾向(アシスト力)を低下させている。これにより、ステアリングホイール1の切り過ぎを抑制し、修正操舵動作の低減による走行安定性向上を図っている。
記憶部10aには、旋回操舵中における運転者の腕の関節角度に基づいて設定された快適運転範囲Aが格納されている。
快適運転範囲Aは、運転者の操舵感性に直接的に作用する操舵時における右側の腕の発揮トルクと操作性に基づいて設定されるものであって、旋回操舵中の運転者の右側の腕の肘が伸びた状態に対応した操舵角(例えば、−60°)から右側の肘が胴体に接触した状態に対応した操舵角(例えば、60°)までの操舵角範囲によって設定されている。
尚、操舵角θHにおいて、プラス側は右側操舵、マイナス側は左側操舵である。
−60°のとき、運転者の右肘は伸びた状態であり、これ以上の左方への操舵角増加は人体構造上難しく、運転者の感性が悪化する。60°のとき、運転者の右肘は腹部に接触した状態であり、これ以上の右方への操舵角増加は肘と腹部との接触傾向が強くなり、運転者の感性が悪化する。それ故、−60°〜60°の操舵角範囲を快適運転範囲Aに設定している。
また、本実施例とは逆に車体左側にステアリングホイール1が配設されている左側ハンドル車両の場合、快適運転範囲Aは、運転者の左側の腕の肘が伸びた状態に対応した操舵角(例えば、60°)から左側の肘が胴体に接触した状態に対応した操舵角(例えば、−60°)までの操舵角範囲になる。
この不快運転状態判定部10bは、操舵角θHが快適運転範囲Aを初めて逸脱した後、切り戻しによって操舵角θHが快適運転範囲A内に戻るまでの1サイクルの操舵動作を1回の不快運転状態と見做している。
モード設定部10cは、不快運転状態の発生回数Nが第1判定回数D1(例えば、2回)未満のとき、及び不快運転状態の発生回数Nが第2判定回数D2(例えば、3回)以上のとき、ノーマルレシオモードを設定している。
尚、第2判定回数D2は第1判定回数D1よりも大きな値である。
不快運転状態の発生回数Nが第1判定回数D1未満のときは、例えば、市街地を走行していると考えられるため、余裕がある操縦性を重視している。不快運転状態の発生回数Nが第2判定回数D2以上のときは、例えば、峻険な山岳路を走行していると考えられるため、修正操舵を少なくするために走行安定性を重視している。
また、このモード設定部10cは、不快運転状態の発生回数Nが第1判定回数D1以上且つ第2判定回数D2未満のとき、クイックレシオモードを設定している。
不快運転状態の発生回数Nが第1判定回数D1以上且つ第2判定回数D2未満のときは、山岳路であっても然程峻険な走行路ではないと考えられるため、走行安定性よりも運転者の操舵感性の向上を優先している。
具体的には、所定判定期間T0内のブレーキペダルスイッチの作動頻度が高く且つスロットル開度センサの変化率が高いとき、例えば、運転者が山岳路の走行を楽しんでいると考えられるため、第1判定回数D1を減少(例えば、1回)させると共に第2判定回数D2を増加(例えば、4回)させてクイックレシオモードの領域を拡大している。
尚、DSCユニット11から車速情報を入力することにより、車速に応じて第1判定回数D1を増加補正しても良く、また、天候情報を入力することにより、降雪時には第1判定回数D1を大幅に増加補正し、実質的にクイックレシオモードの設定を禁止して走行安定性を優先することも可能である。
まず、S1にて、各種情報を読み込むと共に、各変数を初期設定する。
この初期化処理では、不快運転状態の発生回数Nを0、タイマのカウント値Tを0,フラグfを0、第1判定回数D1及び第2判定回数D2を初期値に夫々初期設定する。
S2において、タイマカウントを開始した後、S3に移行して、運転者の操縦動作である操舵角θHが快適運転範囲A(−60°〜60°)から逸脱したか否か判定する。
S3の判定の結果、操舵角θHが快適運転範囲Aから逸脱していない場合、S12に移行して、フラグfが1か否か判定する。
S12の判定の結果、フラグfが1の場合、運転者による1サイクルの旋回動作が完了したため、S13に移行して、不快運転状態の発生回数Nの値に1加算して発生回数NをN+1に変更する。次に、S14に移行して、フラグfを0に変更して、S5に移行する。
S6の判定の結果、フラグfが0の場合、S7に移行して、第1判定回数D1及び第2判定回数D2の初期値を補正した後、夫々決定する。S6の判定の結果、フラグfが0ではない場合、車両Vが旋回(運転者が操舵動作)中であるため、S3に移行する。これは、車両Vの旋回途中における運転モード変更を防止するためである。
S8の判定の結果、不快運転状態の発生回数Nが第1判定回数D1以上の場合、S9に移行し、不快運転状態の発生回数Nが第2判定回数D2以上か否か判定している。
S9の判定の結果、不快運転状態の発生回数Nが第2判定回数D2以上の場合、運転者による修正操舵を抑制するため、S10に移行してノーマルレシオモードを決定した後、S1にリターンする。S9の判定の結果、不快運転状態の発生回数Nが第2判定回数D2未満の場合、運転者の操舵感性を向上させるために、S11に移行してクイックレシオモードを決定した後、S1にリターンする。
S8の判定の結果、不快運転状態の発生回数Nが第1判定回数D1未満の場合、余裕がある操縦性を確保するため、S10に移行してノーマルレシオモードを決定する。
まず、ギア比Rをノーマルレシオモード(14.5)に固定されたノーマルレシオ車両VAと、ギア比Rをクイックレシオモード(11.0)に固定されたクイックレシオ車両VBとを準備し、これら車両VA,VBに標準的な被験者P1(運転者)が乗車してテストコース(周回路)を規定速度で走行したときの操舵角θHを計測する検証実験を行った。
車両VAの走行時、快適運転範囲Aから逸脱した不快運転状態が8回(X1〜X8)発生しているのに対し、車両VBの走行時、快適運転範囲Aから逸脱した不快運転状態が3回(Y1〜Y3)に減少している。それ故、同じ走行経路を走行してもギア比Rの低下によって、被験者P1の操舵感性を悪化させる回数を低減することができる。
図5に、テストコースの所定コーナ部(図4(a)のX4、図4(b)のY2)における車両VA,VBに作用するヨーレイトと操舵角θHとの相関関係を夫々示す。
図5に示すように、車両VBの操舵応答性は、車両VAの操舵応答性よりも高く、操舵角θHを抑えているため、被験者P1の不快運転状態の程度(レベル)を抑制している。
図6のグラフに示すように、車両VBの快適運転範囲Aを超えた操舵角θHの総和は、車両VAの快適運転範囲Aを超えた操舵角θHの総和よりも約65%少なくなるため、被験者P1が不快運転状態下に置かれている総時間を短縮することができる。
図7に、被験者P1〜P3毎の滑らかさ指標を示す。尚、各被験者P1〜P3の左側グラフが車両VA、右側グラフが車両VBに夫々対応している。
図7に示すように、全ての被験者P1〜P3において、車両VBによる走行が車両VAによる走行よりも滑らかなステアリング操作を実行できている。
これにより、今後起こり得る不快運転状態の発生を事前に予測することにより、運転者の操舵感性と走行安定性とを両立させることができる。
1〕前記実施形態においては、快適運転範囲を−60°〜60°で設定した例を説明したが、快適運転範囲はステアリング配置側の腕の肘が伸びた状態に対応した操舵角から肘が運転者の胴体に接触した状態に対応した操舵角までの操舵角範囲によって設定すれば良く、この範囲に応じて適宜設定することができる。
更に、運転モード変更時、ノーマルレシオモードからクイックレシオモード又はクイックレシオモードからノーマルレシオモードの過渡期においてギア比を緩やかに変化させることで、運転者の違和感を低減することができる。
3 VGR
7 前輪
9 舵角センサ
10 制御ユニット
10b 不快運転状態判定部
V 車両
R ギア比
A 快適運転範囲
θF 転舵角
θH 操舵角
D1 第1判定回数
D2 第2判定回数
Claims (5)
- 車両の転舵輪の転舵角に対するステアリングホイールの操舵角の伝達レシオを変更可能な伝達レシオ可変機構と、この伝達レシオ可変機構を制御する制御手段とを備えた運転支援装置において、
旋回操舵中の運転者の腕の関節角度に基づいて設定された快適運転範囲を逸脱した不快運転状態を判定可能な不快運転状態判定手段を有し、
前記制御手段は、前記不快運転状態判定手段によって不快運転状態が判定されたとき、前記伝達レシオを低下させることを特徴とする運転支援装置。 - 前記快適運転範囲は、旋回操舵中の運転者の片方の腕の肘が伸びた状態に対応した操舵角から肘が胴体に接触した状態に対応した操舵角までの操舵角範囲によって設定されたことを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
- 前記制御手段は、前記伝達レシオを15%〜30%の範囲で低下させることを特徴とする請求項1又は2に記載の運転支援装置。
- 前記制御手段は、前記不快運転状態判定手段が所定の判定時間内に第1判定回数以上の不快運転状態を判定したとき、前記伝達レシオを低下させることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の運転支援装置。
- 前記制御手段は、前記不快運転状態判定手段が所定の判定時間内に前記第1判定回数よりも大きな第2判定回数以上の不快運転状態を判定したとき、前記伝達レシオの低下を制限することを特徴とする請求項4に記載の運転支援装置。
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