JP2017047682A - 液体吐出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】媒体や液体の浪費を抑制しながら液体の吐出のデューティを制御する。
【解決手段】液体吐出装置10は、液体容器から供給されるインクを吐出する液体吐出部26と、経時的に変化する制限値Lを設定する制限値設定部52と、制限値設定部52が設定した制限値Lの範囲内のデューティでインクを吐出するように液体吐出部26を制御する吐出制御部54とを具備する。
【選択図】図4
【解決手段】液体吐出装置10は、液体容器から供給されるインクを吐出する液体吐出部26と、経時的に変化する制限値Lを設定する制限値設定部52と、制限値設定部52が設定した制限値Lの範囲内のデューティでインクを吐出するように液体吐出部26を制御する吐出制御部54とを具備する。
【選択図】図4
Description
本発明は、インク等の液体を吐出する技術に関する。
複数のノズルから液体を吐出する液体吐出装置の動作を制御する各種の技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、ノズルからインクが吐出されない状態(以下「不吐出」という)の発生を意味する吐出異常信号が入力された場合に印刷デューティを低下させる構成が開示されている。
しかし、特許文献1の技術では、実際にインクの不吐出の異常が発生してから事後的に印刷デューティが制御される。したがって、異常の発生から印刷デューティの制御までの期間では、印刷用紙等の媒体やインクが無駄に消費されるという問題がある。以上の事情を考慮して、本発明は、媒体や液体の浪費を抑制しながら液体の吐出のデューティを制御することを目的とする。
以上の課題を解決するために、本発明の好適な態様の液体吐出装置は、液体容器から供給される液体を吐出する液体吐出部と、経時的に変化する制限値を設定する制限値設定部と、制限値設定部が設定した制限値の範囲内のデューティで液体を吐出するように液体吐出部を制御する吐出制御部とを具備する。以上の構成では、液体吐出部による液体吐出のデューティの制限値が経時的に変化するから、吐出不良の発生後にデューティを制御する構成と比較して媒体や液体の浪費を抑制しながら、液体の粘度の経時的な変化(例えば増粘)に起因した不吐出等の吐出不良を抑制することが可能である。
本発明の好適例に係る液体吐出装置は、液体容器内の液体の増加を検知する増加検知部を具備し、制限値設定部は、増加検知部が液体の増加を検知した場合に制限値を初期化する。液体が増加した場合には、液体容器から液体吐出部に供給される液体の粘度が変化(典型的には低下)し得る。したがって、増加検知部が液体の増加を検知した場合に制限値を初期化する構成によれば、液体の追加後の粘度に対応した高効率な液体の吐出が実現される。
液体容器に液体を補充可能な構成の好適例に係る液体吐出装置は、液体容器に対する液体の補充量を特定する補充量特定部を具備し、制限値設定部は、補充量特定部が特定した補充量に応じて制限値を設定する。以上の態様では、経時的に変化する制限値の設定に液体の補充量も加味されるから、液体容器から液体吐出部に供給される液体の粘度が液体の補充量に依存する状況のもとで、液体の補充に起因した変化後の粘度に応じた適切な制限値を設定できるという利点がある。
本発明の好適例に係る液体吐出装置は、液体吐出部による液体の吐出量を特定する吐出量特定部を具備し、制限値設定部は、吐出量特定部が特定した吐出量に応じて制限値を設定する。以上の態様では、経時的に変化する制限値の設定に液体の吐出量も加味されるから、液体容器から液体吐出部に供給される液体の粘度が液体の吐出量に依存する状況のもとで、液体の粘度に応じた適切な制限値を設定できるという利点がある。
本発明の好適例において、制限値設定部は、当該液体吐出装置の前回の電源の遮断から今回の電源の投入までの停止時間に応じて制限値を設定する。以上の態様では、経時的に変化する制限値の設定に液体吐出部の停止時間も加味されるから、液体容器から液体吐出部に供給される液体の粘度が停止時間に依存する状況のもとで、液体の粘度に応じた適切な制限値を設定できるという利点がある。
本発明の好適例において、温度および湿度の少なくとも一方を測定する環境センサーを具備し、制限値設定部は、環境センサーによる測定の結果に応じた環境温度および環境湿度の少なくとも一方に応じて前記制限値を設定する。以上の態様では、経時的に変化する制限値の設定に環境温度および環境湿度の少なくとも一方も加味されるから、液体容器から液体吐出部に供給される液体の粘度が環境温度や環境湿度に依存する状況のもとで、液体の粘度に応じた適切な制限値を設定できるという利点がある。
本発明の好適例において、液体吐出部は、相異なる種類の液体を貯留する複数の液体容器から供給される液体を吐出し、制限値設定部は、液体容器毎に制限値を設定し、吐出制御部は、各液体容器について設定された制限値の範囲内のデューティで当該液体容器の液体を吐出するように液体吐出部を制御する。以上の態様では、制限値設定部による制限値の設定と吐出制御部によるデューティの制御とが液体容器毎(液体の種類毎)に実行される。したがって、液体容器毎(液体の種類毎)に液体の増粘の度合が相違し得る状況で、各液体容器の液体の増粘の度合に応じた適切なデューティの制御が実現される。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る液体吐出装置10の部分的な構成図である。第1実施形態の液体吐出装置10は、液体の例示であるインクを印刷用紙等の媒体12に吐出するインクジェット方式の印刷装置である。図1に例示される通り、液体吐出装置10は、制御ユニット20と搬送機構22とキャリッジ24と液体吐出部26とセンサー28と液体容器30とを具備する。実際には相異なる色彩の複数種のインクが液体容器30に貯留されるが、第1実施形態では便宜的に1種類のインクに着目する。第1実施形態の液体吐出装置10は、液体容器30に対するインクの事後的な補充が可能なCISS(Continuous Ink Supply System)方式の印刷装置である。ただし、液体吐出装置10に対して着脱可能なカートリッジを液体容器30として利用することも可能である。
図1は、本発明の第1実施形態に係る液体吐出装置10の部分的な構成図である。第1実施形態の液体吐出装置10は、液体の例示であるインクを印刷用紙等の媒体12に吐出するインクジェット方式の印刷装置である。図1に例示される通り、液体吐出装置10は、制御ユニット20と搬送機構22とキャリッジ24と液体吐出部26とセンサー28と液体容器30とを具備する。実際には相異なる色彩の複数種のインクが液体容器30に貯留されるが、第1実施形態では便宜的に1種類のインクに着目する。第1実施形態の液体吐出装置10は、液体容器30に対するインクの事後的な補充が可能なCISS(Continuous Ink Supply System)方式の印刷装置である。ただし、液体吐出装置10に対して着脱可能なカートリッジを液体容器30として利用することも可能である。
制御ユニット20は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の制御装置202と半導体メモリ等の記憶装置204とを含んで構成され、記憶装置204に記憶された制御プログラムを制御装置202が実行することで液体吐出装置10の各要素を統括的に制御する。図1に例示される通り、媒体12に形成すべき画像を表す印刷データGがホストコンピュータ等の外部装置(図示略)から制御ユニット20に供給される。制御ユニット20は、印刷データGで指定された画像が媒体12に形成されるように液体吐出装置10の各要素を制御する。
搬送機構22は、例えば媒体12を搬送するための搬送モーターと当該搬送モーターを駆動する駆動回路とを包含し(図示略)、制御ユニット20による制御のもとで媒体12をY方向に搬送する。液体吐出部26は、液体容器30から供給されるインクを制御ユニット20による制御のもとで媒体12に吐出する。第1実施形態の液体吐出部26は、略箱状のキャリッジ24に搭載されたシリアルヘッドである。搬送機構22による媒体12の搬送とキャリッジ24の反復的な往復とに並行して液体吐出部26が媒体12にインクを吐出することで媒体12の表面に所望の画像が形成される。なお、小容量のカートリッジ型の液体容器30を液体吐出部26とともにキャリッジ24に搭載することも可能である。
センサー28は、液体容器30の内部に貯留されたインクの分量(以下「残存量」という)Aを測定するための計測器である。例えば、図2に例示される通り、発光ダイオード等の発光素子282と発光素子282からの出射光を受光する受光素子284との複数対を鉛直方向の相異なる位置に設置した光学的な検出器がセンサー28として好適である。図2の構成では、液体容器30を介した各受光素子284の受光量に応じて液体容器30内のインクの液面位置が残存量Aとして測定される。また、図3に例示される通り、鉛直方向における下端部の位置が相違する複数の検出電極286を液体容器30の内側に設置し、検出電極286間の電位差に応じてインクの液面位置を残存量Aとして測定する電気的な計測器もセンサー28として利用され得る。液体容器30の重量を残存量Aとして測定する重量計をセンサー28として利用することも可能である。
図4は、液体吐出装置10の機能的な構成図である。搬送機構22やキャリッジ24等の図示を図4では便宜的に省略した。図4に例示される通り、第1実施形態の制御ユニット20は、駆動波形信号COMと印刷信号SIとを生成して液体吐出部26に供給する。駆動波形信号COMは、液体吐出部26のノズルからインクを吐出させる吐出パルスを所定の周期毎に含む電圧信号である。なお、駆動波形信号COMの1周期に複数の吐出パルスを含む構成や、波形が相違する複数の駆動波形信号COMを利用する構成も採用され得る。他方、印刷信号SIは、液体吐出部26のノズル毎にインクの吐出の有無を指示する信号であり、外部装置から供給される印刷データGに応じて生成される。
図4に例示される通り、第1実施形態の液体吐出部26は、駆動部262と液体吐出ヘッド264とを具備する。駆動部262は、制御ユニット20による制御のもとで液体吐出ヘッド264を駆動する。液体吐出ヘッド264は、液体容器30から供給されるインクを複数のノズルから媒体12に吐出する。第1実施形態の液体吐出ヘッド264は、相異なるノズルに対応する複数の吐出部266を具備する。
駆動部262は、制御ユニット20から供給される駆動波形信号COMと印刷信号SIとに応じた駆動信号Vを吐出部266毎に生成して複数の吐出部266に並列に出力する。具体的には、駆動部262は、複数の吐出部266のうち印刷信号SIがインクの吐出を指示する吐出部266には駆動波形信号COMの吐出パルスを駆動信号Vとして供給し、印刷信号SIがインクの非吐出を指示する吐出部266には所定の基準電圧の駆動信号Vを供給する。各吐出部266は、駆動部262から供給される駆動信号Vに応じてインクを吐出する。なお、複数の駆動波形信号COMを利用する構成や駆動波形信号COMが複数の吐出パルスを含む構成では、印刷信号SIで指示された組合せの吐出パルスを駆動信号Vとして吐出部266に出力することで、吐出部266によるインクの吐出量を可変に制御することが可能である。
図5は、任意の1個の吐出部266に着目した液体吐出ヘッド264の断面図である。図5に例示される通り、液体吐出ヘッド264は、流路基板71の一方側に圧力室基板72と振動板73と圧電素子74と支持体75とが配置されるとともに他方側にノズル板76が配置された構造体である。流路基板71と圧力室基板72とノズル板76とは例えばシリコンの平板材で形成され、支持体75は例えば樹脂材料の射出成形で形成される。複数のノズルNはノズル板76に形成される。なお、複数のノズルNを複数列に配列(例えば千鳥配列またはスタガ配列)することも可能である。
流路基板71には、開口部712と分岐流路(絞り流路)714と連通流路716とが形成される。分岐流路714および連通流路716はノズルN毎に形成された貫通孔であり、開口部712は複数のノズルNにわたり連続する開口である。支持体75に形成された収容部(凹部)752と流路基板71の開口部712とを相互に連通させた空間は、支持体75の導入流路754を介して液体容器30から供給されるインクを貯留する共通液室(リザーバー)SRとして機能する。
圧力室基板72には開口部722がノズルN毎に形成される。振動板73は、圧力室基板72のうち流路基板71とは反対側の表面に設置された弾性変形可能な平板材である。圧力室基板72の各開口部722の内側で振動板73と流路基板71とに挟まれた空間は、共通液室SRから分岐流路714を介して供給されるインクが充填される圧力室(キャビティ)SCとして機能する。各圧力室SCは、流路基板71の連通流路716を介してノズルNに連通する。
振動板73のうち圧力室基板72とは反対側の表面にはノズルN毎に圧電素子74が形成される。各圧電素子74は、相互に対向する電極間に圧電体を介在させた駆動素子である。駆動信号V(吐出パルス)の供給により圧電素子74が変形することで振動板73が振動すると、圧力室SC内の圧力が変動して圧力室SC内のインクがノズルNから吐出される。図4に例示した1個の吐出部266は、圧電素子74と振動板73と圧力室SCとノズルNとを包含する部分である。
図4に例示される通り、第1実施形態の制御ユニット20(制御装置202)は、制御装置202が制御プログラムを実行することで、液体吐出部26によるインクの吐出を制御するための複数の要素(吐出量特定部42,補充量特定部44,増加検知部46,制限値設定部52,吐出制御部54)として機能する。なお、制御ユニット20の一部の機能を液体吐出部26に設置することも可能である。
吐出量特定部42は、液体吐出部26によるインクの吐出量Qを特定する。第1実施形態の吐出量特定部42は、液体容器30にインクが補充された時点(以下「補充時点」という)以降に液体吐出部26が吐出したインクの重量を累積した総量を吐出量Qとして特定する。具体的には、吐出量特定部42は、外部装置から供給される印刷データGに応じて吐出部266毎に決定されるインクの吐出量を補充時点以降について合計することで吐出量Qを算定する。吐出量特定部42が算定した吐出量Qは記憶装置204に記憶される。なお、印刷信号SIにより補充時点以降に吐出部266に指示される吐出量を液体吐出部26の全部の吐出部266にわたり合計することで、吐出量特定部42が吐出量Qを算定することも可能である。
補充量特定部44は、液体容器30に対するインクの補充量Rを特定する。具体的には、補充量特定部44は、補充時点の直後にセンサー28が測定した残存量Aと補充時点の直前にセンサー28が測定した残存量Aとの差分(すなわち補充時点での補充によるインクの増加分)を補充量Rとして算定する。液体容器30のインクが消費されていない初期的な状態では、その状態での残存量Aが補充量Rとして特定される。
また、補充量特定部44は、液体吐出装置10の電源が遮断される直前にセンサー28が測定した液体容器30の残存量Aと現在の液体容器30の残存量A’とを特定する。補充量特定部44は、残存量Aおよび残存量A’を記憶装置204に格納したり読み出したりすることが可能である。
増加検知部46は、液体容器30内のインクの増加を検知する。第1実施形態の増加検知部46は、吐出量特定部42が特定した吐出量Qと補充量特定部44が特定した補充量Rとを相互に比較することで液体容器30に対するインクの補充を検知する。具体的には、前回に補充された補充量Rよりも吐出量Qが多い場合には、前回の補充から現在までに液体容器30にインクが補充された可能性が高い。したがって、概略的には、第1実施形態の増加検知部46は、吐出量Qが補充量Rを上回る場合(Q>R)に液体容器30にインクが補充されたと判定し、吐出量Qが補充量Rを下回る場合(Q<R)には液体容器30にインクが補充されていないと判定する。液体容器30にインクが補充されたと増加検知部46が判定した時点が補充時点として確定する。
また、第1実施形態の増加検知部46は、補充量特定部44が特定した残存量Aと残存量A’とを相互に比較することで液体容器30に対するインクの補充を検知する。具体的には、液体吐出装置10の前回の電源遮断の直前の液体容器30の残存量Aよりも現在の液体容器30の残存量A’が多い場合には、前回の電源遮断から現在までに液体容器30にインクが補充された可能性が高い。したがって、概略的には、第1実施形態の増加検知部46は、現在の液体容器30の残存量A’が前回の電源遮断時の液体容器30の残存量Aを上回る場合(A’>A)に液体容器30にインクが補充されたと判定し、現在の液体容器30の残存量A’が前回の電源遮断時の液体容器30の残存量A以下の場合(A’≦A)には、液体容器30にインクが補充されているかどうか更なる判定が必要であると判定する。
制限値設定部52は、液体吐出部26によるインクの吐出に関するデューティの制限値Lを設定する。液体吐出部26のデューティ(印刷デューティ)は、所定の単位時間内で液体吐出部26が吐出するインクの総量(液体吐出部26の各ノズルから吐出されるインクの合計量)を意味し、印刷データGで指定される画像の内容に応じて変動する。制限値Lはデューティの上限値である。
液体容器30から共通液室SRと圧力室SCとを経由してノズルNに到達するまでの流路(以下「供給流路」という)内のインクは、流路の壁面を介した水分の蒸発等に起因して増粘し得る。CISS方式の液体吐出装置10では特に、液体容器30に貯留された多量のインクが長時間にわたり供給流路内に滞留するから、小容量のカートリッジ型の液体容器30を利用する構成と比較して供給流路内のインクの増粘が発生し易いという傾向がある。供給流路内の圧力損失がインクの増粘により顕著になると、印刷データGの内容に応じたデューティでのインクの吐出が困難となる。以上の事情を考慮して、第1実施形態の制限値設定部52は、供給流路内のインクの増粘の度合に連動するように制限値Lを経時的に変化させる。
吐出制御部54は、前述の駆動波形信号COMおよび印刷信号SIを液体吐出部26に供給することで液体吐出部26によるインクの吐出を制御する。第1実施形態の吐出制御部54は、制限値設定部52が設定した制限値Lの範囲内のデューティでインクが吐出されるように液体吐出部26を制御する。具体的には、印刷データGから算定されるデューティ(以下「目標デューティ」という)が制限値Lを上回る場合、吐出制御部54は、インクを吐出するノズルNの総数や比率が減少するように印刷信号SIを生成することで、制限値Lを下回るデューティのもとで液体吐出部26にインクを吐出させる。他方、目標デューティが制限値Lを下回る場合、吐出制御部54は、印刷データGから算定される目標デューティで液体吐出部26がインクを吐出するように印刷信号SIを生成する。吐出制御部54による以上の制御の結果、液体吐出部26の吐出のデューティは、制限値Lを下回る範囲内に制限される。
図6は、供給流路内のインクの粘度の時間変化である。図6に実線で図示された通り、液体容器30にインクが補充された時点t0(補充時点)から供給流路内のインクの粘度は経時的に増加するため、液体吐出部26による高いデューティでのインクの吐出は次第に困難となる。以上の傾向を考慮して、第1実施形態の制限値設定部52は、液体容器30に対するインクの補充時点からの経過時間Tに応じてデューティの制限値Lを設定する。具体的には、図6に破線で併記される通り、インクの粘度の経時的な増加に連動するようにデューティの制限値Lを経過時間Tの増加とともに(すなわち経時的に)減少させる。
具体的には、制限値設定部52による制限値Lの設定には、記憶装置204に記憶された図7の制御テーブルCが利用される。制御テーブルCは、補充時点からの経過時間Tの各数値(T1,T2,……)と制限値Lの各数値(L1,L2,……)とを相互に対応させたデータテーブルである。図6を参照して説明した通り、補充時点からの経過時間Tが増加するほど制限値Lが減少するように制御テーブルCの各数値は事前に設定される。具体的には、経過時間Tとの関係で想定されるインクの粘度のもとで液体吐出部26が実現可能なデューティとなるように制限値Lの各数値は実験的または統計的に選定される。
ところで、液体容器30に補充されるインクとしては、水分の蒸発に起因した増粘が発生していない低粘度のインクが想定される。したがって、図8に例示される通り、時点t1で液体容器30にインクが補充されると、補充の直前までに経時的に増加していたインクの粘度が不連続に低下する。すなわち、液体容器30に対するインクの補充により、液体吐出部26が高いデューティでインクを吐出することが可能な状態となる。以上の傾向を考慮して、第1実施形態の制限値設定部52は、図8に例示される通り、液体容器30に対するインクの補充を増加検知部46が検知した場合(補充時点)に制限値Lを初期化する。初期化後の制限値Lの数値(以下「更新値」という)L0は、例えば制限値Lの最大値(すなわち、液体吐出部26が単位時間内に吐出可能なインクの総量)である。
図9は、制御ユニット20が液体吐出部26のデューティを制御するための処理(以下「デューティ制御」という)のフローチャートである。例えば利用者が液体吐出装置10に対して印刷動作を指示した場合や液体吐出装置10の電源が投入された直後に図9のデューティ制御が開始される。
デューティ制御を開始すると、ステップSA0において、制限値設定部52が前回の印刷動作終了時からの経過時間ΔTを特定し、吐出量特定部42がインクの補充時点以降の累積的な吐出量Qを特定し、補充量特定部44が液体容器30の現在の残存量A’を特定する。例えば、制限値設定部52は、記憶装置204に記憶されている前回の印刷動作終了時の時刻から、計時回路(図示略)が測定する現在時刻までの時間長を経過時間ΔTとして算定する。また、吐出量特定部42は、例えば、記憶装置204に記憶されている吐出量Qを読み出す。また、補充量特定部44は、例えばセンサー28が測定した現在の液体容器30の残存量Aを残存量A’として特定する。
次に、増加検知部46は、補充量特定部44が特定した前回の電源遮断時のインクの残存量Aに対する現在のインクの残存量A’の変化量が所定値α未満であるか否か(A’−A<α)を判定する(SA1)。所定値αは、事前に設定された正数である。例えば、液体容器30の容量の50%の量に対応する正数を所定値αとして設定し、補充前のインクの増粘が低減するほどの量のインクが補充されたかどうかを判定することができる。
前回の電源遮断時のインクの残存量Aに対する現在の残存量A’の変化量が所定値αを上回る場合(SA1:NO)、前回の電源遮断時以降に液体容器30にインクが補充されたと推定される。しかし、実際の補充量Rは不明であるため、少なくとも前回の電源遮断時のインク残存量Aから現在の残存量A’への増量分(差分)が補充量Rであると仮定することができる。したがって、増加検知部46がインクの補充を検知した場合、補充量特定部44は、前回の電源遮断時のインク残存量Aから現在の残存量A’への増量分を補充量Rとして記憶装置204に記憶し、処理をステップSC2に移行する。ステップSC2において、制限値設定部52は、記憶装置204に記憶された前回の補充時点の時刻を現在時刻に書き換え、液体吐出部26のデューティの制限値Lを更新値L0に初期化する。
他方、残存量Aに対する残存量A’の変化量が所定値α未満である場合(SA1:YES)には、前回の液体吐出装置10の電源遮断時以降に液体容器30にインクが補充されたか否かを更に判定するため、処理はステップSA2に移行する。
ステップSA2において、増加検知部46は、吐出量特定部42が特定した吐出量Qと補充量特定部44が特定した補充量Rとを相互に比較して、補充量Rから所定値βを減算した数値(R−β)を吐出量Qが下回るか否かを判定する(SA2)。所定値βは、事前に設定された非負値(ゼロまたは正数)である。所定値βは、吐出部266の変位、流路の寸法、流路の抵抗等のばらつきにより、実際の吐出量と吐出量特定部42が算定した吐出量Qとの誤差を加味したマージン値とすることができる。ステップSA2の処理は、補充量Rと吐出量Qとの差分(R−Q)が所定値βを上回るか否かを判定する処理とも換言され得る。
補充量Rから所定値βを減算した数値(R−β)を吐出量Qが下回る場合(SA2:YES)には、前回の補充時点以降は液体容器30にインクが補充されていないと推定される。
次に、制限値設定部52は、前回の印刷動作終了時からの経過時間ΔTが所定値Δtを上回るか否かを判定する(SB0)。所定値Δtは、制限値Lを更新する必要がない程度にしかインクの粘度が変化しない短い時間に対応する正数とすることができる。前回の印刷動作終了時からの経過時間ΔTが所定値Δt以下である場合(SB0:NO)には、制限値Lは変更されることなくデューティ制御は終了する。ステップSB0により、制限値Lの更新が不要な場合に、デューティの制限値Lを更新するステップ(SB1,SB2)を省略することができる。なお、ステップSB0を省略することもできる。
前回の印刷動作終了時からの経過時間ΔTが所定値Δtを上回る場合(SB0:YES)には、制限値Lを更新する必要がある。したがって、制限値設定部52は、補充時点からの経過時間Tに応じてデューティの制限値Lを更新する(SB1,SB2)。具体的には、制限値設定部52は、まず、前回の補充時点からの経過時間Tを取得する。例えば、制限値設定部52は、記憶装置204に記憶された前回の補充時点の時刻から、計時回路(図示略)が測定する現在時刻までの時間長を経過時間Tとして算定する。そして、制限値設定部52は、経過時間Tに応じた制限値Lを特定する(SB2)。具体的には、制限値設定部52は、経過時間Tの数値に対応する制限値Lを制御テーブルCから特定する。以上の動作の結果、吐出制御部54が液体吐出部26の制御に適用する制限値Lは、制限値設定部52がステップSB2で特定した制限値Lに更新される。すなわち、補充量Rから所定値βを減算した数値(R−β)を吐出量Qが下回る状態(SA2:YES)では、供給流路内のインクの粘度の増加に連動するように液体吐出部26のデューティの制限値Lが経時的に減少する。したがって、供給流路内の増粘の進行に応じたデューティで液体吐出部26から媒体12にインクが吐出される。
他方、補充量Rから所定値βを減算した数値(R−β)を吐出量Qが上回る場合(SA2:NO)には、前回の補充時点以降に液体容器30にインクが補充されたと推定される。ただし、液体容器30内のインクの残量が僅少またはゼロである状態(以下「ニアエンド状態」という)でもステップSA2の判定の結果が否定となり得る。そこで、増加検知部46は、液体容器30がニアエンド状態であるか否かを判定する(SA3)。具体的には、増加検知部46は、センサー28が測定した現在の液体容器30の残存量A’が所定の閾値(例えばゼロに近い正数)を下回るか否かに応じて液体容器30がニアエンド状態であるか否かを判定する。なお、所定の閾値は、吐出量Qの誤差に応じた所定値β以上の正数とすることができる。液体容器30がニアエンド状態である場合(SA3:YES)、すなわち残存量A’が閾値を下回る場合、制御ユニット20は、液体容器30に対するインクの補充または液体容器30の交換を画像表示や音声再生により利用者に指示する(SC1)。
利用者が指示に応じて液体容器30に対するインクの補充または液体容器30の交換を実施すると、補充量特定部44は、当該補充時点の直前の液体容器30の補充前の残存量A1と現時点(すなわち補充時点の直後)の補充後の残存量A2との差分がステップSA3で使用した所定の閾値以上であるかどうか判定する。補充前の残存量A1と補充後の残存量A2との差分が閾値以上である場合、補充量特定部44は、補充前の残存量A1と補充後の残存量A2との差分を補充量Rとして記憶装置204に記憶して処理をステップSC2に移行する。他方、補充前の残存量A1と補充後の残存量A2との差分が所定の閾値を下回る場合場合、補充量特定部44は、ステップSC1の最初に取得した補充前の残存量A1と最後の補充(交換)後に測定した補充後の残存量A2との差分が所定の閾値以上となるまで補充(交換)を指示する。最初に取得した補充前の残存量A1と最後の補充(交換)後に測定した補充後の残存量A2との差分が所定の閾値以上となったら、補充量特定部44は、当該差分を補充量Rとして記憶装置204に記憶して処理をステップSC2に移行する。
補充量Rから所定値βを減算した数値(R−β)を吐出量Qが上回り(SA2:NO)、かつ、液体容器30がニアエンド状態でない場合(SA3:NO)には、前回の補充時点以降に液体容器30にインクが補充された(したがって供給流路内のインクの粘度が低下した)と判断できる。しかし、実際の補充量Rは不明であるため、少なくとも現在の液体容器30の残存量A’が補充量Rであると仮定することができる。したがって、増加検知部46がインクの補充を検知した場合、補充量特定部44は、現在の液体容器30の残存量A’を補充量Rとして記憶装置204に記憶する。
以上のように増加検知部46がインクの補充を検知した場合、制限値設定部52は、液体吐出部26のデューティの制限値Lを更新値L0に初期化する(SC2)。すなわち、吐出制御部54が液体吐出部26の制御に適用する制限値Lが更新値L0(例えば最大値)に初期化される。したがって、補充により粘度が低下したインクを効率的に媒体12に吐出することが可能である。以上に説明した制限値Lの初期化が完了すると、現在時刻が最新の補充時点として確定されて記憶装置204に記憶されるとともに、吐出量Qがゼロとして記憶装置204に記憶される(SC3)。
なお、補充量特定部44は、液体吐出装置10の電源が遮断される直前にセンサー28により測定された液体容器30の残存量Aを、電源遮断時のインクの残存量Aとして記憶装置204に記憶する。また、制限値設定部52は、液体吐出装置10の印刷動作の終了時に計時回路(図示略)の測定する時刻を前回の印刷動作終了時の時刻として記憶装置204に記憶する。
以上の説明から理解される通り、第1実施形態では、液体吐出部26のデューティの制限値Lが経時的に変化するから、吐出不良の発生後にデューティを制御する特許文献1の構成と比較して媒体12やインクの浪費を抑制しながら、供給流路内のインクの増粘に起因した不吐出等の吐出不良を抑制し得る適切な制限値Lを設定できるという利点がある。例えば、経過時間Tが小さくインクの増粘が進行していない状況では、液体吐出部26のデューティの制限が緩和されるように制限値Lを大きい数値に設定することでインクを高効率に吐出することが可能である。他方、経過時間Tが大きくインクの増粘が進行した状況では、液体吐出部26のデューティが制限されるように制限値Lを小さい数値に設定することで、供給流路内のインクの増粘に起因した不吐出等の吐出不良を抑制することが可能である。
また、第1実施形態では、液体容器30に対するインクの補充が検知された場合に制限値Lが初期化されるから、補充により低下したインクの粘度に対応した高効率なインクの吐出が実現されるという利点もある。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
第2実施形態の制限値設定部52は、補充量特定部44が特定した補充量Rに応じてデューティの制限値Lを設定する。制限値Lの設定以外の構成や動作は第1実施形態と同様である。したがって、第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。第2実施形態の制限値設定部52による制限値Lの設定について以下に詳述する。
補充時点での補充量Rが大きいほど、供給流路内のインクの増粘が低減される(すなわちインクの粘度が低下する)という傾向がある。以上の傾向を考慮して、第2実施形態の制限値設定部52は、液体容器30にインクが補充された場合に(SA1:NO,SA3:NO,SC1の処理後)、ステップSC2において、液体吐出部26のデューティの制限値Lを、補充量Rに応じた更新値L0に初期化する。具体的には、第2実施形態のステップSC2においては、制限値設定部52は、補充量Rが大きいほど(すなわち供給流路内のインクの粘度が低いほど)、更新値L0を大きい数値に設定する。その後、ステップSC3に進む。
また、液体容器30にインクが補充されない状態(SA2:YES)では、第2実施形態の制限値設定部52は、ステップSB2において、制限値Lの経時的な変化(経過時間Tと制限値Lとの関係)が補充量Rに応じて変化するように、経過時間Tと補充量Rとに応じて制限値Lを設定する。例えば、経過時間Tと制限値Lとの関係を相違させた複数の制御テーブルCが補充量Rの相異なる数値範囲について用意され、制限値設定部52は、補充量特定部44が特定した補充量Rの数値に対応した制御テーブルCを参照して、前回の補充時点からの経過時間Tに応じた制限値Lを特定する。例えば、補充量Rが大きいほどインクの増粘が低減されるという前述の傾向を前提とした場合、補充量Rが大きいほど経過時間Tに対する制限値Lの変化(例えば単位時間毎の減少量)が抑制されるように、制限値設定部52は、経過時間Tと補充量Rとに応じた制限値Lを設定する。ステップSB2で制限値Lが設定されると、デューティ制御は終了する。
以上に説明した通り、第2実施形態では、経時的に変化する制限値Lの設定に液体容器30に対するインクの補充量Rも加味される。したがって、供給流路内のインクの粘度が補充量Rに依存するという傾向のもとで、補充に起因した変化後の粘度に応じた適切な制限値Lを設定できるという利点がある。
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態の制限値設定部52は、吐出量特定部42が特定した吐出量Qに応じてデューティの制限値Lを設定する。制限値Lの設定以外の構成や動作は第1実施形態と同様である。したがって、第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。第3実施形態の制限値設定部52による制限値Lの設定について以下に詳述する。
本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態の制限値設定部52は、吐出量特定部42が特定した吐出量Qに応じてデューティの制限値Lを設定する。制限値Lの設定以外の構成や動作は第1実施形態と同様である。したがって、第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。第3実施形態の制限値設定部52による制限値Lの設定について以下に詳述する。
前回の補充時点からの経過時間Tが同等でも、液体吐出部26による吐出量Qが大きいほど、供給流路内のインクの増粘が抑制されるという傾向がある。以上の傾向を考慮して、第3実施形態の制限値設定部52は、液体容器30にインクが補充された場合に(SA1:NO,SA3:NO,SC1の処理後)、ステップSC2において、液体吐出部26のデューティの制限値Lを、吐出量Qに応じた更新値L0に初期化する。具体的には、第3実施形態のステップSC2においては、制限値設定部52は、吐出量Qが大きいほど(すなわち供給流路内のインクの粘度が低いほど)、更新値L0を大きい数値に設定する。その後、ステップSC3に進む。
また、液体容器30にインクが補充されない状態(SA2:YES)では、制限値設定部52は、ステップSB2において、制限値Lの経時的な変化が吐出量Qに応じて変化するように、経過時間Tと吐出量Qとに応じて制限値Lを設定する。具体的には、吐出量Qの数値範囲毎に制御テーブルCが用意され、制限値設定部52は、吐出量特定部42が特定した吐出量Qの数値に対応した制御テーブルCを参照して経過時間Tに応じた制限値Lを特定する。例えば、吐出量Qが大きいほどインクの増粘が低減されるという前述の傾向を前提とした場合、吐出量Qが大きいほど経過時間Tに対する制限値Lの変化が抑制されるように、制限値設定部52は、経過時間Tと吐出量Qとに応じた制限値Lを設定する。ステップSB2で制限値Lが設定されると、デューティ制御は終了する。
以上に説明した通り、第3実施形態では、経時的に変化する制限値Lの設定に液体吐出部26によるインクの吐出量Qも加味される。したがって、供給流路内のインクの粘度が吐出量Qに依存するという傾向のもとで、実際のインクの粘度に応じた適切な制限値Lを設定できるという利点がある。
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態の制限値設定部52は、液体吐出装置10の前回の電源の遮断から今回の電源の投入までの時間(以下「停止時間」という)に応じてデューティの制限値Lを設定する。制限値Lの設定以外の構成や動作は第1実施形態と同様である。したがって、第4実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。第4実施形態の制限値設定部52による制限値Lの設定について以下に詳述する。
本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態の制限値設定部52は、液体吐出装置10の前回の電源の遮断から今回の電源の投入までの時間(以下「停止時間」という)に応じてデューティの制限値Lを設定する。制限値Lの設定以外の構成や動作は第1実施形態と同様である。したがって、第4実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。第4実施形態の制限値設定部52による制限値Lの設定について以下に詳述する。
前回の補充時点からの経過時間Tが同等でも、液体吐出装置10の直前の停止時間が長いほど、供給流路内のインクの増粘が進行するという傾向がある。以上の傾向を考慮して、第4実施形態の制限値設定部52は、ステップSA0にて、さらに液体吐出装置10の停止時間を特定する。例えば、制限値設定部52は、記憶装置204に記憶されている液体吐出装置10の前回の電源遮断時の時刻から、記憶装置204に記憶されている今回の電源投入時刻までの時間長を停止時間として特定する。液体容器30にインクが補充された場合に(SA1:NO,SA3:NO,SC1の処理後)、第4実施形態のステップSC2では、液体吐出部26のデューティの制限値Lが、停止時間に応じた更新値L0に初期化される。具体的には、第4実施形態のステップSC2においては、制限値設定部52は、停止時間が短いほど(すなわち供給流路内のインクの粘度が低いほど)、更新値L0を大きい数値に設定する。その後、ステップSC3に進む。
また、液体容器30にインクが補充されない状態(SA2:YES)では、第4実施形態の制限値設定部52は、ステップSB2において、制限値Lの経時的な変化が停止時間に応じて変化するように、経過時間Tと停止時間とに応じて制限値Lを設定する。例えば、停止時間が短いほどインクの増粘が低減されるという前述の傾向を前提とした場合、第4実施形態のステップSB2においては、停止時間が短いほど経過時間Tに対する制限値Lの減少が抑制されるように、制限値設定部52は経過時間Tと停止時間とに応じた制限値Lを設定する。ステップSB2で制限値Lが設定されると、デューティ制御は終了する。
なお、制限値設定部52は、例えば、液体吐出装置10の電源が遮断される直前に計時回路(図示略)の測定する時刻を前回の電源遮断時の時刻として記憶装置204に記憶し、液体吐出装置10の電源が投入された直後に計時回路(図示略)の測定する時刻を今回の電源投入時の時刻として記憶装置204に記憶する。
以上に説明した通り、第4実施形態では、経時的に変化する制限値Lの設定に液体吐出装置10の停止時間が加味される。したがって、供給流路内のインクの粘度が停止時間に依存するという傾向のもとで、実際のインクの粘度に応じた適切な制限値Lを設定できるという利点がある。
<第5実施形態>
本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態の制限値設定部52は、液体吐出装置10が設置される環境の温度(以下「環境温度」という)に応じてデューティの制限値Lを設定する。制限値Lの設定以外の構成や動作は第1実施形態と同様である。したがって、第5実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。第5実施形態の制限値設定部52による制限値Lの設定について以下に詳述する。
本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態の制限値設定部52は、液体吐出装置10が設置される環境の温度(以下「環境温度」という)に応じてデューティの制限値Lを設定する。制限値Lの設定以外の構成や動作は第1実施形態と同様である。したがって、第5実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。第5実施形態の制限値設定部52による制限値Lの設定について以下に詳述する。
図10は、第5実施形態における液体吐出装置10の構成図である。図10に例示される通り、第5実施形態の液体吐出装置10では、第1実施形態と同様の要素に環境センサー29が追加される。具体的には、環境センサー29は、液体吐出装置10の温度Dを測定する温度センサーである。環境センサー29が測定する温度Dは記憶装置204に順次に記憶される。第5実施形態では、ステップSA0において、制限値設定部52は、環境センサー29が測定した温度Dから環境温度を算定する。例えば、液体吐出装置10の前回の電源の遮断前における温度Dと今回の電源の投入の直後における温度Dとの平均値が環境温度として算定される。ただし、環境センサー29が測定した温度Dを環境温度とする構成や、環境センサー29が順次に測定する複数の温度Dの代表値(例えば平均値や中央値)を環境温度とする構成も採用され得る。
前回の補充時点からの経過時間Tが同等でも、環境温度が高いほど供給流路内のインクの増粘が進行する(すなわちインクの粘度が上昇する)という傾向がある。以上の傾向を考慮して、第5実施形態の制限値設定部52は、液体容器30にインクが補充された場合に(SA1:NO,SA3:NO,SC1の処理後)、ステップSC2において、液体吐出部26のデューティの制限値Lを、環境温度に応じた更新値L0に初期化する。具体的には、第5実施形態のステップSC2においては、制限値設定部52は、環境温度が高いほど(すなわち供給流路内のインクの粘度が高いほど)、更新値L0を小さい数値に設定する。その後、ステップSC3に進む。
また、液体容器30にインクが補充されない状態(SA2:YES)では、制限値設定部52は、ステップSB2において、制限値Lの経時的な変化が環境温度に応じて変化するように、経過時間Tと環境温度とに応じて制限値Lを設定する。例えば、環境温度が低いほどインクの増粘が低減されるという前述の傾向を前提とした場合、第5実施形態のステップSB2においては、環境温度が低いほど経過時間Tに対する制限値Lの変化が抑制されるように、制限値設定部52は、経過時間Tと環境温度とに応じた制限値Lを設定する。
以上に説明した通り、第5実施形態では、経時的に変化する制限値Lの設定に液体吐出装置10の環境温度が加味される。したがって、供給流路内のインクの粘度が環境温度に依存するという傾向のもとで、実際のインクの粘度に応じた適切な制限値Lを設定できるという利点がある。
なお、以上の説明では環境温度を便宜的に例示したが、液体吐出装置10が設置される環境の湿度(以下「環境湿度」という)に応じてデューティの制限値Lを設定することも可能である。環境湿度は、例えば相異なる複数の時点における湿度の代表値や、特定の時点における湿度である。環境湿度が低い(インクの水分の蒸発が多い)ほどインクの増粘が進行するという傾向を前提とすると、環境湿度が低いほど更新値L0を小さい数値に設定する構成や、環境湿度が高いほど経過時間Tに対する制限値Lの減少を抑制する構成が好適である。
また、制限値設定部52が環境温度および環境湿度の双方に応じてデューティの制限値Lを設定することも可能である。以上の説明から理解される通り、第5実施形態の制限値設定部52は、液体吐出装置10の環境温度および環境湿度の少なくとも一方に応じて制限値Lを設定する要素として包括的に表現される。
<変形例>
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
(1)前述の各形態では便宜的に液体容器30の1種類のインクに着目したが、相異なる種類のインクを貯留する複数の液体容器30を具備する構成では、液体容器30毎(すなわちインクの種類毎)に前述の各形態で例示した処理が実行される。具体的には、複数の液体容器30の各々(複数種のインクの各々)について、
(a) 吐出量特定部42が当該インクの吐出量Qを特定する処理と、
(b) 補充量特定部44が当該インクの補充量Rを特定する処理と、
(c) 増加検知部46が当該インクの増加を検知する処理と、
(d) 制限値設定部52が当該インクに関するデューティの制限値Lを設定する処理と、
(e) 吐出制御部54が、当該液体容器30のインクについて設定された制限値Lの範囲内のデューティで当該インクを吐出するように液体吐出部26を制御する処理と
が個別に実行される。
(a) 吐出量特定部42が当該インクの吐出量Qを特定する処理と、
(b) 補充量特定部44が当該インクの補充量Rを特定する処理と、
(c) 増加検知部46が当該インクの増加を検知する処理と、
(d) 制限値設定部52が当該インクに関するデューティの制限値Lを設定する処理と、
(e) 吐出制御部54が、当該液体容器30のインクについて設定された制限値Lの範囲内のデューティで当該インクを吐出するように液体吐出部26を制御する処理と
が個別に実行される。
(2)前述の各形態では、制御テーブルCを利用して制限値Lを設定したが、制限値設定部52による制限値Lの設定の方法は以上の例示に限定されない。例えば、経過時間Tと制限値Lとの関係を表現する演算式に経過時間Tを適用することで制限値Lを算定することも可能である。第2実施形態から第5実施形態のように経過時間T以外の変数(補充量R,吐出量Q,停止時間,環境温度,環境湿度)に応じて制限値Lを設定する方法も同様に任意である。また、第2実施形態から第5実施形態で例示した複数種の変数(補充量R,吐出量Q,停止時間,環境温度,環境湿度)から任意に選択された2以上の変数を制限値Lの設定に反映させることも可能である。
(3)前述の各形態では、液体容器30に対するインクの補充が可能な構成を例示したが、インクが充填された新品の液体容器30に既存の液体容器30を交換可能な構成も採用され得る。液体容器30の交換によりインクは増加する。したがって、前述の各形態に係る増加検知部46は、インクの増加を検知する要素として包括的に表現される。増加検知部46が検知する「インクの増加」には、液体容器30に対してインクを補充可能な構成における当該補充によるインクの増加と、液体容器30を交換可能な構成における当該交換によるインクの増加との双方が包含される。
(4)前述の各形態では、印刷データGまたは印刷信号SIを利用して液体吐出部26によるインクの吐出量Qを推定したが、吐出量特定部42が吐出量Qを特定する方法は以上の例示に限定されない。例えば、センサー28が測定した残存量Aから吐出量Qを実測することも可能である。例えば前回の補充時点での残存量Aと現在の残存量Aとの差分を吐出量Qとして特定することが可能である。また、例えば印刷動作開示時点での残存量Aと印刷動作終了時点での残存量Aとの差分を補充時点以降累積した値を吐出量Qとして特定することが可能である。
(5)前述の各形態では、制限値Lを連続的に変化させる場合を便宜的に例示したが、時間の経過とともに制限値Lを段階的に変化させることも可能である。例えば、経過時間T1の各数値と制限値Lの各数値とを1対1に対応させる必要はなく、例えば経過時間T1の複数の数値に制限値Lの1個の数値を対応させることも可能である。以上の説明から理解される通り、時間軸上の一部の区間内で制限値Lが一定に維持される場合でも、他の区間内で制限値Lが経時的に変化するならば、「制限値Lが経時的に変化する」という要件を充足する。
(6)圧力室SCの内部に圧力を付与する要素(駆動素子)は、前述の各形態で例示した圧電素子74に限定されない。例えば、加熱により圧力室SCの内部に気泡を発生させて圧力を変動させる発熱素子を駆動素子として利用することも可能である。以上の例示から理解される通り、駆動素子は、液体を吐出するための要素(典型的には圧力室SCの内部に圧力を付与する要素)として包括的に表現され、動作方式(圧電方式/熱方式)や具体的な構成の如何は不問である。
(7)前述の各形態では、液体吐出部26を搭載したキャリッジ24がX方向に移動するシリアルヘッドを例示したが、複数の液体吐出部26をX方向に配列したラインヘッドにも本発明を適用することが可能である。
(8)以上の各形態で例示した液体吐出装置10は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体吐出装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体吐出装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。
10…液体吐出装置、12…媒体、20…制御ユニット、202…制御装置、204…記憶装置、22…搬送機構、24…キャリッジ、26…液体吐出部、262…駆動部、264…液体吐出ヘッド、266…吐出部、28…センサー、29…環境センサー、30…液体容器、42…吐出量特定部、44…補充量特定部、46…増加検知部、52…制限値設定部、54…吐出制御部、Q…吐出量、R…補充量、L…制限値。
Claims (6)
- 液体容器から供給される液体を吐出する液体吐出部と、
経時的に変化する制限値を設定する制限値設定部と、
前記制限値設定部が設定した前記制限値の範囲内のデューティで液体を吐出するように前記液体吐出部を制御する吐出制御部と
を具備する液体吐出装置。 - 前記液体容器内の前記液体の増加を検知する増加検知部を具備し、
前記制限値設定部は、前記増加検知部が前記液体の増加を検知した場合に前記制限値を初期化する
請求項1の液体吐出装置。 - 前記液体容器には前記液体を補充可能であり、
前記液体容器に対する前記液体の補充量を特定する補充量特定部を具備し、
前記制限値設定部は、前記補充量特定部が特定した前記補充量に応じて前記制限値を設定する
請求項1または請求項2の液体吐出装置。 - 前記液体吐出部による前記液体の吐出量を特定する吐出量特定部を具備し、
前記制限値設定部は、前記吐出量特定部が特定した前記吐出量に応じて前記制限値を設定する
請求項1から請求項3の何れかの液体吐出装置。 - 前記制限値設定部は、当該液体吐出装置の前回の電源の遮断から今回の電源の投入までの停止時間に応じて前記制限値を設定する
請求項1から請求項4の何れかの液体吐出装置。 - 前記液体吐出部は、相異なる種類の液体を貯留する複数の前記液体容器から供給される液体を吐出し、
前記制限値設定部は、前記液体容器毎に前記制限値を設定し、
前記吐出制御部は、前記各液体容器について設定された前記制限値の範囲内のデューティで当該液体容器の液体を吐出するように前記液体吐出部を制御する
請求項1から請求項5の何れかの液体吐出装置。
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Cited By (1)
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2016
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