JP2017046676A - 足場プレート及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 隣接するウェルの溶液が混合してしまうことのない足場プレート、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の足場プレートは、空孔プレート、繊維シート、非通液性シートの順に有する足場プレートであり、前記空孔プレートの貫通孔周縁と前記繊維シート、及び前記繊維シートと前記非通液性シートとが、粘着剤によって接合している。このような足場プレートは、空孔プレート、第1粘着剤、繊維シート、第2粘着剤、非通液性シートの順に積層した後、加熱及び/又は加圧することにより、第1粘着剤及び第2粘着剤で接合して製造できる。
【選択図】 図1

Description

本発明は足場プレート及びその製造方法に関する。
従来より生化学的分析や臨床検査などに用いられているシャーレや多穴プレート等の容器は、各々のウェル中で、微生物や細胞を培養することによって、前記分析や検査を容易に行なうことができる。一方で、シャーレや多穴プレートなどのウェル内、特にはウェル底面を、繊維構造体や多孔体、表面に任意の凹凸がパターニングされた基材等に置き換え、細胞培養を実施する三次元培養技術がある。これら三次元培養技術は、従来の平面上での細胞培養に比べ生体内の細胞に近い状態で細胞を培養することが可能となる。
本願出願人らは、生体内の細胞に近い状態で細胞を培養することができる、三次元培養基材として、「平均繊維径3μm以下の無機系ナノファイバーからなる無機系繊維構造体であり、内部を含む全体が無機系接着剤で接着した、空隙率が90%以上の無機系繊維構造体。」(特許文献1)を提案している。
そのため、前記のような繊維構造体を多穴プレートのウェル内に装着すれば、繊維足場を有する多穴プレートが容易に得られることが期待された。しかしながら、個々のウェル内に繊維構造体を装着するのが煩雑であった。
そこで、特許文献2にも開示されているように、ウェルの側壁を形成する上側プレートとウェルの底壁を形成する下側プレートとを、接着剤によって互いに連結した多穴プレートが知られているため、繊維構造体を前記上側プレートと下側プレートとの間に介在させ、接着剤によって互いに連結することを試みた。しかしながら、隣接するウェルの溶液が混合してしまう場合があった。
国際公開番号第2010/082603号公報 特表2007−526767号公報
本発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、隣接するウェルの溶液が混合してしまうことのない足場プレート、及び隣接するウェルの溶液が混合してしまうことのない足場プレートを容易に製造することのできる方法を提供することを目的とする。
本発明の請求項1にかかる発明は、「貫通孔を有する空孔部を備える空孔プレート、繊維シート、非通液性シートの順に有し、前記繊維シートが露出した足場プレートであり、前記空孔プレートの貫通孔周縁と前記繊維シート、及び前記繊維シートと前記非通液性シートとが、粘着剤の前記繊維シート内部への進入によって接合しており、前記空孔部に注液しても液漏れが生じないことを特徴とする、足場プレート。」である。
本発明の請求項2にかかる発明は、「貫通孔を有する空孔部を備える空孔プレート、第1粘着剤、繊維シート、第2粘着剤、非通液性シートの順に積層し、繊維シートが露出した状態とした後、加熱及び/又は加圧することによって、前記空孔プレートの貫通孔周縁と前記繊維シート、及び前記繊維シートと前記非通液性シートとを、第1粘着剤及び第2粘着剤の前記繊維シート内部への進入によって、前記空孔部に注液しても液漏れが生じないように接合することを特徴とする、足場プレートの製造方法。」である。
本発明の請求項3にかかる発明は、「第1粘着剤及び/又は第2粘着剤がテープ形態からなることを特徴とする、請求項2記載の足場プレートの製造方法。」である。
本発明の請求項4にかかる発明は、「第1粘着剤及び/又は第2粘着剤が支持体を含まないテープ形態からなることを特徴とする、請求項3記載の足場プレートの製造方法。」である。
本発明の請求項5にかかる発明は、「加熱温度が30℃以上、かつ空孔プレート、繊維シート、非通液性シート、第1粘着剤、及び第2粘着剤の中で、最も耐熱温度の低い温度よりも低い温度であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載の足場プレートの製造方法。」である。
本発明の請求項1にかかる足場プレートは、空孔プレートと非通液性シートとの間に繊維シートが存在しているため、繊維足場上で細胞を培養することができる。また、空孔プレートの貫通孔周縁と繊維シート、及び繊維シートと非通液性シートとが、粘着剤の繊維シート内部への進入によって接合しており、空孔部に注液しても液漏れが生じないため、隣接する空孔部の溶液が混合することもない。つまり、従来の接着剤は毛細管現象によって接着剤が繊維シート全体に広がってしまい、接着剤が所望接着部以外の箇所に付着したり、接着剤で接着されていない箇所が存在していたため、空孔部へ注液した際に液漏れが生じる結果、隣接する空孔部の溶液が混合してしまったが、本発明においては、粘着剤の繊維シート内部への進入によって接合しており、粘着剤は繊維シート全体に広がっておらず、空孔プレートの貫通孔周縁を十分に接合しているため、液漏れが生じず、隣接する空孔部の溶液が混合することがない。
本発明の請求項2にかかる足場プレートの製造方法によれば、空孔プレート、第1粘着剤、繊維シート、第2粘着剤、非通液性シートの順に積層し、加熱及び/又は加圧することによって、第1粘着剤及び第2粘着剤を繊維シート内部へ十分に進入させるだけで、請求項1にかかる足場プレートを製造することができるため、容易に足場プレートを製造することができる。
本発明の請求項3にかかる足場プレートの製造方法によれば、第1粘着剤及び/又は第2粘着剤がテープ形態からなるため、所望接合箇所のみを粘着剤で接合しやすく、繊維シートの作用を損なわない足場プレートを製造しやすい。また、所望接合箇所に略等量の粘着剤を付与できるため、液漏れの生じない、品質の安定した足場プレートを製造しやすい。更に、粘着剤の液だれが生じないため、製造環境が優れている。
本発明の請求項4にかかる足場プレートの製造方法によれば、第1粘着剤及び/又は第2粘着剤が支持体を含まないテープ形態からなるため、繊維シートに皺を発生させることなく、足場プレートを製造しやすい。つまり、第1粘着剤及び/又は第2粘着剤が支持体を含まないテープ形態であると、加熱及び/又は加圧時に応力が繊維シートに作用しにくいため、繊維シートに皺を発生させることなく、足場プレートを製造しやすい。
本発明の請求項5にかかる足場プレートの製造方法によれば、加熱温度が30℃以上であることによって、粘着剤が繊維シート内部へ進入して十分に接合でき、また、空孔プレート、繊維シート、非通液性シート、第1粘着剤、及び第2粘着剤の中で、最も耐熱温度の低い温度よりも低い温度で加熱しているため、加熱によっていずれの材料も損傷させることなく、足場プレートを製造しやすい。特に、繊維シートの損傷が生じないため、繊維足場上で効果的に細胞培養できる足場プレートを製造しやすい。
本発明の足場プレートの模式的斜視図 図1のA−A’線における部分拡大断面図 本発明の足場プレートを構成する材料を積層する前の状態を示す模式的斜視図 実験1における足場プレートを非通液性シート側から観察した写真 実験1における足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真 実験2における足場プレートを非通液性シート側から観察した写真 実験2における足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真 実験3における足場プレートを非通液性シート側から観察した写真 実験3における足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真 実験4における足場プレートを非通液性シート側から観察した写真 実験4における足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真 実験5における足場プレートを非通液性シート側から観察した写真 実験5における足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真 実験6における足場プレートを非通液性シート側から観察した写真 実験6における足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真 比較実験1における足場プレートを非通液性シート側から観察した写真 比較実験1における足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真 実験7における足場プレートを非通液性シート側から観察した写真 実験7における足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真 比較実験2における足場プレートを非通液性シート側から観察した写真 比較実験2における足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真 比較実験3における足場プレートを非通液性シート側から観察した写真 比較実験3における足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真 比較実験4における足場プレートを非通液性シート側から観察した写真 比較実験4における足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真 比較実験5における足場プレートを非通液性シート側から観察した写真 比較実験5における足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真 実験8における足場プレートを非通液性シート側から観察した写真 実験8における足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真 比較実験6における足場プレートを非通液性シート側から観察した写真 比較実験6における足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真 比較実験7における足場プレートを非通液性シート側から観察した写真 比較実験7における足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真 実験9における足場プレートを非通液性シート側から観察した写真 実験9における足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真 実験10における足場プレートを非通液性シート側から観察した写真 実験10における足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真 比較実験8における足場プレートを非通液性シート側から観察した写真 比較実験8における足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真 比較実験9における足場プレートを非通液性シート側から観察した写真 比較実験9における足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真 実験11における足場プレートを非通液性シート側から観察した写真 実験11における足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真
本発明の足場プレートについて、模式的斜視図である図1、及び図1のA−A’線における部分拡大断面図である図2をもとに説明する。
図1、図2に示すように、本発明の足場プレート10は、厚さ方向において、貫通孔12を有する空孔部11を備える空孔プレート1、繊維シート2、非通液性シート3の順に有し、空孔プレート1の貫通孔周縁12aと繊維シート2、及び繊維シート2と非通液性シート3とは、粘着剤45の繊維シート内部への進入によって接合している。
空孔プレート1は貫通孔12を有するため、空孔プレート1に隣接する繊維シート2が露出することができる。また、空孔プレート1は空孔部11を備えているため、非通液性シート3と協働して、培養液等の液体を保持することができる。なお、図2における空孔プレート1の空孔部11は断面積が一定の円柱状の形状を有しているが、円柱状の形状である必要はなく、例えば、底面方向に向かって断面積が減少する円錐台状の形状であっても良く、特に限定するものではない。更に、図1における空孔プレート1は96個の空孔部11を有するものであるが、空孔部11は1個以上あれば良く、その数は特に限定されない。
また、空孔プレート1の素材は特に限定するものではない。なお、空孔プレート1の色は特に限定されるものではないが、細胞や微生物の実験を行いやすく、各種分析を行いやすいように、透明、黒又は白であるのが好ましい。更に、空孔部11の内壁面は親水処理、疎水処理、非生物由来物質、生物由来物質などで表面処理されていてもよい。
繊維シート2は前述の空孔プレート1に隣接しており、前述の通り、空孔プレート1は貫通孔12を有するため、繊維シート2の前記貫通孔12に相当する部分が露出部21となる。この繊維シート2は特に限定するものではないが、細胞を内部空隙に保持したい場合には、空隙率が90%以上(より好ましくは91%以上、更に好ましくは92%以上、更に好ましくは93%以上、更に好ましくは94%以上)であるのが好ましい。一方で、繊維シートの形態安定性に優れるように、99.9%以下であるのが好ましい。なお、細胞を内部空隙に保持することなく、繊維シート表面で細胞培養する場合には、空隙率は90%未満であってもよい。
また、繊維シートを構成する繊維構成樹脂は細胞培養できるものであれば良く、特に限定するものではないが、例えば、ナイロン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ−2−(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル共重合体、ポリ乳酸、ポリ(乳酸−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ゼラチン、コラーゲンなどの有機樹脂、又はこれらの混合樹脂;シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、アパタイトなどの無機樹脂、又はこれらの複合酸化物;であることができる。なお、有機樹脂と無機樹脂の混合樹脂であっても良い。また、繊維シートは樹脂組成の同じ繊維1種類から構成されていても良いし、樹脂組成の異なる繊維2種類以上から構成されていても良い。後者のように、繊維シートが樹脂組成の異なる繊維2種類以上から構成されている場合、均一に混在した繊維シートであっても良いし、樹脂組成の異なる繊維毎に層を構成した繊維シートであっても良い。更に、繊維シート構成繊維が水溶性有機樹脂からなる場合、液中で溶解しないように不溶化処理されていても良い。更に、繊維シート構成繊維は、親水処理、疎水処理、非生物由来物質、生物由来物質などで表面処理されていてもよい。
更に、繊維シート2を構成する繊維の平均繊維径は、特に限定するものではないが、繊維が細胞を保持しやすい大きさの孔を形成しやすいように、3μm以下であるのが好ましく、2μm以下であるのがより好ましく、1μm以下であるのが更に好ましく、0.8μm以下であるのが更に好ましく、0.5μm以下であるのが更に好ましい。なお、平均繊維径の下限は特に限定するものではないが、0.01μm以上であるのが好ましい。また、繊維シートが平均繊維径の異なる繊維毎に層を有するものであることもでき、この場合には、少なくとも一層が前記平均繊維径を有するのが好ましい。本発明における「平均繊維径」は50点における繊維径の算術平均値をいい、「繊維径」は10本以上の繊維が写る視野で繊維シートを撮影した電子顕微鏡写真をもとに測定した繊維の太さをいう。
更に、繊維シート2の目付は細胞培養できる限り、特に限定するものではないが、低目付であるほど、顕微鏡によって細胞観察を行いやすいため、20g/m以下であるのが好ましく、10g/m以下であるのがより好ましく、5g/m以下であるのが更に好ましく、2.5g/m以下であるのが最も好ましい。なお、目付の下限は特に限定するものではないが、0.1g/m以上であるのが好ましい。本発明における「目付」は、最も面積の広い面の面積及び質量を測定し、この面積と質量から、面積1m当たりの質量に換算した値をいう。
更に、繊維シート2の厚さは細胞培養できる限り、特に限定するものではないが、100μm以下であるのが好ましく、50μm以下であるのがより好ましく、25μm以下であるのが更に好ましく、20μm以下であるのが更に好ましく、10μm以下であるのが最も好ましい。なお、厚さの下限は特に限定するものではないが、0.1μm以上であるのが好ましい。本発明における「厚さ」は最も面積の広い面と、前記広い面に対向する面との長さを、マイクロメーター法[荷重:0.5N(測定面積:直径14.3mm)]で測定した、20箇所における算術平均値をいう。
更に、繊維シート2の平均孔径は細胞培養できる限り、特に限定するものではないが、例えば、繊維シート内部に直径約20μm前後の一般的な細胞を保持したい場合には、2〜40μmであるのが好ましく、4〜20μmであるのがより好ましく、6〜10μmであるのが更に好ましい。なお、繊維シート表面で細胞培養したい場合には、平均孔径は2μm未満でもよく、特に限定されない。更に、繊維シートは平均孔径の異なる層を2層以上有していても良い。この「平均孔径」は、ASTM−F316に規定されている方法により得られる平均流量孔径の値をいい、例えば、ポロメータ[Polometer、コールター(Coulter)社製]を用いて、ミーンフローポイント法により測定することができる。
繊維シート構成繊維は連続繊維であっても、短繊維であってもよい。なお、「連続繊維」とは、繊維シートの5,000倍の電子顕微鏡写真を撮影した場合に、構成繊維の端部を確認できないことを意味し、「短繊維」とは、繊維シートの5,000倍の電子顕微鏡写真を撮影した場合に、構成繊維の端部を確認できることを意味する。
本発明方法で用いることのできる繊維シート2の形態は特に限定するものではないが、例えば、不織布形態、織物形態、編物形態であることができる。なお、不織布形態の繊維シート2の製造方法は従来から公知の方法により製造することができる。例えば、前述のような空隙率、平均繊維径、平均孔径を有し、連続繊維からなる不織布は、例えば、静電紡糸法により製造することができる。また、短繊維からなる不織布形態の繊維シート2は、常法のファイバーボンド法やケミカルボンド法により製造することができる。なお、繊維シートは熱処理、プレス処理、繊維間接着処理などの後処理によって、任意の物性に調整することができる。
非通液性シート3は空孔プレート1の貫通孔12を封鎖し、培養液が液漏れしないように、非通液性である。この「非通液性シート」とは、シートの一面に、培養液を置いた時に、その培養液がシートの内部を通って、培養液を置いた面と逆側の他面に移動しないシートである。
このような非通液性シート3は非通液性である限り、その素材は特に限定するものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、トリアセテート、ポリフェニレンサルファイド、全芳香族ポリアミド、ポリエチレンナフタレート、ポリメタクリル酸メチル、フッ素樹脂などを挙げることができる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートは透明性が高いため、細胞を観察しやすく、また、耐薬品性に優れ、更には薄くても強靭であるため、好適である。
本発明の足場プレート10は、基本的に上述のような空孔プレート1、繊維シート2及び非通液性シート3からなるが、空孔プレート1の貫通孔周縁12aと繊維シート2、及び繊維シート2と非通液性シート3とが、粘着剤45の繊維シート内部への進入によって接合して一体化している。この粘着剤45の繊維シート内部への進入による接合状態は、空孔部11に注液しても液漏れが生じない程度に粘着剤45が繊維シート内部へ進入している。つまり、従来の接着剤は毛細管現象によって繊維シート全体に広がってしまい、接着剤で接着されていない隙間が生じていたが、本発明の足場プレート10においては、空孔プレート1の貫通孔周縁12aから非通液性シート3まで、粘着剤45が繊維シート全体に広がることなく繊維シート内部へ十分に進入し、液漏れを生じる隙間がないため、空孔部11に注液しても液漏れが生じず、隣接する空孔部11の溶液が混合することがない。
この粘着剤45としては、例えば、ゴム系、アクリル系、ビニルエーテル系等の粘着剤を挙げることができ、特に、シリコーンゴム系粘着剤は毒性がなく、各種汚染物質の溶出もないため好適である。また、粘着剤45は支持体を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。
なお、粘着剤45が繊維シート2の露出部21にまで進入していると、繊維シート2の表面状態が変化し、細胞培養に悪影響を与える場合があるため、粘着剤45は繊維シート2の露出部21にまで進入していないのが好ましい。
また、本発明における「空孔部に注液しても液漏れが生じない」とは、空孔部に表面張力が小さく、漏出しやすいエタノールを注液した状態のまま、室温下で24時間静置した後に、繊維シートの、貫通孔周縁の接合部12bよりも外側の部分にエタノールが到達していないことを示す。この状態は、足場プレート10の非通液性シート側から目視により観察した際に、繊維シートの、貫通孔周縁の接合部12bよりも外側の部分が変色しているかどうかを観察することによって確認できる。
このように、本発明の足場プレート10は、空孔プレート1の貫通孔周縁12aと繊維シート2、及び繊維シート2と非通液性シート3とが、粘着剤45の繊維シート内部への進入によって接合しており、空孔部11に注液しても液漏れが生じないため、隣接する空孔部11の溶液が混合することなく使用できる足場プレート10である。
このような本発明の足場プレートは、例えば、貫通孔を有する空孔部を備える空孔プレート、第1粘着剤、繊維シート、第2粘着剤、非通液性シートの順に積層し、繊維シートが露出した状態とした後、加熱及び/又は加圧することによって、空孔プレートの貫通孔周縁と繊維シート、及び繊維シートと非通液性シートとを、第1粘着剤及び第2粘着剤を繊維シート内部へ進入させることにより、空孔部に注液しても液漏れが生じないように接合して製造することができる。
本発明の足場プレートの製造方法について、足場プレートを構成する材料を積層する前の状態を示す模式的斜視図である図3をもとに説明する。
まず、前述のような空孔プレート1、繊維シート2、非通液性シート3を準備する。また、テープ状第1粘着剤4とテープ状第2粘着剤5を準備する。このテープ状第1粘着剤4とテープ状第2粘着剤5は空孔プレート1、繊維シート2及び非通液性シート3を接合できるものであれば良く、特に限定するものではないが、テープ形態からなり、所望接合箇所のみを粘着剤で接合しやすいため、繊維シート2の作用を損なわない足場プレート10を製造しやすい。また、所望接合箇所に略等量の粘着剤を付与できるため、液漏れの生じない、品質の安定した足場プレート10を製造しやすい。更に、粘着剤の液だれが生じないため、製造環境が優れている。特に、テープ状第1粘着剤4及び/又はテープ状第2粘着剤5が支持体を含まないと、後述の加熱及び/又は加圧による繊維シート2の内部への進入時に、応力が繊維シート2に作用しにくく、繊維シートに皺を発生させることなく、足場プレートを製造しやすいため好適である。
なお、テープ状第1粘着剤4及びテープ状第2粘着剤5は、前述の通り、例えば、ゴム系、アクリル系、ビニルエーテル系等の粘着剤であることができ、特に、シリコーンゴム系粘着剤であるのが好ましい。なお、テープ状第1粘着剤4とテープ状第2粘着剤5とは同じ粘着剤であっても良いし、異なる粘着剤であっても良いが、同じであると、粘着剤同士の親和性が高く、繊維シート2に隙間が生じにくく、液漏れが生じない足場プレート10を製造しやすいため好適である。
また、繊維シート上で細胞培養を実現できるように、足場プレート10において、繊維シート2が露出した状態にある必要があるため、空孔プレート側に積層するテープ状第1粘着剤4は空孔プレート1の貫通孔12に相当する貫通孔を有する。一方で、非通液性シート側に積層するテープ状第2粘着剤5はテープ状第1粘着剤4と同様に貫通孔を有するものであっても良いし、貫通孔を有しないものであっても良いが、テープ状第2粘着剤5も空孔プレート1の貫通孔12に相当する貫通孔を有すると、第2粘着剤が繊維シート2における細胞培養に悪影響を及ぼしにくいため好適である。
次いで、空孔プレート1、テープ状第1粘着剤4、繊維シート2、テープ状第2粘着剤5、非通液性シート3の順に積層し、繊維シート2が露出した状態とした後、加熱及び/又は加圧し、空孔プレート1の貫通孔周縁12aと繊維シート2、及び繊維シート2と非通液性シート3とを、テープ状第1粘着剤4及びテープ状第2粘着剤5の繊維シート内部へ十分に進入させることによって、空孔部11に注液しても液漏れが生じないように接合する。
上述のように、加熱のみ、又は加圧のみで、テープ状第1粘着剤4及びテープ状第2粘着剤5を繊維シート内部へ進入させることができるが、テープ状第1粘着剤4及びテープ状第2粘着剤5が繊維シート内部へ十分に進入し、確実に液漏れが生じないように、加熱及び加圧するのが好ましい。特に、繊維シート2の目付が2.5g/m以上である場合には、加熱又は加圧の一方のみでは、繊維シート内部へテープ状第1粘着剤4及びテープ状第2粘着剤5が十分に進入せず、液漏れが生じる可能性が高くなるため、繊維シート2の目付が2.5g/m以上である場合には、加熱及び加圧するのが好ましい。
なお、加熱する場合には、加熱温度30℃以上、かつ空孔プレート1、繊維シート2、非通液性シート3、テープ状第1粘着剤4、及びテープ状第2粘着剤5の中で、最も耐熱温度の低い温度よりも低い温度で加熱するのが好ましい。加熱温度が30℃以上であれば、テープ状第1粘着剤4及びテープ状第2粘着剤5の弾性率が下がり、繊維シート内部へ進入しやすくなるためで、より好ましくは40℃以上である。一方で、空孔プレート1、繊維シート2、非通液性シート3、テープ状第1粘着剤4、及びテープ状第2粘着剤5の中で、最も耐熱温度の低い温度よりも低い温度で加熱すれば、いずれの材料も損傷することなく、足場プレート10を製造できるためで、最も耐熱温度の低い温度よりも5℃以上低いのがより好ましく、10℃以上低いのが更に好ましい。本発明における「耐熱温度」は、JIS S2029の7・4に掲げる耐熱性試験により、50℃を起点として10℃おきに行い、その結果、機能の異常又は著しい変形が生じた温度よりも10℃低い温度を耐熱温度とする。
なお、加熱時間はテープ状第1粘着剤4及びテープ状第2粘着剤5が繊維シート内部へ十分に進入する時間であれば良く、加熱温度、粘着剤の種類、加圧する場合にはその条件、等によって異なるため、特に限定するものではないが、例えば、空孔プレート1、繊維シート2、非通液性シート3、テープ状第1粘着剤4、及びテープ状第2粘着剤5の中で、最も耐熱温度の低い温度よりも低く、最も耐熱温度の低い温度よりも10℃低い温度以上で加熱する場合、その加熱時間は短い方が好ましく、より具体的には、3分以内であるのが好ましく、2分以内であるのがより好ましく、1分以内であるのが更に好ましく、30秒以内であるのが更に好ましい。
一方、加圧はテープ状第1粘着剤4及びテープ状第2粘着剤5が繊維シート内部へ十分に進入し、空孔部に注液しても液漏れが生じず、また、空孔プレート1、繊維シート2、非通液性シート3、テープ状第1粘着剤4、及びテープ状第2粘着剤が破損しない圧力であれば良く、これら材料の種類、加熱する場合にはその条件、等によって異なるため、特に限定するものではないが、例えば、空孔プレート1、繊維シート2、非通液性シート3、テープ状第1粘着剤4、及びテープ状第2粘着剤5の中で、最も耐熱温度の低い温度よりも低く、最も耐熱温度の低い温度よりも10℃低い温度以上で加熱する場合、1つの貫通孔12あたり、10g以上で加圧すると、繊維シート内部へ粘着剤を十分に進入させることができる。
また、加熱及び/又は加圧は、非通液性シート側から、例えば、フラットプレス装置により実施することができる。なお、加熱及び/又は加圧する場合、非通液性シートを全面的に加熱及び/又は加圧することができるし、所望接合箇所のみを加熱及び/又は加圧することもできる。例えば、空孔プレートの貫通孔周縁の形状に相当する凸部を有する加圧板を使用して、空孔プレートの貫通孔周縁のみを加熱及び/又は加圧することができる。なお、加圧板の素材は加熱及び/又は加圧できる限り、特に限定されるものではないが、加熱及び/又は加圧によって破損しない金属(例えば、アルミニウム)からなるのが好ましい。
以上のように、本発明の製造方法によれば、空孔プレート1、テープ状第1粘着剤4、繊維シート2、テープ状第2粘着剤5、非通液性シート3の順に積層し、加熱及び/又は加圧することによって、テープ状第1粘着剤4及びテープ状第2粘着剤5を繊維シート内部へ十分に進入させるだけで、本発明の足場プレート10を容易に製造できる方法である。
なお、以上は図3をもとに、テープ状第1粘着剤4及びテープ状第2粘着剤5を使用する製造方法について説明したが、第1粘着剤及び/又は第2粘着剤はテープ状である必要はなく、溶液状の粘着剤であっても良い。しかしながら、繊維シートの露出面に粘着剤が進入し、細胞培養作用を損なうことがないように、所望接合箇所のみを接合しやすい、テープ状の第1粘着剤及び第2粘着剤であるのが好ましい。
以下、本発明の足場プレートの具体例を記載するが、本発明は以下の足場プレートに限定されるものではない。
<空孔プレート1>
直径6.5mmの貫通孔12を有する円柱状の空孔部11が96(8×12)個あるポリスチレン製空孔プレート1(黒色、表面処理はなし)を用意した。このポリスチレン製空孔プレートの耐熱温度は80℃であった。
<不織布A>
静電紡糸法により製造した、ポリアクリロニトリル連続繊維(平均繊維径:300nm)からなる不織布A(空隙率:91% 、目付:1.5g/m、厚さ:15μm、平均孔径:1.28μm、耐熱温度:200℃以上)を用意した。
<不織布B>
静電紡糸法により製造した、ポリアクリロニトリル連続繊維(平均繊維径:300nm)からなる不織布B(空隙率:86% 、目付:2.5g/m、厚さ:16μm 、平均孔径:1.46μm 、耐熱温度:200℃以上)を用意した。
<不織布C>
静電紡糸法により製造した、ポリアクリロニトリル連続繊維(平均繊維径:300nm)からなる不織布C(空隙率:83%、目付:5g/m、厚さ:27μm、平均孔径:1.21μm、耐熱温度:200℃以上)を用意した。
<不織布D>
静電紡糸法により製造した、ナイロン6連続繊維(平均繊維径:300nm)からなる不織布D(空隙率:73%、目付:1.5g/m、厚さ:5μm、平均孔径:1.15μm、耐熱温度:120℃)を用意した。
<非通液性シート3>
ポリエチレンテレフタレート製フィルム(厚さ:50μm、耐熱温度:200℃)を非通液性シート3として用意した。
<テープ状第1粘着剤4>
シリコーンゴム系粘着剤からなり、支持体を含まない、両面テープ(7.5cm×11.5cm)を用意した。次いで、両面テープの空孔プレート1の貫通孔12に相当する位置を、直径6.5mmの円形に打ち抜き、貫通孔を有するテープ状第1粘着剤4(耐熱温度:200℃以上)を用意した。
<テープ状第2粘着剤5>
テープ状第1粘着剤4と全く同様にして、貫通孔を有するテープ状第2粘着剤5(耐熱温度:200℃以上)を用意した。
(実験1〜11、比較実験1〜9)
空孔プレート1、テープ状第1粘着剤4、不織布A〜Dのいずれか、テープ状第2粘着剤5、非通液性シート3の順に積層し、不織布A〜Dのいずれかが露出した積層体をそれぞれ作製した。つまり、テープ状第1粘着剤4及びテープ状第2粘着剤5の貫通孔が空孔プレート1の貫通孔12と一致するように積層し、不織布A〜Dのいずれかが露出した積層体をそれぞれ作製した。
次いで、外径10mm、内径7mmの中空円柱形状のアルミニウム加圧ピンを用い、表1に示す条件で、前記積層体の貫通孔周縁12aの3箇所を加熱及び/又は加圧することによって、テープ状第1粘着剤4及びテープ状第2粘着剤5を不織布A〜D内部へ進入させ、空孔プレート1の貫通孔周縁12aと不織布A〜D、及び不織布A〜Dと非通液性シート3とを、不織布A〜Dの露出部21に粘着剤5を進入させることなく接合し、実験用の足場プレートをそれぞれ作製した。
次いで、貫通孔周縁12aの周縁を加熱及び/又は加圧した空孔部に、エタノールを100μL注液し、注液した状態のまま、室温下で24時間静置した後に、足場プレート10の非通液性シート側から、繊維シートの、貫通孔周縁の接合部12bよりも外側の部分が変色しているかどうかを目視により、それぞれ観察した。この状態は、図4〜図43に示す通りであった。なお、図4〜図43における偶数の図は、エタノールを注液する前の足場プレートを非通液性シート側から観察した写真であり、図4〜図43における奇数の図は、足場プレートの空孔部へエタノールを注液した後に、非通液性シート側から観察した写真である。なお、空孔部にエタノールを100μL注液して10分以内に、貫通孔周縁の接合部12bよりも外側の部分がエタノールの液漏れによって変色した場合は、液漏れありと判断し、24時間後の観察を中止した。
Figure 2017046676
#:貫通孔1つあたりの加圧
*:25℃は室温
表1の実験1〜7の結果から、加熱及び加圧することによって、第1粘着剤及び第2粘着剤を繊維シート内へ十分に進入させ、液漏れが生じないように接合できることがわかったため、同様にして、他の貫通孔周縁も接合すれば、液漏れの生じない足場プレートを製造できることがわかった。
また、実験8〜11及び比較実験2〜9の結果から、加熱及び加圧をしない場合には液漏れが生じないように接合できないものの、繊維シート2の目付が2.5g/m未満である場合には、加熱又は加圧の一方のみで、第1粘着剤及び第2粘着剤を繊維シート内へ十分に進入させ、液漏れが生じないように接合できることがわかったため、同様にして、他の貫通孔周縁も接合すれば、液漏れの生じない足場プレートを製造できることがわかった。
本発明の足場プレートは培養プレートや分析用プレートとして好適に使用できる。
1 空孔プレート
11 空孔部
12 貫通孔
12a 貫通孔周縁
12b 接合部
2 繊維シート
21 露出部
3 非通液性シート
4 テープ状第1粘着剤
5 テープ状第2粘着剤
45 粘着剤
10 足場プレート

Claims (5)

  1. 貫通孔を有する空孔部を備える空孔プレート、繊維シート、非通液性シートの順に有し、前記繊維シートが露出した足場プレートであり、前記空孔プレートの貫通孔周縁と前記繊維シート、及び前記繊維シートと前記非通液性シートとが、粘着剤の前記繊維シート内部への進入によって接合しており、前記空孔部に注液しても液漏れが生じないことを特徴とする、足場プレート。
  2. 貫通孔を有する空孔部を備える空孔プレート、第1粘着剤、繊維シート、第2粘着剤、非通液性シートの順に積層し、繊維シートが露出した状態とした後、加熱及び/又は加圧することによって、前記空孔プレートの貫通孔周縁と前記繊維シート、及び前記繊維シートと前記非通液性シートとを、第1粘着剤及び第2粘着剤の前記繊維シート内部への進入によって、前記空孔部に注液しても液漏れが生じないように接合することを特徴とする、足場プレートの製造方法。
  3. 第1粘着剤及び/又は第2粘着剤がテープ形態からなることを特徴とする、請求項2記載の足場プレートの製造方法。
  4. 第1粘着剤及び/又は第2粘着剤が支持体を含まないテープ形態からなることを特徴とする、請求項3記載の足場プレートの製造方法。
  5. 加熱温度が30℃以上、かつ空孔プレート、繊維シート、非通液性シート、第1粘着剤、及び第2粘着剤の中で、最も耐熱温度の低い温度よりも低い温度であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載の足場プレートの製造方法。
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