以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態のガソリンエンジンの制御システムの概略構成図である。このエンジンの制御システムにEGR制御装置が含まれている。
エンジン1はガソリンエンジン(以下、単に「エンジン」ともいう。)で、車両に搭載されている。エンジン1には、吸気通路4、排気通路11を備える。上記の吸気通路4は、吸気管4a、吸気コレクタ4b、吸気マニホールド4cで構成される。吸気通路4の上流端には吸気ダクト72を、その直ぐ下流にエアクリーナ71を備える。
吸気コレクタ4bのすぐ上流の吸気管4aにはアクセルペダルの踏込量に応動する電子制御のスロットル装置を備える。スロットル装置は、スロットルバルブ5と、スロットルバルブ5を駆動するモータ(回転電機)6により構成されている。吸入空気は吸気管4aを経てスロットルバルブ5によって調量される。調量された空気は吸気コレクタ4bに蓄えられ、この吸気コレクタ4bから吸気マニホールド4cを介して各気筒のシリンダ7(燃焼室)に分配供給される。実施形態は電子制御のスロットル装置の場合であるが、スロットルバルブとアクセルペダルとがワイヤーにより連結されたものであってよい。
燃料噴射弁8が吸気マニホールド4cに、点火プラグ9がシリンダ7に直接臨んでそれぞれ設けられ、燃料噴射弁8から燃料が吸気マニホールド4c(吸気ポート)に噴射される。噴射された燃料は、スロットルバルブ5によって調量された空気と混合してガスとなり、このガスを点火プラグ9で着火して燃焼させる。燃焼するガスはピストン10を押し下げる仕事をした後、排気通路11に排出される。燃料噴射弁8を設ける位置は吸気マニホールドに限らない。シリンダ7に直接臨ませて燃料噴射弁を設けるものであってよい。
排気通路11は、各気筒のシリンダ7からの排気が流入する排気マニホールド11a、この排気マニホールド11aの集合部に接続される排気管11bで構成される。排気中にはHC、CO、NOxの有害三成分を含んでいる。これらの有害成分を全て浄化するため、タービン22下流の排気管11bにマニホールド触媒12A,12Bを、それよりも下流の排気管11bにメイン触媒13を備えている。メイン触媒13は例えば車両の床下に設けられる。これら各触媒12A,12B,13は例えば三元触媒で構成される。排気管11bの末端にはマフラー19を備えている。
エンジン1には、さらにターボ過給機21を備える。ターボ過給機21は、排気管11bに設けられるタービン22と、吸気管4aに設けられるコンプレッサ23と、これらタービン22,コンプレッサ23を接続する軸24とで構成される。上記タービン22は排気管11bを流れる排気のエネルギにより回転し、タービン22と同軸のコンプレッサ23を駆動する。コンプレッサ23はエアクリーナ71を介して吸入される新気を圧縮する。上記の「新気」とは、後述するEGRガスを含まない空気のことである。新気を空気ともいう。圧縮されて大気圧を超える加圧空気は、吸気コレクタ4bへと送られる。ターボ過給機21を働かせることで、目標過給圧を得ることができる。
ターボ過給機21には、タービン22をバイパスするバイパス通路24と、このバイパス通路24を開閉する常閉のウェイストゲートバルブ25を備える。ウェイストゲートバルブ25はモータ(回転電機)26により駆動する。例えば、過給圧センサ45により検出される実過給圧が目標過給圧より高くなったときには、モータ26を駆動することによりウェイストゲートバルブ25を開いてタービン22に流入する排気の一部を、タービン22をバイパスさせて流す。これによって、タービン回転速度がウェイストゲートバルブ25を開く前より低下し、タービン22と同軸のコンプレッサ回転速度も低下する。コンプレッサ回転速度が低下すると実過給圧が低下してゆき目標過給圧と一致する。実過給圧が目標過給圧と一致するタイミングでウェイストゲートバルブ25の開度を保持させる。
吸気コレクタ4bには、水冷式のインタークーラ61を備える。水冷式としたのは、吸気管4aのボリュームを短縮するためである。空冷式のインタークーラだと吸気管4aに介装する必要があり、その分吸気管4aの長さを長くしてしまう。一方、水冷式のインタークーラ61だと吸気コレクタ4bの内部に設けることができるので、吸気管4aの長さが長くならないのである。
インタークーラ61は、冷却水通路を流れる冷却水によって、コンプレッサ23により圧縮された空気を冷却するためのものである。詳細には、インタークーラ61は冷却水通路、その外周に設けられる空気通路から構成される。インタークーラ61の冷却水通路と空冷式のサブラジエータ62とが冷却水通路63,64で接続されている。サブラジエータ62は、例えば、エンジンの冷却水を冷却するためのラジエータと直列に配置され、走行風が通過するようになっている。冷却水通路63には、冷却水を循環させるためのポンプ65を備える。
サブラジエータ62では、インタークーラ61から運ばれてくる暖まった冷却水を走行風で冷却する。サブラジエータ62で冷やされた冷却水は、インタークーラ61に導かれる。インタークーラ61では、コンプレッサ23による空気圧縮によって温度上昇した空気と冷却水通路を流れる冷却水との間で熱交換を行い、空気を冷却する。コンプレッサ23による空気圧縮によって温度上昇した空気がインタークーラ61によって冷却されることで、過給効率を高めることができる。
さて、ターボ過給機21を備えているガソリンエンジン1においても、過給域におけるノッキングの抑制のため、大量のEGR(排気再循環)を行いたいといった要求がある。この要求に応えるため、本実施形態では、新たにロープレッシャループEGR装置(以下「低圧のEGR装置」という。)14を設ける。低圧のEGR装置14は、EGR通路15、EGR通路15に介装されるEGRクーラ16、EGR通路15を開閉するEGR弁17(例えばバタフライ弁)、EGR弁17を駆動するモータ(回転電機)18で構成される。
上記のEGR通路15は、タービン22下流の排気管、具体的にはマニホールド触媒12とメイン触媒13の間の排気管11bから分岐され、コンプレッサ23上流の吸気管4aに合流している。このため、タービン下流の排気管圧力とコンプレッサ上流の吸気管圧力との差圧で排気の一部(この排気の一部を以下「EGRガス」という。)がEGR弁17を流れる。タービン下流の排気管圧力とコンプレッサ上流の吸気管圧力との差圧は例えば1kPa程度ときわめて小さいので、低圧のEGR装置と呼ばれる。低圧のEGR装置そのものはディーゼルエンジンにおいて公知であるが、本実施形態では、ターボ過給機21を備えるガソリンエンジン1に低圧のEGR装置14を採用している。
上記のEGRクーラ16はEGR弁17上流のEGR通路15に設けられる。EGRクーラ16はEGR通路15を流れるEGRガスを冷却するものである。このため、EGR領域では冷却されたEGRガスがEGR弁17を流れる。
本実施形態では、ターボ過給機21を備えるガソリンエンジン1に低圧のEGR装置14を新たに採用して、EGR領域が過給域と重なるようにしている。このため、運転領域が〈1〉過給域かつEGR領域、〈2〉過給域かつ非EGR領域、〈3〉非過給域かつEGR領域、〈4〉非過給域かつ非EGR領域の4つの領域に区分される。特に上記〈1〉の領域において、低圧のEGR装置14では、タービン下流の相対的に低い排気管圧力とコンプレッサ上流の吸気管圧力との微小な差圧(1kPa程度)でEGRガスがEGR通路15を流れるので、過給圧の影響を受けることがない。つまり、ターボ過給機21を備えるガソリンエンジン1に低圧のEGR装置14を追加することで、ターボ過給機21による過給中にあっても大量のEGRガスを吸気管4aに導入(吐出)できるのである。
ここで、EGR領域を図2に示すと、全運転域のほぼ中央に設けられている。一方、過給域については図示していないが、図示の破線が大気圧にあるときである。従って、過給域は図示の破線より上側に設けられることとなる。EGR領域は図2に示す場合に限られるものでない。エンジン、ターボ過給機21、低圧のEGR装置14の仕様が異なれば、EGR領域の形状が違ったものとなり得る。
図1に示したように、本実施形態ではさらに、コンプレッサ23をバイパスするバイパス通路31を備える。バイパス通路31には、モータ(回転電機)33により駆動されるリサーキュレーションバルブ32が設けられている。このバルブ32は、車両減速のためスロットルバルブ5が閉じられた際に、スロットルバルブ5からコンプレッサ23までの吸気管4aに閉じ込められた加圧空気をコンプレッサ23上流側に再循環(リサーキュレーション)させるためのものである。一方、車両減速時以外の運転域でターボ過給機21により過給が行われている場合には、バルブ32が基本的に全閉保持され、コンプレッサ23の上流側の空気(EGRガスを含む)の全てがコンプレッサ23に導かれる。
次に、低圧のEGR装置14を用いてEGR制御を行う場合に、シリンダ7内のEGR率の基本値(以下、「基本EGR率」という。)のマップ特性を図3に示す。図3に示したように、エンジン負荷及びエンジン回転速度Neに応じて基本EGR率を設定している。すなわち、EGR領域を、低回転速度低負荷域R1、中回転速度中負荷域R2、高回転速度高負荷域R3の大きく3つに分割し、3つの各領域R1,R2,R3に基本EGR率としてそれぞれ所定値a%,所定値b%,所定値c%を入れている。ここでは3つの領域R1,R2,R3について高回転速度高負荷側であるほど基本EGR率が小さくなるように、つまり3つの所定値a,b,cの間にa>b>cの関係を持たせている。
ここで、上記のEGR率は次式で定義される値である。
EGR率=EGR弁流量/(新気量+EGR弁流量)
…(1)
(1)式の新気量はエアフローメータ42により検出される空気量のこと、(1)式のEGR弁流量はEGR弁17を流れるガス量のことである。EGR弁流量は、EGR弁前後差圧とEGR弁開口面積とで定まる。
高回転速度高負荷側の領域で低回転速度低負荷側の領域より基本EGR率を小さくしている理由は次の通りである。すなわち、高回転速度高負荷側においてもターボ過給機21により新気をシリンダ7に押し込めることができれば、高回転速度高負荷側でも低回転速度低負荷側と同じに基本EGR率をa%にすることができる。しかしながら、実際にはターボ過給機21により新気をシリンダ7に押し込むにしても、押し込むことのできる新気量には限界がある。一方、高回転速度高負荷側では低回転速度低負荷側より大きなエンジントルクを発生させる必要がある。そこで、高回転速度高負荷側では低回転速度低負荷側よりノッキングが生じない範囲で基本EGR率を小さくし、その小さくした分だけシリンダ7内での燃焼状態をよくすることで、低回転速度低負荷側よりも大きなエンジントルクが得られるようにするのである。なお、図3では、基本EGR率を3つの離散値で設定しているが、基本EGR率を3つの離散値で設定する場合に限定されるものでない。基本EGR率を4つ以上の離散値で設定し、あるいは連続値で基本EGR率を設定するものであってよい。
図1に示したように、燃料噴射弁8及び点火プラグ9に加えて、EGR弁17、ウェイストゲートバルブ25、リサーキュレーションバルブ32を制御するため、エンジンコントローラ41を備える。エンジンコントローラ41はマイクロプロセッサ、ROM及びRAM等の周辺機器を備えたコンピュータユニットとして構成されている。エンジンコントローラ41には、エアフローメータ42、アクセルセンサ43、クランク角センサ44、過給圧センサ45からの信号が入力する。ここで、エアフローメータ42は吸気管4a内に流入する空気量(質量流量)を検出する。アクセルセンサ43はアクセルペダルの踏込量(アクセル開度)及びその変化量を検出する。クランク角センサ44はエンジン回転速度Neを検出する。過給圧センサ45は吸気コレクタ4bの圧力(実過給圧)を検出する。
エンジンコントローラ41で行われるEGR制御を、図4のフローチャートを参照して説明する。図4のフローチャートは目標EGR弁開度を算出するためのものである。図4のフローは一定時間毎(たとえば10ms毎)に実行する。なお、図4のフローにはEGR弁17に対してフェールセーフのための処理(以下「フェールセーフ処理という。)を行う部分が含まれている。EGR率の制御に対してフェールセーフ処理を行うステップ1,6については後述する。
ステップ2では、EGR許可フラグ=1であるか否かをみる。EGR許可フラグ(エンジン始動時にゼロに初期設定)は、エンジンの回転速度Neとエンジン負荷から定まるエンジンの運転点が図2に示したEGR領域にあるときにゼロから1に切換わるフラグである。EGR許可フラグ=1であるときにはEGRを行わせるためステップ3〜5に進む。
ステップ3〜5はEGR領域で目標EGR弁開度を算出する部分である。まず、ステップ3では、エンジン回転速度Neとエンジン負荷から前述の図3を内容とするマップを検索することにより、基本EGR率Megr[%]を算出する。図3に示したように基本EGR率はエンジン回転速度Neとエンジン負荷をパラメータとするマップ上に予め定められている。
ステップ4では、この基本EGR率Megrから図5を内容とするテーブルを検索することにより、基本EGR弁開度voEGR0を算出する。図5に示したように基本EGR弁開度は基本EGR率が大きくなるほど大きくなる値である。本実施形態では、基本EGR率がa%,b%,c%しか採り得ないので、基本EGR率がa%のとき基本EGR弁開度は所定値dに、基本EGR率がb%のとき基本EGR弁開度は所定値eに、基本EGR率がc%のとき基本EGR弁開度は所定値fになる。
ステップ5では、基本EGR弁開度voEGR0をそのまま目標EGR弁開度voEGRとする。
一方、図4のステップ2でEGR許可フラグ=0であるときにはステップ6に進み、目標EGR弁開度voEGRにゼロを入れる。これによって、EGR弁17を全閉状態とする。
図示しないフローでは、このようにして算出した目標EGR弁開度voEGRが得られるようEGR弁アクチュエータであるモータ18に信号を出力する。これでEGR制御の説明を終了する。
次に、EGR通路15の合流部より上流の吸気管4aに差圧デバイスとしてのバタフライ弁80を設けている。バタフライ弁80の詳細は図9により後述するが、図9のうちから弁体82、モータ88、開度センサ92のみ取り出して図1に示している。以下、EGR通路15の分岐部からEGRガスを取り出すので、EGR通路15の上流端を「EGRガス取出し口」という。一方、EGR通路15の合流部からEGRガスを吸気管に吐出するので、EGR通路15の下流端を「EGRガス吐出口」という。以下、EGRガス取出し口に符号Nを、EGRガス吐出口に符号Pを付す。
上記のバタフライ弁80を設けた理由を説明する。EGRガス取出し口Nは触媒12A,12B下流の排気管11bに設けられるので、EGRガス取出し口Nの圧力はEGR領域のうちの低回転速度低負荷側でほぼ大気圧となる。一方、EGRガス吐出口Pはコンプレッサ23上流の吸気管4aに設けられるので、EGRガス吐出口Pの圧力はEGR領域のうちの低回転速度低負荷側でほぼ大気圧となる。このように、EGRガス取出し口NとEGRガス吐出口Pでほぼ同じ大気圧になったのでは、EGR弁17を開いても、EGRガス吐出口PからEGRガスを吸気管4aに吐出させることができない。
この場合にバタフライ弁80の弁体82を閉じると、バタフライ弁80の前後に圧力差が生じ、バタフライ弁80下流の吸気管4aの圧力、つまりEGRガス吐出口Pの圧力が大気圧より低い圧力となる。大気圧をゼロ[kPa]すれば、この大気圧より低い圧力は負の圧力となる。ここで、バタフライ弁80の弁体82を閉じることによってバタフライ弁80下流の吸気管4aに生じる、大気圧より低い圧力を、以下「負圧」という。EGRガス吐出口Pの圧力が負圧になると、EGRガス取出し口NとEGRガス吐出口Pの間に圧力差が生じるので、EGR領域のうちの低回転速度低負荷側であっても、EGR弁17を開けばEGRガス吐出口PからEGRガスが吸気管4aに吐出される。このように、バタフライ弁80を設けたのは、EGR領域のうちの低回転速度低負荷側でEGR弁17の前後差圧を確保するためである。以下、バタフライ弁80の弁体82を閉じることを、単に「バタフライ弁80を閉じる」ともいう。また、バタフライ弁80の弁体82を開くことを、単に「バタフライ弁80を開く」とも、バタフライ弁80の弁体82を全開位置に保持することを、単に「バタフライ弁80を全開位置に保持する」ともいう。
差圧デバイスとしてのバタフライ弁80を閉じる領域(つまり差圧デバイスを作動させる)領域は、図3に示したEGR領域のうちの低回転速度低負荷側、つまり低回転速度低負荷域R1のみである。以下、EGR領域のうちの低回転速度低負荷域R1を「差圧デバイス作動域」ともいう。一方、高回転速度高負荷側の2つの領域R2,R3及び非EGR領域は差圧デバイスの非作動域(以下「非差圧デバイス作動域」という。)である。非差圧デバイス作動域では、差圧デバイスとしてのバタフライ弁80を全開位置に保持する。
高回転速度高負荷側の2つの領域R2,R3でバタフライ弁80を閉じないのは、バタフライ弁80は吸気管4aの上流に設けられているので、2つの領域R2,R3でバタフライ弁80を閉じたのでは通気抵抗を大きくしてしまうので、これを避けるためである。さらに述べると、EGR領域でも高回転速度高負荷側の2つの領域R2,R3においては、適度のEGR弁17の前後差圧がそもそも存在する。EGR領域でも高回転速度高負荷側の2つの領域R2,R3においてまでバタフライ弁80を閉じる(差圧デバイスを作動させる)ことは、EGR通路15の合流部上流の吸気管4aを閉じることを意味する。これによって、EGR通路15の合流部上流の吸気管4aの通気抵抗が大きくなり、新気量が減る。この新気量の減量を補うため、コンプレッサ23仕事が大きくなる。一方、EGR領域でも高回転速度高負荷側の2つの領域R2,R3でバタフライ弁80を閉じ、EGR弁17の前後差圧を大きしたのではEGRガスのシリンダ7への導入量が過多となり、却って燃焼状態を悪くする。燃焼状態の悪化で失火が生じればエンジンが停止する事態になりかねない。そこで、EGR領域でも適度なEGR弁17の前後差圧が真に必要な低回転速度低負荷側の領域R1に限ってバタフライ弁80を閉じるのである。
本実施形態では、EGR領域を3つに分割し、そのうちの低回転速度低負荷域R1のみを差圧デバイス作動域としたが、この場合に限られるものでない。EGR領域を分割して基本EGR率を相違させる数はエンジン仕様により異なってくると考えられる。また、分割した領域のうちの1つの領域のみを差圧デバイス作動域とするのでなく、2つ以上の領域を差圧デバイス作動域とすることが考えられる。従って、分割した領域のうちの1または複数のいずれの領域を差圧デバイス作動域とするかは適合により定める。さらに、EGR領域を分割したのは、基本EGR率を3つの離散値で与えることによってEGR率の制御を簡素化するためである。基本EGR率を連続値で与えるのであれば、EGR領域を分割する必要はない。従って、基本EGR率を連続値で与える場合にはEGR領域のうちの低回転速度低負荷側に差圧デバイス作動域を設けることとなる。あるいは、差圧デバイス作動域が、EGR領域のうち低回転速度低負荷側に限らないことも考え得る。従って、EGR領域の少なくとも一部に差圧デバイス作動域が設けられていればよい。
図6はバタフライ弁80の弁体82の開度(以下、単に「バタフライ弁開度」ともいう。)を設定するに際して考慮した特性図である。横軸に新気量の目標値である目標空気量[g/s]を、縦軸にバタフライ弁開度[°]を採っている。上記の目標空気量はスロットルバルブ開度を制御するときの指標となる値である。バタフライ弁80では、理論的にバタフライ弁開度が0°(最小値)から90°(最大値)まで変化する。この場合に、バタフライ弁開度が0°のときにバタフライ弁80は全閉位置にあり、バタフライ弁開度が90°のときにバタフライ弁80が全開位置にあるものとする。実際には、バタフライ弁80が全開位置に近いデフォルト位置にあるときバタフライ弁80の弁体82は最大の90°に近い値(以下、この値を「デフォルト値」という。)にある。そして、バタフライ弁80の弁体82をデフォルト位置から閉じてゆくほどバタフライ弁開度は0°に向かって小さくなり最小値(ゼロに近い正の値)に到達する。図6に最小値を記載していないが、最小値は縦軸上の所定値S1より小さい値である。
図6に示したように、目標空気量がゼロから大きくなり所定値Q1に到達するまではバタフライ弁開度はデフォルト値である。これは、所定値Q1未満の空気量域は非EGR領域に相当し、非EGR領域ではバタフライ弁80を閉じることが必要ないためである。目標空気量が所定値Q1に到達したタイミングで上記の低回転速度低負荷域R1(=差圧デバイス作動域)に入るためバタフライ弁開度を所定値S1とする。所定値Q1からは目標空気量に比例させてバタフライ弁開度を大きくし、目標空気量が所定値Q2に到達したタイミングでバタフライ弁開度を所定値S2とする。目標空気量が所定値Q2を超えると、上記の中回転速度中負荷域R2(非作動デバイス作動域)に入る。中回転速度中負荷域R2(図6では「空気量影響域」で略記。)からはバタフライ弁80を閉じると通気抵抗が大きくなるので、これを避けるため、バタフライ弁開度をデフォルト値に戻す。このように、EGR領域のうちの低回転速度低負荷域R1を差圧デバイス作動域とし目標空気量に比例させてバタフライ弁開度を定めることで、差圧デバイス作動域において、EGRガス吐出部Pの圧力が負圧で一定値に保たれることとなる。これは、次の理由による。すなわち、差圧デバイス作動域でバタフライ弁開度を小さくするほどバタフライ弁80を通過する新気量が減る。バタフライ弁80を通過する新気量が減るほどバタフライ弁80下流の圧力が低下する。バタフライ弁開度はバタフライ弁80を通過する新気量を規定している。よって、バタフライ弁80を通過する新気量を目標空気量に比例させて定めることで、バタフライ弁80下流の吸気管4aの圧力(EGRガス吐出口Pの圧力)が目標空気量に関係なく一定値となるのである。
図6には目標空気量に対してバタフライ弁開度を連続値で与える場合を示しているが、この場合に限られるものでない。例えば、所定値S1と所定値S2の間に代表値として2つの所定値S3,S4を採ると、バタフライ弁開度を、3つの所定値S1,S3,S4の離散値で与えてもかまわない。この場合のバタフライ弁開度の特性図を図7に示す。図7において、所定値S1,S2に対応する目標空気量を所定値Q3,Q4とする。このとき、目標空気量がQ1以上Q3未満のときバタフライ弁開度は所定値S1となる。また、目標空気量がQ3以上Q4未満のときバタフライ弁開度は所定値S3と、目標空気量がQ4以上Q2未満のときバタフライ弁開度は所定値S4となる。ここでは、バタフライ弁開度を離散値で与える場合に離散値の数を3つで構成してあるが、離散値の数が3つである場合に限定されるものでない。
図8は差圧デバイス作動域R1において等空気量線がどうなるかをイメージで示す運転領域図である。横軸はエンジン回転速度Ne[rpm]、縦軸はエンジン負荷[Nm]である。全運転域のほぼ中央にEGR領域が設けられている。図8に示したようにNeと負荷をパラメータとするときには等空気量線を左上から右下への斜めの直線で引くことができる。このため、図6,図7に示した所定値S1,S3,S4,S2のときの等空気量線を引いてみると、図8のように差圧デバイス作動域R1内に平行な線を引くことができる。
バタフライ弁開度を連続値で与える場合には、エンジンの運転点が差圧デバイス作動域R1に入ると、バタフライ弁80が所定値S1とS2の間の目標空気量に応じたバタフライ弁開度へと閉じられる。一方、バタフライ弁開度を離散値で与える場合には、バタフライ弁80が所定値S1,S3,S4のいずれかのバタフライ弁開度へと閉じられる。これによって、EGRガス吐出口Pの圧力が負圧の一定値となり、バタフライ弁80がデフォルト位置にあるときよりEGRガス吐出口Pの圧力が減少する。その減少分だけEGR弁17の前後差圧が大きくなってEGRガス吐出口Pから吐出されるEGRガス量が増える。これは、EGRガス吐出口Pから吐出されるEGRガス量は、EGR弁17の開口面積とEGR弁17の前後差圧に比例するので、EGR弁17の前後差圧が大きくなると、その分、EGRガス吐出口Pから吐出されるEGRガス量が増えるためである。このように、差圧デバイス作動域においてバタフライ弁80を閉じることによって、EGR弁17の前後差圧が確保される。
さて、EGR通路15の合流部より上流の吸気管4aにバタフライ弁80を追加して設けるときには、バタフライ弁80の故障対策を予め講じておくことが必要となる。
ここで、故障対策の説明に入る前にバタフライ弁80の構造について概説すると、図9はバタフライ弁80の概略モデル図である。バタフライ弁80は、本体81、弁体82、弁軸83、ギヤ84〜87、モータ88(電気的駆動デバイス)、リターンスプリング91、開度センサ92から主に構成される。バタフライ弁80の構造そのものは、スロットル装置の構造(周知)と同様である。
円筒状の本体81に棒状の弁軸83が本体81を貫通して回動自在に取り付けられている。この弁軸83に、本体81の内部に収納される円板状の弁体82が取り付けられる。弁体82と一体の弁軸83を回動すると、弁体82の開度、つまりバタフライ弁開度が理論的には0°から90°の間で変化する。バタフライ弁開度が変化すると、本体81と弁体82の間の隙間を流れる新気の流量またはバタフライ弁80の下流の新気の圧力が変化する。
弁軸83とモータ88(回転電機)の軸88aとが平行に配置され、弁軸83の一端(図9で右端)が減速機構としてのギヤ84〜87を介してモータ88の出力軸88aに連結されている。モータ88と電源(バッテリ)89とが常開のモータリレー90を介して接続されている。モータリレー90のリレーコイル90aにエンジンコントローラ41が電流を流すことで、リレー接点90bが閉成され、電源89からの電力がモータ88に供給される。
ここで、モータ88がDCモータである場合で具体的に説明すると、モータ88には、例えば入出力装置88bとDC/DCコンバータ88cとが付属している。モータ88の入出力装置88bは、エンジンコントローラ41の有する入出力装置41aとの間で信号の送受信を行う。入出力装置88bと電気的に接続されているDC/DCコンバータ88cは、電源89の電圧から所望の電圧を平均的に発生するものである。入出力装置88bを介しエンジンコントローラ41からモータ88に送られる制御量をDC/DCコンバータ88cで所望の電圧に変換し、所望の電圧をDCモータに印加するのである。
弁軸83の一端に機械的に取り付けられるリターンスプリング91(弾性体)は、モータ88への非通電時に弁体82を全開位置へと付勢するためのものである。モータ88に通電されるときには、モータ88の回転力がリターンスプリング91の付勢力に抗して弁体82を閉じる方向に動かす。モータ88の回動量がギヤ84〜87を介して弁体82の開度へと変換されるのである。一方、モータ88への通電を停止すると、リターンスプリング91の付勢力によって弁体82が全開位置へと戻される。
弁軸83の他端には、開度センサ92を備える。開度センサ92は実際の弁体82の開度(以下「実際のバタフライ弁開度」という。)を検出するものである。開度センサ92からの信号はエンジンコントローラ41の入出力装置41aに送られる。
図10は新気量[g/s]に対するバタフライ弁開度[°]の特性図である。バタフライ弁80では、理論的にバタフライ弁開度が0°(最小値)から90°(最大値)まで変化することを前述した。また、バタフライ弁開度が0°のときにバタフライ弁80は全閉位置にあり、バタフライ弁開度が90°のときにバタフライ弁80が全開位置にあるものとした。
実際には製作時の部品バラツキにより、開度センサ92により検出されるバタフライ弁開度が90°に満たないバタフライ弁80やバタフライ弁開度が90°を超えるバタフライ弁80が存在する。そこで、図10に示したように90°よりも余裕をとった小さい側の位置にデフォルト値を採り、このデフォルト値でバタフライ弁開度を制御するようにしている。なお、バタフライ弁開度の最小値は0°でなく、これよりも少し大きい正の値である。これでバタフライ弁80の概説を終える。
次に、バタフライ弁80に生じる故障について説明する。なお、ここでいう「故障」とは、後述する断線と作動不良とを含む不具合の総称である。例えば、モータ88への信号系統に生じた断線によってバタフライ弁80が閉じた状態に保持されている場合には、特に高回転速度高負荷側の2つの領域R2,R3で通気抵抗が大きくなりエンジントルクが低下してしまう。この場合に、上記のように構成されているバタフライ弁80であれば、モータ88への信号系統に断線が生じていても、リターンスプリング91がバタフライ弁80を全開位置へと(バタフライ弁80を開く方向に)向かわせることとなる。モータ88への信号系統に生じた断線によってバタフライ弁80が閉じた状態に保持されることがないのである。これによって、モータ88への信号系統に生じた断線によってバタフライ弁80が閉じた状態に保持されている場合のエンジントルクの低下を回避することができる。ただし、このように、リターンスプリングによって全開位置に戻されるのは、バタフライ弁80に作動不良が生じていない場合である。リターンスプリングの付勢力では動かすことができない作動不良がバタフライ弁80に生じている場合には、バタフライ弁80を全開位置に戻すことができない。
次に、バタフライ弁80に生じる上記作動不良について説明すると、エンジンのキーオフ時にはEGR弁17の隙間からの排気中の水蒸気雰囲気によって全開位置にあるバタフライ弁80が結露に晒される。この結露によって外気温が低い地域でバタフライ弁80の可動部分で氷結が生じる。この氷結はエンジンの冷間始動後しばらくは解消されない。すなわち、エンジンの冷間始動後に氷結が解消されるまでは、バタフライ弁80を閉じることができない。エンジンの冷間始動後に氷結が解消されるまではバタフライ弁80に作動不良が生じるのである。以下、上記のようにバタフライ弁80が全開位置で動かなくなることを「開固着」という。
一方、バタフライ弁80は吸気管4aの上流に設けられているので、ゴミか何かがバタフライ弁80の可動部分に噛み込むことで、バタフライ弁80が所定のバタフライ弁開度にまで閉じた位置で動かなくなる。以下、上記のようにバタフライ弁80が閉位置で動かなくなることを「閉固着」という。このように、バタフライ弁80には開固着や閉固着といった作動不良が生じ得る。
バタフライ弁80に閉固着が生じた場合に、EGR領域でも高回転速度高負荷側の2つの領域R2,R3(非差圧デバイス作動域)にエンジンの運転点が移行したときに問題が生じる。すなわち、バタフライ弁80に閉固着が生じた場合に非差圧デバイス作動域の2つの領域R2,R3にエンジンの運転点が移行したときに、バタフライ弁80が閉じている分だけ新気量が減少し、かつEGR弁17の前後差圧が目標より大きくなる。これは、非差圧デバイス作動域の2つの領域R2,R3では、バタフライ弁80は全開位置に戻らなければならない。それなのに、バタフライ弁80に閉固着が生じた場合にはバタフライ弁80が全開位置に戻らないためである。バタフライ弁80が全開位置に戻らないことで新気量が減少すると、この新気量の減少でコンプレッサ23仕事が大きくなったり、EGR弁17の前後差圧の増大分だけシリンダ7へのEGRガスの導入量が過多となり失火の事態を招いたりしてしまうのである。
また、バタフライ弁80に閉固着や閉固着が生じた場合に、差圧デバイス作動域R1にエンジンの運転点があるときにも問題が生じる。例えば、バタフライ弁80に閉固着が生じた場合に差圧デバイス作動域R1でバタフライ弁80が目標バタフライ弁開度まで開かないのでは、EGR弁17の前後差圧が目標より大きくなる。EGR弁17の前後差圧が目標より大きくなると、シリンダ7へのEGRガスの導入量が過多となり失火の事態を招く。一方、バタフライ弁80に開固着が生じた場合に差圧デバイス作動域R1でバタフライ弁80が目標バタフライ弁開度まで閉じないのでは、EGR弁17の前後差圧が目標より小さくなる。EGR弁17の前後差圧が目標より小さくなると、シリンダ7へのEGRガスの導入量が過小となりノッキングが生じ得る。
この場合に、ディーゼルエンジンにおいて、EGR通路の合流部の上流の吸気管に差圧デバイスを設け、差圧デバイスの直ぐ下流の吸気管に圧力センサを設けた従来装置がある。この従来装置では、当該圧力センサにより検出される吸入負圧(大気圧より小さな圧力のこと)が予め定められた所定範囲から外れたときに差圧デバイスに絞りすぎの状態が生じていると判定する。しかしながら、従来装置のように、圧力センサにより検出される吸入負圧に基づいて、差圧デバイスに絞り過ぎの状態が生じているか否かを判定するのでは、誤判定が生じ得る。例えば、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンに関係なく差圧デバイスの上流に吸気ダクト72とエアクリーナ71が存在する。大雨が降る環境条件でエアクリーナ71に目詰まりが生じた場合にエアクリーナ71の圧力損失が大きくなる。降雪によって吸気ダクト72が詰まった場合には吸気ダクト72の圧力損失が大きくなる。このように吸気ダクト72やエアクリーナ71の圧力損失が大きくなった場合に、圧力センサにより検出される吸入負圧が予め定められた所定範囲から外れたときには差圧デバイスに絞りすぎの状態が生じているとの誤判定が従来装置に生じる。圧力センサにより検出される吸入負圧に基づくのでは、差圧デバイスによる絞り過ぎか、吸気ダクト72やエアクリーナ71が詰まったのか判断がつかないのである。
そこで、第1実施形態では、バタフライ弁80の目標開度(以下「目標バタフライ弁開度」という。)を与えると共に、圧力センサではなく、開度センサ92により検出される実際のバタフライ弁開度と目標バタフライ弁開度を比較する。そして、実際のバタフライ弁開度と目標バタフライ弁開度の差の絶対値が許容値を超えている場合に、バタフライ弁80に開固着や閉固着といった作動不良が生じていると診断する。これによって、吸気ダクト72やエアクリーナ71に詰まりが生じている場合にバタフライ弁80に閉固着の作動不良が生じているとの誤診断を回避する。
バタフライ弁80の故障には、開固着や閉固着といった作動不良の他、電気的なものがある。例えば、エンジンコントローラ41から制御量を与えてモータ88を駆動する場合に、モータ88への信号系統に断線が生じることがある。モータ88への信号系統に断線が生じていれば、モータ88に目標バタフライ弁開度に応じた制御量を与えても、バタフライ弁80が目標バタフライ弁開度へと閉じることができない。このように、バタフライ弁80の故障には、開固着や閉固着といった作動不良の他に、モータ88への信号系統に生じる断線がある。そこで、本実施形態ではバタフライ弁80に生じる作動不良と、モータ88への信号系統に生じる断線とを別々に診断する。以下、バタフライ弁80に生じる作動不良と、モータ88への信号系統に生じる断線をまとめて「バタフライ弁80に生じる故障」という。
バタフライ弁80に生じる故障診断が可能になると、バタフライ弁80に故障が生じたときにはその対策としてフェールセーフ処理を行う必要がある。ここでは、バタフライ弁80に対してフェールセーフ処理(第2フェールセーフ処理)を行うだけでなくEGR率の制御に対してもフェールセーフ処理(第1フェールセーフ処理)を行う。以下、バタフライ弁80の故障診断、バタフライ弁80に対するフェールセーフ処理、EGR率の制御に対するフェールセーフ処理の順に説明する。
エンジンコントローラ41で行われるバタフライ弁80の故障診断を、図11〜図14のフローチャートを参照して説明する。まず、図11のフローチャートは断線フラグを設定するためのものである。図11のフローはエンジンの始動時毎に一回実行する。
ステップ11では、モータ88への信号系統に断線があるか否かを診断する。モータ88への信号系統に生じる断線の診断方法はスロットル装置に生じる断線の診断の方法(周知)と同じでよい。すなわち、バタフライ弁80では、モータ88に付属している入出力装置88bとエンジンコントローラ41の有する入出力装置41aとの間で信号を出したり受けたりしている。このため、入出力装置88bから正常な信号がエンジンコントローラ41の有する入出力装置41aに入力されないかまたは入出力装置88bから間違った信号が入出力装置41aに入力される場合に、モータ88への信号系統に断線が生じていると診断する。この診断結果はエンジンコントローラ41内部のメモリに記憶しておく。
ステップ12ではメモリに記憶した診断結果からモータ88への信号系統に断線があるか否かをみる。モータ88への信号系統に断線がないときにはステップ14に進み、断線フラグ=0とする。
一方、ステップ12でモータ88への信号系統に断線があるときにはステップ13に進み、断線フラグ=1とする。このようにして設定した断線フラグの値はエンジンコントローラ41内部のメモリに記憶しておく。
図12のフローチャートは作動不良フラグを設定するためのものである。図12のフローは図11のフローに続けて、自動変速機がニュートラル位置となる毎に一回実行する。図11のフローに続けて図12のフローを実行するので、図12のフローはエンジンの始動後に自動変速機がニュートラル位置となる毎に実行するものとなる。ここで、自動変速機がニュートラル位置にあるか否かは、自動変速機に設けたインヒビタースイッチ(図示しない)により知り得る。
ステップ21では、断線フラグ(図11のフローにより設定済み)をみる。断線フラグ=1であるときには、モータ80に目標バタフライ弁開度に応じた制御量を与えても、バタフライ弁80がそもそも動かない。つまり、断線フラグ=1であるときにはバタフライ弁80に作動不良が生じているか否かを診断できないと判断し、今回の処理をそのまま終了する。
ステップ21で断線フラグ=0である場合には、モータ80に目標バタフライ弁開度に応じた制御量を与えたとき、バタフライ弁80が目標バタフライ弁開度へと閉じ得る、つまりバタフライ弁80に作動不良が生じているか否かを診断できると判断する。このときにはステップ22以降に進み、バタフライ弁80に作動不良が生じているか否かを診断する。
ここでは、2点でバタフライ弁80に作動不良が生じているか否かを診断する。すなわち、1点はバタフライ弁80に目標バタフライ弁開度として所定値(閉じる方向の目標値)を指示した場合である。他の1点はバタフライ弁80に目標バタフライ弁開度として閉じる方向の目標値を指示していない場合である。この場合、2つの各点で開度センサ92により実際のバタフライ弁開度(図12では「実開度」で略記。)を検出する。ここで、開度センサ92そのものに故障は生じていないものとする。
バタフライ弁80に目標バタフライ弁開度として所定値(閉じる方向の目標値)を指示した場合にバタフライ弁80に作動不良が生じているか否かを診断する理由は次の通りである。すなわち、バタフライ弁80に目標バタフライ弁開度として所定値(閉じる方向の目標値)を指示した場合には実際のバタフライ弁開度が目標バタフライ弁開度と一致するはずである。しかしながら、開固着や閉固着といった作動不良によって、実際のバタフライ弁開度が目標バタフライ弁開度から大きく乖離することが有り得る。そこで、バタフライ弁80に目標バタフライ弁開度として所定値(閉じる方向の目標値)を指示した場合を上記1点として選択したものである。
次に、バタフライ弁80に目標バタフライ弁開度として閉じる方向の目標値を指示していない場合にバタフライ弁80に作動不良が生じているか否かを診断する理由は次の通りである。すなわち、バタフライ弁80に目標バタフライ弁開度として閉じる方向の目標値を指示していない場合にはバタフライ弁80が全開位置にあるはずである。しかしながら、作動不良によって、バタフライ弁80が全開位置にないことが有り得る。そこで、バタフライ弁80に目標バタフライ弁開度として閉じる方向の目標値を指示していない場合を上記他の1点として選択したものである。
まずステップ22〜26は、上記他の1点で、つまりバタフライ弁80に目標バタフライ弁開度として閉じる方向の目標値を指示していない場合にバタフライ弁80に作動不良が生じているか否かを診断する部分である。ステップ22では、エンジンの運転点がアイドル状態にあるか否かをみる。ここで、アイドル状態は非EGR領域に含まれる運転点であるので、バタフライ弁80に目標バタフライ弁開度として閉じる方向の目標値を指示していない場合の一つである。アイドル状態にないときには例えば差圧デバイス作動域でバタフライ弁80に目標バタフライ弁開度として所定値(閉じる方向の目標値)を指示している場合があると判断する。このときには、バタフライ弁80の制御を優先するため、そのまま今回の処理を終了する。
ステップ22でエンジンの運転点がアイドル状態にあるときにはバタフライ弁80に目標バタフライ弁開度として閉じる方向の目標値を指示していない場合の一つであると判断し、ステップ23に進む。ステップ23では開度センサ92により実際のバタフライ弁開度を検出する。
ステップ24では、デフォルト値から検出した実際のバタフライ弁開度を差し引いた開度を差開度1として、差開度1の絶対値と許容値1を比較する。許容値1は、スロットル弁80が全開位置にない作動不良が生じているか否かを判定するための閾値で、適合により予め設定しておく。差開度1の絶対値が許容値1以下であるときにはスロットル弁80が全開位置にない作動不良が生じていないと判断する。このときにはステップ25に進んで作動不良フラグ1=0とする。
一方、ステップ24で差開度1の絶対値が許容値1を超えているときにはバタフライ弁80が全開位置にない作動不良が生じていると判断する。このときにはステップ26に進んで作動不良フラグ1=1とする。このようにして設定した作動不良フラグ1の値はエンジンコントローラ41内部のメモリに記憶しておく。
ステップ27〜31は上記1点で、つまりバタフライ弁80に目標バタフライ弁開度として所定値(閉じる方向の目標値)を指示した場合にバタフライ弁80に作動不良が生じているか否かを診断する部分である。ステップ27では、モータ88に目標バタフライ弁開度(図12では「目標開度」で略記。)に応じた制御量を与えて(指示して)バタフライ弁80を駆動する。目標バタフライ弁開度は、図6,図7に示した所定値S1,S3,S4,S2のいずれでもかまわない。バタフライ弁80の目標バタフライ弁開度への移動は一瞬で終わる。ステップ28では、開度センサ92により実際のバタフライ弁開度を検出する。
ステップ29では、検出した実際のバタフライ弁開度から目標バタフライ弁開度を差し引いた開度を差開度2として、差開度2の絶対値と許容値2と比較する。許容値2は、バタフライ弁80に開固着や閉固着といった作動不良が生じているか否かを判定するための閾値で、適合により予め設定しておく。差開度2の絶対値が許容値2以下であるときにはバタフライ弁80に開固着や閉固着といった作動不良は生じていないと判断する。このときにはステップ31に進んで作動不良フラグ2=0とする。
一方、ステップ29で差開度2の絶対値が許容値2を超えているときにはバタフライ弁80に開固着や閉固着といった作動不良が生じていると判断する。このときにはステップ30に進んで作動不良フラグ2=1とする。このようにして設定した作動不良フラグ2の値はエンジンコントローラ41内部のメモリに記憶しておく。
図12のフローでは、バタフライ弁80に目標バタフライ弁開度として閉じる方向の目標値を指示していない場合の診断を先に、バタフライ弁80に目標バタフライ弁開度として所定値(閉じる方向の目標値)を指示した場合の診断を後にしたが、診断順序を入れ換えてもかまわない。
図13のフローチャートは故障フラグを設定するためのものである。図13のフローは、図11,図12のフローの実行を終了した後に一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。
ステップ41では断線フラグ(図11のフローにより設定済み)をみる。断線フラグ=1であるときにはモータ88への信号系統に断線があると判断し、ステップ45に進んで故障フラグ=1とする。
ステップ41で断線フラグ=0であるときにはステップ42に進み、作動不良フラグ1(図12のフローにより設定済み)をみる。作動不良フラグ1=1であるときにはスロットル弁80が全開位置にない作動不良があると判断し、ステップ45に進んで故障フラグ=1とする。
ステップ42で作動不良フラグ1=0であるときにはステップ43に進み、作動不良フラグ2(図12のフローにより設定済み)をみる。作動不良フラグ2=1であるときにはスロットル弁80に開固着や閉固着といった作動不良があると判断し、ステップ45に進んで故障フラグ=1とする。
ステップ43で作動不良フラグ2=0であるときとは、ステップ41,42,43で3つのフラグがいずれもゼロであるときである。このときには、モータ88への信号系統に断線も、スロットル弁80が全開位置にない作動不良も開固着や閉固着といった作動不良も生じていないと判断し、ステップ44に進み、故障フラグ=0とする。このようにして設定した故障フラグの値はエンジンコントローラ41内部のメモリに記憶しておく。
ここでは、上記図11のフローをエンジンの始動時毎に、上記図12のフローをエンジンの始動後に自動変速機がニュートラル位置になる毎に実行するものとしたが、この場合に限られない。最近の車両では、エンジンコントローラ41を含む車載コンピュータとの間で通信を行い得るキーを実用化している。この通信機能を有するキーを運転者が所持している場合に運転者が車両に近づくことで、このキーが車載コンピュータとの間で通信を開始する。つまり、運転者がドアを開け運転席に座り始動スイッチを押してエンジンを始動する前であっても、車載コンピュータに含まれるエンジンコントローラ41がバタフライ弁80を閉じることが可能である。しかも、モータ88への信号系統に断線が生じているか否かの診断やバタフライ弁80に作動不良が生じているか否かの診断は一瞬に近い短い時間で終了する。このため、エンジンの始動前に、モータ88への信号系統に断線が生じているか否かの診断及びバタフライ弁80に作動不良が生じているか否かの診断を行わせるものであってよい。
次に、エンジンコントローラ41で行われるバタフライ弁80に対するフェールセーフ処理を、図14のフローチャートを参照して説明する。図14のフローチャートは目標バタフライ弁開度を算出すると共に、バタフライ弁80に対するフェールセーフ処理を行うためのものである。図14のフローは、図13のフローの実行に続けて一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。
ステップ51では、故障フラグ(図13のフローで設定済み)をみる。故障フラグ=0であるときにはステップ52に進み、エンジンの負荷とエンジンの回転速度から定まる運転点が図15に示した差圧デバイス作動域にあるか否かをみる。図15に示したように差圧デバイス作動域は、EGR領域を3つの領域R1,R2,R3に分割したうちの最も低回転速度低負荷側の領域R1に設定されている。エンジンの運転点が図15に示す差圧デバイス作動域R1に属していないときにはステップ54に進み、バタフライ弁80を全開位置に保持するため、目標バタフライ弁開度にデフォルト値を入れる。
一方、ステップ52でエンジンの運転点が図15に示す差圧デバイス作動域R1に属しているときにはステップ53に進み、図16を内容とするマップを検索することにより、目標バタフライ弁開度(図14では「目標開度」で略記。)を算出する。図16に示したように、差圧デバイス作動域R1を、第1作動域R11、第2作動域R12、第3作動域R13の大きく3つに分割し、3つの各作動域R11,R12,R13に図7に示した所定値S1,S3,S4を入れている。ここで、S1<S3<S4である。すなわち、図16の目標バタフライ弁開度の特性は、図7に対応させたものである。図6に対応させて、エンジンの負荷と回転速度をパラメータとする目標バタフライ弁開度の特性を定めてもかまわない。
差圧デバイス作動域R1において低回転速度低負荷側ほど目標バタフライ弁開度をS4,S3,S1と小さくするのは、次の理由からである。すなわち、低回転速度低負荷側ほど目標バタフライ弁開度を小さくすることで、EGRガス吐出口Pの圧力を負圧で一定値に保つためである。
図示しないフローでは、このようにして算出された目標バタフライ弁開度をモータ88への制御量(駆動信号)に変換する。そして、この変換した制御量をモータ88に出力(指示)する。
ここで、図16に示したように、エンジンの負荷と回転速度Neをパラメータとするマップで目標バタフライ弁開度を与えるようにした理由を説明する。ガソリンエンジンの制御システムには、スロットルバルブ5、ウェイストゲートバルブ25の2つの部品が設けられている。新気量を制御する部品が2つもある場合には制御構成を単純化したいという要求がある。このため、大気圧の条件下ではスロットルバルブ開度でトルクコントロールを行い、過給域になるとウェイストゲートバルブ開度でトルクコントロールを行うようにしている。一方、EGR弁17に加えてバタフライ弁80を設けるときには、目標バタフライ弁開度によっても、EGRガス吐出口Pから吐出されるEGRガス量を制御することが可能となる。例えば、EGR弁開度が一定であっても、目標バタフライ弁開度を小さくしていけば、EGRガス吐出口Pから吐出されるEGRガス量が増えていく(つまりEGR率が大きくなる側に変わる)のである。しかしながら、目標バタフライ弁開度でEGR率を制御してしまうと、EGR率をEGR弁開度で制御するのか、目標バタフライ弁開度で制御するのかが曖昧になってしまう。つまり、EGR弁17に加えてバタフライ弁80を設ける場合のように、EGR率を制御する部品が2つもある場合にも制御構成を単純化したいという要求がある。そこで、EGR弁17に加えてバタフライ弁80を設けている場合においても制御構成を単純化するために、EGR率の制御はEGR弁開度で行い、目標バタフライ弁開度ではEGR率の制御は行わないこととしたものである。すなわち、EGRガス吐出口Pの圧力を負圧で一定値に保持するためにバタフライ弁80を用いるのであって、目標バタフライ弁開度でEGR率を制御することはしない。EGRガス吐出口Pの圧力を負圧で一定値に保持するため、エンジンの負荷と回転速度Neをパラメータとするマップで目標バタフライ弁開度を与える。このように、エンジンの負荷と回転速度をパラメータとするマップを検索することにより目標バタフライ弁開度を与えることで、EGR弁17に加えてバタフライ弁80を設けていても、EGR率の制御が簡素化される。これによって、EGR弁17及びバタフライ弁80の各機能信頼性を確保することが可能となる。
図14に戻り、ステップ51で故障フラグ=1である(バタフライ弁80に故障が生じている)ときにはステップ55に進む。ステップ55では、バタフライ弁80に対するフェールセーフ処理として、モータ88への電源89からの電力供給を遮断する。例えば、モータリレー90をOFF状態に保持する。バタフライ弁80に故障が生じているとき、つまりモータ88への信号系統に断線が生じたりバタフライ弁80に作動不良が生じたりしているときにモータ88への電源89からの電力供給を遮断する理由は次の通りである。すなわち、モータ88への信号系統に断線が生じたりバタフライ弁80に作動不良が生じたりしてバタフライ弁80を目標バタフライ弁開度へと制御できないときには、モータ88への電源89からの電力供給を行うことは必要ないためである。
次に、エンジンコントローラ41で行われるEGR率の制御に対するフェールセーフ処理を、図4のフローチャートを参照して説明する。図4のフローは、前述したように目標EGR弁開度を算出するためのものである。この図4のフローにEGR率の制御に対するフェールセーフ処理としてステップ1,6が含まれている。本実施形態では、バタフライ弁80に故障が生じているときには、その結果をEGR率の制御に反映させるため、図13のフローの実行を終了した後に図4のフローを実行することとなる。
ステップ1では故障フラグ(図13のフローにより設定済み)をみる。故障フラグ=0であるときには、バタフライ弁80に故障が生じていないと判断し、ステップ2以降に進む。ステップ2以降の操作は、バタフライ弁80が設けられていない場合の操作と同じである。
一方、ステップ1で故障フラグ=1であるときにはバタフライ弁80に故障が生じていると判断する。このときには、ステップ6に進み、EGR弁率の制御(EGR弁開度の制御)を許可しないフェールセーフ処理を行う。すなわち、ステップ6ではEGR弁17を全閉状態とするため目標EGR弁開度voEGRにゼロを入れる。EGR弁率の制御に対するフェールセーフ処理として、バタフライ弁80に故障が生じた場合や生じている場合にEGR弁17を全閉位置に保持するのである。これは、バタフライ弁80に故障が生じた場合や生じている場合には、より安全サイドに制御するのが最良であるためである。
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態では、ターボ過給機21と、EGR通路15と、EGR弁17と、EGR弁制御手段(41)と、を備えている。上記ターボ過給機21は吸気管4aに設けたコンプレッサ23と排気管11bに設けたタービン22とを有して吸気を過給する。上記EGR通路15はタービン22下流の排気管11bから分岐して排気の一部をEGRガスとしてコンプレッサ23上流の吸気管4aに戻す。上記EGR弁17はEGR通路15を開閉する。上記EGR弁制御手段(41)はEGR領域で前記EGR弁開度(EGR弁17の開度)を制御する。本実施形態では、さらにバタフライ弁80(差圧デバイス)と、差圧デバイス制御手段(41)と、開度センサ92(実閉量検出手段)と、作動不良診断手段(41)と、を備える。上記バタフライ弁80はEGR通路15の合流部より上流の吸気管4aに設けられる。上記差圧デバイス制御手段(41)はEGR領域のうち低回転速度低負荷側の領域(EGR領域のうちの一部の領域)を作動域としてバタフライ弁80を閉じる方向に制御する。上記開度センサ92は実際のバタフライ弁開度(差圧デバイスが実際に閉じた量)を検出する。上記作動不良診断手段(41)は開度センサ92により検出される実際のバタフライ弁開度(実際に閉じた量)に基づいてバタフライ弁80に作動不良が生じているかを診断する。本実施形態では、開度センサ92により検出される実際のバタフライ弁開度に基づいてバタフライ弁80に作動不良が生じているかを診断するので、吸気ダクト72やエアクリーナ71の詰まりに伴う誤診断を回避することができる。
バタフライ弁80に閉固着が生じているときには、バタフライ弁80を全開位置に戻すことができない。このため、EGR領域のうちの非差圧デバイス作動域でバタフライ弁80に閉固着が生じているときにはバタフライ弁80が閉じている分だけEGR弁17の前後差圧が目標よりも大きくなる。これによって、シリンダ7へのEGRガスが過多となって、燃焼状態が悪化しエンジンストール(エンジン停止)に至ることが有り得る。また、バタフライ弁80に開固着が生じているときには、バタフライ弁80を所定の開度まで閉じることができない。このため、差圧デバイス作動域でバタフライ弁80に開固着が生じているときにはバタフライ弁80を開いている分だけEGR弁17の前後差圧が目標よりも小さくなる。これによって、シリンダ7へのEGRガスが過小となって、ノッキングが生じ得る。このように、バタフライ弁80に故障が生じている場合にまで目標EGR弁開度を算出する(つまりEGR弁開度の制御を許可する)のではシリンダ7へのEGRガスの過不足に起因するエンジン停止やノッキングが生じることとなる。一方、本実施形態では、作動不良診断手段(41)がバタフライ弁80に閉固着や開固着といった作動不良が生じていると診断する場合に、EGR弁制御手段(41)によるEGR率の制御(EGR弁17の開度の制御)を禁止する第1フェールセーフ処理手段を備える。これによって、バタフライ弁80の閉固着に起因してエンジン停止に至ることや、バタフライ弁80の開固着に起因してノッキングが発生することを確実に回避することができる。
本実施形態では、差圧デバイス制御手段(41)がバタフライ弁80(差圧デバイス)に目標バタフライ弁開度(閉じる方向の目標値)を指示した場合に、バタフライ弁80に作動不良が生じているか否かを診断する。すなわち、開度センサ92(実閉量検出手段)により検出される実際のバタフライ弁開度(実際に閉じた量)と目標バタフライ弁開度との間に許容値2(許容値)を超える乖離があった場合に、作動不良診断手段がバタフライ弁に作動不良が生じていると診断する。これによって、バタフライ弁80に生じ得る開固着や閉固着といった作動不良を精度良く診断できる。
差圧デバイス制御手段(41)がバタフライ弁80(差圧デバイス)に目標バタフライ弁開度(閉じる方向の目標値)を指示していないのに、作動不良によってバタフライ弁80が全開位置にないことがある。一方、本実施形態では、差圧デバイス制御手段(41)がバタフライ弁80(差圧デバイス)に目標バタフライ弁開度(閉じる方向の目標値)を指示していない場合にも、バタフライ弁80に作動不良が生じているか否かを診断する。すなわち、開度センサ92(実閉量検出手段)により検出される実際のバタフライ弁開度(実際に閉じた量)とデフォルト値との間に許容値1(許容値)を超える乖離があった場合に、作動不良診断手段(41)がバタフライ弁80に作動不良が生じていると診断する。これによって、差圧デバイス制御手段がバタフライ弁80(差圧デバイス)に目標バタフライ弁開度(閉じる方向の目標値)を指示していないのに、バタフライ弁80が全開位置にないといった作動不良を精度良く診断できる。
モータ88への信号系統に断線がある場合には、差圧デバイス制御手段(41)がバタフライ弁80に目標バタフライ弁開度を指示しても、バタフライ弁80が目標バタフライ弁開度まで動かない。従って、モータ88への信号系統に断線がある場合にもバタフライ弁80に作動不良があるか否かの診断を行うのでは、誤診断が生じ得る。一方、本実施形態では、バタフライ弁80をモータ88で駆動する場合に、作動不良診断手段(41)がバタフライ弁80に作動不良が生じているか否かを診断する前に、モータ88への信号系統に断線があるか否かを診断する断線診断手段(41)を備えている。これによって、モータ88(電気的駆動デバイス)への信号系統に断線がある場合にもバタフライ弁80に作動不良があるか否かの診断を行うことによる誤診断を回避することができる。
モータ88への信号系統に生じた断線によってバタフライ弁80が閉じた状態に保持されている場合には、特に高回転速度高負荷側の2つの領域R2,R3で通気抵抗が大きくなりエンジントルクが低下してしまう。一方、本実施形態では、バタフライ弁80(差圧デバイス)を開く方向に常時付勢するリターンスプリング91(弾性体)と、モータ88(電気的駆動デバイス)に電力を供給する電源89と、を備えている。そして、モータ88はリターンスプリング91の付勢力に抗してバタフライ弁80を閉じる方向に回動させるものである。このため、モータ88への信号系統に断線が生じていても、バタフライ弁80に作動不良がなければリターンスプリング91がバタフライ弁80を開く方向に向かわせることとなる。当該構成によれば、バタフライ弁80に作動不良がない場合に、モータ88への信号系統に生じた断線によってバタフライ弁80が閉じた状態に保持されることがないのである。これによって、モータ88への信号系統に生じた断線によってバタフライ弁80が閉じた状態に保持されている場合のエンジントルクの低下を回避することができる。
モータ88への信号系統に断線が生じバタフライ弁を目標バタフライ弁開度へと制御できない場合には、モータ88への電源89からの電力供給を続けることは必要ない。一方、本実施形態では、断線診断手段(41)がモータ88(電気的駆動デバイス)への信号系統に断線が生じていると診断する場合に、モータ88への電源89からの電力供給を遮断する第2フェールセーフ処理手段(41)を備えている。これによって、フェールセーフ方向に確実に働くようにすることが可能となり、バタフライ弁80の機能を保証することができる。
差圧デバイス制御手段(41)がバタフライ弁80に閉じる方向の目標値を指示した場合に、作動不良診断手段(41)がバタフライ弁80に作動不良が生じているか否かの診断を、エンジンの始動後に自動変速機がドライブレンジにあるときに実行したとする。このときには、新気量が、ドライブレンジで走行している車両の運転状態に対応するエンジン状態に応じた値から外れて小さくなる。このようにバタフライ弁80が運転者の意思と無関係に勝手に閉じられることは運転者が予期しないものであるので、走行中の車両の運転性に影響を与えてしまう。一方、本実施形態では、エンジンに接続される自動変速機(変速機)を備え、作動不良診断手段(41)が、バタフライ弁80(差圧デバイス)に作動不良が生じているか否かの診断を、エンジンの始動前または始動後で自動変速機がニュートラル位置になる毎に実行する。自動変速機がニュートラル位置にあれば、車両は停止しているので、運転者の意思と無関係にバタフライ弁80を閉じても、停止中の車両に影響はない。運転者の意思と無関係にバタフライ弁80を閉じても停止中の車両に影響のない場合、つまり自動変速機がニュートラル位置になる毎に、バタフライ弁80に作動不良が生じているか否かを診断することで、車両の運転性への影響を回避できる。
モータ88への信号系統に生じる断線によって次のような問題が生じる。例えば、モータ88への信号系統に生じた断線によってバタフライ弁80が閉じた状態に保持されている場合には、特に高回転速度高負荷側の2つの領域R2,R3で通気抵抗が大きくなりエンジントルクが低下してしまう。また、モータ88への信号系統に生じた断線によってバタフライ弁80が閉じた状態に保持されている場合に特に差圧デバイス作動域R1で実際のバタフライ弁開度が目標バタフライ弁開度より小さいと、EGR弁の前後差圧が目標より大きくなる。これによって、シリンダ7へのEGRガスの導入が過大となりエンジンストールが生じ得る。また、モータ88への信号系統に生じた断線によってバタフライ弁80が開いた状態に保持されている場合には、特に差圧デバイス作動域R1で実際のバタフライ弁開度が目標バタフライ弁開度より大きいと、EGR弁の前後差圧が目標より小さくなる。これによって、シリンダ7へのEGRガスの導入が過小となりノッキングが生じ得る。ここで、エンジンの始動前または始動時は非差圧デバイス作動域であるので、上記のような問題とは無関係である。本実施形態では、このように上記のような問題と無関係なエンジンの始動前または始動時毎に、断線診断手段(41)がモータ88(電気的駆動デバイス)への信号系統に断線があるか否かの診断を実行する。これによって、診断の頻度を高めることができることから、上記のような問題が確実に生じないようにすることができる。
実施形態では、EGR通路からコンプレッサ上流の吸気管へのEGRガス吐出口Pより上流の吸気管4aに差圧デバイスとしてのバタフライ弁80を設ける場合を説明した。本発明はこの場合に限定されるものでない。例えば、EGRガス取出し口Nより下流の排気管11bに差圧デバイスとしてのバタフライ弁を設ける場合であってよい。
実施形態では、ガソリンエンジンに低圧のEGR装置を適用する場合で説明したが、この場合に限られるものでなく、ディーゼルエンジンに低圧のEGR装置を適用する場合にも本発明の適用がある。
実施形態では、電気的駆動デバイスとして、信号系統に断線があるか否かを診断する断線診断手段を備えるモータ88を挙げたが、この場合に限定されるものでない。例えば、信号系統に断線があるか否かを診断する断線診断手段を備えるソレノイドアクチュエータ等がバタフライ弁80の電気的駆動デバイスであってよい。