JP2017039866A - 洗浄用溶剤組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】共沸様組成であり、様々な汚れに対して洗浄効果の高い洗浄用溶剤組成物を提供すること。【解決手段】(1)1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン60〜80重量%、(2)n−プロピルアルコール6.7〜20重量%、及び(3)プロピレングリコールモノメチルエーテル10〜20重量%のみからなり、(B)の含有量が(C)の含有量の2倍未満である、洗浄用溶剤組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、洗浄用溶剤組成物に関する。
精密機械部品、光学機械部品等の加工時に種々の加工油類、例えば、切削油、プレス油、熱処理油、防錆油、潤滑油等、または、グリース類、ワックス類等が使用されるが、これらの汚れは最終的には除去する必要があり、溶剤による除去が一般的に行われている。また、電子回路の接合方法としてはハンダ付けが最も一般的に行われているが、ハンダ付けすべき金属表面の酸化物の除去洗浄化、再酸化防止、ハンダの濡れ性の改良目的で、ロジンを主成分としたフラックスでハンダ付け面を予め処理することが通常行われている。ハンダ付けの方法としては溶液状のフラックス中に基板を浸漬する等により、フラックスを基板面に付着させたあと、溶融ハンダを供給する方法や予めフラックスとハンダ粉末を混合してペースト状にしたものをハンダ付けすべき場所に供給した後加熱する方法等があるが、いずれにしても、フラックス残渣は金属の腐食や絶縁性の低下の原因となるため、ハンダ付け終了後、十分に除去する必要がある。
ハンダ付けフラックスの除去に用いる洗浄剤として、塩素系炭化水素、例えば1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン(CFC−113)に代表される塩素を含むフロン系溶剤が用いられている。塩素を含むフロン系溶剤は、他の溶剤(例えば、メタノール)と、気相での組成物が液相での組成物と実質的に同じである、共沸または擬似共沸混合物の形態で組み合わされている。しかし、オゾン層を破壊する原因物質として使用することが不可能となってきたため、塩素を含むフロン系溶剤を用いた洗浄剤の代替洗浄剤が広く要望されている。
塩素原子を含まない代替洗浄剤として、ハイドロフルオロカーボン類(HFC)やハイドロフルオロエーテル類(HFE)等が提案されており、これらはオゾン層破壊係数(ODP)が0であり、毒性も少なく、また地球温暖化係数(GWP)も小さく、環境にクリーンである。しかし、塩素原子を含まない代替洗浄剤の一つである、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(365mfc)は、塩素原子を含まないため、単独では洗浄剤として十分な洗浄力が得られないという問題があった。
このような問題に対して特許文献1には、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンと、グリコールエーテル類であるプロピレングリコールモノメチルエーテルとを組み合わせた洗浄剤技術が提案されている。
特開2003−129090号公報
フラックス洗浄剤は、フラックス成分であるロジン、イオン残渣の原因となるアミン化合物の塩酸塩や有機酸等を一緒に含む汚れを洗浄する必要がある。本発明者らによれば、特許文献1に記載された洗浄剤について、ロジン系フラックスに対する洗浄効果の改善の余地があった。さらに、蒸気洗浄を含む装置において、ある程度洗浄効果を維持するために、洗浄剤は共沸様組成を有することが必要であった。
本発明の課題は、共沸様組成を有し、様々な汚れに対して洗浄効果の高い洗浄用溶剤組成物を提供することである。
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、n−プロピルアルコール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを、特定の配合重量比で含む洗浄用溶剤組成物が、前記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
本発明は、以下の態様を含む。
(1)(A)1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン60〜80重量%、(B)n−プロピルアルコール6.7〜20重量%、及び(C)プロピレングリコールモノメチルエーテル10〜20重量%のみからなり、(B)の含有量が(C)の含有量の2倍未満である、洗浄用溶剤組成物。
(2)(A)1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン60〜80重量部、(B)n−プロピルアルコール6.7〜20重量部、及び(C)プロピレングリコールモノメチルエーテル10〜20重量部を含み、(A)〜(C)の合計が100重量部である洗浄用溶剤組成物であって、洗浄用溶剤組成物中の(A)〜(C)の量が、95重量%〜100重量%であり、(B)の含有量が(C)の含有量の2倍未満である、洗浄用溶剤組成物。
本発明により、共沸様組成を有し、様々な汚れに対して洗浄効果の高い洗浄用溶剤組成物が提供できる。
(洗浄用溶剤組成物)
洗浄用溶剤組成物(以下、単に「溶剤組成物」ともいう。)は、(A)1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン60〜80重量%、(B)n−プロピルアルコール6.7〜20重量%、及び(C)プロピレングリコールモノメチルエーテル10〜20重量%のみからなり、(B)の含有量が(C)の含有量の2倍未満である。ここで、「洗浄」とは、被洗浄物から、汚れを除去することを意味する。
溶剤組成物は、オゾン層を破壊せず、また、フロン系及び塩素系炭化水素を含有するものと比べ同等の洗浄性や低毒性を示す。
(A)は、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(「365mfc」とも呼ばれる)である。(A)は、組成物に低毒性を付与する成分である。溶剤組成物中の(A)の量は、60〜80重量%である。(A)の量が60重量%未満であると、共沸様組成にならない傾向があり、(A)の量が80重量%超であると、洗浄性が劣る傾向がある。
(B)は、n−プロピルアルコールである。(B)は、組成物に高い洗浄性を付与する成分である。溶剤組成物中の(B)の量は、6.7〜20重量%である。(B)の量が6.7重量%未満であると、洗浄性が劣る傾向があり、(B)の量が20重量%超であると、共沸様組成にならない傾向がある。
(C)は、プロピレングリコールモノメチルエーテルである。(C)は、組成物に高い洗浄性を付与する成分である。溶剤組成物中の(C)の量は、10〜20重量%である。(C)の量が10重量%未満であると、洗浄性が劣る傾向があり、(C)の量が20重量%超であると、共沸様組成にならない傾向がある。
溶剤組成物において、(B)の含有量は、(C)の含有量の2倍未満である。(B)の含有量が(C)の含有量の2倍以上であると、洗浄性に劣る傾向がある。これは、通常、汚れは油溶性の成分が多いため、(A)〜(C)の併用において、(B)と比較して、親油性の性質が高い(C)の量を所定量以上とすることにより、高い洗浄効果が発揮されると考えられる。よって、溶剤組成物は、(A)70重量%、(B)20重量%及び(C)10重量%のみからなる溶剤組成物を含まない。洗浄性がより高まる傾向がある点から、(B)の含有量は、(C)の含有量の0.2〜1.5倍が好ましく、0.3〜1.2倍がより好ましく、0.5〜1.0倍が特に好ましい。
溶剤組成物は、本発明の効果を損なわない限り、(D)更なる成分を含むことができる。このような成分として、洗浄剤の分野で慣用されている成分であれば特に限定されず、例えば、紫外線吸収剤及び酸化防止剤が挙げられる。更なる成分は、単独で用いることもでき、また複数の混合物として用いることもできる。
紫外線吸収剤及び酸化防止剤は、溶剤組成物の長期保存等における安定性を向上させる成分である。紫外線吸収剤は、溶剤組成物に溶解するものであれば特に限定されず、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、及びヒンダードアミン系紫外線吸収剤が挙げられる。酸化防止剤は、溶剤組成物に溶解するものであれば特に限定されず、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びリン系等酸化防止剤が挙げられる。
(D)の量は、溶剤組成物中の(A)〜(C)の量が、95重量%〜100重量%であるような量である。よって、溶剤組成物は、(A)1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン60〜80重量部、(B)n−プロピルアルコール6.7〜20重量部、及び(C)プロピレングリコールモノメチルエーテル10〜20重量部を含み、(A)〜(C)の合計が100重量部であり、溶剤組成物中の(A)〜(C)の量が、95重量%〜100重量%であり、(B)の含有量が(C)の含有量の2倍未満である、溶剤組成物であることもできる。
溶剤組成物は、共沸様組成物である。ここで、「共沸様組成」とは、その蒸気組成と液体組成がほぼ同一であり、蒸発、凝縮を繰り返した後の組成物の変化が無視できる程度にしか変化せず、共沸組成に近い性質(沸点等)を示す組成をいう。具体的には、共沸様組成とは、沸騰状態において、液体温度と蒸気温度との差が5℃以内である組成をいう。よって、蒸気洗浄を含む洗浄装置に、溶剤組成物を用いた場合であっても、長期間洗浄効果を維持できる。
溶剤組成物は、原料成分である、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、n−プロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、場合により更なる成分を混合することにより製造することができる。溶剤組成物に用いる原料成分は、市販のものを用いることができる。
(汚れ)
溶剤組成物は、汚れが付着した被洗浄物を洗浄するために用いられる。汚れとして、汚れとして、精密機械部品、光学機械部品等の加工時に用いられる加工油(例えば、切削油、プレス油、熱処理油、防錆油、潤滑油等)、油脂、グリース、ワックス、水、フラックス等からなる群より選ばれる1種以上の汚れが挙げられる。これらの汚れは、油溶性及びイオン汚染性(水溶性)の少なくとも一方の汚れを含みうる。
ここで、フラックスは、ロジン系、有機酸系、無機酸系のフラックスが挙げられる。ロジン系フラックスは、ロジン(アビエチン酸を主成分とする樹脂酸)及び変性ロジン等のロジン類を主成分とする非活性ロジンフラックス;前記ロジン類と、アミン化合物の無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩)及び有機酸からなる群より選択される1種以上の活性化剤とを主成分とする活性ロジンフラックスが挙げられる。アミン化合物の無機酸塩は、トリエタノールアミン塩酸塩、トリエチレンテトラアミン塩酸塩、シクロヘキシルアミン塩酸塩、塩酸アニリン等が挙げられる。有機酸は、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、セバシン酸、マレイン酸等のカルボン酸(ジカルボン酸を含む。);オキシ酸(ヒドロキシカルボン酸)等が挙げられる。
フラックスの汚れは、フラックス成分であるロジン、アミン化合物の無機酸塩、有機酸、及び前記成分が高温でのリフローにより一部変質又は炭化した成分を含む。ここで、ロジンに基づく汚れは、油溶性の汚れであり、アミン化合物の無機酸塩及び有機酸に基づく汚れは、イオン汚染性の汚れであり、イオン残渣の原因となる。
(被洗浄物)
被洗浄物は、特に限定されず、精密機械部品、光学機械部品、金属加工装置、電子部品の製造装置等が挙げられる。被洗浄物は、フラックスの影響がある部品、例えば、ハンダ処理された電子部品や製品が好ましい。このような被洗浄物の種類は、特に制限されず、プリント配線板、セラミック配線基板、半導体素子、半導体素子搭載基板等が挙げられる。被洗浄物の材質は、特に限定されず、金属、プラスチック等であってよい。
(洗浄方法)
溶剤組成物を用いた洗浄方法は、汚れが付着した被洗浄物を洗浄するため方法であって、溶剤組成物を被洗浄物と接触させることを含む。溶剤組成物を被洗浄物に接触させることにおいて、被洗浄物に付着した汚れは、被洗浄物から剥離除去又は溶解除去される。溶剤組成物と、被洗浄物とを接触させるための方法としては、特に制限はなく、例えば、手拭き、浸漬洗浄(液相洗浄)、スプレー、超音波洗浄、蒸気洗浄(気相洗浄)が挙げられる。
浸漬洗浄は、被洗浄物の一部又は全部を溶剤組成物に浸漬させることにより、溶剤組成物を被洗浄物に接触させることを含む。浸漬洗浄における溶剤組成物の温度は、特に限定されず、室温(例えば、26℃)から溶剤組成物の沸点までの温度であることができる。いわゆる煮沸洗浄のように、溶剤組成物を沸点に維持して、被洗浄物の一部又は全部を溶剤組成物に浸漬させることにより、溶剤組成物を被洗浄物に接触させることを含む方法も浸漬洗浄に含まれる。蒸気洗浄は、被洗浄物の一部又は全部を溶剤組成物の蒸気に接触させることにより、溶剤組成物を被洗浄物に接触させることを含む。
溶剤組成物及び被洗浄物の接触時間に相当する洗浄時間は、被洗浄物から汚れを除去できる時間であれば特に制限されない。
(用途)
溶剤組成物は、レジスト剥離剤、フラックス洗浄剤、脱脂洗浄剤、バフ研磨洗浄剤、接着剤の溶解剤、ドライクリーニング用溶剤、グリース・油・ワックス・インキ等の除去剤、水切り剤等の各種汚れの洗浄剤、特に、ロジン系フラックス洗浄剤に用いることができる。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。例3、4、10、11、15が実施例であり、例1、25〜9、12〜14、16、17が比較例である。例1〜17の洗浄用溶剤組成物は、各成分を混合することにより調製した。
(フラックス洗浄試験)
例1〜例17の洗浄用溶剤組成物について、洗浄力を以下の方法により評価した。
<洗浄性−評価方法>
(1)洗浄試験サンプルの作成
亜鉛引き鉄板(JIS G3302相当 縦30mm、横20mm、厚さ0.3mm)に、ロジン系フラックス(HAKOO−001 白光株式会社製品)を塗布し、約180℃のホットプレートで10分間焼成処理を行い、更に室温(26℃)まで冷却し、室温で10日放置し洗浄試験サンプル(ロジン系フラックスの汚れが付着した被洗浄物)を得た。
(2)洗浄試験
ビーカーに洗浄用溶剤組成物を20g入れ、アルミホイルで封をし、液温が40℃になるよう調整し、洗浄試験サンプルを浸漬した。3分後、ビーカーから試験サンプルを取り出し、自然乾燥させた後、目視判断により白色の度合いを判断した。
表1、表2及び表3における洗浄性の評価は以下のとおりである。
○:白色の残渣がない。△:白色の残渣が少々残る。×:白色の残渣が残る。
(共沸様組成の確認)
例3、例4、例9〜例17の洗浄用溶剤組成物について、共沸様組成の確認を以下の方法により行った。
<共沸様組成−評価方法>
「自動車用非鉱油系ブレーキ液」(JIS K2233−1989)の7.1に規定する「平行還流沸点試験方法」に準じ、液の沸点計測を行った。フラスコの側管から温度計差込を肉厚のゴム間で密閉し、フラスコ口には冷却管を取り付け、冷却管に水を通して冷却を行った。また、冷却管の口より温度計を吊るし、蒸気温度の計測を行った。このような装置を準備し、表2に示す洗浄用溶剤組成物と沸騰石をフラスコに入れ、マントルヒーターで加熱した。気相凝縮液の滴下速度が適正となるように加熱温度を調整して、安定した沸騰を30分以上保った。液沸点が安定していることを確かめた後、蒸気温度及び液体温度を計測した。
表2及び表3における共沸様組成の評価は以下のとおりである。
○:液体温度と蒸気温度との差が5℃以内である。×:液体温度と蒸気温度との差が5℃より大きい。
結果を表1〜3にまとめる。
Figure 2017039866
Figure 2017039866
Figure 2017039866
表1より、実施例の溶剤組成物(例3、例4)は、洗浄性が高かった。一方、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンとプロピレングリコールモノメチルエーテルとの組合せ(例1)や、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンとn−プロピルアルコールとの組合せ(例6)は、洗浄性が劣っていた。また、溶剤組成物中の(C)の含有量が20重量%超である組合せ(例2)及び(B)の含有量が(C)の含有量の2倍である組合せ(例5)は、洗浄性が劣っていた。さらに、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンと、n−プロピルアルコール以外のアルコールとの組合せ(例7、例8)は、洗浄性が非常に劣っていた。
表2及び表3より、実施例の溶剤組成物は、共沸様組成であり、かつ、洗浄性に優れていた。一方、比較例の溶剤組成物は、共沸様組成ではないか、洗浄性が劣っていた。
溶剤組成物は、共沸様組成であり、かつ、洗浄性に優れる。特に、溶剤組成物は、ロジン系フラックスの汚れを洗浄できるため、油溶性の汚れやイオン汚染性の汚れを含む、様々な汚れに対する洗浄剤に用いることができる。そのため、溶剤組成物は、蒸気洗浄を含む洗浄装置を用いた、各種汚れの洗浄剤として産業上極めて有用である。

Claims (2)

  1. (A)1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン60〜80重量%、
    (B)n−プロピルアルコール6.7〜20重量%、及び
    (C)プロピレングリコールモノメチルエーテル10〜20重量%
    のみからなり、(B)の含有量が(C)の含有量の2倍未満である、洗浄用溶剤組成物。
  2. (A)1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン60〜80重量部、
    (B)n−プロピルアルコール6.7〜20重量部、及び
    (C)プロピレングリコールモノメチルエーテル10〜20重量部
    を含み、(A)〜(C)の合計が100重量部である洗浄用溶剤組成物であって、洗浄用溶剤組成物中の(A)〜(C)の量が、95重量%〜100重量%であり、(B)の含有量が(C)の含有量の2倍未満である、洗浄用溶剤組成物。
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