JP2017039863A - 環状ポリマーの製造方法及び環状ポリ乳酸樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
その中でもポリ乳酸は、原料である乳酸又はそのラクチド(環状ジエステル)が、天然物から製造可能である上に、耐熱性に優れ、色相、機械強度のバランスが取れたプラスチックであり、様々な用途に利用されている。
また、ポリ乳酸を高温で解重合し、ラクチド(二量体)を回収精製することが特許文献5、特許文献6などに開示されているが、この方法では高分子量の環状ポリ乳酸は得られない。
本発明によれば、ポリマーの熱安定性、安全性を著しく劣化させる原因となる金属触媒を使用せずに環状ポリマーを製造することができる。また、ポリマーの成形加工性、熱安定性を著しく劣化させる原因となる残存モノマー等の除去工程を必要とせず、開環重合性モノマーから、1段階の工程で環状ポリマーを製造することができる。さらに、残存モノマーが少なく、光学純度の高い環状ポリマーが高収率で得ることができる。
本発明における「圧縮性流体」とは、物質が、図1で表される相図の中で、図2に示す(1)、(2)、(3)のいずれかの領域に存在するときの状態を意味する。
このような領域においては、物質はその密度が非常に高い状態となり、常温常圧時とは異なる挙動を示すことが知られている。なお、物質が(1)の領域に存在する場合には超臨界流体となる。超臨界流体とは、気体と液体とが共存できる限界(臨界点)を超えた温度・圧力領域において非凝縮性高密度流体として存在し、圧縮しても凝縮を起こさず、臨界温度以上かつ臨界圧力以上の状態にある流体のことである。また、物質が(2)の領域に存在する場合には液体となるが、本発明においては、常温(25℃)、常圧(1気圧)において気体状態である物質を圧縮して得られた液化ガスを表す。また、物質が(3)の領域に存在する場合には気体状態であるが、本発明においては、圧力が1/2Pc以上の高圧ガスを表す。
中でも二酸化炭素は、臨界圧力が約7.4MPa、臨界温度が約31℃であって、容易に超臨界状態を作り出せること、不燃性で取扱いが容易であることなどの点で特に好ましい。
本発明で重合させることができる開環重合性モノマーとしては、エステル結合を環内に有するものであれば特に限定されるものではなく、環状エステル、環状カーボネートなどが挙げられる。
環状エステルとしては、公知のものを特に制限なく用いることができるが、特に好ましいモノマーとしては、下記一般式(1)で表される化合物のL体又はD体を脱水縮合して得られる環状2量体が挙げられる。
(ただし、上記一般式(1)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
前記開環重合性モノマーは単独で、あるいは数種を混合して用いることも可能である。
本発明で用いる金属原子を含まない有機触媒は、開環重合性モノマーの開環反応に寄与し、開環重合性モノマーとの活性中間体を形成した後、アルコールとの反応で脱離、再生するものであればよく、塩基性を有する求核剤として働く化合物が好ましい。より好ましくは、窒素原子を含有する環状化合物である。
これらの中でも、DMAP、TBD、DBU、9−AJ、DABCO、DPG、PPY、ITBUが好ましく、DMAP、TBD、DBU、9−AJがより好ましい。
重合反応温度については、圧縮性流体、開環重合性モノマー及び有機触媒の組み合わせなどによって変わるので、一概に特定できないが、通常の場合、重合反応温度は、40〜150℃程度とし、好ましくは50〜120℃、より好ましくは60〜100℃とする。40℃未満では反応速度が低下しやすく、定量的に重合反応を進めることができない場合がある。また、150℃を超えると、解重合反応も平衡して起きるため、やはり定量的に重合反応が進みにくくなる。
(1)溶融重合法と比較して、低温で反応が進む。
(2)低温で反応が進むので、副反応もほとんど起こらず、加えた開環重合性モノマーに対して高収率でポリマーが得られる(すなわち未反応の開環重合性モノマーが少ない)。そのため、成形加工性、熱安定性に優れたポリマーを得るための未反応モノマーの除去等の精製工程を簡略化又は省略できる。
(3)ポリマーに金属触媒、残有機溶剤が含有されない。
(4)廃液等も発生せず、乾燥したポリマーが1段階の工程で得られることから、乾燥工程も簡略化又は省略できる。
本発明によって得られた環状ポリマーの鏡像体過剰率(ee%)は大きいことが好ましく、80%以上であることが好ましい。光学純度が低下すると、結晶性ポリマーから非晶質ポリマーへと変化し、耐熱性が劣る場合がある。
鏡像体過剰率(ee%)=(L乳酸量−D乳酸量)/(L乳酸量+D乳酸量)×100
カラム:SUMICHIRAL OA5000
溶離液:2mM CuSO4水溶液:2−プロパノール=95:5
流量 :1.0mL/min
温度 :30℃
検出器:UV254nm
モノマーのポリマー転化率(モル%)=100−未反応モノマー量(モル%)
また、ポリ乳酸の場合、未反応モノマー量(モル%)は、重クロロホルム中、日本電子社製、核磁気共鳴装置JNM−AL300を使用し、ポリ乳酸由来の四重線ピーク面積比(5.10〜5.20ppm)に対するラクチド由来の四重線ピーク面積比(4.98〜5.05ppm)として算出し、これを100倍したものである。
・装置:GPC−8020(東ソー社製)
・カラム:TSK G2000HXL及びG4000HXL(東ソー社製)
・温度:40℃
・溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
・流速:1.0mL/分
濃度0.5重量%の試料を1mL注入し、上記の条件で測定したポリマーの分子量分布から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用してポリマーの数平均分子量Mn、重量平均分子量Mwを算出する。
得られた環状ポリマー、特に環状ポリ乳酸は、汎用樹脂として各種プラスチック製品に使用できるだけでなく、抗菌性材料や健康食品、医薬品、医療用材料など各種用途に用いることができる。
その際、成形性、二次加工性、分解性、引張強度、耐熱性、保存安定性、結晶性、耐候性等を向上させる目的で、各種添加剤、例えば、安定剤(エポキシ化大豆油、カルボジイミド等)、酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール等)、防曇剤(グリセリン脂肪酸エステル、クエン酸モノステアリル等)、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、内部離型剤、結晶核剤効果を持つ無機添加剤(クレイ、タルク、シリカ等)、帯電防止剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、顔料(酸化チタン、カーボンブラック、群青等)、滑剤、天然物等を添加し、ポリマー組成物として使用してもよい。
また、本発明によれば、本発明の環状ポリマーの製造方法によって製造された環状ポリ−L−乳酸及び環状ポリ−D−乳酸からなるステレオコンプレックスを含む環状ポリ乳酸樹脂組成物が得られる。この場合、示差走査熱量計測定(DSC測定)による結晶融解ピーク温度が190℃以上であることが好ましい。
本発明における光学純度の高い環状ポリマーを使用したステレオコンプレックスを含むことにより、耐熱性が向上した環状ポリ乳酸樹脂組成物を提供することができる。
[DSC測定の温度ステップ]
(1)昇温10℃/min(室温から230℃まで)
(2)降温10℃/min(230℃から−50℃まで)
(3)昇温10℃/min(−50℃〜230℃まで)
<環状ポリマーの平均分子量>
まず、GPC(gel permeationchromatography)により以下の条件でポリマーの分子量を測定した。
・装置:GPC−8020(東ソー社製)
・カラム:TSK G2000HXL及びG4000HXL(東ソー社製)
・温度:40℃
・溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
・流速:1.0mL/分
濃度0.5重量%の試料を1mL注入し、上記の条件で測定したポリマーの分子量分布から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用してポリマーの数平均分子量Mn、重量平均分子量Mwを算出した。分子量分布は前記MwをMnで除した値である。
開環重合性モノマーのポリマー転化率は、以下の式を用いて求めた。
モノマーのポリマー転化率(モル%)=100−未反応モノマー量(モル%)
得られたポリ乳酸を1M水酸化ナトリウム水溶液中で4時間加熱還流し、乳酸に加水分解する。この加水分解物をHPLC測定し、L乳酸量及びD乳酸量を定量し、下記、鏡像体過剰率の式により算出した。
鏡像体過剰率(ee%)=(L乳酸量−D乳酸量)/(L乳酸量+D乳酸量)×100
カラム:SUMICHIRAL OA5000
溶離液:2mM CuSO4水溶液:2−プロパノール=95:5
流量 :1.0mL/min
温度 :30℃
検出器:UV254nm
まず、TAインスツルメンツ社製、示差走査熱量計Q200を用いて、下記(1)〜(3)の温度ステップで測定を行った。下記(3)の昇温時に最大吸熱量を示すピーク温度を結晶融解ピーク温度とした。
[DSC測定の温度ステップ]
(1)昇温10℃/min(室温から230℃まで)
(2)降温10℃/min(230℃から−50℃まで)
(3)昇温10℃/min(−50℃〜230℃まで)
TOF-MSを用いてポリ乳酸の測定を行い、アシル基単位で切断されたイオンピークが観測されたことから環状ポリマーが製造されていることを確認した。下記の実施例2における測定結果を図3に示す。
耐圧容器に、L−ラクチド100重量部とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)5.6重量部を仕込み、これに超臨界二酸化炭素を充填し、60℃、10MPaで5時間反応させた。反応終了後、常温、常圧まで戻し、ポリマーを回収した。このポリマーの示差走査熱量計測定(DSC測定)による結晶融解ピーク温度は129℃であった。結果を表1に示す。
有機触媒を表1の実施例2〜5に示すように変更する以外は、実施例1と同様に操作を行った。結果を表1に示す。
原料モノマーをL−ラクチドからD−ラクチドに変更する以外は、実施例1と同様に操作を行った。得られたポリマーの示差走査熱量計測定(DSC測定)による結晶融解ピーク温度は146℃であった。結果を表1に示す。
反応容器にL−ラクチド100重量部とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)5.6重量部を仕込み、これに脱水クロロホルムを加え、60℃、120時間、溶液重合を行った。反応終了後、溶媒を留去しポリマーを回収した。結果を表2に示す。
有機触媒と反応時間を表2の比較例2〜5に示すように変更する以外は、比較例1と同様に操作を行った。結果を表2に示す。
原料モノマーをL−ラクチドからD−ラクチドに変更する以外は、比較例1と同様に操作を行った。結果を表2に示す。
実施例1と実施例6で得られた環状ポリ乳酸をそれぞれ20重量部ずつ取り、これを塩化メチレンで溶解混合し、溶剤を留去して環状ポリ乳酸のステレオコンプレックスを作製した。得られたステレオコンプレックスの示差走査熱量計測定(DSC測定)を行った結果、結晶融解ピーク温度は192.5℃であった。
実施例1と実施例6で得られた環状ポリ乳酸をそれぞれ20重量部ずつ取り、攪拌機のついた容器に20重量部ずつ取り、軽く混合した後、190℃、40rpmで加熱溶融混練を行い、環状ポリ乳酸のステレオコンプレックスを作製した。得られたステレオコンプレックスの示差走査熱量計測定(DSC測定)を行った結果、結晶融解ピーク温度は194℃であった。
比較例1と比較例6で得られた環状ポリ乳酸をそれぞれ20重量部ずつ取り、これを塩化メチレンで溶解混合し、環状ポリ乳酸のステレオコンプレックス作製を試みたが、ステレオコンプレックスは得られなかった。また得られたポリマーの示差走査熱量計測定(DSC測定)を行った結果、結晶融解ピーク温度は認められなかった。
比較例1と比較例6で得られた環状ポリ乳酸を攪拌機のついた容器に20重量部ずつ取り、軽く混合した後、190℃、40rpmで溶融混練を行い、環状ポリ乳酸のステレオコンプレックス作製を試みたが、ステレオコンプレックスは得られなかった。また得られたポリマーの示差走査熱量計測定(DSC測定)を行った結果、結晶融解ピーク温度は認められなかった。
「DMAP」:N,N−ジメチル−4−アミノピリジン
「9−AJ」:9−アザジュロリジン
「DBU」:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン
「TBD」:1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン
Claims (9)
- 圧縮性流体中で、金属原子を含まない有機触媒を用いて、開環重合性モノマーを重合させ、環状ポリマーを製造することを特徴とする環状ポリマーの製造方法。
- 前記開環重合性モノマーがラクチドであり、前記環状ポリマーが環状ポリ乳酸であることを特徴とする請求項1に記載の環状ポリマーの製造方法。
- 前記開環重合性モノマーのポリマー転化率が、95モル%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の環状ポリマーの製造方法。
- 前記圧縮性流体が、二酸化炭素からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の環状ポリマーの製造方法。
- 前記有機触媒が、塩基性を有する求核性の窒素化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の環状ポリマーの製造方法。
- 前記有機触媒が、窒素原子を含有する環状化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の環状ポリマーの製造方法。
- 前記有機触媒が、環状ジアミン、環状トリアミン及び複素環式化合物からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の環状ポリマーの製造方法。
- 前記有機触媒が、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)及び9−アザジュロリジン(9−AJ)からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項7に記載の環状ポリマーの製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の環状ポリマーの製造方法によって製造された環状ポリ−L−乳酸及び環状ポリ−D−乳酸からなるステレオコンプレックスを含む環状ポリ乳酸樹脂組成物であって、
示差走査熱量計測定による結晶融解ピーク温度が190℃以上であることを特徴とする環状ポリ乳酸樹脂組成物。
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