JP2017039212A - 画像記録方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光学濃度、定着性、及び光沢感に優れた画像を普通紙に記録することができる画像記録方法を提供する。【解決手段】色材を含有する第1インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出させて普通紙に付与する工程と、色材を含有しない第2インクを、第1インクを付与する領域と少なくとも一部で重なるように普通紙に付与する工程と、を有する画像記録方法であって、第1インクは、色材として顔料を含有し、第2インクは、ウレタン樹脂を含有し、ウレタン樹脂の含有量が5.0質量%以上、表面張力が36mN/m以下、粘度が3.0mPa・s以上であり、第1インクを普通紙に付与したのちに、第2インクを、第2インクによる単位面積当たりのウレタン樹脂の付与量が第1インクによる単位面積当たりの顔料の付与量に対して質量比で0.10倍以上となるように付与することを特徴とする。【選択図】なし
Description
本発明は、画像記録方法に関する。
近年、インクジェット記録装置は、その低電力、低コスト、及び省スペースというメリットを活かし、オフィスなどでの利用が増加しつつある。インクジェット記録装置がオフィスなどで使用される場合は、記録媒体として普通紙が用いられることがほとんどであり、普通紙への記録に適したインクが求められている。従来のインクジェット記録装置では、染料インクを用いることが多くあったが、前述したようにオフィス用途においては、染料インクの耐水性の低さが問題になることもあった。そこで、主にオフィス用途としては、各色のインクの色材として顔料を用いることが検討されている。オフィスなどでの使用を考慮した場合、複数枚の連続記録や記録後に時間をおかずにユーザーの手が画像に触れることも想定されるため、定着性の向上も要求されている。また、オフィスなどで用いられる文書については、画像の光学濃度に対する要求も近年ますます高くなってきている。普通紙で光学濃度の高い画像を表現することは、オフィス用途のインクジェット記録装置には必須であると言える。
色材を含有しないクリアインクを用いて、各種性能を向上させる技術も知られている。例えば特許文献1には、排出ローラーへの汚れ防止と光沢性を付与する技術が開示されている。また、特許文献2及び3には、光沢紙に用いるクリアインクが開示されており、画像の耐擦性や光沢性、光沢ムラを改良する方法が開示されている。特許文献4には、光沢紙に用いるウレタン樹脂を含有するクリアインクが開示されており、耐汚染性や掻き傷耐性を向上させる方法が開示されている。
しかし、従来のインクジェット記録方法では、顔料インクにより記録される画像の光学濃度を高めようとする場合、インクの表面張力を高く設定する必要があった。これは、色材を普通紙の表面やその近傍にできるだけ多く存在させるためである。しかし、上述のような方法を利用すると、インク中の水分の蒸発に時間がかかるため、画像の定着性が低下するという課題も生じていた。このように高い光学濃度と定着性の間には所謂トレードオフの関係が成り立ってしまい、本発明者らは、それらを近年求められるレベルで両立するには未だ至っていないという認識を得た。
また、従来のクリアインクを用いる技術は、主に光沢紙に対して、光沢性の高い画像を記録するためのものであることがほとんどであり、普通紙にクリアインクを適用する記録方法は十分に検討が進んでいない。特に、使用する記録媒体が光沢紙であるか普通紙であるかによって、画像の光沢性に対して要求されるレベルがかなり異なるため、光沢紙において有用な技術であっても、そのまま普通紙に適用することは困難である。そして、本発明者らの検討の結果、クリアインクを用いた記録方法についても、普通紙での高い光学濃度と定着性を両立するには至っていないのが現状であることが判明した。
特許文献1に開示されているウレタン樹脂を含有するクリアインクを用いた場合でも近年求められるレベルには到達していない。特許文献2に記載のクリアインクを用いた場合、クリアインク中のウレタン樹脂の含有量が少なく、近年求められるレベルには到達していない。特許文献3では、クリアインクの付与量が非常に少ないため、インク受容層を有さない記録媒体、例えば普通紙に対して、特許文献3に記載のクリアインクを適用したとしても高い光学濃度を得ることはできなかった。特許文献4に記載のウレタン樹脂を含有するクリアインクにおいても、普通紙を用いて検討を行ったところ、近年求められるレベルの効果を得ることはできなかった。
したがって、本発明の目的は、光学濃度、定着性、及び光沢感に優れた画像を普通紙に記録することができる画像記録方法を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、色材を含有する第1インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出させて普通紙に付与する工程と、色材を含有しない第2インクを、前記第1インクを付与する領域と少なくとも一部で重なるように前記普通紙に付与する工程と、を有する画像記録方法であって、前記第1インクは、前記色材として顔料を含有し、前記第2インクは、ウレタン樹脂を含有し、前記ウレタン樹脂の含有量が5.0質量%以上、表面張力が36mN/m以下、粘度が3.0mPa・s以上であり、前記第1インクを前記普通紙に付与したのちに、前記第2インクを、前記第2インクによる単位面積当たりの前記ウレタン樹脂の付与量が前記第1インクによる単位面積当たりの前記顔料の付与量に対して質量比で0.10倍以上となるように付与することを特徴とする画像記録方法が提供される。
本発明によれば、光学濃度、定着性、及び光沢感に優れた画像を普通紙に記録することができる画像記録方法を提供することができる。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。また、水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。本発明における各種の物性値は、特に断りのない限り25℃における値である。
光学濃度が高く、定着性が良好な記録を行うために、色材を含有するインクとは別に、インクとの反応を生じる反応液(多価金属塩や有機酸などの反応剤を含有する液体)を用いる技術がある。しかし、この場合、反応液に用いる材料と色材がインクジェット記録装置内部や記録ヘッドの吐出口が形成された面で接触し、凝集物を生成してしまうことに起因する吐出性の低下が生じたりする場合もある。その対策のために、インクジェット記録装置に別の手段などを設けたりする必要があり、コストアップやインクジェット記録装置の複雑化につながりやすい。
そこで、本発明者らは反応液を用いず、色材を含有する第1インクとともに、色材を含有しない第2インク(以下、「クリアインク」と記すことがある。)を用いて、普通紙に高い光学濃度と定着性を両立する画像を記録するための検討を行った。その結果、高速記録に対応するためには、第2インクの表面張力は36mN/m以下にする必要があるということがわかった。
しかし、従来の技術思想では、上述のような低い表面張力のインクを、反応液を用いないシステムで記録すると、普通紙のようなインク受容層を有さない記録媒体では、画像の光学濃度が低くなってしまっていた。これは、インク中の液体成分が速やかに記録媒体に浸透してしまい、その浸透に引きずられて顔料も記録媒体に沈みやすくなるためである。そこで、本発明者らは、上述のような低い表面張力を有するインクを用いた場合においても高い光学濃度を達成する手段についてさらに詳細な検討を行った。
まず、普通紙に画像を記録する際に求められる高い光学濃度について述べる。通常、オフィスなどで普通紙に記録する場合には、文字や図表などが混在する文書が想定される。このような文書では記録濃度が低い部分から高い部分まで、すなわち、インクの付与量が少ない画像領域(低デューティ部)からインクの付与量が多い画像領域(高デューティ部)まで、様々な記録デューティでインクが普通紙に記録される。普通紙に記録された画像に必要な高い光学濃度とは、高デューティ部の光学濃度だけが高ければよいわけではなく、低デューティ部から高デューティ部までの幅広い記録デューティにおいて、階調性を保ちながら高い光学濃度を実現することである。バランス良く光学濃度を向上させることができない場合、例えば普通紙に記録された文書の高デューティ部では、はっきりと文字などを認識できるが、低デューティ部では、光学濃度が低く、画像として認識しづらくなってしまうなどの問題を生じる。この問題が生じると、オフィスなどで使用される文書としては満足できないものとなってしまう。
次に、普通紙で高い光学濃度を実現するための方法について述べる。一つ目の方法として、通常用いられる普通紙は表面に凹凸を有するため、色材として顔料を含有する第1インク(以下、「顔料インク」と記すことがある。)により、顔料が普通紙に付与された場合、顔料は普通紙の表面の凹凸に沿って存在している。その凹凸をクリアインクで覆い、その凹凸をなくす、すなわち、平滑な表面を形成することで光学濃度は向上すると考えられる。その理由を、本発明者らは以下のように推測している。
画像の光学濃度は、広く知られている方法で測定することができ、例えば、分光光度計(製品名:Spectrolino、GretagMacbeth製)を用いて測定することが可能である。この分光光度計を用いた光学濃度の測定は、入射光−45°、2°視野の条件で行われている。上述したように、普通紙の凹凸を覆うように平滑な表面を普通紙に形成した場合、入射光に対する正反射光が増えると考えられる。正反射光が増えることで、2°視野の条件下で観察される光の量は減り、その結果、画像の光学濃度は高くなると考えられる。実際に画像を目視で観察した場合の官能評価とも一致している。
普通紙で高い光学濃度を実現するための二つ目の方法として、普通紙の表面の凹凸が大きく、クリアインクを用いても平滑な表面を形成することが難しい場合を考える。この場合、普通紙の大きな凹凸に付与された第1インク中の顔料は、その凹凸の形状に沿って存在し、顔料層が形成されている。その顔料層上に樹脂を含有するクリアインク(第2インク)を付与し、顔料層上に樹脂層を形成することでも高い光学濃度を実現することができると考えられる。その理由を、本発明者らは以下のように推測している。
クリアインク(第2インク)がない状態では、クリアインクが顔料層上に付与されている状態と比べ、入射光が顔料層の表面で反射してしまう割合が高くなると考えられる。また、反射光は顔料層の表面で様々な角度へ反射する。その結果、クリアインクがない状態において、光学濃度は低くなってしまうと考えられる。これに対し、クリアインクが顔料層上に付与される場合、入射光は顔料層の表面ではなく、クリアインクで形成された樹脂層の表面、又はその層の内部で散乱すると考えられる。顔料層の表面での反射が少なくなり、樹脂層での光の散乱が増加することにより、クリアインクが存在しない顔料層のみの表面と比べ、入射光に対して反射光の割合が低くなる。すなわち、画像の光学濃度が高くなると考えられる。
また、普通紙で高い光学濃度を実現させる別の方法として、用いる顔料のストラクチャを大きくすることも有効である。ストラクチャの大きな顔料が普通紙の表面上で嵩高く存在することで、顔料粒子間に空隙が生じる。この空隙には屈折率の高い空気が存在することが可能であり、入射光が空気層で散乱することで、反射光を減ずることができる。すなわち、光学濃度をさらに高めることも可能である。このような方法を適宜組み合わせることに何ら制限は存在しない。
クリアインク(第2インク)を用いず、顔料インク(第1インク)のみを用いて、普通紙の凹凸を覆うような厚さの顔料層(第1インク層)を形成する場合を考える。顔料のみで平滑な表面を形成することは不可能ではないが、顔料インクの付与量を多くすると、顔料が多く存在することに起因して、顔料本来の色調とは異なる色調の光沢感を生じる現象、所謂ブロンズ現象を生じてしまう場合がある。普通紙であってもブロンズ現象を生じると、顔料層の表面から様々な角度への散乱光を生じる。さらには、非常に高い反射光強度を示し、見た目の光学濃度が低くなってしまう場合や、目的とする色調以外に見えてしまう場合がある。また、顔料インクのみを多量に消費することや記録速度の低下にもつながる。
本発明者らは、上述したように普通紙で高い光学濃度を実現する方法についてさらに詳細に検討を行った。その結果、従来であれば普通紙での高い光学濃度と定着性の双方を実現することが困難である条件、すなわち、表面張力を下げた第2インクを用いた場合においても、高い光学濃度を実現可能であることが判明した。具体的には、本発明者らは、前記場合においても、ウレタン樹脂を特定量含有する第2インクを用いることにより、普通紙で求められる低デューティから高デューティの記録領域において階調性を保ちつつ、高い光学濃度を実現可能であることを見出した。そのメカニズムについて、本発明者らは以下のように推測している。
まず、ウレタン樹脂と光学濃度向上との関係について述べる。ウレタン樹脂の大きな特徴として、ソフトセグメントとハードセグメントを同一分子内に有するということが挙げられる。そのような構造を有するウレタン樹脂を含有する第2インクを、顔料を含有する第1インクを普通紙に付与したのちに付与すると、以下のような現象が起こっていると考えられる。
ウレタン樹脂の構造に由来するハードセグメントとソフトセグメントのうち、疎水的な性質を有するハードセグメント部が、顔料粒子の表面と疎水性相互作用を生じ、顔料粒子の表面近傍に存在するようになる。すると、ソフトセグメント部は顔料粒子の表面から相対的に離れた領域に分布するようになる。その結果、ソフトセグメント部同士も互いに近傍に存在することになり、ソフトセグメントに含まれる酸素原子間に水素結合が生じやすくなると考えられる。
このように、顔料粒子の近傍でウレタン樹脂がハードセグメント部同士、ソフトセグメント部同士が集合しやすい状態となった結果、ミクロ相分離構造(所謂、海島構造とも呼ばれる)を形成しやすい状態となっていると考えられる。すなわち、顔料層上のウレタン樹脂層にはハードセグメント部が集合した領域とソフトセグメント部同士が集合した領域が交互に存在していると考えられる。
ハードセグメント部は屈折率が高く、かつ、上記のようにハードセグメント同士が集合した状態を形成するため、インクに汎用のアクリル系ランダムポリマーよりも入射光を効率的に散乱しやすい状態となる。上述のように、入射光を顔料粒子の近傍で効率よく散乱した結果、画像の光学濃度が向上していると本発明者らは推測している。
また、別のメカニズムとして以下のような現象も推測される。顔料層上に付与したウレタン樹脂のハードセグメント部は、顔料粒子の表面と疎水的相互作用を生じ、ウレタン樹脂と顔料粒子により形成される集合体を形成する。集合体のサイズはウレタン樹脂単独、又は顔料粒子単独よりも大きくなっていると考えられる。その結果、ウレタン樹脂と顔料粒子の集合体は普通紙の表面やその近傍に残りやすくなる。
一方、上記と同様の理由により、ソフトセグメント部同士も酸素原子を介した水素結合性の相互作用を生じる。その結果、ソフトセグメント部の作用によって平滑な表面を有するウレタン樹脂層を形成させると考えられる。このように平滑な表面を有するウレタン樹脂層が形成されることにより、入射光が正反射しやすくなり、その結果、画像の光学濃度が向上していると推測される。
上述のように、ウレタン樹脂を含有するクリアインク(第2インク)は、上記2つのメカニズムの一方、又は双方が同時に生じることにより、普通紙の光学濃度が向上していると本発明者らは推測している。
また、普通紙の凹凸の大きさによらず、普通紙で光学濃度を向上し得る理由についても、上記メカニズムを用いて説明することが可能であると考えられる。さらに、ウレタン樹脂層を形成することにより反射光が増加し、普通紙に記録した画像に対し光沢感も同時に付与することが可能である。
上記では、普通紙に顔料インク(第1インク)を先に付与し、クリアインク(第2インク)を後に付与して、普通紙側の下層が第1インクによる顔料層、上層が第2インクによるウレタン樹脂層となる二層構成の場合における光学濃度向上メカニズムを示した。以下、その他の記録順序(又は付与順序)において生じる現象について説明する。
[下層にウレタン樹脂層、上層に顔料層を形成する場合]
普通紙にクリアインク(第2インク)を付与した場合、平滑な表面を有するウレタン樹脂層(第2インク層)が形成される。そのウレタン樹脂層上に顔料インク(第1インク)を記録すると、ウレタン樹脂層の平滑性に起因した平滑な表面を有する顔料層(第1インク層)が形成される。通常インクジェット記録方法で必要とされる光学濃度を発現するために必要なインク量を、ウレタン樹脂層上に付与すると、顔料層の表面が平滑になるとともに、顔料粒子が多く多く存在するため、金属光沢(所謂ブロンズ現象)を生じてしまう場合がある。このような金属光沢が生じてしまうと、画像の光学濃度が低くなってしまうことがある。
普通紙にクリアインク(第2インク)を付与した場合、平滑な表面を有するウレタン樹脂層(第2インク層)が形成される。そのウレタン樹脂層上に顔料インク(第1インク)を記録すると、ウレタン樹脂層の平滑性に起因した平滑な表面を有する顔料層(第1インク層)が形成される。通常インクジェット記録方法で必要とされる光学濃度を発現するために必要なインク量を、ウレタン樹脂層上に付与すると、顔料層の表面が平滑になるとともに、顔料粒子が多く多く存在するため、金属光沢(所謂ブロンズ現象)を生じてしまう場合がある。このような金属光沢が生じてしまうと、画像の光学濃度が低くなってしまうことがある。
[下層にウレタン樹脂層、中層に顔料層、上層にウレタン樹脂層を形成する場合]
上述の通り、下層にウレタン樹脂層、その上層に顔料層を最表層として形成すると、金属光沢を生じてしまう場合があるが、顔料層上にさらにウレタン樹脂層を形成することで、以下のような現象が起こっていると推測される。上述のように、下層のウレタン樹脂層の平滑性に起因し、その上(中層)の顔料層の表面も平滑となっているが、その上にウレタン樹脂層を形成することで、正反射光が増加し、光学濃度も向上していると考えられる。また、顔料層をウレタン樹脂層で被覆することにより金属光沢が抑制され、本発明の効果を得ることができる。
上述の通り、下層にウレタン樹脂層、その上層に顔料層を最表層として形成すると、金属光沢を生じてしまう場合があるが、顔料層上にさらにウレタン樹脂層を形成することで、以下のような現象が起こっていると推測される。上述のように、下層のウレタン樹脂層の平滑性に起因し、その上(中層)の顔料層の表面も平滑となっているが、その上にウレタン樹脂層を形成することで、正反射光が増加し、光学濃度も向上していると考えられる。また、顔料層をウレタン樹脂層で被覆することにより金属光沢が抑制され、本発明の効果を得ることができる。
[下層に顔料層、中層にウレタン樹脂層、上層に顔料層を形成する場合]
ウレタン樹脂層を顔料層で挟んだ場合、画像として必要な光学濃度を実現するために必要な第1インクを二層に分割して記録することになる。第1インクを分割して記録することにより、顔料粒子の凝集は抑制され、金属光沢は生じないことが確認された。さらに、上層の顔料層を通過した入射光はウレタン樹脂層で光の散乱も生じ、反射光を減少させる効果も得られる。その結果、画像の光学濃度を向上させるという本発明の効果を得ることができると推測される。また、本方法を用いることで、インクを効率よく使用することが可能となり、インク使用量の低減にもつながり好ましい。
ウレタン樹脂層を顔料層で挟んだ場合、画像として必要な光学濃度を実現するために必要な第1インクを二層に分割して記録することになる。第1インクを分割して記録することにより、顔料粒子の凝集は抑制され、金属光沢は生じないことが確認された。さらに、上層の顔料層を通過した入射光はウレタン樹脂層で光の散乱も生じ、反射光を減少させる効果も得られる。その結果、画像の光学濃度を向上させるという本発明の効果を得ることができると推測される。また、本方法を用いることで、インクを効率よく使用することが可能となり、インク使用量の低減にもつながり好ましい。
このように、第1インクと第2インクの記録順序(又は付与順序)によって、生じている現象は異なるが、三層構成となる場合、又はそれらの繰り返しのような状況である場合には、本発明の効果を十分に得ることができる。上述の通り、第1インクによる顔料層上に第2インクによるウレタン樹脂層が重なっている層構成があればよいが、最表層がウレタン樹脂層で、その直下に顔料層がある層構成を有することが最も好ましい。
本発明者らは、普通紙に付与される第1インクと第2インクの最適な比率についてさらに詳細な検討を行った。その結果、第2インクによる単位面積当たりのウレタン樹脂の付与量が、第1インクによる単位面積当たりの顔料の付与量に対して、質量比で0.10倍以上である場合に、本発明の効果が得られることを確認した。このウレタン樹脂と顔料の付与量の比率について、以下のように推測している。
前記ウレタン樹脂の付与量が前記顔料の付与量に対して質量比で0.10倍以上である場合は、上述したように、第2インクが、顔料層上にウレタン樹脂層を形成、又は普通紙に平滑な表面を有する画像を形成することができる。その結果、光学濃度の向上効果を得ることができると本発明者らは推測している。この比率が0.10未満となる場合には、顔料層上でウレタン樹脂層の表面が平滑とならず、本発明の効果を得ることができなくなってしまっていると本発明者らは推測している。
<画像記録方法>
本発明者らは、上述の詳細な検討の結果、光学濃度、定着性、及び光沢感に優れた画像を普通紙に記録することができる画像記録方法の構成を見出し、本発明を完成するに至った。その画像記録方法は、色材を含有する第1インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出させて普通紙に付与する工程と、色材を含有しない第2インクを、第1インクを付与する領域と少なくとも一部で重なるように普通紙に付与する工程と、を有する。本方法で使用する第1インクは、色材として顔料を含有し、第2インクは、ウレタン樹脂を含有し、ウレタン樹脂の含有量が5.0質量%以上、表面張力が36mN/m以下、粘度が3.0mPa・s以上のものである。そして、本方法では、第1インクを普通紙に付与したのちに、第2インクを、第2インクによる単位面積当たりのウレタン樹脂の付与量が第1インクによる単位面積当たりの顔料の付与量に対して質量比で0.10倍以上となるように付与する。「単位面積」とは、第1インク及び第2インクが付与される普通紙の単位面積であり、各インクの単位面積を揃えて比較する必要はあるものの、単位面積としては、1平方インチ、1画素、1ピクセルなどの任意の面積を設定することができる。以下、本発明の画像記録方法の詳細について説明する。
本発明者らは、上述の詳細な検討の結果、光学濃度、定着性、及び光沢感に優れた画像を普通紙に記録することができる画像記録方法の構成を見出し、本発明を完成するに至った。その画像記録方法は、色材を含有する第1インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出させて普通紙に付与する工程と、色材を含有しない第2インクを、第1インクを付与する領域と少なくとも一部で重なるように普通紙に付与する工程と、を有する。本方法で使用する第1インクは、色材として顔料を含有し、第2インクは、ウレタン樹脂を含有し、ウレタン樹脂の含有量が5.0質量%以上、表面張力が36mN/m以下、粘度が3.0mPa・s以上のものである。そして、本方法では、第1インクを普通紙に付与したのちに、第2インクを、第2インクによる単位面積当たりのウレタン樹脂の付与量が第1インクによる単位面積当たりの顔料の付与量に対して質量比で0.10倍以上となるように付与する。「単位面積」とは、第1インク及び第2インクが付与される普通紙の単位面積であり、各インクの単位面積を揃えて比較する必要はあるものの、単位面積としては、1平方インチ、1画素、1ピクセルなどの任意の面積を設定することができる。以下、本発明の画像記録方法の詳細について説明する。
(付与方法)
本発明の画像記録方法は、色材を含有する第1インク及び色材を含有しない第2インクを普通紙に付与して画像を記録する方法である。本方法では、色材として顔料を含有する第1インクを、インクジェット方式の記録ヘッドから吐出させて普通紙に付与する工程を有する。この第1インクを吐出する方式(吐出方式)としては、第1インクに力学的エネルギーを付与する方式や、第1インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、第1インクに熱エネルギーを付与して第1インクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明の各インクを用いること以外、画像記録方法の工程は公知のものとすればよい。
本発明の画像記録方法は、色材を含有する第1インク及び色材を含有しない第2インクを普通紙に付与して画像を記録する方法である。本方法では、色材として顔料を含有する第1インクを、インクジェット方式の記録ヘッドから吐出させて普通紙に付与する工程を有する。この第1インクを吐出する方式(吐出方式)としては、第1インクに力学的エネルギーを付与する方式や、第1インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、第1インクに熱エネルギーを付与して第1インクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明の各インクを用いること以外、画像記録方法の工程は公知のものとすればよい。
本発明の画像記録方法では、ウレタン樹脂を含有する第2インクを、第1インクを付与する領域と少なくとも一部で重なるように普通紙に付与する工程を有する。「第1インクを付与する領域」には、既に第1インクが付与された領域と、未だ第1インクが付与されていないが、第2インクが付与された後に、第1インクが付与される領域を含む。また、「少なくとも一部で重なるように」とは、第1インクを付与する領域と、第2インクを付与する領域が一部又は全部で重なることを意味する。
第1インクはインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録を行うが、第2インクを付与する方法はどのようなものであっても構わない。第2インクを普通紙に付与する方法としては、第1インクを普通紙に付与する方式で説明した吐出方式のほか、ローラーコーティング方式、バーコーティング方式、及びスプレーコーティング方式などの塗布方式を挙げることができる。本発明の画像記録方法では、第2インクを、塗布方式、なかでもローラー又はバーコーターで普通紙に付与する方式(ローラーコーティング方式、バーコーティング方式)が好ましい。第2インクをローラー又はバーコーターで塗布して普通紙に付与することで、第1インクによる顔料層(第1インク層)上だけでなく、普通紙に平滑な表面を有するウレタン樹脂層を効率的に形成することが可能となる。
本発明の画像記録方法では、第1インクを普通紙に付与したのちに、第2インクを、第2インクによる単位面積当たりのウレタン樹脂の付与量が第1インクによる単位面積当たりの顔料の付与量に対して質量比で0.10倍以上となるように付与する。前記ウレタン樹脂の付与量は、前記顔料の付与量に対して質量比(ウレタン樹脂の付与量/顔料の付与量の質量比)で0.20倍以上であることが好ましく、より好ましくは0.35倍以上、さらに好ましくは0.50倍以上である。一方、第1インクによる顔料層(第1インク層)に対して、第2インクによるウレタン樹脂層(第2インク層)があまりに厚すぎると、ウレタン樹脂層により散乱光が多く生じ、画像の見た目の濃度が低下する場合がある。そのため、前記ウレタン樹脂の付与量は、前記顔料の付与量に対して質量比で2.50倍以下であることが好ましい。
第2インクの付与量は、第1インクによる単位面積当たりの顔料の付与量に応じて、設定することができ、第2インクによる単位面積当たりのウレタン樹脂の付与量は、第2インクの付与量と第2インク中のウレタン樹脂の含有量とから求めることができる。前述の「吐出方式」で第2インクを付与する場合は、インクジェット記録装置により、第1インクの付与量に応じて第2インクの付与量を変化させることが可能である。前述の「塗布方式」で第2インクを付与する場合は、第1インクの付与量に応じて第2インクの付与量を変化させることが難しいため、第1インク(顔料)が最も多く付与される領域であっても効果が得られるように第2インクの付与量を設定することができる。
(顔料)
第1インクに含有される顔料としては、当該技術分野で公知のカーボンブラックなどの無機顔料や有機顔料を挙げることができる。顔料は、樹脂分散剤として機能する水溶性樹脂によって第1インク中に分散されていることが好ましい。また、顔料として、顔料粒子の表面に親水性基を導入した自己分散顔料を用いることも好ましい。
第1インクに含有される顔料としては、当該技術分野で公知のカーボンブラックなどの無機顔料や有機顔料を挙げることができる。顔料は、樹脂分散剤として機能する水溶性樹脂によって第1インク中に分散されていることが好ましい。また、顔料として、顔料粒子の表面に親水性基を導入した自己分散顔料を用いることも好ましい。
第1インク中の顔料の含有量(質量%)は、第1インク全質量を基準として、0.05質量%以上15.00質量%以下であることが好ましく、0.10質量%以上10.00質量%以下であることがさらに好ましい。
(ウレタン樹脂)
第2インクに含有されるウレタン樹脂としては、例えば、ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られるものを好適に用いることができる。これらに加えて、鎖延長剤や架橋剤となる成分をさらに反応させたものであってもよい。ウレタン樹脂の合成において、ポリオール及びポリイソシアネートなどは、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
第2インクに含有されるウレタン樹脂としては、例えば、ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られるものを好適に用いることができる。これらに加えて、鎖延長剤や架橋剤となる成分をさらに反応させたものであってもよい。ウレタン樹脂の合成において、ポリオール及びポリイソシアネートなどは、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
ポリオールとしては、アニオン性基含有ジオールなどの短鎖ポリオール;ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールなどの長鎖ポリオールなどを挙げることができる。短鎖ポリオールとしては、カルボン酸基、スルホン酸基、及びホスホン酸基などの酸基を有するジオールを挙げることができる。これらのなかでも、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、及びジメチロール酪酸などのカルボン酸基を有するジオールが好ましい。アニオン性基はリチウム、ナトリウム、及びカリウムなどのアルカリ金属;アンモニア;有機アミン;などの塩であってもよい。長鎖ポリオールとしては、(ポリ)アルキレングリコール(例えばポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールなど)などのポリエーテルポリオールが好ましい。
ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネート、及び芳香族ポリイソシアネートなどを挙げることができる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの鎖状構造を有するポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、及び1,4−シクロヘキサンジイソシアネートなどの環状構造を有するポリイソシアネートを挙げることができる。芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、及び2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどを挙げることができる。
ウレタン樹脂の重量平均分子量は、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により得られるポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000以上190,000以下であることが好ましい。ウレタン樹脂の重量平均分子量が10,000未満であると、ウレタン樹脂の膜特性が失われ、平滑な膜形成が不十分になる。ウレタン樹脂の重量平均分子量が190,000超であると、第2インク中での粘度上昇によって、保存時の安定性が低下する場合がある。ウレタン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは90,000以下である。
本発明の効果を得るためには、第2インク中のウレタン樹脂の含有量(質量%)は、第2インク全質量を基準として、5.0質量%以上であることが必要である。第2インク中のウレタン樹脂の含有量(質量%)が5.0質量%未満であると、光学濃度の向上効果が小さい。第2インク中のウレタン樹脂の含有量(質量%)は、好ましくは10.0質量%以上、より好ましくは15.0質量%以上である。一方、第2インク中のウレタン樹脂の含有量が多過ぎると、第2インクの粘度が高くなりすぎて、塗布方式及び吐出方式のいずれの場合であっても、普通紙に第2インクを安定に付与しづらい場合がある。そのため、第2インク中のウレタン樹脂の含有量(質量%)は、30.0質量%以下であることが好ましく、25.0質量%以下であることがさらに好ましい。
第2インクは、表面張力が36mN/m以下であることを要する。第2インクの表面張力は、33mN/m以下であることがより好ましい。一方、第2インクの表面張力があまりに低すぎると、普通紙への第2インクの浸透に伴い、ウレタン樹脂の一部が顔料層に浸透してしまう。そのため、第2インクの表面張力は、20.0mN/m以上であることが好ましく、25.0mN/m以上であることがさらに好ましい。本明細書において、インクの表面張力は、プレート法により、温度25℃において測定される値である。後述する実施例では、自動表面張力計(商品名「DY−300」、協和界面科学製)を用いてインクの表面張力を測定した。
第2インクは、粘度が3.0mPa・s以上であることを要する。第2インクの粘度は、5.0mPa・s以上であることがより好ましく、10.0mPa・s以上であることがさらに好ましい。また、第2インクの粘度があまりに高過ぎると、塗布方式及び吐出方式のいずれの場合であっても、普通紙に第2インクを安定に付与しづらい場合がある。そのため、第2インクの粘度は、20.0mPa・s以下であることが好ましく、15.0mPa・s以下であることがさらに好ましい。本明細書において、インクの粘度は、回転式粘度計により、温度25℃において用いて測定される値である。後述する実施例では、粘度計(商品名「RE80L」、東機産業製)を用いてインクの粘度を測定した。
(水性媒体)
第1インク及び第2インクは、水、又は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有する水性インクであることが好ましい。水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。第1インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上99.0質量%以下であることが好ましく、70.0質量%以上98.0質量%以下であることがさらに好ましい。第2インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましく、60.0質量%以上90.0質量%以下であることがさらに好ましい。
第1インク及び第2インクは、水、又は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有する水性インクであることが好ましい。水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。第1インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上99.0質量%以下であることが好ましく、70.0質量%以上98.0質量%以下であることがさらに好ましい。第2インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましく、60.0質量%以上90.0質量%以下であることがさらに好ましい。
また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、全質量を基準として、50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、従来、インクジェット記録方法に適用される液体に一般的に用いられているものをいずれも用いることができる。例えば、炭素数1乃至4のアルキルアルコール類、アミド類、ケトン又はケトアルコール類、エーテル類、ポリアルキレングリコール類、グリコール類、アルキレン基の炭素原子数が2乃至6のアルキレングリコール類、アルキルエーテルアセテート類、多価アルコールのアルキルエーテル類、含窒素化合物類などが挙げられる。これらの水溶性有機溶剤は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。なお、インクに水溶性有機溶剤を含有させる場合には、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、全質量を基準として、3.0質量%以上であることが好ましい。
(その他の添加剤)
各インクは、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素やその誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、各インクは、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及びその他の樹脂など、種々の添加剤を含有してもよい。
各インクは、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素やその誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、各インクは、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及びその他の樹脂など、種々の添加剤を含有してもよい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1)
水5.5gに濃塩酸70.6mmolを溶かした溶液を温度5℃に冷却し、4−アミノフタル酸9.8mmolを加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌し、溶液を常に10℃以下に保った状態とした。これに、5℃の水9.0gに亜硝酸ナトリウム24.9mmolを溶かした溶液を加えた。さらに15分間撹拌後、顔料6.0gを撹拌下で加えた。顔料としては、カーボンブラック(商品名「ブラックパールズ880」、キャボット製)を用いた。その後、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過した後、十分に水洗し、温度110℃のオーブンで乾燥させて自己分散顔料を得た。イオン交換水を用いて顔料の含有量を調整して、顔料分散液1を得た。顔料分散液1には、カウンターイオンがナトリウムであるフタル酸基が粒子表面に結合した自己分散顔料が含まれており、顔料の含有量は10.0%であった。
(顔料分散液1)
水5.5gに濃塩酸70.6mmolを溶かした溶液を温度5℃に冷却し、4−アミノフタル酸9.8mmolを加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌し、溶液を常に10℃以下に保った状態とした。これに、5℃の水9.0gに亜硝酸ナトリウム24.9mmolを溶かした溶液を加えた。さらに15分間撹拌後、顔料6.0gを撹拌下で加えた。顔料としては、カーボンブラック(商品名「ブラックパールズ880」、キャボット製)を用いた。その後、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過した後、十分に水洗し、温度110℃のオーブンで乾燥させて自己分散顔料を得た。イオン交換水を用いて顔料の含有量を調整して、顔料分散液1を得た。顔料分散液1には、カウンターイオンがナトリウムであるフタル酸基が粒子表面に結合した自己分散顔料が含まれており、顔料の含有量は10.0%であった。
(顔料分散液2)
顔料10.0部、樹脂分散剤の水溶液(樹脂(固形分)の含有量:20.0%)20.0部、及びイオン交換水70.0部を混合して混合物を得た。顔料としては、カーボンブラック(商品名「ブラックパールズ880」、キャボット製)を用いた。また、樹脂分散剤の水溶液としては、水溶性樹脂であるスチレン−アクリル酸共重合体(重量平均分子量10,000、酸価200mgKOH/g)を、酸価に対して中和当量1となる水酸化ナトリウムを用いてイオン交換水に溶解させたものを用いた。得られた混合物を、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散した後、ポアサイズが1.2μmであるミクロフィルター(富士フイルム製)で加圧ろ過した。次いで、イオン交換水を加えて顔料の含有量を調整し、顔料分散液2を得た。顔料分散液2には、アクリル系樹脂(樹脂分散剤)により分散された顔料が含まれており、顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は4.0%であった。
顔料10.0部、樹脂分散剤の水溶液(樹脂(固形分)の含有量:20.0%)20.0部、及びイオン交換水70.0部を混合して混合物を得た。顔料としては、カーボンブラック(商品名「ブラックパールズ880」、キャボット製)を用いた。また、樹脂分散剤の水溶液としては、水溶性樹脂であるスチレン−アクリル酸共重合体(重量平均分子量10,000、酸価200mgKOH/g)を、酸価に対して中和当量1となる水酸化ナトリウムを用いてイオン交換水に溶解させたものを用いた。得られた混合物を、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散した後、ポアサイズが1.2μmであるミクロフィルター(富士フイルム製)で加圧ろ過した。次いで、イオン交換水を加えて顔料の含有量を調整し、顔料分散液2を得た。顔料分散液2には、アクリル系樹脂(樹脂分散剤)により分散された顔料が含まれており、顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は4.0%であった。
<ウレタン樹脂の合成>
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び還流管を備えた四つ口フラスコを用いた。この四つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート28.0部、ヘキサメチレンジイソシアネート10.7部、ポリプロピレングリコール(数平均分子量2,000)39.8部、及びジメチロールプロピオン酸21.5部を仕込んだ。さらに、メチルエチルケトン300.0部を仕込み、窒素ガス雰囲気下、80℃で6時間反応させた。反応後、40℃まで冷却してイオン交換水を添加し、ホモミキサーで高速撹拌しながら、水酸化カリウム水溶液を添加した。加熱減圧下でメチルエチルケトンを留去して、ウレタン樹脂の水溶液(樹脂(固形分)の含有量:30.0%)を得た。得られたウレタン樹脂は、酸価が90mgKOH/gであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求められるポリスチレン換算の重量平均分子量が50,000であった。
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び還流管を備えた四つ口フラスコを用いた。この四つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート28.0部、ヘキサメチレンジイソシアネート10.7部、ポリプロピレングリコール(数平均分子量2,000)39.8部、及びジメチロールプロピオン酸21.5部を仕込んだ。さらに、メチルエチルケトン300.0部を仕込み、窒素ガス雰囲気下、80℃で6時間反応させた。反応後、40℃まで冷却してイオン交換水を添加し、ホモミキサーで高速撹拌しながら、水酸化カリウム水溶液を添加した。加熱減圧下でメチルエチルケトンを留去して、ウレタン樹脂の水溶液(樹脂(固形分)の含有量:30.0%)を得た。得られたウレタン樹脂は、酸価が90mgKOH/gであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求められるポリスチレン換算の重量平均分子量が50,000であった。
<インクの調製>
表1及び表2の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズが0.8μmであるセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。第2インクの表面張力及び粘度は上述の装置を利用して25℃で測定した。表1及び表2の下段にはインクの特性を示した。なお、表1及び表2中の「アセチレノールE100」は川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤の商品名である。
表1及び表2の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズが0.8μmであるセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。第2インクの表面張力及び粘度は上述の装置を利用して25℃で測定した。表1及び表2の下段にはインクの特性を示した。なお、表1及び表2中の「アセチレノールE100」は川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤の商品名である。
<評価>
表4の左側に示す第1インクと第2インクの組み合わせをインクセットとした。評価には、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名「PIXUS MG8130」、キヤノン製)を用いた。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチの領域を1ピクセル(単位面積)とし、1ピクセル当たりに1滴当たりの体積が5.5pLのインク(第1インク)を2滴付与して記録したベタ画像を「記録デューティが100%である」と定義する。
表4の左側に示す第1インクと第2インクの組み合わせをインクセットとした。評価には、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名「PIXUS MG8130」、キヤノン製)を用いた。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチの領域を1ピクセル(単位面積)とし、1ピクセル当たりに1滴当たりの体積が5.5pLのインク(第1インク)を2滴付与して記録したベタ画像を「記録デューティが100%である」と定義する。
温度23℃、相対湿度55%の環境で、上記のインクジェット記録装置を用いて、普通紙(商品名「PBPAPER GF−500」、キヤノン製)に単位面積(平方インチ)当たりの第1インクの付与量(mg)が表3に示す条件となる7種のベタ画像を記録した。参考値として示した記録デューティは第1インクの付与量(mg/inch2)から換算される値である。第2インクは、第1インクで記録されたベタ画像に重なるようにして付与した。このときの第2インクの付与量は、単位面積当たりの顔料の付与量が最も多い画像(7)を基準としたときの、ウレタン樹脂の付与量/顔料の付与量の質量比が表4に示す値となるようにした。したがって、例えば、実施例1の場合、画像(7)におけるウレタン樹脂/顔料の比は0.80倍であるが、画像(1)におけるウレタン樹脂/顔料の比は2.01倍となる。
第2インクの付与方法は表4に示す通りとした。第2インクを塗布により付与する場合には、第1インクにより画像を記録した後に塗布方式(バーコーター)で所定量の第2インクを付与した。第2インクを吐出により付与する場合には、第1インクと同様にインクジェット記録装置を用いて所定量の第2インクを付与して記録物を得た。また、対照例として、第2のインクは用いずに、第1インクのみを用いる以外は上記と同様にして記録物を得た。本発明においては、下記の各評価項目の評価基準で、AAA、AA、A、及びBを許容できるレベル、Cを許容できないレベルとした。評価結果を表4の右側に示す。
(光学濃度)
記録後、温度23℃、相対湿度55%の環境に1日保存した。その後、上記で得られた記録物の7種の画像について、分光光度計(Spectrolino;Gretag Macbeth製)を用いて、光源:D50、視野:2°の条件で光学濃度を測定した。そして、光学濃度の上昇率=(第2インクを付与した場合の光学濃度)/(第2インクを付与しない場合の光学濃度)×100(%)の値から、以下の基準にしたがって光学濃度を評価した。
AAA:7種の画像の全てで光学濃度が向上し、画像(7)の光学濃度の上昇率が120%以上であった。
AA:7種の画像の全てで光学濃度が向上し、画像(7)の光学濃度の上昇率が110%以上120%未満であった。
A:7種の画像の全てで光学濃度が向上し、画像(7)の光学濃度の上昇率が105%以上110%未満であった。
B:7種の画像の全てで光学濃度が向上し、画像(7)の光学濃度の上昇率が100%を超えて105%未満であった。
C:7種の画像の少なくとも一部に光学濃度の向上が確認されないものがあった。
記録後、温度23℃、相対湿度55%の環境に1日保存した。その後、上記で得られた記録物の7種の画像について、分光光度計(Spectrolino;Gretag Macbeth製)を用いて、光源:D50、視野:2°の条件で光学濃度を測定した。そして、光学濃度の上昇率=(第2インクを付与した場合の光学濃度)/(第2インクを付与しない場合の光学濃度)×100(%)の値から、以下の基準にしたがって光学濃度を評価した。
AAA:7種の画像の全てで光学濃度が向上し、画像(7)の光学濃度の上昇率が120%以上であった。
AA:7種の画像の全てで光学濃度が向上し、画像(7)の光学濃度の上昇率が110%以上120%未満であった。
A:7種の画像の全てで光学濃度が向上し、画像(7)の光学濃度の上昇率が105%以上110%未満であった。
B:7種の画像の全てで光学濃度が向上し、画像(7)の光学濃度の上昇率が100%を超えて105%未満であった。
C:7種の画像の少なくとも一部に光学濃度の向上が確認されないものがあった。
(定着性)
第1インク及び第2インクを用いて、画像(7)の部分を記録した10秒後に、別の普通紙(商品名「PBPAPER GF−500」、キヤノン製)を重ねた。そして、1枚目の普通紙における記録物の画像(7)の部分が、上から重ねた2枚目の普通紙に転写しているかを目視で確認して、以下の基準にしたがって定着性を評価した。なお、このような評価方法により許容できる定着性を有する場合、記録物の乾燥が早く、高速記録に適用可能であることを意味する。
A:転写が確認されず、2枚目の普通紙に汚れは観察されなかった。
B:2枚目の普通紙に軽微な汚れがあった。
C:2枚目の普通紙に明らかな汚れがあった。
第1インク及び第2インクを用いて、画像(7)の部分を記録した10秒後に、別の普通紙(商品名「PBPAPER GF−500」、キヤノン製)を重ねた。そして、1枚目の普通紙における記録物の画像(7)の部分が、上から重ねた2枚目の普通紙に転写しているかを目視で確認して、以下の基準にしたがって定着性を評価した。なお、このような評価方法により許容できる定着性を有する場合、記録物の乾燥が早く、高速記録に適用可能であることを意味する。
A:転写が確認されず、2枚目の普通紙に汚れは観察されなかった。
B:2枚目の普通紙に軽微な汚れがあった。
C:2枚目の普通紙に明らかな汚れがあった。
(光沢感)
記録後、温度23℃、相対湿度55%の環境に1日保存した。その後、上記で得られた記録物の7種の画像を目視で確認して、以下の基準にしたがって光沢感を評価した。
AA:7種の画像のいずれにおいても、均一、かつ、強い光沢感があった。
A:7種の画像のいずれにおいても、均一、かつ、弱い光沢感があった。
B:7種の画像の一部のみにおいて、光沢感にムラがあった。
C:7種の画像のいずれにおいても、光沢感にムラがあった。
記録後、温度23℃、相対湿度55%の環境に1日保存した。その後、上記で得られた記録物の7種の画像を目視で確認して、以下の基準にしたがって光沢感を評価した。
AA:7種の画像のいずれにおいても、均一、かつ、強い光沢感があった。
A:7種の画像のいずれにおいても、均一、かつ、弱い光沢感があった。
B:7種の画像の一部のみにおいて、光沢感にムラがあった。
C:7種の画像のいずれにおいても、光沢感にムラがあった。
Claims (9)
- 色材を含有する第1インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出させて普通紙に付与する工程と、色材を含有しない第2インクを、前記第1インクを付与する領域と少なくとも一部で重なるように前記普通紙に付与する工程と、を有する画像記録方法であって、
前記第1インクは、前記色材として顔料を含有し、
前記第2インクは、ウレタン樹脂を含有し、前記ウレタン樹脂の含有量が5.0質量%以上、表面張力が36mN/m以下、粘度が3.0mPa・s以上であり、
前記第1インクを前記普通紙に付与したのちに、前記第2インクを、前記第2インクによる単位面積当たりの前記ウレタン樹脂の付与量が前記第1インクによる単位面積当たりの前記顔料の付与量に対して質量比で0.10倍以上となるように付与することを特徴とする画像記録方法。 - 前記第1インクを前記普通紙に付与したのちに、前記第2インクを、前記第2インクによる単位面積当たりの前記ウレタン樹脂の付与量が前記第1インクによる単位面積当たりの前記顔料の付与量に対して質量比で0.20倍以上となるように付与する請求項1に記載の画像記録方法。
- 前記第2インクの表面張力が33mN/m以下である請求項1又は2に記載の画像記録方法。
- 前記第2インクを塗布方式により前記普通紙に付与する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像記録方法。
- 前記第2インクの粘度が10.0mPa・s以上である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像記録方法。
- 前記第2インク中の前記ウレタン樹脂の含有量が10.0質量%以上である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像記録方法。
- 前記第2インク中の前記ウレタン樹脂の含有量が15.0質量%以上である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像記録方法。
- 前記第1インクを前記普通紙に付与したのちに、前記第2インクを、前記第2インクによる単位面積当たりの前記ウレタン樹脂の付与量が前記第1インクによる単位面積当たりの前記顔料の付与量に対して質量比で0.35倍以上となるように付与する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像記録方法。
- 前記第1インクを前記普通紙に付与したのちに、前記第2インクを、前記第2インクによる単位面積当たりの前記ウレタン樹脂の付与量が前記第1インクによる単位面積当たりの前記顔料の付与量に対して質量比で0.50倍以上となるように付与する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像記録方法。
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