JP2017037923A - 太陽電池モジュール用の衝撃吸収型ガラス基板及び、それを用いてなる太陽電池モジュール - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の衝撃吸収型ガラス基板は、主としてガラス材料からなる太陽電池モジュール用の基板材料である。例えば、ガラス板自体は非強化の青板ガラス等である場合であっても、所謂強化ガラスに匹敵する耐衝撃強度を有することを主たる特長とする。例えば、図2に示すような両面採光型の太陽電池モジュール10において、本発明の衝撃吸収型ガラス基板1は、両最外層に配置される透明保護基板として用いることができる。或いは、図3に示すような薄膜型太陽電池モジュール10Aにおいて、衝撃吸収型ガラス基板1は、薄膜系の太陽電池素子3Aを積層するセルガラスとしても用いることができる。本発明の衝撃吸収型ガラス基板は、主として太陽電池モジュールの採光面に配置する保護部材として、ガラス材料の有する透明性或いは透光性を備えるものが好ましく用いられる他、例えば、遮光性や反射性を求められる層に配置される場合等には、透光性を有さない有色のガラスからなるものも、又、好ましく用いられる。図2、3に示す各太陽電池モジュールの層構成の詳細については後述する。
図1に示す通り、ガラス板11の一方の表面に積層されている衝撃吸収樹脂層12は、密着強化層121と衝撃緩和層122とからなる多層構成の樹脂層である。ガラス板11の表面から、密着強化層121、衝撃緩和層122が順に積層されている。密着強化層121は、衝撃緩和層122とガラス板11との間に介在して、衝撃吸収樹脂層12とガラス板11との密着性を高める効果を主として発揮する層である。又、衝撃緩和層122は、例えば、図2及び図3に示す太陽電池モジュール10、10Aにおいて、太陽電池モジュールの外部からの衝撃を緩和する効果を主として発揮する層である。密着強化層121と衝撃緩和層122との一体化については、公知のドライラミネート法や押出しラミネート法によることができる。製造方法の詳細については後述する。
密着強化層121は、衝撃吸収樹脂層12とガラス板11との対向する界面に配置される樹脂層であり、ガラス板11と衝撃吸収樹脂層12との間の密着性を高める効果を発揮する樹脂層である。
衝撃緩和層122は、太陽電池モジュールの外部からの衝撃を緩和し、ガラス板11の外部衝撃による破損を防止する機能を主として発揮する層である。又、衝撃緩和層122は、同時に太陽電池モジュールにおける水蒸気バリア層や絶縁層としての機能も発揮しうる層であることが好ましい。但し、太陽電池モジュールの全体構成において、これらの機能を担保するためのバリア層や絶縁層は別途の機能層を配置することによって担保することもできる。
ガラス板11については、従来、太陽電池モジュールを構成する透光性を有する基板材料として用いられてきた各種のガラス板材を特に制限なく用いることができる。好ましい厚さについては上述の通りである。但し、本発明の衝撃吸収型ガラス基板1においては、特にガラス板として、厚さ3mm以下の非強化ガラスを用いるときに、その効果を特に有効なものとして享受することができる。ここで、本明細書における「非強化ガラス」とは、形成後に強度を高めるための処理を行った「強化ガラス」ではない、未処理の青板ガラス等のことを言う。JIS C 8917に記載のフロントガラスの降ひょう試験法(直径38mm、227gの鋼球を、試料に対して、1mの高さから自然落下して行う試験)によって、破損しない強度を付与されている、所謂「強化ガラス」とは異なるものである。衝撃吸収型ガラス基板1は、基板とするガラス板11として、安価で加工性にも優れる非強化ガラスを用いたものでありながら、強化ガラスに匹敵する耐衝撃性能を有するものである。尚、ガラス板11を強化ガラスで形成した場合には、太陽電池モジュールの製造工程において、例えば、各部材の積層後にガラスのサイズを調整するための切削加工が困難になる等、生産性の面で不都合が生じる。本発明の衝撃吸収型ガラス基板1は、切削加工も容易である等加工性にも優れるので、この点からも、太陽電池モジュールの生産性の向上にも寄与することができる。
衝撃吸収型ガラス基板1の製造方法について説明する。衝撃吸収型ガラス基板1は、衝撃緩和層122を形成する工程と、密着強化層121を形成する工程と、これらの層を密着積層して一体化することにより衝撃吸収樹脂層12を形成する工程、及び、ガラス板11に、この衝撃吸収樹脂層12を積層して一体化する工程とを経ることによって、製造することができる。
本発明の衝撃吸収型ガラス基板1は、図2に示すような封止材2で両面採光型セルである太陽電池素子3を挟持する構成を含む両面採光型の太陽電池モジュール10において、或いは、図3に示すような層構成からなるCIS系薄膜型太陽電池モジュール10Aのセルガラスとして、好ましく用いることができる。CIS系薄膜型太陽電池モジュールとは、光吸収層の材料として、シリコンの代わりに、Cu、In、Ga、Al、Se、S等からなるカルコパイライト系と呼ばれるI−III−VI族化合物等のCIS系薄膜型太陽電池素子を用いた薄膜型太陽電池モジュールである。この場合前面透明基板1Aには強化ガラスを用いることもできるし、本発明の衝撃吸収型ガラス基板1を用いることもできる。
下記の組成からなる各層を形成する樹脂シートを、ウレタン系の接着材によるドライラミネート法により一体化して衝撃吸収樹脂層試験片を形成した。
衝撃緩和層:表1に示す各厚さを有するPETフィルムを、それぞれ実施例、比較例における衝撃緩和層とした。
密着強化層:密度0.880g/cm3、融点60℃であり、190℃でのMFRが3.5g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)45質量部、シラン変性ポリエチレン系樹脂55質量部、メルカプト基を有するシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製KBM802)全樹脂成分に対して0.4質量%、を混錬して得た組成物を溶融押出しにより、表1に示す各厚さに成型したフィルムを、それぞれ実施例、比較例における密着強化層とした。シラン変性ポリエチレン系樹脂は、密度0.880g/cm3、MFRが30g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド1.5質量部とを混合し、200℃で溶融、混練して得たものであり、密度0.881g/cm3、MFRが13g/10分である。
上記の衝撃吸収樹脂層試験片を15mm幅にカットした樹脂シートを非強化の青板ガラス(75mm×50mm×3.2mm)上に積層し、下記熱ラミネート条件(a)〜(d)で、真空加熱ラミネータ処理を行って一体化し、本発明の太陽電池モジュール用の衝撃吸収型ガラス基板に係る実施例、比較例の密着性評価用サンプルを得た。この各評価用サンプルについて、下記の試験条件における密着強度を測定してガラス密着性を評価した。
(熱ラミネート条件) (a)真空引き:4.0分
(b)加圧(0kPa〜100kPa):1.5分
(c)圧力保持(100kPa):7.0分
(d)温度150℃
測定は、上記の各密着性評価用サンプルにおいて、青板ガラス上に密着している衝撃吸収樹脂層試験片を、剥離試験機(テンシロン万能試験機 RTF−1150−H)にて垂直剥離(50mm/min)試験を行った。評価結果を表1に示す。評価基準として、上記試験により得た層間の剥離強度が10N/15mm以上のものを好ましいもの「○」とした。
180mm×180mm×3.2mmの「強化ガラス」上に、180mm×180mmにカットした600μmのEVA、「非強化の青板ガラス」(日本電気硝子株式会社の太陽電池用高歪点基板ガラス SS−1 150mm×150mm×1.8mm)、上記の衝撃吸収樹脂層試験片を180mm×180mmサイズにカットした樹脂シートを、この順に積層し、上記熱ラミネート条件(a)〜(d)で、真空加熱ラミネータ処理を行って一体化し、衝撃吸収型ガラス基板に係る実施例、比較例の耐衝撃性評価用サンプルを得た。この各評価用サンプルについて、下記の試験条件における耐衝撃性を測定して耐衝撃性を評価した。尚、この評価用サンプルの層構成は、図3の薄膜型の太陽電池モジュールと概ね同一であり、ガラス層のうち表面側の透明前面基板(1A)としてのみ、強化ガラスを用いた構成を想定したものである。
測定は、JIS C 8917に記載のフロントガラスの降ひょう試験法に準じて行った。上記の各耐衝撃性評価用サンプルを、衝撃吸収樹脂層面を上に向けて水平面に静置し、直径38mm、227gの鋼球を、各試料に対して、1mの高さから自然落下した場合におけるガラス板の破損の有無を目視で観察評価した。本試験においては、評価用サンプルの「非強化の青板ガラス」の全面において、目視で確認可能なひびや割れが生じていなかった場合に、同サンプルを「破損無し」と評価した。評価結果を表1に示す。
11 ガラス板
12 衝撃吸収樹脂層
121 密着強化層
122 衝撃緩和層
10、10A 太陽電池モジュール
2 封止材
3、3A 太陽電池素子
1A 透明前面基板
Claims (5)
- 太陽電池モジュール用の衝撃吸収型ガラス基板であって、
ガラス板の表面に衝撃吸収樹脂層が積層されていて、
前記衝撃吸収樹脂層は、総厚さが200μm以下の多層樹脂層であり、前記ガラス板の表面に配置される密着強化層と、該密着強化層を介して前記衝撃吸収型ガラス基板の最表面に配置される衝撃緩和層とからなり、
前記衝撃緩和層は、ポリエステル系樹脂又はフッ素系樹脂からなり、
前記密着強化層は、密度0.870g/cm3以上0.970g/cm3以下のポリエチレン系樹脂と、シランカップリング剤と、を含有し、
前記密着強化層の厚さが20μm以上であって、前記衝撃緩和層の厚さが、前記密着強化層の厚さの2.5倍以上である、衝撃吸収型ガラス基板。 - 前記ガラス板が厚さ3mm以下の非強化ガラスである請求項1に記載の衝撃吸収型ガラス基板。
- 前記密着強化層を構成するポリエチレン系樹脂にα−オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物とをコモノマーとして共重合してなるシラン共重合体が含有されている請求項1又は2に記載の裏面保護シート。
- 請求項1から3のいずれかに記載の衝撃吸収型ガラス基板と、太陽電池素子と、封止材と、が積層されてなる太陽電池モジュール。
- 前記衝撃吸収型ガラス基板のガラス面上に薄膜型の太陽電池素子が積層されてなる請求項4に記載の太陽電池モジュール。
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