JP2017035983A - 手押し車 - Google Patents

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岩下 純久
Sumihisa Iwashita
純久 岩下
野村 琢磨
Takuma Nomura
琢磨 野村
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Abstract

【課題】利用者が負荷を感じることなく利用することができるとともに、転倒などのおそれが発生した場合に制動力が働く手押し車を提供する。【解決手段】速度を検出する速度検出センサ7と、速度検出センサ7より出力される速度を閾値と比較し、車輪6a,6bの回転に対する制御を決定する制御部10と、制御部10が決定した制御に基づき、車輪6a,6bの回転を制御するモータ制御部20とを備えるものである。【選択図】図1

Description

この発明は、高齢者などの歩行を支援する歩行車、荷物の運搬などに使用する台車、乳幼児などの運搬に使用するベビーカーなど、利用者が掴まりながら歩行する手押し車に関するものである。
利用者が掴まりながら歩行する手押し車には、高齢者などの歩行を支援する歩行車がある。従来の歩行車では、歩行しながら体重を預けた際に移動速度が増加してしまい、足が追いつかずに利用者が転倒してしまうことがあった。また、歩行車を手摺り代わりにして椅子やベッドから立ち上がろうとした際に歩行車が移動し、利用者が転倒してしまうことがあった。
上記のような課題に対し、利用者の転倒を防ぐ機能が搭載された歩行車が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に開示された歩行車は、モータを車輪に取り付け、車輪の回転に抗する発電制動力をモータに発生させることで、歩行車の移動速度を抑えるものである。また、車輪の回転に抗する発電制動力は、車輪の回転速度が上昇するにつれて、モータでの発電量が増加し、大きくなる。
特開平11−290405号公報
特許文献1の従来技術では、歩行車の移動速度に基づいて制動力が働くものの、移動速度が低速の場合でも制動力が発生するため、利用者には常に負荷がかかり、負担となっていた。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、利用者が負荷を受けずに利用することができるとともに、転倒などのおそれが発生した場合に制動力が働く手押し車を提供することを目的とする。
この発明に係る手押し車は、速度を検出する速度検出部と、速度検出部より出力される速度を閾値と比較し、車輪の回転に対する制御を決定する制御部と、制御部が決定した制御に基づき、車輪の回転を制御する回転制御部とを備えるものである。
この発明によれば、利用者が負荷を受けずに利用することができるとともに、転倒などのおそれが発生した場合に制動力が働く手押し車を提供することができる。
この発明の実施の形態1に係る歩行車の構成を示す図である。 この発明の実施の形態1に係る歩行車の説明図(側面図)である。 この発明の実施の形態1に係る歩行車の説明図(上面図)である。 この発明の実施の形態1に係る歩行車の構成を示すブロック図である。 この発明の実施の形態1に係る歩行車の動作を説明するフローチャートである。 この発明の実施の形態2に係る歩行車の動作を説明するフローチャートである。 この発明の実施の形態3に係る歩行車の説明図(斜視図)である。 この発明の実施の形態3に係る歩行車の動作を説明するフローチャートである。 この発明の実施の形態4に係る歩行車の動作を説明するフローチャートである。 この発明の実施の形態4に係る歩行車の別の構成例の動作を説明するフローチャートである。
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る歩行車1の構成を示す図である。以下、手押し車として歩行車を用いて説明するが、本発明は歩行車に限定されるものではなく、荷物の運搬などに使用する台車、乳幼児などの運搬に使用するベビーカーなどでもよい。
図2および図3は、この発明の実施の形態1に係る歩行車1の説明図である。
歩行車1は、ハンドル2、フレーム3、シート4、前輪(車輪)5a,5b、後輪(車輪)6a,6b、速度検出センサ7(不図示)およびモータ8a(不図示),モータ8bなどを備える。図1において、モータ8a(不図示)は、歩行車1の進行方向に対して右側の後輪6aに取り付けられる。
以下、歩行車1の進行方向を「前後方向」とし、図3に示すように、歩行車1が旋回する方向を「旋回方向」とする。また、「旋回方向」のうち、進行方向に対し左への旋回を「左回り方向」、進行方向に対し右への旋回を「右回り方向」とする。
速度検出センサ7(速度検出部)は、歩行車1の前後方向の移動速度を検出し、制御部10に出力する。速度検出センサ7は、ハンドル2、フレーム3など歩行車の速度を検出できる部位に取り付けられるが、後述する制御部10またはモータ制御部20と一体に構成されてもよい。また、速度検出センサ7には、加速度センサ、超音波センサ、レーザセンサなどが用いられる。なお、速度を直接検出する構成でなくても、演算により速度が算出される構成であれば用いることができる。
モータ8a,8bは、後輪6a,6bに取り付けられる。また、モータ制御部20(回転制御部)により制御され、後輪6a,6bに伝達する回転トルクを発生する。
図4は、この発明の実施の形態1に係る歩行車1の構成を示すブロック図である。
制御部10は、歩行車1の任意の位置に搭載され、取込部11、演算部12、指令部13を備えて構成される。
取込部11は、速度検出センサ7より出力される移動速度を取り込む。
演算部12は、取込部11により取り込まれた移動速度を閾値と比較し、所定の条件を満たす場合に、移動速度に基づいて、モータ8a,8bに発生させる回転トルクを演算する。
指令部13は、演算部12の演算により算出された回転トルクの発生を指令する信号をモータ制御部20に送信する。
制御部10の各部の機能は、それぞれハードウェアにより構成されるが、メモリに格納されたプログラムをCPUなどが実行するように構成してもよい。なお、同様の機能を有するものであれば他の手段により構成してもよい。
モータ制御部20(回転制御部)は、モータドライバ、モータコントローラーなどで構成され、指令部13より送信された指令信号を受信し、後輪6a,6bに取り付けられたモータ8a,8bを制御する。モータ制御部20は、モータ8a,8bを介して後輪6a,6bの回転を制御する。なお、モータ制御部20は、モータ8a,8bと一体または別体に構成され、歩行車1に搭載される。
次に、動作について説明する。
図5は、実施の形態1に係る歩行車1の動作を説明するフローチャートである。
図5を参照しながら速度検出センサ7より出力される移動速度に基づく動作について説明する。
電源が投入されると、取込部11が速度検出センサ7より出力される移動速度vを取り込む(ステップST1)。
次いで、演算部12が、取込部11により取り込まれた移動速度vを閾値と比較し、移動速度vが閾値より大きいか否かを判定する(ステップST2)。閾値には前進方向への移動に対する閾値vth_fと、後退方向への移動に対する閾値vth_bとがある。移動速度vは、前進方向への移動の場合にはプラス値で出力され、後退方向への移動の場合には、マイナス値で出力される。よって、移動速度vが下記式(1)の関係を満たす場合、移動速度vが閾値より大きいと判定される。
v>vth_f または v<vth_b (1)
ステップST2において、移動速度vが閾値より大きいと判定された場合(ステップST2の“YES”の場合)、演算部12は移動速度vに基づいて、歩行車1が移動する方向と逆方向に、モータ8a,8bに発生させる回転トルクを演算する(ステップST3)。
次いで、指令部13が、演算部12の演算により算出された回転トルクの発生を指令する信号をモータ制御部20に送信する(ステップST4)。
ステップ2において、移動速度vが閾値より小さいと判定された場合(ステップST2の“NO”の場合)、ステップST1に戻る。
上記ステップST1〜ステップST4は一定の周期で繰り返される。
ステップST2で使用される閾値は、歩行車1が、利用者の転倒などのおそれがある移動をした際に、移動速度vが閾値より大きくなるように予め設定される値である。
閾値は一定の値に限られるものではなく、例えば、男性、女性、子供など利用者の体格や、利用者の状態に合わせて、所定範囲の値の中から設定される。また、同一の歩行車1を複数の利用者が使用する場合を想定し、閾値を適宜変更可能に構成してもよい。
モータ制御部20は、指令部13より受信した指令信号に基づいて、モータ8a,8bに回転トルクを発生させる。このように、移動速度vが閾値より大きい場合のみに回転トルクを発生させるため、歩行車1の通常の利用では利用者に負荷がかからず、負担とならない。
次に、ステップST3における回転トルクの演算について説明する。
図2を参照しながら、移動速度vに基づく回転トルクの演算について説明する。
図2に示すように、後輪6a,6bに発生させる制動のための回転トルクをTR,TLとすると、TRおよびTLは、後輪6a,6bで発生する推進力FR,FL、および後輪6a,6bの半径rを用いて下記式(2)のように表される。

Figure 2017035983
また、歩行車1全体の推進力をFとすると、FRおよびFLは速度検出センサ7より出力される移動速度vを用いて下記式(3)のように表される。

Figure 2017035983
上記式(2)および上記式(3)より下記式(4)が導出される。

Figure 2017035983
は、摩擦などによる回転トルクの伝達損失を補うために適宜設定される定数である。G,Gは、機器や利用者の特性に応じて適宜設定される定数である。
速度検出センサ7より出力される移動速度vが閾値より大きい場合、演算部12で上記式(4)により算出された回転トルクの発生を指令する信号を、指令部13がモータ制御部20に送信する。
演算部12は、上記式(4)などの計算にしたがって、回転トルクTR,TLを算出する。
また、上記式(3)の代わりに、下記式(5)または下記式(6)を用いてもよい。下記式(5)または下記式(6)を用いる場合、閾値を超えた分の移動速度に応じた値が回転トルクに加算される。

Figure 2017035983

Figure 2017035983
は、摩擦などによる回転トルクの伝達損失を補うために適宜設定される定数である。G,Gは、機器や利用者の特性に応じて適宜設定される定数である。
以上のように、この実施の形態1によれば、歩行車1の移動速度を検出する速度検出センサ7と、速度検出センサ7より出力される移動速度を閾値と比較し、車輪6a,6bの回転に対する制御を決定する制御部10と、制御部10が決定した制御に基づき、車輪6a,6bの回転を制御するモータ制御部20とを備えるように構成したので、利用者が負荷を受けずに利用することができるとともに、転倒などのおそれが発生した場合に制動力が働く歩行車1を提供することができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、速度検出センサ7が歩行車1の前後方向の移動速度を検出する構成について説明したが、実施の形態2では、速度検出センサ7が旋回方向の旋回角速度を検出する構成について説明する。なお、実施の形態1に係る歩行車1と同様の構成については重複した説明を省略する。
実施の形態2では、速度検出センサ7は、歩行車1の旋回方向の旋回角速度を検出し、制御部10に出力する。速度検出センサ7にはジャイロセンサなどが用いられる。
また、演算部12は、取込部11により取り込まれた旋回角速度を閾値と比較し、所定の条件を満たす場合に、旋回角速度に基づいてモータ8a,8bに発生させる回転トルクを演算する。
次に、動作について説明する。
図6は、実施の形態2に係る歩行車1の動作を説明するフローチャートである。
図6を参照しながら速度検出センサ7より出力される旋回角速度に基づく動作について説明する。
電源が投入されると、取込部11が速度検出センサ7より出力される旋回角速度Ωを取り込む(ステップST21)。
次いで、演算部12が、取込部11により取り込まれた旋回角速度Ωを閾値と比較し、旋回角速度Ωが閾値より大きいか否かを判定する(ステップST22)。閾値には左回り方向への旋回に対する閾値ΩLと、右回り方向への旋回に対する閾値ΩRとがある。旋回角速度Ωは、左回り方向への旋回ではプラス値で出力され、右回り方向への旋回ではマイナス値で出力される。よって、旋回角速度Ωが下記式(7)の関係を満たす場合、旋回角速度Ωが閾値より大きいと判定される。
Ω>ΩL または Ω<ΩR (7)
ステップST22において、旋回角速度Ωが閾値より大きいと判定された場合(ステップST22の“YES”の場合)、演算部12は旋回角速度Ωに基づいて、モータ8a,8bに発生させる回転トルクを演算する(ステップST23)。
次いで、指令部13が、演算部12の演算により算出された回転トルクの発生を指令する信号をモータ制御部20に送信する(ステップST24)。
ステップ22において、旋回角速度Ωが閾値より小さいと判定された場合(ステップST22の“NO”の場合)、ステップST21に戻る。
上記ステップST21〜ステップST24は一定の周期で繰り返される。
ステップST22で使用される閾値は、実施の形態1と同様に予め設定される値である。閾値は一定の値に限られるものではなく、所定範囲の値の中から設定される。また、閾値を適宜変更可能に構成してもよい。
モータ制御部20は、指令部13より受信した指令信号に基づいて、モータ8a,8bに回転トルクを発生させる。このように、旋回角速度Ωが閾値より大きい場合のみに回転トルクを発生させるため、歩行車1の通常の利用では利用者に負荷がかからず、負担とならない。
次に、ステップST23における回転トルクの演算について説明する。
図3を参照しながら、旋回角速度Ωに基づく回転トルクの演算について説明する。
図3に示すように、旋回方向に発生する回転モーメントをM、後輪6a,6bの間の距離をPとすると、下記式(8)が導出される。

Figure 2017035983
上記式(8)において、FL=FRの場合、下記式(9)が導出される。

Figure 2017035983
また、回転モーメントMは、速度検出センサ7より出力される旋回角速度Ωを用いて下記式(10)のように表される。

Figure 2017035983
上記式(2)、上記式(9)および上記式(10)より下記式(11)が導出される。

Figure 2017035983
は、摩擦などによる回転トルクの伝達損失を補うために適宜設定される定数である。G,Gは、機器や利用者の特性に応じて適宜設定される定数である。
速度検出センサ7より出力される旋回角速度Ωが閾値より大きい場合、演算部12で上記式(11)により算出された回転トルクの発生を指令する信号を、指令部13がモータ制御部20に送信する。
演算部12は、上記式(11)などの計算にしたがって、回転トルクTR,TLを算出する。
また、上記式(10)の代わりに、下記式(12)または下記式(13)を用いてもよい。下記式(12)または下記式(13)を用いる場合、閾値を超えた分の旋回角速度に応じた値が回転トルクに加算される。

Figure 2017035983

Figure 2017035983
は、摩擦などによる回転トルクの伝達損失を補うために適宜設定される定数である。G,Gは、機器や利用者の特性に応じて適宜設定される定数である。
以上のように、この実施の形態2によれば、歩行車1の旋回角速度を検出する速度検出センサ7と、速度検出センサ7より出力される旋回角速度を閾値と比較し、車輪6a,6bの回転に対する制御を決定する制御部10と、制御部10が決定した制御に基づき、車輪6a,6bの回転を制御するモータ制御部20とを備えるように構成したので、利用者が負荷を受けずに利用することができるとともに、転倒などのおそれが発生した場合に制動力が働く歩行車1を提供することができる。
また、実施の形態1,2では、速度検出センサ7より出力される移動速度v、旋回角速度Ωに基づき、モータ8a,8bに回転トルクを発生させるか否かを判定する構成について説明したが、これに限定されるものではなく、移動加速度dv/dt、旋回角加速度dΩ/dtに基づいて、モータ8a,8bに回転トルクを発生させるか否かを判定するように構成してもよい。その場合、速度または角速度の微分値に基づいて回転トルクを発生させるか否かが判定される。
また、実施の形態1では加速度センサなどを用いて前後方向の移動速度vを検出し、実施の形態2ではジャイロセンサなどを用いて旋回方向の旋回角速度Ωを検出する構成について説明したが、車輪にエンコーダ、タコメータなどを設置し、移動速度v、旋回角速度Ωを検出するように構成してもよい。また、既存の画像処理の技術を用いて移動速度v、旋回角速度Ωを検出するように構成してもよい。
また、実施の形態1および実施の形態2に基づき、加速度センサなどとジャイロセンサなどを組み合わせ、前後方向の移動速度vおよび旋回方向の旋回角速度Ωを検出するように速度検出センサ7を構成してもよい。その場合、速度検出センサ7により検出された移動速度vおよび旋回角速度Ωが制御部10に出力される。
演算部12は、速度検出センサ7より出力される移動速度vおよび旋回角速度Ωに基づいて、モータ8a,8bに発生させる回転トルクを演算する。
このとき、移動速度vおよび旋回角速度Ωが同じタイミングで閾値より大きくなった場合、演算部12は、移動速度vに基づき算出された回転トルクと旋回角速度Ωに基づき算出された回転トルクとを合算し、指令部13が、合算された回転トルクの発生を指令する信号をモータ制御部20に送信する。
実施の形態3.
実施の形態1では、速度検出センサ7が歩行車1の前後方向の移動速度を検出し、実施の形態2では、速度検出センサ7が歩行車1の旋回方向の旋回角速度を検出する構成について説明したが、実施の形態3では、速度検出センサ7が後輪6a,6bの回転角速度を検出する構成について説明する。なお、以下では、速度検出センサ7が後輪6a,6bに取り付けられる場合について説明するが、これに限定されるものではない。また、実施の形態1,2に係る歩行車1と同様の構成については重複した説明を省略する。
図7は、実施の形態3に係る歩行車1の説明図である。図7に示すように、後輪6a,6bの回転角速度をωR,ωLとし、後輪6a,6bに発生させる回転トルクをtR,tLとする。また、後輪6a,6bの回転角速度ωR,ωLを検出する速度検出センサ7にはエンコーダが用いられる。
図8は、実施の形態3に係る歩行車1の動作を説明するフローチャートである。
まず、図8(a)を参照しながら速度検出センサ7より出力される回転角速度ωRに基づく動作について説明する。
電源が投入されると、取込部11が速度検出センサ7より出力される回転角速度ωRを取り込む(ステップST31)。
次いで、演算部12が、取込部11により取り込まれた回転角速度ωRを閾値と比較し、回転角速度ωRが閾値より大きいか否かを判定する(ステップST32)。ここで、回転角速度ωRは、前進方向への車輪の回転ではプラス値、後退方向への車輪の回転ではマイナス値となる。前進方向側(プラス値側)の閾値をωth_R_cw、後退方向側(マイナス値側)の閾値をωth_R_ccwとすると、回転角速度ωRが下記式(14)の関係を満たす場合に、回転角速度ωRが閾値より大きいと判定される。
ωR>ωth_R_cw または ωR<ωth_R_ccw (14)
ステップST32において、回転角速度ωRが閾値より大きいと判定された場合(ステップST32の“YES”の場合)、演算部12は回転角速度ωRに基づいて、歩行車1が移動する方向と逆方向に、モータ8aに発生させる回転トルクを演算する(ステップST33)。
次いで、指令部13が、演算部12の演算により算出された回転トルクの発生を指令する信号をモータ制御部20に送信する(ステップST34)。
ステップ32において、回転角速度ωRが閾値より小さいと判定された場合(ステップST32の“NO”の場合)、ステップST31に戻る。
上記ステップST31〜ステップST34は一定の周期で繰り返される。
次に、図8(b)を参照しながら速度検出センサ7より出力される回転角速度ωLに基づく動作について説明する。
電源が投入されると、取込部11が速度検出センサ7より出力される回転角速度ωLを取り込む(ステップST31a)。
次いで、演算部12が、取込部11により取り込まれた回転角速度ωLを閾値と比較し、回転角速度ωLが閾値より大きいか否かを判定する(ステップST32a)。ここで、回転角速度ωLは、前進方向への車輪の回転ではプラス値、後退方向への車輪の回転ではマイナス値となる。前進方向側(プラス値側)の閾値をωth_L_cw、後退方向側(マイナス値側)の閾値をωth_L_ccwとすると、回転角速度ωLが下記式(15)の関係を満たす場合に、回転角速度ωLが閾値より大きいと判定される。
ωL>ωth_L_cw または ωL<ωth_L_ccw (15)
ステップST32aにおいて、回転角速度ωLが閾値より大きいと判定された場合(ステップST32aの“YES”の場合)、演算部12は回転角速度ωLに基づいて、歩行車1が移動する方向と逆方向に、モータ8bに発生させる回転トルクを演算する(ステップST33a)。
次いで、指令部13が、演算部12の演算により算出された回転トルクの発生を指令する信号をモータ制御部20に送信する(ステップST34a)。
ステップ32aにおいて、回転角速度ωLが閾値より小さいと判定された場合(ステップST32aの“NO”の場合)、ステップST31aに戻る。
上記ステップST31a〜ステップST34aは一定の周期で繰り返される。
ステップST33、ステップST33aにおいて、演算部12は、回転角速度ωR,ωLに基づいて、モータ8a,8bに発生させる回転トルクtR,tLを下記式(16)により算出する。

Figure 2017035983
,G10は、摩擦などによる回転トルクの伝達損失を補うために適宜設定される定数である。G,G,G11,G12は、機器や利用者の特性に応じて適宜設定される定数である。
速度検出センサ7より出力される回転角速度ωRまたはωLが閾値より大きい場合には、上記式(15)により算出された回転トルクtRまたはtLの発生を指令する信号が、指令部13からモータ制御部20に送信される。そして、モータ制御部20は、指令部13より当該信号を受信し、モータ8a,8bに回転トルクtR,tLを発生させる。
演算部12は、上記式(16)などの計算にしたがって、回転トルクtR,tLを算出する。
また、ステップST32、ステップST32aで使用される閾値は、実施の形態1,2と同様に予め設定される値であるが、一定の値に限られるものではなく、所定範囲の値の中から設定される。また、閾値を適宜変更可能に構成してもよい。また、閾値ωth_R_cw(ωth_R_ccw)より小さな値である閾値ωth_R’_cw(ωth_R’_ccw)をさらに設定し、回転角速度ωRが閾値ωth_R_cw(ωth_R_ccw)より大きいと判定され、モータ8aに回転トルクtRを発生させている状態において、演算部12が、回転角速度ωRと閾値ωth_R’_cw(ωth_R’_ccw)を比較するように構成してもよい。そして、回転角速度ωRが閾値ωth_R_cw(ωth_R_ccw)以下であっても、閾値ωth_R’_cw(ωth_R’_ccw)より大きい場合には、モータ8aに回転トルクtRを発生させるように構成する。
これは、回転角速度ωRが閾値ωth_R_cw(ωth_R_ccw)付近の値である場合に、制動力のON/OFFが繰り返されるのを防ぐための構成例である。なお、回転角速度ωLに対する閾値ωth_L_cw(ωth_L_ccw)についても上記と同様に構成することができる。
また、上記説明では、速度検出センサ7より出力される回転角速度ωR,ωLに基づき、モータ8a,8bに回転トルクを発生させるか否かを判定する構成について説明したが、これに限定されるものではなく、回転角加速度dωR/dt,dωL/dtに基づいて、モータ8a,8bに回転トルクを発生させるか否かを判定するように構成してもよい。その場合、回転角速度の微分値に基づいて回転トルクを発生させるか否かが判定されることになる。
また、上記説明では、後輪6a,6bの回転角速度を検出する速度検出センサ7としてエンコーダを用いるものを示したが、これに限定されるものではなく、タコメータ、ポテンショメータなどを用いてもよい。
以上のように、この実施の形態3によれば、車輪6a,6bの回転角速度を検出する速度検出センサ7と、速度検出センサ7より出力される回転角速度を閾値と比較し、車輪6a,6bの回転に対する制御を決定する制御部10と、制御部10が決定した制御に基づき、車輪6a,6bの回転を制御するモータ制御部20とを備えるように構成したので、利用者が負荷を受けずに利用することができるとともに、転倒などのおそれが発生した場合に制動力が働く歩行車1を提供することができる。
実施の形態4.
実施の形態1〜3では、速度と閾値の比較結果に基づき、モータ8a,8bに発生させる回転トルクを制御する構成について説明したが、実施の形態4では、速度と閾値の比較結果に基づき、モータ8a,8bの回転にその場停止の制動をかけるか否かを制御する構成について説明する。なお、実施の形態1に係る歩行車1と同様の構成については重複した説明を省略する。
図9は、実施の形態4に係る歩行車1の動作を説明するフローチャートである。
図9を参照しながら実施の形態4に係る歩行車1の動作について説明する。なお、実施の形態4に係る歩行車1では、負荷トルクの検出が可能なモータ8a,8bを用いる。
まず、電源が投入されると、取込部11が速度検出センサ7より出力される移動速度vを取り込む(ステップST41)。
次いで、演算部12が、取込部11により取り込まれた移動速度vの絶対値を閾値t[m/s]と比較し、閾値未満であるか否かを判定する(ステップST42)。
ステップST42において、移動速度vの絶対値が閾値未満であると判定された場合(ステップST42の“YES”の場合)は、ステップST41に戻る。
ステップST42において、移動速度vの絶対値が閾値未満でないと判定された場合(ステップST42の“NO”の場合)、演算部12は、モータ8a,8bの回転方向を記憶する(ステップST43)。
次いで、指令部13が、モータ8a,8bに対してその場位置制御を行う指令位置を現在位置に更新し、現在位置での位置制御を指令する信号をモータ制御部20に送信する(ステップST44)。モータ制御部20は、指令部13より受信した現在位置での位置制御を指令する信号に基づいて、モータ8a,8bの回転に制動をかける。これにより、後輪6a,6bの回転が停止する。
次いで、演算部12は、「モータ8a,8bの負荷トルクが閾値T[Nm]より大きく、かつ、負荷トルクの働く方向がステップST43で記憶したモータの回転方向と逆方向」であるか否かを判定する(ステップST45)。「モータ8a,8bの負荷トルクが閾値T[Nm]より大きく、かつ、負荷トルクの働く方向がステップST43で記憶したモータの回転方向と逆方向」である場合、利用者が歩行車1をスイッチバックさせ、歩行車1の制動を解除しようとしていると判定する。よって、ステップST45において、演算部12により、「モータ8a,8bの負荷トルクが閾値T[Nm]より大きく、かつ、負荷トルクの働く方向がステップST43で記憶したモータの回転方向と逆方向」であると判定された場合(ステップST45の“YES”の場合)、指令部13は、モータ8a,8bの制動の解除を指令する信号をモータ制御部20に送信する(ステップST46)。モータ制御部20は、指令部13より受信したモータ8a,8bの制動の解除を指令する信号に基づいて、モータ8a,8bの回転に対する制動を解除する。これにより、後輪6a,6bの回転が自由になる。
ステップST45において、「モータ8a,8bの負荷トルクが閾値T[Nm]より大きく、かつ、負荷トルクの働く方向がステップST43で記憶したモータの回転方向と逆方向」でないと判定された場合(ステップST45の“NO”の場合)は、ステップST45の処理が繰り返される、またはステップST44に戻る。図9はステップST45の処理が繰り返される場合について記載している。
ステップST44に戻る場合、現在位置での位置制御を指令する信号が逐次更新されることになるが、当該信号は制御周期分遅れて送信されるため、実質的にモータ8a,8bには制動がかかる。これにより、後輪6a,6bの回転は停止する。
上記ステップST41〜ステップST46は一定の周期で繰り返される。
以上のように、この実施の形態4によれば、歩行車1の移動速度を検出する速度検出センサ7と、速度検出センサ7より出力される移動速度を閾値と比較し、車輪6a,6bの回転に対する制御を決定する制御部10と、制御部10が決定した制御に基づき、車輪6a,6bの回転を制御するモータ制御部20とを備え、移動速度が閾値未満でない場合に、車輪6a,6bの回転を停止させるように構成したので、利用者が負荷を受けずに利用することができるとともに、転倒などのおそれが発生した場合には制動力が働く歩行車1を提供することができる。
また、実施の形態4に係る歩行車1において、モータ8a,8bが位置制御モードとアシスト動作モード(パワーアシスト)を切り替えながら作動する、別の構成例について以下に説明する。
図10は、実施の形態4に係る歩行車1の別の構成例の動作を説明するフローチャートである。
以下、図10を参照しながら動作について説明する。
まず、電源が投入されると、取込部11が速度検出センサ7より出力される移動速度vを取り込む(ステップST51)。
次いで、演算部12が、取込部11により取り込まれた移動速度vの絶対値を閾値t[m/s]と比較し、閾値未満であるか否かを判定する(ステップST52)。
ステップ52において、移動速度vの絶対値が閾値未満であると判定された場合(ステップST52の“YES”の場合)、モータ8a,8bはアシスト動作モードとなり(ステップST58)、再びステップST51に戻る。
ステップST52において、演算部12により移動速度vの絶対値が閾値未満でないと判定された場合(ステップST52の“NO”の場合)、演算部12は、モータ8a,8bの回転方向を記憶する(ステップST53)。
次いで、指令部13が、モータ8a,8bを位置制御モードに切り替える信号をモータ制御部20に送信する(ステップST54)。モータ制御部20は、指令部13より受信した位置制御モードに切り替える信号に基づいて、モータ8a,8bを位置制御モードに切り替える。
次いで、指令部13が、モータ8a,8bに対して位置制御を行う指令位置を現在位置に更新し、現在位置での位置制御を指令する信号をモータ制御部20に送信する(ステップST55)。モータ制御部20は、指令部13より受信した現在位置での位置制御を指令する信号に基づいて、モータ8a,8bの回転に制動をかける。これにより、後輪6a,6bの回転が停止する。
次いで、演算部12は、「モータ8a,8bの負荷トルクが閾値T[Nm]より大きく、かつ、負荷トルクの働く方向がステップST43で記憶したモータの回転方向と逆方向」であるか否かを判定する(ステップST56)。
ステップST56において、演算部12により、「モータ8a,8bの負荷トルクが閾値T[Nm]より大きく、かつ、負荷トルクの働く方向がステップST53で記憶したモータの回転方向と逆方向」であると判定された場合(ステップST56の“YES”の場合)、指令部13は、モータ8a,8bをアシスト動作モードに切り替える信号をモータ制御部20に送信する(ステップST57)。モータ制御部20は、指令部13より受信したモータ8a,8bをアシスト動作モードに切り替える信号に基づいて、モータ8a,8bをアシスト動作モードに切り替える。これにより、位置制御モードによるモータ8a,8bの回転に対する制動が解除され、後輪6a,6bの回転が自由になる。
ステップST56において、「モータ8a,8bの負荷トルクが閾値T[Nm]より大きく、かつ、負荷トルクの働く方向がステップST53で記憶したモータの回転方向と逆方向」でないと判定された場合(ステップST56の“NO”の場合)は、ステップST55に戻る、またはステップST56の処理が繰り返される。図10はステップST55に戻る場合について記載している。そして、指令部13からモータ制御部20に、現在位置での位置制御を指令する信号が送信される。
ステップST55に戻る場合、現在位置での位置制御を指令する信号が逐次更新されることになるが、当該信号は制御周期分遅れて送信されるため、実質的にモータ8a,8bには制動がかかる。これにより、後輪6a,6bの回転が停止する。
上記ステップST51〜ステップST58は一定の周期で繰り返される。
よって、実施の形態4を上記のような別の構成例とした場合でも、利用者が負荷を受けずに利用することができるとともに、転倒などのおそれが発生した場合には制動力が働く歩行車1を提供することができる。
また、実施の形態4では、速度検出センサ7より検出される移動速度を用いて判定を行う構成について説明したが、これに限定されるものではなく、加速度を用いて判定を行うように構成してもよい。
また、実施の形態4では、転倒抑制動作を行うか否かを判定する際の移動速度vの閾値をt[m/s]、転倒抑制解除のために必要なモータ8a,8bの負荷トルクの閾値をT[Nm]として説明したが、tおよびTは、利用者の身体特性、要望などに合わせて設定してもよい。
また、実施の形態4では、車輪の回転を停止させる構成としてモータを用いたが、これに限定されるものではなく、電磁ブレーキなどを用いてもよい。電磁ブレーキを用いる場合、電磁ブレーキが作動した際の車輪の回転方向を記憶するとともに、転倒抑制解除のために加えられる力の向き、およびその大きさを検出可能なセンサとして、例えば、トルクセンサなどを取り付ける。
また、実施の形態4では、モータ8a,8bに対して位置制御を行う指令位置を現在位置に更新し、現在位置での位置制御を指令する構成について説明したが、これに限定されるものではなく、モータ8a,8bに対する速度指令で速度が0[m/s]になるように指令する構成としてもよい。
また、実施の形態4では、実施の形態1と同様に速度検出センサ7が前後方向の移動速度を取り込み、当該移動速度と閾値を比較してモータ8a,8bの回転にその場停止の制動をかけるか否かを制御する構成について説明したが、これに限定されるものではなく、実施の形態2と同様に旋回角速度を取り込み、当該旋回角速度に対して設定されている閾値と比較するように構成してもよい。また、前後方向の移動速度と旋回角速度の両方を取り込み、閾値と比較するように構成してもよい。
また、実施の形態3と同様に、車輪の回転角速度を取り込み、当該回転角速度に対して設定されている閾値と比較するように構成してもよい。
また、実施の形態1〜3において、モータ8a,8bにアシスト動作モード(パワーアシスト)の機能を追加してもよい。この場合、坂道などを通過する際に補助力が得られる。
また、実施の形態1〜4では、モータ8a,8bが後輪6a,6bに取り付けられる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、前輪5a,5bに取り付けてもよい。また、前輪5a,5bおよび後輪6a,6bに取り付けてもよい。
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
1 歩行車(手押し車)
2 ハンドル
3 フレーム
4 シート
5a,5b 前輪(車輪)
6a,6b 後輪(車輪)
7 速度検出センサ(速度検出部)
8a,8b モータ
10 制御部
11 取込部
12 演算部
13 指令部
20 モータ制御部(回転制御部)

Claims (7)

  1. 速度を検出する速度検出部と、
    前記速度検出部より出力される前記速度を閾値と比較し、車輪の回転に対する制御を決定する制御部と、
    前記制御部が決定した制御に基づき、前記車輪の回転を制御する回転制御部と
    を備える手押し車。
  2. 前記制御部は、前記速度が前記閾値より大きい場合に、前記速度に基づいて回転トルクを演算し、前記回転トルクをモータに発生させることを特徴とする請求項1記載の手押し車。
  3. 前記速度検出部は、手押し車の移動速度を検出することを特徴とする請求項2記載の手押し車。
  4. 前記速度検出部は、手押し車の旋回角速度を検出することを特徴とする請求項2記載の手押し車。
  5. 前記速度検出部は、前記車輪の回転角速度を検出することを特徴とする請求項2記載の手押し車。
  6. 前記制御部は、前記旋回角速度に基づいて、左右一対の前記車輪に、互いに異なる向きの前記回転トルクを発生させることを特徴とする請求項4記載の手押し車。
  7. 前記速度検出部は、手押し車の移動速度を検出し、
    前記制御部は、前記移動速度が前記閾値未満でない場合に、前記車輪の回転を停止させることを特徴とする請求項1記載の手押し車。
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