JP2017033651A - 導電性フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】導電性フィルムを良好な生産性で製造できる、導電性フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に導電性層を形成する第一工程と、前記導電性層に複数の切れ目を形成する第二工程と、前記熱可塑性樹脂フィルムを延伸することにより、前記導電性層に形成された切れ目を広げて、メッシュ状の導電性層を得る第三工程と、を含む、導電性フィルムの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、導電性フィルムの製造方法に関する。
従来、メッシュ状の導電性層を備えた導電性フィルムが知られている(特許文献1及び2)。このような導電性フィルムは、通常、基材フィルムと、この基材フィルム上に形成された導電性層とを備える。この導電性フィルムは、導電性層が有する電磁波遮断能力を利用して、電磁波遮蔽材として用いることが提案されている。また、この導電性フィルムは、メッシュ状の導電性層に形成された開口が光を透過しうることを利用して、透明電極として用いることが提案されている。
さらに、エキスパンドメタル材に係る技術として、特許文献3のような技術が知られている。
特許第5648934号公報 特開平05−218673号公報 特開昭58−032529号公報
従来の導電性フィルムの製造方法としては、エッチングを利用した製造方法が提案されている。この製造方法では、基材フィルム上に導電性層を形成し、この導電性層にエッチング処理を施すことにより、開口に相当する導電性層の部分を除去して、メッシュ状の導電性層を有する導電性フィルムを得る。
また、別の製造方法としては、印刷法を利用した製造方法が提案されている。この製造方法では、基材フィルム上の所望の位置に導電性インキを印刷することにより、メッシュ状の導電性層を形成して、所望の導電性フィルムを得る。
ところが、従来の導電性フィルムの製造方法は、いずれも工程が複雑であるので、生産性に優れない。
本発明は前記の課題に鑑みて創案されたもので、導電性フィルムを容易に製造できる新たな製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂フィルム上に形成した導電性層に切れ目を形成し、熱可塑性樹脂フィルムの延伸によって前記切れ目を広げることによって、メッシュ状の導電性層を備える導電性フィルムを容易に製造できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は下記の通りである。
〔1〕 熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に導電性層を形成する第一工程と、
前記導電性層に複数の切れ目を形成する第二工程と、
前記熱可塑性樹脂フィルムを延伸することにより、前記導電性層に形成された切れ目を広げて、メッシュ状の導電性層を得る第三工程と、を含む、導電性フィルムの製造方法。
〔2〕 前記第二工程が、レーザー光によって前記導電性層に切れ目を形成することを含む、〔1〕記載の導電性フィルムの製造方法。
本発明の導電性フィルムの製造方法によれば、導電性フィルムを容易に製造できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る製造方法の第一工程で得られる複層フィルムの一部を拡大して模式的に示す平面図である。 図2は、図1に示す複層フィルムを、一点鎖線IIで示す平面で切った断面を拡大して模式的に示す断面図である。 図3は、本発明の一実施形態に係る製造方法の第二工程において導電性層に切れ目を形成された好適な例としての複層フィルムの一部を拡大して模式的に示す平面図である。 図4は、図3に示す複層フィルムを、一点鎖線IVで示す平面で切った断面を拡大して模式的に示す断面図である。 図5は、本発明の一実施形態に係る製造方法の第三工程において得られる好適な例としての導電性フィルムの一部を拡大して模式的に示す平面図である。 図6は、図5に示す導電性フィルムを、一点鎖線VIで示す平面で切った断面を拡大して模式的に示す断面図である。
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。
以下の説明において、要素の方向が「平行」及び「垂直」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
[1.導電性フィルムの製造方法の概要]
本発明の一実施形態に係る導電性フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に導電性層を形成する第一工程と;前記導電性層に複数の切れ目を形成する第二工程と;前記熱可塑性樹脂フィルムを延伸することにより、前記導電性層に形成された切れ目を広げて、メッシュ状の導電性層を得る第三工程と;を含む。
この製造方法によれば、熱可塑性樹脂フィルムと、前記熱可塑性樹脂フィルム上に形成されたメッシュ状の導電性層とを備える導電性フィルムが得られる。導電性層が導電性を有するので、前記の導電性フィルムは、導電性を有する。また、導電性層には、光を透過させうる複数の開口が形成されているので、通常、導電性フィルムは透明性を有する。
[2.熱可塑性樹脂フィルムの用意]
熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂のフィルムである。熱可塑性樹脂フィルムに含まれる熱可塑性樹脂は、通常、熱可塑性の重合体を含み、必要に応じて任意の成分を更に含む。
熱可塑性樹脂に含まれる重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の脂肪族オレフィン重合体;脂環式オレフィン重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド;ポリビニルアルコール;ポリカーボネート;ポリアリレート;セルロースエステル重合体;ポリエーテルスルホン;ポリスルホン;ポリアリルサルホン;ポリ塩化ビニル;棒状液晶ポリマー;スチレン又はスチレン誘導体の単独重合体、又は、スチレン又はスチレン誘導体と任意のモノマーとの共重合体を含むポリスチレン系重合体;スチレンなどの芳香族化合物と、ブタジエンやイソプレンなどの共役ジエンとの共重合体の水素化物(芳香族環の水素化物を含む);ポリアクリロニトリル;ポリメチルメタクリレート;あるいは、これらの多元共重合ポリマー、などが挙げられる。また、ポリスチレン系重合体の単量体としうる任意のモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、無水マレイン酸、メチルメタクリレート及びブタジエンが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
中でも、機械特性、耐熱性、耐湿性及び透明性に優れ、レーザー光によっては切断され難いことから、脂環式オレフィン重合体が好ましい。脂環式オレフィン重合体は、その重合体の構造単位が脂環式構造を有する重合体である。脂環式オレフィン重合体は、主鎖に脂環式構造を有する重合体、側鎖に脂環式構造を有する重合体、主鎖及び側鎖に脂環式構造を有する重合体、並びに、これらの2以上の任意の比率の混合物としうる。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を有する脂環式オレフィン重合体が好ましい。
脂環式構造の例としては、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、及び不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造が挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、シクロアルカン構造が特に好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲であると、熱可塑性樹脂フィルムの機械強度、耐熱性及び成形性が高度にバランスされる。
脂環式オレフィン重合体において、脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式オレフィン重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、熱可塑性樹脂フィルムの透明性及び耐熱性が良好となる。
脂環式オレフィン重合体の中でも好ましいものとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及び、これらの水素化物等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体は、透明性及び成形性が良好なため、特に好適である。
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの重合体としては、例えば、特開2002−321302号公報等に開示されている重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適である。
ノルボルネン構造を有する単量体の例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)を挙げることができる。ここで、置換基の例としては、アルキル基、アルキレン基、及び極性基を挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
極性基の例としては、ヘテロ原子、及びヘテロ原子を有する原子団が挙げられる。ヘテロ原子の例としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子が挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、アミド基、イミド基、ニトリル基、及びスルホン酸基が挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体の例としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体が挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体は、例えば、単量体を開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素原子数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;並びに1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエンが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体は、例えば、単量体を付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
上述した開環重合体及び付加重合体の水素添加物は、例えば、これらの開環重合体及び付加重合体の溶液において、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む水素添加触媒の存在下で、炭素−炭素不飽和結合を、好ましくは90%以上水素添加することによって製造しうる。
ノルボルネン系重合体の中でも、構造単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの構造単位の量が、ノルボルネン系重合体の構造単位全体に対して90重量%以上であり、かつ、Xの割合とYの割合との比が、X:Yの重量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような重合体を用いることにより、熱可塑性樹脂フィルムを、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れるものにできる。
熱可塑性樹脂に含まれる重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重合体の重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、熱可塑性樹脂フィルムの機械的強度および成型加工性が高度にバランスされ好適である。
熱可塑性樹脂に含まれる重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3.5以下である。
ここで、前記の重量平均分子量及び数平均分子量は、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリイソプレンまたはポリスチレン換算の値として測定しうる。
熱可塑性樹脂における重合体の割合は、好ましくは50重量%〜100重量%、より好ましくは70重量%〜100重量%、特に好ましくは90重量%〜100重量%である。重合体の割合が前記範囲にあることにより、熱可塑性樹脂フィルムが高い耐熱性及び透明性を得られる。
熱可塑性樹脂は、前記の重合体に加えて、更に任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、強化剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機又は無機の充填剤、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止剤、抗菌剤、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgは、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは175℃以下、特に好ましくは165℃以下である。熱可塑性樹脂のガラス転移温度が、前記範囲の下限値以上であると高温環境下における熱可塑性樹脂フィルムの耐久性を高めることができ、また、前記範囲の上限値以下であると熱可塑性樹脂フィルムの製造を容易に行える。
熱可塑性樹脂フィルムは、1層のみを有する単層構造のフィルムであってもよく、複数の層を備える複層構造のフィルムであってもよい。
熱可塑性樹脂フィルムは、枚葉のフィルムであってもよく、長尺のフィルムであってもよい。中でも、ロールトゥロール法を用いて高い生産効率で導電性フィルムを製造する観点では、熱可塑性樹脂フィルムとしては長尺のフィルムが好ましい。
第三工程において延伸される以前において、熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、特に好ましくは30μm以下である。熱可塑性樹脂フィルムの厚みが、前記範囲の下限値以上であることにより、熱可塑性樹脂フィルムの機械的強度を高められるので、第三工程での延伸による熱可塑性樹脂フィルムの破損を抑制でき、また、前記範囲の上限値以下であることにより、製造される導電性フィルムの厚みを薄くできる。
熱可塑性樹脂フィルムの製造方法に制限は無い。熱可塑性樹脂フィルムは、例えば、熱可塑性樹脂をフィルムの形状に成形する工程を含む製造方法により、製造しうる。熱可塑性樹脂の成形方法としては、例えば、溶融成形法及び溶液流延法が挙げられる。溶融成形法の例としては、溶融押し出しにより成形する溶融押出法、並びに、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、及び延伸成形法が挙げられる。これらの方法の中でも、機械強度及び表面精度に優れた熱可塑性樹脂フィルムを得る観点から、溶融押出法、インフレーション成形法及びプレス成形法が好ましい。その中でも特に、残留溶媒の量を減らせること、並びに、効率良く簡単な製造が可能なことから、溶融押出法が特に好ましい。また特に、溶融押出法を用いて製造された熱可塑性樹脂フィルムは、導電性層の形成のためにスパッタリング法等の形成方法を行う際に、熱可塑性樹脂フィルムからのアウトガスを少なくできるので、導電性層の良好な形成が可能である。好適な成形方法としては、例えば、特開平3−223328号公報、特開2000−280315号公報等に開示されている方法が挙げられる。
溶融押出法では、通常、熱可塑性樹脂を溶融させ、その溶融樹脂をダイスから押し出すことにより、フィルム状に成形する。この際、ダイスを備える押出機における熱可塑性樹脂の溶融温度は、好ましくはTg+80℃以上、より好ましくはTg+100℃以上であり、好ましくはTg+180℃以下、より好ましくはTg+150℃以下である。ここでTgは、熱可塑性樹脂のガラス転移温度を表す。押出機での熱可塑性樹脂の溶融温度が、前記範囲の下限値以上であると、熱可塑性樹脂の流動性を十分に高めることができ、前記範囲の上限値以下であると、熱可塑性樹脂フィルムの製造時における熱可塑性樹脂の劣化を防止することができる。
通常、ダイスから押し出されたフィルム状の溶融樹脂は、冷却ロールに密着させる。溶融樹脂を冷却ロールに密着させる方法は、特に制限されず、例えば、エアナイフ方式、バキュームボックス方式、静電密着方式などが挙げられる。
冷却ロールの数は特に制限されないが、好ましくは2本以上である。また、冷却ロールの配置方法としては、例えば、直線型、Z型、L型などが挙げられるが特に制限されない。またダイスから押出された溶融樹脂の冷却ロールへの通し方も特に制限されない。
通常、冷却ロールの温度により、押出されたフィルム状の樹脂の冷却ロールへの密着具合が変化する傾向がある。冷却ロールの温度を上げると密着は良好になるが、温度を上げすぎるとフィルム状の樹脂が冷却ロールから剥がれ難くなる傾向がある。そのため、冷却ロール温度は、好ましくはTg+30℃以下、さらに好ましくはTg−5℃以下であり、好ましくはTg−45℃以上である。
また、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、上述したように熱可塑性樹脂をフィルムの形状に成形する工程に加えて、任意の工程を含みうる。例えば、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、得られた熱可塑性樹脂フィルムを延伸する工程を含んでいてもよい。また、例えば、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、得られた熱可塑性樹脂フィルムの表面に、コロナ処理、プラズマ処理、薬品処理、任意の塗工液の塗工処理、等の表面処理を施す工程を含んでいてもよい。
[3.第一工程]
図1は、本発明の一実施形態に係る製造方法の第一工程で得られる複層フィルム10の一部を拡大して模式的に示す平面図である。また、図2は、図1に示す複層フィルム10を、一点鎖線IIで示す平面で切った断面を拡大して模式的に示す断面図である。
第一工程では、図1及び図2に示すように、熱可塑性樹脂フィルム100の表面100Uに、導電性層200を形成する。導電性層200は、熱可塑性樹脂フィルム100の両方の表面100U及び100Dに形成してもよいが、透明性の高い導電性フィルムを得るためには、一方の表面100Uに形成することが好ましい。また、導電性層200は、熱可塑性樹脂フィルム100の表面100Uに、任意の層を介して間接的に形成してもよいが、導電性フィルムの厚みを薄くする観点から、任意の層を介することなく直接に形成することが好ましい。この第一工程により、熱可塑性樹脂フィルム100、及び、前記熱可塑性樹脂フィルム100の表面100Uに形成された導電性層200を備える複層フィルム10が得られる。
導電性層200は、通常、導電性を有する材料によって形成する。導電性を有する材料としては、例えば、導電性ポリマー;金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)等の金属;前記の金属を含む合金;銀ナノワイヤー、カーボンナノチューブ(CNT)等の無機又は有機の導電性ナノ材料;導電性ペースト;などが挙げられる。前記の導電性ペーストは、金属粒子、導電性ポリマー粒子等の導電性粒子と、この導電性粒子を保持するためのバインダとを含むペーストである。これらの中でも、導電性層200を形成するための材料としては、高い導電性を有することから金属が好ましく、優れた展性を有することから銅が特に好ましい。また、導電性層200を形成するための材料としては、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
導電性層200の形成方法としては、例えば、化学蒸着法、物理蒸着法等の蒸着法;スパッタリング法;メッキ法;塗布法;印刷法;などが挙げられる。また、導電性を有する材料を含むフィルム(例えば、導電性ポリマーフィルム、金属箔等)を、熱可塑性樹脂フィルム100の表面100Uに貼り合わせる方法によって、導電性層200を形成してもよい。
第三工程で延伸される以前において、導電性層200の厚みは、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。導電性層200の厚みが、前記範囲の下限値以上であることにより、第三工程での延伸による導電性層200の破損を抑制でき、また、前記範囲の上限値以下であることにより、製造される導電性フィルムの厚みを薄くできる。
[3.第二工程]
第一工程で形成された導電性層200は、通常、熱可塑性樹脂フィルム100の面内方向において連続している。ここで、導電性層200が連続しているとは、導電性層200が開口及び切れ目等の物理的断裂を有することなく繋がっている状態を表す。第二工程では、このような導電性層200に、複数の切れ目を形成する。これらの切れ目の具体的な配置は、第三工程での延伸によって導電性層200の平面形状がメッシュ状となりうるように、設定される。以下、切れ目210の配置の好適な例を示す。
図3は、本発明の一実施形態に係る製造方法の第二工程において導電性層200に切れ目210を形成された好適な例としての複層フィルム10の一部を拡大して模式的に示す平面図である。また、図4は、図3に示す複層フィルム10を、一点鎖線IVで示す平面で切った断面を拡大して模式的に示す断面図である。
図3及び図4に示すように、好適な例においては、切れ目210は、いずれも、熱可塑性樹脂フィルム100の表面100Uに平行な一方向Xに延在する線分形状に形成される。また、これらの切れ目210は、いずれも、通常は同じ形状及び同じ寸法で形成される。
好適な例において、導電性層200には、方向Xに断続的に並んだ切れ目210の群211、及び、方向Xに断続的に並んだ切れ目210の群212が形成される。各郡211及び212に含まれる切れ目210は、いずれも、方向Xにおいて一定の間隔S210を空けて形成されている。また、群211に含まれる切れ目210の位置と、群212に含まれる切れ目210の位置とは、方向Xにおける切れ目210のピッチP210(即ち、切れ目210の長さL210及び間隔S210の合計)の半分だけ、方向Xにずれている。そして、このような切れ目210の群211及び切れ目210の群212は、方向Yに等間隔で交互に形成されている。ここで、方向Yは、熱可塑性樹脂フィルム100の表面100Uに平行で且つ方向Xに交差する方向を示し、特に方向Xに垂直な方向が好ましい。本実施形態では、方向Yが、熱可塑性樹脂フィルム100の表面100Uに平行で且つ方向Xに垂直な方向である例を示して、説明する。
切れ目210の長さL210は、好ましくは100μm以上、より好ましくは300μm以上、特に好ましくは500μm以上であり、好ましくは5000μm以下、より好ましくは3000μm以下、特に好ましくは1000μm以下である。切れ目210の長さL210が、前記範囲の下限値以上であることにより、導電性フィルムの光透過性を高めることができ、また、前記範囲の上限値以下であることにより、導電性フィルムの抵抗を十分に下げることができる。
切れ目210の幅W210は、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは1μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。切れ目210の幅W210が、前記範囲の下限値以上であることにより、導電性フィルムの抵抗を十分に下げることができ、また、前記範囲の上限値以下であることにより、導電性フィルムの光透過性を高めることができる。
切れ目210が延在する方向Xにおける当該切れ目210の間隔S210は、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、特に好ましくは20μm以下である。方向Xにおける切れ目210の間隔S210が、前記範囲の下限値以上であることにより、延伸時の導電性層の破断を抑制でき、また、前記範囲の上限値以下であることにより、延伸時の導電性層の歪を抑えることができる。
方向Yにおける切れ目210の間隔I210は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、特に好ましくは3μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下である。方向Yにおける切れ目210の間隔I210が、前記範囲の下限値以上であることにより、延伸時の導電性層の破断を抑制でき、また、前記範囲の上限値以下であることにより、導電性フィルムの光透過性を高めることができる。
また、第二工程においては、通常、熱可塑性樹脂フィルム100には切れ目を形成しない。そこで、第二工程において導電性層200に切れ目210を形成する方法としては、熱可塑性樹脂フィルム100には切れ目を形成することなく、導電性層200に切れ目210を形成しうる方法を採用することが好ましい。
具体的な切れ目210の形成方法としては、レーザー光によって切れ目210を形成するレーザー加工法;カッターを用いて機械的に切れ目210を形成する機械的加工法;などが挙げられる。中でも、熱可塑性樹脂フィルム100に切れ目を形成することなく導電性層200に切れ目210を形成するのが容易であることから、レーザー加工法が好ましい。
レーザー加工法では、レーザー光を導電性層200に照射する。レーザー光を受けた地点においては、通常、導電性層200が加熱され、融解又はアブレーションによって当該地点の導電性層200が除去される。これにより、レーザー光の照射を受けた地点に、切れ目210を形成することができる。
レーザー光の波長は、当該レーザー光が導電性層200で吸収され、且つ、熱可塑性樹脂フィルム100を透過しうるように設定することが好ましい。
レーザーとしては、例えば、イットリウム・アルミニウム・ガーネットレーザー(以下、適宜「YAGレーザー」ということがある。)、炭酸ガスレーザー、エキシマレーザーなどが挙げられる。
レーザー光の出力は、導電性層200の厚み及び導電性層200に含まれる材料の種類に応じて設定しうる。レーザー光の具体的な範囲は、好ましくは0.1W以上、より好ましくは0.5W以上、特に好ましくは1W以上であり、好ましくは500W以下、より好ましくは200W以下、特に好ましくは100W以下である。レーザー光の出力が、前記範囲の下限値以上であることにより導電性層200に切れ目210を速やかに形成でき、前記範囲の上限値以下であることにより熱可塑性樹脂フィルム100の意図しない変形を効果的に抑制できる。
レーザー光は、連続レーザー光でもよく、パルスレーザー光でもよい。中でも、パルスレーザー光が好ましい。パルスレーザー光を用いることにより、大きな熱の発生を抑えて加工することが可能であるので、熱可塑性樹脂フィルム100の意図しない変形を効果的に抑制できる。
パルスレーザー光を用いる場合、レーザー光の周波数は、好ましくは5kHz以上、より好ましくは10kHz以上、特に好ましくは20kHz以上であり、好ましくは1000kHz以下、より好ましくは500kHz以下、特に好ましくは300kHz以下である。パルスレーザー光の周波数が、前記範囲の下限値以上であることにより、加工速度を速めることができ、また、前記範囲の上限値以下であることにより、より熱の影響を抑えた加工ができる。
パルスレーザー光を用いる場合、パルス幅の範囲は、好ましくは0.005ピコ秒以上、より好ましくは0.01ピコ秒以上、特に好ましくは0.1ピコ秒以上であり、好ましくは100ピコ秒以下、より好ましくは50ピコ秒以下、特に好ましくは30ピコ秒以下である。パルスレーザー光のパルス幅が、前記範囲の下限値以上であることにより、加工速度を速めることができ、また、前記範囲の上限値以下であることにより、より熱の影響を抑えた加工ができる。
導電性層200に切れ目210を形成する際、通常は、レーザー光が導電性層200の表面を走査するように、レーザー光を導電性層200に照射する。これにより、導電性層200にレーザー光が当たる照射点が、形成しようとする切れ目210の形状に沿って移動するので、切断したい形状の切れ目210を形成できる。この際、レーザー光に導電性層200の表面を走査させるために、レーザー光の照射装置を移動させてもよく、複層フィルム10を移動させてもよく、レーザー光の照射装置と複層フィルム10の両方を移動させてもよい。
レーザー光の照射点の移動速度は、レーザー光の出力、導電性層200の厚み等の条件に応じて、適切に設定しうる。前記の移動速度の具体的な範囲は、好ましくは5mm/秒以上、より好ましくは10mm/秒以上、特に好ましくは50mm/秒以上であり、好ましくは1000mm/秒以下、より好ましくは500mm/秒以下、特に好ましくは300mm/秒以下である。前記の移動速度が、前記範囲の下限値以上であることにより、生じる熱を抑えて熱可塑性樹脂フィルム100の意図しない変形を効果的に抑制でき、また、前記範囲の上限値以下であることにより、切れ目210の寸法を正確に形成できる。
[4.第三工程]
図5は、本発明の一実施形態に係る製造方法の第三工程において得られる好適な例としての導電性フィルム20の一部を拡大して模式的に示す平面図である。また、図6は、図5に示す導電性フィルム20を、一点鎖線VIで示す平面で切った断面を拡大して模式的に示す断面図である。
第二工程で導電性層200に切れ目210を形成した後で、熱可塑性樹脂フィルム100を延伸する第三工程を行う。このように熱可塑性樹脂フィルム100を延伸することにより、その熱可塑性樹脂フィルム100上の導電性層200に形成された切れ目210が延伸方向に広げられて、導電性層200の平面形状がメッシュ状に変形する。そのため、図5及び図6に示すように、メッシュ状の導電性層200を備えた導電性フィルム20が得られる。以下の説明において、熱可塑性樹脂フィルム100の延伸によって広げられた切れ目210を、適宜、「開口220」と呼ぶことがある。
第三工程における延伸は、通常、方向Yを延伸方向として行う。したがって、この延伸は、通常、熱可塑性樹脂フィルム100の表面100Uに平行で且つ延伸前の切れ目210が延在する方向Xに交差する方向において行い、特に方向Xに垂直な方向において行うことが好ましい。
前記のように方向Yに延伸した場合、熱可塑性樹脂フィルム100には、通常、延伸方向に交差する方向Xにおいて収縮しようとする応力が生じる。切れ目210の広がりを促進する観点では、第三工程における延伸の際、当該延伸による熱可塑性樹脂フィルム100の収縮は妨げないことが好ましい。よって、第三工程における延伸の際には、方向Xにおいて、熱可塑性樹脂フィルム100には外部から応力を加えずに自由にするか、熱可塑性樹脂フィルム100を積極的に収縮させる応力を加えることが好ましい。中でも、第三工程における操作を簡素にする観点では、第三工程における延伸の際には方向Xにおいて熱可塑性樹脂フィルム100に外部から応力を加えないことが特に好ましい。よって、第三工程での延伸は、一方向にのみ延伸し、それ以外の方向には拘束力を加えない自由一軸延伸であることが特に好ましい。
第三工程における延伸温度は、延伸後の熱可塑性樹脂フィルム100に求められる光学特性に応じて設定される。
例えば、延伸後の熱可塑性樹脂フィルム100としてレターデーションを有さない光学的に等方性のフィルムを得たい場合には、延伸温度は、延伸によってレターデーションが発現しない程度の高温に設定しうる。この場合、延伸温度は、熱可塑性樹脂フィルム100に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgよりも大幅に高温に設定してもよい。
また、例えば、延伸後の熱可塑性樹脂フィルム100としてレターデーションを有する光学的に異方性のフィルムを得たい場合には、延伸温度は、延伸によって所望のレターデーションが発現しうる程度に低い温度に設定しうる。この場合、延伸温度は、熱可塑性樹脂フィルム100に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgに近い温度に設定してもよい。
第三工程における延伸温度の具体的な範囲は、好ましくはTg−30℃以上、より好ましくはTg−20℃以上、特に好ましくはTg−10℃以上であり、好ましくはTg+60℃以下、より好ましくはTg+40℃以下、特に好ましくはTg+30℃以下である。延伸温度が、前記範囲の下限値以上であることにより熱可塑性樹脂フィルム100の延伸を円滑に行うことができ、また、前記範囲の上限値以下であることにより延伸による熱可塑性樹脂フィルム100の破断を抑制できる。
第三工程における延伸倍率は、製造しようとする導電性フィルム20の導電性層200の形状に応じて設定しうる。具体的な延伸倍率の範囲は、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、特に好ましくは3倍以上であり、好ましくは20倍以下、より好ましくは15倍以下、特に好ましくは10倍以下である。延伸倍率が、前記範囲の下限値以上であることにより、切れ目210を十分に広げられるので透明性に優れる導電性フィルム20を得ることができ、また、前記範囲の上限値以下であることにより、熱可塑性樹脂フィルム100及び導電性層200の破損を抑制できる。
[5.導電性フィルム]
上述した製造方法によって製造される導電性フィルム20は、図5及び図6に示すように、熱可塑性樹脂フィルム100及び導電性層200を備える。
導電性フィルム20は、導電性を有する材料によって形成された導電性層200を備えるので、導電性を有する。そのため、導電性フィルム20の導電性層200側の面20Uの表面抵抗は、小さい。この表面抵抗の具体的な範囲は、好ましくは1000Ω/□以下、より好ましくは500Ω/□以下、特に好ましくは200Ω/□以下である。また、前記の表面抵抗は、小さいほど好ましいが、通常は0.01Ω/□以上である。
導電性フィルム20の導電性層200は、メッシュ状の形状を有し、多数の開口220が形成されている。この開口220を、光は透過できる。そのため、メッシュ状の導電性層200を有する領域において、導電性フィルム20は、透明性を有する。よって、このようにメッシュ状の導電性層200を有する領域において、導電性フィルム20の全光線透過率は、高い。この全光線透過率の具体的な範囲は、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。また、前記の全光線透過率は、高いほど好ましいが、通常は90%以下である。光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計「V−570」)を用いて測定しうる。
通常、メッシュ状の導電性層200を有する領域における導電性フィルム20のヘイズは、小さい。このヘイズの具体的な範囲は、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下である。ヘイズは、JIS K7361−1997に準拠して、日本電色工業社製「濁度計 NDH−300A」を用いて、5箇所測定し、それから求めた平均値を採用しうる。
通常、メッシュ状の導電性層200において、メッシュのワイヤの幅に相当する導電性層200の幅W200は、細い。そのため、導電性フィルム20において、メッシュ状になった導電性層200は、肉眼では視認し難い。したがって、導電性フィルム20は、高い透明性を求められる画像表示装置において使用可能である。メッシュ状の導電性層200の幅W200の具体的な範囲は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、特に好ましくは3μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下である。前記の幅W200が、前記範囲の下限値以上であることにより、導電性フィルム20の導電性を高くでき、また、前記範囲の上限値以下であることにより、導電性フィルム20の透明性を高くできる。
導電性フィルム20がメッシュ状の導電性層200を有する領域において、導電性層200に形成された開口220が占める面積の割合は、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上であり、好ましくは99%以下、より好ましくは97%以下、特に好ましくは95%以下である。開口220が占める面積の割合が、前記範囲の下限値以上であることにより、導電性フィルム20の透明性を高くでき、また、前記範囲の上限値以下であることにより、導電性フィルムの導電性を高くできる。
導電性フィルム20における導電性層200の厚みは、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下である。導電性層200の厚みが、前記範囲の下限値以上であることにより、導電性フィルム20の導電性を高くでき、また、前記範囲の上限値以下であることにより、導電性フィルム20の厚みを薄くできる。
延伸により、導電性フィルム20における熱可塑性樹脂フィルム100の厚みは、延伸される以前の熱可塑性樹脂フィルム100の厚みよりも、通常は薄くなる。導電性フィルム20における熱可塑性樹脂フィルム100の厚みの具体的な範囲は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは3μm以上、特に好ましくは5μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは25μm以下、特に好ましくは15μm以下である。熱可塑性樹脂フィルム100の厚みが、前記範囲の下限値以上であることにより、熱可塑性樹脂フィルム100の機械的強度を高められるので、導電性フィルム20の機械的耐久性を高めることができ、また、前記範囲の上限値以下であることにより、導電性フィルム20の厚みを薄くできる。
[6.その他の工程]
以上、導電性フィルム20の製造方法に係る実施形態について説明したが、導電性フィルム20の製造方法は、更に変更して実施してもよい。
例えば、導電性フィルム20の製造方法は、上述した第一工程、第二工程及び第三工程に加えて、更に任意の工程を含んでいてもよい。任意の工程の例としては、例えば、製造した導電性フィルム20に任意のフィルムを貼り合わせる工程、導電性フィルム20を所望の形状に切り出す工程などが挙げられる。
[7.導電性フィルムの用途]
上述した製造方法によって製造された導電性フィルム20の用途に制限は無く、例えば、電極、電磁波遮蔽材、帯電防止材等の任意の用途に用いうる。中でも、上述した導電性フィルム20は、高い透明性を有することから、液晶表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の画像表示装置に好適に用いることができ、特に、タッチパネル付の画像表示装置が特に好ましい。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものでは無い。以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中において行った。
[実施例1]
(第一工程)
脂環式オレフィン重合体を含む熱可塑性樹脂フィルム(日本ゼオン社製「ゼオノアフィルムZF16−100」、厚さ100μm)を用意した。この熱可塑性樹脂フィルムの片方の表面に、メッキ法によって、厚み400nmの銅の層を導電性層として形成した。これにより、熱可塑性樹脂フィルム及び導電性層を備える銅メッキフィルムが、複層フィルムとして得られた。
(第二工程)
前記の複層フィルムを150mm×50mmの長方形に切り出した。切り出した複層フィルムの導電性層側の面の、中心部の90mm×30mmの範囲に、レーザー光を照射して、複層フィルムの短辺方向に延在する線分形状の複数の切れ目を導電性層に形成した。この際、レーザー光の照射装置としては、YAGレーザー光照射装置(リプス・ワーク社製「PiCooLs」、レーザー波長530nm)を用いた。また、レーザー光の照射は、パルス周波数100kHz、パルス幅8psecの条件で、レーザー光が銅メッキフィルムに当たる照射点を250mm/秒の速度で移動させながら行った。また、切れ目の寸法は、一回当たりのレーザー光の照射時間、及び、レーザー光の照射点の大きさを調整することにより、調整した。
レーザー光の照射によって、上述した実施形態において図3を用いて説明した好適な例のように、導電性層200に多数の切れ目210が形成された。ここで、各切れ目210の長さL210は500μm、各切れ目210の幅W210は約5μm、切れ目210が延在する方向Xにおける切れ目210の間隔S210は15μm、方向Xに垂直な方向Yにおける切れ目210の間隔I210は約10μmであった。
(第三工程)
導電性層に切れ目を形成した後、複層フィルムの長辺方向の両端の未加工部分(即ち、導電性層に切れ目が形成されていない部分)150mm×10mmを、それぞれ切り除いた。
その後、恒温恒湿槽付の引張試験機(インストロン・ジャパン・カンパニイリミテッド社製「インストロン5564型」)を用いて、複層フィルムを、切れ目が延在する短辺方向に垂直な長辺方向に延伸した。この延伸では、複層フィルムの長辺方向の両端の未加工部分30mm×30mmの範囲を、引張試験機の把持子によって把持し、延伸を行った。また、複層フィルムの短辺方向の両端は、把持子による把持を行わずに自由とした。このため、前記の延伸は、短辺方向には拘束力が作用しない自由一軸延伸として行われた。また、延伸条件は、延伸温度170℃、延伸倍率3倍であった。このような延伸を行うことにより、導電性層に形成された切れ目が長辺方向に広がって、メッシュ状の導電性層を備える導電性フィルムを得た。
(評価)
製造された導電性フィルムの導電性層側の面を顕微鏡によって観察したところ、導電性層がメッシュ状の形状を有することが確認された。
この導電性フィルムの導電性層側の面の表面抵抗値を抵抗率計(三菱化学社製「ロレスタ」)によって測定したところ、0.1Ω/□であった。
また、導電性フィルムの導電性層がメッシュ状になった領域の全光線透過率を積分球式光透過率測定装置で測定したところ、70%であった。
10 複層フィルム
20 導電性フィルム
100 熱可塑性樹脂フィルム
100U及び100D 熱可塑性樹脂フィルムの面
200 導電性層
210 切れ目
211及び212 切れ目の群
220 開口

Claims (2)

  1. 熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に導電性層を形成する第一工程と、
    前記導電性層に複数の切れ目を形成する第二工程と、
    前記熱可塑性樹脂フィルムを延伸することにより、前記導電性層に形成された切れ目を広げて、メッシュ状の導電性層を得る第三工程と、を含む、導電性フィルムの製造方法。
  2. 前記第二工程が、レーザー光によって前記導電性層に切れ目を形成することを含む、請求項1記載の導電性フィルムの製造方法。
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