JP2017032627A - 可動型マイクロミラーデバイス及びその製造方法 - Google Patents

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育菁 林
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Yao-Chuan Tsai
燿全 蔡
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Takahito Ono
崇人 小野
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Abstract

【課題】小型かつ省電力化され、大角度偏向が可能な可動型マイクロミラーデバイスとその製造方法を提供する。【解決手段】ミラー部をアモルファス合金製のトーションバーで回転可能に支持し、トーションバーの他端をアンカー枠部に固定する。また、静電駆動機構の一部を成す可動コム部をミラー部に直結し、この可動コム部に対応する位置には固定コム部を配置し、この固定コム部をアンカー枠部に固定する。これにより、静電式可動型マイクロミラーデバイスを製作する。更に、一枚のバルクSi基板を表裏から何回かの選択パターンエッチを繰り返すことにより上記デバイス構造を構成する。【選択図】図1

Description

本発明は可動型マイクロミラーデバイス及びその製造方法に係り、特に、光走査などに用いる光偏向器に好適な可動型マイクロミラーデバイス及びその製造方法に関する。
シリコン(Si)の微細加工を用いて製作される可動型マイクロミラーデバイスは、主にマイクロスキャナとして用いられ、従来の機械的に作られたポリゴンミラーなどと比べて小型かつ低消費電力であることが特徴である。
従来から、多くの可動型マイクロミラーデバイスでは、単結晶Siあるいは多結晶Si材料を用いたトーションバーによりミラーを支持し、回転可能な構造としている。しかしながら、Si材料は衝撃力やねじり力に弱い性質がある。これは、Si結晶が格子欠陥や転位を内蔵しているためである。Si材料で作られる可動型マイクロミラーデバイスで大きな回転角度(大角度偏向)を得るためには、トーションバーの断面寸法を小さくする必要があるが、強度と耐久性の点に限界があり、実現することが難しかった。
一方、Si材料に替えて、トーションバーをアモルファス合金(金属ガラスも含まれる)で構成した磁気式及び圧電式可動型マイクロミラーデバイスは、アモルファス合金の持つ優れた機械的特性によって大角度偏向を実現している(特許文献1、特許文献2)。
特開2012−210668 特開2014―134642
しかしながら電磁式及び圧電式可動型マイクロミラーデバイスでは大角度偏向させるために、デバイス構造が大きくなり、また駆動電力も大きくなるという課題があった。更には、従来から、MEMS技術を用いた「可動型マイクロミラーデバイス」の製作に多用されている「SOI(Silicon on insulator)基板」は高価であり、低価格のバルクSi基板を用いたデバイス構造が求められていた。
上記課題に鑑み、本発明は、小型、かつ、省電力化された大角度偏向が可能な「可動型マイクロミラーデバイス」を提供する。合わせて、バルクSi基板を用いたデバイス構造とその製造方法を提案し、これにより低価格の「可動型マイクロミラーデバイス」を提供する。
請求項1に示す発明は、アモルファス合金製のトーションバーに支持された可動ミラーと、これを回転駆動するための静電駆動機構をもつマイクロミラーデバイスであり、詳細な構成・構造は下記のとおりである。
光を反射する鏡面を有するミラー部と、
ミラー部に接続し、ミラー部を特定の回転軸を中心に回転可能に支持するアモルファス合金製のトーションバーと、
トーションバーの他端を固定するアンカー枠部と、
アンカー枠部に固定した、ミラー部を回転させるための静電式回転駆動機構と、
トーションバーに接続する電極と、アンカー枠部に接続する電極と、静電駆動機構へ駆動電圧を印加するための給電配線とを備えたことを特徴とする静電式可動型マイクロミラーデバイスである。
上記の発明では、トーションバーの材質にアモルファス合金(金属ガラスを含む)を用いているので、静電駆動による比較的小さな駆動力であっても、可動ミラーの大角度回転(偏向)が可能になる。また、上記アモルファス合金膜は、パターン加工後にアモルファス合金膜の結晶化温度Txとガラス転移温度Tgとの間の過冷却液体領域の温度で熱処理し、アモルファス合金膜の残留応力を低減する処理を施している。これにより、強靭なトーションバーが得られるので、可動部の機械的信頼性が向上する。
請求項2に示す発明は、上述の発明における静電駆動用のコム機構の配置を規定している。詳細は、次のとおりである。
ミラー部の回転軸線の左右いずれか一方の側にあるミラー部の最遠端部(前記回転軸線から最も離れた位置にある端部)に、静電式回転駆動機構の一部を成す可動コム部を直結し、
更に、可動コム部との対応位置に静電駆動機構の一部を成す固定コム部を配置し、また、アンカー枠部に設けた電極と給電配線は、可動コム部用・固定コム部用の電極と給電配線であり、トーションバーとアンカー枠部自体も配線機能を有することを特徴とする請求項1に記載の静電式可動型マイクロミラーデバイスである。
請求項3に示す発明は、可動板(可動ミラーの一部を成す下地基板)・可動コム部・固定コム部・アンカー枠部を含む構造体を1枚のバルク低抵抗Si基板から製作して構成したことを特徴とする請求項2に記載の静電式可動型マイクロミラーデバイスである。本発明では、一枚のバルクシリコン(Si)基板だけで主要構造を構成できるので、静電式可動型マイクロミラーデバイスの低価格化が図れる。
請求項4に示す発明は、ミラー部の左右に静電駆動機構を設けた構成からなる静電式可動型マイクロミラーデバイスであり、その詳細は下記のとおりである。
まず、ミラー部の一部を成す可動板があり、可動板の左右両端(ミラー部の回転軸線に平行な端部)に、静電式回転駆動機構の一部を成す可動コム部を直結し、更に、可動コム部との対応位置に静電駆動機構の一部を成す固定コム部を配置し、
また、アンカー枠部に設けた電極と給電配線は、可動コム部用・固定コム部用の電極と給電配線であり、かつ、固定コム用電極は第1・第2の固定コム用電極として左右のコム機構を独立駆動することが可能であり、
更に、トーションバー自体、バルク低抵抗Siから成るアンカー枠部自体も配線機能を有していることを特徴とする請求項1記載の静電式可動型マイクロミラーデバイスである。
本発明の静電式可動型マイクロミラーデバイスでは、ミラー回転用のコム機構が左右両側に構成されているので、左右のコム機構に印加する電圧を細かく調整することで、より高精度の偏向動作が可能になる特徴がある。また、片側駆動の場合と同じ偏向角を得るのには、全偏向角に見合う角度変位を「時計回り」、「反時計回り」の両方向の角度変位に分割・分散できるので、トーションバーの一方向に加わる角度変位量を概ね半分に低減でき、トーションバーの機械的信頼性が大幅に向上する。
また、ミラー回転用のコム機構を左右両側に構成するには、通常、高価なSOI基板を用いることが必要である。本発明によれば、バルクSi基板を用いて製作が可能であり、低価格の静電式可動型マイクロミラーデバイスの提供が可能になる。
請求項5に示す発明は、トーションバーの寸法比率を規定したものであり、トーションバーは、長さ>幅>厚さの関係を持ち、長さ:厚さの比は5:1以上、長さ:幅の比は1:1以上の形状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の静電式可動型マイクロミラーデバイスである。マイクロミラーの大角度偏向を行うためには、上記の条件を満足することが望ましい。
請求項6に示す発明は、請求項2に記載の静電式可動型マイクロミラーデバイスの製造方法である。詳細は、以下のとおりである。
低抵抗Si基板上の裏表両面にSiO2膜を成膜し、両面にエッチングパターンを形成してSiO2パターンを加工する工程と、
Si基板表面にアモルファス合金膜を成膜し、トーションバーとこれに付随するアモルファス合金膜をパターン化する工程と、
アモルファス合金膜の結晶化温度Txとガラス転移温度Tgとの間の過冷却液体領域の温度で熱処理し、アモルファス合金膜の残留応力を低減する工程と、
上記Si基板表面をSiの異方性ドライエッチングでミラー部と、静電駆動用の可動コム部およびこれらの支持体となるアンカー枠部を作製する工程と、
上記Si基板裏面を異方性ドライエッチングにより、ミラー部を所望厚さにまで加工し、同時に静電駆動用の固定コム部を作製する工程と、
上記Si基板表面に可動コム部用・固定コム部用電極及び給電配線を形成し、
更に、ミラー部表面に高効率反射膜を形成する工程と
を含む静電式可動型マイクロミラーデバイスの製造方法である。
本発明における最大のポイントは、トーションバーの材質にアモルファス合金を用い、また、マイクロミラーを回転させるために静電式駆動機構を作製し組み込んでいることにある。上記のアモルファス合金については、これを、Pd、Zr、Ti、Al、Cu、Au、Pt、Fe、Co、Ni等を含む材料で構成し、また、形状加工後のトーションバーをアモルファス合金の持つ結晶化温度Txとガラス転移温度Tgとの間の温度領域内で熱処理を施すことにより、アモルファス合金の内部応力を低減させている。これにより、耐熱性に優れ、ねじれに強く、信頼度の高いトーションバーが得られる。
請求項7に示す発明は、請求項4に記載している、ミラー部の左右にコム機構をもつ静電式可動型マイクロミラーデバイスの製造方法である。詳細な製造方法は以下のとおりである。
第1の低抵抗バルクSi基板上の表裏両面にSiO2膜を成膜し、両面にエッチングパターンを形成してSiO2パターンを加工する工程と、
上記第1のSi基板表面にアモルファス合金膜を成膜し、トーションバーとこれに付随するアモルファス合金膜をパターン化する工程と、
アモルファス合金膜の結晶化温度Txとガラス転移温度Tgとの間の過冷却液体領域の温度で熱処理し、アモルファス合金膜の残留応力を低減する工程と、
上記第1のSi基板裏面を異方性ドライエッチングにより、ミラー部と静電駆動用の可動コム部及びこれらの支持体となるアンカー枠部を作製する工程と、
SiO2膜のエッチング工程と、上記第1のSi基板表面に電極と給電配線を形成する工程と、
更に、ミラー部表面に高効率反射膜を形成する工程と
を含む第1基板製造工程と、
第2の低抵抗バルクSi基板をガラス基板に接合する工程と、
上記接合済の第2のSi基板の表面から異方性ドライエッチングにより選択パターンエッチングして固定コム部とアンカー枠部を形成する工程と
を含む第2基板製造工程と、
上記第2基板上に上記第1基板を重ね合わせ、両者の相対的位置合わせを行った後に、接合層を用いて両者を接合する工程と
を含む静電式可動型マイクロミラーデバイスの製造方法である。
本発明のアモルファス合金製トーションバーを用いる静電式可動型マイクロミラーデバイスでは、従来方式の可動型マイクロミラーデバイスよりも小型でありながら、従来以上の大角度偏向を維持できる。更に、従来デバイスに比べて省電力化できる。また、SOI基板を用いることなく、バルクSi基板により可動型マイクロミラーデバイスを構成・製造できるので、低価格化が図れる。
本発明の第1の実施例による静電式可動型マイクロミラーデバイスの平面および側断面形状図である 本発明の第1の実施例の動作形態を説明する静電式可動型マイクロミラーデバイスの断面形状図である。 本発明の第1の実施例による静電式可動型マイクロミラーデバイスの製造工程の概略を説明する断面形状図である。 本発明の第2の実施例による静電式可動型マイクロミラーデバイスの平面および断面形状図である。 本発明の第3の実施例による静電式可動型マイクロミラーデバイスの平面および断面形状図である。 本発明の第4の実施例による静電式可動型マイクロミラーデバイスの平面図である。
次に、本発明の実施の形態を実施例により説明する。以下に述べる実施例は、本発明の技術的思想に沿った一例を具現化したものであり、構成部品の形状、材質、構造、配置などを下記のものに特定するものではない。また、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
次に、実施例の説明に先立ち、各実施例に共通する「ミラー部の詳細構成」につき、事前説明を以下に記載する。たとえば、図1の中の断面B−B’図に示すように、ミラーブ部1は、光反射膜1aと反射膜の下地になる可動板1bとで構成されている。そして、光反射膜1aはミラー部1の表面にあるので、ミラー部1に入射した光は上記の光反射膜の表面で反射される。
実施例の大部分では、この光反射膜はトーションバー3を形成するときの材質、すなわち、アモルファス合金の薄層で形成されている。しかし、ミラー部1の構成は上記に限定されるものではなく、上記の光反射膜の材料に、上記と異なる別種の材料を用いてもよく、また、格別の光反射膜を設けずに下地で有る可動板(通常はSi製)の表面を光反射面とすることもできる。
更には、各種構成からなる上記ミラー部の最上表面に、反射させる光の波長に合わせて反射率の高い材質(Au、Ag、Al等)からなる「高効率反射膜」を設けてもよい。以下の実施例の説明においては、上述した内容の記載を省略することを付言する。
(第1の実施例)
本発明の第1の実施例に係る静電式可動型マイクロミラーデバイスを図1に示す。ミラー部1は、表面に光反射膜1aをもつ可動板(Si)1bとから成り、可動板には静電駆動機構の一部を成す可動コム部2が直結している。可動板の両端にはアモルファス合金製のトーションバー3が接続しており、このトーションバーの他端はアンカー枠部5に固定されている。これにより、前記のミラー部1は特定の回転軸11を中心に回転可能なように支持されている。さらに、可動コム部2に対応する位置に静電駆動機構の一部を成す固定コム部4が配置され、この固定コム部はアンカー枠部5に固定されている。
上記実施例における静電式可動型マイクロミラーデバイスの動作形態を、図2の断面形状図、及び前出の図1を用いて説明する。この図2は、図1における断面A−A’部を示しており、印加電圧がない場合は同図(a)に示すように、トーションバー3で支持されているミラー部1は回転角度ゼロ度で水平を保っている。可動コム部用電極15と固定コム部用電極16との間に所定の印加電圧を加えると、ミラー部1は回転軸11を中心にして静電力により回転して傾き、トーションバーのバネ定数との兼ね合いから決定される回転角度θに傾いた位置で保持される(同図(b))。
次に、上記第1の実施例に係る静電式可動型マイクロミラーデバイスの製造工程の概略を図3の断面形状図を用いて説明する。なお、前出の図1に示した平面図、断面図も合わせて参照願いたい。
図3は、各製造工程におけるマイクロミラーデバイスの模式断面であり、図1におけるA−A’断面を表す模式図である。以下に、工程(1)〜(6)の詳細を、順次、説明する。
(1)Si基板101の表裏両面に絶縁膜12を形成する。次に、両面にそれぞれフォトレジストによるエッチングパターンを形成したのち、絶縁膜を選択エッチング加工してパターン化する。
(2)Si基板101の表面に、トーションバー、ミラー部などをリフト・オフ方式で形成するためのレジストパターン層51を形成する。次に、上記全面にアモルファス合金膜13を成膜する。
(3)次に、アモルファス合金膜13をリフト・オフによりパターン化してトーションバー3、ミラー部の光反射膜1a、可動コム部用電極15を形成する。なお、上記の3や15は、図3には示されていない。次いで、アモルファス合金膜13の結晶化温度Txとガラス転移温度Tgとの間の過冷却液体領域の温度でアモルファス合金膜13の加熱処理をする。これは、アモルファス合金膜13の内部応力を開放するための「応力解放リフロー」処理である。
更に、Si基板101の表面をSiの異方性ドライエッチング技術を用いて選択パターンエッチングをして、ミラー部1、可動コム部2、アンカー枠部5などの表面側のパターン加工をする。次いで、Si基板の裏面側にフォトレジストパターン52を設け、これをエッチングマスクとして、異方性ドライエッチングにより基板裏面の一部を選択エッチングして、最終的に基板の厚み全部を取り除く部分の先行エッチングをする。
(4)次に、基板裏面のフォトレジストパターン52を除去した後、再び、裏面に絶縁膜からなるドライエッチング用のマスクパターンを形成する。
(5)次いで、上記マスクパターンを用いて異方性ドライエッチングにより基板裏面の一部分を選択エッチングする。これにより、トーションバー(図示せず)、可動板1b、可動コム部2、固定コム部4、アンカー枠部5などの加工が完了する。
(6)最後に、基板の表・裏面に残っている絶縁膜(エッチングマスク)を除去すれば、MEMS技術を用いて一枚の基板から「静電式可動型マイクロミラーデバイス」を完成させることができる。本実施例においては、基板にシリコン(Si)を、絶縁膜にはSiO2膜を、また、トーションバーにはアモルファス合金を用いている。
以上が図1に示した静電式可動型マイクロミラーデバイスの製造方法の概要である。本発明における最大のポイントは、トーションバーの材質としてアモルファス合金を、また、マイクロミラーの回転駆動に静電駆動方式を用いていることにある。上記のアモルファス合金については、これを、Pd、Zr、Ti、Al、Cu、Au、Pt、Fe、Co、Ni等を含む材料で構成し、また、形状加工後のトーションバーをアモルファス合金の持つ結晶化温度Txとガラス転移温度Tgとの間の温度領域内で熱処理を施すことにより、アモルファス合金の内部応力を低減させている。これにより、耐熱性に優れ、ねじれに強く、信頼度の高いトーションバーが得られる。
静電式可動型マイクロミラーデバイスは製品に応じて低周波から高周波動作で使われる。例えば、ミラー部1の寸法が[長さ300μm×幅300μm×厚さ100μm]の場合、トーションバー3の寸法が[長さ:200μm×幅:10μm×厚さ:0.3μm]であれば、大略100Hzの低周波振動動作になる。また、前記と同じミラー寸法のとき、トーションバーの寸法が[長さ:17000μm×幅:100μm×厚さ:50μm]の場合には、大略60KHzの高周波振動動作になる。
また、マイクロミラーの大角度偏向を効果的に行うためには、上記のトーションバーの寸法比率が以下の範囲内にあることが好ましい。すなわち、長さ・幅・厚さの大小関係が、長さ>幅>厚さの関係にあり、長さ:厚さの比は5:1以上、長さ:幅の比は1:1以上を満足する形状条件でトーシャンバーを構成することが望ましい。
更に、以上の実施例1に示した構造の静電式可動型マイクロミラーデバイスは、一枚のシリコン(Si)基板のみを使用することによって上記ミラーデバイスを完成させることができ、また、トーションバーを構成するアモルファス合金は、耐熱性、耐薬品性が高いので、製造プロセスを選択する際の「条件裕度」が大幅に向上するという特長も持っている。
本発明の第2の実施例に係る静電式可動型マイクロミラーデバイスを図4に示す。これは、第1の実施例と同様、1軸の回転(偏向)ミラーデバイスであるが、大角度偏向をより容易に実現できることが特徴である。
上記、第2の実施例を図4の平面図と断面図(A-A’)を用いて説明する。図4に示す構造は、静電駆動機構の設置位置が前出の図1と大きく異なっている。可動コム部22がトーションバー23に近接して配置されている。可動コム部22と固定コム部24のペアは、ミラー部21の両脇にバランス良く配置されている。その他の部分の構成は図1に示した実施例1と同様であり、アンカー枠部25上に、可動コム部用電極35、固定コム部用電極36が設けられている。また、可動コム部用電極35については、アンカー枠部25から絶縁するための絶縁膜32を介して、可動コム部用電極35を設けている。
ミラー部21と可動コム部22の一体構造が、アモルファス合金製のトーションバー23で支持されてSiのアンカー枠部25に固定されている。同時に、可動コム部22に対応するように配設された固定コム部24もSiのアンカー枠部25に固定されている。本実施例では、可動コム部22がトーションバー部23に接近して取り付けられている構造なので、実施例1の場合に比べて、同じ印加電圧に対して大角度偏向が可能である。
本発明の第3の実施例に係る静電式可動型マイクロミラーデバイスを図5に示す。これは、1軸の回転(偏向)ミラーデバイスであるが、回転させるコム機構が回転軸の左右両側に形成されている構成である。この構造は、左右に印加する電圧を細かく調整することで、より高精度の偏向動作が可能になる特徴がある。
上記、第3の実施例を図5で説明する。図示のように、本例の静電式可動型マイクロミラーデバイスは3枚の基板(上部、下部Si基板、ガラス基板)で構成されている。ガラス基板203と下部Si基板202を、例えば陽極接合によって貼り合わせて一体化した後、Si基板202を選択ドライエッチで加工して固定コム部64とアンカー枠部65を形成する。左右の固定コム部に独立に電圧を印加できるようにアンカー枠部にスリット70を入れて、更に左右の電極68,69を設けている。同様に、上部に載置するSi基板201を選択ドライエッチングにより加工して、アンカー枠部55、アモルファス合金製トーションバー53、トーションバーに支持されるミラー部51と可動コム部52を形成する。
上記、第3の実施例による静電式可動型マイクロミラーデバイスは、ガラス基板203と下部Si基板202からなる固定コム部64と、ミラー部51と可動コム部52を持つSi基板201を精密な位置合わせの後に接合した構造で作られることを特徴としている。左右のコム機構が可動するために、可動コム用電極58と左側の固定コム用電極68、および右側の固定コム用電極69に任意の電圧を印加して、ミラー部51を回転させる。
本例の静電式可動型マイクロミラーデバイスでは、ミラー回転用のコム機構が左右両側に構成されているので、左右のコム機構に印加する電圧を細かく調整することで、より高精度の偏向動作が可能になる特徴がある。また、片側駆動の場合と同じ偏向角を得るには、全偏向角に見合う角度変位を「時計回り」、「反時計回り」の両方向の角度変位に分割・分散できるので、トーションバーの一方向に加わる角度変位量を概ね半分に低減でき、トーションバーの機械的信頼性が大幅に向上する。
更に、本実施例の静電式可動型マイクロミラーデバイスは、ミラー回転用のコム機構が左右両側に構成されているので、通常、この構造を得るためには、高価なSOI基板を用いることが必要である。本実施例によれば、バルクSi基板を用いて製作が可能であり、低価格の静電式可動型マイクロミラーデバイスの提供が可能になる。
本発明の第4の実施例に係る静電式可動型マイクロミラーデバイスを図6に示す。これは、1軸の回転(偏向)ミラーデバイスであるが、回転させるコム機構が回転軸の左右両側に形成されている構成であることは第3の実施例と同じであるが、大角度偏向をより容易に実現できる構造を提供していることが特徴である。
上記、第4の実施例を図6の平面図を用いて説明する。ミラー部71と可動コム部72,72’の一体構造がアモルファス合金製のトーションバー部73の回転軸近くに取り付けられている。また、可動コム部に対応する位置に固定コム部84、84’を配置し、これらをアンカー枠部75に固定する。実施例3と同様に、左右にある固定コム部用電極88、89と可動コム部用電極78との間に駆動電圧を印加してミラー部71を回転させる。本構造では、ミラー回転用のコム機構をトーションバー近くに配置しているので、同じ印加電圧に対して大角度偏向が可能である。
本例の静電式可動型マイクロミラーデバイスでは、ミラー回転用のコム機構が左右両側に構成されているので、左右のコム機構に印加する電圧を細かく調整することで、より高精度の偏向動作が可能になる特徴がある。また、片側駆動の場合と同じ偏向角を得るには、全偏向角に見合う角度変位を「時計回り」、「反時計回り」の両方向の角度変位に分割・分散できるので、トーションバーの一方向に加わる角度変位量を概ね半分に低減でき、トーションバーの機械的信頼性が大幅に向上する。
更に、本実施例の静電式可動型マイクロミラーデバイスは、ミラー回転用のコム機構が左右両側に構成されているので、通常、この構造を得るためには、高価なSOI基板を用いることが必要である。本実施例によれば、バルクSi基板を用いて製作が可能であり、低価格の静電式可動型マイクロミラーデバイスの提供が可能になる。
本発明の静電式可動型マイクロミラーデバイスは、主に光応用の産業分野に利用可能である。超小型のMEMSスキャナは、信頼性が高く、また、極めて少ない消費電力で動作するので、携帯用のデスプレイ等として広い産業分野に使われる可能性が大きい。本発明による製造方法により、大口径のSiウェハ上で均質な性能を持つ静電式可動型マイクロミラーデバイスを低コストで大量に生産できる見通しがあり、LSIと一体化したモジュールやシステムとした商品を大量に提供することが可能になる。
1、21,51,71・・・ミラー部
2、22,52,72,72’・・・可動コム部
3、23,53,73・・・トーションバー
4、24,64,84,84’・・・固定コム部
5,25、55,65,75・・・アンカー枠部
11・・・回転軸
12,32・・・絶縁膜
13・・・アモルファス合金膜
15,35,58,78・・・可動コム部用電極
16,36,68,69,88,89・・・固定コム部用電極
70,90・・・スリット
101・・・Si基板
201,301・・・上部のSi基板
202・・・下部のSi基板
203,303・・・ガラス基板

Claims (7)

  1. 光を反射する鏡面を有するミラー部と、
    前記ミラー部に接続し、前記ミラー部を特定の回転軸を中心に回転可能に支持するアモルファス合金製のトーションバーと、
    前記トーションバーの他端を固定するアンカー枠部と、
    前記アンカー枠部に固定した、前記ミラー部を回転させるための静電式回転駆動機構と、
    前記トーションバーに接続する電極と、前記アンカー枠部に接続する電極と、前記静電駆動機構へ駆動電圧を印加するための給電配線と
    を備えたことを特徴とする静電式可動型マイクロミラーデバイス。
  2. 前記ミラー部の回転軸線の左右いずれか一方の側にある前記ミラー部の最遠端部(前記回転軸線から最も離れた位置にある端部)に、前記静電式回転駆動機構の一部を成す可動コム部を直結し、
    更に、前記可動コム部との対応位置に前記静電駆動機構の一部を成す固定コム部を配置し、また、前記アンカー枠部に設けた前記電極と前記給電配線は、可動コム部用・固定コム部用の電極と給電配線であり、トーションバーとアンカー枠部自体も配線機能有すること
    を特徴とする請求項1に記載の静電式可動型マイクロミラーデバイス。
  3. 前記の可動ミラー部の一部を成す可動板があり、前記可動板・可動コム部・固定コム部・アンカー枠部を含む構造体を1枚のバルク低抵抗Si基板から製作して構成したことを特徴とする請求項2に記載の静電式可動型マイクロミラーデバイス。
  4. 前記ミラー部の一部を成す可動板があり、前記ミラー部の回転軸線の左右にある前記可動板の両端に、前記静電式回転駆動機構の一部を成す可動コム部を直結し、
    更に、前記可動コム部との対応位置に前記静電駆動機構の一部を成す固定コム部を配置し、
    また、前記アンカー枠部に設けた前記電極と前記給電配線は、可動コム部用・固定コム部用の電極と給電配線であり、かつ、固定コム用電極は第1・第2の固定コム用電極として左右のコム機構を独立駆動することが可能であり、
    更に、バルク低抵抗Siから成るアンカー枠部自体と、トーションバー自体も配線機能を有していること
    を特徴とする請求項1記載の静電式可動型マイクロミラーデバイス。
  5. 前記トーションバーの形状寸法の比率は、長さ>幅>厚さの関係を持ち、長さ:厚さの比は5:1以上、長さ:幅の比は1:1以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の静電式可動型マイクロミラーデバイス。
  6. 請求項2記載の静電式可動型マイクロミラーデバイスの製造方法であって、
    低抵抗Si基板上の裏表両面にSiO2膜を成膜し、両面にエッチングパターンを形成してSiO2パターンを加工する工程と、
    前記Si基板表面にアモルファス合金膜を成膜し、トーションバーとこれに付随する前記アモルファス合金膜をパターン化する工程と、
    前記アモルファス合金膜の結晶化温度Txとガラス転移温度Tgとの間の過冷却液体領域の温度で熱処理し、前記アモルファス合金膜の残留応力を低減する工程と、
    前記Si基板表面をSiの異方性ドライエッチングで前記ミラー部と、静電駆動用の可動コム部およびこれらの支持体となるアンカー枠部を作製する工程と、
    前記Si基板裏面を異方性ドライエッチングにより、前記ミラー部を所望厚さにまで加工し、同時に静電駆動用の固定コム部を作製する工程と、
    前記Si基板表面に可動コム部用・固定コム部用電極及び給電配線を形成し、
    更に、前記ミラー部表面に高効率反射膜を形成する工程と
    を含む静電式可動型マイクロミラーデバイスの製造方法。
  7. 請求項4記載の静電式可動型マイクロミラーデバイスの製造方法であって、
    第1の低抵抗バルクSi基板上の表裏両面にSiO2膜を成膜し、両面にエッチングパターンを形成してSiO2パターンを加工する工程と、
    前記第1のSi基板表面にアモルファス合金膜を成膜し、トーションバーとこれに付随する前記アモルファス合金膜をパターン化する工程と、
    前記アモルファス合金膜の結晶化温度Txとガラス転移温度Tgとの間の過冷却液体領域の温度で熱処理し、前記アモルファス合金膜の残留応力を低減する工程と、
    前記第1のSi基板裏面を異方性ドライエッチングにより、前記ミラー部と静電駆動用の可動コム部及びこれらの支持体となるアンカー枠部を作製する工程と、
    SiO2膜のエッチング工程と、前記第1のSi基板表面に電極と給電配線を形成する工程と、
    更に、前記ミラー部表面に高効率反射膜を形成する工程と
    を含む第1基板製造工程と、
    第2の低抵抗バルクSi基板をガラス基板に接合する工程と、
    前記接合済の第2のSi基板の表面から異方性ドライエッチングにより選択パターンエッチングして固定コム部とアンカー枠部を形成する工程と
    を含む第2基板製造工程と、
    前記第2基板上に前記第1基板を重ね合わせ、前記両者の相対的位置合わせを行った後に、接合層を用いて前記両者を接合する工程と
    を含む静電式可動型マイクロミラーデバイスの製造方法。
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