JP2017031454A - 熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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(1)質量%で、C:0.04〜0.6%、Si:0.01〜3.0%、Mn:0.1〜5.0%、P:0.04%以下、S:0.05%以下、Al:0.001〜2.0%、N:0.01%以下、O:0.01%以下、Sb、SnおよびTeの1種または2種以上:総量で0.010〜0.3%、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、内部酸化層の厚みが5μm以下であり、該内部酸化層の上層としてSb、SnおよびTeの濃化層を有するとともに、引張強度が590MPa以上である機械特性を有することを特徴とする熱延鋼板。
6.71×10−7×exp{1.69×104/(FT+273)}≦t・・・(1)
FT:仕上げ圧延機の最終スタンドの出側での鋼板の表面温度(℃)
(1)化学組成
化学組成を説明する。はじめに必須元素を説明する。
Cは、鋼板の強度を高めるのに有効な元素である。C含有量が0.04%未満では、自動車用として求められる強度を確保できない。一方、C含有量が0.6%超となると溶接性の確保が困難になる。したがって、C含有量は0.04%以上0.6%以下とする。自動車用鋼板の高強度化のニーズより、C含有量の好ましい下限は0.10%であり、さらに好ましくは0.15%である。また、熱延鋼板を酸洗後に冷間圧延を施して用いる場合は、熱延鋼板が硬くなり過ぎるため、C含有量の好ましい上限は0.25%であり、さらに好ましくは0.22%である。
Siは、強化元素であり、熱延鋼板の強度を上昇させることに有効である。また、鉄系炭化物の生成や粗大化の抑制を通じて、強度および成形性を高める。Si含有量が0.01%未満であるとこの効果を得られない。一方、Si含有量が3.0%を超えると、内部酸化層が顕著に成長して熱延鋼板の表面性状が低下するとともに、熱延鋼板が脆化して延性が低下する。したがって、Si含有量は0.01%以上3.0%以下とする。同様の観点からSi含有量の好ましい範囲は0.05%以上2.0%以下である。
Mnは、強化元素であり、熱延鋼板の強度を上昇させることに有効である。Mn含有量が0.1%未満ではこの効果を得られない。一方、Mn含有量が5.0%を超えると、P,Sとの共偏析を助長して加工性の著しい劣化を招く。このため、Mn含有量は0.1%以上5.0%以下とする。同様の観点から、Mn含有量の上限は4.5%であることが好ましい。
Pは、熱延鋼板の板厚中央部に偏析する傾向があり、溶接部を脆化させる元素である。P含有量が0.04%を超えると溶接部の脆化が顕著になるため、P含有量は0.04%以下とする。P含有量は好ましくは0.01%以下である。Pの下限値は、特に定める必要はないが、P含有量を0.0001%未満に低減すると、製鋼コストが増加して経済的に不利になるので、現実的には、0.0001%がP含有量の実質的な下限である。
Sは、溶接性と、連続鋳造時および熱間圧延時の製造性とに悪影響を及ぼす元素である。また、Sは、粗大なMnSを形成して、曲げ性や穴拡げ性を阻害する元素でもある。さらに、Sは、Mnと結び付いて粗大なMnSを形成することから、熱延鋼板の曲げ性や穴拡げ性を劣化させるため、できるだけ少なくする必要がある。S含有量が0.05%を超えると、上記悪影響と阻害が顕著になるので、S含有量は、0.05%以下とし、好ましくは0.01%以下とする。S含有量の下限は、特に定める必要はないが、S含有量を0.0001%未満に低減すると、製鋼コストが増加して経済的に不利になるので、現実的には、0.0001%がS含有量の実質的な下限である。
Alは、Siと同様に、鉄系炭化物の生成や粗大化の抑制に有効な元素である。また、Alは、脱酸剤としても活用可能な元素である。Al含有量が0.001%未満では、これらの効果が発現しないので、Al含有量は、0.001%以上であり、好ましくは0.010%以上である。一方、Al含有量が2.0%を超えると、Al系の粗大介在物の個数が増加して、熱延鋼板の曲げ性の劣化や表面傷の原因になるので、Al含有量は、2.0%以下であり、好ましくは1.5%以下である。
Nは、粗大な窒化物を形成し、曲げ性や穴拡げ性を劣化させる元素であり、また、溶接時のブローホール発生の原因になる元素である。N含有量が0.01%を超えると、熱延鋼板の曲げ性や穴拡げ性の劣化が顕著となり、また、熱延鋼板の溶接時にブローホールが発生するので、N含有量は0.01%以下とする。N含有量は好ましくは0.005%以下である。N含有量の下限は、特に定める必要はないが、N含有量を0.0005%未満にすると、製鋼コストの大幅な増加を招くので、現実的には、0.0005%がN含有量の実質的な下限である。
Oは、酸化物を形成して熱延鋼板の伸び、曲げ性さらには穴拡げ性を劣化させる元素である。特に、酸化物が打抜き端面または切断面に介在物として存在すると、切欠き状の傷や粗大なディンプルを形成し、穴拡げ時や強加工時に応力集中を招いて亀裂が発生し、穴拡げ性および/または曲げ性が大幅に低下する。O含有量が0.01%を超えると、上記傾向が顕著となるので、O含有量は0.01%以下とする。O含有量は好ましくは0.005%以下である。O含有量の下限は、特に定めないが、O含有量を0.0001%未満にするには、過度の製鋼コスト高を招き、経済的に好ましくないので、現実的には、0.0001%がO含有量の実質的な下限である。
Sb、SnおよびTeは、いずれも、本発明においても最も重要な元素である。これらの元素を総量で0.010%以上0.3%以下含有したうえで熱間圧延を行うと、これらの元素が、熱延鋼板の地鉄と成長するスケールとの界面に濃化して濃化層を形成し、この濃化層がバリア層として働いて内部酸化層の生成を抑制する。すなわち、本発明においては、Sb、SnおよびTeは、内部酸化層の生成の抑制に効果的に作用する。
(1−10)Mo:1.0%以下、Cr:2.0%以下、Ni:2.0%以下およびCu:2.0%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上
これらの元素は、いずれも、強化元素であり、焼入れ性の向上に寄与する。このため、これらの元素の1種を単独で、またはこれらの元素の2種以上を複合して、必要に応じて含有してもよい。
これらの元素は、いずれも、強化元素であり、析出物強化、フェライト結晶粒の成長抑制による細粒強化、および、再結晶の抑制による転位強化により、鋼板の強度上昇に寄与する。このため、これらの元素の1種を単独で、またはこれらの元素の2種以上を複合して、必要に応じて含有してもよい。
Bは、結晶粒界の強化や鋼の高強度化に有効な元素である。このため、Bを必要に応じて含有してもよい。B含有量が0.1%を超えると、上記効果が飽和してコストが上昇するばかりでなく、熱間圧延時の製造性を阻害するので、B含有量は、0.1%以下であり、好ましくは0.01%以下である。一方、上記効果を確実に奏するためには、B含有量は、0.0001%以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.0005%以上である。
Ca、MgおよびREM(Rare Earth Metal)は、いずれも、鋼の脱酸に有効な元素である。このため、これらの元素の1種を単独で、またはこれらの元素の2種以上を複合して、必要に応じて含有してもよい。これらの元素それぞれの含有量は、0.01%を超えると加工性を阻害するので、0.01%以下とする。好ましくは0.006%以下である。また、これらの元素の2種以上を複合して含有する場合にはその合計含有量は0.04%以下であることが好ましい。一方、上記効果を確実に奏するためには、これらの元素それぞれの含有量は、0.0005%以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.0010%以上である。また、これらの元素の2種以上を複合して含有する場合にはその合計含有量は0.0010%以上であることが好ましい。
上記以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。
内部酸化層は、熱間圧延工程においてスケール直下の地鉄に生成する。内部酸化層は、酸化し易い元素であるSiあるいはMnが選択的に酸化されることによって、生じる。内部酸化層は、鋼板温度が高く、また高温にある時間が長いほど、厚く成長する。
本発明に係る熱延鋼板は、内部酸化層の上層として、Sb,Sn,Teの濃化層を有する。これらの元素の1種または2種以上を総量で0.010%以上0.3%以下含有したうえで熱間圧延を行うと、これらの元素が、熱延鋼板の地鉄と成長するスケールとの界面に濃化して濃化層を形成し、この濃化層がバリア層として働いて内部酸化層の生成を抑制する。
本発明に係る熱延鋼板は、略述すると、スラブに熱間圧延を行い、仕上圧延終了直後に式(1)で定められるt秒間の空冷を行った後、コイルに巻き取って冷却し、その後に巻き戻されて酸洗によるスケール除去を行われることにより、製造される。
このスケール厚さは、巻取り開始時またはその直前の値である。ただし、スケール厚さが20μm超になると、内部酸化層がなくとも酸洗でのスケール剥離性が低下するため、スケール厚さは20μm以下であることが好ましい。
以上説明したスケールは、酸洗により除去される。
本発明に係る熱延鋼板は、590MPa以上、好ましくは780MPa以上、さらに好ましくは980MPa以上、最も好ましくは1180MPa以上の引張強度を有する。
次に、本発明の熱延鋼板の製造方法を説明する。
6.71×10−7×exp{1.69×104/(FT+273)}≦t・・・(1)
圧延直後に十分な空冷を行わずに冷却すると、スケールの成長と内部酸化層の抑制に効果的なSb,Sn,Teの濃化が不十分となる。このため、上式(1)により規定されるt秒間の空冷を行う。
表1に示す化学組成を有する鋼材を溶製し、スラブに表2に示す仕上圧延温度で熱間圧延を行い、仕上圧延終了直後に表2に示す時間の空冷を行った後、表2に示す巻取り温度でコイルに巻き取って冷却し、その後に巻き戻して酸洗によるスケール除去を行うことにより、熱延鋼板A1〜4,B1〜3,C1〜3,D1〜3,E1〜3,F1〜3,G1〜3,H1,2,I1,2,J1〜3,K1,2,L1,2,M1,2,N1,2,O1,2,P1,2,Q1,2,a1,b1,c1,d1,e1,f1を製造した。
Claims (7)
- 質量%で、C:0.04〜0.6%、Si:0.01〜3.0%、Mn:0.1〜5.0%、P:0.04%以下、S:0.05%以下、Al:0.001〜2.0%、N:0.01%以下、O:0.01%以下、Sb、SnおよびTeの1種または2種以上:総量で0.010〜0.3%、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、内部酸化層の厚みが5μm以下であり、該内部酸化層の上層としてSb、SnおよびTeの濃化層を有するとともに、引張強度が590MPa以上である機械特性を有することを特徴とする熱延鋼板。
- 前記濃化層の上に、厚さが7.33×10−3×{100/(Sb、SnおよびTeの総含有量(質量%))−1}μm以上20μm以下であるスケールを有する請求項1に記載された熱延鋼板。
- 前記化学組成は、さらに、質量%で、Mo:1.0%以下、Cr:2.0%以下、Ni:2.0%以下およびCu:2.0%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を有する請求項1または請求項2に記載された熱延鋼板。
- 前記化学組成は、さらに、質量%で、Nb:0.3%以下、Ti:0.3%以下およびV:0.3%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を有する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された熱延鋼板。
- 前記化学組成は、さらに、B:0.1質量%以下を有する請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された熱延鋼板。
- 前記化学組成は、さらに、質量%で、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下およびREM:0.01%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を有する請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された熱延鋼板。
- スラブに粗圧延機および仕上げ圧延機を用いて熱間圧延を行って熱延鋼板を製造する際に、前記仕上げ圧延機を用いる仕上圧延において1050℃以上でデスケーリングを行い、該仕上圧延の終了後に下記(1)式により定められる時間t(秒)の空冷を行った後に、冷却することを特徴とする請求項2から請求項6までのいずれか1項に記載された熱延鋼板の製造方法。
6.71×10−7×exp{1.69×104/(FT+273)}≦t・・・(1)
FT:仕上げ圧延機の最終スタンドの出側での鋼板の表面温度(℃)
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