図1〜6を用いて、セル、セルスタック、モジュールおよびモジュール収容装置について説明する。
以下において、セルスタックを構成するセルとして固体酸化物形の燃料電池セルの例を用いて説明する。
図1は、円筒型および横縞型のセルの一例を示すものであり、(a)は一部破断した斜視図、(b)は縦断面図、(c)は斜視図、(d)は一端側の縦断面図である。以下、同じ構成については同じ符号を用いて説明する。まず、以下に各セルの構成について説明する。
図1(a)、(b)に示すセル100は、いわゆる円筒型のセルの一例を示しており、筒状の支持体を兼ねる多孔質の燃料極(第1電極)3上に、緻密質な固体電解質層4、多孔質な酸素極(第2電極)6がこの順に積層されて円筒状とされている。なお、燃料極3の内側が、燃料ガスが流れる燃料ガス通路2とされ、長手方向Lに沿って設けられている。
固体電解質層4は、ガス遮断性を有するセラミックスからなる厚み40μm以下であることが好ましく、特には20μm以下、さらには15μm以下であることが発電性能向上という点から望ましい。
この円筒型のセル100は、この燃料極3、固体電解質層4および酸素極6が重なっている部位が、発電する素子部aとして機能する。即ち、酸素極6の外側に空気等の酸素含有ガスを流し、且つ燃料ガス通路2に燃料ガス(水素含有ガス)を流し、所定の作動温度まで加熱することにより発電する。
また、図1(b)に示すように、本実施形態において、固体電解質層4は、酸素極6が重なっていない部位を有している。例えば、セル100の一端部(下端部)および他端部(上端部)である。また、図1(b)に示す例においては、酸素極6が重なっていない部位である一端部に、後述する第1層7が設けられている。
図1(c)、(d)に示すセル200は、いわゆる横縞型のセルの一例を示しており、断面が扁平状で、全体的に見て楕円筒状体(言い換えれば楕円柱状)をした絶縁性の支持体1を備えている。支持体1の内部には、適当な間隔で複数の燃料ガス通路2がセル300の長手方向Lに貫通して形成されている。
支持体1は、図1(c)に示されている形状から理解されるように、互いに平行な一対の平坦面nと、一対の平坦面nをそれぞれ接続する弧状面(側面)mとで構成されている。平坦面nの両面は互いにほぼ平行に形成されており、それぞれの平坦面n上に、多孔質な燃料極3、緻密質な固体電解質層4および多孔質な酸素極6を1組として、複数組が隣り合うように設けられており、これらが緻密質なインターコネクタ層8により電気的に接続されている。なお、この燃料極3、固体電解質層4および酸素極6が重なっている部位が、発電する素子部aとして機能する。即ち、酸素極6の外側に空気等の酸素含有ガスを流し、且つ支持体1内の燃料ガス通路2に燃料ガス(水素含有ガス)を流し、所定の作動温度まで加熱することにより発電する。なお、固体電解質層4としては、厚みが40μm以下であることが好ましく、特には20μm以下、さらには15μm以下であることが発電性能向上という点から望ましい。
また、これら各組が設けられていない部位は、燃料ガス通路2を流れるガスが外部に漏れることを防止すべく、ガス遮断性を有するセラミックスからなる固体電解質層4が設けられている。すなわち、固体電解質層4とインターコネクタ層8とで内部を流通する燃料ガスが外部に漏出しないように構成されている。
また、図1(d)において、絶縁性の支持体1上に、燃料極3および酸素極6をそれぞれ1層とした例を示したが、それぞれが2層以上から構成されてもよく、また燃料極3は少なくともその一部が支持体1に埋め込まれた形態であってもよい。
この横縞型のセル200おいても、図1(d)に示すように、固体電解質層4は、酸素極6が重なっていない部位を有している。例えば、セル200の一端部(下端部)である。図1(d)に示す例においては、酸素極6が重なっていない部位である一端部に、後述する第1層7が設けられている。
図2は、中空平板型のセル300の一例を示すものであり、(a)はその横断面図、(b)は一端部側の横断面図、(c)は酸素極側から見た側面図である。
図2に示すセル300は、中空平板型で、断面が扁平状で、全体的に見て楕円筒状体(言い換えれば楕円柱状)をした導電性の支持体1を備えている。支持体1の内部には、適当な間隔で複数の燃料ガス通路2がセル300の長手方向Lに貫通して形成されており、セル300は、この支持体1上に各種の部材が設けられた構造を有している。
図2に示すセル300においては、図2(a)に示されている形状から理解されるように、支持体1は、互いに平行な一対の平坦面nと、一対の平坦面nをそれぞれ接続する弧状面(側面)mとで構成されている。平坦面nの両面は互いにほぼ平行に形成されており、一方の平坦面n(一方側主面:下面)と両側の弧状面mを覆うように多孔質な燃料極(第1電極)3が配置されており、さらに、この燃料極3を覆うように、固体電解質層4が配置されている。固体電解質層4はガス遮断性を有するセラミックスからなり厚みは、40μm以下、特には20μm以下、さらには15μm以下であることが発電性能向上という点から望ましい。
また、固体電解質層4の表面には、中間層9を介して、燃料極3と対面するように、多孔質な酸素極(第2電極)6が配置されている。中間層9は、酸素極6が形成される固体電解質層4上に形成されている。なお、図示していないが、図1に示した円筒型のセル100や横縞型のセル200においても、同様に中間層9を設けてもよい。
酸素極6が積層されていない他方の平坦面n(他方側主面:上面)には、ガス遮断性を
有する導電性セラミックスからなるインターコネクタ層8が形成されている。
すなわち、セル300においては、燃料極3、固体電解質層4は、一方の平坦面(一方側主面:下面)から両端の弧状面mを経由して他方の平坦面n(他方側主面:上面)まで形成されており、固体電解質層4の両端部にはインターコネクタ層8の両端部が積層されて接合されている。固体電解質層4は、一方側主面には全面に設けられている。
また、ガス遮断性を有する固体電解質層4とインターコネクタ層8とで支持体1を取り囲み、内部を流通する燃料ガスが外部に漏出しないように構成されている。言い換えれば、固体電解質層4とインターコネクタ層8とで、ガス遮断性を有する楕円筒状体を形成し、この楕円筒状体の内部が燃料ガス流路とされ、燃料極3に供給される燃料ガスと、酸素極6に供給される酸素含有ガスとが、楕円筒状体で遮断されている。
具体的に説明すると、図2(c)に示すように、平面形状が矩形状の酸素極6が、支持体1の上下端部を除いて形成されており、一方、インターコネクタ層8は、図示しないが支持体1の上端から下端まで形成されており、その左右両端部が、固体電解質層4の左右両端部の表面に接合されている。なお、インターコネクタ層8は後述するように、下端部には設けない構成とすることもできる。
ここで、セル300は、燃料極3と酸素極6とが固体電解質層4を介して対面している部分が発電の素子部aとして機能する。即ち、酸素極6の外側に空気等の酸素含有ガスを流し、且つ支持体1内の燃料ガス通路2に燃料ガス(水素含有ガス)を流し、所定の作動温度まで加熱することにより発電する。そして、かかる発電によって生成した電流は、支持体1に設けられているインターコネクタ層8を介して集電される。
なお、この中空平板型のセル300おいても、図2(b)、(c)に示すように、固体電解質層4は、酸素極6が重なっていない部位を有している。例えば、セル300の一端部(下端部)である。図2(b)、(c)に示す例においては、酸素極6が重なっていない部位である一端部に、後述する第1層7が設けられている。
以下に、本実施形態のセルを構成する各部材について、セル300を用いて説明する。なお、セル100、200においても、特に断りのない限り、下記と同様の材料を用いることができる。
支持体1は、燃料ガスを燃料極3まで透過させるためにガス透過性であること、インターコネクタ層8を介して集電を行うために導電性であることが要求されることから、例えば、Niおよび/またはNiOと、無機酸化物、例えば特定の希土類元素酸化物とにより形成されることが好ましい。
特定の希土類元素酸化物とは、支持体1の熱膨張係数を固体電解質層4の熱膨張係数に近づけるために使用されるものであり、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む希土類元素酸化物が、Niおよび/またはNiOとの組み合わせで使用することができる。このような希土類元素酸化物の具体例としては、Y2O3、Lu2O3、Yb2O3、Tm2O3、Er2O3、Ho2O3、Dy2O3、Gd2O3、Sm2O3、Pr2O3を例示することができ、Niおよび/またはNiOとの固溶、反応が殆どなく、また、熱膨張係数が固体電解質層4と同程度であり、かつ安価であるという点から、Y2O3、Yb2O3が好ましい。
また、本実施形態においては、支持体1を導電性の支持体1とするにあたっては、良好
な導電率を維持し、かつ熱膨張係数を固体電解質層4と近似させるという点で、Niおよび/またはNiO:希土類元素酸化物=35:65〜65:35の体積比で存在することが好ましい。
また、支持体1を絶縁性の支持体1とするにあたっては、例えば、Mg酸化物(MgO)、Niおよび/またはNiOと、特定の希土類酸化物とで形成されることが好ましい。希土類元素酸化物については上述と同様のものを用いることができる。また、MgOは70〜80体積%、希土類元素酸化物は10〜20体積%、Niおよび/またはNiOは10〜25体積%とし、全体として10Ω・cm以上の抵抗率を有することが好ましい。
なお、支持体1中には、要求される特性が損なわれない限りの範囲で、他の金属成分や酸化物成分を含有していてもよい。
また、支持体1は、燃料ガス透過性を有していることが必要であるため、多孔質であり、通常、開気孔率が30%以上、特に35〜50%の範囲にあることが好ましい。また、支持体1の導電率は、300S/cm以上、特に440S/cm以上であることが好ましい。
なお、支持体1の平坦面nの長さ(支持体1の幅方向Wの長さ)は、例えば、15〜35mm、弧状面mの長さ(弧の長さ)は、2〜8mmであり、支持体1の厚み(平坦面n間の厚み)は1.5〜5mmである。支持体1の長さは、例えば、100〜300mmとされている。
燃料極3は、電極反応を生じさせるものであり、それ自体公知の多孔質の導電性セラミックスにより形成することができる。例えば、希土類元素酸化物が固溶したZrO2または希土類元素酸化物が固溶したCeO2と、Niおよび/またはNiOとから形成することができる。なお、希土類元素としては、支持体1において例示した希土類元素を用いることができ、例えばY2O3が固溶したZrO2(YSZ)とNiおよび/またはNiOとから形成することができる。
燃料極3中の希土類元素酸化物が固溶したZrO2または希土類元素酸化物が固溶しているCeO2の含有量は、35〜65体積%の範囲にあるのが好ましく、またNiあるいはNiOの含有量は、65〜35体積%であるのが好ましい。さらに、この燃料極3の開気孔率は、15%以上、特に20〜40%の範囲にあるのが好ましく、その厚みは、1〜30μmであるのが好ましい。
また、燃料極3は、酸素極6に対面する位置に形成されていればよいため、例えば酸素極6が設けられている支持体1の下側の平坦面nにのみ燃料極3が形成されていてもよい。すなわち、燃料極3は支持体1の下側の平坦面nにのみ設けられ、固体電解質層4が燃料極3表面、支持体1の両弧状面m表面および燃料極3が形成されていない支持体1の上側の平坦面n上に形成された構造をしたものであってもよい。
固体電解質層4は、上述したように、3〜15モル%のY、Sc、Yb等の希土類元素酸化物が固溶した部分安定化あるいは安定化ZrO2を主成分として含有することが好ましい。また、希土類元素としては、安価であるという点からYが好ましい。固体電解質層4は、部分安定化あるいは安定化ZrO2からなるセラミックスに限定されるものではなく、従来、公知の、例えば、Gd、Sm等の希土類元素が固溶したセリア系や、ランタンガレード系の固体電解質層であっても良いことは勿論である。
固体電解質層4と後述する酸素極6との間に、固体電解質層4と酸素極6との接合を強
固とするとともに、固体電解質層4の成分と酸素極6の成分とが反応して電気抵抗の高い反応層が形成されることを抑制する目的で中間層9が形成されている。
中間層9としては、Ce以外の他の希土類元素酸化物を含有するCeO2系焼結体からなるもので、例えば、(CeO2)1−x(REO1.5)x(式中、REはSm、Y、Yb、Gdの少なくとも1種であり、xは0<x≦0.3を満足する数)で表される組成を有していることが好ましい。さらには、電気抵抗を低減するという点から、REとしてSmやGdを用いることが好ましく、例えば10〜20モル%のSmO1.5またはGdO1.5が固溶したCeO2からなることが好ましい。なお、中間層9を2層構造とすることもできる。
酸素極6としては、いわゆるABO3型のペロブスカイト型酸化物からなる導電性セラミックスにより形成することが好ましい。かかるペロブスカイト型酸化物としては、Laを含有する遷移金属ペロブスカイト型酸化物、特にAサイトにSrとLaが共存するLaMnO3系酸化物、LaFeO3系酸化物、LaCoO3系酸化物の少なくとも1種が好ましく、600〜1000℃程度の作動温度での電気伝導性が高いという点からLaCoO3系酸化物が特に好ましい。なお、上記ペロブスカイト型酸化物においては、Bサイトに、CoとともにFeやMnが存在しても良い。
また、酸素極6は、ガス透過性を有する必要があり、従って、酸素極6を形成する導電性セラミックス(ペロブスカイト型酸化物)は、開気孔率が20%以上、特に30〜50%の範囲にあることが好ましい。さらに、酸素極6の厚みは、集電性という点から30〜100μmであることが好ましい。
インターコネクタ層8としては導電性セラミックスにより形成されている。燃料ガス(水素含有ガス)および酸素含有ガスと接触するため、耐還元性、耐酸化性を有していることが必要である。このため、耐還元性、耐酸化性を有する導電性セラミックスとしては、例えば、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO3系酸化物)が使用され、特に支持体1および固体電解質層4の熱膨張係数に近づける目的から、BサイトにMgが存在するLaCrMgO3系酸化物が用いられる。インターコネクタ層8材料は導電性セラミックスであればよく、特に限定されるものではない。
また、インターコネクタ層8の厚みは、ガスのリーク防止と電気抵抗という点から、10〜60μmであることが好ましい。この範囲ならばガスのリークを防止できるとともに、電気抵抗を小さくできる。
そして、図1、図2に示す本実施形態のセル100、200、300では、固体電解質層4の酸素極が重なっていない部位上に、多数の粒子で構成された第1層7が設けられている。
図2(c)に示す例のように、第1層7はセル300の下端まで設けられている。セル300の下端部は、後述するように、ガスタンクに接合される根元部となる。よって、セル300の根元部を強化でき、クラック等の発生を抑制できる。
第1層7を構成する材料は、例えば、希土類元素酸化物を含有するジルコニア系酸化物、希土類元素酸化物を含有するセリア系酸化物、ランタンガレード系酸化物等を用いることができる。
ここで、例えば固体電解質層4を構成する材料が、希土類元素酸化物を含有するZrO2を主成分とする場合には、第1層7は固体電解質層4よりも希土類元素酸化物の含有量
が少ないことが好ましい。一方、例えば、固体電解質層4を構成する材料が、希土類元素酸化物を含有するCeO2を主成分とする場合には、第1層7は固体電解質層4よりも希土類元素酸化物の含有量が多いことが好ましい。このような構成とすることにより、第1層7の強度を、固体電解質層4よりも高くすることができ、固体電解質層4に衝撃が加わることによって固体電解質層4が損傷することを抑制することができる上に、固体電解質層4と成分が類似していることから、固体電解質層7と第1層7との接合強度を高めることができる。ここで、主成分とは固体電解質層4や第1層7を構成する元素のうち、90体積%以上を占める成分をいう。
特には、固体電解質層4は部分安定化ジルコニア、例えば、7〜9モル%のY2O3が固溶したZrO2を主成分とすることが、発電性能を向上させる点で望ましい。また、第1層7としては、希土類元素酸化物の含有量が、例えば、3〜5モル%のY2O3が固溶したZrO2を主成分とすることが望ましい。
ここで、第1層7の幅(セル300の幅方向Wの長さ)は、適宜設定することができるが、例えば支持体1の平坦面nの幅と同じとすることができる。一方、第1層7の長さは、セル300の長さによるが、発電領域を確保しつつ、セル300の強度を向上する観点で、例えば、支持体2の長さに対して3〜10%程度とすることができる。
また、第1層7の厚みは、さらに強度を向上する観点で、固体電解質層4の厚みよりも厚くすることが好ましい。それゆえ、例えば、第1層7の厚みは、固体電解質層4の厚みが30μm以下であるのに対して、30〜100μmとすることができる。
ところで、例えば、Niを多く含有してなる導電性の支持体1は、還元雰囲気に曝されると膨張や収縮する程度が大きいため、セル300が還元雰囲気に曝されると、セル300に大きな応力が作用し、第1層7にも大きな応力がかかる。また、後述するガスタンクに耐熱性のシール材等で下端部を固定する場合には、このシール材の膨張や収縮に伴い、第1層7に大きな応力が作用する。それにより、第1層7においては、これらの応力によってクラック等が発生し固体電解質層4の保護機能を損なうおそれがあった。
それゆえ、本実施形態においては、第1層7において、表層部の平均粒径は、内部よりも大きくなっている。この構成により、内部においては平均粒径の小さい構造により強度を保ちつつ、表層部では平均粒径の大きい構造により延性を向上させることができる。従って、セル100、200、300の変形によって第1層7が変形した場合であっても、第1層7表面で変形の応力を緩和できクラック発生を抑制することができる。従って、セル100、200、300の長期信頼性を向上させることができる。
表層部とは、第1層7の表面に露出している粒子を意味する。また、内部とは、第1層7の表面に露出していない粒子を意味する。なお、「表面に露出」と述べたが、ここでいう表面は第1層7の最外表面であればよく、必ずしも外気に露出している必要はない。従って、例えば、第1層7上に別の部材が設けられている場合には、表層部は別の部材との境界に存在することとなる。別の部材との境界の特定は元素マッピング等を用いることができる。
なお、第1層7の表面に露出している粒子を第1粒子群とし、この第1粒子群に接しており内部側に位置する粒子を第2粒子群とし、この第2粒子群に接しており内部側に位置する粒子を第3粒子群とした場合、第2粒子群と第3粒子群のうち2μm以上の粒径を有する粒子については、上述した表層部の粒子とみなしてもよいものとする。また、そのような粒子については、内部の粒子からは外して解釈してもよい。
また、第1層7における表層部は、平均粒径が2〜6μmであることが好ましい。2μm以上である場合には、表層部において延性が向上するので、第1層7表面で変形の応力を緩和できクラック発生を抑制することができる。6μm以下である場合には、表層部において平均粒径が大きくなり過ぎることを抑制することができるので、強度の低下を抑制することができる。
表層部の平均粒径を求めるためには、まずSEMによって倍率10000倍に拡大された第1層7の厚み方向における断面のSEM画像を取得する。次に、ラインプロファイリングの測定線を断面写真上で10個の表層部の粒子を横切るように引いて、平均粒径を算出する。
また、第1層7における内部の平均粒径は0.2〜1.5μmであることが好ましい。0.2μm以上である場合には、内部の平均粒径が小さくなり過ぎず、延性が小さくなり過ぎないので、表層部との延性の差が大きくなり過ぎることを抑制でき、表層部と内部との境界でクラックが生じることを抑制することができる。また、1.5μm以下である場合には、内部の平均粒径が十分小さいので、第1層7の内部における強度を向上させることができる。なお、内部の平均粒径も表層部の平均粒径の算出方法と同様の手法で求めればよい。
以上説明した本実施形態のセル300の作製方法の一例について説明する。
先ず、例えば、Niおよび/またはNiO粉末と、Y2O3などの希土類酸化物の粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合して坏土を調製し、この坏土を用いて押出成形により支持体成形体を作製し、これを乾燥する。なお、支持体成形体として、支持体成形体を900〜1000℃にて2〜6時間仮焼した仮焼体を用いてもよい。
次に、例えば所定の調合組成に従い、NiOと、Y2O3が固溶したZrO2(YSZ)との素原料を秤量、混合する。この後、混合した粉体に、有機バインダーおよび溶媒を混合して燃料極用スラリーを調製する。
そして、希土類元素酸化物が固溶したZrO2粉末に、トルエン、バインダー粉末(下記、ZrO2粉末に付着させるバインダー粉末よりも高分子、例えばアクリル系樹脂)、市販の分散剤等を加えてスラリー化したものをドクターブレード等の方法により、成形してシート状の固体電解質層成形体を作製する。
得られたシート状の固体電解質層成形体上に燃料極用スラリーを塗布し乾燥して燃料極成形体を形成し、シート状の積層成形体を形成する。この燃料極成形体および固体電解質層成形体が積層したシート状の積層成形体の燃料極成形体側の面を導電性支持体成形体に積層し、成形体を形成する。
次いで、上記の積層成形体を800〜1200℃で2〜6時間仮焼する。この後、固体電解質成形体(仮焼体)に、上述の固体電解質層成形体用のスラリーよりも希土類元素酸化物の固溶量が少ないZrO2粉末とバインダー粉末等を用いて第1層用のスラリーを作製し、このスラリーを図2で示すような形状で塗布し、乾燥させる。
ここで、前述したように、第1層において、表層部の平均粒径を内部よりも大きくするためには、第1層となるスラリーを塗布した後、第1層とは異なる材料を当該スラリーの表面に少量添加して、後述するように第1層を焼結させればよい。
また、別の手段としては、第1層とは異なる材料から成る基板を、第1層となるスラリ
ーの表面に当接させた状態で、後述するように第1層を焼結させればよい。
この異なる材料は、希土類元素酸化物を含有するジルコニア系酸化物、希土類元素酸化物を含有するセリア系酸化物、ランタンガレード系酸化物等であればよい。例えば、第1層となるスラリーの材料がY2O3が固溶したZrO2(YSZ)である場合には、表面に添加する材料はGd2O3が固溶したCeO2(GDC)であればよい。
続いて、インターコネクタ層材料(例えば、LaCrMgO3系酸化物粉末)、有機バインダー及び溶媒を混合してスラリーを作製する。
続いて固体電解質層4と酸素極6との間に配置する中間層を形成する。例えば、GdO1.5が固溶したCeO2粉末を800〜900℃にて2〜6時間、熱処理を行い、中間層成形体用の原料粉末を調整する。この原料粉末に、溶媒としてトルエンを添加し、中間層用スラリーを作製し、このスラリーを固体電解質層成形体上に塗布して中間層成形体を作製する。
この後、固体電解質成形体(仮焼体)の両端部上に、インターコネクタ層用成形体の両端部が積層されるように、インターコネクタ層用スラリーを塗布し、積層成形体を作製する。なお、インターコネクタ層用スラリーを調製し、インターコネクタ層用シートを作製し、固体電解質成形体の両端部上に、インターコネクタ層用シートの両端部が積層されるように、インターコネクタ層用シートを積層し、積層成形体を作製することもできる。
次いで、上記の積層成形体を脱バインダー処理し、酸素含有雰囲気中、1400〜1450℃にて2〜6時間、同時焼結(同時焼成)する。前述したように、第1層となるスラリーの表面に当該スラリーとは異なる材料を少量添加した状態、又は、第1層となるスラリーの表面に第1層とは異なる材料から成る基板を当接させた状態で、同時焼成を行った場合、この異なる材料がスラリー中の表層部の粒子に拡散し、この粒子が粒成長を起こす。結果、第1層の表層部の平均粒径が大きくなる。なお、焼成時の粒成長によって表層部の平均粒径を大きくするためには、本同時焼成時のような高温であることが必要である。
さらに、酸素極用材料(例えば、LaCoO3系酸化物粉末)、溶媒および増孔剤を含有するスラリーをディッピング等により中間層上に塗布し、1000〜1300℃で、2〜6時間焼き付けることにより、図2に示す構造の本実施形態のセル300を製造できる。
図3は、上述したセル300の複数個を、導電部材13を介して電気的に直列に接続して構成されたセルスタック装置の一例を示したものであり、(a)はセルスタック装置を概略的に示す側面図、(b)は(a)のセルスタック装置の一部拡大断面図であり、(a)で示した破線で囲った部分を抜粋して示している。なお、(b)において(a)で示した破線で囲った部分に対応する部分を明確とするために矢印にて示しており、(b)で示すセル300においては、上述した中間層9等の一部の部材を省略して示している。
なお、セルスタック装置においては、各セル300を、導電部材13を介して配列することでセルスタック12を構成しており、各セル300の下端部が、セル300に燃料ガスを供給するためのガスタンク16に、ガラスシール材等の絶縁性の接合材17により固定されている。また、ガスタンク16に下端部が固定された弾性変形可能な端部導電部材14により、セル300の配列方向の両端から、セルスタック12を挟持している。
また、図3に示す端部導電部材14においては、セル300の配列方向に沿って外側に向けて延びた形状で、セルスタック12(セル300)の発電により生じる電流を引出す
ための電流引出し部15が設けられている。
図4に、セル300のガスタンク16への固定構造を示す。セル300の下端部は、ガスタンク10の上面に形成された開口部内に挿入され、ガラスシール材等の接合材17により固定されている。
図4は、図2に示すタイプのセル300をガスタンク16に固定した例を示している。図4では第1層7の下端部はガラスシール材等の接合材17に埋設され、これにより、セル300の接合材17で接合された部分を補強でき、セル300の下端部を補強できる。ここで支持体1の還元膨脹・収縮に加えて、耐熱性合金からなるガスタンク16、セル300、接合材17を構成する材料の違いにより、セル300の下端部に応力が生じ、第1
層7にクラック等が発生するおそれがあるが、第1層7において、表層部の平均粒径は、内部よりも大きくなっているため、第1層7においてクラックの発生を抑制できる。従って、長期信頼性が向上したセルスタック装置とすることができる。
図5は、セルスタック装置を収納容器内に収納してなるモジュールである燃料電池モジュール18の一例を示す外観斜視図であり、直方体状の収納容器19の内部に、図4に示したセルスタック装置を収納して構成されている。
なお、セル300にて使用する燃料ガスを得るために、天然ガスや灯油等の原燃料を改質して燃料ガスを生成するための改質器20をセルスタック12の上方に配置している。そして、改質器20で生成された燃料ガスは、ガス流通管21を介してガスタンク16に供給され、ガスタンク16を介してセル300の内部に設けられた燃料ガス通路2に供給される。
なお、図5においては、収納容器19の一部(前後面)を取り外し、内部に収納されているセルスタック装置および改質器20を後方に取り出した状態を示している。図5に示した燃料電池モジュール18においては、セルスタック装置を、収納容器19内にスライドして収納することが可能である。なお、セルスタック装置は、改質器20を含むものとしても良い。
また収納容器19の内部に設けられた酸素含有ガス導入部材22は、図5においてはガスタンク16に並置された一対のセルスタック12の間に配置されるとともに、酸素含有ガスが燃料ガスの流れに合わせて、セル300の側方を下端部から上端部に向けて流れるように、セル300の下端部に酸素含有ガスを供給する。そして、セル300の燃料ガス通路2より排出される燃料ガスを酸素含有ガスと反応させてセル300の上端部側で燃焼させることにより、セル300の温度を上昇させることができ、セルスタック装置の起動を早めることができる。また、セル300の上端部側にて、セル300のガス通路2から排出される燃料ガスと酸素含有ガスとを燃焼させることにより、セル300(セルスタック12)の上方に配置された改質器20を温めることができる。それにより、改質器20で効率よく改質反応を行うことができる。
さらに、本実施形態の燃料電池モジュール18では、上述したセル300を用いたセルスタック装置を収納容器19内に収納してなることから、長期信頼性が向上した燃料電池モジュール18とすることができる。
図6は、外装ケース内に図5で示した燃料電池モジュール18と、セルスタック装置を動作させるための補機とを収納してなるモジュール収納装置である燃料電池装置の一例を示す斜視図である。なお、図6においては一部構成を省略して示している。
図6に示す燃料電池装置23は、支柱24と外装板25とから構成される外装ケース内を仕切板26により上下に区画し、その上方側を上述した燃料電池モジュール18を収納するモジュール収納室27とし、下方側を燃料電池モジュール18を動作させるための補機類を収納する補機収納室28として構成されている。なお、補機収納室28に収納する補機類は省略して示している。
また、仕切板26には、補機収納室28の空気をモジュール収納室27側に流すための空気流通口29が設けられており、モジュール収納室27を構成する外装板25の一部に、モジュール収納室27内の空気を排気するための排気口30が設けられている。
このような燃料電池装置23においては、上述したように、信頼性を向上することができる燃料電池モジュール18をモジュール収納室27に収納して構成されることにより、信頼性の向上した燃料電池装置23とできる。
なお、上述の例のほか、例えば、支持体上に酸素極6、固体電解質層4、燃料極3を配置したセルであっても良い。
さらに、上記形態では燃料電池セル、セルスタック装置、燃料電池モジュールならびに燃料電池装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、セルに水蒸気と電圧とを付与して水蒸気(水)を電気分解することにより、水素と酸素(O2)を生成するセル(電解セル、SOEC)およびこのセルを備えるモジュールおよびモジュール収納装置にも適用することができる。
先ず、平均粒径0.5μmのNiO粉末と、平均粒径0.9μmのY2O3粉末を混合し、有機バインダーと溶媒にて作製した坏土を押出成形法にて成形し、乾燥、脱脂して導電性の支持体成形体を作製した。支持体成形体は、還元後における体積比率が、NiOが48体積%、Y2O3が52体積%であった。
次に、8mol%のY2O3が固溶したマイクロトラック法による粒径が0.8μmのZrO2粉末(固体電解質層原料粉末)に、バインダー粉末と溶媒とを混合して得られたスラリーを用いて、ドクターブレード法にて固体電解質層用シートを作製した。
中間層成形体を形成するためのスラリーは、CeO2を90モル%、希土類元素の酸化物(GdO1.5、SmO1.5)を10モル%含む複合酸化物を、溶媒としてイソプロピルアルコール(IPA)を用いて振動ミル又はボールミルにて粉砕し、900℃にて4時間仮焼処理を行い、再度ボールミルにて解砕処理し、セラミック粒子の凝集度を調製し、この粉体に、バインダーと溶媒とを添加し、混合して作製した。
次に平均粒径0.5μmのNiO粉末とY2O3が固溶したZrO2粉末と有機バインダーと溶媒とを混合した燃料極用スラリーを作製し、固体電解質層用シート上にスクリーン印刷法にて塗布し乾燥して燃料極成形体を形成した。
固体電解質層用シートに燃料極成形体を形成したシート状の積層成形体を、その燃料極成形体側の面を内側にして支持体成形体の所定位置に積層した。
続いて、上記のような成形体を積層した積層成形体を1000℃にて3時間仮焼処理した。固体電解質の仮焼体に、第1層を構成するスラリーを、図2に示す形状に塗布し、乾燥した。第1層を構成するスラリーは、例えば4モル%のY2O3が固溶したZrO2粉末を含有するスラリーである。また、このスラリーの表面にGd2O3が固溶したCeO
2を少量添加した。
この後、中間層成形体を形成するスラリーを、スクリーン印刷法にて、固体電解質仮焼体の上面に塗布し乾燥して、中間層成形体を形成した。
続いて、平均粒径0.7μmのLa(Mg0.3Cr0.7)0.96O3と、有機バインダーと溶媒とを混合したインターコネクタ層用スラリーを作製した。調整したインターコネクタ層用スラリーを、支持体の燃料極(および固体電解質層)が形成されていない部位(支持体が露出した部位)に塗布した。
次いで、上記の積層成形体を脱バインダー処理し、酸素含有雰囲気中で1450℃にて2時間同時焼成した。
次に、平均粒径2μmのLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3粉末と、イソプロピルアルコールとからなる混合液を作製し、固体電解質上面における中間層の表面に噴霧塗布し、酸素極成形体を形成し、1100℃にて4時間で焼き付け、酸素極を形成し、図2に示す第1層7を有するセルを作製した。
なお、作製したセルの寸法は25mm×200mmで、支持体の厚み(平坦面n間の厚み)は2mm、開気孔率35%、燃料極の厚さは10μm、開気孔率24%、固体電解質層の厚みは20μm、酸素極の厚みは50μm、開気孔率40%、インターコネクタ層の厚みは40μmであった。第1層7の厚みは80μmであった。
作製した7本のセル300を、図4に示したように、集電部材を介して電気的に接続したセルスタックの下端部を、ガスタンクの開口部内に挿入し、結晶化ガラスからなる接合材17で接合固定し、セルスタック装置を作製した。この場合に、第1層7の上端部は、接合材17端から上方に5mm露出していた。
以上の通りの方法で、試料No.1〜10のセルスタック装置を作製した。
ここで、試料No.1〜10の第1層では、Y2O3が固溶したZrO2粉末の平均粒径、Gd2O3が固溶したCeO2の量等を調整することによって、表1に示す通り、第1層の表層部および内部の平均粒径を制御した。
これらのセルスタック装置のガスタンク内に水素ガスを供給し、セルの内部に水素ガスを流し、850℃で10時間、支持体および燃料極の還元処理を施し、冷却した。
表層部および内部の平均粒径を求めるために、上記還元処理後、まずSEMによって倍率10000倍に拡大された第1層の厚み方向における断面のSEM画像を取得した。次に、ラインプロファイリングの測定線を、断面写真上で表層部、内部の粒子をそれぞれ10個横切るように引いて、平均粒径を算出した。
また、還元処理後の第1層におけるクラック発生有無を目視にて確認し、各試料のスタックにおける第1層のクラックが発生したセルの本数をカウントした。その結果を表1に示す。◎、○、△、×は第1層でクラックが発生したセルの本数がそれぞれ0本、1〜2本、3〜4本、5〜6本であることを意味する。
表1から明らかなように、試料No.1では、第1層でクラックが発生したセルの本数が多かった。これは、第1層において、表層部の平均粒径は、内部よりも小さくなっていたからである。
また、試料No.2、10では、試料No.1と比較して、第1層でクラックが発生したセルの本数が少なかった。これは、第1層において、表層部の平均粒径は、内部よりも大きくなっていたからである。
また、試料No.3、9では、試料No.2、10と比較して、第1層でクラックが発生したセルの本数が少なかった。これは、第1層において、表層部の平均粒径は2〜6μmだったからである。
また、試料No.4〜8では、試料No.3、9と比較して、第1層でクラックが発生したセルの本数が少なかった。これは、第1層において、内部の平均粒径は0.2〜1.5μmだったからである。