JP2017026916A - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Abstract
Description
本発明に係るトナー母体粒子は、主成分としてのビニル樹脂および結晶性樹脂を含む結着樹脂を含有するものである。また、トナー母体粒子は、離型剤を含み、その他必要に応じて、着色剤、磁性粉、荷電制御剤などの他のトナー構成成分を含有してもよい。
本発明に係るトナー母体粒子は、主成分としてのビニル樹脂および結晶性樹脂を含む結着樹脂を含む。
ビニル樹脂とは、少なくともビニル単量体を用いた重合により得られる樹脂である。ビニル樹脂として、具体的には、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合体樹脂などが挙げられる。
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンおよびこれらの誘導体など。
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル(n−ブチル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルおよびこれらの誘導体など。
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなど。
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど。
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなど。
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなど。
ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体など。
結晶性樹脂としては、結晶性を有する樹脂であれば特に制限はなく、本技術分野における従来公知の結晶性樹脂を用いることができる。その具体例としては、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリウレア樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリエーテル樹脂等が挙げられる。結晶性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
本発明に係る結晶性樹脂は、ラメラ状結晶構造をトナー母体粒子中に有するため、ハイブリッド構造を有する結晶性樹脂を含んでいると好ましい。ハイブリッド構造を有する結晶性樹脂(以下、「ハイブリッド結晶性樹脂」または「ハイブリッド樹脂」とも称し、複数のセグメントを有さない結晶性樹脂を単に「ノンハイブリッド結晶性樹脂」とも称する。)とは、結晶性樹脂セグメントと結晶性樹脂以外の樹脂セグメントとが化学的に結合した樹脂である。結晶性樹脂セグメントとは、結晶性樹脂に由来する部分を示し、結晶性樹脂以外の樹脂セグメントとは、結晶性樹脂以外の樹脂に由来する部分を示す。結晶性樹脂以外の樹脂としては、例えば、スチレンアクリル樹脂などのビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、結晶性を持たないポリエステル樹脂などが挙げられる。結晶性樹脂以外の樹脂セグメントは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
ハイブリッド結晶性樹脂を構成するビニル樹脂セグメントは、ビニル単量体を重合して得られた樹脂から構成される。ここで、ビニル単量体としては、ビニル樹脂を構成する単量体として上述したものが同様に用いられうるため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、ハイブリッド結晶性樹脂中におけるポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメント(ビニル樹脂セグメント)の含有量(ハイブリッド化率(後述する実施例に記載の「HB率」;質量比))について特に制限はないが、当該ハイブリッド結晶性樹脂のハイブリッド化率は5〜30質量%の範囲内であることがより好ましく、5〜20質量%の範囲内であることがさらに好ましく、5〜10質量%の範囲内であることが特に好ましい。ハイブリッド結晶性樹脂におけるハイブリッド化率の値がこの範囲内であると、本発明に係るトナーの特徴的な構成であるラメラ状結晶構造を形成しやすくなるという利点がある。ハイブリッド結晶性樹脂はノンハイブリッド結晶性樹脂に比べて、もともと結晶性樹脂セグメント部分が集まっているため、結晶化時にこの結晶性樹脂セグメント部分が均一に配列しやすく、ラメラ状に結晶構造が出現しやすい。ハイブリッド結晶性樹脂の中でも、後述の図2に示すような櫛形状のハイブリッド構造を有するものは、特に整った結晶配列になりやすく、ラメラ状結晶構造を取りやすい。
ハイブリッド樹脂を構成する結晶性ポリエステル樹脂セグメントは、多価カルボン酸と多価アルコールとを触媒の存在下で、重縮合反応を行うことにより製造された結晶性ポリエステル樹脂から構成される。ここで、多価カルボン酸および多価アルコールの具体的な種類については、上述した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
「両反応性単量体」とは、結晶性ポリエステル樹脂セグメントとビニル樹脂セグメントとを結合する単量体で、分子内に、結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成するヒドロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、第1級アミノ基および第2級アミノ基から選択される基と、ビニル樹脂セグメントを形成するエチレン性不飽和基との双方を有する単量体である。両反応性単量体は、好ましくはヒドロキシ基またはカルボキシル基とエチレン性不飽和基とを有する単量体であることが好ましい。さらに好ましくは、カルボキシル基とエチレン性不飽和基とを有する単量体であることが好ましい。すなわち、ビニル系カルボン酸であることが好ましい。
ハイブリッド結晶性樹脂を製造する方法としては、既存の一般的なスキームを使用することができる。代表的な方法としては、次の三つが挙げられる。
(2)ビニル樹脂セグメントを予め重合しておき、当該ビニル樹脂セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成するための多価カルボン酸および多価アルコールを反応させることにより、結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成する方法;
(3)結晶性ポリエステル樹脂セグメントおよびビニル樹脂セグメントをそれぞれ予め重合しておき、これらに両反応性単量体を反応させることにより、両者を結合させる方法。
本発明のトナー母体粒子は離型剤を含む。離型剤の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、酸化型のポリエチレン、ポリプロピレン等の酸化型ポリオレフィン類、加熱により軟化点を示すシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミド等の脂肪酸アミド類;ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;パラフィンワックス、サゾールワックス等の長鎖炭化水素系ワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の分岐鎖状炭化水素ワックス類、モンタンワックス、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸プロピル、モノステアリン酸グリセリド、ジステアリン酸グリセリド、ペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステル、トリメチロールプロパントリベヘン酸エステル、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、ジエチレングリコールモノステアレート、ジプロピレングリコールジステアレート、ジステアリン酸ジグリセリド、ソルビタンモノステアレート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート、コレステリルステアレート等のエステルワックス類などを挙げることができる。これら離型剤は、1種単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。
本発明においては、トナー母体粒子の断面に、結晶性樹脂と離型剤とが接触している構造体と、離型剤と接触していないラメラ状結晶構造を有する結晶性樹脂とを含む点に特徴の1つがある。ここで、結晶性樹脂と離型剤とが一点でも接触して存在しているものであれば、本発明に係る「構造体」に包含され、結晶性樹脂と離型剤との複合体を意味する。このとき、結晶性樹脂の結晶構造はラメラ状結晶構造であってもよいし、その他の構造(例えば、糸状結晶構造)であってもよい。なお、「糸状結晶構造」とは、結晶性樹脂が分子鎖の折り畳みを構成する構造の一つであって、ラメラ状構造を形成する単体(一本分)の構造を意味する。
構造体の形状は特に制限はない。しかしながら、構造体の平均ドメイン径は、200〜2500nmであることが好ましく、300〜2000nmであることがより好ましく、800〜1500nmであることが特に好ましい。上記平均ドメイン径を200nm以上とすることにより、結晶性樹脂とビニル樹脂との過剰な相溶を抑制し、結着樹脂の可塑化を抑制することができ、耐熱保管性や高温度定着領域のオフセット性を向上させることができる。かような観点からは、上記平均ドメイン径は、300nm以上であるとより好ましく、800nm以上であると特に好ましい。一方、上記平均ドメイン径を2500nm以下とすることにより、構造体と単独の離型剤(すなわち、結晶性樹脂と接触していない離型剤)との混合や相溶解の発生が抑制されるため、離型剤粘度の上昇を抑制することができる。したがって、定着分離性の低下を抑制することができる。かような観点からは、上記平均ドメイン径は、2000nm以下であることがより好ましく、1500nm以下であることが特に好ましい。
ラメラ状結晶構造の平均ドメイン径は、100〜2000nmであることが好ましく、300〜1800nmであることがより好ましく、500〜1500nmであることがさらにより好ましく、600〜1300nmであることが特に好ましい。上記平均ドメイン径を100nm以上とすることにより、加熱定着時にラメラ状結晶構造が溶融した際、トナー母体粒子の変形を促進する効果を得やすくすることができる。その結果、定着分離性の低下を抑制することができる。また、ビニル樹脂との相分離効果を十分に得ることができ、結着樹脂の可塑化を抑制することができる結果、耐熱保管性や高温度定着領域のオフセット性を良好に維持することができる。かような観点からは、上記平均ドメイン径は、300nm以上であるとより好ましく、500nm以上であるとさらにより好ましく、600nm以上であると特に好ましい。一方、上記平均ドメイン径を2000nm以下とすることにより、着色剤や離型剤など、その他の添加剤の分散性を良好に維持することができ、結果として、本発明に係る構造体およびラメラ状結晶構造を形成しやすくなると共に、現像性に関する問題を抑制することができる。かような観点からは、上記平均ドメイン径は、1800nm以下であるとより好ましく、1500nm以下であるとさらにより好ましく、1300nm以下であると特に好ましい。
トナー母体粒子の断面積に対する構造体の断面積の比率(Aとする)は、1〜25%であると好ましく、3〜20%であるとより好ましく、5〜15%であると特に好ましい。上記断面積比率Aが1%以上であると、ビニル樹脂との過剰な相溶を抑制することができるため、結着樹脂の可塑化を抑制することができる。その結果、耐熱保管性や高温度定着領域のオフセット性の低下を抑制することができる。かような観点からは、上記断面積比率Aは、3%以上であるとより好ましく、5%以上であると特に好ましい。一方、上記断面積比率Aが25%以下であると、構造体と単独の離型剤(すなわち、結晶性樹脂と接触していない離型剤)との混合や相溶解の発生が抑制されるため、離型剤粘度の上昇を抑制することができる。その結果、良好な定着分離性を得ることができる。かような観点からは、上記断面積比率Aは、20%以下であるとより好ましく、15%以下であると特に好ましい。
上記構造体およびラメラ状結晶構造は、トナー母体粒子の断面に存在していればよく、その存在箇所は特定の部分に限定されない。例えば、これらの各構造は、トナー母体粒子の表層(表面)および内部の両方に存在していてもよいが、トナー母体粒子の内部に存在していると好ましい。より好ましくは、トナー母体粒子の表面から、トナー母体粒子の粒径の0.1倍以上の深さの領域に存在することが好ましい。このような形態であると、結晶性樹脂がトナー母体粒子の表面に露出することが抑制されるため、帯電性を向上させることができ、また、離型剤の浸み出しを容易にし、定着分離性、耐熱保存性や流動性を向上させることができる。
(1)後述するトナーの製造方法において、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を、トナー母体粒子の構成成分の分散液の昇温前に投入する;
(2)結晶性ポリエステル樹脂として、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を使用する;
(3)結晶性ポリエステル樹脂以外の結着樹脂のモノマー種として長鎖アクリル酸エステルを使用する;
なお、上記の方法(1)〜(3)を、適宜組み合わせて用いてもよい。
本発明に係るトナーにおいて、トナー母体粒子は着色剤を含んでもよい。使用できる着色剤としては、公知の無機または有機着色剤が挙げられる。以下、具体的な着色剤を示す。
本発明に係るトナー母体粒子は荷電制御剤を含んでもよい。荷電制御剤の例としては、例えば、サリチル酸誘導体の亜鉛やアルミニウムによる金属錯体(サリチル酸金属錯体)、カリックスアレーン化合物、有機ホウ素化合物、および含フッ素4級アンモニウム塩化合物などを挙げることができる。
本発明に係るトナー母体粒子は、そのままトナー粒子として使用することが可能であるが、トナーとしての帯電性能や流動性、またはクリーニング性を向上させる観点から、その表面に公知の無機微粒子や有機微粒子などの粒子、滑剤等を外添剤として添加することが好ましい。外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。粒子としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子およびチタニア微粒子などの無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、またはチタン酸ストロンチウム微粒子、チタン酸亜鉛微粒子などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。また、滑剤としては、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩等の高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。これら外添剤は、耐熱保管性および環境安定性の観点から、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸またはシリコーンオイルなどによって表面処理が行われたものであってもよい。
本発明に係るトナーにおいて、トナー母体粒子は、いわゆる単層構造を有するものであってもよいし、コア−シェル構造(コア粒子の表面にシェル部を形成する樹脂を凝集、融着させた形態)を有するものであってもよい。コア−シェル構造の樹脂粒子は、着色剤や離型剤等を含有したガラス転移点が比較的低めの樹脂粒子(コア粒子)表面に、比較的高めのガラス転移点を有する樹脂領域(シェル部)を有する。
本発明に係るトナーにおいては、このトナーを構成する個々のトナー粒子について、帯電特性の安定性、低温定着性の観点から、平均円形度が0.920〜1.000であることが好ましく、0.940〜0.995であることがより好ましい。平均円形度が上記の範囲であることにより、個々のトナー粒子が破砕しにくくなって摩擦帯電付与部材の汚染が抑制されてトナーの帯電性が安定し、また、形成される画像において画質が高いものとなる。トナーの平均円形度は、「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定した値である。具体的には、測定試料(トナー)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA−2100」(Sysmex社製)によって、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3,000〜10,000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出した値である。HPF検出数が上記の範囲であれば、再現性が得られる。
本発明のトナーの体積基準のメジアン径(体積平均粒径)は、好ましくは3〜10μm、より好ましくは4〜8μmである。この範囲であることにより、細線の再現性や、写真画像の高画質化が達成できると共に、トナーの消費量を、大粒径トナーを用いた場合に比して削減することができる。また、トナー流動性も確保できる。トナーの体積平均粒径は、後述のトナーの製造時の凝集・融着工程における凝集剤の濃度や溶剤の添加量、または融着時間、さらには樹脂成分の組成等によって制御することができる。トナーの体積基準のメジアン径は、例えば、「Multisizer3」(ベックマン・コールター株式会社製)により測定できる。
本発明のトナーを製造する方法としては、例えば、粉砕法、重合法、その他公知の方法を挙げることができる。重合法としては、乳化凝集(重合)法、会合凝集法、分散重合法、ミニエマルション法、その他の公知の方法などを挙げることができる。なかでも、粒径の揃った形状制御が可能であり、かつ結晶性樹脂を含むトナーの製造方法としては、乳化凝集(重合)法による製造方法が好ましい。当該方法は、水系媒体中に特定の無機塩を添加し、形状制御性を獲得することができる点、さらに、熱力学的な安定性の観点から結晶成長の進行を制御しやすい点で好ましい。また、乳化凝集法によれば、製造コストおよび製造安定性の観点から、トナー母体粒子の小粒径化を容易に図ることができるのでより好ましい。
上述したように、乳化凝集法は、界面活性剤や分散安定剤によって分散された樹脂粒子の分散液を、必要に応じて着色剤粒子などのトナー母体粒子の構成成分の分散液と混合し、凝集剤を添加することによって所望の粒径となるまで凝集させ、その後または凝集と同時に、樹脂微粒子間の融着を行い、形状制御を行うことにより、トナー母体粒子を形成する方法である。
(b)水系媒体中で、離型剤を含有するビニル樹脂粒子を含む分散液を調製する工程
(c)水系媒体中で、着色剤粒子の分散液を調製する工程
(d)前記結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液と、前記離型剤含有ビニル樹脂粒子の分散液と、前記着色剤粒子の分散液とを混合する工程
(e)前記結晶性ポリエステル樹脂粒子と、前記離型剤含有ビニル樹脂粒子と、前記着色剤粒子とを凝集、融着する工程
(f)熱エネルギーにより熟成させて、トナー母体粒子の形状を調整する熟成工程
(g)トナー母体粒子の分散液を冷却する冷却工程
上記(g)の工程の後、さらに、(h−1)トナー母体粒子の水系分散液からトナー母体粒子を濾別し、当該トナー母体粒子から界面活性剤などを除去する洗浄し、洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥する洗浄、乾燥工程、(h−2)乾燥処理されたトナー母体粒子に外添剤を添加する外添剤処理工程、等を必要に応じて行うことで、トナー粒子を製造することができる。
本工程は、下記工程を含んで構成されることが好ましい:
(A−1)結晶性ポリエステル樹脂合成工程
(A−2)結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程。
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、多価カルボン酸および多価アルコールを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル交換法等を、モノマーの種類によって使い分けて製造する。結晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、上述の結晶性ポリエステル樹脂セグメントを合成するための触媒と同様のものが用いられるため、ここでは詳細な説明は省略する。
結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程は、上記で合成した結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散させて結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液を調製する工程である。
本工程は、トナー母体粒子を構成するビニル樹脂を合成し、このビニル樹脂を水系媒体中に粒子状に分散させ、さらに離型剤を添加してビニル樹脂粒子の分散液を調製する工程である。
着色剤粒子分散液調製工程は、着色剤を水系媒体中に粒子状に分散させて着色剤粒子の分散液を調製する工程である。着色剤の分散処理は、着色剤が均一に分散されることから、水系媒体中において界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われることが好ましい。
混合液調製工程は、上記(a)および(b)の工程にて調製した各粒子分散液を混合する。この時、必要に応じて上記(c)の工程にて調製した着色剤分散液をさらに混合してもよい。各分散液の添加順序等は特に制限されず、また、撹拌速度等の条件も特に制限されない。また、この工程では、上述の各分散液に加え、必要に応じて着色剤粒子、離型剤、荷電制御剤、その他トナー母体粒子の構成成分を混合してもよい。
上記の凝集・融着工程における加熱温度の制御により、ある程度トナーにおけるトナー母体粒子の形状の均一化を図ることができるが、さらなる形状の均一化を図るために、熟成工程を経ることが好ましい。この熟成工程は、加熱温度および加熱時間の制御を行うことにより、粒径が一定で分布が狭く形成したトナー母体粒子の表面が、平滑で均一な形状を有するものとなるよう制御する。具体的には、凝集・融着工程において加熱温度を低めにして樹脂粒子同士の融着の進行を抑制させて均一化を促進させ、この熟成工程においても加熱温度を低めに、かつ、時間を長くしてトナー母体粒子を所望の平均円形度となる、すなわち表面が均一な形状のものとなるよう制御する。上記したように、該平均円形度は、好ましくは0.920〜1.000である。
トナー母体粒子が所望の平均円形度となった後、分散液の冷却を行う。この際、冷却条件を制御することで、それぞれのトナー母体粒子を構成する材料のトナー母体粒子中での存在状態(例えば、各材料のドメイン径や形状、存在位置等)が変化する。冷却速度を遅くすると、例えば、結晶化物質の凝集が促進され、結晶成長が起こり得る。一方、冷却速度を速くすると、例えば、結晶化物質の凝集が抑制され、結晶化が促進せずに熟成工程での構造を保ったままになる傾向がある。上述したように、本発明の特徴である構造体とラメラ状結晶構造との共存状態を作りやすくなる降温速度の目安としては8℃/分以上が好ましい。
洗浄・乾燥工程は、公知の種々の方法を採用して行うことができる。すなわち、上記熟成工程にて所望の平均円形度まで熟成し、冷却した後、例えば遠心分離機などの公知の装置を用いて、固液分離し洗浄を行う。洗浄処理は、濾液の電気伝導度が、例えば5〜10μS/cmレベルになるまで水洗処理を行うものである。
この外添剤処理工程は、乾燥処理したトナー母体粒子に必要に応じて外添剤を添加、混合することにより、トナー粒子を調製する工程である。外添剤の種類や好ましい添加量は上述したとおりであるため、ここでは説明を省略する。外添剤の添加方法としては、乾燥されたトナー母体粒子に外添剤を粉体で添加する乾式法が挙げられ、混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル等の機械式の混合装置が挙げられる。
本発明のトナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる分散型キャリアなど用いてもよい。
[結晶性樹脂の作製]
(合成例1:ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成)
両反応性モノマーを含む、下記に示す組成の付加重合系樹脂(スチレンアクリル樹脂:StAc1)セグメントの原料モノマーおよびラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
n−ブチルアクリレート 12質量部
アクリル酸 2質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 7質量部。
1,6−ヘキサンジオール 118質量部。
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の全量100質量%に対するCPEs以外の樹脂(StAc1)セグメントの含有量(HB率)を下記の表1に示すように変更したこと以外は、上記合成例1と同様にしてハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(2)〜(4)をそれぞれ得た。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(2)〜(4)の数平均分子量(Mn)および融点(Tm)を下記の表1にそれぞれ示す。
付加重合系樹脂(StAc)セグメントを形成するために、下記に示す組成の付加重合系樹脂(スチレンアクリル樹脂:StAc2)セグメントの原料モノマーおよびラジカル重合開始剤を用いたこと以外は、上記合成例1と同様にしてハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(5)を得た。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(5)の数平均分子量(Mn)および融点(Tm)を下記の表1に示す。
n−ブチルアクリレート 11質量部
アクリル酸 5質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 7質量部。
重縮合系樹脂(CPEs)セグメントを形成するために、下記に示す組成の重縮合系樹脂(結晶性ポリエステル樹脂:CPEs2)セグメントの原料モノマーを用いたこと以外は、上記合成例1と同様にしてハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(6)を得た。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(6)の数平均分子量(Mn)および融点(Tm)を下記の表1に示す。
1,4−ブタンジオール 97.7質量部。
重縮合系樹脂(CPEs)セグメントを形成するために、下記に示す組成の重縮合系樹脂(結晶性ポリエステル樹脂:CPEs3)セグメントの原料モノマーを用いたこと以外は、上記合成例1と同様にしてハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(7)を得た。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(7)の数平均分子量(Mn)を下記の表1に示す。
エチレングリコール 80質量部。
重縮合系樹脂(CPEs)セグメントを形成するために、下記に示す組成の重縮合系樹脂(結晶性ポリエステル樹脂:CPEs4)セグメントの原料モノマーを用いたこと以外は、上記合成例1と同様にしてハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(8)を得た。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(8)の数平均分子量(Mn)および融点(Tm)を下記の表1に示す。
1,6−ヘキサンジオール 128.6質量部。
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、テトラデカン二酸281質量部および1,6−ヘキサンジオール206質量部を仕込み、この系を撹拌しながら1時間かけて内温を190℃まで昇温させた。均一に撹拌された状態であることを確認した後、触媒としてのTi(OBu)4を、テトラデカン二酸の仕込み量100質量%に対して0.003質量%の量で投入した。その後、生成する水を留去しながら、6時間かけて内温を190℃から240℃まで昇温させ、さらに温度240℃の条件で6時間かけて脱水縮合反応を継続することによって重合を行うことにより、ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(1)を得た。ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(1)の数平均分子量(Mn)およびガラス転移点(Tg)を下記の表1に示す。
(製造例1:ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H1)の調製)
上記合成例1で得られたハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(1)30質量部を溶融させて溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(1)の移送と同時に、当該乳化分散機に対して、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈した希アンモニア水を中和度65%になるように調整し、これを熱交換器で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。そして、この乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm2の条件で運転することにより、固形分量30質量%のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H1)を調製した。
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(1)に代えて、上記合成例2〜8で得られたハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(2)〜(8)をそれぞれ用いたこと以外は、上記製造例1と同様にして、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H2)〜(H8)をそれぞれ調製した。
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(1)に代えて、上記合成例9で得られたノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(1)を用いたこと以外は、上記製造例1と同様にして、ノンハイブリッド結晶性ポエステル樹脂微粒子の水系分散液(N1)を調製した。
≪第1段重合≫
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部およびイオン交換水3000質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させたものを添加し、再度液温80℃とし、
スチレン 480質量部
n−ブチルアクリレート 250質量部
メタクリル酸 68質量部
からなる単量体を1時間かけて滴下後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液(x1)を調製した。
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱後、樹脂微粒子の分散液(x1)260質量部と、
スチレン 240質量部
n−ブチルアクリレート 111質量部
メタクリル酸 31質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 5.0質量部
離型剤:ベヘン酸ベヘニル(融点73℃) 83質量部
フィッシャートロプシュワックス(融点76℃) 83質量部
からなる単量体混合液(離型剤を含む)を75℃にて溶解させた溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック社製)により、1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
さらに、樹脂微粒子の分散液(x2)にイオン交換水400質量部を添加し、よく混合した後、過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下で、
スチレン 420質量部
n−ブチルアクリレート 145質量部
アクリル酸 49質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 10質量部
からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、ビニル樹脂(StAc樹脂)からなる樹脂微粒子の水系分散液(X1)を調製した。
製造例10に従い、離型剤の種類を、ベヘン酸ベヘニル/フィッシャートロプシュワックスから下記表2に示す種類にそれぞれ変更したこと以外は、製造例1と同様にしてビニル樹脂微粒子の水系分散液(X2)〜(X5)をそれぞれ調製した。なお、このとき、離型剤の総質量部数は変更せずに各水系分散液を調製した。また、ビニル樹脂微粒子の水系分散液(X2)〜(X5)にそれぞれ含まれるビニル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は180〜300nmの範囲内であり、ガラス転移点(Tg)は45〜55℃の範囲内であり、重量平均分子量(Mw)は25,000〜40,000の範囲内であった。
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物530質量部、テレフタル酸145質量部、フマル酸85質量部、および重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド3質量部を15回に分割して入れ、200℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら12時間反応させた。次いで、13.3kPa(100mmHg)の減圧下で反応させ、軟化点が105℃になった時点で取り出し、非晶性ポリエステル樹脂(a−1)を得た。
離型剤としてベヘン酸ベヘニル60質量部と、イオン性界面活性剤「ネオゲン RK」(第一工業製薬社製)5質量部と、イオン交換水240質量部とを混合した溶液を95℃に加熱し、ホモジナイザー「ウルトラタックスT50」(IKA社製)を用いて十分に分散した後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーを用いて分散処理することにより、離型剤分散液(WD−1)を作製した。
離型剤をフィッシャートロプシュワックスに変更したこと以外は、上記製造例16と同様にして離型剤分散液(WD−2)を作製した。
両反応性モノマーを含む、下記に示す組成の付加重合系樹脂(スチレンアクリル樹脂)セグメントの原料モノマーおよびラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
n−ブチルアクリレート 20質量部
アクリル酸 10質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 16質量部。
テレフタル酸 66.9質量部
フマル酸 47.4質量部。
ラウリル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加した。この溶液を撹拌しながら、銅フタロシアニン(C.I.Pigment Blue 15:3)420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子の水系分散液(Cy1)を調製した。上記分散液(Cy1)に含まれる着色剤微粒子の体積基準のメジアン径は110nmであった。
(混合液調製工程および凝集・融着工程)
撹拌装置、温度センサーおよび冷却管を取り付けた反応容器に、ビニル樹脂微粒子の水系分散液(X1)195質量部(固形分換算)、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H1)30質量部(固形分換算)を投入し、さらに全量が2000質量部となるようにイオン交換水を投入した後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加し、溶液のpHを10に調整した。
凝集・融着工程にて生成したトナー母体粒子(1X)の分散液について固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄した後、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー母体粒子(1X)を得た。
得られたトナー母体粒子(1X)100質量部に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)0.6質量部および疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)1.0質量部を添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機社製)により回転翼周速35mm/secで、32℃にて20分間混合した後、45μmの目開きの篩を用いて粗大粒子を除去する外添剤処理を施すことにより、トナー(1)を作製した。
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H1)に代えて、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H2)〜(H8)をそれぞれ用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、トナー(2)〜(8)をそれぞれ作製した。
実施例1の製造方法に従い、ビニル樹脂微粒子の水系分散液(X1)に代えて、(ビニル樹脂微粒子の水系分散液(X2)、(X3)をそれぞれ用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、トナー(9)〜(10)をそれぞれ作製した。
(混合液調製工程および凝集・融着工程)
撹拌装置、温度センサーおよび冷却管を取り付けた反応容器に、ビニル樹脂微粒子の水系分散液(X1)195質量部(固形分換算)、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H1)30質量部(固形分換算)並びにイオン交換水2000質量部を投入した後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して溶液のpHを10に調整した。
凝集・融着工程にて生成したトナー母体粒子(11X)の分散液について固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄した後、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー粒子(11X)を得た。
得られたトナー母体粒子(11X)100質量部に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)0.6質量部および疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)1.0質量部を添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機社製)により回転翼周速35mm/secで、32℃にて20分間混合した後、45μmの目開きの篩を用いて粗大粒子を除去する外添剤処理を施すことにより、トナー(11)を作製した。
ビニル樹脂微粒子の水系分散液(X1)に代えて、ビニル樹脂微粒子の水系分散液(X2)〜(X3)をそれぞれ用いたこと以外は、上記実施例11と同様にして、トナー(12)〜(13)をそれぞれ作製した。
ビニル樹脂微粒子の水系分散液(X1)およびハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H1)に代えて、ビニル樹脂微粒子の水系分散液(X2)〜(X3)、およびハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H8)をそれぞれ用いたこと以外は、上記実施例11と同様にして、トナー(14)〜(15)をそれぞれ作製した。
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H1)を用いなかったこと以外は、上記実施例1と同様にして、トナー(16)を作製した。
ビニル樹脂微粒子の水系分散液(X1)に代えて、ビニル樹脂微粒子の水系分散液(X4)〜(X5)をそれぞれ用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、トナー(17)〜(18)をそれぞれ作製した。
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H1)に代えて、ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(N1)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、トナー(19)を作製した。
ビニル樹脂微粒子の水系分散液(X1)およびハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H1)に代えて、ビニル樹脂微粒子の水系分散液(X2)およびノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(N1)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、トナー(20)を作製した。
ビニル樹脂微粒子の水系分散液(X1)およびハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H1)に代えて、ビニル樹脂微粒子の水系分散液(X3)およびノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(N1)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、トナー(21)を作製した。
ビニル樹脂微粒子の水系分散液(X1)を非晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(AD−1)200質量部に変更し、さらに離型剤分散液(WD−1)27質量部および離型剤分散液(WD−2)27質量部を非晶性ポリエステル樹脂分散液(AD−1)と同時に添加した以外は、上記実施例1と同様にしてトナー(22)を作製した。
実施例および比較例で作製したトナー(1)〜(22)のそれぞれに対して、シリコーン樹脂を被覆した体積基準のメジアン径60μmのフェライトキャリアをトナー濃度が6質量%となるように添加して混合することにより、現像剤(1)〜(22)をそれぞれ作製した。
(トナー母体粒子の断面観察)
下記の装置および条件で、トナー母体粒子の断面を観察した。
装置:透過型電子顕微鏡「JEM−2000FX」(日本電子社製)
試料:四酸化ルテニウム(RuO4)によって染色したトナー母体粒子の切片(切片の厚さ:60〜100nm)
加速電圧:80kV
倍率:50,000倍、明視野像
観察:二次電子像。
得られたトナー(1)3質量部をポリオキシエチルフェニルエーテルの0.2%水溶液35質量部に添加して分散させた後、超音波(日本精機製作所製、US−1200T)により25℃で5分間処理を行い、外添剤をトナー表面から取り除き、TEM観察用のトナー母体粒子を得た。他のトナーについても上記と同様にして外添剤を除去し、TEM観察用のトナー母体粒子を得た。本発明においては、上記操作後の粒子の断面積が評価対象となる。
染色は、真空電子染色装置VSC1R1(フィルジェン株式会社製)を用いて行った。装置手順に従い、染色装置本体に四酸化ルテニウムが入った昇華室を設置し、作製した上記超薄切片を染色チャンバー内に導入後、四酸化ルテニウムによる染色条件として、室温(24〜25℃)、濃度3(染色ガスの圧力:300Pa)、時間10分の条件下で染色した。
染色後、24時間以内に透過型電子顕微鏡「JEM−2000FX」(日本電子株式会社製)を用いて、二次電子像にて観察した。
トナー母体粒子の断面における構造体およびラメラ状結晶構造の大きさ(ドメイン径)は、構造体およびラメラ状結晶構造の水平方向フェレ径(FERE H)として算出した。具体的には、上記と同様にして作製したトナー母体粒子の断面を、透過型電子顕微鏡JEM−2000FX(日本電子株式会社製)により、加速電圧80kVにて50,000倍で撮影し、写真画像をスキャナーにより取り込み、画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)を用いて、構造体および各結晶構造の水平方向フェレ径(FERE H)を測定した。また、同様にして、糸状構造の長径(長軸)および短径(短軸)を測定した。構造体およびラメラ状結晶構造の平均ドメイン径の測定は、トナー母体粒子100個のうち、構造体とラメラ状結晶構造とが共に観察されたものについての算術平均値として算出した。また、比較例に係るトナー(17)については、ラメラ状結晶構造が観測されたものについて、トナー(18)については、構造体が観測されたものについて、トナー(19)〜(22)については、構造体および糸状結晶構造(トナー(22)については、ラメラ状結晶構造が存在しているものも含む)が観測されたものについて、それぞれ算術平均値を算出した。
上述した構造体およびラメラ状結晶構造の大きさの測定方法と同様の方法により、これらの断面積比率(A/B)を測定した。トナー母体粒子の断面積に対する構造体の断面積比率Aおよびトナー母体粒子の断面積に対するラメラ状結晶構造の断面積比率Bを、画像処理解析装置 LUZEX AP(株式会社ニレコ製)の「面積AREA」を用いて測定した。なお、面積は外側の輪郭で囲まれた領域(例えば、構造体は図3の点線で囲った領域、ラメラ状結晶構造は図3の符号4で示されるラメラ状結晶構造を実線で囲った領域)を測定した。この断面積比率についても、トナー(1)〜(15)においては、トナー母体粒子100個のうち、構造体とラメラ状結晶構造とが共に観察されたものについての算術平均値として算出した。なお、比較例に係るトナー(17)については、ラメラ状結晶構造が観測されたものについて、トナー(18)については、構造体が観測されたものについて、トナー(19)〜(22)については、構造体および糸状結晶構造(トナー(22)については、ラメラ状結晶構造が存在しているものも含む)が観測されたものについて、それぞれ算術平均値を算出した。
(1)低温定着性
画像形成装置として、市販のフルカラー複合機「bizhub(登録商標) C754」(コニカミノルタ社製)の、定着上ベルトおよび定着下ローラーの表面温度を変更可能に改造したものを用い、現像剤として現像剤(1)〜(22)をそれぞれ搭載し、常温常湿(温度20℃、相対湿度50%RH)の環境下で、記録材「mondi Color Copy A4 90g/m2」(mondi株式会社製)上に、トナー付着量11.3g/m2のベタ画像を以下の条件で出力した。すなわち、ニップ幅11.2mm、定着時間34msec、定着圧力133kPa、定着温度100〜200℃にて出力する試験を行った。当該試験は、定着温度を5℃刻みで変更しながら、コールドオフセットが発生するまで繰り返し行った。そして、コールドオフセットが発生しなかった最低の定着上ベルトの表面温度を調査し、これを定着下限温度として低温定着性を評価した。結果を下記の表5に示す。なお、各試験において、「定着温度」とは定着上ベルトの表面温度をいう。また、定着下限温度が低いほど低温定着性に優れることを示す。
画像形成装置として、市販のフルカラー複合機「bizhub(登録商標) C754」(コニカミノルタ社製)の、定着上ベルトおよび定着下ローラーの表面温度を変更可能に改造したものを用い、現像剤として現像剤(1)〜(22)をそれぞれ搭載し、常温常湿(温度20℃、相対湿度50%RH)の環境下で、記録材「mondi Color Copy A4 90g/m2」(mondi株式会社製)上に、トナー付着量11.3g/m2のベタ画像を以下の条件で定着させた。すなわち、ニップ幅11.2mm、定着時間34msec、定着圧力133kPa、初期プロセススピードを200mm/secに設定し、設定スピードを25mm/secずつ順次上昇させながら、各プロセススピードにおける未定着画像の定着を行った(定着可能線速の上限を300mm/secとした)。なお、設定温度は低温定着性の評価における各トナーの定着下限温度とした。低温オフセットが確認されず、かつ、折り機を用いて得られた定着画像を折り、これに0.35MPaの空気を吹きつけ、限度見本を参照して折り目の状態を下記の5段階に評価したときにランク2以上となるプロセススピードの上限値を、定着可能なプロセススピード(定着可能線速)とした。また、定着可能線速時の条件のときの折りランクを下記の5段階で評価した。結果を下記の表5に示す。
ランク5:全く折れ目に剥離なし;
ランク4:一部折り目に従い剥離あり;
ランク3:折り目に従い細い線状の剥離あり;
ランク2:折り目に従い太い剥離あり;
ランク1:画像に大きな剥離あり。
「bizhub(登録商標) C754」(コニカミノルタ株式会社製)の改造機を使用し、常温常湿(20℃、50%RH)の環境下で、記録材「PODグロスコート紙 A4 128g/m2」(王子製紙社製)上にて、3cm×2cm面積のパッチ上にトナー付着量10g/m2の未定着画像を形成し、ニップ幅11.2mm、定着時間34msec、定着圧力133kPa、75°光沢度計にて光沢度が60%になるように定着後、画像部と、非画像部及び画像部とが重なるように向かい合わせて重ね、重ねた部分に対して80g/cm2相当になるように重りを載せ、50℃、相対湿度50%RHの恒温恒湿槽で7日間放置した。放置後、重ねた2枚の定着像の画像欠損度合いを以下に示す「G1」〜「G5」の5段階でグレード付けした。なお、ここではG3〜G5を合格レベルとした。結果を下記の表5に示す。
G1:互いの画像部が接着した為、画像が定着されている紙ごと剥がれて、画像欠損が激しく、また非画像部へ明らかな画像の移行が見られる;
G2:画像同士が接着していた為、画像部のところどころに画像欠損の白抜けが発生している;
G3:重ねた2枚の画像を離す際、互いの定着表面に画像のあれやグロス低下は発生するが、画像としては画像欠損が殆どなく許容できるレベル。非画像部に若干の移行が見られる;
G4:重ねた2枚の画像を離す時に、パリッと音がし、非画像部にもわずかに画像移行が見られるが、画像欠損はなく、全く問題無いレベル;
G5:画像部、非画像ともに全く画像欠損や画像移行が見られない。
「bizhub(登録商標) C754」(コニカミノルタ株式会社製)の改造機を使用し、常温常湿環境(温度25℃、相対湿度50%RH)において一晩放置して調湿した記録材「金藤85g/m2 T目」(王子製紙株式会社製)上に、常温常湿環境(温度25℃、相対湿度50%RH)において、ニップ幅11.2mm、定着時間34msec、定着圧力133kPa、上ベルトが160℃となる定着温度で、トナー付着量4.0g/m2の全面ベタ画像を、先端余白を8mmとして出力する試験を、先端余白を7mm、6mm・・・と1mm単位で減少させるよう変化させながら、紙詰まり(ジャム)が発生するまで繰り返し行い、紙詰まり(ジャム)が発生しなかった最小の先端余白を調査し、これによって定着分離性を評価した。最小の先端余白が小さい方が定着分離性に優れることを示す。結果を下記の表5に示す。本発明においては、評価基準○以上を合格とした。
◎:先端余白が2mm以下;
〇:先端余白が2mmを超え、3mm以下;
△:先端余白が3mmを超え、4mm以下;
×:先端余白が4mmを超える。
キャリア19gとトナー1gとを20mlガラス製容器に入れ、毎分200回、振り角度45度、アーム50cmで20分間、下記の二つの環境(低温低湿環境、高温高湿環境)で振った後、ブローオフ法で帯電量を測定した。
高温高湿環境:30℃、85%RH雰囲気に設定
低温低湿環境での帯電量と高温高湿環境での帯電量の差により、下記のようにランク評価した。結果を下記の表5に示す。本明細書においては、「良好」以上を合格とする。
優良:5μC/g未満;
良好:5μC/g以上8μC/g未満;
実用可:8μC/g以上12μC/g未満;
実用不可:12μC/g以上。
2 離型剤、
3 構造体、
4 離型剤とは接触していないラメラ状結晶構造を有する結晶性樹脂、
5 ビニル樹脂
10 ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂、
11 ビニル樹脂セグメント、
12 結晶性ポリエステル樹脂セグメント。
Claims (12)
- 主成分としてのビニル樹脂および結晶性樹脂を含む結着樹脂と、離型剤と、を含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、
前記トナー母体粒子の断面に、
前記結晶性樹脂と前記離型剤とが接触してなる構造体と、
前記離型剤とは接触していないラメラ状結晶構造を有する前記結晶性樹脂と、を含む、静電荷像現像用トナー。 - 前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記構造体の平均ドメイン径が200〜2500nmである、請求項1または2に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記ラメラ状結晶構造の平均ドメイン径が、100〜2000nmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記トナー母体粒子の断面積に対する、前記構造体および前記ラメラ状結晶構造の総断面積比率が、1〜50%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記トナー母体粒子の断面積に対する前記構造体の断面積比率Aと、
前記トナー母体粒子の断面積に対する前記ラメラ状結晶構造の断面積比率Bとが、下記数式(1)の関係を満たす、請求項1〜5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記トナー母体粒子の断面積に対する前記構造体の断面積比率Aが、1〜25%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記トナー母体粒子の断面積に対する前記ラメラ状結晶構造の断面積比率Bが、1〜25%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂セグメントとポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメントとが化学的に結合した、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の静電荷現像用トナー。
- 前記ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメントが、ビニル樹脂セグメントである、請求項9に記載の静電荷現像用トナー。
- 前記ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメントの含有量が、前記ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の全量に対して5〜30質量%である、請求項9または10に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記トナー母体粒子は、コア粒子と前記コア粒子表面を被覆してなるシェル部とを有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
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