JP2017025451A - 布およびその加工方法 - Google Patents

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弘幸 清水
徹郎 山田
Tetsuo Yamada
徹郎 山田
博夫 久保川
Hiroo Kubokawa
博夫 久保川
中野 隆雄
Takao Nakano
隆雄 中野
坂本 雅昭
Masaaki Sakamoto
雅昭 坂本
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Abstract

【課題】本発明は、効果的に断熱性が付与された布およびその加工方法を提供する。【解決手段】本発明者らは、吸熱性材料を芯物質とする蓄熱マイクロカプセル剤、とりわけ吸熱の開始温度が15℃以上40℃以下の範囲であり、かつ吸熱の開始温度の差が2℃以上10℃以下の範囲で異なる吸熱性材料をそれぞれ芯物質とする複数の蓄熱マイクロカプセル剤、および二酸化ケイ素を含有する粒子、とりわけ珪藻土がバインダー樹脂を介して固着されることにより、布に対して効果的に断熱性を付与することが可能となる。【選択図】なし

Description

本発明は、布に対する後加工において、吸熱の開始温度が異なる複数の吸熱性材料を芯物質とする蓄熱マイクロカプセル剤を複合して添加、かつ二酸化ケイ素を含有する粒子を添加して固着することにより、断熱性を有する布およびその加工方法を提供する。
近年の気温の高温化に伴い、建築材料だけでなく衣料品や日用品など様々な分野において温度上昇を抑制する製品へのニーズが高まることが予想される。繊維関連分野においても、夏場における気温が高い環境下で、温度上昇を抑制する機能を有する糸、布および製品等の繊維構造物が求められ、そのような機能性を効果的に付与する加工方法が必要となる。
繊維構造物が布である場合、布表面の温度上昇を抑制することは、熱伝導を抑制する性質すなわち断熱性を有することを意味している。例えば、ある布が熱源と接触した際、接触面と反対側の表面温度の温度上昇を抑制するには、布が厚さの範囲において熱伝導を抑制することが必要である。このためには、布自体における素材、厚さ、密度、組織等を制御するほか、蓄熱剤のように外部からの熱を吸収する加工剤を布に加工する方法や、熱伝導率が低い材料を布に付着する方法などが挙げられる。しかしながら、布に対する効果的な断熱性付与に関して、断熱の機構が異なる材料を複合的に固着することによる影響やその評価についての知見はほとんどない。
蓄熱マイクロカプセル剤(以下、PCM:Phase Changing Material=相変化物質)は蓄熱剤を芯物質としたマイクロカプセルであり、ある温度領域で芯物質が固体から液体、または液体から固体に相変化する。このことから、ある温度以上では芯物質が周囲の熱を吸収し、温度上昇を抑制する機能がある。したがって、PCMを生地に固着することにより、外部からの熱に対して吸熱反応により生地表面の温度上昇を抑制する効果が期待できる。
一方、熱伝導率が低い材料として、二酸化ケイ素が挙げられる。とりわけ珪藻土は二酸化ケイ素を主成分とする粒子状の無機材料で、多孔質により内部に空気層を含有する構造を備えている。PCMが吸熱反応により温度上昇を抑制するのに対して、珪藻土は含有する空気層により空気の対流を抑えて熱伝導を抑制し、温度上昇を抑制すると考えられる。すなわち、PCMおよび二酸化ケイ素はそれぞれ断熱の機構が異なっていると考えられる。
これまで、PCMを布に処理することにより、表面の温度上昇が抑制されたことを示す知見、製品は存在しており、夏場における清涼寝具やペット用品として販売されている。しかしながら、布に対して効果的に断熱性を付与するための材料として、断熱の機構が異なる材料を複合化した知見はほとんどない。そこで、本明細書では、断熱の機構が異なる材料を複合的に布に固着することによる断熱効果を調べた。
従来は、PCMのように温度上昇を抑制する機能を有する加工剤の固着により、布表面の温度上昇を制御していた。本技術によれば、断熱の機構が異なる複数の材料を組み合わせて使用することにより、断熱性を効果的に付与することが可能となる。マイクロカプセルに関する文献では、調温繊維構造物(特許文献1)、熱安定性が優れた繊維(特許文献2)、蓄熱性繊維構造物(特許文献3)、断熱性に関する文献では断熱材(特許文献4)、断熱性を有する成形体(特許文献5)、耐火断熱方法(特許文献6)があるが、布に対して複数の材料を複合化することによる断熱性付与に関しては関係する特許文献は見当たらない。
特開2005-307388号公報 特開1989-85374号公報 WO01192010A1 特開2008-82039号公報 特開1995-69752号公報 特開1997-32152号公報
本発明は、布に対する後加工において、吸熱性材料を芯物質とするPCMおよび二酸化ケイ素を含有する粒子を複合して固着溶液に添加し、これらが固着溶液中のバインダー樹脂を介して布に付着後、熱処理により固着されることにより、効果的に断熱性が付与された布およびその加工方法を提供する。
本発明者らは、布に対する後加工において、吸熱性材料を芯物質とするPCM、とりわけ示差走査熱量測定(以下、DSC:Differential Scanning Calorimetry)における吸熱の開始温度が15℃以上40℃以下の範囲であり、かつ吸熱の開始温度差が2℃以上10℃以下の範囲で異なる吸熱性材料をそれぞれ芯物質とする複数のPCM、および二酸化ケイ素を含有する粒子、とりわけ珪藻土を複合して固着溶液に添加した。これらが固着溶液中のバインダー樹脂を介して布に付着後、熱処理により固着されることにより、布に対して効果的に断熱性を付与することが可能となる。熱特性評価にはDSC測定を行い、断熱性評価は図6に示す方法で行った。
具体的解決手段として本発明は、次の(1)〜(14)に示される。
(1)吸熱性材料を芯物質とする蓄熱マイクロカプセル剤および二酸化ケイ素を含有する粒子が固着されることを特徴とする、布。
(2)前記吸熱性材料における吸熱の開始温度が15℃以上40℃以下であることを特徴とする、(1)に記載の布。
(3)前記蓄熱マイクロカプセル剤および前記二酸化ケイ素を含有する粒子がバインダー樹脂を介して固着されることを特徴とする、(1)または(2)に記載の布。
(4)前記二酸化ケイ素を含有する粒子が珪藻土であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか一項に記載の布。
(5)前記蓄熱マイクロカプセル剤が、吸熱の開始温度が異なる複数の前記吸熱性材料を芯物質とする蓄熱マイクロカプセル剤であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか一項に記載の布。
(6)吸熱の開始温度が15℃以上40℃以下の範囲であり、かつ吸熱の開始温度(単位:℃)差が2℃以上10℃以下の範囲で異なる複数の吸熱性材料を芯物質とする蓄熱マイクロカプセル剤が固着されることを特徴とする布。
(7)前記蓄熱マイクロカプセル剤がバインダー樹脂を介して固着されることを特徴とする、(6)に記載の布。
(8)布に対する後加工において、吸熱性材料を芯物質とする蓄熱マイクロカプセル剤および二酸化ケイ素を含有する粒子が分散した溶液を布に塗布した後、熱処理を行うことを特徴とする、布の加工方法。
(9)前記吸熱性材料における吸熱の開始温度が15℃以上40℃以下であることを特徴とする、(8)に記載の布の加工方法。
(10)前記蓄熱マイクロカプセル剤および前記二酸化ケイ素を含有する粒子がバインダー樹脂を共存させることを特徴とする、(8)または(9)に記載の布の加工方法。
(11)前記二酸化ケイ素を含有する粒子が珪藻土であることを特徴とする、(8)〜(10)のいずれか一項に記載の布の加工方法。
(12)前記蓄熱マイクロカプセル剤が、吸熱の開始温度が異なる複数の前記吸熱性材料を芯物質とする蓄熱マイクロカプセル剤であることを特徴とする、(8)〜(11)のいずれか一項に記載の布の加工方法。
(13)布に対する後加工において、吸熱の開始温度が15℃以上40℃以下の範囲であり、かつ吸熱の開始温度差が2℃以上10℃以下の範囲で異なる複数の吸熱性材料を芯物質とする蓄熱マイクロカプセル剤が分散した溶液を布に塗布した後、熱処理を行うことを特徴とする、布の加工方法。
(14)前記蓄熱マイクロカプセル剤がバインダー樹脂を共存させることを特徴とする、(13)に記載の布の加工方法。
本発明によると、布に対する後加工において、吸熱の開始温度が異なる吸熱性材料を芯物質とする蓄熱マイクロカプセル剤および二酸化ケイ素を含有する粒子を複合して布に固着することにより、効果的に断熱性が付与された布の作製が可能となる。断熱の機構が異なる両者を複合することにより、効果的な断熱性付与が可能となることから、これまでにない加工技術としての寄与が期待できる。
固着溶液について、6種類の作製条件(条件A〜F)を示す図表である。 図1の条件で作製した固着溶液により加工した各試料の固着率を示す図である。 各試料におけるPCMの吸熱反応を示すDSCサーモグラム(熱流束(mcal/s)と温度(℃)との関係図)である。 各試料について、DSC測定結果から求めた吸熱の開始温度Ti(℃)、吸熱ピーク温度Tp(℃)、吸熱の終了温度Te(℃)および吸熱ピーク面積(ΔH(cal/g))を示す図表である。 断熱性評価装置に使用する樹脂製おもりについて、(A)直径の断面図、(B)上から見た図である。 断熱性評価方法について、その概略を示す図である。 断熱性評価において、経過時間(分)と温度(℃)との関係を示す図表である。 断熱性評価において、30分間における抑制温度(℃)を示す図である。
本発明に係る布は、DSC測定における吸熱の開始温度が15℃以上40℃以下の範囲であり、吸熱の開始温度差が2℃以上10℃以下の範囲で異なる吸熱性材料をそれぞれの芯物質とする複数のPCMおよび二酸化ケイ素を含有する粒子、とりわけ珪藻土を複合して固着溶液に添加し、これらが固着溶液中のバインダー樹脂を介して布に付着後、熱処理により固着されたものである。本発明は、これらを複合した材料を固着することにより、断熱性を有する布およびその加工方法を提供する。
布は織物、ニット、不織布などシート状の繊維製品であればよい。布の素材は、綿、麻、毛、絹などの天然繊維が好ましいが、これらに限定されない。レーヨン、キュプラなどの再生繊維、アセテート、トリアセテートなどの半合成繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの合成繊維などに適用可能である。
吸熱性材料を芯物質とするPCMには、大和化学工業(株)製プレサーモ、三木理研工業(株)製蓄熱蓄冷マイクロカプセル等市販のものが挙げられる。また、PCMの芯物質となる吸熱性材料には、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサンなどの脂肪族炭化水素(n-パラフィン類)や芳香族炭化水素、脂肪酸、無機系水和物などが挙げられる。また、これらの吸熱性材料が一つのPCM内に複数種類含まれたもの、別々の吸熱性材料がそれぞれ一つのPCM内に含まれたもののどちらを使用してもよい。前者の場合、使用するPCMは一種類でよく、特定の配合を必要としない長所がある。後者の場合、布に対する後加工において、複数のPCMの配合割合を変化させることでDSC測定による吸熱ピーク面積を制御できる長所がある。
PCMの芯物質となる吸熱性材料は、DSC測定における吸熱の開始温度が15℃以上40℃以下の範囲が好ましく、より好ましくは20℃以上35℃以下の範囲である。15℃未満では、一般的な平均気温、例えば東京における平年の平均気温である15.4℃よりも低く、特に夏場においては熱源と接触する前に吸熱性材料が融解していることから、温度上昇を抑制する効果が発現されないと考えられる。40℃を超えると人間の体温を上回り、快適性を体感できる温度を超えていることから、その温度領域で温度上昇を抑制しても断熱効果の意義が低下すると考えられる。
複数の吸熱性材料の吸熱の開始温度差は2℃以上10℃以下の範囲で異なることが好ましい。温度差が2℃未満では両者のDSCサーモグラムは大部分が重複し、両者の吸熱ピークが明確に分離せず、吸熱量の増大が期待できない。温度差が10℃を超えると両者のDSCサーモグラムはほぼ完全に分離した吸熱ピークとなり、吸熱量の増大が期待できない。複数の吸熱性材料は、同一のPCM内に含まれても、それぞれ別々のPCM内に含まれてもよい。
二酸化ケイ素を含有する粒子には、珪藻土の他、石英、リン珪石(トリディマイト)、クリストバライト、コーサイト、パーライト、シリカゲル、けい砂、石粉などの粒子状の無機材料が挙げられるが、二酸化ケイ素を主成分として多孔質を有する構造が好ましく、珪藻土が最適である。粒子のサイズは直径1mm以下が好ましく、より好ましくは100μm以下である。1mmを超えるとバインダー樹脂を介しての布への固着が困難となる。また、粒子の形状は球状に限定しない。
大和化学工業(株)製プレサーモ、三木理研工業(株)製蓄熱蓄冷マイクロカプセル等市販のPCMは、具体的にはPCMを含む溶液であるが、本明細書では市販されている原液の質量を100%とした。
布に固着するための固着溶液の調製において、市販されている原液のPCMの固着溶液中における質量濃度は20%以上95%以下の範囲が好ましく、より好ましくは40%以上60%以下の範囲である。20%未満ではPCMの固着による断熱性の発現が期待できず、95%を超えるとバインダー樹脂の添加量が低下し、布への固着が低減すると考えられる。
布に固着するための固着溶液の調製において、二酸化ケイ素を含有する粒子の質量濃度は、1%以上30%以下の範囲が好ましく、より好ましくは5%以上20%以下の範囲である。1%未満では二酸化ケイ素を含有する粒子の固着による断熱性の発現が期待できず、30%を超えると固着溶液の粘性が著しく高くなり、溶液中に布を浸漬することが困難となる。
布に加工する際の固着溶液において、吸熱性材料を芯物質とするPCMおよび二酸化ケイ素を含有する粒子の合計の質量濃度は、21%以上95%以下の範囲が好ましく、より好ましくは45%以上80%以下の範囲である。21%未満では断熱性の発現が期待できず、95%を超えるとバインダー樹脂の添加量が低下し、布への固着量が低減すると考えられる。
バインダー樹脂は、PCMおよび二酸化ケイ素を含有する粒子を固着できるものであればよい。一般的には、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。
布に固着するための固着溶液の調製において、バインダー樹脂の質量濃度は、5%以上10%以下が好ましく、この濃度範囲で固着溶液を調製する。
PCMおよび二酸化ケイ素を含有する粒子が分散した溶液を布へ塗布する方法は、当該溶液に布を浸漬して絞る方法のほか、捺染によりコーティングする方法、スプレーで塗布する方法等が挙げられるが、当該溶液をより多く布へ塗布するため、布を浸漬して絞る方法が好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(固着溶液作製方法)
吸熱性材料を芯物質とするPCMには、プレサーモC-25およびプレサーモC-31(いずれも大和化学工業(株)製)を使用した。前者は25℃付近、後者は31℃付近で芯物質が固体から液体へ相変化し、それぞれの温度付近で熱を吸収することから温度上昇を抑制する。二酸化ケイ素を含有する粒子には、けいそう土(関東化学(株)製)を使用した。また、これらを固着するために使用するバインダー樹脂にはハイプレンNFS((株)田中直染料店製)を使用した。これらの試薬を使用し図1に示す6種類の条件(A〜F)で固着溶液100gを調製した。
(加工試料作製方法)
図1に記載の条件A〜Fの固着溶液を調製し、厚さが約3mmの綿生地を固着溶液に浸漬し、約70%の絞り率で絞った後、固着のための熱処理を130℃で10分以上行い、試料とした。(以下、例えば生地に条件Aで固着した試料を「試料A」と表記)
(固着率)
上記の固着を行う前に、JIS L 0105 5.1.1における標準状態(20±2℃、65±4%R.H.)であらかじめ試料重量を測定し、固着操作後に上記標準状態で静置後、試料重量を測定した。以下の式より、各試料の「固着率」を算出した。
固着率(%)={(固着後の重量)−(固着前の重量)}×100/(固着前の重量)
PCMを固着した試料について、それらの固着率を求めた結果を図2に示す。同じ濃度のPCMにより作製した試料B、C、Dの固着率はほぼ同じであり、PCMの固着はほぼ同程度とみなすことができた。また、2種類のPCMおよび珪藻土を固着した試料Fの固着率が約45%であった。これは2種類のPCMを固着した試料Dの約25%、珪藻土のみを固着した試料Eの約16%から予想される合計の数値とほぼ一致した。したがって、試料Fに固着した2種類のPCMおよび珪藻土について、両者の比率は約25:16と推定することができる。
2種類のPCMおよび珪藻土を固着した布の固着率は、30%以上が好ましく、より好ましくは40%以上である。固着率が30%未満では断熱の効果が十分に発現されないと考えられる。
(DSC測定による熱特性評価)
各試料についての熱特性を評価するためDSC測定を行った。測定にはネッチ・ジャパン(株)製DSC3200を使用し、昇温速度5℃/min、N2雰囲気下で、約20〜50℃の温度範囲で測定を行い、DSCサーモグラムを求めた。その結果を図3に示す。吸熱の開始温度Ti(℃)は、DSCサーモグラムにおいて、吸熱前の低温側ベースラインを高温側に延長した直線と、吸熱ピークの低温側の曲線にこう配が最大となる点で引いた接線の交点の温度として求めた。吸熱ピーク温度Tp(℃)は、吸熱ピークの頂点の温度とした。吸熱の終了温度Te(℃)は、DSCサーモグラムにおいて、吸熱後の高温側ベースラインを低温側に延長した直線と、吸熱ピークの高温側の曲線にこう配が最大となる点で引いた接線の交点の温度として求めた。また、吸熱前後でベースラインから離れる点とベースラインに戻る点とを直線で結び、その直線とDSC曲線で囲まれた面積を吸熱ピーク面積ΔH(cal/g)とした。吸熱ピーク面積は、単位試料重量あたりの吸熱量を示す値である。これらを算出した結果を図4に示す。
試料Bからは29℃付近、試料Cからは35℃付近に吸熱ピークが認められ、試料Dからは両者の吸熱ピークが認められた。吸熱ピーク面積を比較すると、試料Dが最も大きい値を示した。試料Dではトータルの吸熱量が最も多く、かつ吸熱の開始温度から終了温度までの温度範囲が広いことから、温度上昇の抑制すなわち断熱性の向上に有効であると考えられる。
(断熱性評価)
断熱性は熱伝導を抑制する性質であることから、熱源の上に試料を置いた際、試料上側(熱源接触部と反対側)の表面部の温度の経時変化を求めることで、温度上昇が抑制されるほど断熱性が高いと評価できる。以下に、熱源に接触した生地の上側(裏側)から一定の荷重をかけながら、生地の上側における温度の経時変化を調べる断熱性評価方法を示す。
まず、図5に示す円柱状の樹脂(ナイロン)製おもりの穴の部分に温度ロガーをセットした。次に、引張試験機((株)エー・アンド・デイ製テンシロン万能試験機RTF-1250)を使用し、樹脂製おもりの凹部に温度ロガーを組み込んだ状態で1000Nの荷重をかけ、ボタン型温度ロガー(スーパーサーモクロン:KNラボラトリーズ)と樹脂製おもりを圧着処理して表面を平滑化した。本明細書における断熱性評価法の概略を図6に示す。夏場における地表温度を想定し、60℃に設定したホットプレート(アズワン(株)製HP-4530、平面サイズ:30cm×50cm)上に約15cm×15cmにカットした試料を置いた。その上に、温度ロガーを圧着処理した樹脂製おもりおよび金属製おもり(約900g)の順に載せ、全体で約1kgの荷重をかけた状態で生地上部の温度測定を行った。
断熱性評価を行う環境は、標準状態(20±2℃、65±4%R.H.)であり、2種類の試料(試料1、試料2)を2カ所で同時に測定し、30分間温度測定を行った(1回目の測定)。次に、ホットプレート上の温度のムラを補正するため、両試料の位置を交換し、再度同様の測定を行った(2回目の測定)。これら2回の測定による平均値を測定結果とし、温度上昇が抑制されるほど断熱性が高いと評価した。
未加工試料およびその加工試料に対して、断熱性評価法により得られた、経過時間と測定温度との関係を図7に示す。その結果、未加工試料に比べて試料A、B、C、Eはほぼ同様の温度変化であったのに対して、試料Dが低い温度で推移しており、温度上昇の抑制が認められた。したがって、2種類のPCMを同じ濃度で固着することにより顕著に断熱性が向上した。PCMのみを使用した試料の中で試料Dにおける断熱効果が最大となったのは、熱分析における吸熱ピーク面積すなわちトータルの吸熱量が最も多く、かつ吸熱の開始温度から終了温度までの温度範囲が広いことから、温度上昇の抑制に強く影響したためと考えられる。
さらに、試料Dに対して、試料Fは経過時間に対してさらに低い温度で推移しており、温度上昇のさらなる抑制が認められた。特に、試料Fでは経過時間1分の時点で温度上昇が顕著に抑制された。したがって、2種類のPCMおよび珪藻土を固着することにより、布に断熱性を効果的に付与できることが明らかとなった。また、珪藻土のみを固着した試料Eでは未加工試料とほぼ同様の温度上昇であったのに対し、PCMと複合して固着した試料Fでは、温度上昇の抑制が認められた。このことは、珪藻土を単独で固着するよりもPCMと複合させて固着することにより、断熱性が効果的に発現されたことを示している。
(抑制温度の解析)
試料を置かない状態(ブランク)で、30分間で上昇した温度(30分後の温度−開始時の温度)が35.30(℃)であった。同様の条件で試料を置いた時に30分間で上昇した温度をA(℃)とし、以下のとおり両者の温度差分を「抑制温度」として断熱性評価の指標とした。抑制温度が高いほど、断熱性が高いと評価できる。
「抑制温度」(℃)= 35.30 − A
各試料について抑制温度を解析した結果を図8に示す。未加工試料における抑制温度に対して試料Dの抑制温度は約2.3℃高く、試料Fでは約3.2℃高かった。このことから、PCMのみを使用した条件では、2種類のPCMを複合して固着した試料Dにおいて、断熱性が最も優れていることが示された。また、2種類のPCMおよび珪藻土を複合して固着した試料Fにおいて、断熱性がさらに向上することが示された。
珪藻土のみを固着した試料Eにおいて、未加工試料と比較して断熱性の向上はわずかであったのに対し、2種類のPCMと複合して固着した試料Fでは、断熱性の向上が認められた。
PCMは、吸熱反応により外部の熱を吸収して温度上昇を抑制する機能がある。珪藻土は、一般的に熱伝導率が低い二酸化ケイ素を主成分とし、かつ多孔質により内部に空気を含有するため、空気の移動を留めて熱伝導を抑制すると考えられる。これら断熱の機構が異なる材料を複合して使用することにより、それぞれのもつ断熱性が相乗的に発現されたことを示している。
一般に、二つの異なる物質の接点では反射や散乱が起こり、界面における熱抵抗が発生する。今回使用したPCMおよび珪藻土は、その界面熱抵抗において優れた組み合わせであると考えられ、それぞれ単独での使用より両者を組み合わせることで、断熱の機構が効果的に発現されたと考えられる。
バインダー樹脂を介して布に固着する方法以外にも、PCMおよび二酸化ケイ素を含有する粒子を固着した糸を用いて布を製造する方法でもよい。また、不織布を製造する際に、PCMおよび二酸化ケイ素を含有する粒子を、不織布を構成する繊維に対して絡ませたり、融着させたり、固着させる方法でもよい。
布に対する後加工において、吸熱性材料および二酸化ケイ素を含有する粒子が複合して固着されることで、布に断熱性を効果的に付与することが可能となる。本発明は、断熱の機構が異なる材料の複合化による断熱性への影響に関する新たな知見を提供するとともに、布に対する後加工において、断熱性を効果的に付与することが可能となる。したがって、これまでにない加工技術として、加工業界への寄与が期待できる。また、この方法により、特に夏場におけるスポーツ・レジャー等で温度上昇の抑制が求められる布を使用する様々な分野においての利用が期待できる。

Claims (14)

  1. 吸熱性材料を芯物質とする蓄熱マイクロカプセル剤および二酸化ケイ素を含有する粒子が固着されることを特徴とする、布。
  2. 前記吸熱性材料における吸熱の開始温度が15℃以上40℃以下であることを特徴とする、請求項1に記載の布。
  3. 前記蓄熱マイクロカプセル剤および前記二酸化ケイ素を含有する粒子がバインダー樹脂を介して固着されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の布。
  4. 前記二酸化ケイ素を含有する粒子が珪藻土であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の布。
  5. 前記蓄熱マイクロカプセル剤が、吸熱の開始温度が異なる複数の前記吸熱性材料を芯物質とする蓄熱マイクロカプセル剤であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の布。
  6. 吸熱の開始温度が15℃以上40℃以下の範囲であり、かつ吸熱の開始温度差が2℃以上10℃以下の範囲で異なる複数の吸熱性材料を芯物質とする蓄熱マイクロカプセル剤が固着されることを特徴とする布。
  7. 前記蓄熱マイクロカプセル剤がバインダー樹脂を介して固着されることを特徴とする、請求項6に記載の布。
  8. 布に対する後加工において、吸熱性材料を芯物質とする蓄熱マイクロカプセル剤および二酸化ケイ素を含有する粒子が分散した溶液を布に塗布した後、熱処理を行うことを特徴とする、布の加工方法。
  9. 前記吸熱性材料における吸熱の開始温度が15℃以上40℃以下であることを特徴とする、請求項8に記載の布の加工方法。
  10. 前記蓄熱マイクロカプセル剤および前記二酸化ケイ素を含有する粒子が分散した溶液にバインダー樹脂を共存させることを特徴とする、請求項8または請求項9に記載の布の加工方法。
  11. 前記二酸化ケイ素を含有する粒子が珪藻土であることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一項に記載の布の加工方法。
  12. 前記蓄熱マイクロカプセル剤が、吸熱の開始温度が異なる複数の前記吸熱性材料を芯物質とする蓄熱マイクロカプセル剤であることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか一項に記載の布の加工方法。
  13. 布に対する後加工において、吸熱の開始温度が15℃以上40℃以下の範囲であり、かつ吸熱の開始温度差が2℃以上10℃以下の範囲で異なる複数の吸熱性材料を芯物質とする蓄熱マイクロカプセル剤が分散した溶液を布に塗布した後、熱処理を行うことを特徴とする、布の加工方法。
  14. 前記蓄熱マイクロカプセル剤が分散した溶液にバインダー樹脂を共存させることを特徴とする、請求項13に記載の布の加工方法。
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