JP2017025219A - 被覆半導体ナノ粒子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】半導体ナノ粒子において、蛍光強度の低下が抑止された被覆半導体ナノ粒子を効率よく製造する手段を提供する。【解決手段】半導体ナノ粒子の表面を透光性被覆層前駆体で被覆して透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子を形成する被覆工程と、前記透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子中の前記透光性被覆層前駆体を改質して透光性被覆層を形成する改質工程と、を含み、前記透光性被覆層前駆体はケイ素(Si)および窒素(N)を含有する化合物であり、前記改質は、前記透光性被覆層の改質率が80%以上100%以下となるように行われる、前記半導体ナノ粒子と前記透光性被覆層とを含む、被覆半導体ナノ粒子の製造方法。【選択図】図1
Description
本発明は、被覆半導体ナノ粒子の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、蛍光強度の低下が抑止された被覆半導体ナノ粒子を提供するための技術に関する。
近年、バイオイメージングにおける標識剤やディスプレイ、LED照明などに使用するために発光効率および輝度が高く、種々の色で発光する高性能な蛍光体が不可欠となっている。さらに、ディスプレイや照明においては演色性や耐久性も蛍光体に要望されている。従来の希土類イオンや遷移金属イオンを用いた蛍光体は、有機色素等に比べると耐久性に優れていたためディスプレイ等に使用されてきたが、輝度や演色性は必ずしも十分ではなく、それらを凌ぐ高性能の蛍光体、特に、高輝度の蛍光体が要望されている。
これらの要望を実現するための高性能蛍光体として、半導体ナノ粒子が注目されている。蛍光発光する半導体ナノ粒子としてはII−VI族、およびIII−V族の半導体ナノ粒子が広く知られている。しかし、これらの半導体ナノ粒子を使用する場合、一粒子当たりの輝度はまだまだ足りないというのが現状である。
一般的に、コア半導体ナノ粒子だけでは粒子の輝度は非常に低いため、コア粒子よりもバンドギャップの広い半導体材料をシェルとして用いる技術が提案されている。このようなコア/シェル構造を有する半導体ナノ粒子とすることにより、量子井戸が形成され量子閉じ込め効果により輝度が著しく向上する。
また、半導体ナノ粒子は、凝集したり、外部環境により劣化したりすることによって、輝度が低下することが知られている。したがって、高輝度化する方法として、半導体ナノ粒子の表面を透明なガラス等の材料で被覆する、あるいは、当該材料からなるマトリックス中に分散固定する形で閉じ込めることにより、種々の環境下で長期にわたって高輝度発光特性を示す光学的応用に適した固体材料とする技術が提案されている。
たとえば、特許文献1には、一種以上の量子ドット前駆体を含む無機マトリクス前駆体溶液をスピンコートすることで無機マトリクス薄膜を形成する段階と量子ドット前駆体を量子ドット(半導体ナノ粒子)として成長させつつ、無機マトリクス薄膜を熱処理する段階とを含む、量子ドット−無機マトリクス複合体の製造方法が開示されている。そして、かような製造方法によって、量子効率が高く、量子ドットを高充填密度で含む量子ドット−無機マトリクス複合体を提供しうることが開示されている。
また、たとえば特許文献2には、半導体ナノ粒子を2種の金属アルコキシドで被覆した半導体ナノ粒子を形成し、この半導体ナノ粒子が形成する集合体にさらに金属アルコキシドからなるシリカガラス層を堆積させる、半導体ナノ粒子分散シリカ微粒子の製造方法が開示されている。そして、かような製造方法によって、耐久性が高く、高発光効率のナノ粒子を含む製造された半導体ナノ粒子分散シリカ微粒子が提供しうることが開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、半導体ナノ粒子を粒子状で使用する用途への適応が困難であり、用途が制限されることが課題となっていた。また無機マトリクスを必須としない用途であっても無機マトリクスが含まれた状態となることから、かような用途における低コスト化が困難であることが課題となっていた。
また、特許文献2に開示された技術は、半導体ナノ粒子を粒子状で使用する用途への適応についてもある程度は可能とするものの、耐久性の面でさらなる改善が望まれていた。
そこで、本発明は、蛍光強度の低下が抑止された被覆半導体ナノ粒子を効率よく製造する手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下の手段によって半導体ナノ粒子の蛍光強度の低下が抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
半導体ナノ粒子の表面を透光性被覆層前駆体で被覆して透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子を形成する被覆工程と、
前記透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子中の前記透光性被覆層前駆体を改質して透光性被覆層を形成する改質工程と、を含み、
前記透光性被覆層前駆体はケイ素(Si)および窒素(N)を含有する化合物であり、
前記改質は、下記式1により算出される前記透光性被覆層の改質率が80%以上100%以下となるように行われる、
前記半導体ナノ粒子と前記透光性被覆層とを含む、被覆半導体ナノ粒子の製造方法;
前記透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子中の前記透光性被覆層前駆体を改質して透光性被覆層を形成する改質工程と、を含み、
前記透光性被覆層前駆体はケイ素(Si)および窒素(N)を含有する化合物であり、
前記改質は、下記式1により算出される前記透光性被覆層の改質率が80%以上100%以下となるように行われる、
前記半導体ナノ粒子と前記透光性被覆層とを含む、被覆半導体ナノ粒子の製造方法;
ここで、Zは、前記透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子について、XPS分析装置で測定した前記透光性被覆層前駆体被覆層のケイ素量(Si)、酸素量(O)、および窒素量(N)の合計量を全体量(100mol%)とした場合の窒素量(N) (mol%)であり、
Z´は、被覆半導体ナノ粒子について、XPS分析装置で測定した前記透光性被覆層のケイ素量(Si)、酸素量(O)、および窒素量(N)の合計を100mol%とした場合の窒素量(N) (mol%)である。
Z´は、被覆半導体ナノ粒子について、XPS分析装置で測定した前記透光性被覆層のケイ素量(Si)、酸素量(O)、および窒素量(N)の合計を100mol%とした場合の窒素量(N) (mol%)である。
本発明によれば、蛍光強度の低下が抑制された被覆半導体ナノ粒子を効率よく製造する手段が提供されうる。
以下、本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の形態のみに制限されない。
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」や「(メタ)アクリル」とは、アクリレートおよびメタアクリレートの総称である。(メタ)アクリル等の(メタ)を含む化合物等も同様に、名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。また、本明細書において「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基の総称である。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
<被覆半導体ナノ粒子>
本発明の一形態は、半導体ナノ粒子の表面を透光性被覆層前駆体で被覆して透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子を形成する被覆工程と、前記透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子中の前記透光性被覆層前駆体を改質して透光性被覆層を形成する改質工程と、を含み、前記透光性被覆層前駆体はケイ素(Si)、酸素(O)および窒素(N)を含有する化合物であり、前記改質は、前記透光性被覆層の改質率が80%以上100%以下となるように行われる、前記半導体ナノ粒子と前記透光性被覆層とを含む、被覆半導体ナノ粒子の製造方法に関するものである。かような構成を有する本発明の製造方法は、蛍光強度の低下が抑止された被覆半導体ナノ粒子を効率よく製造することができる。
本発明の一形態は、半導体ナノ粒子の表面を透光性被覆層前駆体で被覆して透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子を形成する被覆工程と、前記透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子中の前記透光性被覆層前駆体を改質して透光性被覆層を形成する改質工程と、を含み、前記透光性被覆層前駆体はケイ素(Si)、酸素(O)および窒素(N)を含有する化合物であり、前記改質は、前記透光性被覆層の改質率が80%以上100%以下となるように行われる、前記半導体ナノ粒子と前記透光性被覆層とを含む、被覆半導体ナノ粒子の製造方法に関するものである。かような構成を有する本発明の製造方法は、蛍光強度の低下が抑止された被覆半導体ナノ粒子を効率よく製造することができる。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を進めた。本発明者らは、その過程で、透光性被覆層を有する被覆半導体ナノ粒子において、透光性被覆層前駆体を透光性被覆層へと改質するときの改質率が低いときに、被覆半導体ナノ粒子の蛍光強度の低下が十分に抑制されないことを見出した。そして、改質率を80〜100%としたときに、被覆半導体ナノ粒子の蛍光強度の低下が十分に抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
本発明者らは、本発明の構成とすることにより、上記課題が解決されうるメカニズムを以下のように推測している。
半導体ナノ粒子を透光性被覆層で被覆するとき、透光性被覆層内部の未改質部分に、被覆工程において添加または発生する水、アンモニア等の劣化種が閉じ込められる。そして、被覆半導体ナノ粒子の透光性被覆層の未改質部分に対して、これらの劣化種が作用することで反応が生じる。その結果、半導体ナノ粒子が劣化して蛍光強度の低下が生じる。ここで、改質率を十分に高くすることによって、かような透光性被覆層の未改質部分が少なくなり、透光性被覆層内部に閉じ込められる劣化種も減少する。これより、半導体ナノ粒子の劣化反応が抑制されることになり、その結果、被覆半導体ナノ粒子の蛍光強度の低下が抑制される。
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
以下、本発明の一形態に係る被覆半導体ナノ粒子の製造方法によって製造される被覆半導体ナノ粒子の構成について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、本発明の一形態に係る被覆半導体ナノ粒子の製造方法によって製造される被覆半導体ナノ粒子の好ましい一形態に係る構成を表す断面模式図である。図1によると、被覆半導体ナノ粒子10は、コア部11およびシェル部12を有する半導体ナノ粒子13と、前処理工程により形成された層15、および透光性被覆層14とを有する。なお、図1では、半導体ナノ粒子13の表面全体に前処理工程により形成された層15が存在し、その外側に透光性被覆層14が存在しているが、これは本発明の好ましい一形態に係る被覆半導体ナノ粒子を模式的に表したものであり、半導体ナノ粒子13の表面の少なくとも一部に前処理工程により形成された層15が存在し、前処理工程により形成された層15の少なくとも一部に透光性被覆層14が存在していればよい。
なお、後述のように、前処理工程により形成された層15は任意に設けられる層である。これより、被覆半導体ナノ粒子10は、前処理工程により形成された層15を設けずに、半導体ナノ粒子13の表面の少なくとも一部に透光性被覆層14が存在する構成としてもよい。
また、本発明における被覆半導体ナノ粒子の製造方法において形成される透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子においても、同様に、半導体ナノ粒子の表面の少なくとも一部に透光性被覆層前駆体被覆層が存在していればよいものとする。
[半導体ナノ粒子]
本明細書において、半導体ナノ粒子とは、半導体材料の結晶で構成され、量子閉じ込め効果を有する所定の大きさの粒子をいい、その粒径が数nm〜数十nm程度の微粒子であり、下記に示す量子ドット効果が得られるものをいう。
本明細書において、半導体ナノ粒子とは、半導体材料の結晶で構成され、量子閉じ込め効果を有する所定の大きさの粒子をいい、その粒径が数nm〜数十nm程度の微粒子であり、下記に示す量子ドット効果が得られるものをいう。
このような半導体ナノ粒子のエネルギー準位Eは、一般に、プランク定数を「h」と、電子の有効質量を「m」と、半導体ナノ粒子の半径を「R」としたとき、下記式(1)で表される。
式(1)で示されるように、半導体ナノ粒子のバンドギャップは、「R−2」に比例して大きくなり、いわゆる、量子ドット効果が得られる。このように、半導体ナノ粒子の粒径を制御、規定することによって、半導体ナノ粒子のバンドギャップ値を制御することができる。すなわち、微粒子の粒径を制御、規定することにより、通常の原子にはない多様性を持たせることができる。そのため、光によって励起させたり、光を所望の波長の光に変換して出射させたりすることができる。本明細書では、このような発光性の半導体ナノ粒子材料を半導体ナノ粒子と定義する。
本形態に係る半導体ナノ粒子は、コア/シェル構造を有することが好ましい。コア/シェル構造を有することにより、量子井戸が形成され量子閉じ込め効果により輝度が向上する。
なお、本明細書中、コア/シェル構造を有する半導体ナノ粒子を、単に「コアシェル半導体ナノ粒子」とも称する。また、本明細書中、コア/シェル構造を有する半導体ナノ粒子の表記法として、たとえば、コア部がCdSe、シェル部がZnSの場合、「CdSe/ZnS」と表記する場合があり、このようなコアシェル半導体ナノ粒子を、「CdSe/ZnSコアシェル半導体ナノ粒子」と称する場合がある。
〔半導体ナノ粒子の構成材料〕
コアシェル半導体ナノ粒子のコア部の構成材料としては、以下のものを使用することができる。たとえば、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ等の長周期型周期表第14族元素の単体;リン(黒リン)等の長周期型周期表第15族元素の単体;セレン、テルル等の長周期型周期表第16族元素の単体;炭化ケイ素(SiC)等の複数の長周期型周期表第14族元素からなる化合物;酸化スズ(IV)(SnO2)、硫化スズ(II、IV)(Sn(II)Sn(IV)S3)、硫化スズ(IV)(SnS2)、硫化スズ(II)(SnS)、セレン化スズ(II)(SnSe)、テルル化スズ(II)(SnTe)、硫化鉛(II)(PbS)、セレン化鉛(II)(PbSe)、テルル化鉛(II)(PbTe)等の長周期型周期表第14族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;リン化ホウ素(BP)、ヒ化ホウ素(BAs)、リン化アルミニウム(AlP)、ヒ化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、リン化ガリウム(GaP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)等の長周期型周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(あるいはIII−V族化合物半導体);硫化アルミニウム(Al2S3)、セレン化アルミニウム(Al2Se3)、硫化ガリウム(Ga2S3)、セレン化ガリウム(Ga2Se3)、テルル化ガリウム(Ga2Te3)、酸化インジウム(In2O3)、硫化インジウム(In2S3)、セレン化インジウム(In2Se3)、テルル化インジウム(In2Te3)等の長周期型周期表第13族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;塩化タリウム(I)(TlCl)、臭化タリウム(I)(TlBr)、ヨウ化タリウム(I)(TlI)等の長周期型周期表第13族元素と長周期型周期表第17族元素との化合物;酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(CdO)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)等の長周期型周期表第12族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物(あるいはII−VI族化合物半導体);硫化ヒ素(III)(As2S3)、セレン化ヒ素(III)(As2Se3)、テルル化ヒ素(III)(As2Te3)、硫化アンチモン(III)(Sb2S3)、セレン化アンチモン(III)(Sb2Se3)、テルル化アンチモン(III)(Sb2Te3)、硫化ビスマス(III)(Bi2S3)、セレン化ビスマス(III)(Bi2Se3)、テルル化ビスマス(III)(Bi2Te3)等の長周期型周期表第15族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化銅(I)(Cu2O)、セレン化銅(I)(Cu2Se)等の長周期型周期表第11族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;塩化銅(I)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、塩化銀(AgCl)、臭化銀(AgBr)等の長周期型周期表第11族元素と長周期型周期表第17族元素との化合物;酸化ニッケル(II)(NiO)等の長周期型周期表第10族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化コバルト(II)(CoO)、硫化コバルト(II)(CoS)等の長周期型周期表第9族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;四酸化三鉄(Fe3O4)、硫化鉄(II)(FeS)等の長周期型周期表第8族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化マンガン(II)(MnO)等の長周期型周期表第7族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;硫化モリブデン(IV)(MoS2)、酸化タングステン(IV)(WO2)等の長周期型周期表第6族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化バナジウム(II)(VO)、酸化バナジウム(IV)(VO2)、酸化タンタル(V)(Ta2O5)等の長周期型周期表第5族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化チタン(TiO2、Ti2O5、Ti2O3、Ti5O9等)等の長周期型周期表第4族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)等の長周期型周期表第2族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr2O4)、セレン化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr2Se4)、硫化銅(II)クロム(III)(CuCr2S4)、セレン化水銀(II)クロム(III)(HgCr2Se4)等のカルコゲンスピネル類、バリウムチタネート(BaTiO3)等が挙げられる。これらコア部の構成材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
コアシェル半導体ナノ粒子のコア部の構成材料としては、以下のものを使用することができる。たとえば、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ等の長周期型周期表第14族元素の単体;リン(黒リン)等の長周期型周期表第15族元素の単体;セレン、テルル等の長周期型周期表第16族元素の単体;炭化ケイ素(SiC)等の複数の長周期型周期表第14族元素からなる化合物;酸化スズ(IV)(SnO2)、硫化スズ(II、IV)(Sn(II)Sn(IV)S3)、硫化スズ(IV)(SnS2)、硫化スズ(II)(SnS)、セレン化スズ(II)(SnSe)、テルル化スズ(II)(SnTe)、硫化鉛(II)(PbS)、セレン化鉛(II)(PbSe)、テルル化鉛(II)(PbTe)等の長周期型周期表第14族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;リン化ホウ素(BP)、ヒ化ホウ素(BAs)、リン化アルミニウム(AlP)、ヒ化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、リン化ガリウム(GaP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)等の長周期型周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(あるいはIII−V族化合物半導体);硫化アルミニウム(Al2S3)、セレン化アルミニウム(Al2Se3)、硫化ガリウム(Ga2S3)、セレン化ガリウム(Ga2Se3)、テルル化ガリウム(Ga2Te3)、酸化インジウム(In2O3)、硫化インジウム(In2S3)、セレン化インジウム(In2Se3)、テルル化インジウム(In2Te3)等の長周期型周期表第13族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;塩化タリウム(I)(TlCl)、臭化タリウム(I)(TlBr)、ヨウ化タリウム(I)(TlI)等の長周期型周期表第13族元素と長周期型周期表第17族元素との化合物;酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(CdO)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)等の長周期型周期表第12族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物(あるいはII−VI族化合物半導体);硫化ヒ素(III)(As2S3)、セレン化ヒ素(III)(As2Se3)、テルル化ヒ素(III)(As2Te3)、硫化アンチモン(III)(Sb2S3)、セレン化アンチモン(III)(Sb2Se3)、テルル化アンチモン(III)(Sb2Te3)、硫化ビスマス(III)(Bi2S3)、セレン化ビスマス(III)(Bi2Se3)、テルル化ビスマス(III)(Bi2Te3)等の長周期型周期表第15族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化銅(I)(Cu2O)、セレン化銅(I)(Cu2Se)等の長周期型周期表第11族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;塩化銅(I)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、塩化銀(AgCl)、臭化銀(AgBr)等の長周期型周期表第11族元素と長周期型周期表第17族元素との化合物;酸化ニッケル(II)(NiO)等の長周期型周期表第10族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化コバルト(II)(CoO)、硫化コバルト(II)(CoS)等の長周期型周期表第9族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;四酸化三鉄(Fe3O4)、硫化鉄(II)(FeS)等の長周期型周期表第8族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化マンガン(II)(MnO)等の長周期型周期表第7族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;硫化モリブデン(IV)(MoS2)、酸化タングステン(IV)(WO2)等の長周期型周期表第6族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化バナジウム(II)(VO)、酸化バナジウム(IV)(VO2)、酸化タンタル(V)(Ta2O5)等の長周期型周期表第5族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化チタン(TiO2、Ti2O5、Ti2O3、Ti5O9等)等の長周期型周期表第4族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)等の長周期型周期表第2族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;酸化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr2O4)、セレン化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr2Se4)、硫化銅(II)クロム(III)(CuCr2S4)、セレン化水銀(II)クロム(III)(HgCr2Se4)等のカルコゲンスピネル類、バリウムチタネート(BaTiO3)等が挙げられる。これらコア部の構成材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、SnS2、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe等の長周期型周期表第14族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物、GaP、GaAs、GaSb、InP、InAs、InSb等のIII−V族化合物半導体、Ga2O3、Ga2S3、Ga2Se3、Ga2Te3、In2O3、In2S3、In2Se3、In2Te3等の長周期型周期表第13族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe等のII−VI族化合物半導体、As2O3、As2S3、As2Se3、As2Te3、Sb2O3、Sb2S3、Sb2Se3、Sb2Te3、Bi2O3、Bi2S3、Bi2Se3、Bi2Te3等の長周期型周期表第15族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物;MgS、MgSe等の長周期型周期表第2族元素と長周期型周期表第16族元素との化合物が好ましい。これらの物質は、毒性の高い陰性元素を含まないので耐環境汚染性や生物への安全性に優れている。これらの材料のうち、InP、CdSe、ZnSe、CdSは、発光の安定性の点で特に好ましい。
シェル部としては、コア部の保護膜として機能する材料であれば、特に制限はなく使用できる。シェル部は、バンドギャップ(禁制帯幅)が、コア部のバンドギャップよりも大きな半導体を含むことが好ましい。シェル部にこのような半導体を用いることによって、半導体ナノ粒子にエネルギー的な障壁が形成され、良好な発光性能を得ることができる。
シェルに好ましく用いられる半導体材料は、用いられるコアのバンドギャップにも依存するが、たとえば、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgS、MgSe、GaAs、GaP、GaAs、GaSb、HgO、HgS、HgSe、HgTe、InAs、InN、InP、InSb、AlAs、AlN、AlP、AlSbからなる群から選択される1種またはそれ以上の半導体、またはそれらの合金もしくは混晶が挙げられる。これらシェル部の材料の中でも、輝度向上の観点から、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdSeがより好ましい。
ここで、コアシェル半導体ナノ粒子としては、CdSe/ZnS、InP/ZnS等を好ましく用いることができる。コアシェル半導体ナノ粒子としては市販品を用いてもよく、たとえばNN−LAB社製CZ−520(実施例で使用した半導体ナノ粒子)、InP/ZnS CoreShell Nanocrystals INP530−100等を用いることができる。
なお、シェル部は、コア部が部分的に露出することによる弊害が生じない限り、コア部の全表面を完全に被覆するものでなくてもよく、コア部の少なくとも一部を被覆していればよい。また、コア/シェル構造は、少なくとも2種類の化合物で形成されていることが好ましく、2種類以上の化合物でグラジエント構造(傾斜構造)を形成していてもよい。
シェル部の厚さは、特に限定されないが、0.1〜10nmであることが好ましく、0.1〜5nmであることがより好ましい。
一般に、半導体ナノ粒子の平均粒径により発光色を制御することができ、被膜の厚さが上記範囲内の値であれば、被膜の厚さが原子数個分に相当する厚さから半導体ナノ粒子1個に満たない厚さであり、半導体ナノ粒子を高密度で充填することができ、十分な発光量が得られる。また、被膜の存在により、お互いのコア粒子の粒子表面に存在する欠陥、ダングリングボンドへの電子トラップによる非発光の電子エネルギーの転移を抑制でき、量子効率の低下を抑えることができる。
コアシェル半導体ナノ粒子の平均粒径(直径)の測定方法としては、公知の方法、たとえば、透過型電子顕微鏡(TEM)により半導体ナノ粒子の粒子観察を行い、そこから粒径分布の数平均粒径として求める方法、ランダムに抽出した所定数の半導体ナノ粒子をTEMで観察し、体積換算した粒径の平均値をとることで算出した体積平均粒径として求める方法、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて平均粒径を求める方法、動的光散乱法による粒径測定装置(たとえば、Malvern社製ZETASIZER Nano Series Nano−ZS)を用いて測定する方法、X線小角散乱法により得られたスペクトルから半導体ナノ粒子の粒径分布シミュレーション計算を用いて粒径分布を導出する方法等を用いることができる。本明細書においては、ランダムに抽出した所定数の半導体ナノ粒子をTEMで観察し、体積換算した粒径の平均値をとることで算出した体積平均粒径で表している。本形態に係るコアシェル半導体ナノ粒子の体積平均粒径としては、具体的には1〜20nmの範囲内であることが好ましく、1〜10nmの範囲内であることがより好ましい。
なお、上述した半導体ナノ粒子の構成材料には、必要に応じて微量の各種元素を不純物としてドープすることができる。このようなドープ物質を添加することにより発光特性をより向上させることができる。
〔コアシェル半導体ナノ粒子の製造方法〕
コアシェル半導体ナノ粒子の製造方法としては、液相法、気相法等、従来行われている公知の任意の方法を用いることができる。
コアシェル半導体ナノ粒子の製造方法としては、液相法、気相法等、従来行われている公知の任意の方法を用いることができる。
液相法の製造方法としては、沈殿法である、共沈法、ゾル−ゲル法、均一沈殿法、還元法などがある。そのほかに、逆ミセル法、超臨界水熱合成法、ホットソープ法などもナノ粒子を作製する上で優れた方法である(たとえば、特開2002−322468号公報、特開2005−239775号公報、特開平10−310770号公報、特開2000−104058号公報等を参照)。
気相法の製造方法としては、対向する原料半導体を電極間で発生させた第一の高温プラズマによって蒸発させ、減圧雰囲気中において無電極放電で発生させた第二の高温プラズマ中に通過させる方法(たとえば特開平6−279015号公報参照)、電気化学的エッチングによって、原料半導体からなる陽極からナノ粒子を分離・除去する方法(たとえば特表2003−515459号公報参照)、レーザーアブレーション法(たとえば特開2004−356163号公報参照)などが用いられる。また、原料ガスを低圧状態で気相反応させて、粒子を含む粉末を合成する方法も好ましく用いられる。
コアシェル半導体ナノ粒子の製造方法としては、液相法による製造方法が好ましい。
また、本形態に係るコアシェル半導体ナノ粒子は、蛍光体としての機能を損なわない限り、合成過程で用いうる安定剤、界面活性剤、溶媒等、他の成分を含んでいてもよい。
〔有機配位子〕
なお、半導体ナノ粒子は、粒子の表面に有機配位子が配位された状態で溶液中に存在しうる。
なお、半導体ナノ粒子は、粒子の表面に有機配位子が配位された状態で溶液中に存在しうる。
有機配位子としては、一般的には、たとえば、オレイルアミン、オクタデシルアミン、トリオクチルホスフィン、トリオクチルホスフィンオキシド、オクタンチオール等が挙げられる。
〔透光性被覆層〕
本形態に係る被覆半導体ナノ粒子の製造方法によって製造される被覆半導体ナノ粒子は、半導体ナノ粒子の表面に、透光性被覆層を有する。該透光性被覆層を有することにより、半導体ナノ粒子を外部の酸素から保護する機能がより向上する。なお、本明細書において、透光性被覆層を有する半導体ナノ粒子を、単に被覆半導体ナノ粒子とも称する。
本形態に係る被覆半導体ナノ粒子の製造方法によって製造される被覆半導体ナノ粒子は、半導体ナノ粒子の表面に、透光性被覆層を有する。該透光性被覆層を有することにより、半導体ナノ粒子を外部の酸素から保護する機能がより向上する。なお、本明細書において、透光性被覆層を有する半導体ナノ粒子を、単に被覆半導体ナノ粒子とも称する。
透光性被覆層の厚さは、0.1nm以上5nm以下であることが好ましい。特に透光性被覆層の厚さが0.1nm以上であると、半導体ナノ粒子の粒子間距離が十分に取れるため、蛍光消光による発光効率の低下を抑制する効果をより向上させることができる。一方、5nm以下であると、透光性被覆層自体の光の吸収等が起こりにくくなり、発光効率がより向上する。該厚さはより好ましくは0.3〜4nmである。該透光性被覆層の厚さは、半導体ナノ粒子に対する透光性被覆層の形成材料の添加量、透光性被覆層を形成する際の反応時間、反応溶液中の半導体ナノ粒子濃度、等の方法により制御することができる。
また、透光性被覆層の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)像の観察により、測定することができる。なお、測定方法の詳細は実施例に記載する。
該透光性被覆層は、ケイ素(Si)を含有する。ケイ素を含有することにより、ガラス状の層となりやすく、被覆半導体ナノ粒子の耐熱性や耐酸化性がより向上する。
本形態に係る透光性被覆層は、半導体ナノ粒子の表面を透光性被覆層前駆体で被覆した透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子を形成する被覆工程、および透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子中の前記透光性被覆層前駆体を改質して透光性被覆層を形成する改質工程を経て形成される。
本発明において、透光性被覆層前駆体は、ケイ素(Si)および窒素(N)を含有する化合物である。
また、改質とは、たとえばポリシラザンを用いる場合、ポリシラザンの一部または全部を、酸化ケイ素、窒化ケイ素、または酸窒化ケイ素等へ転化させる反応を意味する。改質方法は、特に制限されないが、たとえば加熱処理、紫外線照射処理、およびプラズマ処理のうち少なくとも1つの処理によって行うことが好ましい。改質を行うことにより、透光性被覆層のガラス性が高まり、半導体ナノ粒子の耐熱性および耐酸化性が向上する。改質の条件については、後で詳述する。
本形態に係る被覆半導体ナノ粒子の製造方法によって製造される被覆半導体ナノ粒子は、下記式1で算出される透光性被覆層の改質率が80%以上100%以下である。
ここで、Zは、透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子における透光性被覆層前駆体被覆層について、XPS分析装置で測定したケイ素量(Si)、酸素量(O)、および窒素量(N)の合計を100mol%とした場合の窒素量(N) (mol%)であり、
Z´は、被覆半導体ナノ粒子における透光性被覆層について、XPS分析装置で測定したケイ素量(Si)、酸素量(O)、および窒素量(N)の合計を100mol%とした場合の窒素量(N) (mol%)である。
Z´は、被覆半導体ナノ粒子における透光性被覆層について、XPS分析装置で測定したケイ素量(Si)、酸素量(O)、および窒素量(N)の合計を100mol%とした場合の窒素量(N) (mol%)である。
なお、改質率については、後述の被覆半導体ナノ粒子の製造方法および実施例にて詳細に記載する。
このような透光性被覆層の形成に用いられる透光性被覆層前駆体としては、たとえば、透光性が高いことや反応の制御の容易性の観点から、パーヒドロポリシラザン(以下、単にPHPSとも称する)およびオルガノポリシラザン(以下、単にポリシラザンとも称する)、ならびにヘキサメチルジシラザン(HMDS)等のシラザン系化合物であることが好ましい。
ポリシラザンとは、シラザン結合を有する高分子化合物であり、分子内にSi−N結合を有する高分子化合物を意味する。具体的には、その構造内にSi−N、Si−H、N−H等の結合を有し、SiO2、Si3N4、および両方の中間固溶体SiOxNy等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
使用可能なポリシラザンとしては、特に制限されないが、たとえば、下記の一般式(I)で表される単位からなる主骨格を有する化合物であることが好ましい。
上記一般式(I)において、R1、R2、およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、またはアルコキシ基を表すことがより好ましい。
ポリシラザンは、R1、R2、およびR3のすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザン(PHPS)であることがさらに好ましい。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6員環および8員環を中心とする環構造とが存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、分子量によって液体または固体の物質でありうる。当該パーヒドロポリシラザンは、合成品を使用してもよく、市販品を使用してもよい。
また、ポリシラザンの別の例としては、上記一般式(I)で表されるポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(たとえば、特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(たとえば、特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(たとえば、特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(たとえば、特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(たとえば、特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(たとえば、特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
これらの材料は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
<被覆半導体ナノ粒子の製造方法>
〔被覆工程〕
本形態に係る被覆半導体ナノ粒子の製造方法は、半導体ナノ粒子の表面を透光性被覆層前駆体で被覆して透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子を形成する被覆工程を含む。
〔被覆工程〕
本形態に係る被覆半導体ナノ粒子の製造方法は、半導体ナノ粒子の表面を透光性被覆層前駆体で被覆して透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子を形成する被覆工程を含む。
被覆工程における透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子の形成方法としては、特に制限されないが、たとえば、半導体ナノ粒子と透光性樹脂層前駆体とを溶媒中で接触させ、好ましくは0〜180℃の温度で、必要に応じて攪拌を行い処理することにより形成することができる。ここで、前記溶媒は、溶液における溶媒のみではなく、分散液における分散媒も含まれるものとする。ここで、系の温度は0〜100℃であることがより好ましく、20〜45℃であることがさらに好ましい。また、反応時間は好ましくは1〜20時間であることが好ましい。また、反応時間は5〜20時間であることがより好ましい。
また、被覆工程における一連の操作は、不活性ガス雰囲気下で行うことができる。不活性ガスとしては、特に制限されないが、たとえば窒素等が挙げられる。
また、溶媒中で半導体ナノ粒子と透光性被覆層前駆体とを接触させる処理を行う環境としては、たとえば加熱還流下で行うこともできる。このとき、透光性被覆層前駆体は半導体ナノ粒子を被覆しつつ、加熱により透光性被覆層へと改質されることとなる。ここで、加熱還流下処理は、被覆工程、および後述の改質工程の両方を含む処理である。すなわち、加熱還流下処理を行うことは、半導体ナノ粒子の表面を透光性被覆層前駆体で被覆して透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子を形成する被覆工程と、透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子中の透光性被覆層前駆体を改質して透光性被覆層を形成する改質工程と、を含むことを満たす。また、かような処理としては、不活性ガス雰囲気下、かつ加熱還流において行ってもよい。
用いることができる上記溶媒としては、特に制限されないが、たとえば、水、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素等の炭化水素系溶媒;脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル系溶媒、アルコール系溶媒が挙げられる。より具体的に、炭化水素溶媒としては、たとえばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターペン、塩化メチレン、トリクロロエタン等が挙げられる。また、エーテル系溶媒としては、たとえばジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。アルコール系溶媒としては、たとえばメタノール、エタノール、1,2−プロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。また、上記以外にもアセトニトリル等を用いることができる。これらの溶媒は単独でも、または2種以上を混合しても用いることができる。
また、被覆工程の各段階において、遠心分離、溶媒による希釈を適宜組み合わせることで、各段階に応じた適切な溶媒を選択することができる。
透光性被覆層前駆体の使用量は、半導体ナノ粒子100質量部に対して好ましくは100〜5000質量部、より好ましくは500〜2000質量部である。かかる範囲であると、上記した所望の膜厚の透光性被覆層をさらに容易かつ確実に得ることができる。
なお、本明細書において、被覆工程における「半導体ナノ粒子の表面を、透光性被覆層前駆体で被覆する」ことは、透光性被覆層前駆体で半導体ナノ粒子の表面を直接被覆することに加えて、有機配位子や後述の前処理工程によって形成される層など、他の配位子や被覆層を有する半導体ナノ粒子の表面を被覆することも含むものとする。
〔前処理工程]
本形態に係る被覆半導体ナノ粒子の製造方法は、前述の被覆工程の前に、アルコキシ基またはアルコキシシラン基を有する化合物と半導体ナノ粒子とを接触させる前処理工程をさらに含むことが好ましい。かような処理によって、アルコキシ基またはアルコキシシラン基を有する化合物は半導体ナノ粒子に配位するか、または半導体ナノ粒子を被覆する。
本形態に係る被覆半導体ナノ粒子の製造方法は、前述の被覆工程の前に、アルコキシ基またはアルコキシシラン基を有する化合物と半導体ナノ粒子とを接触させる前処理工程をさらに含むことが好ましい。かような処理によって、アルコキシ基またはアルコキシシラン基を有する化合物は半導体ナノ粒子に配位するか、または半導体ナノ粒子を被覆する。
アルコキシ基またはアルコキシシラン基を有する化合物を接触させることで、透光性被覆層はより均一な被覆面を有することができ、より高い蛍光強度低下抑止効果を得ることができる。これは、アルコキシ基またはアルコキシシラン基を有する化合物が半導体ナノ粒子に配位して、透光性被覆層前駆体の半導体ナノ粒子表面上への集積を容易にするためであると考えられる。また、アルコキシ基またはアルコキシシラン基を有する化合物の添加は、半導体ナノ粒子が有機配位子を有する場合においても良好な効果を得ることができる。これは、配位子交換が生じることによって、アルコキシ基またはアルコキシシラン基を有する化合物が半導体ナノ粒子に配位するからであると考えられる。
また、アルコキシ基またはアルコキシシラン基を有する化合物が半導体ナノ粒子に配位した状態で、後述のアルコキシ基またはアルコキシシラン基を有する化合物を加水分解する触媒を添加し、かつアルコキシ基またはアルコキシシラン基を有する化合物をさらに添加することがより一層好ましい。かような処理によって、アルコキシ基またはアルコキシシラン基を有する化合物で半導体ナノ粒子を被覆することができる。このとき、透光性被覆層は、アルコキシ基またはアルコキシシラン基を有する化合物を配位させたのみである場合よりも、さらに均一な被覆面を有することができ、さらに高い蛍光強度低下抑止効果を得ることができる。これは、アルコキシ基またはアルコキシシラン基を有する化合物が半導体ナノ粒子を被覆することで、アルコキシ基またはアルコキシシラン基を有する化合物が半導体ナノ粒子上に、より広い表面積として存在することとなり、透光性被覆層前駆体の半導体ナノ粒子表面上への集積を容易にするためであると考えられる。
前処理工程によって形成される層、すなわちアルコキシ基またはアルコキシシラン基を有する化合物の配位層または被覆層の厚さは、0.1〜10.0nmであることが好ましく、0.3〜8nmであることがより好ましい。
ここで、前処理工程によって形成される層の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)像の観察により、測定することができる。
アルコキシ基を有する化合物としては、特に制限されないが、テトラエトキシシラン(TEOS)、メルカプトトリエトキシシラン(MPS)等が好ましい。これらのアルコキシ基を有する化合物は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても構わない。
アルコキシシリル基を有する化合物としては、特に制限されないが、たとえば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリメトキシビニルシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメチルエトキシエチニルシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、アリールトリメトキシシラン、エトキシジメチルビニルシラン、ブチルトリメトキシシラン、3−トリフルオロアセトキシプロピルトリメトキシシラン、ジアリールジメトキシシラン、ブチルジメトキシビニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−アリールオキシエチルチオメトキシトリメチルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルエトキシ−3−グリシドキシプロピルシラン、ジブトキシジメチルシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、デシルメチルジメトキシシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、オクチロキシトリメチルシラン、ジフェニルエトキシメチルシラン、メルカプトプロピルメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシランが量子ドット表面への吸着性の観点から好ましく、テトラエトキシシラン(TEOS)がより好ましい。これらのアルコキシシリル基を有する化合物は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても構わない。
アルコキシ基またはアルコキシシラン基を有する化合物の使用量は、半導体ナノ粒子100質量部に対して好ましくは100〜10000質量部、より好ましくは150〜5000質量部である。かかる範囲であると、透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子は、シラザン系化合物、特にポリシラザンを透光性被覆層前駆体として用いた場合に、より均一な被覆面を有することができ、より高い蛍光強度低下抑止効果を得ることができる。
さらに、前処理工程においては、必要に応じて、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の界面活性剤、アンモニア等のアルコキシ基またはアルコキシシラン基を有する化合物を加水分解する触媒を反応系内に添加してもよい。ここで、界面活性剤としては、市販品を用いてもよく、たとえば界面活性剤であるシグマアルドリッチ社製イゲパル(登録商標)CO−520等が挙げられる。
界面活性剤の使用量は、半導体ナノ粒子100質量部に対して好ましくは100質量部〜100,000質量部、より好ましくは10,000質量部〜50,000質量部である。かかる範囲であると、より容易かつ確実に透明被覆層前駆体被覆半導体ナノ粒子を得ることができる。
アルコキシ基またはアルコキシシラン基を有する化合物を加水分解する触媒の使用量は、半導体ナノ粒子100質量部に対して好ましくは100〜5000質量部、より好ましくは100〜2000質量部である。かかる範囲であると、半導体ナノ粒子を失活させずに効率的に加水分解を進行させることが可能である。
前処理工程は、半導体ナノ粒子および溶媒を含有する半導体ナノ粒子溶液または分散液中で行うことが好ましい。ここで、系の温度は、特に制限されないが、たとえば室温とすることができる。
また、前処理工程における一連の操作は、不活性ガス雰囲気下で行うことができる。不活性ガスとしては、特に制限されないが、たとえば窒素等が挙げられる。
用いることができる上記溶媒としては、特に制限されないが、たとえば、水、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素等の炭化水素系溶媒;脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル系溶媒、アルコール系溶媒が挙げられる。より具体的に、炭化水素溶媒としては、たとえばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターペン、塩化メチレン、トリクロロエタン等が挙げられる。また、エーテル系溶媒としては、たとえばジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。アルコール系溶媒としては、たとえばメタノール、エタノール、1,2−プロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。また、上記以外にもアセトニトリル等を用いることができる。これらの溶媒は単独でも、または2種以上を混合しても用いることができる。
また、前処理工程の各段階において、遠心分離、溶媒による希釈を適宜組み合わせることで、各段階に応じた適切な溶媒を選択することができる。
〔改質工程〕
本形態に係る被覆半導体ナノ粒子の製造方法は、上記被覆工程で形成した透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子中の前記透光性被覆層前駆体を改質して透光性被覆層を形成する改質工程を含む。
本形態に係る被覆半導体ナノ粒子の製造方法は、上記被覆工程で形成した透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子中の前記透光性被覆層前駆体を改質して透光性被覆層を形成する改質工程を含む。
透光性被覆層前駆体として、たとえばポリシラザンを用いた場合、改質とは、上記したようにポリシラザンの一部または全部を、酸化ケイ素、窒化ケイ素、または酸窒化ケイ素等へ転化させる反応を意味する。以下では主にポリシラザンの改質について説明するが、本発明はこれに限定されない。
ここで、改質は、下記式1により算出される前記透光性被覆層の改質率が80%以上100%以下となるように行われることを特徴とする。改質率が80%未満であると、半導体ナノ粒子が劣化して蛍光強度の低下が生じる。この劣化は、透光性被覆層内部の未改質部分に、被覆工程において添加または発生する水、アンモニア等の劣化種が閉じ込められること、および被覆半導体ナノ粒子の透光性被覆層の未改質部分に対して、これらの劣化種が作用して反応を生じることに起因すると考えられる。同様の観点から、改質率は90%以上100%以下であることが好ましい。
改質率は、XPS分析装置(アルバックファイ株式会社製、Quantum2000)を用いて、透光性被覆層の元素分析を行うことで測定できる。ここで、透光性被覆層および透光性被覆層前駆体被覆層の測定は、基本的には測定点を任意に3点選び、各測定点における全深さ方向における元素量を測定し、これらを平均した値を用いる。
なお、透光性被覆層や透光性被覆層前駆体被覆層が、剰余成分としてケイ素、酸素および窒素の3成分以外の元素(たとえば、水素、炭素、アルゴン等)を含む場合は、これらの元素を除外し、上述した3成分の合計量を100mol%として配合比を算出するものとする。
具体的には、まず、透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子における透光性被覆層前駆体被覆層のケイ素量(Si)、酸素量(O)、および窒素量(N)をXPS分析装置によって測定し、ケイ素量(Si)、酸素量(O)、および窒素量(N)の合計を100mol%とした場合の窒素量(N) Z(mol%)を算出する。ここで、ケイ素量(Si)をX(mol%)、酸素量(O)をY(mol%)とすると、X+Y+Z=100(mol%)を満たす。
また、被覆半導体ナノ粒子における透光性被覆層のケイ素量(Si)、酸素量(O)、および窒素量(N)をXPS分析装置によって測定し、ケイ素量(Si)、酸素量(O)、および窒素量(N)の合計量を全体量(100mol%)とした場合の窒素量(N) Z´(mol%)を算出する。ここで、ケイ素量(Si)をX´(mol%)、酸素量(O)をY´(mol%)とすると、X´+Y´+Z´=100(mol%)を満たす。
なお、本測定においては、通常、XおよびX´は実質的に同一の値となる。これは、改質によってケイ素量は変化しないためであると考えられる。
これらの結果から、下記式に従い、透光性被覆層の改質率を算出する:
ここで、透光性被覆層前駆体被覆層および透光性被覆層の厚さがそれぞれ60nmを超える場合には、表面から深さ方向60nmまでの元素量を測定することで、全深さ方向において測定した場合とほぼ同一の元素量を得られることが、経験上確認されている。したがって、透光性被覆層前駆体被覆層および透光性被覆層の厚さが60nmを超える場合には、深さ方向60nmまでの元素量を測定し、それぞれ透光性被覆層前駆体被覆層および透光性被覆層の元素量とする。
また、透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子および被覆半導体ナノ粒子が、透光性被覆層前駆体被覆層および透光性被覆層以外の構成部分に窒素(N)を含有しない場合は、透光性被覆層前駆体被覆層および透光性被覆層の厚さを超える深さ方向まで元素量を測定した場合であっても、透光性被覆層および透光性被覆層前駆体被覆層の元素量についての結果を得ることができる。
なお、改質率の測定方法は、実施例に詳細に記載する。
改質工程は溶媒中で行うこと、すなわち透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子を含む溶液または分散液中において行われることが好ましい。ここで、前記溶媒は、溶液における溶媒のみではなく、分散液における分散媒も含まれるものとする。用いることができる上記溶媒としては、特に制限されず、公知の溶媒を用いることができる。また、溶媒は、一般的に溶媒には高沸点の極性溶媒を用いることが好ましいが、改質処理としてマイクロ波照射処理を用いる場合は、無極性溶媒を用いる場合においても半導体ナノ粒子がマイクロ波吸収体として作用するため反応を行うことができる。
ここで、高沸点の極性溶媒は、特に制限されないが、たとえば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ニトロベンゼン等を挙げることができる。また、無極性溶媒としては、たとえば、トルエン、キシレン等を挙げることができる。これらの溶媒は単独でも、または2種以上を混合しても用いることができる。
また、改質工程の各段階において、遠心分離、溶媒による希釈を適宜組み合わせることで、各段階に応じた適切な溶媒を選択することができる。
改質方法は、特に制限されないが、たとえば加熱処理、紫外線照射処理、およびプラズマ処理の少なくとも1つの処理によって行うことが好ましい。ここで、改質処理としては、加熱処理で行うことが好ましい。
加熱処理としては、特に制限されないが、たとえば加熱還流下処理、プラズマ式照射処理等が挙げられる。ここで、加熱還流下処理においては、透光性被覆層前駆体は半導体ナノ粒子を被覆しつつ、加熱により透光性被覆層へと改質されることとなる。これより、加熱還流下処理は、被覆工程、および改質工程を含む処理である。すなわち、加熱還流下処理を行うことは、半導体ナノ粒子の表面を透光性被覆層前駆体で被覆して透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子を形成する被覆工程と、透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子中の透光性被覆層前駆体を改質して透光性被覆層を形成する改質工程と、を含むことを満たす。また、かような処理としては、不活性ガス雰囲気下、かつ加熱還流において行ってもよい。加熱還流下処理を行う時間、すなわち反応時間は好ましくは1〜20時間であることが好ましい。また、反応時間は5〜20時間であることがより好ましい。
また、加熱処理としてはマイクロ波照射処理で行うことが好ましい。加熱処理、特にマイクロ波照射処理を用いることで、透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子を含む溶液または分散液中においても透光性被覆層前駆体の改質処理をより効率的に行うことができるからである。
ここで、「マイクロ波」とは、一般的に300MHz〜3THzの振動数を有する電磁波をいうが、改質を効率的に行うという観点から、1.00〜5.00GHzの振動数の電磁波を用いることが好ましく、2.45GHzの振動数の電磁波を用いることがより好ましい。
このようなマイクロ波の発生手段としては、たとえば、マイクロウェーブリアクター(Biotage社製、型番Initiator+)等が挙げられるが、特に限定されない。
以下では、本形態の被覆半導体ナノ粒子集積体の製造方法において好ましい改質としてのマイクロ波照射処理について詳細に説明する。
(マイクロ波照射処理)
改質を行う際、マイクロ波を照射することで、系を直ちに加熱することができる。これより、改質にともなう副反応を抑制することができ、また長時間高温にさらす必要がないため、半導体ナノ粒子の劣化を抑制することができ、蛍光強度の低下がより小さくなる。
改質を行う際、マイクロ波を照射することで、系を直ちに加熱することができる。これより、改質にともなう副反応を抑制することができ、また長時間高温にさらす必要がないため、半導体ナノ粒子の劣化を抑制することができ、蛍光強度の低下がより小さくなる。
また、半導体ナノ粒子はマイクロ波吸収体として作用するため、透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子において、半導体ナノ粒子近傍の透光性被覆層前駆体から外側へ向けて改質することも可能である。これより、透光性被覆層内部の未改質部分に、被覆工程において添加または発生する水、アンモニア等の劣化種が閉じ込められることが抑制され、蛍光強度の低下がより小さくなる。
なお、マイクロ波照射は、被覆工程の後であればいずれの時点で実施してもよい。
マイクロ波照射による改質時の温度は、溶媒を使用する場合は使用する溶媒の種類によっても異なるが、20〜250℃であることが好ましく、150〜200℃であることが好ましい。
さらに、マイクロ波照射による改質処理時間は、透光性被覆層前駆体層の厚さによっても異なるが、5秒〜60分であることが好ましく、30秒〜10分であることがより好ましく、1〜5分であることがさらに好ましい。
なお、マイクロ波照射時の雰囲気は特に制限されず、たとえば不活性ガス雰囲気が挙げられる。また、透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子を含む溶液または分散液にマイクロ波照射を照射することによってもポリシラザンの改質を行うことができる。
上記のようにして得られる、被覆半導体ナノ粒子は、蛍光体としての機能を損なわない限り、合成過程で用いうる安定剤、界面活性剤、溶媒、触媒等、他の成分を含んでいてもよい。
<被覆半導体ナノ粒子分散液>
本発明の一形態に係る被覆半導体ナノ粒子の製造方法によって製造された被覆半導体ナノ粒子は、被覆半導体ナノ粒子、および溶媒を含む被覆半導体ナノ粒子分散液として用いてもよい。ここで、溶媒としては、特に制限されず、公知の溶媒を使用することができ、被覆工程、改質工程で用いた溶媒を使用することが好ましい。
本発明の一形態に係る被覆半導体ナノ粒子の製造方法によって製造された被覆半導体ナノ粒子は、被覆半導体ナノ粒子、および溶媒を含む被覆半導体ナノ粒子分散液として用いてもよい。ここで、溶媒としては、特に制限されず、公知の溶媒を使用することができ、被覆工程、改質工程で用いた溶媒を使用することが好ましい。
ここで、被覆半導体ナノ粒子は、被覆半導体ナノ粒子分散液の総質量に対して、0.005〜0.1質量%であることが好ましい。
<半導体ナノ粒子集積体>
本形態に係る被覆半導体ナノ粒子の製造方法により製造された被覆半導体ナノ粒子は、半導体ナノ粒子集積体を構成することができる。半導体ナノ粒子集積体は、上記の複数の被覆半導体ナノ粒子が相互に接触した状態で凝集した凝集体を含有してなる粒子である。この半導体ナノ粒子集積体は、蛍光体として機能しうる。
本形態に係る被覆半導体ナノ粒子の製造方法により製造された被覆半導体ナノ粒子は、半導体ナノ粒子集積体を構成することができる。半導体ナノ粒子集積体は、上記の複数の被覆半導体ナノ粒子が相互に接触した状態で凝集した凝集体を含有してなる粒子である。この半導体ナノ粒子集積体は、蛍光体として機能しうる。
図2は、半導体ナノ粒子集積体の好ましい一形態に係る構成を示す断面模式図である。半導体ナノ粒子集積体20は、コア部11およびシェル部12を有する半導体ナノ粒子13と、半導体ナノ粒子13を被覆する前処理工程により形成された層15と、その外側を被覆する透光性被覆層14とを有する被覆半導体ナノ粒子10が複数凝集した凝集体を含む。図2に示す半導体ナノ粒子集積体20は、被覆半導体ナノ粒子10同士の凝集をより強固にする目的でマトリックス16を有しているが、このマトリックス16は有していなくてもよい。
なお、前述のように、前処理工程により形成された層15は任意に設けられる層である。これより、被覆半導体ナノ粒子10は、前処理工程により形成された層15を設けずに、半導体ナノ粒子13の表面の少なくとも一部に透光性被覆層14が存在する構成としてもよい。
半導体ナノ粒子集積体を構成する被覆半導体ナノ粒子は、1種単独であってもよく、異なる2種以上を組み合わせたものであってもよい。ここで、コア部の形成材料、コア部の粒径、シェル部の形成材料、シェル部の厚さ、コアシェル半導体ナノ粒子の粒径、透光性被覆層の形成材料、透光性被覆層の厚さ、前処理工程によって形成される層の形成材料、および前処理工程によって形成される層の厚さのうち少なくとも1つが異なっている2種以上の被覆半導体ナノ粒子の組み合わせであれば、すべて、異なる2種以上の被覆半導体ナノ粒子を組み合わせた半導体ナノ粒子集積体に包含されるものとする。
本形態の半導体ナノ粒子集積体は、複数個の上記被覆半導体ナノ粒子がそれ自体で互いに凝集した凝集体を含む集積体であってもよいが、半導体ナノ粒子集積体における被覆半導体ナノ粒子同士の凝集をより強固にするという観点から、複数個の被覆半導体ナノ粒子がマトリックスを介して互いに凝集した凝集体を含む集積体であることが好ましい。すなわち、本形態の半導体ナノ粒子集積体は、凝集体全体を被覆するマトリックスをさらに備えることが好ましい。
ここで、マトリックスの形成に用いられる材料としては、被覆半導体ナノ粒子の凝集体を被覆することができれば特に制限されず、無機物質、有機物質のいずれも用いることができる。発光効率や容易に凝集体を作製できる等の観点から、ケイ素を含有する材料またはポリマー材料を含むことが好ましい。
ポリマー材料としては、たとえば、ポリ無水マレイン酸−alt−1−オクタデセン(無水マレイン酸−1−オクタデセン交互共重合体)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール(PEG)を結合させたポリ乳酸、PEGを結合させた乳酸−グリコール酸共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン等の両親媒性ポリマー;ゼラチン、グアーゴム、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、カラヤゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、スチレン−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル系共重合体等の親水性ポリマー;等が挙げられる。また、ケイ素を含有する材料としては、たとえば、上記の透光性被覆層前駆体として例示したシラザン系化合物や、アルコキシシラン系化合物等のシラン化合物が挙げられる。これらマトリックスの形成材料は、単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらマトリックスの形成材料の中でも、ポリ無水マレイン酸−alt−1−オクタデセン、ポリシラザン(パーヒドロポリシラザン、オルガノポリシラザン)、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好ましい。
また、マトリックスの形成材料としてポリシラザンを用いた場合は、さらに改質を行い、マトリックスとすることができる。
本形態の半導体ナノ粒子集積体は、蛍光体としての機能を損なわない限り、合成過程で用いうる安定剤、界面活性剤、溶媒、触媒等、他の成分を含んでいてもよい。
半導体ナノ粒子集積体の体積平均粒径は、好ましくは50〜1500nm、より好ましくは70〜1300nm、さらに好ましくは100〜1000nmである。このような範囲であれば、発光効率をより向上させることができる。該体積平均粒径は、被覆半導体ナノ粒子を集積させる際の混合(反応)時間、被覆半導体ナノ粒子に対するマトリックスの形成材料の添加量、界面活性剤等の混合比率、反応液中の被覆半導体ナノ粒子の濃度等を制御することにより制御することができる。また、該体積平均粒径は、半導体ナノ粒子の体積平均粒径の測定方法に準じた方法により測定することができる。
<用途>
本発明の一形態に係る被覆半導体ナノ粒子の製造方法によって製造される被覆半導体ナノ粒子、およびこれを用いた被覆半導体ナノ粒子集積体は、たとえば、太陽電池、液晶表示装置用のバックライト、カラーホイール、白色LED、光通信等が備える波長変換素子に含まれる波長変換層の形成材料;発光装置の封止材;光電変換材料等に好適に用いることができる。
本発明の一形態に係る被覆半導体ナノ粒子の製造方法によって製造される被覆半導体ナノ粒子、およびこれを用いた被覆半導体ナノ粒子集積体は、たとえば、太陽電池、液晶表示装置用のバックライト、カラーホイール、白色LED、光通信等が備える波長変換素子に含まれる波長変換層の形成材料;発光装置の封止材;光電変換材料等に好適に用いることができる。
また、半導体ナノ粒子集積体は、被覆半導体ナノ粒子をより強固に凝集させるマトリックスを有することが好ましい。しかしながら、マトリックスの有無にかかわらず、本形態の半導体ナノ粒子集積体は、樹脂バインダー等と混合することにより、容易にフィルム状やシート状に加工することができ、上記以外の様々な分野にも、好適に用いることができる。
以下、具体的な実施例および比較例について説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。また、下記操作において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で行う。
<被覆半導体ナノ粒子の製造>
[実施例1]
(前処理工程)
コアシェル半導体ナノ粒子CdSe/ZnS−Tol.(NN−LAB社製 型番CZ−520)を脱水トルエンで希釈して、固形分濃度2.3g/Lのコアシェル半導体ナノ粒子のトルエン分散液とした。そして、得られたコアシェル半導体ナノ粒子のトルエン分散液 0.65mLに対して、テトラエトキシシラン(TEOS) 4μLを加え窒素雰囲気下・室温にて15時間撹拌した。この溶液に、別途、シクロヘキサン 10mL、界面活性剤であるシグマアルドリッチ社製イゲパル(登録商標)CO−520(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)0.6g、水 0.1mlを混合し、攪拌して得られた溶液を加え、窒素雰囲気下・室温にて8時間撹拌した。その後、追加のTEOS 65μL、28質量%のアンモニア水 100μLを加え窒素雰囲気下・室温にて15時間撹拌し分散液を得た。
[実施例1]
(前処理工程)
コアシェル半導体ナノ粒子CdSe/ZnS−Tol.(NN−LAB社製 型番CZ−520)を脱水トルエンで希釈して、固形分濃度2.3g/Lのコアシェル半導体ナノ粒子のトルエン分散液とした。そして、得られたコアシェル半導体ナノ粒子のトルエン分散液 0.65mLに対して、テトラエトキシシラン(TEOS) 4μLを加え窒素雰囲気下・室温にて15時間撹拌した。この溶液に、別途、シクロヘキサン 10mL、界面活性剤であるシグマアルドリッチ社製イゲパル(登録商標)CO−520(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)0.6g、水 0.1mlを混合し、攪拌して得られた溶液を加え、窒素雰囲気下・室温にて8時間撹拌した。その後、追加のTEOS 65μL、28質量%のアンモニア水 100μLを加え窒素雰囲気下・室温にて15時間撹拌し分散液を得た。
得られた分散液を遠心処理したのち、上澄み液を取り除き、エタノール 10mLにて希釈・遠心処理し洗浄を行った後、アセトニトリル分散液 11mLとした。
(被覆工程)
前記前処理工程にて得られたアセトニトリル分散液 11mLに対して、20質量%のPHPS(パーヒドロポリシラザン)のジブチルエーテル溶液を30分おきに5時間かけて、0.5mLを滴下し、窒素雰囲気下・室温にて15時間撹拌した。この分散液を遠心処理したのち、上澄み液を取り除き、アセトニトリル 10mLにて希釈・遠心処理し洗浄を行った後、エチレングリコール 11mLにて希釈しエチレングリコール分散液とすることで、透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子分散液を得た。
前記前処理工程にて得られたアセトニトリル分散液 11mLに対して、20質量%のPHPS(パーヒドロポリシラザン)のジブチルエーテル溶液を30分おきに5時間かけて、0.5mLを滴下し、窒素雰囲気下・室温にて15時間撹拌した。この分散液を遠心処理したのち、上澄み液を取り除き、アセトニトリル 10mLにて希釈・遠心処理し洗浄を行った後、エチレングリコール 11mLにて希釈しエチレングリコール分散液とすることで、透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子分散液を得た。
(改質工程)
上記で得られた透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子分散液3mLをサンプル瓶に封入し、マイクロウェーブリアクター(Biotage社製、型番Initiator+)を用いて、2.45GHzにて、200℃、5分間マイクロ波を照射して反応を行うことで、透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子中の透光性被覆層前駆体の改質処理を行い、被覆半導体ナノ粒子分散液を得た。
上記で得られた透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子分散液3mLをサンプル瓶に封入し、マイクロウェーブリアクター(Biotage社製、型番Initiator+)を用いて、2.45GHzにて、200℃、5分間マイクロ波を照射して反応を行うことで、透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子中の透光性被覆層前駆体の改質処理を行い、被覆半導体ナノ粒子分散液を得た。
(被覆半導体ナノ粒子分散液の調製)
前記改質処理の後、得られた被覆半導体ナノ粒子分散液分散液を遠心処理したのち、上澄み液を取り除き、アセトニトリル 10mLにて希釈・遠心処理し洗浄を行った後、アセトニトリル分散液とすることで、被覆半導体ナノ粒子分散液を得た。
前記改質処理の後、得られた被覆半導体ナノ粒子分散液分散液を遠心処理したのち、上澄み液を取り除き、アセトニトリル 10mLにて希釈・遠心処理し洗浄を行った後、アセトニトリル分散液とすることで、被覆半導体ナノ粒子分散液を得た。
<被覆半導体ナノ粒子の評価>
前記分散液の調製で得られた被覆半導体ナノ粒子分散液、および前記被覆工程で得られた透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子分散液を用いて、下記手順に従い、TEM(透過型電子顕微鏡)測定によって透光性被覆層および透光性被覆層前駆体被覆層の厚さを測定した。
前記分散液の調製で得られた被覆半導体ナノ粒子分散液、および前記被覆工程で得られた透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子分散液を用いて、下記手順に従い、TEM(透過型電子顕微鏡)測定によって透光性被覆層および透光性被覆層前駆体被覆層の厚さを測定した。
また、被覆半導体ナノ粒子分散液を用いて、下記手順に従い、XPS(X線光電子分光)測定によって、窒素元素(N)の残存量を算出することにより、透光性被覆層のシラザン系化合物の改質率を算出した。
また、この分散液を用いて、後述する手順に従い、被覆半導体ナノ粒子の蛍光強度を測定した。
・透光性被覆層および透光性被覆層前駆体被覆層の厚さの測定
得られた被覆半導体ナノ粒子分散液を、22,000回転で30分間遠心分離機により固液分離した後、エタノールで3回洗浄し、最終的に純水に分散させた。各試料100個以上の粒子について、透過型電子顕微鏡像を用いて半導体ナノ粒子を被覆する層の総厚(透光性被覆層および前処理工程によって得られた層の合計)を測定し、算術平均した厚さを求めた。
得られた被覆半導体ナノ粒子分散液を、22,000回転で30分間遠心分離機により固液分離した後、エタノールで3回洗浄し、最終的に純水に分散させた。各試料100個以上の粒子について、透過型電子顕微鏡像を用いて半導体ナノ粒子を被覆する層の総厚(透光性被覆層および前処理工程によって得られた層の合計)を測定し、算術平均した厚さを求めた。
また、被覆半導体ナノ粒子分散液に替えて前処理工程で得られた半導体ナノ粒子のアセトニトリル分散液をそれぞれ用いた以外は、前記半導体ナノ粒子を被覆する層の総厚の場合と同様にして、前処理工程において形成された層の厚さを測定した。
そして、半導体ナノ粒子を被覆する層の総厚から、前処理工程において形成された層の厚さを差し引いた値を、透光性被覆層の厚さとした。
また、被覆半導体ナノ粒子分散液に替えて前記被覆工程で得られた透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子分散液を用いた以外は、透光性被覆層の厚さの算出と同様にして、透光性被覆層前駆体被覆層の厚さを求めた。
・透光性被覆層の改質率の測定
XPS分析装置(アルバックファイ株式会社製、Quantum2000)を用いて、透光性被覆層および透光性被覆層前駆体被覆層の元素分析を行った。ここで、透光性被覆層および透光性被覆層前駆体被覆層の測定は、基本的には測定点を任意に3点選び、各測定点における全深さ方向における元素量を測定し、これらを平均した値を用いた。
XPS分析装置(アルバックファイ株式会社製、Quantum2000)を用いて、透光性被覆層および透光性被覆層前駆体被覆層の元素分析を行った。ここで、透光性被覆層および透光性被覆層前駆体被覆層の測定は、基本的には測定点を任意に3点選び、各測定点における全深さ方向における元素量を測定し、これらを平均した値を用いた。
まず、試料台に透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子分散液を滴下・自然乾燥することによって、前記透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子分散液から透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子を取り出した。そして、この透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子における透光性被覆層前駆体被覆層のケイ素量(Si)、酸素量(O)、および窒素量(N)をXPS分析装置によって測定し、ケイ素量(Si) X、酸素量(O) Y、および窒素量(N)の合計を100mol%とした場合の窒素量(N) Z(mol%)を算出した。ここで、ケイ素量(Si)をX(mol%)、酸素量(O)をY(mol%)とすると、X+Y+Z=100(mol%)を満たす。
次いで、試料台に被覆半導体ナノ粒子分散液を滴下・自然乾燥することによって、前記被覆半導体ナノ粒子分散液から被覆半導体ナノ粒子を取り出した。そして、この被覆半導体ナノ粒子における透光性被覆層のケイ素量(Si)、酸素量(O)、および窒素量(N)をXPS分析装置によって測定し、ケイ素量(Si)、酸素量(O)、および窒素量(N)の合計を100mol%とした場合の窒素量(N) Z´(mol%)を算出した。ここで、ケイ素量(Si)をX´(mol%)、酸素量(O)をY´(mol%)とすると、X´+Y´+Z´=100(mol%)を満たす。
ここで、XおよびX´は実質的に同一であった。
これらの結果から、下記式に従い、透光性被覆層の改質率を算出した:
・蛍光強度の測定(最大蛍光強度維持比)
得られた被覆半導体ナノ粒子分散液について、光照射前後における最大蛍光強度を測定した。まず、光照射前の最大蛍光強度を測定した。測定は、分光蛍光光度計(日立ハイテクサイエンス社製、製品名「F−4500」)を用い、励起波長400nm、ホトマル700Vにて行った。続いて、各分散液に8W/m2(450nm)の光照射を室温で30分間行い、直後の最大蛍光強度を光照射前と同じ条件で測定した。
得られた被覆半導体ナノ粒子分散液について、光照射前後における最大蛍光強度を測定した。まず、光照射前の最大蛍光強度を測定した。測定は、分光蛍光光度計(日立ハイテクサイエンス社製、製品名「F−4500」)を用い、励起波長400nm、ホトマル700Vにて行った。続いて、各分散液に8W/m2(450nm)の光照射を室温で30分間行い、直後の最大蛍光強度を光照射前と同じ条件で測定した。
透光性被覆層の厚さ、透光性被覆層の改質率、被覆半導体ナノ粒子の蛍光強度の測定結果を表1に示す。
[実施例2]
被覆工程において、PHPS(パーヒドロポリシラザン)のアセトニトリル分散液への滴下後の処理条件を、窒素雰囲気下・室温にて15時間撹拌する替わりに加熱還流下・3時間撹拌を行ったこと、および前記改質工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、被覆半導体ナノ粒子分散液を得た。ここで、加熱還流下、3時間攪拌処理によって、透光性被覆層前駆体は半導体ナノ粒子を被覆しつつ、透光性被覆層前駆体は透光性被覆層へと改質されることとなる。
被覆工程において、PHPS(パーヒドロポリシラザン)のアセトニトリル分散液への滴下後の処理条件を、窒素雰囲気下・室温にて15時間撹拌する替わりに加熱還流下・3時間撹拌を行ったこと、および前記改質工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、被覆半導体ナノ粒子分散液を得た。ここで、加熱還流下、3時間攪拌処理によって、透光性被覆層前駆体は半導体ナノ粒子を被覆しつつ、透光性被覆層前駆体は透光性被覆層へと改質されることとなる。
そして、実施例1と同様に透光性被覆層の厚さ、透光性被覆層の改質率、被覆半導体ナノ粒子の蛍光強度を測定した。ここで、評価に用いる透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子分散液としては、実施例1と同様のものを用いた。これらの結果を表1に示す。
[比較例1]
改質工程において、2.45GHzにて、200℃、5分間マイクロ波を照射して反応を行わないこと以外は実施例1と同様にして、透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子分散液を得た。そして、実施例1と同様に透光性被覆層前駆体被覆層の厚さ、透光性被覆層前駆体被覆層の改質率、蛍光強度を測定した。
これらの結果を表1に示す。
改質工程において、2.45GHzにて、200℃、5分間マイクロ波を照射して反応を行わないこと以外は実施例1と同様にして、透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子分散液を得た。そして、実施例1と同様に透光性被覆層前駆体被覆層の厚さ、透光性被覆層前駆体被覆層の改質率、蛍光強度を測定した。
これらの結果を表1に示す。
表1に示されるように、実施例1および2は、比較例1よりも、光照射後における蛍光強度の低下が大幅に抑制されることが確認された。これより、本発明に係る、透光性被覆層の改質率が80%以上100%以下となるように改質する改質工程を含む被覆半導体ナノ粒子の製造方法を用いて製造された被覆半導体ナノ粒子は、かような工程を含まない製造方法で製造された被覆半導体ナノ粒子と比較して、蛍光強度の低下が大幅に抑制されることが示された。
10 被覆半導体ナノ粒子、
11 コア部、
12 シェル部、
13 半導体ナノ粒子、
14 透光性被覆層、
15 前処理工程により形成された層、
16 マトリックス、
20 半導体ナノ粒子集積体。
11 コア部、
12 シェル部、
13 半導体ナノ粒子、
14 透光性被覆層、
15 前処理工程により形成された層、
16 マトリックス、
20 半導体ナノ粒子集積体。
Claims (8)
- 半導体ナノ粒子の表面を透光性被覆層前駆体で被覆して透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子を形成する被覆工程と、
前記透光性被覆層前駆体被覆層含有半導体ナノ粒子中の前記透光性被覆層前駆体を改質して透光性被覆層を形成する改質工程と、を含み、
前記透光性被覆層前駆体はケイ素(Si)および窒素(N)を含有する化合物であり、
前記改質は、下記式1により算出される前記透光性被覆層の改質率が80%以上100%以下となるように行われる、
前記半導体ナノ粒子と前記透光性被覆層とを含む、被覆半導体ナノ粒子の製造方法;
Z´は、前記被覆半導体ナノ粒子について、XPS分析装置で測定した前記透光性被覆層のケイ素量(Si)、酸素量(O)、および窒素量(N)の合計量を全体量(100mol%)とした場合の窒素量(N) (mol%)である。 - 前記被覆工程の前に、アルコキシ基またはアルコキシシラン基を有する化合物と前記半導体ナノ粒子とを接触させる前処理工程をさらに含む、請求項1に記載の被覆半導体ナノ粒子の製造方法。
- 前記透光性被覆層前駆体がシラザン系化合物である、請求項1または2に記載の被覆半導体ナノ粒子の製造方法。
- 前記改質が、溶媒の存在下において行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆半導体ナノ粒子の製造方法。
- 前記改質が、加熱処理によって行われる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の被覆半導体ナノ粒子の製造方法。
- 前記加熱処理が、マイクロ波照射処理によって行われる、請求項5に記載の被覆半導体ナノ粒子の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法において製造された被覆半導体ナノ粒子、および溶媒を含む、被覆半導体ナノ粒子分散液。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法において製造された被覆半導体ナノ粒子が複数凝集した凝集体を含む、半導体ナノ粒子集積体。
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