JP2017024939A - 炭素質複合体からなるペレット及びその製造方法 - Google Patents

炭素質複合体からなるペレット及びその製造方法 Download PDF

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【課題】取り扱い性が良好な炭素質複合体を提供する。【解決手段】グラフェンシートを含む炭素のマトリックス中に金属酸化物の磁性粒子が分散してなる炭素質複合体からなるペレットであって;炭素原子の数に対する金属原子の数の比(Metal/C)が0.0005〜0.5であり、かつ飽和磁化が5emu/g以上であることを特徴とするペレット。このとき、BET比表面積が100m2/g以上であることが好ましい。また残留磁化(Mr)に対する飽和磁化(Ms)の比(Ms/Mr)が20以上であることも好ましい。【選択図】図4

Description

本発明は、グラフェンシートを含む炭素のマトリックス中に金属酸化物の磁性粒子が分散してなる炭素質複合体からなるペレットに関する。
近年、炭素質材料に化学的な処理を施したり、炭素質材料と金属化合物とを複合化したりすることにより、炭素質材料に新たな機能を付加する手法が報告されている。
特許文献1には、セルロースを炭化して得られた、グラフェンシートを含む無定形炭素を、濃硫酸または発煙硫酸中で加熱処理(スルホン化処理)することが記載されている。これにより、当該無定形炭素にスルホ基が導入されて、固体酸が得られ、それを金属塩と反応させることによって金属触媒が得られることが記載されている。
特許文献2には、炭素質物質と金属含有物質を混合して、当該混合物を不活性ガス雰囲気中で1600℃〜2800℃に加熱することで得られるグラファイト被覆金属粒子が開示されている。そこには、上記金属含有物質の一例として、マグネタイト(Fe)やヘマタイト(Fe)などの酸化鉄磁性体も記載されている。特許文献2に開示されている複合材料は、酸化鉄の粒子をグラファイト(黒鉛)で覆ったものであり、その主成分は酸化鉄である。
これまで本発明者は、無定形炭素のマトリックス中に金属酸化物の磁性粒子が分散してなる炭素質複合を発明した(特許文献3)。この炭素質複合体は、特許文献1及び2に記載の物質と異なり、無定形炭素のマトリックス中に金属酸化物の磁性粒子が分散したものである。そして、この炭素質複合体は、炭素質材料が主成分でありながら外部磁場によって、その動きを制御することができるものである。この炭素質複合体は多孔質体であり、セシウムイオンなどのアルカリ性の物質を効率良く吸着できることを報告した。
しかしながら、前記炭素質複合体は粉末であるため取り扱い性が悪いという問題があった。そのため、取り扱い性が良好な炭素質複合体が求められていた。
特開2009−268960号公報 特開平9−143502号公報 特開2013−35743号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、取り扱い性が良好な炭素質複合体及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題は、グラフェンシートを含む炭素のマトリックス中に金属酸化物の磁性粒子が分散してなる炭素質複合体からなるペレットであって、炭素原子の数に対する金属原子の数の比(Metal/C)が0.0005〜0.5であり、かつ飽和磁化が5emu/g以上であることを特徴とするペレットを提供することによって解決される。
このとき、BET比表面積が100m/g以上であることが好ましい。また残留磁化(Mr)に対する飽和磁化(Ms)の比(Ms/Mr)が20以上であることが好ましい。
上記課題は、前記ペレットの製造方法であって、鉄塩、コバルト塩及びニッケル塩からなる群から選択される少なくとも1種の金属塩と水溶性の多糖とを水の存在下で混合する第1工程と、第1工程で得られた混合物を炭化させて炭素質複合体を得る第2工程と、得られた炭素質複合体を成形する第3工程と、成形された炭素質複合体を不活性ガス雰囲気下で加熱する第4工程とを備えることを特徴とするペレットの製造方法を提供することによっても解決される。
このとき、第3工程において、前記炭素質複合体、バインダー及び水を混合して混合物を得てから、該混合物を成形することが好ましい。また第3工程において、前記炭素質複合体、バインダー、水及び賦活のための薬品を混合して混合物を得てから、該混合物を成形することも好ましい。また前記バインダーが水溶性の多糖であることが好ましい。
本発明の好適な実施態様は前記ペレットからなる吸着材である。
前記吸着材と被吸着物質を含む液体とを接触させて該液体に含まれる被吸着物質を吸着させた後、前記吸着材を磁力によって回収する被吸着物質の除去方法も本発明の好適な実施態様である。
本発明によれば、取り扱い性が良好な炭素質複合体及びその製造方法を提供することを提供することができる。
実施例1、2、比較例9〜11におけるフッ素イオンの吸着試験の結果を示した図である。 実施例2〜6で得られたペレットのラマン分光測定の結果を示した図である。 実施例2のペレットの破断強度を測定する方法を示した図である。 実施例2〜6のペレットの磁気特性を示した図である。
本発明は、グラフェンシートを含む炭素のマトリックス中に金属酸化物の磁性粒子が分散した炭素質複合体からなるペレットに関する。これまで本発明者は、グラフェンシートを含む炭素のマトリックス中に金属酸化物の磁性粒子が分散した炭素質複合体を作製した。そして、この炭素質複合体は外部磁場によって動きを制御することができるものであることを報告した。この炭素質複合体は、吸着材として用いることができるし、遷移金属や酵素などを担持させたりして触媒として用いることもできる。しかしながら、この炭素質複合体は粉末であるため取り扱い性が悪いという問題があった。本発明者は鋭意検討した結果、この炭素質複合体を、取り扱い性の良好なペレットにすることに成功した。
本発明におけるペレットとは、粉末を塊状にしたものをいい、球相当径が1mm以上であるものをいう。取り扱い性の観点から球相当径は1.5mm以上であることが好ましい。ペレットの形状は特に限定されず、球形、円盤、円柱、角柱形、円筒形などが挙げられる。
本発明のペレットにおける、炭素原子の数に対する金属原子の数の比(Metal/C)は0.0005〜0.5である。炭素原子の数に対する金属原子の数の比(Metal/C)が0.0005未満である場合、ペレットの磁気特性が不十分となり、外部磁場によって、その動きを制御し難くなるおそれがある。炭素原子の数に対する金属原子の数の比(Metal/C)は0.001以上であることが好適である。一方、炭素原子数に対する金属原子数の比(Metal/C)が0.5を超えると、吸着材として用いることができないおそれがある。炭素原子数に対する金属原子数の比(Metal/C)は0.25以下であることが好適である。
本発明のペレットの飽和磁化は5emu/g以上である。飽和磁化が5emu/g未満である場合、外部磁場に対するペレットの応答性が低下するため好ましくない。飽和磁化は10emu/g以上であることが好ましく、20emu/g以上であることがより好ましく、30emu/g以上であることがさらに好ましい。一方、飽和磁化は通常200emu/g以下である。
本発明のペレットの残留磁化は1emu/g以下であることが好ましい。残留磁化が1emu/gを超える場合、ペレット同士が磁気的に凝集してしまうおそれがある。残留磁化は、0.7emu/g以下であることがより好ましく、0.5emu/g以下であることがさらに好ましい。
本発明において、外部磁場に対する応答性をより向上させ、なおかつペレット同士が磁気的に凝集することを防ぐ観点から、ペレットの残留磁化(Mr)に対する飽和磁化(Ms)の比(Ms/Mr)が20以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましい。
本発明のペレットは、保磁力が小さいこと、すなわち軟磁性であることが好ましい。具体的には、本発明のペレットの保磁力は500Oe以下であることが好ましい。保磁力が500Oeを超えると残留磁化が残りやすく、ペレット同士が磁気的に凝集してしまうおそれがある。したがって、本発明のペレットの磁化曲線は、ヒステリシスがほとんど見られないことが好ましい。保磁力は200Oe以下であることがより好ましく、100Oe以下であることがさらに好ましく、50Oe以下であることが特に好ましい。
本発明における磁性粒子は、磁力に反応する粒子であり、外部からの磁力によって動きを制御することができるものである。本発明における磁性粒子は金属酸化物からなり、その種類は磁力に反応するものであれば特に限定されない。しかしながら、上述したように、磁性粒子の保磁力が大きいと残留磁化が大きくなり、ペレット同士が磁気的に凝集するおそれがある。保磁力が比較的小さく、なおかつ入手が容易な観点から、金属酸化物が酸化鉄、酸化コバルト及び酸化ニッケルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、酸化鉄であることがより好ましい。酸化鉄の種類としては、マグネタイト(Fe)、ヘマタイト(Fe)、マグヘマイト(γ−Fe)などが挙げられる。
本発明においてマトリックスを形成する炭素はグラフェンシートを含む。グラフェンシートとは、芳香族環が2次元の平面上に縮合して連なった構造を有するものである。ここで、炭素がグラフェンシートを含む場合、Gバンドと呼ばれる炭素原子の六角格子内振動に起因するピークと、1350cm−1付近にDバンドと呼ばれる無定形炭素等のダングリングボンドを持つ炭素原子に起因するピークとが観測される。
グラフェンシートの平均的なサイズは、ラマンスペクトルによるGバンドのピーク強度に対するDバンドの比(D/G)を根拠に算出することができる。例えば、本願実施例2で得られた炭素質複合体では、比(D/G)が約0.88であり、そこに含まれるグラフェンシートの平均的なサイズが約55nmである。比(D/G)は、0.1〜2.25であることが好適であり、0.5〜2.0であることがより好適である。
本発明のペレットは無定形炭素を含むことが好ましい。無定形炭素とは一般的に、ダイヤモンドやグラファイト(黒鉛)のような明確な結晶構造を持たない炭素のことをいう。ペレットが無定形炭素を含むことは、X線回折法による測定で確認することができる。無定形炭素はX線回折において、シャープなピークが検出されないか、あるいはピークが検出されても、そのピークの形はブロードである。
本発明のペレットのBET比表面積は100m/g以上であることが好ましい。このような大きいBET比表面積を有することによって、触媒性能や吸着能力の向上が期待できる。BET比表面積は300m/g以上であることがより好ましく、500m/g以上であることがさらに好ましい。一方、比表面積が大きすぎるとペレットの機械的強度が低下するおそれがあるため、BET比表面積は通常2000m/g以下である。
本発明のペレットの、BJH(Barrett, Joyner, and Halenda)法により求められる細孔容積は0.02〜1cm/gであることが好ましい。細孔容積が0.02cm/g未満である場合、ペレットに官能基を導入することが難しくなるおそれがある。一方、細孔容積が1cm/gを超える場合、ペレットの機械的強度が低下するおそれがある。
本発明のペレットの、BJH法により求められる平均細孔直径が1〜50nmであることも好適である。平均細孔直径が1nm未満である場合、ペレットを吸着材として用いたとき、吸着能が低下するおそれがある。また、ペレットに官能基を導入することが難しくなるおそれもある。一方、平均細孔直径が50nmを超える場合、ペレットの機械的強度が低下するおそれがある。より好適には20nm以下である。
本発明のペレットの製造方法は、特に限定されるものではないが、その好適な製造方法は、鉄塩、コバルト塩及びニッケル塩からなる群から選択される少なくとも1種の金属塩と水溶性の多糖とを水の存在下で混合する第1工程と、第1工程で得られた混合物を炭化させて炭素質複合体を得る第2工程と、得られた炭素質複合体を成形する第3工程と、成形された炭素質複合体を不活性ガス雰囲気下で加熱する第4工程とを備えるものである。
上記金属塩のカチオン成分は特に限定されず、金属酸化物になったときにその金属酸化物が磁力に反応するものであればよい。上記金属塩のカチオン成分としては、鉄、コバルト、ニッケルからなる群から選択される少なくとも1種のイオンであることが好ましく、鉄イオンであることがより好ましい。上記金属塩のアニオン成分は特に限定されず、硝酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、燐酸イオン、炭酸イオン、ホウ酸イオン、カルボン酸等を挙げることができる。中でも上記金属塩のアニオン成分としては、分解温度が低くて分解後に当該アニオン成分が残存しない観点から硝酸イオンが好ましい。これらの観点から、上記第1工程において用いられる金属塩としては、硝酸鉄、硝酸コバルト及び硝酸ニッケルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、硝酸鉄であることがより好ましい。
第1工程で用いられる多糖は、水溶性の多糖であれば特に限定されるものではない。例えば、水溶性の多糖として、セルロース誘導体及びその塩、デンプン、デキストリンなどが挙げられる。これらの中でも、セルロース誘導体及びその塩が好適であり、水溶性の観点からセルロース誘導体の塩がより好適である。セルロース誘導体としてはカルボキシメチルセルロース、塩としてはアルカリ金属塩などが好適なものとして例示される。
第1工程における混合操作は特に限定されない。金属塩の水溶液に多糖の粉体を加えて混合してもよいし、多糖の水溶液に金属塩の粉体を加えて混合してもよい。金属塩の粉体と多糖の粉体とを水に加えて混合してもよい。金属塩の水溶液と多糖の水溶液とを混合してもよい。第1工程において用いられる水の種類は限定されず、イオン交換水、蒸留水など十分に精製された水だけでなく水道水も使用可能である。
第2工程において、炭化処理することにより炭素質複合体を得る。当該炭化処理は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で加熱することにより行うことが好適である。第2工程で炭化処理する前に、第1工程で得られた混合物を予め乾燥させて水分を取り除いておくことが好ましい。乾燥方法は特に限定されず、加熱乾燥や減圧乾燥などを採用することができる。加熱乾燥する際の乾燥温度は、混合物中の水分を取り除くことのできる温度であれば特に限定されないが、40℃以上であることが好適である。乾燥温度が40℃未満である場合、混合物中の水分を十分に取り除くことができないおそれがある。乾燥温度は60℃以上がより好適である。また、エネルギー消費の面やコストの面から、乾燥温度は通常100℃以下である。このときの乾燥温度とは、混合物の乾燥に用いられる乾燥装置内の設定温度のことである。乾燥時間は乾燥温度との関係で設定されるが、混合物中の水分を十分に取り除くことができるように適宜設定することができる。
第2工程における加熱温度は、上記混合物の炭化が進行するのであれば特に限定されないが、80℃以上であることが好適である。加熱温度が80℃未満である場合、多糖の炭化が不十分となったり、金属塩が酸化されなかったりして、炭素のマトリックス中に金属酸化物の磁性粒子が分散した炭素質複合体を得ることができなくなるおそれがある。このときの加熱温度とは、混合物の炭化に用いられる加熱装置内の設定温度のことである。第1工程で得られた混合物は、金属塩や乾燥状態にもよるが、80℃以上に加熱すると自己燃焼が始まり当該混合物自体の温度が400℃以上に達して炭化を進行させることができる。加熱温度は100℃以上がより好適であり、150℃以上がさらに好適である。一方、加熱温度が1000℃以下であることも好適である。加熱温度が1000℃を超える場合、炭化が進行した結果、炭素質複合体中のグラフェンシートが成長しすぎるおそれがある。エネルギー消費の面やコストの面から、加熱温度は800℃以下がより好適であり、600℃以下がさらに好適である。加熱時間は加熱温度との関係で設定されるが、多糖の炭化が十分に進行するように適宜設定することができる。
加熱装置は特に限定されず、電熱式、熱風式、直火式のいずれの加熱装置も使用することができる。混合物の炭化により発生するガスや当該ガスに含まれる固体粒子とを分別するために、加熱装置に集じん装置が接続されていることが好ましい。集塵装置は特に限定されず、サイクロン式の集塵装置やフィルタ式の集塵装置が採用される。加熱装置にスクラバーが接続されていてもよい。スクラバーも特に限定されず、溜水式のスクラバーや加圧水式のスクラバーが採用される。炭化処理の均一性や炭素質複合体の連続生産性の観点から工業的にはロータリーキルンを使用して混合物を炭化することが好ましい。
本発明の製造方法においては、第2工程で得られた炭素質複合体を水洗する工程を、さらに備えることが好ましい。第2工程で得られた炭素質複合体に副生成物や金属塩が残留している場合、炭素質複合体を水洗することで金属塩が除去され比表面積の大きなペレットを得ることができる。洗浄方法は特に限定はされず、水と炭素質複合体を接触させ当該炭素質複合体に含まれる金属塩を抽出する方法や、水と炭素質複合体を混合してから濾材を用いて濾別する方法などが挙げられる。抽出にはソックスレー抽出器などを用いることができ、濾過には桐山ロート、ブフナロートなどを用いることができる。また、工業的な濾過法としては、フィルタープレス法、ベルトプレス法、スクリュープレス法などが挙げられる。洗浄に使用する水は特に限定されないが、蒸留水やイオン交換水などが好ましい。また、効率的に金属塩を除去するために塩酸や酢酸などの酸が少量含まれた水溶液を用いてもよい。
第3工程において、得られた炭素質複合体を成形する。炭素質複合体の成形方法は特に限定されず、プレス加工、押出し加工、圧延加工などが挙げられる。このとき、前記炭素質複合体、バインダー及び水を混合して混合物を得てから、該混合物を成形することが好ましい。
バインダーの量は、炭素質複合体100質量部に対して0.1質量部以上であることが好ましい。バインダーの量が炭素質複合体100質量部に対して0.1質量部未満の場合、炭素質複合体をペレットにすることができないおそれがあり、1質量部以上であることがより好ましい。一方、バインダーの量は、炭素質複合体100質量部に対して50質量部以下であることが好ましい。バインダーの量が、炭素質複合体100質量部に対して50質量部を超えると比表面積の小さいペレットが得られるおそれがあり、30質量部以下であることがより好ましい。
前記バインダーは、炭素質複合体をペレットにすることのできるものであれば特に限定されないが、成形性や強度の観点から、水溶性の多糖であることが好ましい。例えば、水溶性の多糖として、セルロース誘導体及びその塩、デンプン、デキストリンなどが挙げられる。これらの中でも、セルロース誘導体及びその塩が好適である。セルロース誘導体としてはカルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。塩としてはナトリウム塩等のアルカリ金属塩などが挙げられる。水溶性の観点からセルロース誘導体の塩がより好適であり、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、特にナトリウム塩が好適である。
水の量は、炭素質複合体及びバインダーを混合することのできる量であれば特に限定されず、炭素質複合体100質量部に対して通常10〜300質量部である。
第4工程において、成形された炭素質複合体を不活性ガス雰囲気下で加熱することによりペレットを得る。加熱温度は、通常300℃以上であり、好適には500℃以上である。一方、加熱温度が高すぎると炭化物中のグラフェンシートが成長しすぎて化学的に安定化し、比表面積の大きいペレットが得られないおそれがある。加熱温度は1500℃以下であることが好ましい。そして、得られたペレットを切断するなどして所望の形状や大きさに成形することもできる。
このとき、得られるペレットのBET比表面積が大きければ、触媒性能や吸着能力の向上が期待できる。そのため得られたペレットを賦活することが好ましい。賦活方法としては、薬品賦活法やガス賦活法が挙げられる。薬品賦活法とは、原料と薬品とを混合し、これを不活性ガス雰囲気中で加熱することにより原料に細孔を形成する方法である。ガス賦活法とは、原料を高温の水蒸気、炭酸ガス(燃焼ガス)、酸素(空気)などと接させて原料に細孔を形成する方法である。ペレットを賦活する方法として、薬品賦活法、ガス賦活法のいずれの賦活法も採用でき、ガス賦活法と薬品賦活法とを組み合わせることもできる。
中でも、炭素質複合体を均質に賦活することができる観点から、賦活は薬品賦活であることが好ましい。ペレットを薬品賦活する方法として、以下の方法(1)及び方法(2)が挙げられる。
方法(1):第4工程で得られたペレットと賦活のための薬品を混合してこれを加熱する方法
方法(2):第3工程において、炭素質複合体、バインダー、水及び賦活のための薬品を混合して混合物を得てから、この混合物を成形しこれを加熱する方法。
均質に賦活されたペレットが得られる点で方法(2)が好適である。
賦活のための薬品としては、塩化亜鉛、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、リン酸、硫化カリウムなどの公知の薬品を用いることができる。このとき、薬品の量が少ないと炭素質複合体を賦活することができないおそれがある。かかる観点から、薬品の量は、炭素質複合体100質量部に対して20質量部以上であることが好ましく、100質量部以上であることがより好ましい。一方、薬品の量が多いと賦活が進行しすぎて、得られるペレットの強度が低下するおそれがある。かかる観点から、賦活薬品の量は、炭素質複合体100質量部に対して1000質量部以下であることが好ましく、300質量部以下であることがより好ましい。なお、方法(2)におけるバインダー及び水の量は前記した量でかまわない。
方法(2)における加熱温度は、炭素質複合体を賦活することのできる温度であれば特に限定されず、通常300℃以上であり、好適には500℃以上である。今回驚くべきことに、加熱温度によってペレットの磁気特性が変化することがわかった。飽和磁化の値を大きくして外部磁場に対する応答性をより向上させ、なおかつ保磁力の値を小さくしてペレット同士が磁気的に凝集することを防ぐ観点から、加熱温度は620℃以上であることが好ましく、670℃以上であることがより好ましい。一方、加熱温度が高すぎると炭化物中のグラフェンシートが成長しすぎて化学的に安定化し、比表面積の大きいペレットが得られないおそれがある。加熱温度は1500℃以下であることが好ましい。
薬品賦活を行った場合、得られるペレットに金属塩が残留していることがある。この金属塩を除去するためにペレットを水洗してもよい。このとき、効率的に金属塩を除去するために塩酸などの酸が含まれた水溶液を用いてもよい。また、賦活に用いる薬品の沸点以上の温度で加熱する場合、金属塩が揮発するので洗浄を省略できる場合がある。
こうして得られるペレットは、多孔質体であって比表面積が大きい。そのため、官能基を導入したり金属を担持させたりすることができるので、優れた触媒前駆体として用いることができるし、吸着材として用いることもできる。また、得られたペレットを硫酸などでスルホン化処理することもできる。こうすることにより固体酸として用いることができる。しかもこうして得られるペレットは磁気特性にも優れている。
中でも、本発明の好適な実施態様は、ペレットからなる吸着材である。吸着させる物質(被吸着物質)は特に限定されない。本発明のペレットは表面にカルボキシル基などの酸性の官能基を有する場合が多いので、アルカリ性の物質を吸着することができる。このような物質としては、セシウムイオンなどのアルカリ金属イオン、ストロンチウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン、メチレンブルーなどの塩基性分子などが挙げられる。
また、本発明者はさらに検討した結果、この吸着材は表面に酸性の官能基を有するにもかかわらず、フッ素イオンを効率良く吸着することができることを見出した。したがって、フッ素吸着材も本発明の好適な実施態様である。フッ素イオンを吸着することができる理由は必ずしも明らかではないが、炭素のマトリックス中に分散した金属酸化物の磁性粒子がフッ素イオンの吸着に何らかの影響を与えているのではないかと推測される。
本発明の吸着材を用いて処理される液体は被吸着物質が含まれているものであれば特に限定されない。当該液体としては、水溶液であることが好ましく、被吸着物質を含む地下水や工業排水を挙げることができる。本発明の吸着材は磁石に吸着するため、吸着材のみを磁石で回収することができる。被吸着物質を含む液体が固形分を含む水溶液である場合、当該水溶液から吸着材のみを回収することは困難である。この観点から、本発明の吸着材を用いて処理される液体は、被吸着物質及び固形分を含む水溶液であることが好ましい。当該水溶液に含まれる固形分としては、石、砂、土、灰などを挙げることができる。当該水溶液に有機溶媒が含まれていてもかまわない。
さらに、本発明の吸着材は、炭素のマトリックス中に金属酸化物の磁性粒子が分散しているものであり、磁性粒子と吸着剤とを結着剤で結着させたものではない。したがって、磁性粒子と吸着剤とが分離することはない。
前記炭素質複合体からなる吸着材と被吸着物質を含む液体とを接触させて該液体に含まれる被吸着物質を吸着させた後、前記吸着材を磁力によって回収する被吸着物質の除去方法も本発明の好適な実施形態である。
このとき、被吸着物質を含む液体が石、砂、土、灰などの固形分を含む水溶液である場合、当該水溶液から吸着材のみを回収することは困難である。例えば、ろ過によって吸着材のみを回収することは非常に困難である。特に吸着材と固形分の大きさが同じ場合、ろ過では吸着材のみを回収することはできない。また、遠心分離によっても水溶液から吸着材のみを回収することはできず、吸着材とともに固形分も回収されてしまう。固形分と吸着材とを含む混合物から吸着材のみを分離することも困難である。
しかしながら、本発明の除去方法では磁石に吸着する吸着材を用いるので、固形分が含まれている地下水や工業排水から吸着材のみを回収することができる。この観点から、本発明の除去方法では、前記吸着材と、被吸着物質及び固形分を含む水溶液とを接触させて当該水溶液に含まれる被吸着物質を吸着させることが好ましい。
吸着材の回収には、通常、磁石が用いられる。磁石の種類は特に限定されず、永久磁石、電磁石、超電導磁石などを挙げることができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
実施例1
[炭素質複合体シートの作製]
(炭素質複合体の合成)
容量が20Lの容器に硝酸鉄(III)九水和物(Fe(NO・9HO)120gと水道水16Lとを入れ、ポータブルミキサーを用いて撹拌した。得られた水溶液に粉体計量供給機を用いて粉状のカルボキシメチルセルロースナトリウム(以下、CMC・Naと略記することがある。和光純薬工業株式会社製、型番:039−01335)240gを投入してさらに撹拌し、ゲル状の混合物を得た。得られたゲル状の混合物の水分が無くなるまで、送風式乾燥炉を用いて65℃で3日間乾燥して、300gの乾燥した混合物を得た。そして、乾燥した混合物を粉砕機を用いて微粉砕した後、サイクロン式の集塵装置が接続された加熱容器に入れ、窒素雰囲気下で、250℃、1時間加熱して炭化処理した。得られた炭化物をソックスレー抽出器を用いて蒸留水で6時間洗浄した後、恒温乾燥炉を用いて105℃、約24時間乾燥し、ふるい分けをして粒径が150μm以下の炭素質複合体を得た。
(ペーストの調製)
0.64mLの蒸留水に、バインダーのCMC・Na0.1gを加え撹拌して水溶液を得てから、この水溶液に得られた炭素質複合体0.589g加えて混練することで炭素質複合体を含むペーストを得た(表1参照)。
(成形処理)
得られたペーストを31.3mm×横10.6mm×深さ35.0mmの金型(以下、金型Aと略記することがある)に充填して成形した。金型から成形品を取り出してアルミナ磁器質の焼成ボート(東京硝子器械株式会社製「ACE97ボート ACE-CB」)に載せた。そして、この焼成ボートを石英管(内径46mm×外径50mm×長さ1200mm)に入れ、この石英管をプログラム管状電気炉(アズワン株式会社製「TMF-500N」)にセットした。昇温速度8.3℃/min、窒素流量200mL/minで炉内の加熱を開始し、炉内の温度が1000℃に達したことを確認した後、3時間その温度に保持した。3時間経過後、自然冷却により炉内の温度を室温まで下げた。このようにして縦10.6mm×横31.3×厚さ2mmの炭素質複合体シートを得た(以下、シートと略記することがある)。また、得られたペーストを直径2mmの孔から押出して円柱状に成形し、これを加熱することで円柱状の炭素質複合体ペレットを得ることもできた。これにより、得られたペーストを成形することで所望の形状の炭素質複合体からなるペレットが得られることがわかった。
[評価]
(比表面積、細孔容積、細孔直径の測定)
比表面積・細孔分布測定装置を用いて、窒素吸着法(BET法)により、得られたシートの吸着等温線を測定した。BET比表面積の値を表1に示す。また、BJH(Barrett, Joyner, and Halenda)法による解析を行い、シートの平均細孔直径及び全細孔容積をそれぞれ算出した。これらの結果も表1に示す。比表面積・細孔分布測定装置は、株式会社島津製作所製「トライスターII 3020」を用いた。
(フッ素イオンの吸着試験)
得られたシートを2mm×2mm×2mmに切断してペレットを得た。そして、このペレットを用いて、以下に記載する方法によりフッ素イオンの吸着試験を行った。
(1)フッ化カリウム水溶液の調製
フッ化カリウム0.3gを100mLの蒸留水に溶解した。この水溶液を蒸留水で10倍に希釈して、本実験に用いるフッ化カリウム水溶液を調製した。得られた水溶液のフッ素イオン濃度を下記(3)の方法により測定したところ、フッ素イオン濃度は99mg/L(濃度Aとする)であった。
(2)フッ素イオンの吸着試験
上記(1)の方法により調製した水溶液100mLと、前記ペレット1.0gとをビーカーに入れた。振とう機を用いて、室温、24時間、回転数175rpmでビーカー内の水溶液を撹拌した。振とう終了後、ビーカーに磁石を近づけてみたところ、水溶液中のペレットは磁石に引き寄せられ、ビーカーの壁面を介して磁石に付いた。これにより磁石を用いてペレットを回収することができることが確認された。水溶液をろ過して水溶液中のペレットを除去してろ液を回収した。得られたろ液30mLを用いて、下記(3)の方法によりフッ素イオン濃度を測定した。その結果、ろ液のフッ素イオン濃度は78mg/L(濃度Bとする)であった。
(3)フッ素イオン濃度の測定
水溶液中のフッ素イオン濃度は、JIS K 0170-6(2011)に記載の「蒸留・ランタン−アリザリンコンプレキソン発色CFA法」により測定した。吸光度の測定にはビーエルテック株式会社製の「Auto Analyzer 3」を用いた。
得られた濃度Aと濃度Bの値を用い下記式で、用いたペレット1kgに吸着するフッ素イオン吸着量を求めた。結果を表1及び図1に示す。
フッ素イオン吸着量(mg/kg)=[(濃度A(mg/L)−濃度B(mg/L))×試験に用いたフッ化カリウム水溶液の量(L)]/試験に用いたペレットの量(kg)
実施例2
ペーストの調製において、賦活のための薬品である塩化亜鉛1.32gをさらに加えた以外は実施例1と同様にしてシートを得て、これを評価した。結果を表1に示す。また、以下に示す「X線分析」、「ラマン分光法による分析」、「破断強度試験」及び「磁気特性の測定」も行った。
(X線分析)
シートを割りその断面を、走査型電子顕微鏡装置(SEM)に接続されたエネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いて分析した。その結果、炭素原子の数に対する金属原子の数の比(Metal/C)は、0.0046であった。走査型電子顕微鏡装置(SEM/EDS)は、日本電子株式会社製「JSM−6510」を用いた。
(ラマン分光法による分析)
ラマン分光測定装置を用いて、実施例2で得られたシートを粉砕し粉状にしてラマン測定を行った。結果を図2に示す。図2に示すように、1580cm−1付近にGバンドと呼ばれるピークが、1350cm−1付近にDバンドと呼ばれるピークがそれぞれ確認された。Gバンドは炭素原子の六角格子内振動に起因するピークであり、Dバンドは無定形炭素等のダングリングボンドを持つ炭素原子に起因するピークである。Gバンドのピーク強度に対するDバンドの比は約0.88であり、これを根拠に、実施例1で得られたシートに含まれるグラフェンシートの平均的なサイズが約55nmであることがわかった。ラマン分光測定装置は、RENISHAW社製の顕微ラマン分光光度計「inVia Reflex St」を用いた。
(破断強度試験)
図3に示すように、実施例2で得られたシートの中心に糸を巻き付け、その糸に重りをつるした。そして、このシートが破断したときの重りの重さを測定した。その結果、最大耐荷重は819.8gであった。
(磁気特性の測定)
試料振動式磁力計を用いて、得られたシートを粉砕し粉状にして、そしてアクリル製の専用セルホルダーに詰めて磁気特性を測定した。結果を表1及び図4に示すに示す。振動試料型磁力計は、東英工業株式会社製のVSM−15を用いた。
実施例3〜6
炉内の温度を表1に示すように変更した以外は実施例2と同様にしてペレットを得て、これを評価した。結果を表1に示す。
実施例7〜10
ペーストの調製において、各成分の配合量を表1に示すように変更した以外は実施例2と同様にしてペレットを得て、これを評価した。結果を表1に示す。
比較例1
実施例1で得られた炭素質複合体1gと、バインダーのCMC・Na1gとを加えた混合物を得た。この混合物を金型Aに入れ、室温でプレス圧力180kgf/cmで1時間プレスを行った。こうして得られた成形品は、非常に脆く立体形状を保つことができるものではなかった。
比較例2
実施例1で得られた炭素質複合体1gと、バインダーのCMC・Na1gとを加えた混合物を得た。この混合物を金型Aに入れ、室温でプレス圧力180kgf/cmで1時間プレスを行った。プレスされた混合物を三口フラスコに移し、当該三口フラスコ中において、昇温速度3.3℃/min、窒素流量150mL/minで加熱を開始し、フラスコ内の温度が400℃に達したことを確認した後、1時間その温度に保持した。1時間経過後、自然冷却により温度を室温まで下げた。こうして得られた成形品は、非常に脆く立体形状を保つことができるものではなかった。
比較例3
Scientific Polymer Products, INCから入手したポリエチレンペレット(Mw:50000)2gを、粉砕機(大阪ケミカル株式会社製「WB−1」を用いて60秒間粉砕した。そして、実施例1で得られた炭素質複合体0.5gと、粉砕されたポリエチレン(以下、PEと略記することがある)0.5gとを混合して混合物を得た。この混合物を直径14mm×高さ33mmの金型(以下、金型Bと略記することがある)に入れ、ハンドホットプレス(アズワン株式会社製「HHP-1」)を用いて室温でプレスした。このときのプレス圧力は100kgf/cmであり、プレス時間は1時間であった。こうして得られた成形品は、非常に脆く立体形状を保つことができるものではなかった。
比較例4
比較例3と同様にしてPEを得た。そして、実施例1で得られた炭素質複合体1gとPE2gとを混合して混合物を得た。この混合物を金型Aに入れ、室温でプレス圧力220kgf/cmで1時間プレスを行った。プレスされた混合物を三口フラスコに移し、当該三口フラスコ中において、昇温速度2.7℃/min、窒素流量150mL/minで加熱を開始し、温度が80℃に達したことを確認した後、2.5時間その温度に保持した。2.5時間経過後、昇温速度1.2℃/minで再加熱してフラスコ内温度が150℃に達したことを確認した後、1時間その温度に保持した。1時間経過後、自然冷却により温度を室温まで下げた。こうして得られた成形品は、非常に脆く立体形状を保つことができるものではなかった。
比較例5
実施例1で得られた炭素質複合体0.1gと、バインダーとしての硫黄(粉末、和光純薬工業株式会社製)0.9gとを加えた混合物を得た。この混合物を金型Bに入れ、ハンドホットプレス(アズワン株式会社製「HHP−1」)を用いて室温でプレスした。プレス圧力は180kgf/cmであり、プレス時間は0.5時間であった。こうして得られた成形品は、非常に脆く立体形状を保つことができるものではなかった。
比較例6
実施例1で得られた炭素質複合体0.2gと、バインダーとしての硫黄(粉末、和光純薬工業株式会社製)0.8gとを加えた混合物を得た。この混合物を金型Bに入れ、ハンドホットプレス(アズワン株式会社製「HHP−1」)を用いてプレスした。このときのプレス温度は200℃であり、プレス圧力は200kgf/cmであり、プレス時間は0.5時間であった。こうして得られた成形品は、非常に脆く立体形状を保つことができるものではなかった。
比較例7
実施例1で得られた炭素質複合体1gと、バインダーとしてのコールタールピッチ(JEFケミカル株式会社製)1gとを混合して混合物を得た。この混合物を金型Aに入れ、室温でプレス圧力200kgf/cmで1時間40分間プレスを行った。こうして得られた成形品は、非常に脆く所望の立体形状を保つことができるものではなかった。
比較例8
実施例1で得られた炭素質複合体0.5gと、バインダーとしてのコールタールピッチ(JEFケミカル株式会社製)0.5gとを混合して混合物を得た。この混合物を金型Aに入れ、室温でプレス圧力240kgf/cmで1時間プレスを行った。プレスされた混合物をアルミナ磁器質の焼成ボート(東京硝子器械株式会社製「ACE97ボート ACE-CB」)に載せた。そして、この焼成ボートを石英管(内径46mm×外径50mm×長さ1200mm)に入れ、この石英管をプログラム管状電気炉(アズワン株式会社製「TMF-500N」)にセットした。昇温速度8.3℃/min、窒素流量200mL/minで炉内の加熱を開始し、炉内の温度が500℃に達したことを確認した後、1時間その温度に保持した。1時間経過後、自然冷却により炉内の温度を室温まで下げた。こうして得られた成形品は、非常に脆く立体形状を保つことができるものではなかった。
比較例9
0.64mLの蒸留水に、賦活のための薬品として塩化亜鉛1.32gを加え撹拌して水溶液を得てから、この水溶液に実施例1で得られた炭素質複合体0.589g加えた(表1参照)。得られた混合物を成形せずにアルミナ磁器質の焼成ボート(東京硝子器械株式会社製「ACE97ボート ACE-CB」)に載せた。そして、この焼成ボートを石英管(内径46mm×外径50mm×長さ1200mm)に入れ、この石英管をプログラム管状電気炉(アズワン株式会社製「TMF-500N」)にセットした。昇温速度8.3℃/min、窒素流量200mL/minで炉内の加熱を開始し、炉内の温度が1000℃に達したことを確認した後、3時間その温度に保持した。3時間経過後、自然冷却により炉内の温度を室温まで下げた。得られたものは粉末状であった(以下、単に粉末と略記することがある)。そして、実施例1と同様にして「比表面積、細孔容積、細孔直径の測定」及び「フッ素イオンの吸着試験」を行った。結果を表1に示す。
比較例10
実施例1における「炭素質複合体の合成」で得られた粉末状の炭素質複合体を評価した。評価は実施例1と同様にして「比表面積、細孔容積、細孔直径の測定」及び「フッ素イオンの吸着試験」を行うとともに、実施例2と同様にして「ラマン分光法による分析」及び「磁気特性の測定」も行った。結果を表1に示す。
比較例11
市販の活性炭(味の素ファインテクノ株式会社製の活性炭「ホクエツY−10S」)を用いて実施例1と同様にしてフッ素イオンの吸着試験を行った。結果を表1に示す。
Figure 2017024939

Claims (9)

  1. グラフェンシートを含む炭素のマトリックス中に金属酸化物の磁性粒子が分散してなる炭素質複合体からなるペレットであって;
    炭素原子の数に対する金属原子の数の比(Metal/C)が0.0005〜0.5であり、かつ飽和磁化が5emu/g以上であることを特徴とするペレット。
  2. BET比表面積が100m/g以上である請求項1に記載のペレット。
  3. 残留磁化(Mr)に対する飽和磁化(Ms)の比(Ms/Mr)が20以上である請求項1又は2に記載のペレット。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のペレットからなる吸着材。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のペレットの製造方法であって;
    鉄塩、コバルト塩及びニッケル塩からなる群から選択される少なくとも1種の金属塩と水溶性の多糖とを水の存在下で混合する第1工程と、
    第1工程で得られた混合物を炭化させて炭素質複合体を得る第2工程と、
    得られた炭素質複合体を成形する第3工程と、
    成形された炭素質複合体を不活性ガス雰囲気下で加熱する第4工程とを備えることを特徴とするペレットの製造方法。
  6. 第3工程において、前記炭素質複合体、バインダー及び水を混合して混合物を得てから、該混合物を成形する請求項5に記載の製造方法。
  7. 第3工程において、前記炭素質複合体、バインダー、水及び賦活のための薬品を混合して混合物を得てから、該混合物を成形する請求項5に記載の製造方法。
  8. 前記バインダーが水溶性の多糖である請求項6又は7に記載の製造方法。
  9. 請求項4に記載の吸着材と被吸着物質を含む液体とを接触させて該液体に含まれる被吸着物質を吸着させた後、前記吸着材を磁力によって回収する被吸着物質の除去方法。
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