以下、添付の図面を参照しながら、本発明による三次元造形物の焼成方法の実施の形態の一例を詳細に説明することとする。
本実施の形態においては、粉末固着積層方式によりセラミックパウダーに粉末状態の樹脂を混ぜて、水により固めて作製された三次元造形物を対象とする。
また、三次元造形物の形状としては、皿状の形態を形成するものとする。
三次元造形物の造形材料として用いる材料については後述するが、融点によって決定するものとし、本実施の形態においては、セラミック粉末である酸化アルミニウム粉末を用いることとする。
また、樹脂粉末としては、水溶性樹脂であればよいものであり、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)などが挙げられる。
三次元造形物10を焼成するには、まず、三次元造形物10をサポート材料槽12のサポート材料12bの中へ埋め込む。ここで、サポート材料槽12とは、図1(b)に示すように、例えば、二酸化ジルコニウムにより形成された槽12a内に、サポート材料12bを入れたものである。
サポート材料12bとは、焼成の際に三次元造形物10の全体を包み込むことが可能な粒状材料であり、本実施の形態においては、粒径が1mmの二酸化ジルコニウムを用いることとする。
サポート材料12bとして用いる物質の条件については後述する。
なお、サポート材料12bの量としては、三次元造形物10をサポート材料12bに完全に埋めることができ、三次元造形物10をサポート材料12bで包み込むことが可能である量のサポート材料12bを用いるようにする。
次に、三次元造形物10をサポート材料12b内に埋めたサポート材料槽12を焼成する。
ここでは、図示しない炉などの焼成手段を用いて三次元造形物10およびサポート材料槽12を加熱して、三次元造形物10を焼成する。
本実施の形態においては、サポート材料槽12を炉内で1500℃で加熱する。
こうして焼成が終了すると、良好な三次元造形物10が得られる。
次に、図2(a)(b)を参照しながら、三次元造形物を形成する造形材料およびサポート材料に用いる物質の選択方法について説明する。
本実施の形態においては、三次元造形物10を形成する造形材料として、セラミックである酸化アルミニウム粉末を用いたが、その他のセラミック材料としては、例えば、二酸化ジルコニウム、炭酸カルシウムなどの物質が挙げられる。
また、セラミック材料以外の物質としては、金属粉末を用いることが可能であり、金属粉末としては、アルミニウム、銅、チタンなどが挙げられる。
図2(a)には、造形材料に用いることが可能な上記各物質の融点をそれぞれ示している。
また、本実施の形態においては、サポート材料12bに用いる材料として、二酸化ジルコニウムの粒状体を用いたが、その他の材料としては、例えば、酸化アルミニウム、ニオブ、モリブデン、窒化ホウ素、二酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、タンタル、タングステン、ダイヤモンドなどの物質よりなる粒状体を用いるようにしてもよい。
図2(b)には、サポート材料に用いることが可能な上記各物質の融点をそれぞれ示している。
上記三次元造形物10を形成する造形材料およびサポート材料12bの組み合わせは、任意に決定してよいものであるが、三次元造形物10の造形材料として用いた物質の融点よりもサポート材料の融点が高くなるようにそれぞれの材料に用いる物質を選択するようにする。
また、三次元造形物10を焼成する際の温度としては、三次元造形物10を形成する物質の融点を上回らない温度で焼成するようにする。
ただし、三次元造形物10に含まれる樹脂材料が昇華する温度以上で焼成するものとする。
即ち、焼成温度と造形材料の融点とサポート材料の融点とが、以下の式(1)に示す関係となるように物質の組み合わせおよび焼成温度を選択することとする。
焼成温度<造形材料の融点<サポート材料の融点 ・・・式(1)
なお、焼成温度は、造形材料の融点を超えないものであれば、従来より公知の方法で決定してよいものであり、こうした焼成温度の決定方法は従来より公知の技術であるため、その詳細な説明は省略する。
以上において説明したように、本発明による三次元造形物の焼成方法においては、三次元造形物を焼成する際に、所定の材料で形成された粒状体で三次元造形物の全体を覆うようにした。
これにより、本発明による三次元造形物の焼成方法においては、三次元造形物が変形したり崩れることなく三次元造形物の造形時の形状を維持したまま焼成することが可能である。
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(4)に示すように変形することができる。
(1)上記した実施の形態においては、サポート材料として粒径が1mmの粒状材料を用いたが、これに限られるものではないことは勿論であり、サポート材料の直径としては、概ね20μm以上2mm以下の範囲であればよい。
(2)上記した実施の形態においては、焼成温度を1500℃としたが、これに限られるものではないことは勿論であり、三次元造形物の造形材料とサポート材料との組み合わせや、三次元造形物の焼成後の仕上がりなどを考慮して、図2(c)に示す式(1)の条件を満たす範囲で任意に決定してよい。
(3)上記した実施の形態においては、造形材料としてセラミック材料を用い、サポート材料としてセラミック材料を用いたが、これに限られるものではないことは勿論であり、三次元造形物の造形材料とサポート材料との組み合わせは、上記式(1)の条件を満たす範囲であれば、図2(a)に造形材料の例として示すセラミックおよび金属右粉末などと図2(b)に示すサポート材料の例として示すセラミックおよび無機材料などとを組み合わせることにより任意に決定してよい。
上記組み合わせの例としては、例えば、造形材料をセラミック材料とし、サポート材料を無機材料とする組み合わせ、造形材料を金属粉末とし、サポート材料をセラミック材料とする組み合わせ、および造形材料を金属粉末とし、サポート材料を無機材料とする組み合わせなどが挙げられる。
(4)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(3)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。