以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具体化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される方向が挿入方向51と定義される。また、挿入方向51と反対方向であって、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から脱抜される方向が脱抜方向52と定義される。以下の説明において、挿入方向51及び脱抜方向52は水平方向であるが、挿入方向51及び脱抜方向52は水平方向でなくてもよい。また、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態、つまりインクカートリッジ30が使用姿勢にある状態において、重力方向が下方向53と定義され、重力方向と反対方向が上方向54と定義される。また、インクカートリッジ30を挿入方向51の前方から視た場合において、右方向55及び左方向56が定義される。右方向55及び左方向56は、互いに反対方向であり、挿入方向51及び脱抜方向52並びに下方向53及び上方向54と直交する方向である。
以下の説明において、特に言及がない限り、インクカートリッジ30は、使用姿勢にあるものとする。なお、インクカートリッジ30の使用姿勢とは、例えば、インクカートリッジ30がプリンタ10のカートリッジ装着部110に装着されて使用されるときの姿勢を指す。
[第1実施形態]
以下、第1実施形態が説明される。
[プリンタ10の概要]
図1に示されるように、プリンタ10は、インクジェット記録方式に基づいて、用紙に対してインク滴を選択的に吐出することにより画像を記録するものである。プリンタ10は、記録ヘッド21と、カートリッジ装着部110と、記録ヘッド21及びカートリッジ装着部110を接続するインクチューブ20と、パージ機構120(図2参照)とを備えている。
カートリッジ装着部110には、インクカートリッジ30(液体カートリッジの一例)が装着され得る。カートリッジ装着部110の一面には、開口112が設けられている。インクカートリッジ30は、開口112を通じてカートリッジ装着部110に挿入方向51(第1方向の一例)に挿入される。また、インクカートリッジ30は、カートリッジ装着部110から脱抜方向52(第2方向の一例)に抜き出される。
インクカートリッジ30には、プリンタ10で使用可能なインク(液体の一例)が貯留されている。インクカートリッジ30が使用姿勢にある状態において、インクカートリッジ30に設けられた後述する貫通孔71(液体供給口の一例)と記録ヘッド21とは、インクチューブ20によって連通されている。
記録ヘッド21にはサブタンク28が設けられている。サブタンク28は、インクチューブ20を通じて供給されるインクを一時的に貯留する。記録ヘッド21は、インクジェット記録方式によって、サブタンク28から供給されたインクをノズル29から選択的に吐出する。具体的には、記録ヘッド21に設けられたヘッド制御基板21Aから各ノズル29に対応して設けられたピエゾ素子29Aに選択的に駆動電圧が印加される。これにより、ノズル29から選択的にインクが吐出される。
給紙トレイ15から給紙ローラ23によって搬送路24へ給送された用紙は、搬送ローラ対25によってプラテン26上へ搬送される。記録ヘッド21は、プラテン26上を通過する用紙に対してインクを選択的に吐出する。これにより、用紙に画像が記録される。プラテン26を通過した用紙は、排出ローラ対27によって、搬送路24の最下流に設けられた排紙トレイ16に排出される。
第1実施形態において、記録ヘッド21は、移動可能なキャリッジ22(図2参照)に搭載されている。記録ヘッド21は、キャリッジ22の移動によって、搬送路24の真上の印刷位置と、搬送路24の真上から退避した退避位置とに移動可能である。記録ヘッド21は、用紙に対してインクを吐出するときに印刷位置に位置し、パージ機構120によってインクを吸引されるときに退避位置に位置する。
図2に示されるパージ機構120は、記録ヘッド21のノズル29からインクを吸引するものである。パージ機構120は、退避位置の記録ヘッド21の真下に配置されている。
パージ機構120は、ノズル29を被覆可能なキャップ121と、キャップ121を上下動させるカム機構122と、インクが流れるチューブ123と、インクを吸引するポンプ124と、吸引されたインクが収容される廃インクタンク125とを備えている。
なお、図2は、キャップ121と廃インクタンク125とがチューブ123によって接続されていることを示すために、模式的に図示されている。つまり、図2に示された各構成要素の位置関係は、第1実施形態における各構成要素の位置関係を必ずしも正確に示すものではない。
キャップ121は、ゴム材料で構成されている。キャップ121は、退避位置の記録ヘッド21の下方において記録ヘッド21と対面している。カム機構122は、不図示のモータによって駆動される。カム機構122が駆動されることにより、キャップ121が上下動される。キャップ121は、カム機構122によって上方向54へ移動されることにより、記録ヘッド21の下面に当接してノズル29を覆う。一方、キャップ121は、カム機構122によって下方向53へ移動されることにより、記録ヘッド21から離間する。
キャップ121には、チューブ123の一端が接続されている。チューブ123は、可撓性を有する樹脂チューブである。チューブ123の他端は、廃インクタンク125に接続されている。これにより、キャップ121と廃インクタンク125とは、チューブ123を通じて連通している。
ポンプ124は、第1実施形態において、ロータリ式のチューブポンプである。ポンプ124は、内壁面を備えたケーシングと、内壁面に沿って転動される転動ローラとを有する。チューブ123が転動ローラと内壁面との間に配置される。転動ローラは、不図示のモータにより駆動される。転動ローラが駆動されることにより、チューブ123が扱かれる。これにより、ノズル29内のインクがチューブ123に吸引される。そして、チューブ123内のインクが上流(キャップ121)から下流(廃インクタンク125)へ押し出される。
[カートリッジ装着部110]
図1に示されるように、カートリッジ装着部110には、インクカートリッジ30が装着可能である。インクカートリッジ30が使用姿勢にある状態において、インクカートリッジ30に貯留されたインクは、カートリッジ装着部110を介してインクチューブ20へ送られ、インクチューブ20から記録ヘッド21へ送られる。カートリッジ装着部110は、ケース101と、インクニードル102とを備えている。なお、図1においては、カートリッジ装着部110へのインクカートリッジ30の装着が完了して、インクカートリッジ30が使用姿勢にある状態が示されている。カートリッジ装着部110には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色に対応する4つのインクカートリッジ30が収容可能である。
[インクニードル102]
図1に示されるように、ケース101の脱抜方向52の端部には、開口112が形成されている。ケース101は、挿入方向51の端部に奥面を備えている。インクニードル102は、ケース101の奥面から脱抜方向52に突出している。インクニードル102は、ケース101の奥面において、インクカートリッジ30の筒壁46に対面し得る位置に配置されている。
図11に示されるように、インクニードル102は、内部に液体流路が形成された管状の樹脂針である。インクニードル102の突出端部(脱抜方向52の端部)の周壁には連通孔104が設けられている。インクニードル102の基端部103(挿入方向51の端部)にはインクチューブ20が接続されるが、図9(B)及び図11〜図13においてはインクチューブ20が省略されている。連通孔104は、インクニードル102の軸線に対して対称な位置に一対が配置されている。インクニードル102の外部と内部とは、連通孔104によって、インクが流通可能に連通されている。
インクニードル102の突出端(脱抜方向52の端)と連通孔104との間の挿入方向51及び脱抜方向52に沿った長さは、後述される弁体77が第1状態にあるとき(図10に示される状態のとき)の封止部84と開口64との間の挿入方向51及び脱抜方向52に沿った長さより短い。また、インクニードル102の突出端(脱抜方向52の端)と連通孔104との間の挿入方向51及び脱抜方向52に沿った長さは、弁体77が第1状態にあるときの封止部85と開口61との間の挿入方向51及び脱抜方向52に沿った長さより短い。なお、第1実施形態では、連通孔104が突出端部に設けられているため、インクニードル102の突出端(脱抜方向52の端)と連通孔104との間の挿入方向51及び脱抜方向52に沿った長さは略ゼロである。
図13に示されるように、インクニードル102の連通孔104が筒壁46の内部に進入すると、図1に示されるように、インク室36(液体貯留室の一例)内のインクは、筒壁46の内部に形成されたバルブ室47を通じてインクニードル102に接続されたインクチューブ20に流出される。なお、本明細書におけるニードル(針)とは、必ずしも突出端部(脱抜方向52の端部)の尖ったものを指す訳ではなく、細長い管状のもの一般を含む。
[インクカートリッジ30]
図3及び図4に示されるように、インクカートリッジ30は、内部にインク室36、バルブ室47、及び連通路130が形成されたフレーム31と、フレーム31を覆うカートリッジカバー131とを備える。図3に示されるカートリッジカバー131は、互いに嵌合可能な2つの部材で構成されており、フレーム31を挟み込むようにしてフレーム31を覆う。なお、図1、図4〜図6、及び図9(A)において、カートリッジカバー131の図示は省略されている。図3に示されるように、カートリッジカバー131の前面132に、開口133が形成されている。開口133からフレーム31の一部を構成する筒壁46(図5参照)の先端に取り付けられるキャップ72が突出している。
インクカートリッジ30は、インク室36に貯留されたインクを連通路130及びバルブ室47を通じて外部に供給する。インクカートリッジ30は、図3に示された起立状態で、カートリッジ装着部110に対して挿入及び脱抜される。
[フレーム31]
図4に示されるように、フレーム31は、外形が概ね直方体であり、右方向55及び左方向56に細く、上方向54及び下方向53並びに挿入方向51及び脱抜方向52の寸法が右方向55及び左方向56の寸法よりも大きい扁平形状である。フレーム31は、樹脂によって一体成型されている。つまり、フレーム31は、樹脂成型品である。
フレーム31は、インクカートリッジ30を挿入方向51または脱抜方向52に視たときに少なくとも部分的に重なり合う前壁40及び後壁41と、インクカートリッジ30を上方向54または下方向53に視たときに少なくとも部分的に重なり合う上壁39及び下壁42とを備える。
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ装着されるときに、前方となるのが前壁40であり、後方となるのが後壁41である。上壁39は、前壁40及び後壁41の上端同士を接続する。下壁42は、前壁40及び後壁41の下端同士を接続する。
フレーム31は、右方向55及び左方向56に開放されている。開放されたフレーム31の右面及び左面は、それぞれフィルム37、38によって液密に封止される。なお、図5、図6、及び図9において、フィルム37、38の図示は省略されている。フィルム37(壁部材の一例)の外形は、インクカートリッジ30を右方から視た場合のフレーム31の外形と概ね一致する。フィルム37は、上壁39、前壁40、後壁41、及び下壁42の右端に熱溶着される。これにより、フィルム37は、インク室36の右壁を構成する。フィルム38の外形は、インクカートリッジ30を左方から視た場合のフレーム31の外形と概ね一致する。フィルム38は、上壁39、前壁40、後壁41、及び下壁42の左端に熱溶着される。これにより、フィルム38は、インク室36の左壁を構成する。なお、フィルム37、38は、熱溶着以外、例えば高周波溶着や接着剤による接着によって、各壁に貼り付けられてもよい。
フレーム31は、複数の内壁としての内上壁114、内前壁115、内後壁116、及び内下壁117を備える。内上壁114、内前壁115、内後壁116、及び内下壁117は、インクカートリッジ30を右方向55または左方向56に視た場合において、それぞれ上壁39、前壁40、後壁41、下壁42の内方に形成された壁である。
内上壁114、内前壁115、内後壁116、及び内下壁117の右端と、上壁39、前壁40、後壁41、及び下壁42の右端とは、右方向55及び左方向56に同位置である。よって、フィルム37は、上壁39、前壁40、後壁41、及び下壁42の右端に熱溶着される際に、内上壁114、内前壁115、内後壁116、及び内下壁117の右端にも熱溶着される。また、内後壁116の下部及び内下壁117の左端と、上壁39、前壁40、後壁41、及び下壁42の左端とは、右方向55及び左方向56に同位置である。よって、フィルム38は、上壁39、前壁40、後壁41、及び下壁42の左端に熱溶着される際に、内後壁116の下部及び内下壁117の左端にも熱溶着される。一方、内上壁114、内前壁115、及び内後壁116の上部の左端にはフィルム38は溶着されない。
以上より、インクが貯留可能なインク室36は、インクカートリッジ30の右部において、図6(A)に示されるように、主に内上壁114、内前壁115、内後壁116、内下壁117、及びフィルム37によって形成される。一方、インク室36は、インクカートリッジ30の左部において、図6(B)に示されるように、主に上壁39、前壁40、後壁41の上部、内後壁116の下部、内下壁117、及びフィルム38によって形成される。
図5及び図6に示されるように、フレーム31は、複数の内壁としての第1内壁141、第2内壁142、第3内壁143、第4内壁144、第5内壁145、第6内壁146、及び第7内壁147を備える。
第1内壁141は、挿入方向51及び脱抜方向52並びに下方向53及び上方向54に拡がった壁である。第1内壁141は、内前壁115及び内後壁116の左端部同士を接続する。第1内壁141は、上方向54及び下方向53におけるインク室36の中央よりも下の部分において、内前壁115及び内後壁116を接続する。第1内壁141は、内下壁117から離間している。つまり、第1内壁141と内下壁117との間には、間隔が設けられている。
第2内壁142は、下方向53及び上方向54並びに右方向55及び左方向56に拡がる壁である。第2内壁142は、インク室36の挿入方向51及び脱抜方向52における概ね中央部において、第1内壁141から右方向55へ突出している。
第3内壁143は、下方向53及び上方向54並びに右方向55及び左方向56に拡がる壁である。第3内壁143は、第2内壁142と内前壁115との間において、第1内壁141から右方向55へ突出している。第3内壁143は、挿入方向51及び脱抜方向52に視て第2内壁142と少なくとも部分的に重なり合っている。第3内壁143には、開口134が形成されている。
第4内壁144及び第5内壁145は、挿入方向51及び脱抜方向52並びに右方向55及び左方向56に拡がる壁である。第4内壁144は、第2内壁142及び第3内壁143の上端同士を接続する。第5内壁145は、第2内壁142及び第3内壁143の下端同士を接続する。第4内壁144及び第5内壁145の左端は、第1内壁141と接続されている。
第6内壁146は、第2内壁142の上端から、第5内壁145の挿入方向51及び脱抜方向52における概ね中央部へ延びる壁である。詳細には、第6内壁146は、第2内壁142の上端から脱抜方向52且つ下方向53に延設され、当該延設された先端において屈曲して挿入方向51に延設され、当該延設された先端において屈曲して上方向54に延設され、第5内壁145の当該中央部に下方から接続されている。なお、第6内壁146の一部は、第1内壁141よりも左方まで延出されており、環状を成している(図6(B)参照)。また、第6内壁146の一部が内下壁117よりも下方まで延びていることにより、第6内壁146は、内下壁117を挿入方向51及び脱抜方向52において分断している。
図6に示されるように、第7内壁147は、挿入方向51及び脱抜方向52並びに下方向53及び上方向54に拡がった壁であり、その周縁が環状を成した第6内壁146の一部に接続された壁である。第7内壁147には、開口135が形成されている。
図5に示されるように、第2内壁142乃至第6内壁146の右端と、上壁39、前壁40、後壁41、及び下壁42の右端とは、右方向55及び左方向56に同位置である。よって、フィルム37は、上壁39、前壁40、後壁41、及び下壁42の右端に熱溶着される際に、第2内壁142乃至第6内壁146の右端にも熱溶着される。
上記熱溶着により、第1内壁141乃至第5内壁145とフィルム37とによってバルブ室47の一部である第2バルブ室47Bが形成される。つまり、第2バルブ室47Bは、フレーム31である第1内壁141乃至第5内壁145と、フレーム31とは別部材であるフィルム37とによって形成されている。第2内壁142における第2バルブ室47Bを向く面142A(図5(B)参照)は、基端壁面の一例である。つまり、第2バルブ室47Bは、第1内壁141乃至第5内壁145の壁面とフィルム37とによって区画されている。すなわち、第1内壁141乃至第5内壁145の壁面を含むフレーム31は、挿入方向51及び脱抜方向52と直交する右方向55(第3方向の一例)に開いた開口66が形成されるように第2バルブ室47Bを区画している。そして、第2内壁142乃至第5内壁145の右端にフィルム37が熱溶着されることによって、開口66が閉塞される。つまり、フィルム37は、開口66を閉塞した状態で第2バルブ室47Bを区画している。
また、図5及び図6に示されるように、上記熱溶着により、第1内壁141、第2内壁142、第5内壁145乃至第7内壁147、フィルム37、及びフィルム38によって連通路130が形成される。つまり、連通路130は、第1内壁141の壁面、第2内壁142の壁面、第5内壁145乃至第7内壁147の壁面、フィルム37、及びフィルム38によって区画されている。
インク室36と第2バルブ室47Bとは、連通路130を介して連通されている。つまり、連通路130は、インク室36から第2バルブ室47Bへ延びている。
連通路130は、開口136(第4開口の一例、図5(B)参照)を通じて、第2バルブ室47Bと連通されている。ここで、開口136は、第2バルブ室47Bを区画する第2内壁142の一部が切り欠かれていることによって形成されており、第2内壁142及び第4内壁144と、フィルム37とによって区画されている。
また、連通路130は、開口135(図6参照)及び開口137(第3開口の一例、図6(B)参照)を通じて、インク室36の下端部と連通されている。ここで、開口135は、上述したように第7内壁147に形成されている。また、開口137は、図6(B)に示されるように、環状を成した第6内壁146の一部が切り欠かれていることによって形成されており、第6内壁146とフィルム38とによって形成されている。より詳細には、開口137は、内下壁117によって区画されているインク室36の下端部と連続している。すなわち、開口137は、インク室37の下端部を区画する部分に設けられている。
なお、インク室36の下端部は、インクカートリッジ30の使用姿勢においてバルブ室47よりも下方に位置する。また、連通路130は、第2バルブ室47Bではなく、バルブ室47の一部である第1バルブ室47Aと連通されていてもよい。
図5及び図6に示されるように、フレーム31は、筒壁46を備える。筒壁46は、第3内壁143からインクカートリッジ30の外方に向かって挿入方向51に延びている。筒壁46は、挿入方向51の端部が前壁40から外方に突出し、脱抜方向52の端部が前壁40と後壁41との間に位置する。筒壁46の挿入方向51の端部は、開口されている。筒壁46の脱抜方向52の端部も開口されており、当該開口は第3内壁143に形成された開口134である。
筒壁46の内周面(側壁面の一例)は、挿入方向51に直交する断面において連続して延びている、すなわち環状である。つまり、筒壁46の内周面は、挿入方向51に視て環状である。なお、環状とは、円形状に限定されず、楕円形状や矩形状等であってもよい。つまり、第1実施形態において、筒壁46の内周面は、挿入方向51に視て円形の環状であるが、円形以外の環状であってもよい。
第1実施形態において、筒壁46の内周面は、挿入方向51の端部から脱抜方向52の端部まで全領域に亘って挿入方向51に視て環状であるが、一部のみ挿入方向51に視て環状であってもよい。但し、筒壁46の内周面は、少なくとも、後述する封止部84、85、87に接触する部分において、挿入方向51に視て環状である必要がある。
図9(B)に示されるように、筒壁46の内部空間が第1バルブ室47Aである。つまり、第1バルブ室47Aは、筒壁46の内周面によって区画されている。図10に示されるように、第1バルブ室47Aの挿入方向51の端部は、後述する貫通孔71、76を通じて、インクカートリッジ30の外部に連通されている。第1バルブ室47Aの脱抜方向52の端部は、第3内壁143に形成された開口134を通じて、第2バルブ室47Bに連通されている。つまり、第2バルブ室47Bは、第1バルブ室47Aよりも脱抜方向52に位置して第1バルブ室47Aと連通している。
第1バルブ室47A及び第2バルブ室47Bによって、バルブ室47が構成されている。つまり、バルブ室47を区画する壁面は、少なくとも、第2内壁142の面142A、及び筒壁46の内周面を有している。
第2バルブ室47Bにおける挿入方向51の端部を区画する各壁及びフィルム37が以下に詳述するように構成されていることによって、第2バルブ室47Bの挿入方向51及び脱抜方向52に直交する方向の長さは、筒壁46の内径(第1バルブ室47Aの挿入方向51及び脱抜方向52に直交する方向の長さ)よりも長くなっている。
つまり、図5(A)に示されるように、第1内壁141における第2バルブ室47Bの挿入方向51の端部を区画する部分には、左方向56に凹んだ凹部67が形成されている。凹部67は、第2バルブ室47Bの上端から下端に亘って延びている。第5内壁145における第2バルブ室47Bの挿入方向51の端部を区画する部分には、下方向53に凹んだ凹部68が形成されている。凹部68は、第2バルブ室47Bの左端から右端に亘って延びている。凹部68の左端は、凹部67の下端と連続している。第4内壁144の第2バルブ室47Bを向く面は、筒壁46の内周面の上端よりも上方に位置する。フィルム37は、筒壁46の内周面の右端よりも右方に位置する。
液体流路及び気体流路が、フレーム31によって形成されている。
図9に示されるように、液体流路は、インク室36から貫通孔71へ延びる流路である。液体流路には、主にインクが流通する。液体流路は、連通路130及びバルブ室47を通る流路である。液体流路の一端は、開口137(図6(B)参照)を通じてインク室36に連通されている。液体流路の他端は、貫通孔71を通じてインクカートリッジ30の外部に連通されている。
図6に示されるように、気体流路は、インク室36からインクカートリッジ30の外部へ延びる流路である。気体流路には、主に気体が流通する。気体流路は、後述する第1気体流路60、バルブ室47(第1実施形態では、図9(B)に示される第1バルブ室47A)、及び第2気体流路63を通る流路である。つまり、気体流路は、第1気体流路60及び第2気体流路63を有する。気体流路の一端は、後述する開口65を通じてインク室36に連通されている。気体流路の他端は、後述する開口62(図5(B)参照)を通じてインクカートリッジ30の外部に連通されている。
[バルブ室47]
上述したように、バルブ室47は、フレーム31の複数の内壁の壁面とフィルム37とによって区画された空間である。図1に示されるように、バルブ室47は、インクカートリッジ30の下部で、且つインクカートリッジ30の前部に設けられている。
図9に示されるように、バルブ室47には、第1気体流路60、第2気体流路63、及び連通路130が接続されている。筒壁46の先端部(筒壁46の挿入方向51の端部)には、シール部材70と、キャップ72とが取り付けられている。筒壁46の内部には、弁体77と、コイルバネ86(付勢部材の一例)とが収容されている。
[第1気体流路60]
図6(A)に示されるように、第1気体流路60は、バルブ室47(第1実施形態では第1バルブ室47A)とインクカートリッジ30の外部との間で気体を流通させる流路である。第1気体流路60は、バルブ室47を大気に連通させる。
図6に示されるように、第1気体流路60は、溝60Aと、バッファ室60Bと、溝60Cと、溝60Dと、溝60Eと、溝60Fとで構成される。図6(A)に示されるように、溝60A、バッファ室60B、溝60C、溝60E、及び溝60Fは、右方向55に開放されており、フィルム37によって液密に封止される。一方、図6(B)に示されるように、溝60Dは、左方向56に開放されており、フィルム38によって液密に封止される。
図6(A)に示されるように、溝60Aは、下壁42の上端面を脱抜方向52に沿って延びている。溝60Aの一端は、筒壁46の内周面に形成された開口61(第1開口の一例)を通じて第1バルブ室47A(図9参照)に連通されている。溝60Aの他端は、バッファ室60Bに連通されている。
バッファ室60Bは、第1気体流路60を構成する溝よりも幅広の空間である。バッファ室60Bには、バルブ室47から溝60Aを通じて流通してきたインクが貯留される。これにより、当該インクがバッファ室60Bを通過して溝60Cへ流通することを低減することができる。バッファ室60Bの一端は、溝60Aに連通されている。バッファ室60Bの他端は、溝60Cに連通されている。
溝60C、溝60E、及び溝60Fは、内上壁114と上壁39との間を、互いに隣接した状態で挿入方向51及び脱抜方向52に沿って延びている。
溝60Cの一端は、バッファ室60Bに連通されている。溝60Cの他端は、開口137を通じて溝60D(図6(B)参照)に連通されている。図6(B)に示されるように、溝60Dの一端は、開口137を通じて溝60Cに連通されている。溝60Dの他端は、開口138を通じて溝60Eに連通されている。図6(A)に示されるように、溝60Eの一端は、開口138を通じて溝60Dに連通されている。溝60Eの他端は、溝60Fに連通されている。溝60Fの一端は、溝60Eに連通されている。溝60Fの他端は、前壁40に形成された開口62(図5(B)参照)を通じてインクカートリッジ30の外部に連通されている。
開口138は、右方向55に延びる環状のリブ200によって囲まれている。リブ200の先端には半透膜(不図示)が溶着されている。半透膜は、インクの通過を遮断し且つ気体の通過を許容する微小な孔を有する多孔質膜であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体などのフッ素樹脂からなる。
なお、図6(A)に示されるように、溝60E及び溝60Fの境界付近には、ラビリンス構造69が設けられている。
[第2気体流路63]
図6(A)に示されるように、第2気体流路63は、バルブ室47(第1実施形態では第1バルブ室47A)とインク室36との間で気体を流通させる流路である。第2気体流路63は、第1バルブ室47Aから溝60Eに隣接しつつ上方向54に延び、且つ溝60Cに隣接しつつ脱抜方向52に延びている。第2気体流路63の一端は、筒壁46の内周面に形成された開口64(第2開口の一例)を通じて第1バルブ室47A(図9参照)に連通されている。第2気体流路63の他端は、開口65を通じてインク室36の上端部に連通されている。
開口64は、開口61より脱抜方向52に位置している。開口65は、未使用状態(注入されたインクが全く消費されていない状態)のインクカートリッジ30が使用姿勢にあるときに、インク室36に貯留されたインクの液面より上方に位置している。
[シール部材70]
筒壁46に取り付けられるシール部材70は、図7に示されるように、概ね円板形状である。図10に示されるように、シール部材70の外径寸法は、筒壁46の内径寸法と概ね一致する。シール部材70は、筒壁46の先端に液密に密着される。シール部材70は、例えば、ゴムなどの弾性材料によって形成されている。
図7及び図10に示されるように、シール部材70には、中央部を厚み方向(挿入方向51及び脱抜方向52)に貫通する貫通孔71が形成されている。貫通孔71は、インクカートリッジ30の外部と第1バルブ室47Aとを連通させる孔であり、インク室36に貯留されたインクが流通する。
貫通孔71を区画するシール部材70の内周面70A(周壁面の一例、図10参照)に、環状のリブ139が形成されている。インクニードル102の外径は、リブ139の内径よりも僅かに大きく、貫通孔71の内径よりも僅かに小さい。これにより、後述するように、インクニードル102が貫通孔71を挿通するとき、インクニードル102の外周面はリブ139に液密に密着される。
[キャップ72]
筒壁46に取り付けられるキャップ72は、図7に示されるように、円板形状の蓋部73と、蓋部73の脱抜方向52を向く面から突出する円筒形状の円筒部74と、円筒部74の突出端から脱抜方向52に突出する係合部75とで構成される。図7(B)に示されるように、蓋部73には、中央部を厚み方向(挿入方向51及び脱抜方向52)に貫通する貫通孔76が形成されている。貫通孔76の直径は、貫通孔71より大きい。円筒部74は、貫通孔76を囲む位置に設けられている。キャップ72は、例えば、樹脂材料によって形成されている。
蓋部73は、筒壁46と反対方向からシール部材70に当接する。つまり、シール部材70は、挿入方向51及び脱抜方向52において筒壁46の先端部と蓋部73とに挟まれている。図10に示されるように、円筒部74は、シール部材70の外周面及び筒壁46の外面の一部を覆う。係合部75は、前壁40に設けられた被係合部40A(図9(A)参照)に係合される。キャップ72は、シール部材70を筒壁46の先端に保持する。
[弁体77]
図9及び図10に示されるように、弁体77は、バルブ室47内に配置されている。第1実施形態において、弁体77の大部分は第1バルブ室47A内に配置されており、弁体77の一部(脱抜方向52の端部)のみが第2バルブ室47B内に配置されている。弁体77は、バルブ室47内を挿入方向51及び脱抜方向52に沿って移動可能である。
図7及び図8に示されるように、弁体77は、保持部79と、円筒形状の弾性部材82とを有する。弾性部材82には、挿入方向51及び脱抜方向52に貫通された貫通孔81が形成されている。保持部79の一部(後述する本体部150)は、貫通孔81に挿入されている。保持部79は、例えば、樹脂材料によって形成されている。弾性部材82は、保持部79よりも剛性の低い材料、例えば、ゴムなどの弾性材料によって形成されている。
保持部79は、本体部150、円柱部151(閉塞部の一例)、及び係止部153を備えている。本体部150は、挿入方向51及び脱抜方向52に沿って延びた概ね棒形状である。円柱部151は、本体部150の挿入方向51の端部150A(図10参照)に設けられている。係止部153は、本体部150の脱抜方向52の端部に設けられている。
図10に示されるように、本体部150は、貫通孔81に挿入されている。本体部150の直径は、貫通孔81の内径よりも小さい。これにより、本体部150と貫通孔81を区画する弾性部材82の筒壁155の内周面との間には、隙間が生じる。当該隙間には、インク室36に貯留されたインクが流通される。つまり、液体流路は、バルブ室47内を通るに際して、貫通孔81内における弾性部材82と保持部79との間を通る。すなわち、液体流路は、インク室36から貫通孔81を介して貫通孔71へ延びる。
本体部150の端部150Aは、本体部150の他の部分よりも短径である。端部150Aは、開口81Aを挿通している。開口81Aは、貫通孔81の挿入方向51の端部を構成するものであり、弾性部材82の底壁154に形成されている。なお、端部150Aの直径は、開口81Aの内径よりも小さい。
図8(A)及び図10に示されるように、円柱部151は、本体部150が貫通孔81に挿入された状態において、弾性部材82よりも挿入方向51に位置する。円柱部151は、円板部151Aと、当接部151B(図10参照)と、凸部151C(第3封止部の一例)とを備えている。
図10に示されるように、当接部151Bは、円板部151Aにおける本体部150を向く面151Dに形成されている。詳細には、当接部151Bは、図7(A)に示されるように、円板部151Aの周方向に間隔を空けて複数(第1実施形態では4つ)設けられており、本体部150の端部150Aに接続されている。図10に示されるように、当接部151Bは、弾性部材82の底壁154における開口81Aの周囲部分と当接している。
図8(A)及び図10に示されるように、凸部151Cは、面151Dの裏面から挿入方向51に突出されている。凸部151Cは、円柱状である。凸部151Cは、シール部材70に形成された貫通孔71に挿入可能である。凸部151Cの直径は、貫通孔71の内径よりも大きい。これにより、凸部151Cは、貫通孔71を区画するシール部材70の内周面70Aに接触して内周面70Aを弾性変形させつつ貫通孔71に挿入される。その結果、貫通孔71は、凸部151Cによって液密に封止される。 凸部151Cは、弁体77の移動に際して、シール部材70の内周面70Aに密着しつつ摺動する。弁体77が、図10に示される位置よりも脱抜方向52に移動することによって、凸部151Cは、シール部材70から離間する(図13参照)。これにより、貫通孔71は、開放される。以上より、凸部151Cは、貫通孔71を開放可能に閉塞している。
図8(B)及び図10に示されるように、係止部153は、本体部150が弾性部材82に挿入された状態において、弾性部材82よりも脱抜方向52に位置する。図7及び図8(B)に示されるように、係止部153は、本体部150の周方向に間隔を空けて複数(第1実施形態では3つ)設けられている。係止部153は、本体部150から脱抜方向52と直交する方向に突出している。図10に示されるように、係止部153は、開口81Bの周囲部分と当接している。開口81Bは、貫通孔81の脱抜方向52の端部を構成するものであり、弾性部材82の筒壁155に形成されている。
上述したように、本体部150が弾性部材82に挿入された状態において、当接部151Bは、弾性部材82における開口81Aの周囲部分と当接しており、係止部153は、弾性部材82における開口81Bの周囲部分と当接している。これにより、弾性部材82は、保持部79と共に、バルブ室47内を挿入方向51及び脱抜方向52に沿って移動する。
図7及び図8に示されるように、弾性部材82は、底壁154と、底壁154から脱抜方向52に沿って延びる筒壁155と、2つの封止部84、85を有する気体流路閉塞部157と、封止部87とで構成される。封止部84は第1封止部の一例であり、封止部85は第2封止部の一例である。底壁154、筒壁155、気体流路閉塞部157、及び封止部87は、一体物として構成されている。図10に示されるように、底壁154には、貫通孔81の挿入方向51の端部を構成する開口81Aが形成されている。筒壁155の脱抜方向52の端部には、貫通孔81の脱抜方向52の端部を構成する開口81Bが形成されている。
図7及び図8に示されるように、封止部84、85、87は、筒壁155の外面から径方向に突出したフランジであり、挿入方向51に視て環状である。第1実施形態において、封止部84、85、87は、筒壁46の内周面に対応して円形の環状であるが、筒壁46の内周面が円形以外の環状である場合に当該円形以外の環状となる。
封止部84、85、87は、挿入方向51及び脱抜方向52に離間して設けられている。封止部85は、封止部84より挿入方向51に設けられている。封止部87は、封止部84より脱抜方向52に設けられている。
図10に示されるように、封止部84、85、87は、筒壁46の内周面に液密且つ気密的に密着する。弁体77が第1バルブ室47Aに挿入されていない状態(図7及び図8に示される状態)において、封止部84、85、87の外径は、筒壁46の内径より大きい。よって、弁体77が第1バルブ室47Aに挿入された状態(図10に示される状態)において、筒壁46の内周面に密着した封止部84、85、87は、外径寸法を減じる向きに弾性変形する。
図10に示されるように、封止部84、85、87が筒壁46の内周面に密着されることにより、第1バルブ室47Aの脱抜方向52の端部を含む第1空間148と、第1バルブ室47Aの挿入方向51の端部を含む第2空間149とは、弾性部材82の外周面と筒壁46の内周面との間において遮断される。
一方、液体流路の一部である第1空間148及び第2空間149の間には、貫通孔81を通じてインクが流通可能である。詳細には、図13に示されるように、インクは、インク室36からインクカートリッジ30の外部へ供給される際に、第1空間148から第2空間149へインク供給方向へ流通され得る。ここで、インク供給方向は、本体部150の周方向において隣り合う2つの係止部153の間、筒壁155の開口81B 、貫通孔81における本体部150と筒壁155の内周面との間の隙間空間、筒壁155の開口81A、本体部150の周方向において隣り合う2つの当接部151Bの間、底壁154と円柱部151との間の空間の順序でインクが流通される方向である。底壁154に形成された開口81Aにおけるインク供給方向は、挿入方向51と一致する。
また、以下に詳述するように、封止部84、85、87が筒壁46の内周面に密着されることにより、封止部84と封止部85との間の空間が、気体が流通可能な閉空間となり得る。
弁体77が図10に示される位置であるとき、封止部84が開口61及び開口64の間に位置している。これにより、第1気体流路60及び第2気体流路の間の空間が、封止部84によって遮断される。封止部84、85、87は、弁体77の移動に際して、筒壁46の内周面に密着しつつ摺動する。弁体77が、図10に示される位置よりも脱抜方向52に移動することによって、図13に示されるように、開口61及び開口64が封止部84と封止部85との間に位置するようになる。これにより、第1気体流路60及び第2気体流路63が、封止部84と封止部85との間の空間を通じて連通される。その結果、インク室36とインクカートリッジ30の外部とが連通され、インク室36は大気開放される。つまり、気体流路閉塞部157は、弁体77が移動することによって気体流路を開放する。以上より、気体流路閉塞部157は、気体流路を開放可能に閉塞している。
図7(B)及び図8(A)に示される底壁154は、可撓性を有する膜状の部材である。図10に示されるように、底壁154は、脱抜方向52を向く第1面158と、第1面158の裏面であって挿入方向51を向く第2面159と、第2面159に形成された環状のリブ156(図7(B)参照)とを有する。
第1面158は、貫通孔81における本体部150と筒壁155の内周面との間の隙間空間の一部を区画している。第2面159は、底壁154と円柱部151との間の空間の一部を区画している。ここで、貫通孔81における本体部150と筒壁155の内周面との間の隙間空間は、底壁154と円柱部151との間の空間よりもインク供給方向の上流に位置する。
以上より、底壁154は、液体流路に設けられている。また、第1面158は、インク室36から貫通孔71に向かうインク供給方向の上流を向く。また、第2面159は、インク供給方向の下流を向く。
第1面158は、保持部79の円柱部151の面151Dと対面している。
図7(B)に示されるように、リブ156は、第2面159における開口81Aの周囲から挿入方向51に突出している。また、リブ156は、当接部151Bよりも円板部151Aの径方向の外方に位置する。図10及び図13に示されるように、リブ156は、底壁154が撓むことによって面151Dと接離可能である。図10に示されるように、底壁154が撓むことによって、リブ156が面151Dと当接しているとき、底壁154と円柱部151との間の空間はリブ156によって遮断される。つまり、液体流路が閉塞される。このとき、底壁154は、閉塞状態である。一方、図13に示されるように、底壁154の撓みが緩和されることによって、リブ156が面151Dから離間しているとき、底壁154と円柱部151との間の空間は開放される。つまり、液体流路が開放される。このとき、底壁154は、開放状態である。以上より、底壁154は、液体流路を開放及び閉塞可能である。
なお、第1面158にリブ156が形成されていなくてもよい。この場合、底壁154が撓むことによって、第1面158が面151Dと接離可能である。
底壁154は、第1面158及び第2面159にそれぞれ作用するインクからの圧力によって、図10に示される閉塞状態と、図13に示される開放状態とに状態変化する。第1面158に作用する圧力は、貫通孔81を構成する空間から第1面158へ向けて挿入方向51に作用する圧力である。第2面159に作用する圧力は、底壁154と円柱部151との間の空間から第2面159へ向けて脱抜方向52に作用する圧力である。
底壁154は、第1面158に作用する圧力から第2面159に作用する圧力を減算した値が後述する閾値以上であることを条件として、リブ156が面151Dと接触するように撓むことによって、図10に示される閉塞状態となる。一方、底壁154は、第1面158に作用する圧力から第2面159に作用する圧力を減算した値が閾値未満であることを条件として、リブ156が面151Dから離間して、図13に示される開放状態となる。
閾値は、底壁154の厚み、第1面158及び第2面159の面積、及び底壁154を構成する材料の材質などによって決定される値である。第1実施形態において、閾値は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着され、気体流路が開放された状態において、第1面158に作用する圧力から、パージ機構120が記録ヘッド21のノズル29からインクを吸引したときに第2面159に作用する圧力を減算した値よりも大きい値に設定されている。
ここで、気体流路が開放された状態において第1面158に作用する圧力は、第1面158へ向けて挿入方向51に作用する圧力であり、大きさは通常、大気圧である。第2面159に作用する圧力は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着され且つノズル29がキャップ121に被覆された状態において、ポンプ124の転動ローラが駆動されたときに、第2面159へ向けて脱抜方向52に作用する圧力である。例えば、大気圧がXキロパスカルのときに、パージ動作によって第2面159に作用する圧力が(X−Y)キロパスカルになるとすると、閾値は、Yキロパスカルよりも大きい値に設定されている。より、具体的には、例えば、大気圧が100キロパスカルのときに、パージ動作によって第2面に作用する圧力が(100−2)キロパスカル、すなわち、98キロパスカルになるとすると、閾値は2キロパスカルよりも大きい値、例えば、10キロパスカルに設定されている。
[コイルバネ86]
図9及び図10に示されるように、コイルバネ86は、第2内壁142の面142A(図5(B)参照)と弁体77との間に配置される。具体的には、コイルバネ86は、一端が面142Aに当接され、他端が弁体77の保持部79の係止部153に当接されている。コイルバネ86は、弁体77を挿入方向51へ付勢する。これにより、バルブ室47において、弁体77は、シール部材70に当接した第1状態(図10参照)に保持される。なお、コイルバネ86に代えて、板バネ等の他の付勢部材が用いられてもよい。
[インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ装着される動作]
以下、図10から図13が参照されつつ、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される過程における弁体77の動きが説明される。
図10に示されるように、カートリッジ装着部110に装着される前のインクカートリッジ30において、弁体77は、コイルバネ86の付勢力によってシール部材70に当接した第1状態にある。弁体77が第1状態にあるときに、保持部79の凸部151Cは、シール部材70の貫通孔71に進入しており、シール部材70の内周面70Aに液密的に密着する。これにより、貫通孔71が閉塞される。その結果、液体流路は、貫通孔71の位置においてインクカートリッジ30の外部に対して閉塞されている。
封止部84は、開口61、64の間において、筒壁46の内周面に密着している。これにより、開口61と開口64との間の気体の連通が遮断される。つまり、第1気体流路60と第2気体流路63との間の気体の連通が遮断される。したがって、インク室36は大気に連通されていない。なお、第1気体流路60と第2気体流路63との間の気体の連通が遮断されていれば、封止部84が開口61、64の一部に重なっていてもよい。
封止部85は、開口61より挿入方向51の位置において筒壁46の内周面に密着している。これにより、第1気体流路60と貫通孔71との間の気体及びインクの連通が遮断される。なお、第1気体流路60と貫通孔71との間の気体及びインクの連通が遮断されていれば、封止部85が開口61の一部に重なっていてもよい。
封止部87は、開口64より脱抜方向52の位置において筒壁46の内周面に液密的に密着している。これにより、第2気体流路63と第2バルブ室47Bとの間の気体及びインクの連通が遮断される。なお、第2気体流路63と第2バルブ室47Bとの間の気体及びインクの連通が遮断されていれば、封止部87が開口64の一部に重なっていてもよい。
上述したように、弁体77が第1状態にあるとき、インク室36は大気に連通されていない。そのため、インク室36内の圧力は、大気圧であるとは限らない。第1実施形態において、弁体77が第1状態のとき、インク室36内の圧力は、大気圧よりも高い状態である。具体的には、インク室36内の圧力は、大気圧よりも上述した閾値以上大きい。当該状態は、例えば、後述するインクカートリッジ30の製造方法の圧力調整ステップにおいてインク室36内の圧力を大気圧よりも高くすることによって実現可能である。また、当該状態は、例えば、インクカートリッジ30が製造後に高地に移動されることによってインクカートリッジ30の外部の大気圧が低くなることによって実現可能である。
インク室36内の圧力が大気圧よりも閾値以上大きいため、弾性部材82の底壁154において、第1面158に作用する圧力から第2面159に作用する圧力を減算した値は、閾値以上である。そのため、底壁154は、リブ156が面151Dと接触して液体流路を閉塞するように撓んだ閉塞状態にある。これにより、液体流路は、貫通孔71の位置に加えて、底壁154と円柱部151との間の位置においてもインクカートリッジ30の外部に対して閉塞されている。
図11は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される途中の(インクニードル102がシール部材70の貫通孔71に途中まで挿入された)バルブ室47内の状態を示す。カートリッジ装着部110に装着される途中のインクカートリッジ30において、弁体77は、貫通孔76、71を通じてバルブ室47に進入したインクニードル102に押圧されることによって、コイルバネ86の付勢力に抗して第1状態より脱抜方向52へ移動した中間状態となる。
弁体77が中間状態にあるとき、凸部151Cの一部は、シール部材70の貫通孔71に進入した状態にある。つまり、凸部151Cは、シール部材70の内周面70Aに液密的に密着している。よって、インクニードル102の脱抜方向52の端部に形成された連通孔104と第1バルブ室47Aとの間の連通は、凸部151Cによって遮断されている。つまり、液体流路は、貫通孔71の位置においてインクカートリッジ30の外部に対して閉塞されている。
封止部84は、開口64の挿入方向51の端と脱抜方向52の端との間に位置している。これにより、開口61と開口64とが気体が流通可能に連通される。つまり、第1気体流路60と第2気体流路63とが連通される。したがって、第1気体流路60、封止部84と封止部85との間の空間(第1バルブ室47A)、及び第2気体流路63を通じてインク室36が大気に連通される。つまり、気体流路が開放される。
封止部85は、開口61より挿入方向51の位置において筒壁46の内周面に密着している。これにより、第1気体流路60及び第2気体流路63と貫通孔71との間の連通が遮断される。
封止部87は、開口64より脱抜方向52の位置において筒壁46の内周面に液密的に密着している。これにより、第2気体流路63と第2バルブ室47Bとの間の気体及びインクの連通が遮断される。
上述したように、弁体77が中間状態にあるとき、インク室36は大気に連通される。そのため、弁体77が中間状態となってから所定時間が経過すると、インク室36内の圧力は、大気圧となる。
しかし、第1実施形態において、弁体77は、第1状態から中間状態を経て後述する第2状態へ短時間で移動されるものとする。そのため、弁体77は、中間状態となってから上記所定時間が経過するよりも前に、中間状態よりも脱抜方向52へ移動する。よって、弁体77が中間状態にあるとき、インク室36内の圧力は、弁体77が第1状態にあるときと同様に大気圧よりも高い状態に維持されている。したがって、弁体77が中間状態にあるとき、底壁154は閉塞状態を維持している。これにより、液体流路は、貫通孔71の位置に加えて、底壁154と円柱部151との間の位置においてもインクカートリッジ30の外部に対して閉塞されている。
図12は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着完了された(インクカートリッジ30からインクが流出可能な状態)瞬間のバルブ室47内の状態を示す。カートリッジ装着部110に装着完了されたインクカートリッジ30において、弁体77は、バルブ室47にさらに進入したインクニードル102に押圧されることによって、コイルバネ86の付勢力に抗して、中間状態より脱抜方向52へ移動した第2状態となる。
弁体77が第2状態にあるとき、凸部151Cは、シール部材70における貫通孔71を区画する内周面70Aから離間している。つまり、保持部79は、シール部材70の貫通孔71から完全に抜け出ている。
インクニードル102は、シール部材70の貫通孔71に更に挿入されている。これにより、インクニードル102の連通孔104は、貫通孔71を通過して第1バルブ室47Aへ進入している。その結果、第1バルブ室47Aの第2空間149は、連通孔104及びインクニードル102の内部の液体流路を通じて、インクカートリッジ30の外部と連通される。但し、後述するように、図12の時点において、底壁154は閉塞状態を維持しているため、インク室36内のインクが連通孔140及びインクニードル102の内部の液体流路を通じて、インクカートリッジ30の外部へ流通されることはない。
封止部84は、開口61より脱抜方向52の位置において筒壁46の内周面に密着している。これにより、弁体77が中間状態にあるときと同様に、第1気体流路60と第2気体流路63とが連通され、気体流路が開放される。
封止部85は、開口61より挿入方向51の位置において筒壁46の内周面に密着している。これにより、第1気体流路60及び第2気体流路63と貫通孔71との間の連通が遮断される。
封止部87は、第1バルブ室47Aを通過して第2バルブ室47Bへ進入している。つまり、封止部87は、筒壁46よりも脱抜方向52に位置している。すなわち、封止部87は、筒壁46から離間している。このとき、封止部87は、挿入方向51及び脱抜方向52において凹部67、68(図5参照)と同じ位置に位置している。これにより、封止部87は、第1内壁141及び第5内壁145から離間している。また、封止部87は、第4内壁144よりも下方に位置しており、第4内壁144から離間している。また、封止部87は、フィルム37よりも左方に位置しており、フィルム37から離間している。以上のように、封止部87は、弁体77が中間状態から第2状態へ移動する途中で、いずれの壁面とも密着していない状態となる。換言すると、封止部87は、弁体77が第1状態よりも脱抜方向52に位置する状態において、挿入方向51及び脱抜方向52において凹部67、68と同じ位置に位置することによってバルブ室47を区画する壁面から離間する。これにより、壁面に密着している封止部の数が3つ(封止部84、85、87)から2つ(封止部84、85)に減るため、弁体77が壁面から受ける摩擦抵抗が減る。
上述したように、第1実施形態において、弁体77は、第1状態から中間状態を経て後述する第2状態へ短時間で移動されるものとする。そのため、弁体77が第2状態になった瞬間(図12に示される状態)において、インク室36内の圧力は、弁体77が第1状態及び中間状態にあるときと同様に大気圧よりも高い状態に維持されている。したがって、弁体77が第2状態となった瞬間において、底壁154は閉塞状態を維持している。これにより、液体流路は、貫通孔71において開放されているものの、底壁154と円柱部151との間の位置においてインクカートリッジ30の外部に対して閉塞されている。
図13は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着完了されてから上記所定時間が経過したときのバルブ室47内の状態を示す。換言すると、図13は、弁体77が第2状態となってから上記所定時間が経過したときのバルブ室47内の状態を示す。このとき、上記所定時間が経過することによって、インク室36内の圧力は、大気圧となっている。つまり、インク室36内の圧力と大気圧との差が閾値未満である。すなわち、底壁154において、第1面158に作用する圧力から第2面159に作用する圧力を減算した値は、閾値未満である。そのため、それまでインク室36内の圧力が第1面158に作用することによって撓んでいた底壁154の撓みが緩和される。これにより、リブ156が面151Dから離間して、底壁154が開放状態となる。その結果、底壁154と円柱部151との間の位置において、液体流路は開放される。
そのため、インク室36内のインクは、連通路130、第2バルブ室47B、第1空間148、本体部150の周方向において隣り合う2つの係止部153の間、筒壁155の開口81B 、貫通孔81における本体部150と筒壁155の内周面との間の隙間空間、筒壁155の開口81A、本体部150の周方向において隣り合う2つの当接部151Bの間、底壁154と円柱部151との間の空間、第2空間149、連通孔104、及びインクニードル102の内部の液体流路を通じて、インクカートリッジ30の外部へ流通可能となる。
[インクカートリッジ30の製造方法]
以下、第1実施形態のインクカートリッジ30の製造方法が説明される。
最初に、フレーム31が成型される成型ステップが実行される。フレーム31は、典型的には、樹脂を金型に流し込む射出成型によって形作られる。この際、金型における円筒形状の筒壁46の中空部分となる箇所には、樹脂が流れ込まないように、ピンが金型に対して出没可能に設けられる。これにより、フレーム31が成型された際に、ピンが配置されていた箇所に、第1バルブ室47Aが形成される。
次に、弁体77などの部品がフレーム31内に配置またはフレーム31に取り付けられる取付ステップが実行される。
取付ステップにおいて、最初に、コイルバネ86が、開口66(図5参照)を通じて第2バルブ室47B内に挿入される。次に、弁体77が、筒壁46の挿入方向51の端部の開口から第1バルブ室47Aに挿入されて第1バルブ室47A内に配置される。このとき、コイルバネ86の一端が第2内壁142に当接され、コイルバネ86の他端が弁体77の係止部153に当接される。
取付ステップにおいて、次に、シール部材70がキャップ72に嵌め込まれる。シール部材70が嵌め込まれたキャップ72内に、筒壁46の挿入方向51の端部が嵌め込まれる。これにより、シール部材70が、キャップ72と筒壁46とによって挟まれた状態となる。なお、最初に、シール部材70が筒壁46の挿入方向51に端部に嵌め込まれ、次に、キャップ72がシール部材70に被さるように、筒壁46の挿入方向51の端部がキャップ72内に嵌め込まれてもよい。
次に、フィルム37、38が貼付される貼付ステップが実行される。フィルム37、38は、熱溶着や高周波溶着などによってフレーム31の各壁に貼付される。フィルム37の貼付により、インク室36、第2バルブ室47B、及び連通路130の右方が閉塞される。また、溝60Dを除く第1気体流路60及び第2気体流路63の右方が閉塞される。フィルム38の貼付により、インク室36及び連通路130の左方が閉塞される。また、第1気体流路60の溝60Dの左方が閉塞される。
次に、気体流路を通じてインク室36内を減圧する減圧ステップが実行される。減圧は、例えば、開口62に減圧弁が接続されることによって行われる。減圧は、インク室36内の圧力が大気圧よりも低くなるように行われる。インク室36内の減圧後、減圧弁が閉じられることによって、開口62は封止される。なお、減圧ステップにおいて、弁体77は、コイルバネ86に付勢されることによって第1状態に位置している。
次に、減圧ステップにおいて大気圧よりも低い圧力に減圧されたインク室36内に液体流路を通じてインクを注入する注入ステップが実行される。インクの注入は、例えば、インクが貯留されたインクタンク(不図示)がチューブ(不図示)を介して筒壁46と接続されることによって行われる。
上記チューブの一端は、上記インクタンクに接続されている。上記チューブの他端は、カートリッジ装着部110のインクニードル102と略同構成となっている。これにより、上記チューブの他端が筒壁46と接続されたとき、上記チューブの他端が弁体77を脱抜方向52に押す。すると、弁体77が第1状態から第2状態へ移動する。これにより、インク室36内と上記チューブとが連通されて、インクがインクタンクからインク室36に注入される。なお、減圧ステップにおいて開口62が封止されているため、弁体77が第1状態から第2状態へ移動しても、気体流路が開放されることはない。
減圧ステップにおいて、インク室36内の圧力が大気圧よりも低くされているため、上記インクタンクに貯留されたインクは、上記チューブ、バルブ室47、及び連通路130を介してインク室36内へ流れ込む。なお、インク室36内の圧力が大気圧よりも低いため、第1面158に作用する圧力から第2面159に作用する圧力を減算した値が閾値未満となり、底壁154は開放状態である。よって、上述したインクタンク内からインク室36内へのインクの流れ込みが底壁154によって遮断されることはない。
インクの注入の完了後、注入ステップにおいてインクが注入されたインク室36内の圧力を大気圧と同じにする圧力調整ステップが実行される。圧力調整は、例えば、減圧ステップにおいて開口62に接続された減圧弁が開口62から取り外されることによって行われる。また、圧力調整は、開口62に増圧弁が接続されることによって行われてもよい。また、注入ステップにおいて、インク室36内が大気圧となるまでインク室36内にインクが注入されれば、注入ステップの後に自動的に圧力調整ステップが実行されたこととなる。
次に、インク室36をインクカートリッジ30の外部に対して封止する封止ステップが実行される。具体的には、上記チューブの他端が筒壁46から引き抜かれる。これにより、弁体77は、コイルバネ86に付勢されることによって第2状態から第1状態へ移動する。貫通孔71は、第1状態の弁体77(詳細には弁体77の凸部151C)によって塞がれ、気体流路は、封止部84が開口61と開口64との間に位置することによって、閉塞される。これにより、インク室36がインクカートリッジ30の外部に対して封止される。
[実施形態の作用効果]
上記実施形態によれば、フレーム31を成型する際、バルブ室47における第1バルブ室47Aの部分にはピンが配置される一方、バルブ室47における第2バルブ室48Bの部分は右方向55に開放されているため、第2バルブ室47Bの部分にはピンが配置されない。これにより、フレーム31を成型する際にバルブ室47の部分に配置されるピンを短くすることができる。その結果、インクカートリッジ30の成型過程において樹脂が金型に流し込まれる際に、ピンが樹脂の圧力によって傾く可能性を低くすることができる。そのため、インクカートリッジ30におけるバルブ室47を区画する筒壁46や第1内壁141乃至第5内壁145を正確に成型することができる。
また、コイルバネ86がバルブ室47に配置される実施形態では、バルブ室47が挿入方向51に長くなる。しかし、本実施形態の構成によって、バルブ室47を区画する筒壁46や第1内壁141乃至第5内壁145を正確に成型することができる。
また、上記実施形態によれば、コイルバネ86を開口66から第2バルブ室47B内に挿入し、その後、開口66をフィルム37によって閉塞することができる。
また、上記実施形態によれば、弁体77は、移動することによって第1気体流路60及び第2気体流路63の連通の有無を切り替えるように構成されている。そのため、弁体77の挿入方向51及び脱抜方向52に沿った移動量が大きくなる。その結果、バルブ室47が挿入方向51に長くなる。しかし、第2バルブ室47Bを右方向55に開放した構成とすることにより、バルブ室47を区画する筒壁46や第1内壁141乃至第5内壁145を正確に成型することができる。
また、上記実施形態によれば、弁体77が第1状態にあるとき、円柱部151により貫通孔71が閉塞されているため、インクカートリッジ30からインクが流出することがない。また、封止部84によって第1気体流路60と第2気体流路63との連通が遮断されるため、インク室36が閉空間とされる。弁体77が中間状態にあるときに、第1気体流路60、封止部84、85の間の空間、及び第2気体流路63を通じて、インク室36が大気連通される。他方、円柱部151により貫通孔71が閉塞されているため、インクカートリッジ30からインクが流出することがない。弁体77が第2状態にあるときに、円柱部151により貫通孔71が開放されるため、インク室36とインクカートリッジ30の外部とが連通され、インクカートリッジ30からインクが流出可能となる。以上のように、上記実施形態によれば、インクカートリッジ30からインクが流出可能な状態となる前に、インク室36を大気連通することができる。なお、上記実施形態では、弁体77は、第1状態から中間状態を経て第2状態へ短時間で移動され、弁体77が中間状態にあるとき、インク室36内の圧力は、弁体77が第1状態にあるときと同様に大気圧よりも高い状態に維持されていた。しかしながら、弁体77の移動が低速で行われる場合には、弁体77が中間状態となったときに、インク室36内の圧力が大気圧と等しくなる場合もある。
しかし、上記実施形態では、弁体77が第1状態から第2状態へ移動する過程において中間状態を経るため、弁体77の挿入方向51及び脱抜方向52に沿った移動量が大きくなる。その結果、バルブ室47が挿入方向51に長くなる。しかし、第2バルブ室47Bを右方向55に開放した構成とすることにより、バルブ室47を区画する筒壁46や第1内壁141乃至第5内壁145を正確に成型することができる。
また、上記実施形態によれば、封止部84、85が一体に構成されているため、インクカートリッジ30が備える部品点数を少なくすることができる。
また、上記実施形態によれば、封止部84、85、87及び筒壁46の内周面が円形の環状であるため、封止部84、85、87を筒壁46の内周面に対して均等に接触させることができる。
また、上記実施形態によれば、インクカートリッジ30が使用姿勢である状態において、インク室36に貯留されたインクは、インク室36の下端部からバルブ室47を介してインクカートリッジ30の外部へ流出する。そのため、インク室36に貯留されたインクを最後まで使い切ることができる。
[第2実施形態]
以下、第2実施形態が説明される。コイルバネ86の挿入方向51及び脱抜方向52と直交する直交方向の長さは、第1バルブ室47Aの直交方向の長さよりも長くてもよい。換言すると、コイルバネ86の外径は、第1バルブ室47Aの内径よりも長くてもよい。この場合、第2バルブ室47Bは、コイルバネ86を挿入及び配置可能な大きさに構成されている。つまり、第2バルブ室47Bの直交方向の長さは、コイルバネ86の直交方向の長さよりも長く構成されている。
第2実施形態では、図14に示されるように、第2バルブ室47B及びその周辺の構成が第1実施形態と異なる。その他の構成は概ね第1実施形態と同様である。そのため、以下の説明において、第1実施形態と異なる構成の部分について説明される一方、第1実施形態と同様の構成の部分については、第1実施形態と同じ参照符号が付されて、説明が省略される。
第1実施形態では、図5(A)に示されるように、第5内壁145に凹部68が形成されており、第1内壁141に凹部67が形成されていたが、第2実施形態では、凹部67、68は形成されていない。その代わり、図14に示されるように、第5内壁145の第2バルブ室47Bを向く面145Aは、筒壁46の内周面の下端よりも下方に位置する。また、図14では判別できないが、第1内壁141の第2バルブ室47Bを向く面141Aは、筒壁46の内周面の左端よりも左方に位置する。また、第1実施形態で述べたように、第4内壁144の第2バルブ室47Bを向く面144Aは、筒壁46の内周面の上端よりも上方に位置し、フィルム37(図4参照)は、筒壁46の内周面の右端よりも右方に位置する。
以上より、第2バルブ室47Bにおいて挿入方向51に延びる面(面141A、面144A、面145A、及びフィルム37における第2バルブ室47Bを向く面)は、筒壁46の内周面よりも筒壁46の径方向の外方に位置する。
これにより、第2実施形態における第2バルブ室47Bには、第1バルブ室47Aの内径よりも直径の大きいコイルバネ86が配置される。なお、第2実施形態では、第1状態の弁体77の脱抜方向52の端部(係止部153)が第1バルブ室47Aから第2バルブ室47Bに突出している。また、コイルバネ86の挿入方向51の端部86Aは、コイルバネ86の径方向の周縁部から中央部へ向けて延びている。これにより、筒壁46の内径よりも直径が大きいコイルバネ86の挿入方向51の端部86Aを、筒壁46の内径よりも直径が小さい弁体77の係止部153と当接させることが可能である。
第2実施形態によれば、第1バルブ室47Aに配置され得るコイルバネ86よりも大きな直径のコイルバネ86を採用することができる。その結果、より強い付勢力で弁体77を付勢することができる。
[その他の実施形態]
第1実施形態では、気体流路及び液体流路の一部がバルブ室47を通っていた。しかし、気体流路及び液体流路の経路は、第1実施形態で示した経路に限らない。例えば、気体流路の全部がバルブ室を通っていてもよい。また、液体流路の全部がバルブ室93を通っていてもよい。
また、第1実施形態では、弁体77の円柱部151が凸部151Cを備えていたが、インクニードル102が凸部151Cを備えていてもよい。この場合、凸部151Cは、インクニードル102の連通孔104が形成された部分よりも脱抜方向52に突出しており、インクニードル102の突出端部を構成している。また、この場合、弁体77が第1状態にあるとき、円柱部151の円板部151Aが、コイルバネ86の付勢力によってシール部材70に押しつけられることにより、貫通孔71を塞ぐ。
また、弁体77の移動に際してシール部材70の内周面70Aに密着しつつ摺動する部材(第1実施形態では凸部151C)が、弁体77及びインクニードル102の両方に設けられていてもよい。この場合、弁体77及びインクニードル102の両方に設けられた当該部材の各々の挿入方向51及び脱抜方向52に沿った長さの合計が、弁体77が第1状態にあるときの封止部84と開口64との間の挿入方向51及び脱抜方向52に沿った長さより長く、且つ弁体77が第1状態にあるときの封止部85と開口61との間の挿入方向51及び脱抜方向52に沿った長さより短く設定される。
また、半透膜の取り付け位置はリブ200に限定されず、第1気体流路60の経路上の任意の位置であってもよい。この場合、半透膜の位置が、ラビリンス構造69と開口62との間であると、インクが半透膜に付着することによって気体の流通が阻害されることを抑制できる。
また、第1実施形態では、封止部87は挿入方向51に視て環状であったが、弁体77が第1状態のときに開口64及び液体流路の間のインクの流通を遮断するように構成されてさえいれば、環状でなくてもよい。例えば、封止部87は、筒壁155の外面から径方向に突出した円柱状の突起であってもよい。この場合、当該円柱の突出先端面(当該径方向に視て円形である。)は、開口64を完全に内包することができる大きさである。そして、弁体77が第1状態のときに、封止部87は、開口64を含む筒壁46の内周面に液密且つ気密的に密着する。これにより、封止部87は、開口64に蓋をする。その結果、開口64及びバルブ室47内のインクの流通を遮断することができる。また、弁体77が第1状態から脱抜方向52に移動すると、封止部87は、開口64よりも脱抜方向52に位置するようになる。これにより、開口64とバルブ室47内とが、インクが流通可能に連通される。
また、筒壁46の内周面、封止部84、85、87の外周面の挿入方向51及び脱抜方向52に直交する断面は、円形状となっているが、当該断面は円形状に限定されず、楕円形状や矩形状等であってもよい。同様に、筒壁46の外周面及びその他の構成要素の断面形状も円形状に限定されない。
また、封止部84、85、87は、例えば、弾性部材82に設けられた円周溝に嵌まり込むOリング等であってもよい。
また、開口61、64は、筒壁46の周方向の同一の位置で且つ挿入方向51及び脱抜方向52に離間して設けられているが、開口61、64の位置関係はこれに限定されない。例えば、開口61、64は、挿入方向51及び脱抜方向52の同一の位置で且つ筒壁46の周方向に離間した位置に設けられていてもよい。また、挿入方向51及び脱抜方向52及び筒壁46の周方向に離間した位置に設けられてもよい。なお、この場合の封止部84は、第1状態の弁体77において開口61、64の間を遮断できれば(すなわち、弾性部材82の外周面を一周する環状であれば)、どのような形状であってもよい。
例えば、封止部84は、挿入方向51及び脱抜方向52と交差(第1実施形態では、直交)する平面に沿って弾性部材82の外周面を一周していてもよい。また、封止部84は、単一の平面に沿って設けられている必要はなく、途中で蛇行或いは屈曲していてもよい。この場合において、封止部84の一部が挿入方向51及び脱抜方向52に沿って延びていてもよい。封止部85、87についても同様である。また、開口61、64のいずれか一方が、筒壁46ではなく、第2内壁142や第4内壁144などのバルブ室47を区画する他の壁に配置されていてもよい。
また、シール部材70の貫通孔71の直径は、インクニードル102または弁体77の凸部151Cの外径より若干小さいが、本発明はこれに限定されない。すなわち、シール部材70の貫通孔71の少なくとも一部は、貫通孔71にインクニードル102が挿入されていないときに、シール部材70自身の弾性によって閉塞されていてもよい。この構成によると、必ずしもバルブ室47にコイルバネ86が配置されていなくてもよい。すなわち、バルブ室47にコイルバネ86が配置されていないと、弁体77が第2状態となった後に、インクニードル102がバルブ室47から抜かれても、弁体77は第2状態に留まる。したがって、弁体77はシール部材70に接触しないが、シール部材70の弾性によって貫通孔71の少なくとも一部が閉じられるため、バルブ室47から貫通孔71を通じてインクが流出することが抑制される。
また、第1実施形態及び第2実施形態では、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ水平方向に沿って装着されるが、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ装着される際におけるインクカートリッジ30の移動方向は、水平方向に限らない。例えば、インクカートリッジは、カートリッジ装着部へ鉛直方向に沿って装着されてもよい。
また、第1実施形態及び第2実施形態では、インクを液体の一例として説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、インクに代えて、印刷時にインクに先立って記録用紙に吐出される前処理液を液体としてもよい。