JP2017024053A - 金型補修溶接材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る金型補修溶接材料は、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.20〜0.50%、Mn:0.20〜0.50%、Cr:3.6〜6.0%、Mo:0.01〜1.5%、V:0.002〜0.80%、Al:0.001〜1.50%、残部Fe及び不可避的元素を含有することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
C:0.10〜0.30%、Si:0.20〜0.50%、Mn:0.20〜0.50%、Cr:3.6〜6.0%、Mo:0.01〜1.5%、V:0.002〜0.80%、Al:0.001〜1.50%、残部Fe及び不可避的元素からなり、ダイカスト金型の補修溶接部に用いられる金型補修溶接材料である。
なお、本金型補修溶接材料は、不可避的元素として、N:0.0003%未満、Ti:0.01%未満、Nb:0.01%未満、Zr:0.01%未満、Ta:0.01%未満、Co:0.10%未満、W:0.10%未満、Ni:0.30%未満、Cu:0.30%未満、S:0.01%未満、Ca:0.001%未満、Se:0.03%未満、Te:0.01%未満、Bi:0.01%未満、Pb:0.03%未満、P:0.05%未満、O:0.01%未満、B:0.001%未満、、Mg:0.02%未満、REM:0.10%未満を含むことがある。
Cは、溶接部の硬さを左右する重要な元素であり、0.10%未満では硬さが不十分となってしまう。逆に、0.30%を超えると硬さが硬くなり過ぎてしまい、溶接後の割れの懸念が高くなってしまう。従って、本発明ではCを0.10〜0.30%の範囲内で含有させる。
Siは、軟化抵抗を高める上で有用な働きをなす元素である。アルミダイカスト金型の補修溶接に用いられる溶接材料の場合、軟化抵抗が小さいとアルミダイカスト金型にて鋳造を繰り返しているうちに、溶湯による加熱によって溶接部が軟化してしまう。而して溶接部が軟化してしまうとそこでヒートチェックが発生し易くなる。従って、本発明では軟化抵抗を高めるためにSi量を0.20%以上含有させる。一方、0.50%を超えて多量に含有させると熱伝導率が低下しヒートチェックが発生しやすくなる。従って、本発明ではSiを0.20〜0.50%の範囲内で含有させる。
Mnは、0.20%未満では硬さが不十分となり、0.20%未満に下げようとすると原材料の配合を考慮する必要があり、製造コストが高くなってしまう。
一方、0.50%を超えて含有させると逆に溶接部の硬さが硬くなり過ぎてしまう。また、Mnを0.50%以下に低くすることでベイナイトの生成を促進することができ、耐Al溶損性の向上が可能となる。さらに、Mnを低くすることで熱伝導率の向上にもつながる。従って、本発明ではMnを0.20〜0.50%の範囲内で含有させる。
Crは、3.6%未満では高温硬度が低くなり、耐ヒートチェック性が低下する。また、6.0%を超えて多量に含有させると熱伝導率が低下し、表層と内部との温度勾配が大きくなって発生する熱応力が高くなり、ヒートチェックが発生しやすくなる。従って、本発明ではCrを3.0〜6.0%の範囲内で含有させる。
Moは、軟化抵抗に対して有用な元素である。但し、0.01%未満では軟化抵抗に対する効果が小さいため、本発明では0.01%以上含有させる。また、1.5%を超えて添加すると溶解コストが高くなる。また、Moは1.5%を超えて添加すると破壊靭性値が低下し、大割れを生じやすくなるため、1.5%以下にする必要がある。従って、本発明ではMoを0.01〜1.5%の範囲内で含有させる。
Vは、VC析出により結晶粒粗大化を防止する役割(ピン止め効果)を果たす。0.002%未満ではVC析出量が少なく、ピン止め効果を得にくい。そこで、本発明では0.002%以上含有させる。また、V量が多いほどV炭化物が増加し、高温強度が向上する。しかし、Vが0.80%より多く添加した場合に粗大な炭化物が増え、シャルピー衝撃値が低下してしまうため、Vは0.80%以下にする必要がある。従って、本発明ではVを0.002〜0.80%の範囲内で含有させる。
Alは、0.001%以上添加することにより、Alが置換型元素として働き、溶接時の湯が横に流れてしまうことが抑制できる。このため、金型表面に高く肉盛することができる。すなわち、肉盛溶接時の積層性が向上し、溶接の作業性が向上できる。また、窒化物形成元素であるAlを添加したことで、表層の窒化物量が増加し、溶接部分の表層の硬さを向上することができる。その結果、耐ヒートチェック性の向上を図ることができる。ただし、Alが1.50%を超えて添加すると、溶解コストが高くなる。また、熱伝導率の低下も生じてしまう。そのため、各元素の含有量は、上記の範囲とした。特に、耐ヒートチェック性の向上を図る場合には、Alは、0.002〜0.01%とすることが好ましい。
炭素又は窒素と結合し、炭化物、窒化物又は炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化を抑制に寄与する元素である。すなわち、析出物を生成し、オーステナイト結晶粒のピン止め粒子として働き、結晶粒粗大化を抑制する。また、微細粒となることで靭性を上げることができる。ただし、添加量が上記成分範囲以下では析出物の生成量が少なく、ピン止めの効果が表れない。一方、上記成分範囲を超えると析出物が凝集してしまい、ピン止め粒子として効かなくなってしまう。そのため、各元素の含有量は、上記の範囲とした。
Co、Wを添加することで高温強度が高くなるが、必要以上に添加すると、コストが増加することや熱伝導率の低下につながる。そのため、各元素の含有量は、上記の範囲とした。
Cu、Niを添加することでパーライトの生成が遅延され、焼入れ性が向上するが、必要以上に添加すると、コストが高くなる。また、熱伝導率の低下につながる。さらに、Niについては残留オーステナイトの増長につながってしまう。そのため、各元素の含有量は、上記の範囲とした。
S、Ca、Se、Te、Bi、Pbを添加することで溶接後の機械加工性が向上するが、入れ過ぎると溶接割れを促進してしまう。そのため、各元素の含有量は、上記の範囲とした。
JIS SKD61の試験片を用意し、この試験片に対して、表1(発明例)、表2(比較例)に示す各種化学組成の溶接棒(φ1.6mm×1000mm)を用いてティグ溶接を行った。試験片は、予め焼入れ、焼戻し処理を2回行い、43HRCの硬さとした。なお、溶接材料(溶接棒)は、直径が0.2〜3.5mmであることが好ましい。0.2mmよりも直径が細いと溶接の際の熱が母材の方に多く加わって母材の溶融量が多くなり、溶接部の硬さを必要以上に硬くしてしまうことに繋がる。一方、3.5mmよりも太過ぎると溶接時の熱が溶接材料に奪われて母材側に十分加わらず、融合不良の原因となってしまう。
30×30×15mmのSKD61の試験片を用いて、30×30mmの面に実施例と比較例をそれぞれ2層となる肉盛溶接した。その後、断面を切り出し、研磨および腐食を行い、肉盛溶接部のミクロ組織を観察し、ベイナイトの生成具合を比較した。視野の30%以上にベイナイトが認められないものを「○」、視野の10%以上にベイナイトが認められるものを「×」と評価した。
Φ20×30mmの試験片のΦ20mmの面に実施例と比較例を15mm上に肉盛溶接を行い、その後に機械加工を施してΦ10×40mmの試験片を作成した。評価にはAl合金ADC12を用い、溶湯温度750℃で試験片を回転させた状態で、試験片のΦ10×10mm部分のみを30分間浸漬させ、浸漬前における浸漬前後の重量変化の割合を溶損率とした。耐Al溶損性としては、本試験条件における溶損率が35%未満を「○」、35%以上を「×」と評価した。
上記溶接後の組織観察に用いた試験片の断面から、母材に対する肉盛溶接部分の高さを測定し、積層性を評価した。溶接部分の高さが高くなるものを積層性が良いとし、本試験条件で積層性が3mm以上を「○」、3mm未満を「×」と評価した(クラックの深さとして長いもので3mmを想定した)。
金型を窒化した後の影響を確認するため、上記溶接後の組織観察と同様の方法で肉盛溶接を行い、溶接跡を平面研磨で除去後にガス窒化処理を施した。その試験片の断面を切り出して、研磨後、ビッカース硬さ試験を実施した。ガス窒化処理条件は、510℃の大気圧雰囲気中にNH3ガスを導入し、3時間保持後に冷却する条件を用いた。表層から20μm位置の硬さを表層硬さとして比較を行い、表層硬さが1100HV以上を「○」、1100HV未満を「×」と評価した。
30×30×15mmのSKD61の試験片を用いて、30×30mmの面に実施例と比較例を3mm肉盛溶接した。次に、試験片の表面を平面研磨し、溶接跡を除去した後のその表面に対し、ロックウェル硬さ試験を実施した。硬さが42〜49HRCになったものを「○」、それ以外を「×」と評価した。
硬さ測定に用いた試験片において、溶接部分からΦ10×2mmを切り出し、熱伝導率測定用の試験片を作成した。熱伝導率はレーザーフラッシュ法で測定し、室温の熱伝導率を測定した。熱伝導率が22〜35W/m・Kになったものを「○」、それ以外を「×」と評価した。
耐Al溶損性評価の試験片と同様の方法で肉盛溶接を行い、肉盛溶接部からΦ10×5mmの試験片を採取した。その試験片の表面を研磨後、試験片をヒーターにより加熱し、直接ビッカース圧痕をうち、その圧痕サイズからHV硬さを測定した。500℃時の高温硬さが300HV以上になったものを「○」、300HV未満を「×」と評価した。
Φ62×50mmのSKD61試験片の上面に、実施例と比較例の2mmの肉盛溶接を行い、その後に平面研磨で溶接跡を除去および研磨で粗さを整えた試験片を用いた。耐ヒートチェック性の評価は、Φ62mmの面に対し、高周波加熱コイルを用いて7秒間で580℃まで上昇させ、その後に噴射水を用いて3秒間冷却し、エアブローで7秒間放冷させ、熱応力を負荷させた。この行程を1サイクルとし、溶接部分における25000サイクル時のヒートチェックの発生具合をカラーチェック(赤色)で評価した。発生具合を写真撮影し、視野の10%以上に赤色が認められなかった場合には「〇」、それ以外は「×」と評価した。
溶接後の組織観察に用いた試験片の切断面を研磨、腐食を行い、450mm2の面積を観察し、その面積中にある最大粒径をJIS G 0551「鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法」に規定されている粒度番号で表現し、結晶粒の粗大化の有無を評価した。本試験条件で粒度番号が4番以上を「○」、4番未満を「×」と評価した。
100×15×30mmの試験片の2つを肉盛溶接で接合させ、その中央部が10mm×10mm×55mmのJIS 3号衝撃試験片のノッチ部分になるように試験片を採取し、シャルピー衝撃値を室温で測定した。衝撃値が大きいほど、金型となった場合に割れにくいため好ましく、本試験条件でシャルピー衝撃値が35J/cm2以上を「○」、35J/cm2未満を「×」と評価した。
シャルピー衝撃値の試験片採取と同様の方法で肉盛溶接を行い、ASTM E399(金属材料の線形弾性平面ひずみ破壊靭性KICのための標準試験方法)に準じて、試験片を採取し、予きれ裂を導入後に破壊靭性KIC(臨界応力拡大係数)を求め、本試験条件で破壊靭性値が25MPa・m0.5以上を「○」、25MPa・m0.5未満を「×」と評価した。
耐ヒートチェック性の評価に用いたΦ62×50mmの試験片の研磨後の状態において、目視で溶接部分に割れがあるかを観察し、割れが見られないものは「○」、割れが有るものは「×」とした。
Claims (7)
- 質量%で、
C:0.10〜0.30%、
Si:0.20〜0.50%、
Mn:0.20〜0.50%、
Cr:3.6〜6.0%、
Mo:0.01〜1.5%、
V:0.002〜0.80%、
Al:0.001〜1.50%、
残部Fe及び不可避的元素からなり、ダイカスト金型の補修溶接部に用いられる金型補修溶接材料。 - N:0.0003〜0.20%、
Ti:0.01〜0.5%、
Nb:0.01〜0.5%、
Zr:0.01〜0.5%、
Ta:0.01〜0.5%、
から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の金型補修溶接材料。 - Co:0.10〜1.0%、
W:0.10〜5.0%、
から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の金型補修溶接材料。 - Ni:0.30〜1.0%、
Cu:0.30〜1.0%、
から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の金型補修溶接材料。 - S:0.01〜0.15、
Ca:0.001〜0.15%、
Se:0.03〜0.35%、
Te:0.01〜0.35%、
Bi:0.01〜0.50%、
Pb:0.03〜0.50%
から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の金型補修溶接材料。 - 溶接金属の溶接ままの硬さが42〜49HRCとなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の金型補修溶接材料。
- 室温の熱伝導率が22〜35W/m・Kであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の金型補修溶接材料。
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