JP2011255411A - ダイカスト金型の耐焼付き性向上方法 - Google Patents

ダイカスト金型の耐焼付き性向上方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Al合金溶湯を鋳込みながら焼付きに対する耐性を自己形成させるダイカスト金型の耐焼付き性向上方法を提供すること。
【解決手段】
ダイカスト金型は、質量%で、Cを0.1から0.42%、Siを0.2から2.5%、Mnを0.3から2.0%、Crを5.0から15.0%、Moを0.8から3.0%、Vを0.5から1.5%、及び、Alを0.025から3.0%の範囲内で少なくとも含み残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼からなり、金型意匠面を機械加工し、金型意匠面に少なくともSi元素を外部供給しながら、Al合金溶湯を繰り返し鋳込み、Al−Cr−Si−Feからなる複合酸化皮膜を形成せしめることを特徴とする。
【選択図】 図4

Description

本発明は、ダイカスト鋳造成形品との間のダイカスト金型の耐焼付き性向上方法に関し、特に、Al合金溶湯を鋳込みながら焼付きに対する耐性を自己形成させるダイカスト金型の耐焼付き性向上方法に関する。
ダイカスト鋳造成形品は、Al合金などの溶湯をダイカスト金型のキャビティ内に圧入し凝固させこれを取り出して得られる。この成形品の取り出しの際、キャビティ面に成形品が焼き付いてしまうと離型を困難にさせてしまう。すなわち、この「焼き付き」は、鋳造製品の寸法精度を劣化させ、生産性を低下させてしまう原因となることから、ダイカスト鋳造における大きな問題となっている。
ダイカスト鋳造成形品との間のダイカスト金型の焼付きを抑制させる方法として、金型設計や鋳造条件を変更して、鋳込み時の金型温度を低減させる方法が知られている。しかしながら、金型の構成や生産性からの制約も多く、実際にダイカスト鋳造の全ての場合に適用することは難しい。そこで窒化処理やPVDなどの表面処理をダイカスト金型に与える方法や、離型剤を塗布して金型表面に一時的に表面被膜を与える方法などが広く用いられている。更に、これらの方法に併せて、焼付きに対する耐性をより良好に与え得るよう、金型の材質を変更することも行われている。
例えば、特許文献1では、窒化処理を与えて供されるダイカスト金型において、金型材として一般的に使用されているJIS−SKD61に代表される5Cr系熱間工具鋼と比較してCrを多めに含有した鋼からなるダイカスト金型材を開示している。かかるダイカスト金型材では、窒化処理によって与えられる窒化層の硬さをより高めることが出来て、金型の耐焼付き性を向上させ得る、と述べている。
また、例えば、特許文献2では、JIS−SKD61と比較して所定量のMoを添加した鋼からなるダイカスト金型を開示している。かかる金型は、ダイカスト鋳造を行いながら溶湯から受ける熱によって時効硬化され、焼き付きの原因となるヒートチェックを抑制できる、と述べている。つまり、Al合金溶湯を鋳込みながらダイカスト金型の焼付きに対する耐性を自己形成させて耐焼付き性を向上させている。
同様に、特許文献3では、還元性を有する有機酸又は有機酸塩と配位子とを配合して得られる離型剤を用いて、Al合金溶湯を鋳込みながら焼付きに対する耐性を自己形成させるダイカスト鋳造の方法が開示されている。かかる離型剤を金型表面に塗布すると、ダイカスト成型時の溶湯の熱により離型剤中の還元性を有する有機酸又は有機酸塩により金型表面のFeがFe(マグネタイト)へ還元され、金型表面をきめ細かい被膜で覆うのである。かかる被膜によって、溶湯がキャビティ面に食い込んで凝固し焼き付くことを抑制し、ダイカスト金型の耐焼付き性を向上させるのである。
特開平01−111846号公報 特開2007−146263号公報 特開2007−118035号公報
Feの如き、酸化物からなる被膜をダイカスト金型の表面に形成することで、ダイカスト金型の耐焼付き性を向上させ得る。更に、このような単一の酸化物だけでなく、複合酸化物からなる被膜をダイカスト金型の表面に形成できれば、ダイカスト金型の耐焼付き性をより向上させることが期待された。
また、特許文献3に開示の方法のように、Al合金溶湯を鋳込みながら焼付きに対する耐性を自己形成させるダイカスト金型の耐焼付き性向上方法であれば、窒化処理やPVDなどの特別な装置を必要とする金型の製造工程を省略できて、金型の製造コストを大幅に低減し得る。
本発明は上記したような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、複合酸化物を表面に形成させた耐焼付き性に優れるダイカスト金型において、Al合金溶湯を鋳込みながら焼付きに対する耐性を自己形成させるダイカスト金型の耐焼付き性向上方法を提供することにある。
本発明者は、SKD61などの鋼からなるダイカスト金型の表面にAl−Cr−Si−Feなどからなる複合酸化被膜が形成されていると、良好な耐焼き付き性を得られることを経験的に得ていた。これについて、金型意匠面を機械加工した後に、(Cr1−m−nFeMo)OOH(0<m、n<1)を主成分とした表面被膜が形成されていると、これがダイカスト鋳造時に雰囲気中の水分と反応して複合酸化物が形成されることを見いだした。これについて、複合酸化物を構成するCr,Al及びSiについて、溶湯や金型から与えられるのではないかと考え、特に金型材の成分組成の変更を鋭意検討する中で本発明による耐焼付き性向上方法に至った。
つまり、本発明による耐焼付き性向上方法は、ダイカスト金型の耐焼付き性向上方法であって、前記ダイカスト金型は、質量%で、Cを0.1から0.42%、Siを0.2から2.5%、Mnを0.3から2.0%、Crを5.0から15.0%、Moを0.8から3.0%、Vを0.5から1.5%、及び、Alを0.025から3.0%の範囲内で少なくとも含み残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼からなり、金型意匠面を機械加工し、前記金型意匠面に少なくともSi元素を外部供給しながら、Al合金溶湯を繰り返し鋳込み、Al−Cr−Si−Feからなる複合酸化皮膜を形成せしめることを特徴とする。
かかる発明によれば、特にSiは金型材のみならず外部からも供給され、ダイカスト金型としての機械強度を劣化させず、且つ、Al合金溶湯を繰り返し鋳込みながら良好な耐焼付き性を与えるAl−Cr−Si−Feからなる複合酸化皮膜を金型表面に形成させ得るのである。ここでは、窒化処理やPVDなどの特別な装置を必要とする金型の製造工程を経ないため、金型の製造コストを低減しつつその耐焼き付き性を高め得るのである。
上記した発明において、前記Si元素は離型剤から外部供給されることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、特別な工程を必要とせず、良好な耐焼き付き性を持つAl−Cr−Si−Feからなる複合酸化皮膜を金型表面に形成させ得るのである。つまり、金型の製造コストを低減しつつその耐焼き付き性を高め得るのである。
上記した発明において、前記Si元素は繰り返し鋳込みの回数に応じて段階的に量を減じられながら外部供給されることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、より確実かつ簡便に耐焼き付き性に優れるAl−Cr−Si−Feからなる複合酸化皮膜を形成させ得るのである。
本発明による方法の評価に用いた試験ピンを示す斜視図である。 本発明による方法の評価に用いた試験装置を示す図である。 試験ピンの外観を示す図である。 試験ピンの断面ミクロ組織を示す図である。 本発明による方法の評価に用いた試験ピンの組成及び鋳造条件を示す図である。 本発明による方法の評価における離型抵抗の測定結果を示す図である。
ダイカスト金型の耐焼付き性を評価するための鋳造試験について、図1乃至図4を用いて説明する。
図1に示すように、鋳造試験に用いる試験ピン1は、所定の成分組成の母合金150kgを真空誘導炉で溶製し、得られたインゴットを熱間鍛造して金属角棒とし、その先端部を段付き丸棒に切削加工して得られる。すなわち、台座部1cの先端に中心軸を同一にする中間部1b、さらにその先端にやはり中心軸を同一にした直径16mm、長さ10mmの先端部1aが形成される。
図2に示すように、試験装置9は、固定型2と、可動型3と、押出しピン4と、スリーブ6と、プランジャ7とを含む。なお、試験装置9は一般的なダイカスト鋳造装置と同様であって公知であるから、その全体の説明及び図示を省略する。
固定型2及び可動型3は、一方の面に金型意匠面2a及び3aを切削加工され、互いに組み合わせられてその間にキャビティ10を形成する略板状の割り金型である。固定型2及び可動型3は互いの金型意匠面2a及び3aを対向させるようにして配置され、固定型2に対して可動型3が離間するように移動可能である。鋳造品8は、このキャビティ10に金属溶湯8’を圧入し凝固させて得られ、その表面には金型意匠面2a及び3aの形状が転写される。
可動型3にはその盤面を貫くようにして貫通孔3bが設けられている。貫通孔3bに可動型3の背面から試験ピン1を挿入すると、その先端部1aが可動型3の金型意匠面3aからキャビティ10内に突出する。この状態で試験ピン1は可動型3に固定される。なお、この固定状態で、試験ピン1の先端部1aは、キャビティ10内の略中央にあって、金属溶湯8’をキャビティ10内に導くための湯口の略正面に位置している。つまり、先端部1aは、固定型2及び可動型3を用いてダイカスト鋳造する際に溶湯からの熱を受けやすく、焼付きを生じやすい位置にあって、試験ピン1の材料の耐焼付き性を加速試験的に評価できる。
押し出しピン4は、鋳造品8を可動型3から押し出すように、可動型3の盤面を貫通する貫通穴に挿通されている。また、押し出しピン4の可動型3への挿入端部と反対側の端部にはロードセル5が取り付けられ、鋳造品8を可動型3から押し出す際に押し出しピン4にかかる荷重を測定できるようになっている。
スリーブ6は、ダイカスト鋳造の際に金属溶湯を一時的に貯留するための略円筒形状の容器であり、固定型2に取り付けられて、その内部はキャビティ10に連通している。
プランジャ7は、スリーブ6内を湯口に向けて移動可能なピストン体であるプランジャチップ7’を備え、これをスリーブ6に沿って移動させ得る。プランジャ7によってスリーブ6内に貯留された金属溶湯8’がキャビティ10内に圧入される。
次に、上記した試験装置9でダイカスト金型の耐焼付き性を評価するための手順を説明する。
図2(a)に示すように、固定型2及び可動型3を互いに近接せしめ互いの金型意匠面2a及び3aを対向させてキャビティ10を形成させる。また、耐焼付き性を評価するダイカスト金型材からなる試験ピン1を上記したように可動型3に固定する。これに併せ、スリーブ6内に開口部6’から700℃に加熱したAl系合金であるADC12を600±15gだけ給湯し貯留させる。
続いて、図2(b)に示すように、プランジャ7によって溶湯8’をスリーブ6からキャビティ10内に圧入し、これを凝固させると鋳造品8が得られる。プランジャ7による射出速度は低速を0.2m/sec、高速を1.6m/secとし、射出の圧力を65MPaとした。
続いて、図2(c)に示すように、可動型3を固定型2から離間させると、可動型3とともに鋳造品8が固定型2から離間する。続いて、図2(d)に示すように鋳造品8を押し出しピン4によって可動型3から押し出して離型させる。このとき押し出しピン4にかかる荷重をロードセル5で測定し、鋳造品8に対する試験ピン1の耐焼付き性を評価する。なお、かかる荷重を以下において「離型抵抗」と称する。離型抵抗は、所定数のショットを行って、その最後から5ショットで測定された値の平均値を採用した。
なお、1ショットのサイクルタイムは30〜36secとし、ショット毎にSi元素を含む離型剤、シリコーンエマルジョンオイルなどを金型意匠面2a及び3aにスプレーした。
[実施例]
本発明者は、材質の同じ試験ピン1であっても、焼き付きのし易さ、すなわち離型抵抗にバラツキがあることに気づいた。参考として、図3(a)に焼付きの少ない(離型抵抗の小さい)試験ピン1の外観を示した。このような試験ピン1の離型抵抗は上記した試験法においていずれも120N以下であった。一方、図3(b)に焼付きの激しい(離型抵抗の大きい)試験ピン1の外観を示した。このような試験ピン1の離型抵抗は上記した試験法においていずれも160N以上であった。
この離型抵抗に表れる大きな差のより詳細な原因を調査するため、試験ピン1の表面近傍の断面を観察した。図4(a)に示すように、焼付きの少ない試験ピン1の母相Pの表面近傍には酸化皮膜12が観察され、これはAl−Cr−Si−Feからなる複合酸化物であることをエネルギー分散型X線分析法により確認した。一方、図4(b)に示すように、焼付きの激しい試験ピン1の表面近傍には、溶湯の焼付いた凝固物13と、溶湯と反応した反応層14が観察され、前記したような酸化皮膜12は観察されなかった。つまり、概ね離型抵抗が150Nを境に、これよりも低い離型抵抗を示すときは複合酸化物である酸化皮膜12が形成され、これよりも高い離型抵抗を示すときは複合酸化物である酸化皮膜12が形成されていないものと推測された。
上記したようにAl−Cr−Si−Feからなる複合酸化物からなる酸化皮膜12を形成し焼き付きが少ない試験ピン1について、特にAlやSiを比較的多く含む試験ピン1では焼き付きが少ない傾向にあることを経験的に知った。更に、かかる複合酸化物は、(Cr1−m−n,Fe,Mo)OOH(0<m、n<1)を主成分としてSiOやAlを含む化合物が変化して得られると予測された。そこで耐焼付き性に優れる金型材を得るにあたって、JIS−SKD61の成分組成をベースに上記した化合物を表面に形成する成分組成について、Al、Cr、Siの成分組成を特に変化させた試験ピン1を作製して、各々の耐焼付き性を離型抵抗により評価した。
後述するが、Siについては、Al−Cr−Si−Feからなる複合酸化物の形成に対する金型材中のSi量の寄与は比較的小さい上、ダイカスト金型としての機械的強度の劣化を防止すべく金型材に所定量以上を添加できない。そこで、これを外部供給することに想到し、特に、離型剤により供給する実施例について述べる。
詳細には、図5に示す各成分組成(実測値)を有する鋼からなる試験ピン1をそれぞれ作製した。ここで各組成元素の含有率は質量%であり、以下単に%と表記する。この試験ピン1を試験装置9にセットし、上記した鋳造試験を行った。離型剤のスプレー時間は、ショット(S)数に対応して、0から200ショットまでを8秒、201から300ショットまでを6秒、301ショットから400ショットまでを4秒、401ショットから500ショットまでを2秒と変化させた。すなわち、繰り返し鋳込みの回数に応じて段階的にSi元素の量を減じながら外部供給する方法を採用した。
上記した離型剤のスプレー時間に関して、これが長いと金型意匠面2a及び3aの温度が下がってしまう。このとき離型剤は含まれる水分により金型意匠面2a及び3aから流れ落ちて、Siを金型意匠面2a及び3aに効率よく外部供給できない。一方、金型意匠面2a及び3aの温度が高すぎると、離型剤が急激に蒸発して、やはりSiを金型意匠面2a及び3aに効率よく外部供給できない。よって、離型剤の水分を適度に蒸発させながら金型意匠面2a及び3aを冷却させ、Siを金型意匠面2a及び3aに効率よく外部供給するには、金型の温度及びスプレー時間を制御すべきである。ここでは、金型の温度を100℃以上300℃以下に制御するとともに、上記したスプレー時間とした。
まず、比較例8乃至10に示すように、複合酸化物の形成に対する金型材中のSi量の寄与について、一般的なSKD61よりもSi量を1.5から2.2%と高くした金型材における鋳造試験を行った。100ショットでの離型抵抗は370N以上と高く、しかも焼き付きが生じて100ショット以上の鋳造試験は出来なかった。試験ピン1について詳細を調べたところ、Al−Cr−Si−Feからなる複合酸化物は形成されていなかった。つまり、Al−Cr−Si−Feからなる複合酸化物の形成に対する金型材中のSi量の寄与は比較的小さく、ダイカスト金型としての機械的強度の劣化を防止すべく金型材に比較例8乃至10以上の量のSiを添加することは好ましくない。なお、比較例8乃至10では、Cr及びAlについても成分組成を変えたが、これについての複合酸化物の形成への影響はほとんど無かった。
これに対して、実施例6乃至8に示すように、Siを外部供給することとし、Si元素を含む離型剤を多く与えた。これによれば100ショットでの焼き付きはほとんど生じず、500ショットの鋳造試験を行うことが出来るようになった。この500ショット後の離型抵抗であっても、82〜104Nと非常に良好であった。なお、このような試験ピン1については、予測されたようにAl−Cr−Si−Feからなる複合酸化物が形成されていた。
以上のことから、比較例1乃至4に示すように、金型材中のSi量を逆に低減するとともに、Siを離型剤により外部供給することとし、Cr及びAl等の成分組成を変化させて鋳造試験を行った。ここでも500ショットの鋳造試験を行うことが出来たが、500ショット後の離型抵抗は複合酸化物被膜の形成の目安である120N程度よりもはるかに大きい187N以上となった。
これに対して、実施例2乃至5に示すように、Si量をSKD61と同等程度とするとともに、Si元素を含む離型剤を多く与えることで、500ショット後の離型抵抗を複合酸化物被膜の形成の目安である120N程度以下にすることができた。
ここで比較例3と比べて、比較例1及び2に示すように、Cr量が少ないと離型抵抗が大幅に上昇する傾向にあった。そこで、比較例6及び7に示すように、Cr量をわずかに増やすと、離型抵抗が低下する傾向にあるが、複合酸化物被膜の形成の目安である120N程度よりも大きくなった。なお、比較例7では、Al量が少なかったため、所望とする複合被膜が完全に出来なかったものと推測する。
加えて、C量を低減したときの傾向を把握すべく鋳造試験を行ったところ、実施例1に示すように、離型抵抗を複合酸化物被膜の形成の目安である120N程度よりも小さくすることが出来た。なお、比較例5に示すように、Al量が少ないと離型抵抗は大幅に上昇する傾向にあった。
なお、本実施例では、離型剤によってSi元素を金型の外部から供給したが、それ以外の方法によりSi元素を外部供給してもよい。例えば、Si元素を満たした雰囲気中にダイカスト金型を設置して鋳造を行う方法、Si元素を含む冷却水をダイカスト金型にスプレー塗布する方法などが考えられる。
上記した実施例及び比較例を考慮した上で、ダイカスト金型として必要な機械的性質を損なわない範囲において、Al−Cr−Si−Feからなる酸化皮膜12を形成し得るよう、Al、Cr及びSiの添加量の範囲は次のように定められる。
Alは、酸化皮膜12の形成の核となる表面被膜のうちのAlを生成させるために必要である。しかし、過剰なAlの添加は、ダイカスト金型として必要とされる靭性を失わせる。故に、質量%で、Alは0.025〜3.0%の範囲内、好ましくは1.0〜2.2%の範囲内である。
Crは、酸化被膜12の形成の核となる表面被膜のうちの(Cr1−m−n,Fe,Mo)OOH(0<m、n<1)を生成させるために必要である。また、焼入れ性及び破壊靭性を高める。しかし、過剰なCrの添加は、ダイカスト金型として必要とされる高温強度および熱伝導率を損なわせる。故に、質量%で、Crは5.0〜15.0%の範囲内、好ましくは8.0〜13.0%の範囲内である。
Siは、酸化被膜12の形成の核となる表面被膜のうちのSiOを生成させるために必要である。また、Siは、脱酸元素としても必要である。しかし、過剰なSiの添加はダイカスト金型として必要とさせる強度及び靭性を失わせ、熱伝導率を低下させる。故に、質量%で、Siは0.2〜2.5%の範囲内、好ましくは1.0〜2.2%の範囲内である。
また、上記したAl、Cr及びSiの添加量の範囲において、ダイカスト金型として必要な機械的性質を損なわない範囲において、他の元素の添加量の範囲を以下の如き指針で求めた。
Cは、焼入れによりマルテンサイト組織を与えるとともに、合金炭化物を析出させて、ダイカスト金型として必要とされる強度及び硬さを与える。但し、過剰なCの添加はマルテンサイトを必要以上に硬化させ、ダイカスト金型として必要とされる靭性を失わせ、また、熱伝導率を低下させる。故に、質量%で、Cは0.1〜0.42%の範囲内、好ましくは0.32〜0.40%の範囲内である。
Mnは、焼入れ性を高める。しかし、過剰なMnの添加はダイカスト金型として必要とされる軟化抵抗を失わせ、熱伝導率を低下させる。さらに、球状化焼鈍し処理に要する時間を増加させ、生産性を低下させる。故に、質量%で、Mnは0.3〜2.0%の範囲内、好ましくは0.32〜0.70%の範囲内である。
Moは、高温強度を高める。しかし、過剰なMoの添加はダイカスト金型として必要とされる破壊靭性を失わせる。故に、質量%で、Moは0.8〜3.0%の範囲内、好ましくは0.9〜1.35%の範囲内である。
Vは、焼入れ時の結晶粒粗大化を抑制し、靭性を高める。しかし、過剰なVの添加は、ソーキングによっても溶解しきれない粗大な炭化物を晶出させ、ダイカスト金型として必要とされる疲労強度、耐衝撃性を失わせる。故に、質量%で、Vは0.5〜1.5%の範囲内、好ましくは、0.6〜0.9%の範囲内である。
ここまで本発明による代表的実施例及びこれに基づく変形例について説明したが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
1 試験ピン
2 固定型
3 可動型
4 押出しピン
5 ロードセル
6 スリーブ
7 プランジャ
8 鋳造品
9 試験装置
12 酸化皮膜
13 凝固物

Claims (3)

  1. ダイカスト金型の耐焼付き性向上方法であって、
    前記ダイカスト金型は、質量%で、
    Cを0.1から0.42%、
    Siを0.2から2.5%、
    Mnを0.3から2.0%、
    Crを5.0から15.0%、
    Moを0.8から3.0%、
    Vを0.5から1.5%、及び、
    Alを0.025から3.0%の範囲内で少なくとも含み残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼からなり、
    金型意匠面を機械加工し、前記金型意匠面に少なくともSi元素を外部供給しながら、Al合金溶湯を繰り返し鋳込み、Al−Cr−Si−Feからなる複合酸化皮膜を形成せしめることを特徴とするダイカスト金型の耐焼付き性向上方法。
  2. 前記Si元素は離型剤から外部供給されることを特徴とする請求項1記載のダイカスト金型の耐焼付き性向上方法。
  3. 前記Si元素は繰り返し鋳込みの回数に応じて段階的に量を減じられながら外部供給されることを特徴とする請求項2記載のダイカスト金型の耐焼付き性向上方法。
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