以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態によるアンテナ装置を含む携帯無線機器の構成を示す略斜視図である。
図1に示すように、本実施形態による携帯無線機器100は例えばスマートフォンであり、非常に薄型な筐体50を有している。図示の携帯無線機器100は筐体50の背面50bが上向きの状態であり、主にディスプレイが設けられている筐体50の前面50aは下方を向いている。筐体50は樹脂と金属との組み合わせからなり、筐体50の背面50bの中央部を含む広い範囲には金属カバー層51Bが設けられている。また筐体50の背面50bの長手方向(Y方向)の一方の端部(上端部50c)及び他方の端部(下端部50d)には樹脂カバー層51Aが設けられており、金属カバー層51Bが設けられていない非シールド領域となっている。金属カバー層51Bは、筐体の機械的強度、磁気シールド特性、デザイン性等の向上のために設けられるものである。
携帯無線機器100はアンテナ装置1を内蔵しており、アンテナ装置1は筐体50の上端部50cに配置されている。アンテナ装置1は、HF帯の無線通信に用いられる平面コイルアンテナ10と、UHF帯の無線通信に用いられる高周波アンテナ20とを有している。平面コイルアンテナ10は例えばNFCアンテナであり、その共振周波数は13.56MHzである。これらのアンテナ素子は金属カバー層51Bに覆われていない筐体50の上端部50cに設けられているので、無線通信が可能である。
図2は、図1に示したアンテナ装置1の構成を透過的に示す平面図であって、(a)は筐体50(特に金属カバー層51B)がある状態、(b)は筐体50を省略した状態をそれぞれ示している。また、図3は、図2のA−A線に沿ったアンテナ装置1の断面図である。
図2(a)、(b)及び図3に示すように、アンテナ装置1は、平面コイルアンテナ10と、平面コイルアンテナ10の図中左側の一部と平面視で重なるように配置された高周波アンテナ20と、平面コイルアンテナ10の図中右側の一部と平面視で重なり、且つ高周波アンテナ20と平面視で重ならないように配置された磁性シート30とを備えている。高周波アンテナ20と重なる平面コイルアンテナ10の一部は磁性シート30と重なっておらず、磁性シート30と重なる平面コイルアンテナ10の一部は高周波アンテナ20と重なっていない。
図3に示すように、平面コイルアンテナ10、高周波アンテナ20及び磁性シート30は筐体50内に収容されており、筐体50を構成する樹脂カバー層51A及び金属カバー層51Bは、平面コイルアンテナ10の一方の主面10a側に配置されている。一方、高周波アンテナ20及び磁性シート30は、平面コイルアンテナ10の他方の主面10b側に配置されている。金属カバー層51Bは、磁性シート30と同様、平面コイルアンテナ10の図中右側の一部と平面視で重なり、且つ高周波アンテナ20と平面視で重ならないように配置されている。
平面コイルアンテナ10は、フレキシブル基板11の一方の主面11aに形成されたスパイラルパターン10cからなり、本実施形態ではXY平面と平行に設けられている。アンテナ設計を容易にすると共にスパイラルパターン10cに囲まれた内径部10dの面積をできるだけ大きくするため、スパイラルパターン10cは矩形スパイラルであり、X方向に延びる直線パターン成分と、Y方向に延びる直線パターン成分とを含むことが好ましい。平面コイルアンテナ10の外形サイズは例えば30×40(mm)である。
本実施形態において、スパイラルパターン10cの両端はフレキシブル基板11のエッジ近くまで引き出されており、特にスパイラルパターン10cの内周端はスパイラルパターン10cを横切って外側に引き出されている。スパイラルパターン10cの両端は、例えばフレキシブル基板11上に実装されたNFCチップや携帯無線機器のメイン回路基板に接続される。
フレキシブル基板11は例えばPET樹脂からなり、その平面サイズはスパイラルパターン10cの大きさに合わせて適宜設定される。フレキシブル基板11の厚さは例えば30μmである。フレキシブル基板11は、スパイラルパターン10cの形成面である一方の主面11aが筐体50の外側を向くように筐体50内に設けられる。
高周波アンテナ20は矩形の平面導体(ベタパターン)からなり、その裏面には給電ライン21が接続されている。高周波アンテナ20は、平面コイルアンテナ10の一部と重なるように設けられており、平面コイルアンテナ10のスパイラルパターン10cの一部とスパイラルパターン10cに囲まれた内径部10dの一部を覆っている。高周波アンテナ20は金属平板や金属シートであってもよく、支持基板の表面に形成された金属箔であってもよい。
本実施形態において、金属カバー層51Bは筐体50の一部であり、筐体50内に収容されている平面コイルアンテナ10を覆っているが、高周波アンテナ20を覆ってはいない。高周波アンテナ20は、筐体50の樹脂カバー層51Aと平面視で重なっている。
本実施形態において、磁性シート30は平面コイルアンテナ10よりも筐体50の内側に配置されており、特にフレキシブル基板11の他方の主面11bに貼り付けられている。磁性シート30の厚さはその役割を果たすことができる限りにおいて特に限定されない。平面コイルアンテナ10は図示のように携帯無線機器のバッテリーパック40に近接して実装されることが多いが、磁性シート30がバッテリーパック40と平面コイルアンテナ10との間に介在している場合には、平面コイルアンテナ10を流れる電流によって発生する磁束の磁路を確保することができる。したがって、バッテリーパック40を構成する金属体が平面コイルアンテナ10に与える影響を抑えることができ、所望のアンテナ特性を得ることができる。
磁性シート30は、アスペクト比の大きな扁平形状の磁性金属粉をポリマーと結合させた複合磁性シートであることが好ましい。扁平金属粉は複合磁性シートの厚み方向に重なり、その面方向は複合磁性シートの面方向と平行となるように配向されているので、複合磁性シートの面方向の実効的な透磁率を高めることができる。これによれば、平面コイルアンテナ10が発生させる磁場を外部から磁性シート30内に引き込み、コイル軸と直交する水平方向に導くことができる。また扁平磁性粉はポリマー中に密に配列されているが、扁平磁性粉間はポリマーによって絶縁されているので渦電流の発生を防止することができる。したがって、平面コイルアンテナ10の使用周波数帯(例えば13.56MHz)において高透磁率と低磁気損失の両方を実現することができる。
高周波アンテナ20は、平面コイルアンテナ10のY方向の一端部(図中左側端部)から他端部(図中右側端部)に向かって平面コイルアンテナ10と略平行に延びており、高周波アンテナ20の一部は平面コイルアンテナ10のY方向の一端部を覆っている。詳細には、高周波アンテナ20は、スパイラルパターン10cのY方向の一端部とスパイラルパターン10cに囲まれた内径部10dの一部を覆っている。高周波アンテナ20のY方向の一端部は、平面コイルアンテナ10と重なっておらず、高周波アンテナ20のY方向の他端部は、平面コイルアンテナ10のコイル軸Z0よりもY方向の一端側に位置している。図2に示すように、高周波アンテナ20のX方向の幅W2は平面コイルアンテナ10のX方向の幅W1よりも広く、これにより高周波アンテナ20は平面コイルアンテナ10のX方向の全体を覆っているが、図12に示すようにX方向の一部を覆っていてもよい。高周波アンテナ20の大きさはその共振周波数に応じて適宜設定することができる。
高周波アンテナ20は平面コイルアンテナ10の他方の主面10b側に配置されているので、高周波アンテナ20の影響によって平面コイルアンテナ10の特性が大きく低下することはない。また平面コイルアンテナ10はスパイラルパターンからなり、高周波アンテナ20を広範囲に覆うものではないので、平面コイルアンテナ10が高周波アンテナ20に与える影響は小さく、よって高周波アンテナ20は平面コイルアンテナ10と重なっていたとしても問題なく動作する。
金属カバー層51Bは、平面コイルアンテナ10のY方向の他端部(図中右側端部)から一端部(図中左側端部)に向かって延びており、金属カバー層51Bの一部は平面コイルアンテナ10のY方向の他端部を覆っている。詳細には、金属カバー層51Bは、平面コイルアンテナ10のスパイラルパターン10cのY方向の他端部とスパイラルパターン10cに囲まれた内径部10dの一部を覆っている。
平面コイルアンテナ10と重なる金属カバー層51BのY方向の一端部は、平面コイルアンテナ10のコイル軸Z0を覆うことなく当該コイル軸Z0よりもY方向の他端側に位置することが好ましい。また図2に示すように、金属カバー層51Bが平面コイルアンテナ10の内径部10dと平面視で重なる領域は矩形領域であり、その面積S1は、平面コイルアンテナ10の内径部10dの全面積S0の62.5%未満であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、12.5%以上50%以下であることが特に好ましい。換言すると、金属カバー層51Bに覆われていない平面コイルアンテナ10の内径部10dの露出面積は、平面コイルアンテナ10の内径部10dの全面積の37.5%以上であることが好ましく、50%超であることがより好ましく、50%超87.5%未満であることが特に好ましい。ここで、平面コイルアンテナ10の内径部10dとは、スパイラルパターン10cの最内周よりも内側の領域を指す。また平面コイルアンテナ10の内径部10dと平面視で重なる領域において金属カバー層51Bはその全面が金属からなり、開口、スリット等の金属が排除された部分は存在しない。
図4は、平面コイルアンテナ10を覆う平面導体(金属カバー層51Bに相当)の被覆面積と平面コイルアンテナ10の通信距離との関係を示すグラフであり、下側の横軸は平面コイルアンテナの内径部の全面積に対する平面導体の被覆面積の割合(被覆率)(%)、上側の横軸は平面コイルアンテナ10の内径部10dの全面積に対する平面導体の被覆面積の割合(被覆率)(%)、縦軸は平面コイルアンテナのいわゆるカードモードにおける最大通信距離(mm)をそれぞれ示している。平面コイルアンテナ10の形成領域とは、スパイラルパターン10cの最外周よりも内側の領域を指し、実際にスパイラルパターン10cが形成されている領域のみならず、隣接するスパイラルパターン10c間のスペースや内径部10dを含む。また、平面コイルアンテナのカードモードにおける最大通信距離とは、テスト用リーダライタからテスト信号を送信し、平面コイルアンテナ10がテスト信号を受信してその変調信号を送信し、この変調信号をサーチコイルで受信したときの受信信号の電圧レベルが閾値レベルを満たすときの平面コイルアンテナ10からリーダライタまでの距離の最大値のことをいう。平面コイルアンテナ10の外形サイズは40mm×50mm、ターン数は3ターンである。
図4に示すように、平面コイルアンテナ10の通信距離は平面コイルアンテナ10の形成領域の被覆率が0%のときに約40mmであり、平面コイルアンテナ10の形成領域の被覆率が10%のときに最大の約48mmである。その後、被覆率が50%に達するまで平面コイルアンテナ10の通信距離の低下は緩やかであり、被覆率が50%のときの通信距離は約44mmとなる。しかし、被覆率が50%を超えたところから通信距離の低下率は大きくなり、被覆率が60%のときの通信距離は40mmとなり、被覆率が0%のときと同じレベルまで低下する。さらに、被覆率が80%のときの通信距離は約28mmとなる。
ここで、平面コイルアンテナ10の形成領域の被覆率と平面コイルアンテナ10の内径部10dの被覆率との関係は次のようになっている。まず平面コイルアンテナ10の形成領域の被覆率が10%未満であるとき、平面コイルアンテナ10の内径部10dの被覆率は0%である。その後、平面コイルアンテナ10の形成領域の被覆率の増加に合わせて平面コイルアンテナ10の内径部10dの被覆率も増加し、平面コイルアンテナ10の形成領域の被覆率が40%、50%、及び60%であるときの平面コイルアンテナ10の内径部10dの被覆率はそれぞれ37.5%、50%、及び62.5%となる。さらに平面コイルアンテナ10の形成領域の被覆率が90%であるときの平面コイルアンテナ10の内径部10dの被覆率は100%となる。
以上の結果から、金属カバー層51Bが平面コイルアンテナ10の内径部10dと平面視で重なる領域の面積S1は、平面コイルアンテナ10の内径部10dの全面積S0の62.5%未満であることが好ましく、マージンを考慮すれば50%以下であることがより好ましく、12.5%以上50%以下であることが特に好ましいことが分かる。この構成によれば、金属カバー層51Bが平面コイルアンテナ10に与える影響を抑えて平面コイルアンテナ10の通信距離を延ばすことができ、アンテナ特性の確保と省スペース化を両立させることができる。
磁性シート30は、金属カバー層51Bと同様、平面コイルアンテナ10のY方向の他端部(図中右側端部)から一端部(図中左側端部)に向かって延びており、磁性シート30の一部は平面コイルアンテナ10のY方向の他端部と重なっている。平面コイルアンテナ10と鎖交する磁束の磁路を十分に確保するためには、平面コイルアンテナ10の全部と重なるように磁性シート30を設けることが好ましいが、高周波アンテナ20が磁性シート30に近接すると高周波アンテナ20の特性が悪化してしまう。そのため、磁性シート30は高周波アンテナ20と重ならない領域に設けられている。
平面コイルアンテナ10と重なる磁性シート30のY方向の一端部は、図示のように金属カバー層51Bの外側にはみ出さないように設けられることが好ましい。すなわち、磁性シート30のY方向の一端部の位置は、金属カバー層51Bの一端部の位置よりもY方向の他端側に位置することが好ましい。このように、高周波アンテナ20から見て金属カバー層51Bよりも遠方に磁性シート30を配置することにより、磁性シート30が高周波アンテナ20に与える影響を最小限に抑えることができ、高周波アンテナ20の所望のアンテナ特性を確保することができる。
なお、磁性シート30のY方向の他端部やX方向の両端部は、図示のようにフレキシブル基板11の外側にはみ出していてもよく、フレキシブル基板11の外側にはみ出すことなく内側に収まっていてもよい。また、磁性シート30は図示のようにフレキシブル基板11の裏面に貼り付けられていてもよく、フレキシブル基板11から離れて設けられていてもよい。
図1に示したように、筐体50の背面50bのうち金属カバー層51Bが設けられていない領域、つまり筐体50内のアンテナを実装可能なスペースは非常に限られているため、そのような限られたスペースに平面コイルアンテナ10及び高周波アンテナ20を実装し、それらが相互に重なり合わず、しかも金属カバー層51Bとまったく重ならないようにすることは困難である。一方、平面コイルアンテナ10及び高周波アンテナ20は相互に重なり合わないように配置しなければならないとこれまで考えられてきた。しかし、平面コイルアンテナ10の一部を金属カバー層51Bと重ねて設け、さらに高周波アンテナ20を平面コイルアンテナ10の一部と重ねて設けることにより、金属カバー層51Bに覆われていないスペースに両方のアンテナを効率よくレイアウトすることが可能である。
一方、平面コイルアンテナ10を安定的に動作させるためには平面コイルアンテナ10の他方の主面10b側に磁性シート30を設ける必要があり、これが高周波アンテナ20と重なる場合には高周波アンテナ20の放射特性が悪化する。しかし、本実施形態では平面コイルアンテナ10と平面視で重なり且つ高周波アンテナ20と重ならないように磁性シート30を設けているので、平面コイルアンテナ10と高周波アンテナ20の両方を安定的に動作させることができる。
以上説明したように、本実施形態によるアンテナ装置1は、近距離無線通信用の平面コイルアンテナ10と高周波アンテナ20とを備え、高周波アンテナ20が平面コイルアンテナの一部と平面視で重なるように設けられているので、平面コイルアンテナ10及び高周波アンテナ20の所望のアンテナ特性を確保しつつ、携帯無線機器100の筐体50内の限られたスペースに両者を効率よくレイアウトすることができる。また、磁性シート30が平面コイルアンテナ10の一部と平面視で重なるように設けられているので、バッテリーパック等の金属体の影響を受けることなく平面コイルアンテナ10の所望のアンテナ特性を確保することができる。さらに、磁性シート30が高周波アンテナ20と平面視で重ならないように設けられているので、高周波アンテナ20の特性の低下を防止することができ、高周波アンテナ20の良好な通信を確保することができる。
図5は、本発明の第2の実施の形態によるアンテナ装置の構成を透過的に示す平面図であって、(a)は筐体50(特に金属カバー層51B)がある場合、(b)は筐体50を省略した状態をそれぞれ示している。また、図6は、図5のA−A線に沿ったアンテナ装置の断面図である。
図5(a)、(b)及び図6に示すように、このアンテナ装置2の特徴は、高周波アンテナ20が平面コイルアンテナ10の一方の主面10a側に配置されている点にある。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
高周波アンテナ20が平面コイルアンテナ10の一方の主面10a側に設けられている場合、平面コイルアンテナ10の外側が高周波アンテナ20に覆われることになるので、高周波アンテナ20によるシールド効果が問題となる。すなわち、高周波アンテナ20を構成する平面導体が平面コイルアンテナ10から輻射される電波を遮蔽するので、場合によっては、平面コイルアンテナ10を正しく動作させることができない。高周波アンテナ20の単体が平面コイルアンテナ10を広く覆う場合に限らず、高周波アンテナ20と金属カバー層51Bとの組み合わせが平面コイルアンテナ10を広く覆う場合も同様であり、平面コイルアンテナ10の電波を筐体50の外側に十分に放射させることができず、その結果、平面コイルアンテナ10の放射効率が大幅に低下することが考えられる。
このような問題を解決するため、XY平面と直交するZ軸方向から見たとき、高周波アンテナ20と金属カバー層51Bとの間に一定幅のスリット領域SLを形成する。スリット領域SLはX方向に延びる直線状の非シールド領域であり、その幅W3は、同一方向における平面コイルアンテナ10の内径部10dの幅W4の1/10以上であることが好ましく、1/5以上であることがより好ましい。このスリット領域SLは、平面コイルアンテナ10と鎖交する磁束の磁路となるので、平面コイルアンテナ10を正しく動作させることが可能である。
平面コイルアンテナ10と重なる高周波アンテナ20のY方向の他端部は、平面コイルアンテナ10のコイル軸Z0と平面視で重なることなく当該コイル軸Z0よりもY方向の一端側に位置することが好ましい。また図5に示すように、高周波アンテナ20が平面コイルアンテナ10の内径部10dと平面視で重なる領域の面積S2と金属カバー層51Bが平面コイルアンテナ10の内径部10dと平面視で重なる領域の面積S1との合計は、平面コイルアンテナ10の内径部10dの全面積S0の62.5%未満であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、12.5%以上50%以下であることが特に好ましい。この構成によれば、平面コイルアンテナ10に対する高周波アンテナ20及び金属カバー層51Bの悪影響を抑えて平面コイルアンテナ10の通信距離を延ばすことができ、アンテナ特性の確保と省スペース化を両立させることが可能となる。
さらに、本実施形態においては、平面コイルアンテナ10の内径部と平面視で重なるスリット領域SLが設けられるので、平面コイルアンテナ10の所望の放射特性を確保することができる。平面コイルアンテナ10の内径部10dを通過し、さらにスリット領域SLを通過した磁束の一部は高周波アンテナ20の外側及び金属カバー層51Bの外側を大きく周回して平面コイルアンテナ10の内径部10dに戻るので、平面コイルアンテナ10の通信距離を延ばすことができる。したがって、小型な平面コイルアンテナを用いた場合でも近距離無線通信に必要な所望のアンテナ特性を確保することができる。
以上説明したように、本実施形態によるアンテナ装置2は、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。また、高周波アンテナ20の外側には高周波アンテナ20から輻射される電磁波に影響を及ぼす部材が何ら存在しないので、高周波アンテナ20の放射特性を高めることができる。
図7は、本発明の第3の実施の形態によるアンテナ装置の構成を示す略断面図である。
図7に示すように、このアンテナ装置3の特徴は、高周波アンテナ20が携帯無線機器の筐体50の一部を構成している点にある。すなわち、本実施形態は、筐体50を構成する金属カバー層51Bの一部を高周波アンテナ20として利用するものである。その他の構成は第2の実施形態と同様である。本実施形態によれば、第2の実施の形態による発明の効果に加えて、筐体50内に高周波アンテナ20の実装スペースを確保する必要がなく、平面コイルアンテナ10のレイアウトの自由度を高めることができる。また、高周波アンテナ20の外側には高周波アンテナ20から輻射される電磁波に影響を及ぼす部材が何ら存在しないので、高周波アンテナ20の放射特性を高めることができる。
次に、図8〜図10を参照しながら、金属カバー層51Bがない筐体50を用いたアンテナ装置の実施形態について詳細に説明する。
図8は、本発明の第4の実施の形態によるアンテナ装置の構成を示す略断面図である。
図8に示すように、このアンテナ装置4の特徴は、上述した第1の実施の形態によるアンテナ装置1の構成において、筐体50に金属カバー層51Bが設けられておらず、樹脂カバー層51Aのみで構成されている点にある。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
本実施形態によるアンテナ装置4は、近距離無線通信用の平面コイルアンテナ10と高周波アンテナ20とを備え、高周波アンテナ20が平面コイルアンテナ10の一部と平面視で重なるように設けられているので、平面コイルアンテナ10及び高周波アンテナ20の所望のアンテナ特性を確保しつつ、携帯無線機器100の筐体50内の限られたスペースに両者を効率よくレイアウトすることができる。また、磁性シート30が平面コイルアンテナ10の一部と平面視で重なるように設けられているので、バッテリーパック等の金属体の影響を受けることなく平面コイルアンテナ10の所望のアンテナ特性を確保することができる。さらに、磁性シート30が高周波アンテナ20と平面視で重ならないように設けられているので、高周波アンテナ20の特性の低下を防止することができ、高周波アンテナ20の良好な通信を確保することができる。
図9は、本発明の第5の実施の形態によるアンテナ装置の構成を示す略断面図である。
図9に示すように、このアンテナ装置5の特徴は、上述した第2の実施の形態によるアンテナ装置2の構成において、筐体50に金属カバー層51Bが設けられておらず、樹脂カバー層51Aのみで構成されている点にある。その他の構成は第2の実施の形態と同様である。
平面コイルアンテナ10と重なる高周波アンテナ20のY方向の他端部は、平面コイルアンテナ10のコイル軸Z0を覆うことなく当該コイル軸Z0よりもY方向の一端側に位置することが好ましい。また、高周波アンテナ20が平面コイルアンテナ10の内径部10dと平面視で重なる領域の面積S2(図5参照)は、平面コイルアンテナ10の内径部10dの全面積S0の62.5%未満であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、12.5%以上50%以下であることが特に好ましい。この構成によれば、平面コイルアンテナ10に対する高周波アンテナ20の悪影響を抑えて平面コイルアンテナ10の通信距離を延ばすことができ、アンテナ特性の確保と省スペース化を両立させることができる。
以上説明したように、本実施形態によるアンテナ装置5は、第4の実施の形態と同様の効果を奏することができる。また、高周波アンテナ20の外側には高周波アンテナ20から輻射される電波に影響を及ぼす部材が何ら存在しないので、高周波アンテナ20の放射特性を高めることができる。
図10は、本発明の第6の実施の形態によるアンテナ装置の構成を示す略断面図である。
図10に示すように、このアンテナ装置6の特徴は、上述した第3の実施の形態によるアンテナ装置3の構成において、筐体50に金属カバー層51Bが設けられておらず、樹脂カバー層51Aのみで構成されている点にある。その他の構成は第3の実施の形態と同様である。このような構成を有するアンテナ装置6は、第3の実施の形態と同様の効果を奏することができる。また、高周波アンテナ20の外側には高周波アンテナ20から輻射される電磁波に影響を及ぼす部材が何ら存在しないので、高周波アンテナ20の放射特性を高めることができる。
図11は、本発明の第7の実施の形態によるアンテナ装置の構成を示す略断面図である。
図11に示すように、このアンテナ装置7の特徴は、上述した第1の実施の形態によるアンテナ装置1の構成において、筐体50が樹脂カバー層51Aのみで構成されており、樹脂カバー層51Aの内側表面に金属膜53が形成されている点にある。このような構成を有するアンテナ装置7は、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
図12は、本発明の第8の実施の形態によるアンテナ装置の構成を示す略平面図であって、特に高周波アンテナ20のレイアウトの変形例を示す図である。
図12に示すように、このアンテナ装置8の特徴は、高周波アンテナ20が平面コイルアンテナ10に対してX方向にオフセットされている点にある。そのため、高周波アンテナ20は、平面コイルアンテナ10のX方向の全体ではなく一部と重なっている。このように、高周波アンテナ20のX方向の中心の位置は必ずしも平面コイルアンテナ10と揃っていなくてもよい。本実施形態によるアンテナ装置8も第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
例えば、上記各実施形態においては、平面コイルアンテナ10が数ターンのスパイラルパターンで構成されているが、1ターン未満のループパターンであってもよい。すなわち、平面コイルアンテナ10は、ループ状又はスパイラル状の平面コイルパターンであればよい。なお1ターン未満のループパターンの場合、そのターン数は3/4ターン以上であることが好ましく、ループの直径によって定義される円内を平面コイルアンテナ10の内径部とすることができる。
また、上記実施形態においては、アンテナ装置1が内蔵される携帯無線機器としてスマートフォンを挙げたが、携帯無線機器の種類は特に限定されず、タブレット端末、ノートPC、腕時計型ウエアラブル端末等であってもよい。