JP2017021880A - 磁気記録媒体用アルミニウム基板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
一方で、磁気記録媒体に求められる性能として、高記録密度があり、そのためには磁性層成膜時の温度条件の緩和が求められている。
NiPめっき以外の表面処理として、例えば特許文献2では、アルマイト基板の表面処理として、酸化シリコンを塗布し熱処理することでアルマイト基板表面を平滑化する表面処理方法が提案されている。
特許文献3では、アルミニウム基板上に窒化珪素質連続薄膜が形成された磁気ディスク基板が開示されている。当該基板の製造方法として、アルミニウム基板上に無機ポリシラザンを塗工した後、大気中200℃で1時間熱処理することで、厚さ約1μmでニッケルリンめっき基板よりも高い硬度と平滑性を実現できることが開示されている。
[1] アルミニウム基板上に、厚さ7μm以上25μm以下の陽極酸化皮膜が形成され、前記陽極酸化皮膜上にメチルヒドロポリシラザンを含むポリシラザン溶液をレベリング効果が発現する量塗工し、シリカ転化させた膜が形成されていることを特徴とする磁気記録媒体用アルミニウム基板。
[2] 前記メチルヒドロポリシラザンを含むポリシラザン溶液が、メチルヒドロポリシラザンと無機ポリシラザンとの混合物であることを特徴とする前記[1]に記載の磁気記録媒体用アルミニウム基板。
[3] 前記混合物におけるメチルヒドロポリシラザンと無機ポリシラザンとの配合比が10:0〜2:8(重量比)の範囲であることを特徴とする前記[2]に記載の磁気記録媒体用アルミニウム基板。
[4] 前記シリカ転化させた膜が膜厚0.2μm以上のシリカ層であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれか1に記載の磁気記録媒体用アルミニウム基板。
[5] アルミニウム基板上に厚さ7μm以上25μm以下の陽極酸化皮膜を形成する工程と、前記陽極酸化皮膜上にメチルヒドロポリシラザンを含むポリシラザン溶液をレベリング効果が発現する量塗工した後、加熱によりシリカ転化させて膜を形成する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体用アルミニウム基板の製造方法。
[6] 前記陽極酸化皮膜を少なくともシュウ酸を含む陽極酸化処理液により形成することを特徴とする前記[5]に記載の磁気記録媒体用アルミニウム基板の製造方法。
[7] 前記メチルヒドロポリシラザンを含むポリシラザン溶液が、メチルヒドロポリシラザンと無機ポリシラザンとの混合物であることを特徴とする前記[5]又は[6]に記載の磁気記録媒体用アルミニウム基板の製造方法。
[8] 前記混合物におけるメチルヒドロポリシラザンと無機ポリシラザンとの配合比が10:0〜2:8(重量比)の範囲であることを特徴とする前記[7]に記載の磁気記録媒体用アルミニウム基板の製造方法。
[9] 前記シリカ転化させた膜が膜厚0.2μm以上のシリカ層であることを特徴とする前記[5]〜[8]のいずれか1に記載の磁気記録媒体用アルミニウム基板の製造方法。
本発明で基板として用いるアルミニウム合金(単に「アルミニウム」と称することもある。)は、その化学成分組成については、磁気記録媒体用として必要な強度を持ち陽極酸化皮膜の形成に用いられうるものである限り、特に限定されるものではないが、例えば、Mg:3.5重量%以上6重量%以下、Cu:0.02重量%以上0.5重量%以下、Si:0.05重量%以下、Fe:0.05重量%以下含有し、かつCr:0.05重量%以上0.6重量%以下、Mn:0.05重量%以上1.5重量%以下、およびZr:0.05重量%以上0.6重量%以下よりなる群から選ばれる少なくとも一つを含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金であり、かつ、表面における金属間化合物の最大長さが10μm以下であり、基板表面1mm2当たりの、最大長さが5μm以上である金属間化合物の個数が1個以下のアルミニウム合金などを例示することができる。
本発明における陽極酸化皮膜は、アルミニウム基板上に形成された膜厚7μm以上25μm以下の陽極酸化皮膜であり、アルミニウム合金基材の全面がこの陽極酸化皮膜で覆われている。
即ち、一般的な陽極酸化処理液として、シュウ酸、ギ酸等の有機酸、リン酸、クロム酸、硫酸などの無機酸が挙げられるが、硬度が高く高温でのクラックの発生を著しく低減させるという観点から、少なくともシュウ酸を含む陽極酸化処理液を用いることが好ましい。陽極酸化処理液中のシュウ酸濃度は、所望とする作用効果を有効に発揮することができるように適宜適切に制御すれば良い。陽極酸化処理液中のシュウ酸濃度の下限は、好ましくは10g/Lであり、より好ましくは15g/Lである。また、当該シュウ酸濃度の上限は、好ましくは50g/Lであり、より好ましくは40g/Lである。
前記陽極酸化皮膜上にメチルヒドロポリシラザンを含むポリシラザン溶液をレベリング効果が発現する量塗工し、シリカ転化させた膜(シリカ膜)を形成する。
ポリシラザン溶液を塗工後、水蒸気を含む雰囲気にて熱処理をすることにより、シリカ転化する。
シリカ膜により、陽極酸化皮膜の細孔や合金中の介在物、晶出物由来のピットを目詰めすることができることから、欠陥の無い平滑な面を実現でき、また耐疵付性を改善することができる。
これに対して、シリコン原子にメチル基が結合したメチルヒドロポリシラザンを水蒸気と反応させると、Si−O−Siの骨格がメチル基のために硬い構造を作ることができず、柔軟性を有する膜となる。両者を適当な割合で混合し、水蒸気と反応させることにより、Si−O−Siの3次元ネットワークの一部をメチル基で終端させた柔軟性を有するシリカ骨格を形成させることができる。
適度に柔軟性を持つ膜は、アルミニウム基板との熱膨張差に起因する応力を緩和するので、耐熱性の改善が期待される。
ポリシラザンの塗工量は、塗工前の基板重量と塗工後の基板重量の差および基板内外径から計算される面積から求めることができる。
シリカ転化させた膜の膜厚は、皮膜の断面を走査型顕微鏡(SEM)観察及び元素マッピングを行うことによって測定することができる。また、陽極酸化皮膜が多孔質である場合には、孔の中にポリシラザン溶液が含浸され、シリカ転化していてもよい。
本発明に係る磁気記録媒体用アルミニウム基板の製造方法は、アルミニウム基板上に厚さ7μm以上25μm以下の陽極酸化皮膜を形成する工程と、前記陽極酸化皮膜上にメチルヒドロポリシラザンを含むポリシラザン溶液をレベリング効果が発現する量塗工した後、加熱によりシリカ転化させて膜を形成する工程を含むことを特徴とする。陽極酸化皮膜及びシリカ膜はアルミニウム基板の少なくとも一方の表面に形成されていればよいが、基板表面の効率的利用の点から、両方の表面に形成されていることが好ましい。
アルミニウム基板に陽極酸化皮膜を形成する工程は、公知の方法により行うことができるが、例えば基板となるアルミニウム合金を、シュウ酸、ギ酸等の有機酸、リン酸、クロム酸、硫酸などの無機酸等を含む溶液中で通電することにより形成することができる。この場合、陽極酸化皮膜厚さは、通電時間により調整することが可能である。
ここで、前述したように、高温でのクラックの発生を著しく低減させつつ耐電圧性を向上させるという観点からは、少なくともシュウ酸を含む陽極酸化処理液を用いることが好ましい。
なお、ポリシラザン溶液の濃度を調整する場合に用いる溶剤としては、分子構造中に水酸基(−OH)を含むアルコール類はポリシラザンと反応するために使用できない。石油系有機溶剤、キシレン等の芳香族溶剤、ジブチルエーテル等のアルキルエーテルが好ましい。濃度は、塗工方法や条件によって適切な範囲に設定すれば良いが、ポリシラザン濃度として20重量%から60重量%が一般的である。濃度が濃いと粘度が高くなり塗工しにくくなる。一方、濃度が低くなり過ぎると溶剤乾燥後に十分な膜厚さを得ることができない。
ポリシラザンのシリカ転化には水との反応が必要であり、加熱雰囲気に水蒸気を導入すれば良い。加熱温度は200〜370℃がシリカ転化を効率的に進める点から好ましい。また、加熱時間は20分〜2時間が十分なシリカ転化と生産性の点から好ましい。
また、一方の表面に該ポリシラザン溶液を塗工して乾燥させ、他方の表面にも該ポリシラザン溶液を塗工した後に熱処理をすることにより、両面を一度にシリカ転化させることもできる。さらには、両方の表面に一度に該ポリシラザン溶液を塗工し、熱処理によるシリカ転化を行ってもよい。
下記表1に示す組成比でメチルヒドロポリシラザンとパーヒドロポリシラザン(Merck Performance Materials(旧AZ Electronic Materials社製、NL120A−20およびHTA1500)の混合物を調製し、厚さ10μmの陽極酸化皮膜上に上記混合物を塗工、水蒸気を含む雰囲気中300℃で1時間熱処理してシリカ転化させた後、各温度で15分の熱履歴を加えた。なお、厚さ10μmの陽極酸化皮膜は、アルミニウム合金をシュウ酸を30g/L含む30℃の溶液中で通電することにより形成させた。陽極酸化皮膜厚さは、通電時間により調整できる。
目視および光学顕微鏡観察で膜の亀裂やはく離が認められない温度を耐熱温度とした。結果を表1に示す。なお、表1の結果は、シリカ膜厚さ0.3μmと2μmで差は認められなかった。また、表中「PHPS」とはパーヒドロポリシラザンを意味し、「MHPS」とはメチルヒドロポリシラザンを意味する。
すなわち、ATR法において、Si原子に結合したメチル基は1,270〜1,280cm−1付近に鋭い特性吸収を示す。また、Si−O−Siの骨格振動に起因する強い特性吸収が、1,030〜1,050cm−1付近に観測される。この両者のピーク高さの比から、シリカ骨格中のメチル基の量を評価できるため、メチルヒドロポリシラザンとパーヒドロポリシラザンの比を求めることができる。
装置:パーキンエルマー社製 Spectrum Spotlight 400
測定方法:1回反射ATR Ge結晶 入射角48°
分解能:4cm−1
吸収量:Absorbance表示
測定されたスペクトルについて870cm−1と1,300cm−1の両点を直線で結び、1,030〜1,050cm−1付近に現れるSi−O−Siの骨格振動に由来する特性吸収ピークの当該直線からの値「I(Si−O−Si)」と、1,265〜1,280cm−1に現れるSi−CH3の特性吸収のピークの当該直線からの値「I(Si−CH3)」との比を求める。得られたATRスペクトルを図1に示す。この値が、0.02である場合が無機ポリシラザン(PHPS)とメチルヒドロポリシラザン(MHPS)との配合比は0:10(重量比)である場合に相当し、0.25である場合が、PHPSとMHPSとの配合比は8:2(重量比)である場合に相当することから、0.02以上0.25以内が好ましいと言える。
なお、図1中、PHPSとMHPSとの比率(重量比)はHD−208が8:2、HD−210が6:4、HD−212が4:6、HD−214が2:8のものである。
アルミニウム基板に厚さ5、10、15、20、30μmの陽極酸化皮膜をそれぞれ形成し、耐疵付性を評価した。
結果を図2に示す。陽極酸化皮膜単独でも、厚さ15μm以上であれば、従来のNi−Pめっき処理(厚さ10μm)よりも耐疵付性は改善される。すなわち、陽極酸化処理がアルミニウム基板の耐疵付性改善に効果的であることを意味する。陽極酸化皮膜単独の場合、厚さが30μmとなると、20μmに比べて耐疵付性はわずかではあるが、劣化傾向を示す。これは、陽極酸化処理時間が長くなり、初期に形成された膜の表面近傍が電解液により侵食されたためと推察される。
なお、アルミニウム基板としてはMg:5.5重量%、Cu:0.04重量%、Si:0.01重量%、Fe:0.015重量%、Mn:0.3重量%及びCr:0.5重量%含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を用い、シュウ酸を30g/L含む30℃の溶液中で通電することにより陽極酸化皮膜を形成させた。陽極酸化皮膜厚さは、通電時間により調整した。
陽極酸化皮膜の厚さは、渦電流式膜厚計を用いて測定した。測定は、同一の箇所を5回測定し、その平均値を当該箇所の膜厚とした。
疵深さは、KLA−Tencor社アルファステップ段差計を用いて測定した。
図2中、「5μm」、「10μm」、「15μm」、「20μm」、「30μm」とはそれぞれ陽極酸化皮膜の膜厚を表し、「Gサブ」とは表面を研削し表面処理を行っていないアルミニウム基板を表し、「NPP」とは研削後にNiPめっきを施した後表面研磨したアルミニウム基板を表す。
陽極酸化皮膜厚さを10μmと15μmとし、表1に示したPHPSとMHPSのブレンド品のうち、PHPS:MHPS(重量比)が8:2、6:4、4:6、2:8及び0:10の溶液をそれぞれ陽極酸化皮膜に塗工し、水蒸気を含む雰囲気中で300℃、1時間の熱処理を行うことでシリカ転化し、厚さ0.6μmおよび1.2μmのシリカ膜をそれぞれ得た。膜厚は、同一条件で調製した試験片の断面SEM観察から求めた。作製した試料について表2にまとめた。
なお、シリカコートの厚さが0.1μm以下の場合、PHPSとMHPSのブレンド比によらず押込み荷重が25gfを超えると、陽極酸化皮膜単独の場合と、耐疵付性に優位な差は認められなかった。
Claims (9)
- アルミニウム基板上に、厚さ7μm以上25μm以下の陽極酸化皮膜が形成され、前記陽極酸化皮膜上にメチルヒドロポリシラザンを含むポリシラザン溶液をレベリング効果が発現する量塗工し、シリカ転化させた膜が形成されていることを特徴とする磁気記録媒体用アルミニウム基板。
- 前記メチルヒドロポリシラザンを含むポリシラザン溶液が、メチルヒドロポリシラザンと無機ポリシラザンとの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体用アルミニウム基板。
- 前記混合物におけるメチルヒドロポリシラザンと無機ポリシラザンとの配合比が10:0〜2:8(重量比)の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体用アルミニウム基板。
- 前記シリカ転化させた膜が膜厚0.2μm以上のシリカ層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用アルミニウム基板。
- アルミニウム基板上に厚さ7μm以上25μm以下の陽極酸化皮膜を形成する工程と、前記陽極酸化皮膜上にメチルヒドロポリシラザンを含むポリシラザン溶液をレベリング効果が発現する量塗工した後、加熱によりシリカ転化させて膜を形成する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体用アルミニウム基板の製造方法。
- 前記陽極酸化皮膜を少なくともシュウ酸を含む陽極酸化処理液により形成することを特徴とする請求項5に記載の磁気記録媒体用アルミニウム基板の製造方法。
- 前記メチルヒドロポリシラザンを含むポリシラザン溶液が、メチルヒドロポリシラザンと無機ポリシラザンとの混合物であることを特徴とする請求項5又は6に記載の磁気記録媒体用アルミニウム基板の製造方法。
- 前記混合物におけるメチルヒドロポリシラザンと無機ポリシラザンとの配合比が10:0〜2:8(重量比)の範囲であることを特徴とする請求項7に記載の磁気記録媒体用アルミニウム基板の製造方法。
- 前記シリカ転化させた膜が膜厚0.2μm以上のシリカ層であることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用アルミニウム基板の製造方法。
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