JP2017020810A - コンクリートの断熱温度上昇量の予測方法 - Google Patents
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Abstract
Description
Q(t)=K(1−exp(−αtβ)) ・・・ (A)
t:材齢(日)
Q(t):材齢t日の断熱温度上昇量(℃)
K:終局断熱温度上昇量(℃)
α:温度上昇速度定数
β:定数
Tad(t)=K1(1−exp(−α1tS1))+K2(1−exp(−α2tS2)) ・・・ (B)
t:材齢(日)
Tad(t):材齢t日の断熱温度上昇量(℃)
K1、K2、α1、α2、S1、S2:実験定数
(i)マスコンクリートの断熱温度上昇カーブの近似には、ガンマ分布累積関数を使用することが好ましいこと、また、
(ii)材齢2日程度までの急激な温度上昇過程と、材齢2日程度を超える緩やかな温度上昇過程では、温度上昇カーブの曲率が大きく異なることから、上記予測式は、上記ガンマ分布累積関数1項では近似できず、ガンマ分布累積関数の2項和となること、さらに、
(iii)上記予測式への単位セメント量の影響は、上記ガンマ分布累積関数の係数を、単位セメント量の一次関数で表わすことにより予測式に織り込むことができること、また、
(iv)上記一次関数は、セメントの種類で異なること、さらに、
(v)上記一次関数は、単位セメント量が200kg/m3以上で400kg/m3以下のコンクリート(以後、普通コンクリートと称す。)と、単位セメント量が400kg/m3を超え700kg/m3以下のコンクリート(以後、高強度コンクリートと称す。)では、異なること、
が明らかになった。
[3]前記コンクリートに用いるセメントが、中庸熱ポルトランドセメントまたは低熱ポルトランドセメントである、[1]または[2]に記載のコンクリートの断熱温度上昇量の予測方法。
[4]前記コンクリートの単位セメント量が、400kg/m3を超え700kg/m3以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載のコンクリートの断熱温度上昇量の予測方法。
本発明において用いる予測式は、前記(1)式で示されるガンマ分布累積関数の2項和の式である。ただし、前記(1)式中のK1、K2、α1、α2、β1、及びβ2は、前記(B)式中のK1、K2、α1、α2、β1、及びβ2とは異なる係数である。
かかる予測式の特徴は、表1及び表2に示すように、式中のすべての係数が、セメントの種類別、及び400kg/m3を境とした単位セメント量別に、単位セメント量の1次関数で表わされる点と、予測式が2項和の形式を採ることによって、材齢2日程度までの急激な温度上昇過程と、それ以後の材齢における緩やかな温度上昇過程の全履歴に渡るコンクリートの断熱温度上昇量の予測が可能な点にある。なお、表1は普通コンクリート(単位セメント量:200〜400kg/m3)に用いる係数の例を示し、表2は高強度コンクリート(単位セメント量:400kg/m3を超え700kg/m3以下)に用いる係数の例を示す。
本発明の予測方法の対象となるコンクリートは、部材断面の最小寸法が大きく、かつセメントの水和熱による温度上昇で有害なひび割れが入るおそれがあるコンクリートであり、一般にマスコンクリートと称されるコンクリートである。
当該コンクリートに用いるセメントは、特に限定されず、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、高炉セメント等が使用できるが、これらの中でも、水和熱の小さい中庸熱ポルトランドセメントまたは低熱ポルトランドセメントの使用が好ましい。これらセメントの単位セメント量は、好ましくは200〜700kg/m3であり、コンクリートの高強度化の観点から、より好ましくは400kg/m3を超え700kg/m3以下である。
また、前記コンクリートに用いる水、骨材及び混和剤類は、特に限定されず、マスコンクリートに使用される通常のものが使用可能である。
1.コンクリートの作製
表3に示す化学成分を有する各種のセメント(全て太平洋セメント株式会社製)、及び表4に示すコンクリートの材料を用いて、表5及び表6のコンクリートの配合に従い、普通コンクリート及び高強度コンクリートを作製した。なお、表5は普通コンクリートの配合、表6は高強度コンクリートの配合である。
コンクリートの練混ぜは、JIS A 1138「試験室におけるコンクリートの作り方」に準拠して行なった。具体的には、粗骨材、細骨材、及びセメントを一軸強制練りミキサに投入して30秒間空練りした後、さらに減水剤を含む練混ぜ水を投入し、60秒間練り混ぜて、かき落としを行なった後、普通コンクリートでは、さらに30秒間練り混ぜて、また、高強度コンクリートでは、ミキサ内でコンクリートを5分間静置して、さらに30秒間練り混ぜて、コンクリートを排出して作製した。
断熱温度上昇試験は、前記排出したコンクリートのスランプ、空気量、及び温度(ただし、記載は省略した。)を測定した後、直ちに全量(35リットル)を断熱上昇試験用の型枠(直径40cm、高さ40cm、容量約50リットル)に打設して、該コンクリートの中心部に温度センサーを取り付けた後、空気循環式の断熱温度上昇試験装置内に設置し、コンクリートの材齢28日まで断熱温度上昇量を測定した。
なお、コンクリートの練上がり温度は、すべての試験において20℃にした。また、用いた断熱温度上昇試験装置は、株式会社東京理工製 ATR−123であった。
材齢28日までの断熱温度上昇量の測定値について、前記(1)式、及び比較例として(B)式を用いて最小二乗法(マイクロソフト社製表計算ソフトウェア Microsoft Office Excel 2007 SP3に使用されているソルバー「GRG2 非線形最適化コード」を使用した。)によりフィッティングして、式中の各係数を求めた。次に、該各係数と単位セメント量を直線回帰して、各係数と単位セメント量の関係を示す1次関数を得た。その結果を、(1)式については前記表1及び表2に、(B)式については表7及び表8に示す。
低熱ポルトランドセメントを用いたコンクリートの材齢2日及び28日の断熱温度上昇量の予測値と、断熱温度上昇試験で得た実測値との残差二乗和を、普通コンクリートについては表9に、高強度コンクリートについては表10に示す。さらに、低熱ポルトランドセメントを使用し、単位セメント量が450kg/m3の高強度コンクリートについて、断熱温度上昇量の経時変化(実測値)と、(1)式を用いて描いた近似曲線(予測値)を図2に示す。
表9、表10及び図2に示すように、本発明のコンクリートの断熱温度上昇量の予測方法は、コンクリートの種類及び材齢によらず良好な回帰(予測)を示しており、高強度コンクリートに関しても(B)式を用いた従来の予測技術よりも優れた回帰(予測)を示している。したがって、本発明のコンクリートの断熱温度上昇量の予測方法によれば、単位セメント量が多いマスコンクリートについても、コンクリートの全材齢の断熱温度上昇量を高い精度で予測することができる。
Claims (4)
- 前記1次関数が、単位セメント量の400kg/m3を境にして、400kg/m3以下の場合と400kg/m3を超える場合で変更される、請求項1に記載のコンクリートの断熱温度上昇量の予測方法。
- 前記コンクリートに用いるセメントが、中庸熱ポルトランドセメントまたは低熱ポルトランドセメントである、請求項1または2に記載のコンクリートの断熱温度上昇量の予測方法。
- 前記コンクリートの単位セメント量が、400kg/m3を超え700kg/m3以下である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のコンクリートの断熱温度上昇量の予測方法。
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