JP2017020127A - 伝動ベルト用ポリアミド繊維、並びにそれを用いたコード、織物、及び伝動ベルト - Google Patents

伝動ベルト用ポリアミド繊維、並びにそれを用いたコード、織物、及び伝動ベルト Download PDF

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Abstract

【課題】ゴム接着性と高温での耐久性に優れた伝動ベルト用のポリアミド繊維、コード、織物、並びにそれらを用いた伝動ベルトの提供。
【解決手段】120℃での貯蔵弾性率E'(120℃)と25℃での貯蔵弾性率E'(25℃)の比、E'(120℃)/E'(25℃)の値が0.6以上0.9以下であることを特徴とする伝動ベルト用ポリアミド繊維、該繊維をレゾルシン−ホルマリン−ラテックス樹脂により処理した伝動ベルト用コード、該伝動ベルト用コードをベルトの心線として用いた伝動ベルト、該伝動ベルト用ポリアミド繊維を経緯のいずれかの織糸に用いた伝動ゴムベルト用織物、及び該伝動ベルト用織物をベルトの歯布として用いた伝動ベルト。
【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム接着性、高温での耐久性に優れる伝動ベルト用ポリアミド繊維、並びにそれを用いたコード、織物、及び伝動ベルトに関する。
伝動ベルトとは、動力伝達の役割を担うベルトであり、現在では自動車から一般産業用設備まで様々な用途で使用されている。その動力伝達機構は摩擦伝動と同期伝動に大きく分けることができる。前者としてはVベルトやVリブドベルト、平ベルトなどがあり、後者としては歯付ベルトなどがある。
特に自動車用途では近年、燃費向上につながる車両の軽量化や小型化によるエンジンルームのコンパクト化、エンジンの高性能化などにより、益々エンジンルームの高温化が進んでおり、そこで使用される伝動ベルトにも耐熱性の要求が高まってきている。
現在、伝動ベルトの心線や歯布にはナイロン6やナイロン66などが使用されている。しかしながら、これらの繊維はゴム接着性や耐疲労性には優れるが、高温で使用した場合、耐熱性の面で問題がある。
他方、耐熱性の向上を目的として、アラミド繊維を用いる技術が開示されている。しかしながら、アラミド繊維は繊維自体の耐熱性は高いものの、ゴムとの接着性が悪いという欠点がある。そこで、以下の特許文献1や2に記載されるように、接着剤の改良やゴム接着性に優れるナイロン66との複合糸が提案されているが、未だ十分ではない。また、アラミド繊維は高温下において、ゴムとの接着性がさらに低下するため、伝動ベルトの耐熱性としては期待されるほどの性能を得ることができないという問題もある。
特開2006−207600号公報 特開平7−217704号公報
前記した技術の現状に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、ゴム接着性と高温での耐久性に優れる伝動ベルト用ポリアミド繊維、並びにそれを用いたコード、織物、及び伝動ベルトを提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、新規な高融点ポリアミド樹脂からなるマルチフィラメント繊維を伝動ベルト用コード及び/又は織物に用いることで、良好なゴム接着性と高温での耐久性に優れる伝動ベルト用コード、織物、及び伝動ベルトが得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]120℃での貯蔵弾性率E'(120℃)と25℃での貯蔵弾性率E'(25℃)の比、E'(120℃)/E'(25℃)の値が0.6以上0.9以下であることを特徴とする伝動ベルト用ポリアミド繊維。
[2]180℃で5時間熱処理した後のゴムとの耐熱接着保持率が80%以上である、前記[1]に記載の伝動ベルト用ポリアミド繊維。
[3]JISL1017:2002附属書1(3.1 Tテスト)に準じて計測されるゴム接着特性が1000N/cm以上である、前記[1]又は[2]に記載の伝動ベルト用ポリアミド繊維。
[4]前記伝動ベルト用ポリアミド繊維が、脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とジアミンとの重縮合物からなり、該ジカルボン酸に対する該脂環族ジカルボン酸の比率が50モル%以上である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の伝動ベルト用ポリアミド繊維。
[5]前記ポリアミド繊維のΔnが0.04以上である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリアミドマルチフィラメント繊維。
[6]前記ポリアミド繊維中に銅元素が1ppm以上500ppm以下含まれる、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の伝動ベルト用ポリアミド繊維。
[7]引張強度が4.0cN/dtex以上である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の伝動ベルト用ポリアミド繊維。
[8]180℃の空気環境下で、12時間熱処理した後の耐熱強度保持率が70%以上である、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の伝動ベルト用ポリアミド繊維。
[9]単糸繊度が0.5dtex以上10dtex以下である、前記[1]〜[8]のいずれかに伝動ベルト用ポリアミド繊維。
[10]前記[1]〜[9]のいずれかに記載の伝動ベルト用ポリアミド繊維をレゾルシン−ホルマリン−ラテックス樹脂により処理した伝動ベルト用コード。
[11]JISL1017:2002附属書1(3.1 Tテスト)に準じて計測されるゴム接着特性が1000N/cm以上である、前記[10]に記載の伝動ベルト用コード。
[12]前記[10]又は[11]に記載の伝動ベルト用コードをベルトの心線として用いた伝動ベルト。
[13]前記[1]〜[9]のいずれかに記載の伝動ベルト用ポリアミド繊維を経緯のいずれかの織糸に用いた伝動ゴムベルト用織物。
[14]前記[13]に記載の伝動ベルト用織物をベルトの歯布として用いた伝動ベルト。
本発明は、新規な高融点ポリアミド樹脂からなるマルチフィラメント繊維を伝動ベルト用コード及び/又は織物に用いることで、良好なゴム接着性と高温での耐久性に優れる伝動ベルト用コード、織物、及び伝動ベルトを提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
本実施形態の伝動ベルト用ポリアミド繊維は、120℃での貯蔵弾性率E’(120℃)と25℃での貯蔵弾性率E’(25℃)の比、すなわち、E’(120℃)/E’(25℃)が0.6以上0.9以下であるという動的粘弾性特性を有し、かかる比は、好ましくは0.7以上0.9以下である。
一般に、高温下にて剛性が低下して、ベルトの緩みが生じると、ベルトとプーリーの間でスリップが大きくなり、ベルトの耐久性が悪化する。また、オートテンショナがある場合にはスリップは抑制されるが、緩みを抑えるためにオートテンショナへのベルトの巻き付き量が増えて、屈曲が大きくなり、寿命が短くなる。そこで、E’(120℃)/E’(25℃)が0.6以上である本実施形態のポリアミド繊維のコードを心線に使用すれば、高温下での剛性が向上して、ベルトの緩みが抑えられ、結果として高温での耐久性が向上する。他方、E’(120℃)/E’(25℃)が0.9よりも大きい場合には、本質的に分子鎖が非常に剛直であり、接着材との親和性が悪く、ゴムとの接着性が低下するため、本実施形態においては、E’(120℃)/E’(25℃)は0.9以下である。
また、E’(120℃)/E’(25℃)が0.6以上である本実施形態のポリアミド繊維の織物を歯布に用いる場合、高温下においても歯布の剛性が維持されるため、ベルト走行時のゴム歯の屈曲を抑制することができる。結果として、ゴム歯が発熱することを抑え、歯の亀裂や欠けを低減でき、高温での歯付ベルトの耐久性が向上する。また、歯布に用いた場合でも、E’(120℃)/E’(25℃)が0.9よりも大きい繊維は接着性の問題があるため、E’(120℃)/E’(25℃)は0.9以下である。
本実施形態の伝動ベルト用ポリアミド繊維のゴム接着特性(N/cm)は1000N/cm以上が好ましく、より好ましくは1050以上、さらに好ましくは1100以上である。ゴム接着特性が低い場合、伝動ベルトを構成するゴムとコードの界面又はゴムと織物の界面で剥離が生じ、寿命の低下を招く。本実施形態では、ゴム接着特性が1000N/cm以上である伝動ベルト用ポリアミド繊維を使用することで、ゴムとコードの界面又はゴムと織物の界面での剥離を低減することができ、ベルトの耐久性に大きく寄与する。
本実施形態の伝動ベルト用繊維の耐熱接着保持率は80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。常温でのゴム接着特性が良好でも高温暴露下では接着特性が低下することも多いため、高温でのベルトの耐久性には耐熱接着保持率が特に重要である。耐熱接着保持率が80%以上であることにより、高温環境下でベルトを走行させた際の伝動ベルトを構成するゴムとコードの又はゴムと織物の剥離を低減でき、ベルトの寿命に大きく貢献する。
本実施形態の伝動ベルト用ポリアミド繊維の融点は270℃以上であることが好ましい。繊維の融点は高温であるほど、伝動ベルトを高温で使用した際の耐久性が向上する。該融点は、より好ましくは275℃以上であり、さらに好ましくは280℃以上である。他方、溶融紡糸法により均一なマルチフィラメント繊維を得やすいという観点から、該融点は350℃以下が好ましい。
本実施形態の伝動ベルト用ポリアミド繊維を180℃の空気環境下で12時間熱処理した後での耐熱強度保持率は70%以上が好ましく、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上である。耐熱強度保持率が70%以上あることで、高温使用下での繊維の破断を低減し、ベルトの耐久性が向上する。
本実施形態の伝動ベルト用ポリアミド繊維の動的粘弾性測定で求められる損失正接(tanδ)のピーク温度は、150℃以上200℃以下であることが好ましくい。tanδのピーク温度が150℃以上であることで、非晶部又は無定形領域での分子鎖の運動が抑制されて、高温での耐疲労性が良くなる。
また、ピーク温度でのtanδの値は0.3以下が好ましい。繊維を延伸してtanδを小さくすることで、分子鎖が動きづらくなり、高温での剛性が維持される。また、繰り返し伸長の運動に対して、分子鎖が構造変化しないため、耐疲労性に優れた繊維となる。tanδの値は通常行われる延伸では0.01以上となる。
本実施形態の伝動ベルト用ポリアミド繊維は、ジカルボン酸に対する脂環族ジカルボン酸の比率が50モル%以上含むジカルボン酸とジアミンとが重縮合したポリアミドから成る脂環族ポリアミド繊維であることが好ましい。かかる組成により、繊維の高融点を達成し、耐熱性が向上し、また、常温と高温での貯蔵弾性率の変化量が小さくなり、ナイロン6やナイロン66繊維よりも寸法安定性に優れた伝動ベルトを得ることが可能となる。また、かかる脂環族ポリアミド繊維では、脂肪族ポリアミドでアミド結合を有しているため、ゴムとの接着性も非常に優れている。さらに、耐熱ポリアミドとして一般的な芳香族由来の構造単位を含むポリアミドと比較して、柔軟な高分子構造を有し、高い破断伸度を有する糸を得ることができる。
Δnとは複屈折のことであり、繊維の配向度合を評価することができる。適切な延伸工程を施すことで、繊維は一軸配向し、Δnは増大していく。Δnは、0.04以上であることが好ましい。Δnが0.04以上であることで、剛性の指標である貯蔵弾性率が大きくなると共に、高温での貯蔵弾性率の低下を緩やかにすることができ、寸法安定性や剛性保持に寄与する。
ポリアミドとは、主鎖中にアミド(−NHCO−)結合を有する重合体を意味する。また、「ジカルボン酸に対する脂環族ジカルボン酸の比率が50モル%以上」とは、「原料モノマー成分由来の構造単位に対する脂環族ジカルボン酸由来の構造単位の比率が25モル%以上」を意味する。
本発明の伝動ベルト用ポリアミド繊維の繊度は紡糸性の観点から20dtex以上3000dtex以下が好ましい。
本実施形態の伝動ベルト用ポリアミド繊維を伝動ベルトの心線として使用する場合、その(総)繊度は100dtex以上10000dtex以下が好ましい。繊度が100dtex以上で心線として必要な機械的強度を得ることができ、軽量性の観点から10000dtex以下が好ましい。かかる繊度を達成するために、数本の糸を合糸又は撚糸してもよい。
本実施形態の伝動ベルト用ポリアミド繊維を伝動ベルトの歯布として使用する場合、その(総)繊度は10dtex以上1500dtex以下が好ましい。繊度が10dtex以上で歯布を製織する際に必要な機械的強度を得ることができ、歯布の柔軟性の観点から1500dtex以下が好ましい。
本実施形態の伝動ベルト用ポリアミド繊維の単糸繊度は、屈曲強度や耐疲労性の観点から、0.5dtex以上10.0dtex以下が好ましい。単糸繊度が0.5dtex以上であれば、糸の生産性に問題が生じ難く、他方、単糸繊度が10.0dtex以下であれば、柔軟性の高い繊維が得られて、屈曲強度や耐疲労性が向上する。
本実施形態の伝動ベルト用ポリアミド繊維の単糸数は10フィラメント以上500フィラメント以下が好ましい。単糸数が10フィラメント以上のマルチフィラメントであることにより、比表面積が増えることや、外部からの応力に柔軟に対応できることから、ゴム接着性や耐疲労性が向上する。他方、フィラメント数が500フィラメント以下であることで、溶融紡糸時の単糸同士の融着を避けることができる。
本実施形態のコード及び/又は織物を構成するポリアミド繊維の強度は、伝動ベルトとして用いるにあたり、4.0cN/dtex以上であることが好ましく、より好ましくは5.0cN/dtex以上であり、さらに好ましくは6.0cN/dtex以上である。
以下、本実施形態のコード及び/又は織物を構成する糸である脂環式ポリアミドマルチフィラメント繊維について、その高分子組成を説明する。
[ジカルボン酸]
本実施形態のポリアミドマルチフィラメント繊維は、脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とジアミンとの重縮合物からなるポリアミドマルチフィラメント繊維であって、ジカルボン酸に対する脂環族ジカルボン酸の比率が少なくとも50モル%以上であり、好ましくは60モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、さらに好ましくは80モル%以上であり、最も好ましくは100モル%である。脂環族ジカルボン酸由来の構造単位を少なくとも50モル%以上含むことにより、高融点化による耐熱性の向上、高温における貯蔵弾性率(E’)の保持、繊維強度、紡糸性に優れるポリアミドマルチフィラメント繊維を得ることができる。
脂環族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂環構造の炭素数が3〜10である脂環族ジカルボン酸、好ましくは脂環構造の炭素数が5〜10である脂環族ジカルボン酸が挙げられる。具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸等が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸は、無置換でも置換基を有していてもよい。置換基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基等が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸としては、ポリアミドマルチフィラメント繊維の耐熱性、寸法安定性、強度等の観点から、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
脂環族ジカルボン酸は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
脂環族ジカルボン酸には、トランス体とシス体の幾何異性体が存在する。例えば、原料モノマーとしての1,4−シクロヘキサンジカルボン酸は、トランス体とシス体のどちらか一方を用いてもよく、トランス体とシス体の種々の比率の混合物として用いてもよい。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸は、高温で異性化し一定の比率になることやシス体の方がトランス体に比べて、ジアミンとの当量塩の水溶性が高いことから、原料モノマーとして、トランス異性体比率、すなわち、トランス体/シス体のモル比は、好ましくは50/50〜0/100であり、より好ましくは40/60〜10/90であり、さらに好ましくは35/65〜15/85である。トランス異性体比率が上記範囲内にあることにより、ポリアミドは、高融点、靭性、及び強度に優れる特性をもつだけでなく、高いガラス転移温度(点)と、通常では耐熱性と相反する性質である流動性と、高い結晶性とを同時に満足することができる。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のトランス体/シス体のモル比は、液体クロマトグラフィー(HPLC)や核磁気共鳴分光法(NMR)により求めることができる。
脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、ジグリコール酸等の炭素数3〜20の直鎖又は分岐状脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
また、ジカルボン酸に対する芳香族ジカルボン酸の比率が0モル%以上10モル%以下のポリアミドの流動性を阻害しない範囲で、前記ジカルボン酸に芳香族ジカルボン酸を加えてもよい。芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の無置換又は種々の置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
ジカルボン酸に対する脂環族ジカルボン酸の比率が少なくとも50モル%以上含まれていれば、所望の作用効果を損なわない限り、前記以外のジカルボン酸を含んでいてもよい。
[ジアミン]
本実施形態のポリアミドマルチフィラメント繊維は、紡糸安定性、耐熱性、低吸水性の観点から、ジアミン成分として、1,10−デカメチレンジアミンを含み、ジアミンに対する1,10−デカメチレンジアミンの比率が20モル%以上であることが好ましい。ジアミンに対する1,10−デカメチレンジアミンの比率は、好ましくは少なくとも20モル%以上、より好ましくは30モル%以上80モル%以下、さらに好ましくは40モル%以上75モル%以下、よりさらに好ましくは45モル%以上70モル%以下である。
組成により融点が高過ぎる場合、溶融時にポリアミドが熱分解し、分子量や強度の低下、着色、分解ガスの混入が生じて紡糸性が悪化する。しかしながら、1,10−デカメチレンジアミンを20モル%以上80モル%以下含むことにより、高いTgを維持しながらも溶融紡糸に適した融点に抑えることができる。また、1,10−デカメチレンジアミンを含むポリアミドは溶融時の熱安定性が高いため、紡糸安定性に優れ、均一性の良いマルチフィラメント繊維を得ることができる。また、ポリアミド中のアミド基濃度が低下することにより、吸水時の寸法安定性に優れる糸を得ることができる。さらに、1,10−デカメチレンジアミンは、バイオマス由来の原料であるという観点からも好ましい。
1,10−デカメチレンジアミン以外のジアミンとしては、特に限定されず、無置換の直鎖脂肪族ジアミンでも、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基等の置換基を有する分岐状脂肪族ジアミンでも、脂環族ジアミンでもよい。
1,10−デカメチレンジアミン以外のジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン等の直鎖脂肪族ジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロペンタンジアミン等が挙げられる。
また、ジアミンに対する芳香族ジアミンの比率が0モル%以上10モル%以下のポリアミドの流動性を阻害しない範囲で、ジアミンに芳香族ジアミンを加えてもよい。芳香族ジアミンとは、芳香族を含有するジアミンであり、以下に限定されるものではないが、例えば、メタキシリレンジアミン、オルトキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等が挙げられる。
1,10−デカメチレンジアミン以外のジアミンとして、炭素数5〜6のジアミンを含み、炭素数5〜6のジアミンの比率が20モル%以上であるものがより好ましい。1,10−デカメチレンジアミン以外に炭素数5〜6のジアミンを共重合させることで、紡糸に適した適度な融点を維持しつつも、結晶性の高いポリマーを得ることができる。炭素数5〜6のジアミンとしては、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。
炭素数5〜6のジアミンの中でも紡糸性や流動性、強度の観点からは、2−メチルペンタメチレンジアミンが好ましい。2−メチルペンタメチレンジアミンの比率が高すぎると、2−メチルペンタメチレンジアミンが自己環化して、溶融時に分解し、分子量低下を引き起こすため、紡糸性や強度が悪化する。ジアミン中の2−メチルペンタメチレンジアミンの比率としては、流動性を確保しつつも溶融時の分解が起こらない範囲に設定する必要があり、好ましくは20モル%以上70モル%以下、より好ましくは20モル%以上60モル%以下、さらに好ましくは20モル%以上55モル%以下である。
また、炭素数5〜6のジアミンの中では、ポリアミドマルチフィラメント繊維の耐熱性の観点から、ヘキサメチレンジアミンが好ましい。ヘキサメチレンジアミンの比率が高すぎると、融点が高くなりすぎて、紡糸が困難になるため、ジアミン中のヘキサメチレンジアミンの比率として、好ましくは20モル%以上60モル%以下、より好ましくは20モル%以上50モル%以下、さらに好ましくは20モル%以上45モル%以下である。
ジカルボン酸の添加量とジアミンの添加量は、高分子量化のため、同モル量付近であることが好ましい。重合反応中のジアミンの反応系外への逃散分もモル比においては考慮して、ジカルボン酸全体のモル量1.00に対して、ジアミン全体のモル量は、0.90〜1.20であることが好ましく、より好ましくは0.95〜1.10であり、さらに好ましくは0.98〜1.05である。
[ラクタム及び/又はアミノカルボン酸]
本実施形態のポリアミドマルチフィラメント繊維は、所望の作用効果を損なわない範囲で、ラクタム及び/又はアミノカルボン酸由来の成分を含んでいてもよい。
前記ラクタムとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ブチロラクタム、ピバロラクタム、ε−カプロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、ラウロラクタム(ドデカノラクタム)等が挙げられる。
アミノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ω位がアミノ基で置換された炭素数4〜14の直鎖又は分岐状飽和脂肪族カルボン酸であることが好ましく、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられ、アミノカルボン酸としては、パラアミノメチル安息香酸等が挙げられる。
ラクタム及び/又はアミノカルボン酸由来の成分比率については、特に限定されるものではないが、原料モノマー成分由来の構造単位に対するラクタム及び/又はアミノカルボン酸成分由来の比率が、0モル%以上20モル%以下含まれていてもよく、より好ましくは2モル%以上15モル%以下である。ラクタム及び/又はアミノカルボン酸成分由来の比率が0モル%以上20モル%以下であることにより、耐熱性、紡糸性、強度に優れるポリアミドマルチフィラメント繊維とすることができる。
[末端封鎖剤]
ジカルボン酸とジアミンからポリアミドを重合する際には、分子量調節のために公知の末端封止剤をさらに添加することができる。末端封止剤としては、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸などの酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類などが挙げられ、熱安定性の観点で、モノカルボン酸、モノアミンが好ましい。末端封止剤は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環族モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸;などが挙げられる。
末端封止剤としてのモノカルボン酸は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどの脂環族モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミンなどの芳香族モノアミン;などが挙げられる。末端封止剤としてのモノアミンは、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
[添加剤]
高温、高湿の環境下での熱安定性のためには、ポリアミド繊維に対して銅濃度が1ppm以上500ppm以下となるように銅化合物を添加するのが好ましく、より好ましくは30以上500ppm以下である。そうすることで、本実施形態の伝動ベルトが高温、高湿の環境下に長時間置かれたり、オゾンが多く含まれる環境下に長期間暴露されたとしても、機械的性能の低下が極めて有効に抑制される。前記銅含有率が30ppm未満では耐熱強度保持率が低下し、500ppmを超える添加量では強度が低下する。
銅化合物としては、その種類を特に制限するものではなく、例えば、酢酸銅などの有機銅塩、又は塩化第一銅、塩化第二銅などのハロゲン化銅などを好ましく用いることができる。銅化合物は、金属ハロゲン化合物と併用することがより好ましい。金属ハロゲン化合物としては、例えば、沃化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム等が挙げられる。本実施形態における好ましい組み合わせは、沃化第一銅と沃化カリウム、及び酢酸銅と沃化カリウムである。尚、ポリアミド中の銅含有量は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析や比色法などにより測定することができる。
以下に制限されないが、安定剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などの有機系酸化防止剤や熱安定剤、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、イミダゾール系等の光安定剤や紫外線吸収剤等を添加してもよい。添加量は適切な量を選択すればよいが、ポリアミドに対して1〜1000ppm添加することができる。これら添加剤は、1種のみの単独使用だけではなく、数種を組み合わせて用いてもよい。
[重合度]
ポリアミドマルチフィラメント繊維の分子量分布は、Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)で評価することができる。ポリアミドマルチフィラメント繊維のMw/Mnは、延伸性や繊維強度等の観点から、4.0以下が好ましく、より好ましくは1.5〜3.8であり、さらに好ましくは1.5〜3.5である。Mw/Mnの下限は1.0である。
強伸度などの機械物性や紡糸性などの観点から、ポリアミドマルチフィラメント繊維の、JIS−K6810に従って測定した98%硫酸中濃度1%、25℃の硫酸相対粘度(ηr)は、1.5以上4.0以下であり、好ましくは1.7以上3.5以下であり、より好ましくは1.8以上3.3以下である。ηrが1.5以下であると産業資材用途として、十分な強度の繊維を得ることができず、また、ηrが4.0以上の繊維は、ポリマーの流動性が悪く紡糸困難であり、得ることができない。
[ポリアミドの製造方法]
ポリアミドの製造方法としては、例えば、以下に例示するように種々の方法が挙げられる:
(1)ジカルボン酸・ジアミン塩又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下、「熱溶融重合法」とも略称する。)。
(2)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「熱溶融重合・固相重合法」とも略称する。)。
(3)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物の、水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダーなどの押出機で再び溶融して重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・押出重合法」とも略称する。)。
(4)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物の、水溶液又は水の懸濁液を加熱、析出したプレポリマーをさらにポリアミドの融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・固相重合法」とも略称する。)。
(5)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物を、固体状態を維持したまま重合させる方法(以下、「固相重合法」とも略称する)。
(6)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライド成分とジアミン成分を用いて重合させる方法「溶液法」。
ポリアミドの製造方法において、ポリアミドの流動性の観点から、脂環族ジカルボン酸のトランス異性体比率を85%以下に維持して重合することが好ましく、特に、80%以下に維持することにより、さらに色調や引張伸度に優れ、高融点のポリアミドが得られる。ポリアミドの製造方法において、重合度を上昇させてポリアミドの融点を上昇させるために、加熱の温度を上昇させたり、及び/又は加熱の時間を長くしたりする必要が生ずるが、その場合、加熱によるポリアミドの着色や熱劣化による引張伸度の低下が起こる場合がある。また、分子量の上昇する速度が著しく低下する場合がある。ポリアミドの着色や熱劣化による引張伸度の低下を防止することができるため、トランス異性体比率を80%以下に維持して重合することが好適である。
ポリアミドを製造する方法としては、トランス異性体比率を85%以下に維持することが容易であるため、また、得られるポリアミドの色調に優れるため、(1)熱溶融重合法、又は(2)熱溶融重合・固相重合法によりポリアミドを製造することが好ましい。
ポリアミドの製造方法において、重合形態としては、バッチ式でも連続式でもよい。重合装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、オートクレーブ型反応器、タンブラー型反応器、ニーダーなどの押出機型反応器などが挙げられる。
ポリアミドの製造方法としては、以下に記載するバッチ式の熱溶融重合法によりポリアミドを製造することができる。
バッチ式の熱溶融重合法としては、例えば、水を溶媒として、ポリアミド成分(ジカルボン酸、ジアミン、及び、必要に応じて、ラクタム及び/又はアミノカルボン酸)を含有する約40〜60質量%の溶液を、110〜180℃の温度及び約0.035〜0.6MPa(ゲージ圧)の圧力で操作される濃縮槽で、約65〜90質量%に濃縮して濃縮溶液を得る。次いで、該濃縮溶液をオートクレーブに移し、容器における圧力が約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。その後、水及び/又はガス成分を抜きながら圧力を約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、温度が約250〜350℃に達した時点で、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧することにより、副生する水を効果的に除くことができる。その後、窒素などの不活性ガスで加圧し、ポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。該ストランドを、冷却、カッティングしてペレットを得る。
ポリアミドの製造方法としては、以下に記載する連続式の熱溶融重合法によりポリアミドを製造することもできる。
連続式の熱溶融重合法としては、例えば、水を溶媒としてポリアミド成分を含有する約40〜60質量%の溶液を、予備装置の容器において約40〜100℃まで予備加熱し、次いで、濃縮槽/反応器に移し、約0.1〜0.5MPa(ゲージ圧)の圧力及び約200〜270℃の温度で約70〜90%に濃縮して濃縮溶液を得る。該濃縮溶液を約200〜350℃の温度に保ったフラッシャーに排出し、その後、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧する。その後、ポリアミド溶融物は押し出されてストランドとなり、冷却、カッティングされペレットとなる。
[ポリアミドマルチフィラメント繊維]
本実施形態のポリアミドマルチフィラメント繊維は、上述したポリアミドを所定の方法により繊維化したものである。このポリアミドは脂環族ポリアミドであるため、その流動性や曳糸性は、芳香族ポリアミドよりも優れているが、ナイロン66などの一般的な脂肪族ポリアミドよりも劣る。また、Tmも高いため、熱によるポリマーの劣化や流動特性が非常にシビアとなる。本実施形態では、下記のような製造方法により、強度、紡糸安定性、均一性に優れた繊維を得ることができる。
ポリアミドマルチフィラメント繊維の製造方法としては、様々な方法を用いることができるが、通常、溶融紡糸が用いられ、スクリュー型の溶融押出機を用いて行うことが好ましい。ポリアミドの紡糸温度(溶融温度)は300℃以上360℃以下であることが好ましい。300℃以上あれば、熱量不足による未溶解物の混入を抑制することができる。他方、360℃以下であれば、ポリマーの熱分解や分解ガスの発生を大幅に低減し、紡糸性が向上する。
熱溶融後は孔径が約10〜100μmの細孔を有する金属不織布フィルターを組み込んだ紡糸パック中を通過させ、紡口と呼ばれる口金細孔ノズルを通して吐出する。マルチフィラメントとするため、この際のノズルはホール数が30以上であることが好ましい。また、紡糸性を確保するため、孔径は0.10mm〜0.50mmが好ましい。さらに、ノズルの長(L)と径(D)の比であるL/Dは1.0〜4.0の範囲であることが好ましい。
マルチフィラメントの紡口には多数の細孔が必要なため、モノフィラメントと比べて紡口表面積が大きくなり、紡口表面の温度斑が起こり易い。特に、本実施形態のポリアミドマルチフィラメント繊維はTmが高く、また、温度による流動特性への影響が大きいため、温度斑が生じると均一な繊維を得ることが困難となる。そこで、紡口表面の温度斑を減らし、吐出時のポリマー温度を均温化させることが特に重要である。紡口表面温度の均一性を高めるためには、紡口ヒーターを設置することが好ましい。特に紡口表面は糸条の随伴流により、外側が激しく冷やされるので、紡口ヒーターは紡口の外側を囲うようして、紡口に直付けで取り付けるのが好ましい。
紡口ヒーターにより、紡口表面温度をTm以上Tm+60℃以下で加熱し、紡口面の中心と外周の温度差を3℃以内することで、吐出時のポリマーの溶融粘度差が小さくなり、均一性に優れた繊維を得ることができる。紡口表面温度がTm以上あることで、熱量不足による吐出斑が生じることなく、均一な繊維を得ることができる。紡口表面温度がTm+60℃よりも低いことで熱劣化を低減することができる。
吐出した直後の糸条には加熱筒などにより、加熱ゾーンを設けることが好ましい。加熱筒とは糸条を囲んだヒーターである。本実施形態のポリアミドマルチフィラメント繊維はTmが高いため、紡糸直後の固化速度が速く、曳糸性が低下し、紡口直下での切糸が頻発して、紡糸が困難となる。そこで、加熱筒を設置し、紡口直下の雰囲気温度を高く、均一にすることで、溶融ポリマーの固化速度や単糸間の固化斑が抑えられ、曳糸性が大幅に向上する。また、本実施形態のポリアミドマルチフィラメント繊維はTgが高いため、紡糸ドラフトの影響で配向し易く、延伸性の低下を招くが、加熱筒を設置することで、紡糸ドラフトでの不均一な配向を緩和し、延伸性及び強度が向上する。糸条は随伴流の影響により、外周の単糸から冷やされるので、加熱筒としては糸条を外側から囲うような円筒形のヒーターが好ましい。
また、吐出直後の曳糸性の確保と配向緩和のためには、加熱ゾーンの距離が必要であり、加熱筒の長さは、例えば、10〜300mmであることが好ましい。さらに、加熱筒の温度は100℃以上200℃以下が好ましい。100℃未満であると吐出された溶融ポリマーはすぐに固化して、曳糸性や配向緩和が低下する。他方、200℃よりも高いと熱劣化が生じて、強度低下や色調の悪化が生じる。
加熱ゾーンを通過した糸条は冷風を当てることにより、急冷固化される。この時の冷風速度は0.2〜2.0m/minの範囲が好ましい。0.2m/minより遅いと冷却不十分となる。2.0m/minよりも速いと糸揺れが大きくなり、単糸が接触し、単糸同士が密着して紡糸性や延伸性が低下する。次いで、仕上剤が付与される。仕上剤は、鉱物油で希釈した非水系仕上剤、又は仕上剤濃度が15〜35重量%の水分散系エマルジョンが付与される。繊維に付着させる仕上剤の付着量は、巻き取った繊維に対し0.5〜2.5重量%、好ましくは0.7〜2.0重量%である。
延伸工程は、加熱浴、加熱蒸気吹付け、ローラーヒーター、接触式プレートヒーター、非接触式プレートヒーター等を使用することができるが、生産性の観点からローラーヒーターが好ましい。また、本実施形態の延伸は冷延伸と熱延伸の工程を含む2段以上の多段熱延伸を行うことが好ましい。特にベルト用コードとして必要な繊維強度と、剛性の保持に効果のある高い繊維配向度(Δn)を得るためには、冷延伸温度、熱延伸温度、冷延伸倍率と熱延伸倍率の比率が重要となる。
冷延伸は熱延伸をさせる前に繊維配向を適度に揃えるための予備延伸の役割を果たす。本実施形態のポリアミド樹脂は高いTgを有しているため、冷延伸温度も(Tg−30℃)以上Tg以下の高い温度が必要となる。(Tg−30℃)以上であることで、延伸斑なく、均一に配向して、良好な強度が得られる。Tg以下であることで結晶化が過剰に進むことを抑制できる。また、延伸による一軸配向においては、ネック点と呼ばれる急激に径が小さくなり、配向が進む箇所が存在するが、冷延伸温度がTg以下であることで、ネック点が安定して、マルチフィラメントにおいて均一な繊維を得ることができる。
本実施形態のポリアミド樹脂は高いTgを有しているため、延伸の際に熱量不足や熱量多過による延伸斑や過剰な熱結晶化が生じやすい。そのため、高延伸して、高い繊維配向度を得るためには、冷延伸倍率と熱延伸倍率の配分が非常に重要である。冷延伸倍率の配分は総合延伸倍率の50%以上80%以下が好ましい。冷延伸倍率の配分が総合延伸倍率の50%以上であると、繊維に必要な予備延伸が与えられ、延伸斑なく均一な繊維を得ることができる。また、熱延伸での過剰な結晶化を抑えることができる。他方、冷延伸倍率の配分が総合延伸倍率の80%以下であると熱延伸にて結晶化に必要な熱量が与えられて、優れた強度とΔnを得ることができる。
熱延伸温度は200℃以上250℃以下が好ましい。200℃以上であると、結晶化に必要な熱量が与えることができ、他方、250℃よりも低いと、繊維の熱劣化を抑制することができる。総合延伸倍率は2.0〜7.0倍、好ましくは3.0〜6.0倍である。
延伸された繊維は巻き取る前に交絡付与装置により、糸条に高圧流体を吹き付けて交絡させることが好ましい。交絡付与装置としては、従来のエア交絡装置を適宜もちいることができる。マルチフィラメントに交絡を付与することで、単糸の集束ばらけを抑えて、後加工でのコード切れ等のトラブルを回避できる。また、破断伸度を高めにすることでプランジャーエネルギー向上に寄与する。交絡数は1個/m以上30個/m以下が好ましく、より好ましくは1個/m以上20個/m以下であり、さらに好ましくは1個/m以上15個/m以下である。交絡数が1個/m以上あることで、単糸の集束ばらけを抑えることができ、他方、交絡数が20個/m以下であることで、交絡による糸条へのダメージを低減できる。
[伝動ベルト用コード]
上記で得られたポリアミドマルチフィラメント繊維の延伸糸に撚りを掛けてコードの形態とし、伝動ベルト用コードとして用いることができる。ポリアミドマルチフィラメント繊維に撚りを掛けることで、強力利用率が平均化し、その疲労性が向上する。本実施形態のポリアミドマルチフィラメント繊維に対する撚り数としては1回/m以上が好ましい。撚糸の形態及び方法の制限はないが、撚り係数(K)が300〜30000の範囲で撚糸することが好ましい。尚、撚り係数(K)は、下式で定義される:
K=Y×D0.5(T/m・dtex0.5
{式中、Yは、ポリアミド撚糸体1mあたりの撚り数(T/m)であり、そしてDは、ポリアミド撚糸物の総表示繊度(dtex)である。}。撚糸時の張力は0.01〜0.2cN/dtexが好ましい。
さらに、本実施形態の伝動ベルト用コードには、伝動ベルトを構成するゴムとコードとの接着のためにレゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)を付与することが好ましい。RFL樹脂の付着率は、コードに対して0.5〜30質量%が好ましい。RFL樹脂の付着率が0.5質量%以上あることでゴムとの接着力が発現し、30%質量以下であることでコードが硬くなり、屈曲疲労性が悪化することを避けることができる。通常、RFL樹脂は、撚糸した後に付着されるが、撚糸の前又は途中に行ってもよい。RFL液の好ましい組成としては、レゾルシンを0.1〜10質量%、ホルマリンを0.1〜10質量%、ラテックスを1〜28質量%であり、より好ましい組成としてはレゾルシン0.5〜3質量%、ホルマリン0.5〜3質量%、ラテックス10〜25質量%である。
こうして得られたポリアミドマルチフィラメント繊維からなるコード又は簾織物を心線として使用して、伝動ベルトを得ることができる。伝動ベルトとしては、例えば、Vリブドベルト、ラップドVベルト、ローエッジVベルト、コグドVベルト、結合Vベルト、歯付ベルト、両面Vベルト、両面歯付ベルト、歯付Vリブベルト、平ベルトが挙げられる。
[伝動ベルト用織物]
伝動ベルト用の織物として用いる糸は、上記で得られたポリアミドマルチフィラメント繊維のみからなる糸でも、ポリウレタン弾性糸の周囲にポリアミドマルチフィラメントをカバリングした複合糸でも構わない。さらに、ポリウレタン弾性糸の周囲にアラミド繊維をカバリングし、その上から本実施形態のポリアミドマルチフィラメントをカバリングしてもよい。
ポリアミドマルチフィラメント繊維のみからなる糸を使用する場合は、仮撚りを行うことによりベルト用織物のカバークロスに適した伸縮性の捲縮糸を得ることができる。
ポリアミドマルチフィラメント繊維の複合糸の場合には、ポリアミドマルチフィラメント繊維の割合は重量比で30wt%以上100wt%以下であり、好ましくは50wt%以上100wt%以下であり、より好ましくは70wt%以上100wt%以下である。ポリアミドマルチフィラメント繊維の重量が30wt%以下である場合、ゴム接着性や耐熱性が不十分となる。
伝動ベルト用織物の製織手段としては、レピアルーム、エアージェットルーム、ウオータージェットルーム、プロジェクタイルルーム等の織機を用いて生産することができる。織組織は、平織、綾織、朱子織等など、どのような織組織でもよいが、カバーファクターの観点から綾織が好ましい。
伸縮性の糸は一般には伝動ベルト用織物の緯糸として製織され、経糸には延伸糸が用いられるが、結果として伸縮性の糸がベルトの長手方向に配置されるのであれば、前述のように経糸と緯糸が逆になってもよい。また伸縮性の捲縮糸は伝動ベルト用織物の一方向のみに使用するのではなく、両方向に使用することもできる。
本実施形態のポリアミド繊維からなる織物には、伝動ベルトを構成するゴムとの接着のためにレゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)を付与することが好ましい。RFL樹脂の付着率は、織物に対して5〜50質量%が好ましい。RFL樹脂の付着率が5%以上あることで、成型時に織物の伸びが小さくなり、目開きを低減することができ、他方、50%以下であることで成型時に織物が硬くなり、張り付けることができなくなることを回避できる。
通常、RFL樹脂は、製織した後に付着されるが、製織の前に行ってもよい。RFL液の好ましい組成としては、レゾルシンを0.1〜10質量%、ホルマリンを0.1〜10質量%、ラテックスを1〜28質量%であり、より好ましい組成としてはレゾルシン0.5〜3質量%、ホルマリン0.5〜3質量%、ラテックス10〜25質量%である。
こうして得られたポリアミドマルチフィラメント繊維からなる織物を歯布として使用して、伝動ベルトを得ることができる。伝動ベルトとしては、例えば、歯付ベルト、両面歯付ベルト、歯付Vリブベルトが挙げられる。
[伝動ベルト]
本実施形態の伝動用ベルトは、従来公知の製法により製造でき、例えば、歯付ベルトの場合、歯型の金型ついた成形ドラムの周面に歯布と、接着ゴム層用のゴム組成物未加硫シートを巻きつけ、その上に心線をスピニングし、さらに、その上に、接着ゴム層用のゴム組成物未加硫シートを巻きつけた後、圧縮ゴム層用のゴム組成物未加硫シートを巻きつけて積層体とし、ついで、この積層体を加硫して得られた環状物を切削砥石にて表面にリブを形成し、所定幅に裁断すればよい。
以下、実施例と比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
まず、実施例及び比較例に用いた原材料の調製、測定方法及び製造方法を以下に示す。尚、本実施例において、1kg/cmは0.098MPaである。
[繊維の評価]
(1)ポリアミドマルチフィラメント繊維の(総)繊度(dtex:デシテックス)
ポリアミドマルチフィラメント繊維の重量Wと長さLを測定し、繊度を、繊度(d)=10000×W(g)/L(m)の式より求めた。
(2)ポリアミドマルチフィラメント繊維の融点(Tm)(℃)
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Pyris1−DSCを用いて測定した。測定条件は、窒素雰囲気下、試料約10mgを昇温速度20℃/minでサンプルの融点に応じて200〜400℃まで昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の温度をTm(℃)とした。
(3)銅元素の分析(ppm)
繊維中の銅元素の定量は、装置はThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により定量した。
(4)繊維強度(cN/dtex)
島津製作所製オートグラフAGS−500NGを用いて、JIS−L1013に準拠して、25cmの繊維の試料を、降下速度300mm/分で測定した。
(5)Δn
OLYMPUS社製の偏光顕微鏡BX-51PにOLYMPUS社製のコンペンセータU−CTBを取り付けて、Δnを測定した。
(6)損失正接(tanδ)ピーク(℃)
セイコーインスツル社製の動的粘弾性測定装置DMS−6100を使用して、糸長20mmの試料を、周波数:10Hz、歪振幅:10μm、最小張力/圧縮力:50mN、張力/圧縮力ゲイン:1.5、力振幅初期値:50mNの条件で−50℃から270℃まで2.5℃/min昇温速度で測定した。その際のtanδピークを読み取った。
(7)貯蔵弾性率E'比(E'(120℃)/E'(25℃))
セイコーインスツル社製の動的粘弾性測定装置DMS−6100を使用して、糸長20mmの試料を、周波数:10Hz、歪振幅:10μm、最小張力/圧縮力:50mN、張力/圧縮力ゲイン:1.5、力振幅初期値:50mNの条件で−50℃から270℃まで2.5℃/min昇温速度で測定した。その際の120℃での貯蔵弾性率E'(120℃)と25℃での貯蔵弾性率E'(25℃)の比を「E'(120℃)/E'(25℃)」とした。
(8)耐熱強度保持率(%)
一定張力で繊維を枷に巻き付け、180℃の空気環境下で、12時間加熱した。一晩静置して冷却後、島津製作所製オートグラフAGS−500NGを用いて、JIS−L1013に準拠して、繊維強度測定を行い、加熱前後での強度保持率を計算した。
(9)繊維のゴム接着特性(N/cm
繊維のゴム接着特性を一定の条件下で評価するため、撚り係数が21000の条件で2本の糸を撚糸し、コードとした。その後、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)樹脂の付着率がコードに対して5.0%となるように、RFL液を付与し、第1ゾーンが160℃、第2,3ゾーンが223℃、送出しコード長と巻取りコード長の伸長率が105%となる条件で乾燥と熱セットを行った。その後、6.0mm厚の未加硫ゴムシート(水素化アクリルニトリル・ブタジエン共重合体)を0.5cm幅×22cm長にカットしたものを、溝付加硫板に埋め込み、前記コードを配した後、さらに6.0mm厚の未加硫ゴムシート重ねて、150℃、34MPaで30分間プレス加硫後、室温まで冷却した。その後、測定に不必要な部分を取り除いて、接着測定長0.5cmのT−pull測定サンプルを得た。得られたサンプルを、JIS−L1017(2002)Tテスト(A法)に示す方法で接着力を測定した。測定速度は300mm/分。その後、得られたサンプルの強力(N)を埋め込んだ糸の繊度から算出される表面積S(cm)で割り、ゴム接着特性(N/cm)を評価した。尚、表面積S(cm)は、下式で定義される:
S=0.5×10−3×(4Dπ/ρ)
{式中、D:コードの総表示繊度(dtex)、π:円周率、ρ:コードの密度(g/cm)である。}。
(10)繊維の耐熱接着保持率(%)
前項の条件にてゴムシートを作製した後、さらに180℃、34MPaで60分間プレス加硫を行った。その後、得られたサンプルを、JIS−L1017(2002)Tテスト(A法)に示す方法で接着力を測定した。測定速度は300mm/分であった。
[コードの評価]
(11)コードのゴム接着特性(N/cm
コードのゴム接着性を評価するため、6.0mm厚の未加硫ゴムシートを0.5cm幅×22cm長にカットしたものを、溝付加硫板に埋め込み、コードを配した後、さらに6.0mm厚の未加硫ゴムシート重ねて、150℃、34MPaで30分間プレス加硫後、室温まで冷却した。その後、測定に不必要な部分を取り除いて、接着測定長LcmのT−pull測定サンプルを得た。得られたサンプルを、JIS−L1017(2002)Tテスト(A法)に示す方法で接着力を測定した。測定速度は300mm/分であった。その後、得られたサンプルの強力(N)を埋め込んだ糸の繊度から算出される表面積S(cm)で割り、ゴム接着特性(N/cm)を評価した。尚、表面積S(cm)は、下式で定義される:
S=L×10−3×(4Dπ/ρ)
{式中、L:コードのゴムへの埋め込み深さ(cm)、D:コードの総表示繊度(dtex)、π:円周率、ρ:コードの密度(g/cm)である。}。
(12)コードの耐熱接着保持率(%)
前項の条件にてゴムシートを作製した後、さらに180℃、34MPaで60分間プレス加硫を行った。その後、得られたサンプルを、JIS−L1017(2002)Tテスト(A法)に示す方法で接着力を測定した。測定速度は300mm/分であった。
[ベルトの評価]
(13)心線の耐熱保持率(%)
25℃の雰囲気温度の下で、従動プーリの負荷を16馬力とし、テンションプーリの初張力を85kgfとし、駆動プーリを回転数4900rpmで駆動して、Vリブドベルトを走行させ、ベルトから心線が露出するか、又はゴム層に割れを生じるまでの寿命時間(25℃)を測定した。同様に、130℃の雰囲気下での寿命時間(130℃)を測定し、寿命時間(130℃)/寿命時間(25℃)×100を心線の耐熱保持率(%)とした。
(14)心線の耐高温負荷保持率(%)
150℃の雰囲気温度で、5時間Vリブドベルトを熱処理した後、従動プーリの負荷を16馬力とし、テンションプーリの初張力を85kgfとし、駆動プーリを回転数4900rpmで駆動して、Vリブドベルトを走行させ、ベルトから心線が露出するか、又はゴム層に割れを生じるまでの寿命時間(150℃熱処理、130℃)を測定した。また、前項の寿命時間(130℃)の値を用いて、寿命時間(150℃熱処理、130℃)/寿命時間(130℃)×100を心線の耐高温負荷保持率(%)とした。
(15)歯布の耐熱保持率(%)
25℃の雰囲気温度の下で、8Tの駆動および従動プーリ間に巻き付け、4馬力の負荷を掛け、回転数1500rpmで歯付ベルト走行試験を行い、歯部に亀裂の入るまでの寿命時間(25℃)を測定した。同様に、130℃の雰囲気下での寿命時間(130℃)を測定し、寿命時間(130℃)/寿命時間(25℃)×100を歯布の耐熱保持率(%)とした。
(16)歯布の耐熱保持率(%)
150℃の雰囲気温度で、5時間歯付ベルトを熱処理した後、130℃の雰囲気温度の下で、8Tの駆動および従動プーリ間に巻き付け、4馬力の負荷を掛け、回転数1500rpmで歯付ベルト走行試験を行い、歯部に亀裂の入るまでの寿命時間(150℃熱処理、130℃)を測定した。また、前項の寿命時間(130℃)の値を用いて、寿命時間(150℃熱処理、130℃)/寿命時間(130℃)×100を歯布の耐高温負荷保持率(%)とした。
<実施例1>
「熱溶融重合法」によりポリアミド重合を実施した。
原料モノマーの重量を1500gとし、以下の表1の組成比になるように、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸816g(4.74モル)、1,10−デカメチレンジアミン408g(2.37モル)、及び2−メチルペンタメチレンジアミン275g(2.37モル)を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。この均一水溶液に、1,10−デカメチレンジアミン17.0g(0.10モル、全ジアミンに対して2.1%)を追添し、さらに重合後のポリマー重量に対して、銅濃度が170ppm、ヨウ素濃度が0.68%となるようにヨウ化カリウムとヨウ化銅を加えて水溶液を得た。
得られた水溶液を、内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧製)に仕込み、液温(内温)が50℃になるまで保温して、オートクレーブ内を窒素置換した。オートクレーブの槽内の圧力が、ゲージ圧として(以下、槽内の圧力は全てゲージ圧として表記する。)、約2.5kg/cmになるまで、液温を約50℃から加熱を続けた(この系での液温は約145℃であった。)。
槽内の圧力を約2.5kg/cmに保つため、水を系外に除去しながら加熱を続けて、水溶液の濃度が約75質量%になるまで濃縮した(この系での液温は約160℃であった。)。水の除去を止め、槽内の圧力が約30kg/cmになるまで加熱を続けた(この系での液温は約245℃であった。)。槽内の圧力を約30kg/cmに保つため水を系外に除去しながら、最終温度−30℃になるまで加熱を続けた。液温が最終温度−30℃(ここでは280℃)まで上昇した後に、加熱は続けながら、槽内の圧力が大気圧(ゲージ圧は0kg/cm)になるまで60分かけながら降圧した。その後、樹脂温度(液温)の最終温度が約310℃になるようにヒーター温度を調整した。樹脂温度はその状態のまま、槽内を真空装置で100torrの減圧下に10分維持した。その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出してポリアミドを得た。得られたポリアミドを、真空乾燥機で乾燥し、水分率を500ppmに調整した。
以下の表1に、他の実施例とともに重合組成、重合条件等をまとめて示す。後の紡糸工程を経た後の繊維の組成も以下の表1の通りであった。
乾燥した状態のポリアミドを、溶融紡糸装置(口金細孔ノズル:孔数35、孔径0.23mm、外径130mm)を用いて紡糸温度320℃、紡口ヒーター温度320℃、加熱筒温度120℃(加熱筒長150mm、内径170mm)の条件で紡糸した。この時の紡口の中心と外周部の温度差は1℃であった。その後、0.9m/sの冷風速度で冷却後、巻き取った繊維に対して1.0重量%で仕上剤を付着した。次に、冷延伸温度140℃で総合延伸倍率の65%延伸し、さらに熱延伸温度220℃で延伸した。延伸後、交絡付与装置により交絡を8回/m付与して、巻取機で巻き取り、235dtexのポリアミドマルチフィラメントを得た。その後、得られた繊維の評価結果を以下の表1と2に示す。得られたポリアミドマルチフィラメント繊維は高いTgを持ち、繊維の均一性、紡糸安定性に優れていた。また、実施例1の未延伸糸と延伸糸のtanδの値はそれぞれ以下の通りであった。未延伸糸:0.48、延伸糸0.20。
<実施例2〜4>
以下の表1の組成及び条件で実施例1と同じようにポリマーを重合し、溶融紡糸にて繊維を作製し、ポリアミドマルチフィラメント繊維を得た。繊維の評価結果を以下の表1と2に示す。
<実施例5>
口金細孔ノズルの孔数を240、繊度を1400dtexに変えた以外は実施例1と同様にして、ポリアミドマルチフィラメントを得た。繊維の評価結果はフィラメント数と繊度以外は実施例1と同じであった。
<実施例6>
口金細孔ノズルの孔数を240、繊度を1400dtexに変えた以外は実施例2と同様にして、ポリアミドマルチフィラメントを得た。繊維の評価結果はフィラメント数と繊度以外は実施例2と同じであった。
<実施例7>
口金細孔ノズルの孔数を240、繊度を1400dtexに変えた以外は実施例3と同様にして、ポリアミドマルチフィラメントを得た。繊維の評価結果はフィラメント数と繊度以外は実施例3と同じであった。
<実施例8>
口金細孔ノズルの孔数を240、繊度を1400dtexに変えた以外は実施例4と同様にして、ポリアミドマルチフィラメントを得た。繊維の評価結果はフィラメント数と繊度以外は実施例4と同じであった。
<比較例1>
ポリアミドマルチフィラメント繊維(旭化成(株)製: 商品名レオナ)235dtexを使用し、実施例の測定手法に基づいて評価した。この繊維の評価結果を以下の表2に示す。比較例1は高温での剛性保持が低く、E'(120℃)/E'(25℃)は0.39まで低下した。
<比較例2>
パラ系アラミド繊維(AKZO社製:商品名Twaron)220dtexを使用し、実施例の測定手法に基づいて評価した。この繊維の評価結果を以下の表2に示す。比較例2は非常に剛直であり、E'(120℃)/E'(25℃)はほとんど低下しなかった。
Figure 2017020127
Figure 2017020127
<実施例9>
実施例1の繊維を4本合糸して940dtexとし、さらに撚り係数が21000の条件で940dtexの糸を2本撚糸して、コードとした(この撚糸の繊度は2000dtexであった)。次に、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)樹脂の付着率(DPU)がコードに対して5.0%となるように、RFL液を付与し、第1ゾーンが160℃、第2,3ゾーンが223℃、送出しコード長と巻取りコード長の伸長率が105%となる条件で乾燥と熱セットを行い、RFL処理コードを得た。この時のゴムとの接着性を以下の表3に示す。実施例9はゴムとの接着性と耐熱接着保持率に優れていた。
<実施例10〜12>
実施例2〜4の繊維を用いて、実施例9と同様に処理し、RFL処理コードを得た。この時のゴムとの接着性を以下の表3に示す。
<実施例13>
撚り係数が21000の条件で実施例5の1400dtexの糸を2本撚糸して、コードとした(この撚糸の繊度は3000dtexであった)。次に、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)樹脂の付着率(DPU)がコードに対して5.0%となるように、RFL液を付与し、第1ゾーンが160℃、第2,3ゾーンが223℃、送出しコード長と巻取りコード長の伸長率が105%となる条件で乾燥と熱セットを行い、RFL処理コードを得た。この時のゴムとの接着性を以下の表3に示す。実施例13はゴムとの接着性と耐熱接着保持率に優れていた。
<実施例14〜16>
実施例6〜8の繊維を用いて、実施例13と同様に処理し、RFL処理コードを得た。この時のゴムとの接着性を以下の表3に示す。
<比較例3>
比較例1の繊維を4本合糸して940dtexとし、さらに撚り係数が21000の条件で940dtexの糸を2本撚糸して、コードとした(この撚糸の繊度は2000dtexであった)。次に、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)樹脂の付着率(DPU)がコードに対して5.0%となるように、RFL液を付与し、第1ゾーンが160℃、第2,3ゾーンが223℃、送出しコード長と巻取りコード長の伸長率が105%となる条件で乾燥と熱セットを行い、RFL処理コードを得た。この時のゴムとの接着性を以下の表3に示す。比較例3はゴムとの接着性と耐熱接着保持率に優れていた。
<比較例4>
比較例2の繊維を4本合糸して880dtexとし、さらに撚り係数が21000の条件で880dtexの糸を2本撚糸して、コードとした(この撚糸の繊度は1900dtexであった)。次に、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)樹脂の付着率(DPU)がコードに対して5.0%となるように、RFL液を付与し、第1ゾーンが160℃、第2,3ゾーンが223℃、送出しコード長と巻取りコード長の伸長率が105%となる条件で乾燥と熱セットを行い、RFL処理コードを得た。この時のゴムとの接着性を以下の表3に示す。比較例4は剛直な繊維であり、RFLだけではゴムとの接着特性が悪く、耐熱接着保持率も低い値となった。
Figure 2017020127
<実施例17>
実施例5の繊維を用いて2×3の撚り構成(1400dtexの糸を2糸条引き揃えて下撚りを付与したものを3本併せて上撚りを付与した構成)で、撚り係数が2500条件で撚糸して、撚糸コードとした(この撚糸の繊度は4500dtexであった)。 続いて、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)樹脂の付着率(DPU)がコードに対して5.0%となるように、RFL液を付与し、第1ゾーンが160℃、第2,3ゾーンが223℃、送出しコード長と巻取りコード長の伸長率が105%となる条件で乾燥と熱セットを行い、ベルトの心線用コードとした。
次に、表面が平滑な円筒状の成形ドラムの周面にゴムコート帆布と接着ゴム層のためのエチレン−プロピレン−ジエンゴムの配合物の未加硫シートを巻き付けた。この上に接着処理した前記の心線を螺旋状にスピニングした。更に、その上に上記と同じ接着ゴム層のためのゴム配合物の未加硫シートを巻き付けた後、圧縮ゴム層のための前記エチレン−プロピレン−ジエンゴムの配合物の未加硫シートを巻き付けて積層体とした。
この積層体を内圧6kgf/cm、外圧9kgf/cm、温度165℃、時間35分間の条件にて加硫缶中にて加熱加圧し、蒸気加硫して、環状物を得た。次いで、この環状物を駆動ロールと従動ロールとからなる第1の駆動システムに取り付けて、所定の張力の下で走行させながら、研削ホイールを用いて上記環状物を研削して、表面に複数のリブを形成した。この後、この環状物を更に別の駆動ロールと従動ロールとからなる第2の駆動システムに取り付けて、走行させながら、所定の幅に裁断して、リブ数3、周長さ1000mmの製品としてのVリブドベルトを得た。この時の心線用コードとベルトの評価結果を以下の表4に示す。実施例17のコードは高いゴム接着特性と耐熱接着保持率を有し、それを用いたベルトは良好な耐熱特性を示した。
<実施例18〜20>
実施例6〜8の繊維を用いて、実施例17と同様に処理し、心線用コードおよびそれを用いたVリブドベルトを作製した。この時の心線用コードとベルトの評価結果を以下の表4に示す。
<比較例5>
比較例1の繊維を6本合糸して、1410dtexの糸とし、2×3の撚り構成(1410dtexの糸を2糸条引き揃えて下撚りを付与したものを3本併せて上撚りを付与した構成)で、撚り係数が2500条件で撚糸して、撚糸コードとした(この撚糸の繊度は4500dtexであった)。続いて、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)樹脂の付着率(DPU)がコードに対して5.0%となるように、RFL液を付与し、第1ゾーンが160℃、第2,3ゾーンが223℃、送出しコード長と巻取りコード長の伸長率が105%となる条件で乾燥と熱セットを行い、ベルトの心線用コードとした。
次に、表面が平滑な円筒状の成形ドラムの周面にゴムコート帆布と接着ゴム層のためのエチレン−プロピレン−ジエンゴムの配合物の未加硫シートを巻き付けた。この上に接着処理した前記の心線を螺旋状にスピニングした。更に、その上に上記と同じ接着ゴム層のためのゴム配合物の未加硫シートを巻き付けた後、圧縮ゴム層のための前記エチレン−プロピレン−ジエンゴムの配合物の未加硫シートを巻き付けて積層体とした。
この積層体を内圧6kgf/cm、外圧9kgf/cm、温度165℃、時間35分間の条件にて加硫缶中にて加熱加圧し、蒸気加硫して、環状物を得た。次いで、この環状物を駆動ロールと従動ロールとからなる第1の駆動システムに取り付けて、所定の張力の下で走行させながら、研削ホイールを用いて上記環状物を研削して、表面に複数のリブを形成した。この後、この環状物を更に別の駆動ロールと従動ロールとからなる第2の駆動システムに取り付けて、走行させながら、所定の幅に裁断して、リブ数3、周長さ1000mmの製品としてのVリブドベルトを得た。この時の心線用コードとベルトの評価結果を以下の表4に示す。比較例5のコードはゴムとの接着特性には優れているが、高温での剛性低下が大きく、ベルトの耐熱保持率が不十分であった。
<比較例6>
比較例2の繊維を6本合糸して、1320dtexの糸とし、2×3の撚り構成(1320dtexの糸を2糸条引き揃えて下撚りを付与したものを3本併せて上撚りを付与した構成)で、撚り係数が2500条件で撚糸して、撚糸コードとした(この撚糸の繊度は4200dtexであった)。続いて、第1処理として、イソシアネート化合物、第二処理としてRFL液に浸漬後、200℃で熱処理して、ベルトの心線用コードとした。
次に、表面が平滑な円筒状の成形ドラムの周面にゴムコート帆布と接着ゴム層のためのエチレン−プロピレン−ジエンゴムの配合物の未加硫シートを巻き付けた。この上に接着処理した前記の心線を螺旋状にスピニングした。更に、その上に上記と同じ接着ゴム層のためのゴム配合物の未加硫シートを巻き付けた後、圧縮ゴム層のための前記エチレン−プロピレン−ジエンゴムの配合物の未加硫シートを巻き付けて積層体とした。
この積層体を内圧6kgf/cm、外圧9kgf/cm、温度165℃、時間35分間の条件にて加硫缶中にて加熱加圧し、蒸気加硫して、環状物を得た。次いで、この環状物を駆動ロールと従動ロールとからなる第1の駆動システムに取り付けて、所定の張力の下で走行させながら、研削ホイールを用いて上記環状物を研削して、表面に複数のリブを形成した。この後、この環状物を更に別の駆動ロールと従動ロールとからなる第2の駆動システムに取り付けて、走行させながら、所定の幅に裁断して、リブ数3、周長さ1000mmの製品としてのVリブドベルトを得た。この時の心線用コードとベルトの評価結果を以下の表4に示す。比較例5のコードは2段での溶剤処理によりゴムとの接着特性は良好であったものの、高温下での耐熱接着性が悪く、ベルトの耐高温負荷保持率が不十分であった。
Figure 2017020127
<実施例21>
実施例1の繊維を経糸と緯糸に用いて、以下の構成でレピア織機(津田駒工業(株)製)を用い、回転数300rpmで帆布を織成した。
(帆布の構成)
(a)緯糸:実施例1の仮撚り糸(フリクションタイプ仮撚り機 帝人製機(株)製:HTS−15V、仮撚り速度120m/分、ヒーター温度275℃、仮撚り数約2000T/m)
(b)経糸:実施例1(撚り数180T/m、撚り方向S)
(c)織組織:2/2綾織、経糸密度80本/2.54cm、緯糸密度70本/2.54cm
上記帆布を経糸が歯付きベルトの長さ方向に配置されるように、歯形の噛合面に貼着した歯付きベルトを成型した。この歯付きベルトの形状は、ベルト幅19.1mm、ベルト長975mm(環状体)、歯数92、歯ピッチ9.525mmとした。この上記該帆布を歯形の噛合面に貼着した歯付きベルトを成型した。
(歯付きベルトの構成)
(a)ゴム生地:N−NBR(水素化アクリルニトリル・ブタジエン共重合体)
(b)接着剤:RFL(レゾルシン−ホルマリン−ラテックス、帆布重量を基準として10重量%付与)
(c)心線:ガラス繊維(寸法:直径7μm×200本×3本撚、0.26mm間隔)
(d)成形温度:160℃
(e)加熱温度:20分
歯付きベルト評価結果を以下の表5に示す。実施例21の歯布を用いたベルトは良好な耐熱特性を示した。
<実施例22>
経糸と緯糸に実施例2〜4の繊維を使用した以外は、実施例21と同様に帆布を作製し、歯付きベルトを成型した。歯付きベルト評価結果を以下の表5に示す。
<比較例7>
比較例1の繊維を経糸と緯糸に用いて、以下の構成でレピア織機(津田駒工業(株))を用い、回転数300rpmで帆布を織成した。
(帆布の構成)
(a)緯糸:実施例1の仮撚り糸(フリクションタイプ仮撚り機 帝人製機(株)製:HTS−15V、仮撚り速度120m/分、ヒーター温度275℃、仮撚り数約2000T/m)
(b)経糸:実施例1(撚り数180T/m、撚り方向S)
(c)織組織:2/2綾織、経糸密度80本/2.54cm、緯糸密度70本/2.54cm
上記帆布を経糸が歯付きベルトの長さ方向に配置されるように、歯形の噛合面に貼着した歯付きベルトを成型した。この歯付きベルトの形状は、ベルト幅19.1mm、ベルト長975mm(環状体)、歯数92、歯ピッチ9.525mmとした。この上記該帆布を歯形の噛合面に貼着した歯付きベルトを成型した。
(歯付きベルトの構成)
(a)ゴム生地:N−NBR(水素化アクリルニトリル・ブタジエン共重合体)
(b)接着剤:RFL(帆布重量を基準として10重量%付与)
(c)心線:ガラス繊維(寸法:直径7μm×200本×3本撚、0.26mm間隔)
(d)成形温度:160℃
(e)加熱温度:20分
歯付きベルト評価結果を以下の表5に示す。比較例7の歯布を用いたベルトは高温での剛性保持が悪く、耐熱保持率が不十分であった。
<比較例8>
比較例2の繊維を経糸と緯糸に用いて、以下の構成でレピア織機(津田駒工業(株)製)を用い、回転数300rpmで帆布を織成した。
(帆布の構成)
(a)緯糸:実施例1の仮撚り糸(フリクションタイプ仮撚り機 帝人製機(株)製:HTS−15V、仮撚り速度120m/分、ヒーター温度275℃、仮撚り数約2000T/m)
(b)経糸:実施例1(撚り数180T/m、撚り方向S)
(c)織組織:2/2綾織、経糸密度80本/2.54cm、緯糸密度70本/2.54cm
上記帆布を経糸が歯付きベルトの長さ方向に配置されるように、歯形の噛合面に貼着した歯付きベルトを成型した。この歯付きベルトの形状は、ベルト幅19.1mm、ベルト長975mm(環状体)、歯数92、歯ピッチ9.525mmとした。この上記該帆布を歯形の噛合面に貼着した歯付きベルトを成型した。
(歯付きベルトの構成)
(a)ゴム生地:N−NBR(水素化アクリルニトリル・ブタジエン共重合体)
(b)接着剤:イソシアネート化合物、RFL(帆布重量を基準として12重量%付与)
(c)心線:ガラス繊維(寸法:直径7μm×200本×3本撚、0.26mm間隔)
(d)成形温度:160℃
(e)加熱温度:20分
歯付きベルト評価結果を以下の表5に示す。比較例8の歯布を用いたベルトは、高温でのゴム接着特性が悪く、耐高温負荷保持率が不十分であった。
Figure 2017020127
本発明に係る新規な高融点ポリアミド樹脂からなるマルチフィラメント繊維を、伝動ベルト用コード及び/又は織物に用いることで、良好なゴム接着性と高温での耐久性に優れる伝動ベルト用コード、織物、及び伝動ベルトを提供することができる。

Claims (14)

  1. 120℃での貯蔵弾性率E'(120℃)と25℃での貯蔵弾性率E'(25℃)の比、E'(120℃)/E'(25℃)の値が0.6以上0.9以下であることを特徴とする伝動ベルト用ポリアミド繊維。
  2. 180℃で5時間熱処理した後のゴムとの耐熱接着保持率が80%以上である、請求項1に記載の伝動ベルト用ポリアミド繊維。
  3. JISL1017:2002附属書1(3.1 Tテスト)に準じて計測されるゴム接着特性が1000N/cm以上である、請求項1又は2に記載の伝動ベルト用ポリアミド繊維。
  4. 前記伝動ベルト用ポリアミド繊維が、脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とジアミンとの重縮合物からなり、該ジカルボン酸に対する該脂環族ジカルボン酸の比率が50モル%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の伝動ベルト用ポリアミド繊維。
  5. 前記ポリアミド繊維のΔnが0.04以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミドマルチフィラメント繊維。
  6. 前記ポリアミド繊維中に銅元素が1ppm以上500ppm以下含まれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の伝動ベルト用ポリアミド繊維。
  7. 引張強度が4.0cN/dtex以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の伝動ベルト用ポリミド繊維。
  8. 180℃の空気環境下で12時間熱処理した後の耐熱強度保持率が70%以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の伝動ベルト用ポリアミド繊維。
  9. 単糸繊度が0.5dtex以上10dtex以下である、請求項1〜8のいずれか1項に伝動ベルト用ポリアミド繊維。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の伝動ベルト用脂環族ポリアミド繊維をレゾルシン−ホルマリン−ラテックス樹脂により処理した伝動ベルト用コード。
  11. JISL1017:2002附属書1(3.1 Tテスト)に準じて計測されるゴム接着特性が1000N/cm以上である、請求項10に記載の伝動ベルト用コード。
  12. 請求項10又は11に記載の伝動ベルト用コードをベルトの心線として用いた伝動ベルト。
  13. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の伝動ベルト用ポリアミド繊維を経緯のいずれかの織糸に用いた伝動ゴムベルト用織物。
  14. 請求項13に記載の伝動ベルト用織物をベルトの歯布として用いた伝動ベルト。
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