以下、実施形態の凝集剤注入支援装置及び凝集剤注入支援システムを、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、注入支援装置(凝集剤注入支援装置)を備える水処理システム1の構成例を示す図である。第1の実施形態では、水処理システム1は、「水処理システム1a」という。水処理システム1aは、凝集剤を用いる処理を水に施す装置(固液分離装置)を備える設備であれば、特定の設備に限定されない。水処理システム1aは、例えば、浄水場、製紙工場、食品工場である。第1の実施形態では、水処理システム1aは、一例として浄水場である。
水処理システム1aは、取水井10と、着水井20と、接触池30と、混和池40と、フロック形成池50と、沈殿池60と、砂ろ過棟70と、配水池80と、調整部90と、凝集剤100と、注入支援システム200(凝集剤注入支援システム)とを備える。取水井10は、水の流れに関して最も上流に位置する。配水池80は、水の流れに関して最も下流に位置する。
取水井10は、原水を一時的に貯留する。
着水井20には、取水井10の原水が送られる。着水井20では、植物や土砂が原水から沈降分離される。
接触池30には、着水井20の上澄みの水が送られる。接触池30では、着水井20から送られた水と吸着材とが混合される。吸着材は、例えば、活性炭である。接触池30では、着水井20の上澄みの水に含まれている色度成分や溶解性成分を、吸着材が吸着する。溶解性成分は、例えば、溶解性の有機物である。
接触池30には、導電率計31と、水温計32とが備えられる。導電率計31は、接触池30の上澄みの水の導電率を測定する。導電率計31は、導電率の測定結果を表す情報を注入支援システム200に送信する。水温計32は、接触池30の上澄みの水の温度を測定する。水温計32は、水温の測定結果を表す情報を注入支援システム200に送信する。接触池30は、混和池40に通じる配管に流量計33を備える。流量計33は、所定時間に混和池40に送られる水の流量を測定する。流量計33は、流量の測定結果を表す情報を注入支援システム200に送信する。なお、水温計32は、導電率計31が導電率を測定した水の温度を測定もよい。水温計32は、流量計33が流量を測定した水の温度を測定してもよい。凝集剤100の添加率によって混和池40の導電率が変化する場合、導電率計31は混和池40に設置されてもよい。
混和池40(急速撹拌池)には、接触池30の上澄みの水が送られる。混和池40では、調整部90によって凝集剤100が水に注入される。混和池40では、水処理システム1aの運転員による手動で、凝集剤100が水に注入されてもよい。
混和池40には、混合装置41と、pH計42とが備えられる。混合装置41は、接触池30から送られた水と、凝集剤100とを混合する。混合装置41は、例えば、急速攪拌装置(フラッシュ・ミキサ)、モータ等の駆動部を有する攪拌装置、駆動部を有しない攪拌装置(スタティック・ミキサ)や、水中ポンプによって発生する循環流を利用した撹拌装置である。混和池40では、凝集剤100によって懸濁物質(Suspended Solids)の荷電状態が中和される。荷電状態が中和されることにより、懸濁物質は凝集する。懸濁物質は、例えば、微細な粒径の土砂、色度成分、溶解性成分や、藻類である。混和池40では、混合装置41による攪拌によって、水中に微フロックが形成される。
pH計42は、凝集剤100が混合された直後の水のpH値(水素イオンの濃度の対数)を測定する。第1の実施形態では、pH計42は、混和池40の水のpH値を測定する。pH計42は、pH値の測定結果を表す情報を注入支援システム200に送信する。なお、接触池30や混和池40などには、pH調整剤が注入されてもよい。
フロック形成池50には、微フロックを含む水が、混和池40から送られる。フロック形成池50は、水に含まれる微フロック同士を衝突させて、フロックを成長させる。
沈殿池60は、水中で成長したフロックを沈降させる。沈殿池60は、砂ろ過棟70に通じる配管に濁度計61を備える。濁度計61は、沈殿池60から送られた上澄みの水の濁度を測定する。濁度計61は、濁度の測定結果を注入支援システム200に送信する。
砂ろ過棟70には、沈殿池60の水が送られる。砂ろ過棟70は、沈殿池60から送られた水をろ過する。砂ろ過棟70は、カラムの形状を有する。砂ろ過棟70は、開口部を有する水槽でもよい。送水するための配管を砂ろ過棟70が有する場合、送水するための配管には吸着材が詰められていてもよい。砂ろ過棟70は、矩形の砂ろ過池でもよい。
配水池80には、ろ過された水が、砂ろ過棟70から送られる。配水池80では、塩素が水に注入される。塩素によって消毒された水は、配水池80から配水される。配水された水は、住宅などに供給される。
調整部90は、凝集剤100の注入量又は注入率を調整可能な機構である。凝集剤100の注入量又は注入率を調整可能な機構であれば、どのような機構を有していてもよい。調整部90は、例えば、ポンプである。調整部90は、情報処理装置等を備える注入支援システム200によって決定された注入量の凝集剤100を、混和池40に注入する。調整部90は、注入支援システム200によって決定された注入量又は注入率の凝集剤100を、混和池40に注入してもよい。凝集剤100の注入量は、例えば、リットルの単位で調整される。凝集剤100の注入率は、単位時間あたりの凝集剤100の注入量と、流量計33によって測定される流量とで表現される。例えば、凝集剤100の注入率の単位は、「リットル/時」である。なお、調整部90は、インバータや電磁弁を用いて、凝集剤100の注入量又は注入率を変更してもよい。
凝集剤100は、正の電荷に帯電している薬剤である。また、水の懸濁物質や気泡は、負の電荷に帯電している。水に注入された凝集剤100は、水の懸濁物質の荷電状態を中和させることによって、その水に含まれている懸濁物質等の粒子を凝集させる。
凝集剤100は、例えば、ポリ塩化アルミニウム(PAC : Poly Aluminum Chloride)、硫酸バンド、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、ポリシリカ鉄等の無機系凝集剤である。凝集剤100は、高分子凝集剤と併用されてもよい。高分子凝集剤は、例えば、カチオン性ポリマ、アニオン性ポリマ、両性ポリマである。
凝集剤100は、pH調整剤と併用されてもよい。pH調整剤は、凝集させるために適切であるpH域になるまで、水のpH値を調整することができる。pH調整剤は、酸性の調整剤でもよいし、アルカリ性の調整剤でもよい。酸性の調整剤は、例えば、硫酸や塩酸である。アルカリ性の調整剤は、例えば、苛性ソーダや水酸化カルシウムである。
注入支援システム200は、流動電流計210(SCD: Streaming Current Detector)と、pH補正部220と、導電率補正部230と、水温補正部240と、注入支援装置250と、提示装置260とを備える。
図2は、流動電流計210の構成例を示す図である。流動電流計210は、水の流動電流値(SC値)を測定するセンサを有する測定装置である。測定装置は、流動電流値以外を測定する他のセンサを含んでいてもよい。流動電流計210は、プローブ211と、ピストン212と、電極213とを有する。流動電流計210には、ポンプなどの送水機構や水位差によって、混和池40の水が送られる。なお、流動電流計210に送られた水は、混和池40に戻されてもよい。これにより、流動電流計210は、混和池40での混合作用を高めることができる。
プローブ211とピストン212との間隔は、例えば、0.1mmである。ピストン212は、プローブ211に囲まれた空間で往復運動をする。電極213−1は、プローブ211に注水された水の流動電流を測定し、測定した流動電流に応じた信号を出力する。水の流動電流は、ピストン212の上下運動に伴って生じる帯電した懸濁物質の移動によって発生する。流動電流計210は、測定した流動電流に応じた信号を示す流動電流値を、注入支援装置250に出力する。電極213−2も同様である。
流動電流計210は、例えば、懸濁物質の荷電状態を連続的に検出する流動電位計である。流動電流計210は、懸濁物質の荷電状態を間欠的に検出するゼータ電位計でもよい。流動電流値は、凝集剤100の注入量又は注入率に応じて増減する。流動電流計210は、凝集剤100と原水とが撹拌混合された直後の水の流動電流値を、連続的に測定する。以下では、流動電流計210は、混和池40の水の流動電流値を、連続的に測定し、予め設定した時間周期に基づいて注入支援装置250に送信する。なお、流動電流計210は、混和池40の出口やフロック形成池50の入口の水の流動電流値を、連続的に測定してもよい。流動電流計210は、混和池40の出口やフロック形成池50の入口の水の流動電流値を、予め設定した時間周期に基づいて注入支援装置250に送信してもよい。
流動電流値は、水質パラメータの影響を受けやすいので、水質パラメータに基づいて補正される。例えば、流動電流値は、pHの測定結果に基づいてpH補正部220によって補正される。例えば、流動電流値は、導電率の測定結果に基づいて水温補正部240によって補正される。例えば、流動電流値は、水温の測定結果に基づいて水温補正部240によって補正される。
図3は、流動電流値と濁度との関係例を示す図である。横軸は、流動電流値を表す。流動電流値は、凝集剤100の注入量に応じて変化する。左の縦軸は、濁度(NTU: Nephelometric Turbidity Unit)を表す。濁度の単位は、NTUに限らず「度」や「mg/L」であっても良い。右の縦軸は、吸引ろ過時間比(STR: Suction Time Ratio)を表す。流動電流値と濁度との関係例は、例えば、テーブルデータの形式で記憶部253に記憶される。
図3では、混和池40における凝集剤100の注入率が増えるに従い、流動電流値は上昇する。流動電流値が上昇するに従い、濁度計61が測定した水の濁度は低下する。沈殿池60の出口における濁度の運用上の管理値は、例えば、1度(=0.8NTU)以下である。濁度が管理値(基準値)以下かつ吸引ろ過時間比が最も低い場合、水の流れに関して下流の砂ろ過棟70の負荷は低下する。この場合、総合的に水は最も清澄となる。図3では、濁度が最も低い場合、水は最も清澄となっている。凝集剤100の注入量(注入率)の目標値は、水が最も清澄となる注入量(注入率)である。
制御部252は、濁度計61によって測定された濁度の測定結果を、インタフェース251から取得する。制御部252は、流動電流値が目標値となるように、濁度の測定結果に基づいて凝集剤100の注入量又は注入率の候補を決定する。制御部252は、濁度の測定結果が濁度閾値となるまで、凝集剤100を注入する。濁度閾値は、水が最も清澄となるように水質試験の結果に基づいて予め定められた濁度である。制御部252は、濁度計61によって測定された濁度の測定結果が濁度閾値を超えている場合には、流動電流値の目標値を増加させてもよい。
制御部252は、吸引ろ過時間比の測定結果を、インタフェース251から取得してもよい。制御部252は、流動電流値が目標値となるように、吸引ろ過時間比の測定結果に基づいて凝集剤100の注入量又は注入率の候補を決定する。凝集剤100の注入量又は注入率の候補は、提示装置260に提示される。
制御部252は、凝集剤100の注入量又は注入率の候補のうち、水処理システム1aの運転員が選択した注入量又は注入率を、インタフェース251から取得する。制御部252は、水処理システム1aの運転員が選択した注入量又は注入率を、調整部90に送信する。制御部252は、運転員が選択した注入量又は注入率の凝集剤100を、調整部90によって注入する。例えば、制御部252は、吸引ろ過時間比の測定結果がSTR閾値となるまで、運転員が選択した注入量又は注入率の凝集剤100を注入する。STR閾値は、水が最も清澄となるように水質試験の結果に基づいて予め定められた吸引ろ過時間比である。
流動電流値は、水質パラメータの影響を受けやすい。このため、測定された流動電流値は、水質パラメータに基づいて、標準状態における流動電流値に換算される。すなわち、測定された流動電流値は、水質パラメータに基づいて補正される。凝集剤100の注入量又は注入率の候補は、補正された流動電流値に基づいて決定される。
なお、標準状態とは、例えば、水が摂氏25度、pH7.0、導電率10mS/mになっている状態である。標準状態は、水処理システム1aの運転員によって定義されてもよい。水処理システム1aの運転員は、実際に運用する水処理システム1aの原水の水質の年間平均値や月間平均値に基づいて、標準状態を定義してもよい。
pH補正部220は、pH値の測定結果をpH計42から取得する。pH補正部220は、流動電流計210によって測定された流動電流値を、pH値の測定結果に基づいて補正する。
図4は、pHと流動電流値との関係例を示す図である。横軸はpHを示す。縦軸は流動電流値を示す。pHと流動電流値との関係例は、例えば、テーブルデータの形式で記憶部253に記憶される。流動電流値とpHとには、傾きがKpHである単調減少の線形関係がある。制御部252は、pH値の測定結果に基づく補正値(以下、「pH補正値」という。)を決定する。流動電流値は、pH補正値に基づいて補正される。制御部252は、pHと流動電流値との関係を示す式(1)に基づいて、pH補正値を決定する。
ΔZpH=KpH×(pHm−pH) …(1)
ΔZpHは、pH補正値を示す。KpH(=ΔSCD/ΔpH)は、pH値の変化量(ΔpH)あたりの流動電流値の変化量(ΔSCD)である。pHは、pH値の測定結果を示す。pHmは、標準状態におけるpH値を示す。水処理システム1aの運転員は、水質試験によってKpHの値を定める。水処理システム1aの運転員は、水処理システム1aの運用実績に基づいて、流動電流値の変化量KpHの値を定めてもよい。pH補正部220は、流動電流計210によって測定された流動電流値にpH補正値ΔZpHを加算する。
導電率補正部230は、導電率の測定結果を導電率計31から取得する。導電率補正部230は、流動電流計210によって測定された流動電流値を、導電率の測定結果に基づいて補正する。
図5は、導電率と流動電流値との関係例を示す図である。横軸は導電率を示す。縦軸は流動電流値を示す。流動電流値は、導電率が増加するほど非線形に値0に近づく。すなわち、流動電流値の絶対値は、導電率が増加するほど小さい。したがって、流動電流計210の感度は、導電率が小さいほど高い。
図6は、対数で表された導電率と流動電流値との関係例を示す図である。横軸は、対数によって表された導電率を示す。縦軸は流動電流値を示す。対数で表された導電率と流動電流値との関係例は、例えば、テーブルデータの形式で記憶部253に記憶される。導電率が小さいほど流動電流計210の感度が高いので、導電率補正部230は、流動電流計210によって測定された流動電流値を、対数によって表された導電率の測定結果に基づいて補正する。
導電率と流動電流値との関係は、式(2)に示すように対数を用いて線形化することができる。対数で表された導電率と流動電流値とには、傾きがKECである単調増加の線形関係がある。制御部252は、導電率(EC)の測定結果に基づく補正値(以下、「EC補正値」という。)を決定する。流動電流値は、EC補正値に基づいて補正される。制御部252は、導電率と流動電流値との関係を示す式(2)に基づいて、EC補正値を決定する。
ΔZEC=KEC×lоg(ECm/EC) …(2)
ΔZECは、EC補正値を示す。KEC(=ΔSCD/lоg(EC))は、対数で表された導電率の変化量(lоg(EC))あたりの流動電流値の変化量(ΔSCD)を示す。ECmは、標準状態における導電率を示す。ECは導電率の測定結果を示す。水処理システム1aの運転員は、水質試験によってKECの値を定める。導電率補正部230は、流動電流計210によって測定された流動電流値にEC補正値ΔZECを加算する。
水温補正部240は、水温の測定結果を水温計32から取得する。水温補正部240は、流動電流計210によって測定された流動電流値を、水温の測定結果に基づいて補正する。
図7は、水温と流動電流値との関係例を示す図である。横軸は、水温を示す。縦軸は流動電流値を示す。縦軸は流動電流値を示す。水温と流動電流値との関係例は、例えば、テーブルデータの形式で記憶部253に記憶される。水温と流動電流値との関係には、傾きがKtである単調減少の線形関係がある。制御部252は、水温の測定結果に基づく補正値(以下、「水温補正値」という。)を決定する。流動電流値は、水温補正値に基づいて補正される。制御部252は、水温と流動電流値との関係を示す式(3)に基づいて、水温補正値を決定する。
ΔZt=Kt×(tm−t) …(3)
ΔZtは水温補正値を示す。Kt(=ΔSCD/Δt)は、水温の変化量(Δt)あたりの流動電流値の変化量(ΔSCD)を示す。tmは標準状態における水温を示す。tは水温の測定結果を示す。水処理システム1aの運転員は、水質試験によってKtの値を定める。水温補正部240は、流動電流計210によって測定された流動電流値に水温補正値ΔZtを加算する。
したがって、補正された流動電流値は、流動電流計210によって測定された流動電流値とpH補正値ΔZpHとEC補正値ΔZECと水温補正値ΔZtとに基づく式(4)によって表される。
補正された流動電流値=測定された流動電流値+ΔZpH+ΔZEC+ΔZt…(4)
注入支援装置250は、コンピュータ端末やサーバ装置等の情報処理装置である。注入支援装置250は、単体の装置でもよいし、複数の装置でもよい。注入支援装置250は、複数の装置である場合、クラウドコンピューティング技術によって動作してもよい。注入支援装置250は、クラウドコンピューティング技術によって、キーバリューストア形式の各種データに演算を施してもよい。注入支援装置250では、ウェブブラウザが動作してもよい。注入支援装置250は、注入支援装置250の監視、障害対応及び運用のうち少なくとも一つが、代行サービスにより行われていてもよい。つまり、水処理システム1aを運用する主体とは別の主体(例えば、ASP: Application Service Provider)が代行して、注入支援装置250を監視、障害対応及び運用してもよい。また、注入支援装置250は、注入支援装置250の監視、障害対応及び運用が、複数の主体によってなされてもよい。
注入支援装置250は、インタフェース251と、制御部252と、記憶部253とを備える。インタフェース251と、制御部252とのうち一部または全部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、記憶部253に記憶されたプログラムを実行することにより機能するソフトウェア機能部である。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。
インタフェース251は、濁度の測定結果を濁度計61から取得する。インタフェース251は、流動電流計210によって測定された流動電流値を、流動電流計210から取得する。測定された流動電流値は、水温補正部240と導電率補正部230とpH補正部220とのうち少なくとも一つによって補正される。したがって、インタフェース251は、水温補正部240と導電率補正部230とpH補正部220とのうち少なくとも一つによって補正された流動電流値を取得する。
制御部252は、水温補正部240と導電率補正部230とpH補正部220とのうち少なくとも一つによって補正された流動電流値を、インタフェース251から取得する。制御部252は、流動電流値の目標値ZSVと、凝集剤100の注入率RPACのリミット値と、凝集剤100の希釈倍率Dとを、インタフェース251を介して、注入支援システム200の外部から取得する。
制御部252は、補正された流動電流値に基づくPI(Proportional Integral)制御によって、凝集剤100の注入量APAC又は注入率RPACの候補を決定する。制御部252は、補正された流動電流値に基づくPID(Proportional Integral Derivative)制御によって、凝集剤100の注入量APAC又は注入率RPACの候補を決定してもよい。
例えば、制御部252は、水質パラメータに基づいて補正された流動電流値ZPVと、流動電流値の目標値ZSVとの差enを、式(5)に基づいて決定する。
en=ZSV−ZPV …(5)
enは、n回目の制御周期における流動電流値の差(=ZSV−ZPV)を示す。ZSVは流動電流値(SC値)の目標値を示す。ZPVは、水質パラメータに基づいて補正された流動電流値を示す。
制御部252は、n回目の制御周期における流動電流値の差enと(n−1)回目の制御周期における流動電流値の差en−1との差分を算出する。制御部252は、水1リットルあたりの凝集剤100の注入量の候補を、式(6)に基づいて決定する。すなわち、制御部252は、凝集剤100の注入量の候補を決定する。
APAC=Kp×(en−en−1) …(6)
APACは、水1リットルあたりの凝集剤100の注入量(ミリリットル)を示す。Kpは、PID制御の比例ゲインを示す。Kpは、例えば、PID制御の通常のパラメータ設定方法によって決定される。en−1は、(n−1)回目の制御周期における差(=ZSV−ZPV)を示す。
制御部252は、凝集剤100の注入率を、式(7)に基づいて決定する。
RPAC=APAC×D×f×rPAC −1×10−3 …(7)
RPACは、1分間あたり凝集剤100の注入量(ミリリットル)を示す。すなわち、APACは、凝集剤100の注入率(ミリリットル/分)を示す。Dは、凝集剤100の希釈倍率を示す。fは、1分間あたりの水の流量(リットル)を示す。rPACは、凝集剤100の比重を示す。
制御部252は、補正された流動電流値に基づいて、凝集剤100の注入率のフィートバック制御を実行する。例えば、制御部252は、凝集剤100の注入率が所定のリミット値の範囲内である場合、凝集剤100の注入率を調整部90に出力する。調整部90は、凝集剤100の注入率に基づいて、混和池40に凝集剤100を注入する。例えば、制御部252は、凝集剤100の注入率が所定のリミット値の範囲内でない場合、リミット値を調整部90に出力する。調整部90は、リミット値に基づいて、混和池40に凝集剤100を注入する。
記憶部253は、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶媒体(非一時的な記録媒体)を有する。記憶部253は、例えば、RAM(Random Access Memory)やレジスタなどの揮発性の記憶媒体を有していてもよい。記憶部253は、例えば、ソフトウェア機能部を機能させるためのプログラムを記憶する。記憶部253は、例えば、データテーブルを記憶する。
提示装置260は、液晶ディスプレイ(LCD: Liquid Crystal Display)等の表示画面(提示部)を有する表示装置である。提示装置260は、凝集剤100の注入量の目標値を、インタフェース251を介して、制御部252から取得する。提示装置260は、凝集剤100の注入量の目標値を表示画面に表示する。水処理システム1aの運転員は、凝集剤100の注入量が凝集剤100の目標値となるように、調整部90を操作して凝集剤100の注入量を調整することができる。提示装置260は、凝集剤100の注入量の目標値や、凝集剤100が過剰であるか又は不足であるかを示す判定結果を、制御部252による制御に応じて、表示画面に表示してもよい。
なお、提示装置260は、スピーカ(提示部)を備える音声処理装置でもよい。提示装置260は、凝集剤100の注入量の目標値や、凝集剤100が過剰であるか又は不足であるかを示す判定結果を、音声によって運転員に提示してもよい。
以上のように、第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、補正部(pH補正部220、水温補正部240、導電率補正部230)と、制御部252とを持つ。補正部は、凝集剤100が注入される混和池40などの貯水部から採取された水、又は貯水部に対して水の流れに関する上流側の箇所から採取された水の流動電流値を、採取された水の水質パラメータに基づいて補正する。制御部252は、補正された流動電流値に基づいて凝集剤100の注入量又は注入率の候補を決定する。
これによって、第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、水質パラメータが変化した場合でも、凝集剤100の注入量又は注入率の決定を支援することができる。
従来の注入支援システムは、凝集剤の注入率を定めるための単純な関係式に基づいて、凝集剤の注入率(注入量)を算出する。従来の注入支援システムは、凝集剤の注入について、フィードフォワード制御(FF制御)を実行可能である。
流動電流計や流動電位計は、浄水場などの水処理システムの原水に凝集剤を加えた後、生成された凝集フロックの電気的性質を測定する。従来の注入支援システムは、流動電流や流動電位の測定値が目標値となるように、凝集剤の注入について、フィードバック制御(FB制御)を実行可能である。
従来の注入支援システムでは、フィードフォワード制御に使用する単純な関係式は、不変である。このため、従来の注入支援システムは、経年による原水の水質変動や、突発的な原水の水質変動に追従できない。従来の注入支援システムでは、濁度が変化しない場合でも、原水の水質によっては凝集剤の過不足が生じる場合がある。従来の注入支援システムでは、複数の水源から原水を取水して、その流量比率が頻繁に変更される場合もあった。従来の注入支援システムでは、運転員は、関係式(補正式)をジャーテストなどで適宜決め直さなければならなかった。このため、運転員の負担は大きかった。また、運転員の技術の継承は難しかった。
ゼータ電位は、粒子の凝集状態を表す指標である。ゼータ電位は、水中における帯電した粒子の電位と、電気的に中性な電位との差である。ゼータ電位の値が0に近づくと、水は、荷電中和が進み、凝集し易い電気的雰囲気となる。凝集の状態を適切に制御するため、ゼータ電位は、連続的に測定される。ゼータ電位は、短時間に連続的に測定することが困難である。
流動電流値は、ゼータ電位に代わる指標である。流動電流値は、ゼータ電位を間接的に測定した値である。流動電流計は、凝集状態を連続的に測定できるセンサとして有効である。流動電流計では、ピストンは、電極のついたプローブの内部を往復運動する。流動電流計は、発生した電流値を測定する。プローブとピストンの間隔は、例えば、0.1mmである。流動電流計では、電荷密度が高くなってしまい、測定範囲を超過してしまうことがある。流動電流計は、粒子数の多い水を測定対象とする場合、測定精度が低下することがある。
従来の注入支援システムでは、流動電流計は、急速撹拌池とフロック形成池との間の水の流動電流値を測定する。従来の注入支援システムでは、電気伝導率計は、着水井の電気伝導率を測定する。従来の注入支援システムは、急速撹拌池とフロック形成池との間の水の流動電流値と、着水井の電気伝導率を、PID調節計によって調節する。従来の注入支援システムは、注入量をポンプで制御する。
従来の注入支援システムでは、水処理システムの運転員は、流動電流値と水質パラメータとの関係について、実際に水質試験を行って事前に求めておく必要があった。水質試験は、実際の浄水場の運用に影響を与えないように試験系を組み、水質パラメータ又は水源ごとに補正式を定める必要がある。このため、水質試験は、浄水場での調整時間が掛かる。また、水質について知識のある技術者の確保が難しい、という課題がある。
第1の実施形態の水処理システム1aの運転員は、原水の水質試験をわざわざ行って流動電流値と水質パラメータとの関係式を定める必要がない。第1の実施形態の水処理システム1aの運転員は、水質パラメータ又は水源ごとに補正式を構築する必要がない。第1の実施形態の水処理システム1aの運転員は、実際の浄水場の運用に影響を与えない試験系をわざわざ組まなくてよい。第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、現地調整時間を削減することができる。第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、流動電流値を用いる注入支援システム200の導入に関するイニシャルコストを、低減することができる。第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、水質について知識のある技術者の確保が難しい場合でも、凝集剤の使用量を削減することができる。第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、汚泥発生を削減し、汚泥処分費を削減することができる。
第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、凝集剤100の注入率に基づいて、凝集剤100の注入を適正に制御することができる。第1の実施形態の水処理システム1aの運転員は、水の流動電流値に基づいて、凝集剤100の過不足を容易に把握することができる。第1の実施形態の水処理システム1aの運転員は、凝集剤100の目標値との比較によって、凝集剤100の過不足を容易に把握することができる。第1の実施形態の水処理システム1aの運転員は、凝集剤100の注入量を決定するためのジャーテストを頻繁に行わなくても、水質の変動に追従して凝集剤100を注入することができる。第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、水処理システム1aの運転員の負担を軽減することができる。
凝集剤100が過剰に注入された場合、未反応の凝集剤100が沈殿池60の出口水に残存する。凝集剤100が過剰に注入された場合、砂ろ過棟70の吸着処理の負荷が増大して、砂ろ過棟70の洗浄の頻度が増える。未反応の凝集剤100は水中で透明であるため、運転員は凝集剤100の有無を目視では判定することができない。このため、凝集剤100は過剰に注入され易い。したがって、第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、混和池40において凝集剤100の注入を過不足なく行うことによって、凝集剤100の使用量だけでなく、接触池30における活性炭の使用量を削減することができる。
第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、砂ろ過棟70の洗浄頻度を減らし、ランニングコストを低減することができる。第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、適正な凝集剤100の注入を自動化することができる。第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、水質変動への対応、水処理技術の継承、運転員の負担軽減の点を考慮した上で、供給する水の質を安定させることができる。
第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、流動電流値を補正することで、水質変動によって変化する他の因子の影響を少なくすることができる。第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、濁質と凝集剤100の電荷のバランスを、流動電流値として測定することができる。したがって、第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、水質変動が生じた場合であっても、水質変動に追従して安定した処理水の水質を維持することができる。第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、PID制御の比例ゲインKpを決定することができる。第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、PID制御の比例ゲインを決定することができる。
原水の水質変動が大きいために沈殿池60の出口水の濁度が上昇した場合でも、第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、図3に示す流動電流値の目標値を変更することによって、沈殿池60の出口水の濁度を一定値以下に維持して、凝集剤100の注入制御を継続することができる。
第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、水質パラメータによって流動電流値を補正することによって、水質変化に影響されずに標準状態における流動電流値を取得することができる。したがって、第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、粒子の荷電状態を測定することができるので、原水の水質の変動に応じて凝集剤100を注入することができる。
第1の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200では、濁度計61が測定した濁度と補正された流動電流値とに基づいて、凝集剤100の注入量又は注入率の候補を決定する。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、制御部252がフィードフォワード制御とフィードバック制御とを組み合わせる点が、第1の実施形態と相違する。第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点についてのみ説明する。
図8は、注入支援装置250を備える水処理システム1の構成の第2例を示す図である。第2の実施形態では、水処理システム1は、「水処理システム1b」という。接触池30には、導電率計31と、水温計32と、濁度計34とが備えられる。濁度計34は、着水井20に備えられてもよい。なお、沈殿池60は、図1に示す濁度計61を備えなくてもよい。
制御部252は、フィードフォワード制御(FF制御)を実行する。例えば、制御部252は、原水の水質パラメータに基づいて、凝集剤100の注入率の候補を決定する。制御部252は、濁度計34によって測定された原水の濁度に比例する値に、凝集剤100の注入率の候補を決定する(濁度比例方式)。制御部252は、凝集剤100の注入率が一定となるように、流量計33による流量の測定結果に比例した値に、凝集剤100の注入率の候補を決定する(注入率一定方式)。
制御部252は、フィードバック制御(FB制御)を実行する。例えば、制御部252は、流動電流計210によって測定された流動電流値に基づいて、調整部90に出力する凝集剤100の注入率の候補を決定する。
制御部252は、フィードフォワード制御によって決定した凝集剤100の注入率の候補と、フィードバック制御によって決定した凝集剤100の注入率の候補とに基づいて、調整部90に出力する凝集剤100の注入率を決定する。
以上のように、第2の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、混和池40で凝集剤100が注入される前に、凝集剤100の注入量又は注入率の候補を決定する。
これによって、第2の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、水質変動が生じた場合でも、制御時間の遅れを短くすることができる。フィードフォワード制御とフィードバック制御を組み合わせることによって、水質変動に追従して適正な注入率を決定することができる。
第2の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200では、濁度計34が測定した濁度と補正された流動電流値とに基づいて、凝集剤100の注入量又は注入率の候補を決定する。
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、流動電流計210のpH感度特性を考慮する点が、第2の実施形態と相違する。第3の実施形態では、第2の実施形態との相違点についてのみ説明する。
図9は、導電率と流動電流値との関係例を示す図である。横軸は導電率を示す。縦軸は流動電流値を示す。流動電流値は、流動電流計210のpH感度特性の影響を受ける。また、流動電流値は、原水の水質パラメータの一つであるpH値の影響を受ける。重曹などの電解質が原水に注入された場合、原水の導電率が上昇する。重曹を原水に注入すると、原水のpH値が上昇する。重曹を原水にさらに注入すると、原水のpH値が一定になる。
図10は、対数で表された導電率と、補正された流動電流値との関係例を示す図である。横軸は、対数で表された導電率を示す。縦軸は、式(1)を用いて演算したpH補正値ΔZpHと測定された流動電流値とを加算した値を示す。pH補正値ΔZpHと測定された流動電流値とを加算した値と、対数で表された導電率とには、傾きがKEC−pHである単調増加の線形関係がある。制御部252は、pH補正値によって補正された流動電流値と導電率との関係を示す式(8)に基づいて、流動電流計210のpH感度特性と導電率(EC)の測定結果とに基づく補正値(以下、「ECpH補正値」という。)を決定する。
ΔZEC−pH=KEC−pH×lоg(ECm/EC) …(8)
ΔZEC−pHはECpH補正値を示す。KEC−pH(=Δ(SCD+pH補正値)/Δlоg(EC))は、対数で表された導電率の変化量(Δlоg(EC))あたりの流動電流値の変化量であって、流動電流計210のpH感度特性を考慮した流動電流値の変化量(Δ(SCD+pH補正値))を示す。ECmは、標準状態における導電率を示す。ECは導電率の測定結果を示す。水処理システム1bの運転員は、水質試験によってKEC−pHの値を定める。導電率補正部230は、流動電流計210によって測定された流動電流値にECpH補正値ΔZEC−pHを加算する。
以上のように、第3の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は
、導電率と流動電流値との関係を線形化する。第3の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、ECpH補正値に基づいて流動電流値を補正する。
これによって、第3の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、pHの影響を強く受ける水質を原水が有していても、流動電流値を補正することができる。pHの影響を強く受ける水質とは、例えば導電率が小さい水質である。第3の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、水質や流量が変動しても、凝集剤100の注入量又は注入率の候補を決定することができる。第3の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、ランニングコストを削減し、処理した水の水質を安定させることができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、注入支援システム200が水温補正部240を備えない点が、点が、第3の実施形態と相違する。第4の実施形態では、第3の実施形態との相違点についてのみ説明する。
図11は、注入支援装置250を備える水処理システム1の構成の第3例を示す図である。第4の実施形態では、水処理システム1は、「水処理システム1c」という。接触池30には、導電率計31と、濁度計34とが備えられる。注入支援システム200は、流動電流計210と、pH補正部220と、導電率補正部230と、注入支援装置250と、提示装置260とを備える。
導電率は水温の影響を受ける。このため、導電率計31が温度補償機能を備えている場合がある。導電率計31は、温度補償機能の有効(あり)又は無効(なし)を切り替えることができる。導電率計31は、測定された導電率を、例えば水温が摂氏25度である状態における導電率に換算することができる。
図12は、原水の水温及び導電率の関係例を示す図である。横軸は水温を示す。縦軸は導電率(EC)を示す。導電率は、導電率計31の温度補償機能が有効である場合、水温変化に対してほぼ一定である。導電率は、導電率計31の温度補償機能が無効である場合、水温変化に比例する。したがって、制御部252は、原水の真の導電率がほぼ一定である場合には、温度補償機能が無効である導電率計31が測定した導電率に基づいて、原水の水温を推定することができる。
制御部252は、温度補償機能が無効である導電率計31による導電率の測定結果ECtと、導電率の変化量KEC−tとに基づいて、推定された水温と導電率の測定結果とに基づく補正値(以下、「ECt補正値」という。)を決定する。流動電流値は、ECt補正値に基づいて補正される。ECt補正値は、式(9)によって表される。
ΔZEC−t=KEC−t×lоg(ECm/ECt) …(9)
ΔZEC−tはECt補正値を示す。KEC−t(=Δ(SCD+ECt補正値)/Δlоg(ECt))は、対数で表された導電率の変化量(Δlоg(ECt))あたりの流動電流値の変化量であって、原水の水温を考慮した流動電流値の変化量(Δ(SCD+ECt補正値))を示す。ECmは、標準状態における導電率を示す。ECtは、温度補償機能が無効である導電率計31による導電率の測定結果を示す。水処理システム1cの運転員は、水質試験によってKEC−tの値を定める。導電率補正部230は、流動電流計210によって測定された流動電流値にECt補正値ΔZEC−tを加算する。補正された流動電流値は、式(10)によって表される。
補正された流動電流値=測定された流動電流値+ΔZpH+ΔZEC―t …(10)
以上のように、第4の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、ECt補正値に基づいて、流動電流値を補正する。
これによって、第4の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、温度補償機能が無効である導電率計31による導電率の測定結果ECtと、導電率の変化量KEC−tとに基づいて、水温の変化を推定することができる。
水処理システム1cの運転員は、式(3)に示す水温補正式を定めるための水質試験を行う必要がない。第4の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、水処理を現地で調整する時間を短縮することができる。第4の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、イニシャルコストを削減することができる。第4の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、水温計32の設置コストを削減することができる。
(第5の実施形態)
第5の実施形態では、注入支援システム200が導電率補正部230を備えない点が、第4の実施形態と相違する。第5の実施形態では、第4の実施形態との相違点についてのみ説明する。
図13は、注入支援装置250を備える水処理システム1の構成の第4例を示す図である。第5の実施形態では、水処理システム1は、「水処理システム1d」という。接触池30には、導電率計31が備えられる。注入支援システム200は、流動電流計210と、pH補正部220と、注入支援装置250と、提示装置260とを備える。制御部252は、pHと流動電流値との関係を示す式(1)に基づいて、pH補正値を決定する。補正された流動電流値は、式(11)によって表される。
補正された流動電流値=測定された流動電流値+ΔZpH …(11)
以上のように、第5の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、pH補正値に基づいて、流動電流値を補正する。
これによって、第5の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、原水の導電率が5mS/m程度と小さい浄水場や、導電率の変化が少ない浄水場で、水質パラメータが変化した場合でも、凝集剤100の注入量又は注入率の決定を支援することができる。第5の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、導電率計を設置していない浄水場で、水質パラメータが変化した場合でも、凝集剤の注入量又は注入率の決定を支援することができる。第5の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、導電率の補正式を作成するために、調整員が現地で水処理を調整する期間を削減することができる。第5の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、イニシャルコストを削減することができる。第5の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、導電率計31の設置コストを削減することができる。
(第6の実施形態)
第6の実施形態では、注入支援システム200がpH補正部220を備えない点が、第4の実施形態と相違する。第6の実施形態では、第4の実施形態との相違点についてのみ説明する。
図14は、注入支援装置250を備える水処理システム1の構成の第5例を示す図である。第6の実施形態では、水処理システム1は、「水処理システム1e」という。接触池30には、導電率計31と、濁度計34とが備えられる。混和池40には、混合装置41が備えられる。
制御部252は、原水のpH値がほぼ一定に維持されている場合、導電率と流動電流値との関係を示す式(9)に基づいて、ECt補正値を決定する。補正された流動電流値は、式(12)によって表される。
補正された流動電流値=測定された流動電流値+ΔZEC−t …(12)
以上のように、第6の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、ECt補正値に基づいて、流動電流値を補正する。
これによって、第6の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、原水の導電率の変化が大きい浄水場で、水質パラメータが変化した場合でも、凝集剤100の注入量又は注入率の決定を支援することができる。
(第7の実施形態)
第7の実施形態では、注入支援システム200が取得部270を備える点が、第2の実施形態と相違する。第7の実施形態では、第2の実施形態との相違点についてのみ説明する。
図15は、注入支援装置250を備える水処理システム1の構成の第6例を示す図である。第7の実施形態では、水処理システム1は、「水処理システム1f」という。注入支援システム200は、流動電流計210と、注入支援装置250と、提示装置260と、取得装置300とを備える。取得装置300は、pH補正部220と、導電率補正部230と、水温補正部240と、取得部270とを備える。
取得部270は、キーボードやタッチパネル等の操作デバイスを備える。タッチパネルは、液晶ディスプレイと一体でもよい。操作デバイスは、運転員による操作に応じて、運転員が選択した注入量又は注入率を、制御部252に出力する。操作デバイスは、凝集剤100の注入量又は注入率の候補を定める式に関する値を取得する。例えば、操作デバイスは、運転員による操作によって運転員が指定した値(定数)を、制御部252に出力する。運転員が指定した値(定数)は、例えば、傾きKpHの値、傾きKECの値である。運転員が指定した値は、例えば、傾きKtの値、傾きKEC−pHの値である。運転員が指定した値は、例えば、傾きKEC−tの値である。運転員が指定した値は、例えば、標準状態における水質パラメータの値である。標準状態における水質パラメータの値は、例えば、標準状態におけるpH値pHm、標準状態における導電率ECm、標準状態における水温tmである。
取得部270は、通信装置でもよい。取得部270は、パーソナルコンピュータやタブレット端末による遠隔操作によって、運転員が指定した値を取得してもよい。すなわち、取得部270は、通信によって値を取得してもよい。
以上のように、第7の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、運転員が指定した値に基づいて、流動電流値を補正する。すなわち、制御部252は、取得部270が取得した値と、取得装置300の補正部が補正した流動電流値とに基づいて、凝集剤100の注入量又は注入率の候補を決定する。
これによって、第7の実施形態の注入支援装置250及び注入支援システム200は、水質パラメータが著しく変化した場合でも、運転員が指定した値に基づいて凝集剤100の注入量又は注入率の決定を支援することができる。
以上述べた少なくともひとつの実施形態によれば、水質パラメータに基づいて流動電流値を補正する補正部を持つことにより、採取された水の水質パラメータが変化した場合でも、凝集剤の注入量又は注入率の決定を支援することができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。