JP2017017897A - 埋込磁石同期電動機の制御装置 - Google Patents
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1.埋込磁石を備えた3相の同期電動機を制御対象とし、該同期電動機に接続された電力変換回路を操作する埋込磁石同期電動機の制御装置において、前記電力変換回路の3つの出力端子のうちの1つが前記同期電動機の1つの端子に正常に電圧を印加できない異常が生じたか否かを判定する異常判定処理部と、前記異常判定処理部によって異常が生じたと判定される場合、前記電力変換回路を操作することによって、回転角度を独立変数とする正接関数の従属変数の値にd軸電流を制御する正接処理部と、を備え、前記正接処理部は、前記同期電動機を流れるd軸電流に応じたリラクタンストルクがマグネットトルクとは逆極性となるときにおける前記リラクタンストルクの絶対値が前記マグネットトルクに一致する値以下である場合に前記正接関数の従属変数の値に前記d軸電流を制御する。
転舵輪を転舵させるトルクを生成する同期電動機に接続される電力変換回路に上記異常が生じる場合、転舵輪を転舵させるトルクが不足する事態が懸念される。一方、異常時においても同期電動機を駆動する場合には、同期電動機が意図せずして回転を妨げるトルクを生成するように制御され、ひいては転舵輪の転舵が適切になされないことが懸念される。この点、上記構成では、同期電動機が意図せずして回転を妨げるトルクを生成するように制御される事態が生じることを抑制することができることから、転舵輪を転舵させるトルクを生成する同期電動機に適用して好適である。
以下、埋込磁石同期電動機の制御装置にかかる第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
電流指令値設定部70は、トルクTrqおよび車速Vに基づき、d軸の電流指令値id*およびq軸の電流指令値iq*を設定する。ここで、電流指令値id*,iq*は、インバータINVを流れる電流iu,iv,iwが許容最大値Imax以下となるように設定されている。また、電流指令値設定部70は、正常時には、d軸の電流指令値id*をゼロに設定し、q軸の電流指令値iq*については、トルクTrqおよび車速Vに基づき可変設定する。ここで、トルクTrqおよび車速Vは、ステアリング10の操作をアシストするアシストトルクの目標値を定めるパラメータである。そして、q軸の電流指令値iq*は、アシストトルクの目標値に応じて可変設定される。一方、dq変換部72は、電流iu,iv,iwをdq軸上の電流id,iqに変換する。
図4に示す一連の処理においては、電流指令値設定部70は、まず、U相の導通不良異常時であるか否かを判定する(S20)。そして、電流指令値設定部70は、U相の導通不良異常時であると判定する場合(S20:YES)、電流指令値id*,iq*を、U相の導通不良異常時のものに設定する(S22)。ここでは、図5(a)に示す角度領域θ1〜θ2および角度領域θ3〜θ4を除いた角度領域A1,A2,A3からなる規定角度領域Aにおいて、q軸の電流指令値iq*については、トルクTrqおよび車速Vに基づき正常時と同様に設定する。また、規定角度領域Aにおいては、d軸の電流指令値id*を、回転角度θを独立変数とする正接関数の従属変数の値「iq*・tanθ」に設定する。ここで、規定角度領域Aは、電流指令値id*,iq*を上記のように設定した場合に、電流iv,iwが、許容最大値Imax以下となる領域である。
iv=iq*/{(√2)・cosθ} …(c1)
iw=−iq*/{(√2)・cosθ} …(c2)
したがって、上記(c1)の電流ivを許容最大値Imaxとし、回転角度θを「θ1」とすることにより、θ1が以下の式(c3)として定義される。
同様、上記(c2)の電流iwを許容最大値Imaxとし、回転角度θを「θ2」とすることにより、θ2が以下の式(c3)として定義される。
さらに、0〜2πの間において正接関数がゼロとなるのが、0とπとであることに鑑みれば、θ3,θ4は、以下の式(c5),(c6)によって定義される。
θ4=2π−θ1 …(c6)
なお、角度領域θ1〜θ2と角度領域θ3〜θ4とにおいては、電流iv,iwの絶対値が許容最大値Imaxで固定される制御を実行する。したがって、規定角度領域Aにおけるd軸電流の最大値idmaxは、以下の式(c7)となる。
なお、図4のステップS22の処理が完了する場合、この一連の処理は一旦終了される。ちなみに、制御装置50は、V相やW相の導通不良異常時においては、d軸の電流指令値id*の位相をずらすことにより、同様の制御を実行する。
制御装置50は、U相に導通不良異常が生じたと判定する場合、図5(a)に示す態様にて、角度領域θ1〜θ2と角度領域θ3〜θ4とを除いた規定角度領域Aにおいて、d軸の電流指令値id*を正接関数値に従って変化させる。これにより、図5(b)に示すように、規定角度領域Aにおいては、マグネットトルクTmを一定値とすることができる。
したがって、「φ+(Ld−Lq)・idmax」がゼロ以上となる同期電動機34の場合、上記の式(c8)から、トルクTをゼロ以上とすることができる。
(1)「φ+(Ld−Lq)・idmax」がゼロ以上となる同期電動機34において、導通不良異常時にidmaxとなるまでd軸の電流指令値id*を正接関数値に応じて変化させた。これにより、同期電動機34が意図せずして回転を妨げるトルクを生成するように制御される事態が生じることを抑制しつつ同期電動機34を駆動することができる。
T=p・iq*・{φ+(Ld−Lq)・iq*・tanθ} …(c9)
これに対し、正常な2相の電流を正弦波形状に制御する場合には、マグネットトルクTmは、正弦波形状の電流の位相Δを用いると、以下の式(c10)となる。
したがって、マグネットトルクTmが{1+sin(2θ+Δ)}の因子によって周期的に変動し、最低値はゼロとなる。このため、特に、誘起電圧定数φの絶対値が「Ld−Lq」の絶対値よりも大きい場合等には、正弦波形状に電流を制御する場合と比較すると、規定角度領域Aにおいて本実施形態のように制御する場合の方がトルクTを確保しやすく、これにより、ステアリング10の操作をアシストするアシスト力を生成しやすい。
以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図7に、U相導通不良時の処理の一部を示す。
iw*=−I・cos(θ+Δ)…(c12)
なお、電流指令値iv*,iw*の振幅Iは、トルクTrqおよび車速Vに応じて可変設定される。
以下、第3の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
すなわち、正接処理によって同期電動機34のトルクがゼロ以上となる領域が規定角度領域Aとされる。ここで、正接処理において、d軸の電流指令値id*は、「iq*・tanθ」とされるため、d軸の電流id1は、回転角度θのみならずq軸の電流iqに依存する。このため、規定角度領域Aは、q軸の電流指令値iq*に応じて可変設定されることとなる。
θ2=π−θ1 …(c15)
θ3=2π−θ2 …(c16)
θ4=2π−θ1 …(c17)
そして、電流指令値設定部70では、回転角度θに応じて電流指令値id*を設定する(S46)。ただし、規定角度領域Aから外れる場合には、電流iv,iwの絶対値が許容最大値Imaxで固定される制御を実行する。
なお、上記実施形態の各事項の少なくとも1つを、以下のように変更してもよい。以下において、「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項と上記実施形態における事項との対応関係を符号等によって例示した部分があるが、これには、例示した対応関係に上記事項を限定する意図はない。なお、「課題を解決するための手段」の欄に記載した設定処理部は、ステップS44の処理に対応する。
上記実施形態では、異常判定処理部を、図3のステップS10〜S16を実行する制御装置50によって実現したが、これに限らない。たとえば、インバータINVの出力端子の電圧を検出する電圧センサの検出値が定常的にゼロである場合に、異常である旨判定するものであってもよい。
上記実施形態では、正接処理部を、dq軸における電流フィードバック制御を前提とし、d軸の電流指令値id*を正接関数値に設定する処理を実行する制御装置50としたが、これに限らない。たとえば、図7に示したような相電流フィードバック制御を前提としてもよい。この場合、たとえば、U相に導通不良が生じた場合には、V相、およびW相の電流指令値iv*,iw*を、上記の式(c1),(c2)に鑑み、以下の式(c18),(c19)に設定すればよい。
iw*=−iq*/(√2)cosθ
また、相電流フィードバック制御としては、電流指令値iv*(iw*)と電流iv(iw)との差を入力とするPI制御器を用いるものに限らず、たとえば、周知の瞬時電流値制御を行ってもよい。すなわち、電流iv(iw)が「iv*(iw*)+hys/2」を超えるか、「iv*(iw*)−hys/2」を下回るかに応じてスイッチング状態を切り替えることによって、電流指令値iv*(iw*)を中心とする所定のヒステリシス幅hys内に電流を制御してもよい。
上記実施形態では、正弦波処理部を、図7に示した処理を実行する制御装置50としたが、これに限らない。たとえば、フィードバック制御部94,98に代えて、瞬時電流値制御を実行してもよい。すなわち、電流iv(iw)が「iv*(iw*)+hys/2」を超えるか、「iv*(iw*)−hys/2」を下回るかに応じてスイッチング状態を切り替えることによって、電流指令値iv*(iw*)を中心とする所定のヒステリシス幅hys内に電流を制御してもよい。
上記実施形態では、切替処理部を、ステップS30〜S34を実行する制御装置50としたが、これに限らない。たとえば、1相が導通不良となっている際には、車速Vに応じたきめ細かな制御を断念し、検出されたトルクTrqのみに基づき、q軸の電流指令値iq*を設定してもよい。また、正接処理を実行する際のd軸の電流の最大値idmaxを、「iq*・tanθ1」とし、「φ+(Ld−Lq)・idmax」がゼロ以上である場合に正接処理を実行するものに限らない。たとえば、正接処理として、図9に示した処理を実行すると仮定した場合のトルクリップルが、正弦波処理を実行した場合のトルクリップルよりも小さくなる場合に、正接処理を選択し、大きくなる場合に正弦波処理を選択するものであってもよい。
上記実施形態では、正常時のd軸の電流指令値id*をゼロとしたが、これに限らない。たとえば、電流指令値id*を負として且つ、アシストトルクの目標値が大きいほど絶対値を大きく設定するなら、最小の電流で生成されるトルクを最大とする最小電流最大トルク制御を実現することができる。
上記実施形態では、電力変換回路をインバータINVにて構成したが、これに限らない。たとえば、スイッチング素子S¥#として、MOS電界効果トランジスタに代えて、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を用いてもよい。また、バッテリ40を直接の直流電圧源とすることも必須ではなく、たとえばインバータINVの入力端子間にコンデンサを接続し、これを直流電圧源としてもよい。この場合において、たとえば、同期電動機34を、Y結線として、中点を接地する場合、インバータINVの操作によって、コンデンサの電圧をバッテリ40の電圧に対して昇圧して利用することもできる。
ステアリング10の操作をアシストするアシストトルクを生成するものに限らず、ステアリング10と転舵輪26との間の動力伝達が遮断された状態において、転舵輪26を転舵させるものであってもよい。もっとも、転舵輪26を転舵させるものに適用されること自体必須ではない。
Claims (6)
- 埋込磁石を備えた3相の同期電動機を制御対象とし、該同期電動機に接続された電力変換回路を操作する埋込磁石同期電動機の制御装置において、
前記電力変換回路の3つの出力端子のうちの1つが前記同期電動機の1つの端子に正常に電圧を印加できない異常が生じたか否かを判定する異常判定処理部と、
前記異常判定処理部によって異常が生じたと判定される場合、前記電力変換回路を操作することによって、回転角度を独立変数とする正接関数の従属変数の値にd軸電流を制御する正接処理部と、を備え、
前記正接処理部は、前記同期電動機を流れるd軸電流に応じたリラクタンストルクがマグネットトルクとは逆極性となるときにおける前記リラクタンストルクの絶対値が前記マグネットトルクに一致する値以下である場合に前記正接関数の従属変数の値に前記d軸電流を制御する埋込磁石同期電動機の制御装置。 - 前記同期電動機は、前記電力変換回路に流れる電流を許容最大値以下とする条件の下、前記正接処理部による処理によってd軸電流を最大値とした場合に、リラクタンストルクの絶対値がマグネットトルクの絶対値に一致する値以下となる請求項1記載の埋込磁石同期電動機の制御装置。
- 前記3つの出力端子のうち前記異常が生じたと判定された出力端子以外の2つの出力端子と前記同期電動機との間を流れる電流を正弦波形状の電流に制御する正弦波処理部と、
前記同期電動機に要求されるトルクに応じて前記正接処理部による処理と前記正弦波処理部による処理とのいずれを実行するかを切り替える切替処理部と、を備える請求項1記載の埋込磁石同期電動機の制御装置。 - 前記正接処理部は、前記電力変換回路に流れる電流が閾値以下となる回転角度領域である規定角度領域において、回転角度を独立変数とする正接関数の従属変数の値に前記d軸電流を制御するものであり、
前記切替処理部は、前記規定角度領域において前記正接処理部による処理がなされるとリラクタンストルクがマグネットトルクとは逆極性であるときにおける前記リラクタンストルクの絶対値が前記マグネットトルクに一致する値を上回る場合に、前記正弦波処理部による処理に切り替える請求項3記載の埋込磁石同期電動機の制御装置。 - 前記同期電動機を流れるd軸電流に応じたリラクタンストルクがマグネットトルクとは逆極性となるときのリラクタンストルクの絶対値がマグネットトルクに一致する値以下となる回転角度領域である規定角度領域を設定する設定処理部を備え、
前記正接処理部は、前記規定角度領域において、回転角度を独立変数とする正接関数の従属変数の値に前記d軸電流を制御する請求項1記載の埋込磁石同期電動機の制御装置。 - 前記同期電動機は、車両の転舵輪を転舵させるトルクを生成する請求項1〜5のいずれか1項に記載の埋込磁石同期電動機の制御装置。
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