(第一実施形態)
第一実施形態に係る厚みすべり水晶素子は、安定した機械振動を得ることができ、電子機器等の基準信号を発信するためのものである。第一実施形態に係る厚みすべり水晶素子100(以下、「厚みすべり」を省略して「水晶素子100」ということがある。)は、図1〜図3に示したように、平板部111および第一柱部112aからなる水晶片110と、励振電極部121、引出部122および配線部123からなる金属パターン120と、から主に構成されている。
水晶片110は、図1〜図3に示したように、略直方体形状の平板部111と、平板部111の一方の主面の所定の一辺の縁部に沿って設けられている第一柱部112aと、から構成されており、平板部111と第一柱部112aとが一体的に形成されている。
ここで、図面に合わせて、平板部111の互いに対向している二面であって、面積の広い面を、平板部111の主面とし、平板部111の主面のうち第一柱部112aが設けられている平板部111の一方の主面を、平板部111の下面とする。また、平板部111の下面と反対側を向く平板部111の面を、平板部111の上面とする。また、平板部111の上面を、水晶片110の上面とする。
平板部111は、安定した機械振動をする圧電材料が用いられ、例えば、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有している水晶部材が用いられている。平板部111は、図1〜図3に示したように、略直方体形状となっている。このとき、平板部111の主面は、X軸とZ軸とに平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに回転させた面と平行となっている。例えば、平板部111の主面は、X軸とZ軸とに平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに約37°回転させた面と平行となっている。また、平板部111の両主面には、図1および図2に示したように、一対の励振電極部121が設けられている。
第一柱部112aは、図1〜図3に示したように、略直方体形状となっており、平板部111の下面の所定の一辺に沿って設けられている。また、第一柱部112aは、平板部111と一体的に形成されている。また、第一柱部112aの下面、具体的には、平板部111と接している第一柱部112aの面と反対側を向く第一柱部112aの面、に一対の引出部122が設けられており、第一実施形態に係る水晶素子100を水晶デバイスとして用いる場合、導電性接着剤(図示せず)によって基板部(図示せず)上に第一実施形態に係る水晶素子100を実装するために用いられる。
このように、水晶片110は、略直方体形状の平板部111の下面の所定の一辺に沿って、第一柱部112aが設けられた構成となっている。従って、平板部111の所定の一辺に垂直な向きで水晶片110を断面視すると、平板部111と第一柱部112aとが片持ち梁に似た構造となっているといえる。また、水晶片110は、平板部110の両主面に設けられている一対の励振電極部121に電圧が印加されると、一対の励振電極部121に挟まれている平板部111の一部が、逆圧電効果および圧電効果により振動を開始する構成となっている。このとき、平板部111は、厚みすべり振動を主振動として、その他に屈曲振動も同時に生じている状態となっている。
ここで、図3に示したように、水晶片110の下面を平面視したとき、第一柱部112aが沿って設けられている平板部111の所定の一辺を第一の辺H11とし、平板部111の所定の一辺(第一の辺H11)と対向する平板部111の所定の他の一辺を第二の辺H12とする。また、平板部111の所定の他の一辺(第二の辺H12)を向く第一柱部112aの辺を第三の辺H13とする。
水晶片110は、水晶片110(または、水晶素子100)の下面を平面視して、第一柱部112aが沿って設けられている平板部111の所定の一辺(第一の辺H11)と対向する平板部111の所定の他の一辺(第二の辺H12)と、平板部111の所定の他の一辺を向く第一柱部112aの辺(第三の辺H13)との距離が、一対の励振電極部121に電圧を印加したときに平板部111で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。
このように、第二の辺H12と第三の辺H13との距離を、一対の励振電極部121に電圧を印加したときに、平板部111で生じる屈曲振動の波長の整数倍となるようにすることで、平板部111の所定の一辺に垂直な向き(X軸に平行な向き)で水晶片110を断面視したとき、第一柱部112aが設けられていない平板部111の両端部に、屈曲振動の節が位置するようにすることができる。従って、第一柱部112aが設けられていない平板部111の両端部では、屈曲振動による変位を低減させることが可能となる。この結果、第一柱部112aにおける屈曲振動の反射によるへの影響を抑制する状態にすることができ、屈曲振動が主振動である厚みすべり振動へ与える影響も常に一定な状態にすることが可能となり、第一実施形態に係る水晶素子100の周波数が不安定となる周波数安定度の悪化や、第一実施形態に係る水晶素子100の等価直列抵抗値が大きくなるといった電気的特性の悪化を低減させることができる。
また、水晶片110は、第二の辺H12と第三の辺H13との距離を、一対の励振電極部121に電圧を印加したときに、平板部111で生じる屈曲振動の波長の整数倍となるようにすることで、平板部111の所定の一辺に垂直な向き(X軸に平行な向き)で水晶片110を断面視したとき、第一柱部112aが設けられていない平板部111の両端部に、屈曲振動の節が位置するようにすることができる。従って、第一柱部112aが設けられていない平板部111の両端部では、屈曲振動による変位を低減させることが可能となり、屈曲振動により変位することで生じる、平板部111と第一柱部112aとの境界部分への応力を低減させることができる。このため、屈曲振動による変位が原因で生じる、水晶素子100の破損を低減させることが可能となる。
また、水晶片110は、第一柱部112aが沿って設けられている平板部111の所定の一辺(第一の辺H11)に平行な第一柱部112aの二辺間の距離が、平板部111で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。従って、図3に示したように、第一実施形態に係る水晶素子100の水晶片110の下面を平面視すると、第一柱部112aが沿って設けられている平板部111の所定の一辺(第一の辺H11)と、平板部111の所定の一辺と対向する平板部111の所定の他の一辺(第二の辺H12)を向く第一柱部112aの辺との距離が、平板部111で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっているといえる。また、別の観点では、平板部111の所定の一辺に垂直な向き(X軸に平行な向き)での平板部111の両端部の距離が、平板部111で生じる屈曲振動の波か数の整数倍となっているといえる。
このようにすることで、一対の励振電極部121に電圧を印加したときに、平板部111の所定の一辺に垂直な向き(X軸に平行な向き)で水晶片110を断面視したとき、平板部111の両端部に平板部111で生じる屈曲振動の節が位置するようにすることができる。従って、第一柱部112aが設けられている平板部111の所定の一辺側まで屈曲振動をしたとしても、平板部111の所定の一辺を含む平板部111の側面での屈曲振動の反射を抑制することが可能となる。この結果、第一柱部112aにおける屈曲振動の反射による影響を抑制する状態にすることができ、屈曲振動が主振動である厚みすべり振動へ与える影響も常に一定な状態にすることが可能となり、第一実施形態に係る水晶素子100の周波数が不安定となる周波数安定度の悪化や、第一実施形態に係る水晶素子100の等価直列抵抗値が大きくなるといった電気的特性の悪化を、低減させることができる。
また、第一実施形態に係る水晶素子100の水晶片110は、図2および図3に示したように、平板部111の所定の一辺(第一の辺H11)が、この第一の辺H11と平行な第一柱部112aの辺と同じ長さとなっている。このようにすることで、水晶片110(または水晶素子100)が外部から平板部111の主面に対して垂直な向きで力が加わった場合に、平板部111の所定の一辺と平行な向きでの水晶片110を断面視して、平板部111が変位する量を、より低減させることができ、平板部111が変位することにより周波数安定度の悪化や、電気的特定の悪化をより低減させることが可能となる。
ここで、このような水晶片110を、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて形成する形成方法について説明する。まず、両主面が平板部111の両主面と同じカットアングルとなっている水晶ウエハを用意する。次に、この水晶ウエハの両主面に、金属膜、具体的には、クロム層を下地と金層からなる金属膜を形成し、金属膜上に、感光性レジストを塗布し、所定のパターンに露光し、現像させる。このとき、水晶ウエハの上面を平面視すると、平板部111となる部分には感光性レジストが残留しており、水晶ウエハの下面を平面視すると、第一柱部112aとなる部分には感光性レジストが残留している。その後、露出している金属膜を剥離させ、水晶ウエハの一部を露出した状態にさせ、所定のエッチング溶液に浸漬させ、水晶ウエハを所定のパターンでエッチングする。最後に、水晶ウエハの主面上に残留している、感光性レジストおよび金属膜を剥離させる。このようにして、水晶片110の一部が連結されている水晶ウエハを形成する。このような水晶ウエハは、そのまま水晶片110となる部分を個片化して用いてもよいし、励振電極部121、引出部122および配線部123からなる金属パターン120を水晶ウエハの状態で形成してもよい。
また、水晶片110には、図1および図2に示したように、励振電極部121、引出部122および配線部123からなる金属パターン120が形成されている。金属パターン120は、水晶片110に電圧を印加させ、平板部111の一部を振動させるためのものである。
励振電極部121は、一対となっており、平板部111の両主面に互いが対向するように設けられており、励振電極部121に挟まれている平板部111の一部を所定の周波数で振動させるためのものである。また、励振電極部121は、例えば、図1および図2に示したように、水晶素子100を平面視して、円形形状または楕円形状となっている。
引出部122は、一対となっており、水晶片110の外部から励振電極部121へ電圧を印加するためのものであり、また、水晶素子100を水晶デバイスとして用いる場合に、水晶素子100を基板部(図示せず)の上面に実装するためのものである。また、引出部122は、例えば、第一柱部112aの下面、具体的には、平板部111と第一柱部112aとが接している面と反対側を向く第一柱部112aの面に設けられている。このとき、図2に示したように、一対の引出部122は、平板部111の所定の一辺(第一の辺H11)に沿って二つ並んで設けられている。
配線部123は、励振電極部121と引出部122とを電気的に接続するためのものであり、水晶片110の表面に沿って設けられている。
ここで、第一実施形態に係る水晶素子100の動作について説明する。水晶素子100は、水晶片110の第一柱部112aに設けられている一対の引出部122に電圧が印加されると、配線部123を介して、水晶片110の平板部111に設けられている一対の励振電極部121に電圧が印加される構成となっている。一対の励振電極部121に電圧が印加されると、一対の励振電極部121には、異なる電荷が蓄積され、逆圧電効果により、一対の励振電極部121に挟まれている平板部111の一部に歪みが生じ、変形する。その結果、平板部111は、元の姿に戻ろうとするため、圧電効果により一対の励振電極部121に最初に蓄積された電荷と反対の電荷が蓄積される。つまり、一対の励振電極部121に電圧が印加されると、圧電効果および逆圧電効果により、一対の励振電極部121に挟まれている平板部111の一部が振動することとなる。従って、一対の励振電極部121に交流電圧を印加すると、一対の励振電極部121に異なる電荷が交互に蓄積され交互に変形することとなり、一対の励振電極部121に挟まれている平板部111の一部を振動させることができる。このとき、一対の励振電極部121に挟まれている平板部111の一部は、厚みすべり振動を主振動として振動するが、同時に、屈曲振動も生じている。厚みすべり振動は、X軸に平行な向きのすべりが主力変位であるが、屈曲振動も振動変位がX軸に平行な向きとなっている。このため、屈曲振動と厚みすべり振動は、結合しやすく、厚みすべり振動と屈曲振動とが結合すると、水晶素子100の周波数が変化する場合や等価直列抵抗値が変化する場合がある。
次に、第一実施形態に係る水晶素子100の寸法について説明する。水晶素子100は、平面視して、短辺(平板部111の下面の所定の一辺に平行な辺)の長さが、0.6〜2.8mmとなっており、長辺(平板部111の下面の所定の一辺に垂直な辺)の長さが、0.8〜4.0となっている。従って、平板部111は、平面視して、短辺(平板部111の下面の所定の一辺に平行な辺)の長さが、0.6〜2.8mmとなっており、長辺(平板部111の下面の所定の一辺に垂直な辺)の長さが、0.8〜4.0mmとなっている。平板部111は、上下方向の厚みが、5〜と83μmなっている。また、第一柱部112aは、水晶片110の下面を平面視して、平板部111の下面の所定の一辺に平行な辺の長さが、0.6〜2.8mmとなっており、平板部111の下面の所定の一辺に垂直な辺の長さが、0.13〜1.5となっている。第一柱部112aは、上下方向の厚みが、30〜100μmとなっている。
以上のように、第一実施形態に係る水晶素子100は、略直方体形状の平板部111と、平板部111の下面の所定の一辺に沿って設けられている略直方体形状の第一柱部112aと、からなる水晶片110と、平板部111の上下面に設けられている励振電極部121と、第一柱部112aの下面に設けられている引出部122と、励振電極部121と引出部122とを電気的に接続している配線部123と、を備え、水晶片110の下面を平面視して、所定の一辺(第一の辺H11)と対向する平板部111の所定の他の一辺(第二の辺H12)と、所定の他の一辺(第二の辺H12)を向く第一柱部112aの辺(第三の辺H13)との距離が、平板部111で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。このように、第一実施形態に係る水晶素子100は、第二の辺H12と第三の辺H13との距離を、一対の励振電極部121に電圧を印加したときに、平板部111で生じる屈曲振動の波長の整数倍となるようにすることで、平板部111の所定の一辺に垂直な向き(X軸に平行な向き)で水晶片110を断面視したとき、第一柱部112aが設けられていない平板部111の両端部に、屈曲振動の節が位置するようにすることができる。従って、第一実施形態に係る水晶素子100は、第一柱部112aが設けられていない平板部111の両端部では、屈曲振動による変位を低減させることが可能となる。この結果、第一実施形態に係る水晶素子100は、第一柱部112aにおける屈曲振動の反射による影響を抑制した状態にすることができ、主振動である厚みすべり振動へ屈曲振動が与える影響を抑えることが可能となり、第一実施形態に係る水晶素子100の周波数が不安定となる周波数安定度の悪化や、第一実施形態に係る水晶素子100の等価直列抵抗値が大きくなるといった電気的特性の悪化を、低減させることができる。
また、第一実施形態に係る水晶素子100は、水晶片110の下面を平面視して、平板部111の所定の一辺(第一の辺H11)に平行な第一柱部112aの二辺間の距離が、平板部111で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。このようにすることで、第一実施形態に係る水晶素子100は、一対の励振電極部121に電圧を印加したときに、平板部111の所定の一辺に垂直な向き(X軸に平行な向き)で水晶片110を断面視したとき、平板部111の両端部に平板部111で生じる屈曲振動の節が位置するようにすることができる。従って、第一実施形態に係る水晶素子100は、第一柱部112aが設けられている平板部111の所定の一辺側まで屈曲振動をしたとしても、平板部111の所定の一辺を含む平板部111の側面での屈曲振動の反射を抑制することが可能となる。この結果、第一柱部112aによる屈曲振動への影響を常に一定な状態にすることができ、屈曲振動が主振動である厚みすべり振動へ与える影響を抑制することが可能となり、第一実施形態に係る水晶素子100の周波数が不安定となる周波数安定度の悪化や、第一実施形態に係る水晶素子100の等価直列抵抗値が大きくなるといった電気的特性の悪化を、低減させることができる。
(変形例)
第一実施形態の変形例に係る厚みすべり水晶素子200(以下、「厚みすべり」を省略して「水晶素子200」ということがある。)は、図4〜図6に示したように、水晶片210の平板部211に貫通穴213が形成されている点で、第一実施形態と異なる。
第一実施形態の変形例に係る水晶素子200は、図4および図5に示したように、平板部211および第一柱部212aからなる水晶片210と、励振電極部221、引出部222および配線部223からなる金属パターン220と、から主に構成されている。
第一実施形態の変形例に係る水晶片210は、図4〜図6に示したように、略直方体形状の平板部211と、平板部211の一方の主面の所定の一辺の縁部に沿って設けられている第一柱部212aと、から構成されており、平板部211と第一柱部212aとが一体的に形成されている。
平板部211は、第一実施形態と同様となっており、安定した機械振動をする圧電材料が用いられ、例えば、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有している水晶部材が用いられる。平板部211は、図4〜図6に示したように、略直方体形状となっている。平板部211の両主面は、例えば、X軸とZ軸とに平行な面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに約37°回転させた面と平行となっている。また、平板部211の両主面には、図4および図5に示したように、両主面に一対の励振電極部221が設けられている。
第一柱部212aは、図4〜図6に示したように、第一実施形態と同様に、略直方体形状となっており、平板部211の下面の所定の一辺(第一の辺H21)に沿って設けられている。また、第一柱部212aは、平板部211と一体的に形成されている。また、第一柱部212aの下面、具体的には、平板部211と接している第一柱部212aの面と反対側を向く第一柱部212aの面に、一対の引出部222が設けられており、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200を水晶デバイスとして用いる場合、導電性接着剤(図示せず)によって基板部(図示せず)上に第一実施形態の変形例に係る水晶素子200を実装するために用いられる。
貫通穴213は、水晶素子200の下面を平面視して、第一柱部212aと励振電極部221との間に形成されている。具体的には、貫通穴213は、図5および図6に示したように、水晶片210(または水晶素子200)の下面を平面視して、第一柱部212aに沿うように、平板部211に形成されている。このように、貫通穴213を、第一柱部212aと励振電極部221との間に形成することで、一対の励振電極部221に電圧を印加したときに、振動変位の大きい平板部211の一部をより独立させた状態に近づけることができる。具体的には、振動変位の大きい平板部211の一部が、他と接している(連続している)部分をより少なくなるようにすることができる。この結果、第一柱部212aによる振動阻害を低減させることができ、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
ここで、振動変位の大きい平板部211の一部とは、一対の励振電極部221に挟まれている平板部211の一部、および、一対の励振電極部221に挟まれている平板部211の一部の周辺部を指しており、主振動である厚みすべり振動の振動変位の大きい部分のことを指している。
また、貫通穴213は、水晶片210の上面または下面を平面視して、その開口部が略矩形形状となっている。このとき、特に図面では図示しないが、貫通穴213の開口部の四隅は円弧形状となっている。このように、貫通穴213の開口部の四隅を円弧形状にし、貫通穴213の開口部に丸みをもたせることで、水晶素子200の外部から応力が加わったとき、貫通穴213の開口部に向かう向きに加わる応力が、開口部の四隅に集中することを低減させることが可能となる。この結果、貫通穴213の開口部からクラック等の破損が生じることを低減させることができる。
ここで、図6に示したように、水晶片210の下面を平面視したとき、第一柱部212aが沿って設けられている平板部211の所定の一辺を第一の辺H21とし、平板部211の所定の一辺(第一の辺H21)と対向する平板部211の所定の他の一辺を第二の辺H22とする。また、平板部211の所定の他の一辺(第二の辺H22)を向く第一柱部212aの辺を第三の辺H23とする。また、貫通穴213の開口部の辺であって、平板部211の所定の一辺(第一の辺H21)に平行な辺のうち、第一柱部212a側を向く辺を第四の辺H24aとし、平板部211の所定の一辺(第一の辺H21)に平行な辺のうち、平板部211の所定の他の一辺(第二の辺H22)側を向く辺を第五の辺H24bとする。
また、振動変位の大きい平板部211の一部、具体的には、一対の励振電極部221に挟まれている平板部211の一部、および、一対の励振電極部221に挟まれている平板部211の一部の周辺部を、振動部(図示せず)とする。振動部は、図6では、第二の辺H22と第五の辺H25との間の平板部211の矩形形状の部分となる。
このように、水晶片210は、略直方体形状の平板部211の所定の一辺(第一の辺H21)に沿って、第一柱部212aが設けられた構成となっている。従って、平板部211の所定の一辺に垂直な向きで水晶片210を断面視すると、平板部211と第一柱部212aとが片持ち梁に似た構造となっているといえる。また、水晶片210は、平板部211の両主面に設けられている一対の励振電極部221に電圧が印加されると、一対の励振電極部221に挟まれている平板部211の一部が、逆圧電効果および圧電効果により振動を開始する構成となっている。このとき、平板部211は、厚みすべり振動を主振動として、その他に屈曲振動も同時に生じている状態となっている。
水晶片210は、水晶片210(または、水晶素子200)の下面を平面視して、第一柱部212aが沿って設けられている平板部211の所定の一辺(第一の辺H21)と対向する平板部211の所定の他の一辺(第二の辺H22)と、平板部211の所定の他の一辺(第二の辺H22)を向く第一柱部212aの辺(第三の辺H23)との距離が、一対の励振電極部221に電圧を印加したときに平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。
また、水晶片210は、水晶片210(または、水晶素子200)の下面を平面視して、第一柱部212aが沿って設けられている平板部211の所定の一辺(第一の辺H21)に平行な第一柱部212aの二辺間の距離が、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。従って、図6に示したように、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200の水晶片210の下面を平面視すると、第一柱部212aが沿って設けられている平板部211の所定の一辺(第一の辺H21)と、平板部211の所定の一辺と対向する平板部211の所定の他の一辺(第二の辺H22)を向く第一柱部212aの辺(第三の辺H23)の辺との距離が、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっているといえる。また、別の観点では、平板部211の所定の一辺に垂直な向き(X軸に平行な向き)での平板部211の両端部の距離が、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっているといえる。
このような構成は、第一実施形態に係る水晶素子100の水晶片110と同様であるため、第一実施形態の変形例で係る水晶素子200で用いる水晶片210は、第一実施形態に係る水晶素子100と同様の効果を奏するといえる。
また、このような水晶片210は、水晶素子200の下面を平面視して、第一柱部212aと励振電極部221との間に、開口部が略矩形形状の貫通穴213が形成されている。従って、このような水晶片210を用いた水晶素子200は、一対の励振電極部221に電圧が印加されたとき、振動変位の大きい平板部211の一部を、他と接している(連続している)部分をより少なくなるようにすることができ、第一柱部212aによる主振動である厚みすべり振動へ影響を低減させることが可能となる。この結果、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることができる。
また、このような水晶片210は、図5および図6に示したように、水晶片210(または、水晶素子200)の下面を平面視して、水晶片210に形成されている貫通穴213の開口部が略矩形形状となっており、第一柱部213aが沿って設けられている平板部211の所定の一辺(第一の辺H21)と対向する平板部211の所定の他の一辺(第二の辺H22)と、平板部211の所定の他の一辺(第二の辺H22)側を向く貫通穴213の開口部の辺(第五の辺H24b)との距離が、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。
このように第二の辺H22と第五の辺H24bとの距離を、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍とすることで、所定の一辺に垂直な方向(X軸に平行な方向)で水晶片を断面視したとき、平板部211の所定の他の一辺(第二の辺H22)と平板部211の所定の他の一辺(第二の辺H22)側を向く貫通穴213の開口部の辺(第五の辺H24b)との間の平板部211の一部(振動部)の両端を、屈曲振動の節となる位置にすることができる。このため、振動部の両端部において、屈曲振動により変位する量を低減させることができ、第二の辺H22を含む平板部211の側面での屈曲振動の反射を抑制しつつ、振動部に接している(連結している)部分による厚みすべり振動への影響を低減させることが可能となる。この結果、一対の励振電極部221に電圧を印加したとき、等価直列抵抗値が大きくなることを軽減しつつ、周波数を一定にすることが可能となる。
また、第一実施形態の変形例で用いる水晶片210は、水晶片210(または、水晶素子200)の下面を平面視して、平板部211の所定の一辺(第一の辺H21)に平行な貫通穴213の二辺間の距離が、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。言い換えると、水晶片210(または、水晶素子200)の下面を平面視して、第一柱部212a側を向く貫通穴213の開口部の辺(第四の辺H24a)と、平板部211の所定の他の一辺(第二の辺H22)を向く貫通穴213の開口部の辺(第五の辺H24b)と距離が、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。別の観点では、平板部211の所定の一辺に垂直な方向(X軸に平行な方向)の振動部の距離が、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。
このように、水晶片210(または、水晶素子200)の下面を平面視して、第二の辺H22と第五の辺H24bとの距離、つまり、X軸方向の振動部の距離を、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍にすることで、平板部211の所定の一辺に垂直な向き(X軸に平行な向き)で水晶片210を断面視した場合、振動部の両端部を屈曲振動の節となる位置にすることができる。このため、振動部の両端部での屈曲振動による変位を低減させることが可能となり、振動部での厚みすべり振動への影響を低減させることができる。
このような水晶片210は、水晶片210(または水晶素子210)の下面を平面視して、第一の辺H21と第二の辺H22との距離、第二の辺H22と第三の辺H23との距離、第二の辺H22と第五の辺H24bとの距離、第四の辺H24aと第五の辺H24bとの距離、および、第三の辺H23と第四の辺H24aとの距離が、一対の励振電極部221に電圧を印加したとき、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。従って、このような水晶片210は、上下方向の厚みが変わる場合、連続している部分等の振動の状態が変化する箇所において、平板部211で生じる屈曲振動の節となる部分が位置するようになっている。これにより、第一の辺H21、第二の辺H22、第三の辺H23、第四の辺H24aおよび第五の辺H24bのような振動の状態が変化する箇所において、屈曲振動の反射を抑制することができるため、厚みすべり振動と屈曲振動とが結合する状態を抑制することが可能となり、周波数が不安定となることを低減させることができる。
ここで、このような水晶片210を、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて形成する方法について説明する。まず、両主面が平板部211の両主面と同じカットアングルとなっている水晶ウエハを用意する。次に、この水晶ウエハの両主面に、金属膜、具体的には、クロム層と金層との積層構造となっている金属膜を形成し、この金属膜上に感光性レジストを塗布し、所定のパターンに露光し、現像させる。このとき、水晶ウエハの上面を平面視すると、貫通穴213となる部分に金属膜が露出しつつ、平板部211となる部分に感光性レジストが残留した状態となっており、水晶ウエハの下面を平面視すると、貫通穴213となる部分に金属膜が露出しつつ、第一柱部212aとなる部分に感光性レジストが残留した状態となっている。その後、露出している金属膜を剥離させ、水晶ウエハの一部を露出させ、所定のエッチング溶液に浸漬させ、水晶ウエハを所定のパターンでエッチングする。最後に、水晶ウエハの主面上に残留している感光性レジストおよび金属膜を剥離させる。このようにして、水晶片210の一部が連結されている水晶ウエハを形成する。このような水晶ウエハは、そのまま水晶片210となる部分を個片化しても用いてもよいし、励振電極部221、引出部222および配線部223からなる金属パターン220を水晶ウエハの状態で形成してもよい。
また、水晶片210には、図4および図5に示したように、励振電極部221、引出部222および配線部223からなる金属パターン220が形成されている。この金属パターン220は、配線部223の一部が、貫通穴213の内壁面に設けられている点で、第一実施形態の水晶素子200と異なっている。
金属パターン220は、水晶片220に電圧を印加させ、平板部211の一部を振動させるためのものである。励振電極部221は、一対となっており、平板部211の両主面に互いが対向するように設けられている。引出部222は、一対となっており、水晶片210の外部から励振電極部221へ電圧を印加するためのものであり、また、水晶素子200を水晶デバイスとして用いる場合に、水晶素子200を基板部(図示せず)の上面に図示するためのものである。また、引出部222は、例えば、第一柱部212aの下面、具体的には、平板部211と第一柱部212aとが接している面と反対側を向く第一柱部212aの面に設けられている。このとき、一対の引出部222は、水晶素子200の下面を平面視すると、図5に示したように、平板部211の所定の一辺(第一の辺H21)に沿って二つ並んで設けられている。
配線部223は、励振電極部221と引出部222とを電気的に接続するためのものであり、一端が励振電極部221に接続されており、他端が引出部222に接続されている。また、配線部223は、その一部が、貫通穴213の内壁面に設けられている。このように配線部223の一部を貫通穴213の内壁面に設けることで、貫通穴213の内壁面に設けない場合と比較して配線部223の長さを短くすることができる。このため、配線部223自身が有する電気抵抗を低減させることができ、水晶素子200の等価直列抵抗値をより小さくすることが可能となる。
次に、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200の寸法について説明する。水晶素子200は、水晶素子200の下面を平面視して、短辺(平板部211の下面の所定の一辺に平行な辺)の長さが、0.6〜2.8mmとなっており、長辺(平板部211の下面の所定の一辺に垂直な辺)の長さが、0.8〜4.0mmとなっている。従って、平板部211は、平面視して、短辺(平板部211の下面の所定の一辺に平行な辺)の長さが、0.6〜2.8mmとなっており、長辺(平板部211の下面の所定の一辺に垂直な辺)の長さが、0.8〜4.0mmとなっている。平板部211は、上下方向の厚みが、5〜83μmとなっている。また、第一柱部212aは、水晶片210の下面を平面視して、平板部211の下面の所定の一辺に平行な辺の長さが、0.6〜2.8mmとなっており、平板部211の下面の所定の一辺に垂直な辺の長さが、0.13〜1.5mmとなっている。第一柱部212aは、上下方向の厚みが、30〜100μmとなっている。また、貫通穴213の開口部は、水晶片210の下面を平面視して、略矩形形状となっており、平板部211の短辺の平行な辺が、0.3〜1.78mmとなっており、平板部211の長辺に平行な辺が、0.01〜0.12mmとなっている。また、貫通穴213の四隅は、半径0.005〜0.12mmのR面取りされた円弧形状となっている。
第一実施形態の変形例に係る水晶素子200は、略直方体形状の平板部211と、平板部211の下面の所定の一辺(第一の辺H21)に沿って設けられている略直方体形状の第一柱部212aと、からなる水晶片210と、平板部211の上下面に設けられている励振電極部221と、第一柱部212aの下面に設けられている引出部222と、励振電極部221と引出部222とを電気的に接続している配線部223と、を備え、水晶片210の下面を平面視して、所定の一辺(第一の辺H21)と対向する平板部211の所定の他の一辺(第二の辺H22)と、所定の他の一辺(第二の辺H22)を向く第一柱部212aの辺との距離が、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。また、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200は、水晶片210の下面を平面視して、平板部211の所定の一辺(第一の辺H21)に平行な第一柱部212aの二辺間の距離が、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。従って、第一実施形態に係る水晶素子200は、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第一実施形態に係る水晶素子200は、第一柱部212aと励振電極部221との間に位置するように形成されており、開口部が略矩形形状となっている貫通穴213と、を備えており、所定の一辺(第一の辺H21)と対向する平板部の所定の他の一辺(第二の辺H22)と、所定の他の一辺(第二の辺H22)を向く貫通穴213の開口部の辺(第五の辺H24b)との距離が、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。従って、第一実施形態に係る水晶素子200では、水晶片210の第二の辺H22と第五の辺H25bとの距離を、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍にすることで、所定の一辺に垂直な方向(X軸に平行な方向)で水晶片210を断面視したとき、平板部211の所定の他の一辺(第二の辺H22)とこの第二の辺H22を向く貫通穴213の開口部の辺(第五の辺H24b)との間の平板部211の一部(振動部)の両端を、屈曲振動の節となる位置にすることができる。このため、振動部の両端部において、屈曲振動により変位する量を低減させることができ、第二の辺H22を含む平板部211の側面での屈曲振動の反射を抑制にしつつ、振動部に接している(連結している)部分による厚みすべり振動への影響を低減させることが可能となる。この結果、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200では、一対の励振電極部221に電圧を印加したとき、等価直列抵抗値が大きくなることを軽減しつつ、周波数を一定にすることが可能となる。
また、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200では、水晶素子200の下面を平面視して、平板部211の所定の一辺(第一の辺H21)に平行な貫通穴213の二辺間の距離が、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。言い換えると、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200では、水晶片210(または、水晶素子200)の下面を平面視して、第一柱部212a側を向く貫通穴213の開口部の辺(第四の辺H24a)と、平板部211の所定の他の一辺(第二の辺H22)を向く貫通穴213の開口部の辺(第五の辺H24b)と距離が、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。別の観点では、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200では、平板部211の所定の一辺に垂直な方向(X軸に平行な方向)の振動部の距離が、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。このように、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200では、水晶片210(または、水晶素子200)の下面を平面視して、第二の辺H22と第五の辺H24bとの距離、つまり、X軸方向の振動部の距離を、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍にすることで、平板部211の所定の一辺に垂直な向き(X軸に平行な向き)で水晶片210を断面視した場合、振動部の両端部を屈曲振動の節となる位置にすることができる。このため、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200では、振動部の両端部での屈曲振動による変動を低減させることが可能となり、振動部での厚みすべり振動への影響を低減させることができる。
(第二実施形態)
第二実施形態に係る厚みすべり水晶素子300(以下、「厚みすべり」を省略して「水晶素子300」ということがある。)は、図7〜図9に示したように、第二柱部312bが平板部311の上面に設けられているという点で、第一の実施形態の変形例に係る水晶素子200と異なる。従って、第二実施形態に係る水晶素子300は、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200と水晶片310が異なっている。
水晶片310は、図7〜図9に示したように、平板部311、第一柱部312aおよび第二柱部312bからなり、平板部311、第一柱部312aおよび第二柱部312bが一体的に形成されている。
平板部311は、第一実施形態の変形例と同様となっており、安定した機械振動をする圧電材料が用いられ、例えば、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とかならなる結晶軸を有している水晶部材が用いられる。平板部311は、図7〜図9に示したように、略直方体形状となっている。平板部311の両主面は、例えば、X軸とZ軸とに平行な面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに約37°回転させた面と平行となっている。また、平板部311の両主面には、図7および図8に示したように、一対の励振電極部321が設けられている。
第一柱部312aは、図7〜図9に示したように、第一実施形態の変形例と同様に、略直方体形状となっており、平板部311の下面の所定の一辺(第一の辺H21)に沿って設けられている。また、第一柱部312aは、平板部311と一体的に形成されている。また、第一柱部312aの下面、具体的には、平板部311と接している第一柱部312aの面と反対側を向く第一柱部312aの面に、一対の引出部322が設けられており、第二実施形態に係る水晶素子300を水晶デバイスとして用いる場合、導電性接着剤(図示せず)によって基板部(図示せず)上に第二実施形態に係る水晶素子300を実装するために用いられる。
第二柱部312bは、図7および図8に示したように、略直方体形状となっている。また、第二柱部312bは、平板部311の下面の所定の一辺(第一の辺H31)と対向している平板部311の上面の辺に沿って、平板部311の上面に設けられている。従って、第二柱部312bは、第一柱部312aとで平板部311を挟むように、平板部311の上面に設けられている。また、第二柱部312bは、平板部311および第一柱部312aと一体的に形成されている。また、第二柱部312bは、水晶素子300の上面を平面視したとき、図8に示したように、平板部311の下面の所定の一辺(第一の辺H31)と対向する平板部311の上面の辺に平行な辺の長さが、平板部311の下面の所定の一辺(第一の辺H31)と対向する平板部311の上面の辺と同じ、または、それ以上の長さとなっている。このような構成にすることで、一対の励振電極部321に電圧を印加し平板部311で屈曲振動が生じても、第一柱部312aおよび第二柱部312bで平板部311を挟んだ状態にしているので、第一柱部312aおよび第二柱部312bが設けられている平板部311の一部が屈曲振動しにくくするようにすることができる。この結果、第一柱部312aおよび第二柱部312bが設けられていない平板部311の一部で生じる屈曲振動を減衰させることができ、屈曲振動による厚みすべり振動への影響を低減させることが可能となり、周波数が不安定となることを低減させることができる。
貫通穴313は、水晶素子300の下面を平面視して、第一柱部312aと励振電極部321との間に形成されている。具体的には、貫通穴313は、図8および図9に示したように、水晶片310(または水晶素子300)の下面を平面視して、第一柱部312aに沿うように、平板部311に形成されている。このように、貫通穴313を、第一柱部312aと励振電極部321との間に形成することで、一対の励振電極部321に電圧を印加したときに、振動変位の大きい平板部311の一部をより独立させた状態に近づけることができる。具体的には、振動変位の大きい平板部311の一部が、他と接している部分(連続している部分)をより少なくなるようにすることができる。この結果、第一柱部312aおよび第二柱部312bによる振動阻害を低減させることができ、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
ここで、振動変位の大きい平板部311の一部とは、一対の励振電極部321に挟まれている平板部311の一部、および、一対の励振電極部321に挟まれている平板部311の一部の周辺部を指しており、主振動である厚みすべり振動の振動変位の大きい部分のことを指している。
また、貫通穴312は、水晶片310の上面または下面を平面視して、その開口部が略矩形形状となっている。このとき、特に図面では図示しないが、貫通穴313の開口部の四隅は円弧形状となっている。このように、貫通穴312の開口部に丸みをもたせることで、水晶素子300の外部から応力が加わったとき、貫通穴313の開口部に向かう向きに加わる応力が開口部の四隅に集中することを低減させることが可能となる。この結果、貫通穴313の開口部からクラック等の破損が生じることを低減させることができる。
ここで、図9に示したように、水晶片310の下面を平面視したとき、第一柱部312aが沿って設けられている平板部311の所定の一辺を第一の辺H31とし、平板部311の所定の一辺(第一の辺H31)と対向する平板部311の所定の他の一辺を第二の辺H32とする。平板部311の所定の他の一辺(第二の辺H32)を向く第一柱部312aの辺を第三の辺H33とする。また、貫通穴313の開口部の辺であって、平板部311の所定の一辺(第一の辺H31)に平行な辺のうち、第一柱部312a側を向く辺を第四の辺H34aとし、平板部311の所定の一辺(第一の辺H31)に平行な辺のうち、平板部311の所定の他の一辺(第二の辺H22)側を向く辺を第五の辺H34bとする。
また、振動変位の大きい平板部311の一部、具体的には、一対の励振電極部321に挟まれている平板部311の一部、および、一対の励振電極部321に挟まれている平板部311の一部の周辺部を、振動部(図示せず)とする。振動部は、図9では、第二の辺H32と第五の辺H34bとの間の平板部311の矩形形状の部分となる。
このように、水晶片310は、略直方体形状の平板部311の所定の一辺(第一の辺H31)に沿って、第一柱部312aが設けられた構成となっている。従って、平板部311の所定の一辺に垂直な向きで水晶片310を断面視すると、平板部311と第一柱部312aとが片持ち梁に似た構造となっているといえる。また、水晶片310は、平板部311の両主面に設けられている一対の励振電極部321に電圧が印加されると、一対の励振電極部321に挟まれている平板部311の一部が、逆圧電効果および圧電効果により振動を開始する構成となっている。このとき、平板部311は、厚みすべり振動を主振動として、その他に屈曲振動も同時に生じている状態となっている。
水晶片310は、水晶片310(または、水晶素子300)の下面を平面視して、第一柱部312aが沿って設けられている平板部311の所定の一辺(第一の辺H31)と対向する平板部311の所定の他の一辺(第二の辺H32)と、平板部311の所定の他の一辺(第二の辺H32)を向く第一柱部312aの辺(第三の辺H33)との距離が、一対の励振電極部321に電圧を印加したときに平板部311で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。
また、水晶片310は、水晶片310(または、水晶素子300)の下面を平面視して、第一柱部312aが沿って設けられている平板部311の所定の一辺(第一の辺H31)に平行な第一柱部312aの二辺間の距離が、平板部311で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。従って、図9に示したように、水晶片310の下面を平面視すると、第一柱部312aが沿って設けられている平板部311の所定の一辺(第一の辺H31)と、平板部311の所定の一辺と対向する平板部311の所定の他の一辺(第二の辺H32)を向く第一柱部312aの辺(第三の辺H33)の辺との距離が、平板部311で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっているといえる。また、別の観点では、平板部311の所定の一辺に垂直な向き(X軸に平行な向き)での平板部311の両端部の距離が、平板部311で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっているといえる。
また、水晶片310は、水晶素子300の下面を平面視して、第一柱部312aと励振電極部321との間に、開口部が略矩形形状の貫通穴313が形成されている。また、水晶片310は、図8および図9に示したように、水晶片310(または、水晶素子300)の下面を平面視して、水晶片310に形成されている貫通穴313の開口部が略矩形形状となっており、第一柱部312aが沿って設けられている平板部311の所定の一辺(第一の辺H31)と対向する平板部311の所定の他の一辺(第二の辺H32)と、平板部311の所定の他の一辺(第二の辺H32)側を向く貫通穴313の開口部の辺(第五の辺H34b)との距離が、平板部311で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。
また、水晶片310は、下面を平面視して、平板部311の所定の一辺(第一の辺H31)に平行な貫通穴313の二辺間の距離が、一対の励振電極部321に電圧を印加したときに、平板部311で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。別の観点では、水晶片310(または、水晶素子300)の下面を平面視して、第一柱部312aが沿って設けられている平板部311の所定の一辺(第一の辺H31)に平行な貫通穴313の開口部の辺であって、平板部311の所定の一辺(第一の辺H31)側を向く辺(第四の辺H34a)と、平板部311の所定の他の一辺(第二の辺H32)側を向く辺(第五の辺H34b)との距離が、一対の励振電極部321に電圧を印加したときに、平板部311で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。
このような構成は、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200の水晶片210と同様であるため、第二実施形態に係る水晶素子300で用いる水晶片310は、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200と同様の効果を奏するといえる。
また、第二実施形態に係る水晶素子300の水晶片310では、平板部311の下面の所定の一辺と対向している平板部311の上面の辺に沿って、平板部311の上面に第二柱部312bが設けられている。従って、第二実施形態に係る水晶素子300の水晶片310では、第二柱部312bは、第一柱部312aとで平板部311を挟むように、平板部311の上面に設けられている構成となっている。また、第二実施形態に係る水晶素子300の水晶片310では、水晶素子300の上面を平面視したとき、図8に示したように、平板部311の下面の所定の一辺(第一の辺H31)と対向する平板部311の上面の辺に平行な第二柱部312aの辺の長さが、平板部311の下面の所定の一辺(第一の辺H31)と対向する平板部311の上面の辺と同じ、または、それ以上の長さとなっている。このような構成にすることで、第二実施形態に係る水晶素子300の水晶片310では、一対の励振電極部321に電圧を印加し平板部311で屈曲振動が生じても、第一柱部312aおよび第二柱部312bで平板部311を挟んだ状態にしているので、第一柱部312aおよび第二柱部312bが設けられている平板部311の一部が屈曲振動しにくくするようにすることができる。この結果、第一柱部312aおよび第二柱部312bが設けられていない平板部311の一部で生じる屈曲振動を減衰させることができ、屈曲振動による厚みすべり振動への影響を低減させることが可能となり、周波数が不安定となることを低減させることができる。
なお、本実施形態の図面では、平板部、第一柱部および第二柱部を直方体形状で示しているが、水晶片をフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて形成している場合には、結晶軸の軸方向によってエッチング速度が異なるため、エッチング残渣が生じ、完全な直方体形状とはならない。このようにエッチング残渣を踏まえ、略直方体形状としている。