(第一実施形態)
第一実施形態に係る厚みすべり水晶素子は、安定した機械振動を得ることができ、電子機器等の基準信号を発信するためのものである。第一実施形態に係る厚みすべり水晶素子100(以下、「厚みすべり」を省略して「水晶素子100」ということがある。)は、図1〜図3に示したように、平板部111、第一柱部112aおよび第二柱部112bからなる水晶片110と、励振電極部121、引出部122および配線部123からなる金属パターン120と、から構成されている。
水晶片110は、図1〜図3に示したように、略直方体形状の平板部111と、略直方体形状の第一柱部112aと、略直方体形状の第二柱部112bと、から構成されており、平板部111、第一柱部112aおよび第二柱部112bが一体的に形成されている。
ここで、図面に合わせて、平板部111の対向している二面であって、面積の広い面を、平板部111の主面とし、平板部111の主面のうち第一柱部112aおよび第二柱部112bが設けられている面を平板部111の下面とする。また、平板部111の下面と反対側を向く平板部111の主面を、平板部111の上面とする。また、平板部111の上面を水晶片110の上面とする。
平板部111は、安定した機械振動をする圧電材料が用いられ、例えば、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有している水晶部材が用いられている。平板部111の主面は、X軸とZ軸とに平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに回転させた面と平行となっている。例えば、平板部111の主面は、X軸とZ軸とに平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに約33〜42°の回転させた面と平行となっている。また、平板部110の両主面には、図2に示したように、一対の励振電極部121が設けられている。
第一柱部112aは、図1〜図3に示したように、略直方体形状となっており、平板部111の下面の所定の一辺に沿って設けられている。また、第一柱部112aは、平板部111と一体的に形成されている。また、第一柱部112aの下面、具体的には、平板部111と接している第一柱部112aの面と反対側を向く第一柱部112aの面に、一対の引出部122が設けられており、第一実施形態に係る水晶素子100を水晶デバイスとして用いる場合、導電性接着剤(図示せず)によって基板部(図示せず)上に、第一実施形態に係る水晶素子100を実装するために用いられる。
また、第一柱部112aは、水晶片110の下面を平面視したとき、平板部111の所定の一辺と平行な第一柱部112aの辺の長さが、平板部111の所定の一辺と同じ長さ、または、その長さ以上となっている。このようにすることで、平板部111の所定の一辺と平行な向き(Z´軸に平行な向き)での平板部111が変形しにくくすることが可能となる。この結果、平板部111が変形することによる水晶素子100の周波数変動を低減させることができる。
第二柱部112bは、図1〜図3に示したように、略直方体形状となっており、平板部111の下面の所定の一辺と対向する所定の他の一辺に沿って設けられている。また、第二柱部112bは、平板部111および第一柱部112aと一体的に形成されている。また、第二柱部112bは、水晶片110の下面を平面視したとき、平板部111の所定の一辺と平行な第二柱部112bの辺の長さが、平板部111の所定の一辺と同じ長さ、または、その長さ以上となっている。このようにすることで、平板部111の所定の一辺と平行な向き(Z´軸に平行な向き)での平板部111が変形しにくくすることが可能となる。この結果、平板部111が変形することによる水晶素子100の周波数変動を低減させることができる。
ここで、図3に示したように、水晶片110の下面を平面視したとき、第一柱部112aが沿って設けられている平板部111の下面の所定の一辺を第一の辺H11とし、第二柱部112bが沿って設けられている平板部111の下面の所定の他の一辺を第二の辺H12とする。第一の辺H11と第二の辺H12は、水晶片110の下面を平面視したとき、互いに対向する位置に位置している。また、第一の辺H11に平行な第一柱部112aの辺であって、第二柱部112b(または、第二の辺H12)側を向く辺を第三の辺H13とし、第二の辺H12に平行な第二柱部112bの辺であって、第一柱部112a(または、第一の辺H11)側を向く第四の辺H14とする。
水晶片110は、略直方体形状の平板部111の下面に、第一柱部112aと第二柱部112bとが向かいあうように設けられた構成となっている。従って、水晶片110は、平板部111の所定の一辺に垂直方向で断面視すると、第一柱部112aおよび第二柱部112bで平板部111が両持ちされている両持ち梁と似た構造となっているといえる。このように両持ち梁と似た構造にすることで、このような水晶片110を用いた水晶素子100を水晶デバイスで用いた場合、水晶デバイスの外部から応力を受けた場合に、平板部111の中央部で変位する量を、片持ち梁に似た構造の場合と比較して低減させることが可能となる。この結果、水晶素子100の周波数をより安定させることができる。
ここで、このような水晶片110を、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて形成する形成方法について説明する。まず、両主面が平板部111と同じカットアングルとなっている水晶ウエハを用意する。次に、この水晶ウエハの両主面に金属膜、具体的には、クロム層と金層との積層された金属膜を形成し、この金属膜上に、感光性レジストを塗布し、所定のパターンに露光し、現像させる。このとき、水晶ウエハの上面を平面視すると、平板部111となる部分には感光性レジストが残留しており、水晶ウエハの下面を平面視すると、第一柱部112aおよび第二柱部112bとなる部分に感光性レジストが残留している状態となっている。その後、露出している金属膜を剥離させ、水晶ウエハの一部を露出した状態にさせ、所定のエッチング溶液に浸漬させ、水晶ウエハを所定のパターンでエッチングする。最後に、水晶ウエハの主面上に残留している感光性レジストおよび金属膜を剥離させる。このようにして、水晶片110の一部が連結されている水晶ウエハを形成する。このような水晶ウエハは、そのまま水晶片110となる部分を個片化して用いてもよいし、水晶ウエハの状態で励振電極部121、引出部122および配線部123からなる金属パターン120を形成してもよい。
水晶片110には、図1および図2に示したように、励振電極部121、引出部122および配線部123からなる金属パターン120が設けられている。金属パターン120は、水晶片110に電圧を印加させる、平板部111の一部を振動させるためのものである。
励振電極部121は、一対となっており、平板部111の両主面に互いが対向するように設けられている。励振電極部121は、励振電極部121に挟まれている平板部111の一部を振動させるためのものである。励振電極部121は、例えば、図1または図2に示したように、水晶素子100を平面視して、円型形状または楕円形状となっている。
引出部122は、一対となっており、水晶片110の外部から励振電極部121へ電圧を印加するためのものであり、水晶素子100を水晶デバイスとして用いる場合に、水晶素子100を基板部(図示せず)の上面に実装するためのものである。また、引出部122は、例えば、第一柱部112aの下面、具体的には、平板部111と第一柱部112aとが接する面と反対側を向く第一柱部112aの面に、二つ並んで設けられている。このとき、一対の引出部122は、図2に示したように、水晶素子100の下面を平面視して、平板部112の所定の一辺に沿って二つ並んで設けられている。なお、ここで、一対の引出部122が第一柱部112aの下面に二つ並んで設けられている場合について説明しているが、例えば、一方の引出部を第一柱部112aの下面に設け、他方の引出部を第二柱部112bの下面に設けてもよい。
配線部123は、励振電極部121と引出部122とを電気的に接続するためのものであり、水晶片110の表面に沿って設けられている。
ここで、第一実施形態に係る水晶素子100の動作について説明する。水晶素子100は、一対の引出部122に電圧が印加されると、配線部123を介して、平板部111の両主面に設けられている一対の励振電極部121に電圧が印加される構成となっている。水晶素子100は、一対の引出部122に電圧が印加されると、一対の励振電極部121に電圧が印加されることとなり、一対の励振電極部121には異なる電荷が蓄積され、逆圧電効果により、一対の励振電極部121に挟まれている平板部111の一部に歪みが生じ、変形する。その結果、平板部111は、元の状態に戻ろうとするため、圧電効果により一対の励振電極部121に最初に蓄積された電荷と反対の電荷が蓄積される。つまり、一対の引出部122に電圧が印加されると、一対の励振電極部121に電圧が印加され、逆圧電効果および圧電効果により、一対の励振電極部121に挟まれている平板部111の一部が振動することとなる。従って、一対の引出部122に交流電圧を印加すると、一対の励振電極部121に異なる電荷が交互に蓄積され交互に変形することとなり、一対の励振電極部121に挟まれている平板部111の一部を振動させることができる。このとき、一対の励振電極部121に挟まれている平板部111の一部は、厚みすべり振動を主振動として振動するが、同時に、屈曲振動も生じている。厚みすべり振動は、X軸に平行な向きのすべりが主力変位であるが、屈曲振動も振動変位がX軸に平行な向きとなっている。このため、屈曲振動と厚みすべり振動は、結合しやすく、屈曲振動と厚みすべり振動が結合すると、水晶素子100の周波数が変化する場合や等価直列抵抗値が変化する場合がある。
次に、第一実施形態に係る水晶素子100で用いる水晶片110の寸法について説明する。水晶素子100は、平面視して、短辺(平板部111の下面の所定の一辺に平行な辺)の長さが、0.6〜2.8mmとなっており、長辺(平板部111の下面の所定の一辺に垂直な辺)の長さが、0.8〜4.0mmとなっている。従って、平板部111は、平面視して、短辺(第一柱部112aが沿って設けられている平板部111の所定の一辺)の長さが、0.6〜2.8mmとなっており、長辺(平板部111の所定の一辺と交わっている辺)の長さが、0.8〜4.0mmとなっている。平板部111は、上下方向の厚みが、5〜83μmとなっている。また、第一柱部112aおよび第二柱部112bは、ほぼ同形状となっており、水晶片110の下面を平面視して、平板部111の所定の一辺に平行な辺の長さが、0.6〜2.8mmとなっており、平板部111の所定の一辺に垂直な辺の長さが、0.13〜1.5mmとなっている。また、第一柱部112aおよび第二柱部112bは、上下方向の厚みが、30〜100μmとなっている。
以上のように、第一実施形態に係る水晶素子100は、略直方体形状の平板部111と、平板部111の下面の所定の一辺(第一の辺H11)に沿って設けられている第一柱部112aと、平板部111の下面の所定の一辺に対向する辺(第二の辺H12)に沿って設けられている第二柱部112bと、からなる水晶片110と、平板部111の上下面に設けられている励振電極部121と、第一柱部112aの下面または第二柱部112bの下面に設けられている引出部122と、励振電極部121と引出部122とを電気的に接続している配線部123と、を備え、水晶片110の下面を平面視して、第二柱部112bを向く第一柱部112aの辺(第三の辺H13)と、第一柱部112aを向く第二柱部112bの辺(第四の辺H14)との距離が、平板部111で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。
このように、第一実施形態に係る水晶素子100は、第二柱部112bを向く第一柱部112aの辺(第三の辺H13)と第一柱部112aを向く第二柱部112bの辺(第四の辺H14)との距離を、一対の励振電極部121に電圧を印加したときに平板部111で生じる屈曲振動の波長の整数倍となるようにしている。従って、第一実施形態に係る水晶素子100は、平板部111の所定の一辺(第一の辺H11)に垂直な向き(X軸に平行な向き)で水晶片110を断面視したとき、第一柱部112aおよび第二柱部112bが設けられていない平板部111の一部分の両端部に屈曲振動の節が位置するようにすることが可能となる。このため、第一実施形態に係る水晶素子100では、第一柱部112aおよび第二柱部112bが設けられていない平板部111の一部分の両端部において、屈曲振動による変位を低減させることが可能となり、この結果、第一柱部112aおよび第二柱部112bにおける屈曲振動の反射による影響を抑制することができ、屈曲振動が主振動である厚みすべり振動へ与える影響も抑制させることが可能となり、第一実施形態に係る水晶素子100の周波数が不安定となる周波数安定度の悪化や、第一実施形態に係る水晶素子100の等価直列抵抗値が大きくなるといった電気的特性の悪化を、低減させることができる。
また、第一実施形態に係る水晶素子100は、水晶片110の下面を平面視して、平板部111の所定の一辺(第一の辺H11)に平行な第一柱部112aの二辺間の距離が、平板部111で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっており、平板部111の所定の一辺(第一の辺H11)に平行な第二柱部112bの二辺間の距離が、平板部111で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。従って、第一実施形態に係る水晶素子100は、水晶片110(または水晶素子100)の下面を平面視して、平板部111の所定の一辺(第一の辺H11)と平板部111の所定の一辺に平行な第一柱部112aの辺であって第二柱部112b側を向く辺(第三の辺H13)との距離、および、平板部111の所定の一辺と対向する平板部111の所定の他の一辺(第二の辺H12)と平板部111の所定の一辺に平行な第二柱部112bの辺であって第一柱部112a側を向く辺(第四の辺H14)との距離が、平板部111で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっているといえる。また、別の観点では、平板部111の所定の一辺(第一の辺H11)に垂直な向き(X軸に平行な向き)での平板部111の両端部の距離が、平板部111で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっているといえる。
第一実施形態に係る水晶素子100では、このようにすることで、一対の引出部122に電圧を印加したときに、平板部111の所定の一辺(第一の辺H11)に垂直な向き(X軸に平行な向き)で水晶片110を断面視して、平板部111の両端部に、平板部111で生じる屈曲振動の節が位置するようにすることができる。従って、第一実施形態に係る水晶素子100では、第一柱部112aおよび第二柱部112bが設けられている平板部111の外縁まで屈曲振動したとしても、平板部111の側面での屈曲振動の反射を抑制させることが可能となる。この結果、第一実施形態に係る水晶素子100は、平板部111の外縁における屈曲振動の反射による厚みすべり振動への影響を抑制ことができ、水晶素子100の周波数が不安定となる周波数安定度の悪化や、水晶素子100の等価直列抵抗値が大きくなるといった電気的特性の悪化を、低減させることができる。
(第一実施形態の変形例)
第一実施形態の変形例に係る厚みすべり水晶素子200(以下、「厚みすべり」を省略して「水晶素子200」ということがある。)は、図4〜図6に示したように、水晶片210の平板部211に一対の貫通穴213が形成されている点で、第一実施形態と異なる。
第一実施形態の変形例に係る水晶素子200は、図4および図5に示したように、平板部211、第一柱部212aおよび第二柱部212bからなる水晶片210と、励振電極部221、引出部222および配線部223からなる金属パターン220と、から構成されている。また、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200は、水晶片210の平板部211に上面から下面にかけて貫通している貫通穴213が形成されている。
水晶片210は、図4〜図6に示したように、略直方体形状の平板部211と、平板部211の下面の所定の一辺に沿って設けられている第一柱部212aと、平板部211の下面の所定の一辺に対向する所定の他の一辺に沿って設けられている第二柱部212bと、から構成されている。また、水晶片210は、平板部211に上面から下面にかけて貫通している貫通穴213が形成されている。
平板部211は、安定した機械振動をする圧電材料が用いられ、例えば、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有している水晶部材が用いられる。平板部211は、図4〜図6に示したように、略直方体形状となっている。平板部211の両主面は、例えば、X軸とZ軸に平行な面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに約30〜45°回転させた面と平行となっている。また、平板部211の両主面には、図4および図5に示したように、一対の励振電極部221が設けられている。
第一柱部212aは、図4〜図6に示したように、略直方体形状となっており、平板部211の下面の所定の一辺に沿って設けられている。また、第一柱部212aは、平板部211と一体的に形成されている。また、第一柱部212aの下面、具体的には、平板部211と接している第一柱部212aの面と反対側を向く第一柱部212aの面に、一対の引出部222が設けられており、水晶素子200を水晶デバイスとして用いる場合、導電性接着剤(図示せず)によって基板部(図示せず)上に、水晶素子200を実装するために用いられる。
また、第一柱部212aは、水晶片210の下面を平面視したとき、平板部211の所定の一辺と平行な第一柱部212aの辺の長さが、平板部211の所定の一辺と同じ長さ、または、その長さ以上となっている。このようにすることで、平板部211の所定の一辺と平行な向き(Z´軸に平行な向き)で水晶片210を断面視したとき、平板部211が変形しにくくすることが可能となる。この結果、平板部211が変形することによる水晶素子200の周波数変動を低減させることができる。
第二柱部212bは、図4〜図6に示したように、略直方体形状となっており、平板部211の下面の所定の一辺と対向する所定の他の一辺に沿って設けられている。また、第二柱部212bは、平板部211および第一柱部212aと一体的に形成されている。また、第二柱部212bは、水晶片210の下面を平面視したとき、平板部211の所定の一辺と平行な第二柱部212bの辺の長さが、平板部211の所定の一辺と同じ長さ、または、その長さ以上となっている。このようにすることで、平板部211の所定の一辺と平行な向き(Z´軸に平行な向き)で水晶片210を断面視したとき、平板部211が変形しにくくすることが可能となる。この結果、平板部211が変形することによる水晶素子200の周波数変動を低減させることができる。
貫通穴213は、平板部211に形成されており、第一貫通穴213aと第二貫通穴213bとからなる。第一貫通穴213aは、水晶素子200の下面を平面視して、第一柱部212aと励振電極部221との間であって、第一柱部212aに沿うように位置している。第二貫通穴213bは、水晶素子200の下面を平面視して、第二柱部212bと励振電極部221との間であって、第二柱部212bに沿うように位置している。このように貫通穴213を平板部211に形成することで、一対の励振電極部221に電圧を印加したときに、振動変位の大きい平板部211の一部をより独立させた状態に近づけることができる。具体的には、振動変位の大きい平板部211の一部が、他と接している(連続している)部分をより少なくすることができる。この結果、第一柱部212aおよび第二柱部212bによる振動阻害を低減させることができ、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、貫通穴213は、水晶片210(または、水晶素子200)の下面を平面視して、その開口部が略矩形形状となっている。このとき、特に図面では図示しないが、貫通穴213の開口部の四隅は円弧形状となっている。このように、貫通穴213の開口部の四隅を円弧形状にし、貫通穴213の開口部に丸みをもたせることで、水晶素子200の外部から応力が加わったときに、貫通穴213の開口部に向かう向きに加わる応力が、開口部の四隅に集中することを低減させることが可能となる。この結果、貫通穴213の開口部からクラック等の破損が生じることを低減させることができる。
ここで、図6に示したように、水晶片210の下面を平面視したとき、第一柱部212aが沿って設けられている平板部211の所定の一辺を第一の辺H21とし、第一の辺H21と対向する辺であって第二柱部212bが沿って設けられている平板部211の所定の他の一辺を第二の辺H22とする。また、水晶片210の下面を平面視して、第一の辺H21に平行な第一柱部212aの辺であって第二柱部212bを向く辺を第三の辺H23とし、第二の辺H23に平行な第二柱部212bの辺であって第一柱部212aを向く辺を第四の辺H24とする。また、第一柱部212aに沿って形成されている第一貫通穴213aの開口部の辺であって、第一の辺H21に平行な二辺のうち第一柱部212a側を向く辺を第五の辺H25aとし、第一の辺H21に平行な二辺のうち第二柱部212b側を向く辺を第六の辺H25bとする。また、第二柱部212bに沿って形成されている第二貫通穴213bの開口部の辺であって、第二の辺H22に平行な二辺のうち第一柱部212a側を向く辺を第七の辺H26aとし、第二の辺H22に平行な二辺のうち第二柱部212b側を向く辺を第八の辺H26bとする。
また、振動変位の大きい平板部211の一部とは、一対の励振電極部221に挟まれている平板部211の一部、および、一対の励振電極部221に挟まれている平板部211の一部の周辺部であり、主振動である厚みすべり振動の振動変位が大きい部分をさしている。具体的には、水晶片210(または水晶素子200)の下面を平面視して、一対の貫通穴213に挟まれている平板部211の一部、図6では、第六の辺H25bと第七の辺H26aとで挟まれている平板部211の一部となる。
このように、水晶片210は、略直方体形状の平板部211の下面に、第一柱部212aと第二柱部212bとが向かい合うよう設けられている構成となっている。従って、水晶片210は、平板部211の所定の一辺に垂直な方向(X軸に平行な向き)で水晶片210を断面視すると、第一柱部212aおよび第二柱部212bにより平板部211が両持ちされている両持ち梁と似た構造になっているといえる。このように両持ち梁に似た構造にすることで、このような水晶片210を用いた水晶素子200を水晶デバイスで用いた場合、水晶デバイスの外部から応力を受けた場合に、平板部211の中央部で変位する量を、片持ち梁に似た構造の場合と比較して、低減させることが可能となる。この結果、水晶素子200の周波数をより安定させることができる。
ここで、このような水晶片210を、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて形成する形成方法について説明する。まず、両主面が平板部211と同じカットアングルとなっている水晶ウエハを用意する。次に、この水晶ウエハの両主面に金属膜、具体的には、クロム層と金層とが積層された金属膜を形成し、この金属膜上に、感光性レジストを塗布し、所定のパターンに露光し、現像させる。このとき、水晶ウエハの上面を平面視すると、平板部211となる部分には感光性レジストが残留しつつ、貫通穴213となる部分には感光性レジストが残留しておらず、水晶ウエハの下面を平面視すると、第一柱部212aとなる部分および第二柱部212bとなる部分には感光性レジストが残留しつつ、貫通穴213となる部分には感光性レジストが残留していない状態となっている。その後、感光性レジストが残留せず露出している金属膜を剥離させ、水晶ウエハの一部を露出した状態にさせ、所定のエッチング溶液に浸漬させ、水晶ウエハを所定のパターンでエッチングする。最後に、水晶ウエハの主面上に残留している感光性レジストおよび金属膜を剥離させる。このようにして、水晶片210の一部が連結されている水晶ウエハを形成する。このような水晶ウエハは、そのまま水晶片210となる部分を個片化して用いてもよいし、水晶ウエハの状態で励振電極部221、引出部222および配線部223からなる金属パターン220を形成してもよい。
水晶片210に設けられている金属パターン220は、水晶片210に電圧を印加させ、平板部211の一部を振動させるためのものである。金属パターン220は、図4および図5に示したように、励振電極部221、引出部222および配線部223からなる。
励振電極部221は、一対となっており、平板部211の両主面に互いが対向するように設けられている。励振電極部221は、励振電極部221に挟まれている平板部221の一部を振動させるためのものである。励振電極部221は、例えば、図4および図5に示したように、水晶素子200を平面視して、円型形状、または、楕円形状となっている。
引出部222は、一対となっており、水晶片210の外部から励振電極部221へ電圧を印加するためのものであり、水晶素子200を水晶デバイスとして用いる場合に、水晶素子200を基板部(図示せず)の上面に実装するためのものである。また、引出部222は、例えば、第一柱部212aの下面、具体的には、平板部211と第一柱部212aとが接している面と反対側を向く第一柱部212aの面に、二つ並んで設けられている。このとき、一対の引出部222は、図5に示したように、水晶素子200の下面を平面視して、平板部211の所定の一辺に二つ並んで設けられている。なお、ここで、一対の引出部222が第一柱部212aの下面に二つ並んで設けられている場合について説明しているが、例えば、一方の引出部222を第一柱部212aの下面に設け、他方の引出部222を第二柱部212bの下面に設けてもよい。
配線部223は、励振電極部221と引出部222とを電気的に接続するためのものであり、一端が励振電極部221に接続されており、他端が引出部222に接続されている。また、配線部223は、その一部が、貫通穴213の内壁面に設けられている。このように、配線部223の一部を貫通穴213の内壁面に設けることで、貫通穴213の内壁面に設けず水晶片210の表面にのみ設ける場合と比較して、配線部223の長さを短くすることができる。このため、配線部223自身が有する電気抵抗を低減させることができ、水晶素子200の等価直列抵抗値をより小さくすることが可能となる。
ここで、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200で用いる水晶片210の寸法について説明する。水晶素子200は、平面視して、短辺(平板部211の下面の所定の一辺に平行な辺)の長さが、0.6〜2.8mmとなっており、長辺(平板部211の下面の所定の一辺に垂直な辺)の長さが、0.8〜4.0mmとなっている。従って、平板部211は、平面視して、短辺(第一柱部212aが沿って設けられている平板部211の所定の一辺)の長さが、0.6〜2.8mmとなっており、長辺(平板部211の所定の一辺と交わっている辺)の長さが、0.8〜4.0mmとなっている。平板部211は、上下方向の厚みが、5〜83μmとなっている。また、第一柱部212aおよび第二柱部212bは、ほぼ同形状となっており、水晶片210の下面を平面視して、平板部211の所定の一辺に平行な辺の長さが、0.6〜2.8mmとなっており、平板部211の所定の一辺に垂直な辺の長さが、0.13〜1.5mmとなっている。また、第一柱部212aおよび第二柱部212bは、上下方向の厚みが、30〜100μmとなっている。また、貫通穴213の開口部は、水晶片210の下面を平面視して、略矩形形状となっており、平板部211の短辺に平行な辺の長さが0.3〜1.78mmとなっており、平板部211の長辺に平行な辺の長さが0.13〜1.5mmとなっている。また、貫通穴213の四隅は、半径0.005〜0.12mmのR面取りされた円弧形状となっている。
以上のように、第一実施形態に係る水晶素子200は、略直方体形状の平板部211と、平板部211の下面の所定の一辺(第一の辺H21)に沿って設けられている略直方体形状の第一柱部212aと、平板部211の下面の所定の一辺(第一の辺H21)に対向する所定の他の一辺(第二の辺H22)に沿って設けられている略直方体形状の第二柱部212bと、からなる水晶片210と、平板部211の上下面に設けられている励振電極部221と、第一柱部212aの下面または第二柱部212bの下面に設けられている引出部222と、励振電極部221と引出部222とを電気的に接続している配線部223と、を備え、水晶片220の下面を平面視して、第二柱部212bを向く第一柱部212aの辺(第三の辺H23)と、第一柱部212aを向く第二柱部212bの辺(第四の辺H24)との距離が、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。また、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200は、水晶片210の下面を平面視して、平板部211の所定の一辺(第一の辺H21)に平行な第一柱部212aの二辺間の距離が、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっており、平板部211の所定の一辺(第一の辺H21)に平行な第二柱部212bの二辺間の距離が、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。従って、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200は、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200は、水晶素子200の下面を平面視して、第一柱部212aと励振電極部221との間に形成されており、開口部が略矩形形状となっている第一貫通穴213aと、第二柱部212bと励振電極部221との間に形成されており、開口部が略矩形形状となっている第二貫通穴と213b、を備えており、水晶片210の下面を平面視して、第二柱部212bを向く第一貫通穴213aの辺(第六の辺H25b)と、第一柱部212aを向く第二貫通穴213bの辺(第七の辺H26a)との距離が、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。
このようにすることで、第一実施形態に係る水晶素子200では、平板部211の所定の一辺(第一の辺H21)に垂直な方向(X軸に平行な向き)で水晶片210を断面視すると、第二柱部212bを向く第一貫通穴213aの辺(第六の辺H25b)および第一柱部212aを向く第二貫通穴213bの辺(第七の辺H26a)上に、屈曲振動の節が位置するようにすることができる。別の観点では、振動変位の大きい平板部211の一部の両端部に、屈曲振動の節が位置するようにすることができる。このため、振動変位の大きい平板部211の一部の両端部において、屈曲振動により変位する量を低減させることができ、貫通穴213の内壁面における屈曲振動の反射による影響を抑制させることが可能となり、主振動である厚みすべり振動との屈曲振動とが結合する状態を抑制ことができる。この結果、第一実施形態の変形例の水晶素子200では、一対の引出部222に電圧を印加したとき、貫通穴213の内壁面において屈曲振動が反射することにより周波数が不安定となることを低減させることが可能となる。
また、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200は、水晶片210の下面を平面視して、平板部211の所定の一辺(第一の辺H21)に平行な第一貫通穴213aの二辺間の距離が、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっており、平板部211の所定の一辺(第一の辺H21)に平行な第二貫通穴213bの二辺間の距離が、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。このようにすることで、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200は、言い換えると、水晶片210(または、水晶素子200)の下面を平面視して、第五の辺H25aと第六の辺H25bとの距離、および、第七の辺H26aと第八の辺H26bとの距離が、平板部211で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。従って、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200では、X軸方向で断面視したとき、屈曲振動の節が、第五の辺H25a、第六の辺H25b、第七の辺H26a、第八の辺H26b上に位置するようにすることができる。これにより、第五の辺H25a、第六の辺H25b、第七の辺H26aおよび第八の辺H26bのような振動の状態が変化する箇所において、屈曲振動の反射を抑制することができるため、厚みすべり振動と屈曲振動とが結合する状態を抑制することが可能となり、周波数が不安定となることを低減させることが可能となる。
(第二実施形態)
第二実施形態に係る厚みすべり水晶素子300(以下、「厚みすべり」を省略して「水晶素子300」ということがある。)は、図7〜図9に示したように、第三柱部312cおよび第四柱部312dが平板部311の上面に設けられているという点で、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200と異なっている。
水晶片310は、図7〜図9に示したように、平板部311、第一柱部312a、第二柱部312b、第三柱部312cおよび第四柱部312dからなり、平板部311、第一柱部312a、第二柱部312b、第三柱部312cおよび第四柱部312dが一体的に形成されている。
平板部311は、安定した機械振動をする圧電材料が用いられ、例えば、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有している水晶部材が用いられる。平板部311は、図7〜図9に示したように、略直方体形状となっている。平板部311は、平板部311の両主面は、例えば、X軸とZ軸に平行な面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに約30〜45°回転させた面と平行となっている。また、平板部311の両主面には、図7および図8に示したように、一対の励振電極部321が設けられている。
第一柱部312aは、図7〜図9に示したように、略直方体形状となっており、平板部311の下面の所定の一辺に沿って設けられている。また、第一柱部312aは、平板部311と一体的に形成されている。また、第一柱部312aの下面、具体的には、平板部311と接している第一柱部212aの面と反対側を向く第一柱部312aの面に、一対の引出部322が設けられており、水晶素子300を水晶デバイスとして用いる場合、導電性接着剤(図示せず)によって基板部(図示せず)上に、水晶素子200を実装するために用いられる。
また、第一柱部312aは、水晶片310の下面を平面視したとき、平板部311の所定の一辺と平行な第一柱部312aの辺の長さが、平板部211の所定の一辺と同じ長さ、または、その長さ以上となっている。このようにすることで、平板部211の所定の一辺と平行な向き(Z´軸に平行な向き)で水晶片310を断面視したとき、平板部311が変形しにくくすることが可能となる。この結果、平板部311が変形することによる水晶素子300の周波数変動を低減させることができる。
第二柱部312bは、図7〜図9に示したように、略直方体形状となっており、平板部311の下面の所定の一辺と対向する所定の他の一辺に沿って設けられている。また、第二柱部312bは、平板部311および第一柱部312aと一体的に形成されている。また、第二柱部312bは、水晶片310の下面を平面視したとき、平板部311の所定の一辺と平行な第二柱部312bの辺の長さが、平板部311の所定の一辺と同じ長さ、または、その長さ以上となっている。このようにすることで、平板部311の所定の一辺と平行な向き(Z´軸に平行な向き)で水晶片310を断面視したとき、平板部311が変形しにくくすることが可能となる。この結果、平板部311が変形することによる水晶素子300の周波数変動を低減させることができる。
第三柱部312cは、平板部311の下面の所定の一辺と対向している平板部311の上面の辺に沿って、平板部311の上面に設けられ、平板部311、第一柱部312aおよび第二柱部312bと一体的に形成されている。従って、第三柱部312cは、第一柱部312aとで平板部311を挟んだ状態になっている。このようにすることで、一対の励振電極部321に電圧が印加され、平板部311の一部に屈曲振動が生じても、第一柱部312aおよび第三柱部312cとで平板部311とを挟んだ状態にしているので、平板部311が屈曲振動をしにくくすることができ、屈曲振動と厚みすべり振動が結合することにより水晶素子300の等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。また、第三柱部312cは、水晶片310の上面を平面視して、平板部311の所定の一辺に対向する平板部311の上面の辺に平行な(Z´軸に平行な向き)の辺の長さが、平板部311の所定の一辺と同じ長さ、または、平板部311の所定の一辺以上の長さとなっている。このようにすることで、平板部311の所定の一辺と平行な向き(Z´軸に平行な向き)で平板部311を断面視したときの、平板部311が変形しにくくすることが可能となる。この結果、平板部311が変形することによる水晶素子300の周波数変動を軽減させることができる。
第四柱部312dは、平板部311の下面の所定の他の一辺と対向している平板部311の上面の辺に沿って、平板部311の上面に設けられ、平板部311、第一柱部312a、第二柱部312bおよび第三柱部312cと一体的に形成されている。従って、第四柱部312dは、第二柱部312bとで平板部311を挟んだ状態となっている。このようにすることで、一対の励振電極部321に電圧が印加され、平板部311の一部に屈曲振動が生じても、第二柱部312bおよび第四柱部312dとで平板部311を挟んだ状態にしているので、平板部311が屈曲振動をしにくくすることができ、屈曲振動と厚みすべり振動が結合することにより水晶素子300の等価直列抵抗値が大きくなることを、低減させることが可能となる。また、第四柱部312dは、水晶片310の上面を平面視して、平板部311の所定の一辺に対向する平板部311の上面の辺に平行な(Z´軸に平行な向き)の辺の長さが、平板部311の所定の一辺と同じ長さ、または、平板部311の所定の一辺以上の長さとなっている。このようにすることで、平板部311の所定の一辺と平行な向き(Z´軸に平行な向き)で平板部311を断面視したときの、平板部311が変形しにくくすることが可能となる。この結果、平板部311が変形することによる水晶素子300の周波数変動を軽減させることができる。
貫通穴313は、平板部311に形成されており、第一貫通穴313aと第二貫通穴313bとからなる。第一貫通穴313aは、水晶素子300の下面を平面視して、第一柱部312aと励振電極部321との間であって、第一柱部312aに沿うように位置している。第二貫通穴313bは、水晶素子300の下面を平面視して、第二柱部312bと励振電極部321との間であって、第二柱部312bに沿うように位置している。このように貫通穴313を平板部311に形成することで、一対の励振電極部321に電圧を印加したときに、振動変位の大きい平板部311の一部をより独立させた状態に近づけることができる。具他的には、振動変位の大きい平板部311の一部が、他と接している(連続している)部分をより少なくすることができる。この結果、第一柱部312aおよび第二柱部312bによる厚みすべり振動への振動阻害を低減させることができ、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、貫通穴313は、水晶片310(または、水晶素子300)の下面を平面視して、その開口部が略矩形形状となっている。このとき、特に図面では図示しないが、貫通穴313の開口部の四隅は円弧形状となっている。このように、貫通穴313の開口部の四隅を円弧形状にし、貫通穴313の開口部に丸みをもたせることで、水晶素子300の外部から応力が加わったときに、貫通穴313の開口部に向かう向きに加わる応力が、開口部の四隅に集中することを低減させることが可能となる。この結果、貫通穴313の開口部からクラック等の破損が生じることを低減させることができる。
ここで、図9に示したように、水晶片310の下面を平面視したとき、第一柱部312aが沿って設けられている平板部311の下面の所定の一辺を第一の辺H31とし、第一の辺H31と対向する辺であって第二柱部312bが沿って設けられている平板部311の下面の所定の他の一辺を第二の辺H32とする。また、水晶片310の下面を平面視して、第一の辺H31に平行な第一柱部312aの辺であって第二柱部312bを向く第三の辺H33とし、第二の辺H32に平行な第二柱部312bの辺であって第一柱部312aを向く辺を第四の辺H34とする。また、第一柱部312aに沿って形成されている第一貫通穴313aの開口部の辺であって、第一の辺H31に平行な二辺のうち第一柱部312a側を向く辺を第五の辺H35aとし、第一の辺H31に平行な二辺のうち第二柱部312b側を向く辺を第六の辺H35bとする。また、第二柱部312bに沿って形成されている第二貫通穴313bの開口部の辺であって、第二の辺H32に平行な二辺のうち第一柱部312a側を向く辺を第七の辺H36aとし、第二の辺H32に平行な二辺のうち第二柱部312b側を向く辺を第八の辺H36bとする。
また、振動変位の大きい平板部311の一部とは、一対の励振電極部321に挟まれている平板部311の一部、および、一対の励振電極部321に挟まれている平板部311の一部の周辺部であり、主振動である厚みすべり振動の振動変位が大きい部分をさしている。具体的には、水晶片310(または水晶素子300)の下面を平面視して、一対の貫通穴313に挟まれている平板部311の一部、図9では、第六の辺H35bと第七の辺H36aとで挟まれている平板部311の一部となる。
このように、水晶片310は、略直方体形状の平板部311の下面に、第一柱部312aと第二柱部312bとが向かい合うように設けられており、平板部311の上面に、第三柱部312cと第四柱部312dとが向かい合うように設けられている構成となっている。従って、水晶片310は、平板部311の所定の一辺に垂直な方向(X軸に平行な向き)で水晶片310を断面視すると、第一柱部312aおよび第二柱部312bにより平板部311が両持ちされている両持ち梁と似た構造となっているといえる。このように両持ち梁に似た構造にすることで、このような水晶片310を用いた水晶素子300を水晶デバイスで用いた場合、水晶デバイスの外部から応力を受けた場合に、平板部311の中央部で変位する量を、片持ち梁に似た構造の場合と比較して、低減させることが可能となる。この結果、水晶素子300の周波数をより安定させることができる。
ここで、第二実施形態に係る水晶素子300で用いる水晶片310の寸法について説明する。水晶素子300は、平面視して、短辺(平板部311の下面の所定の一辺に平行な辺)の長さが、0.6〜2.8mmとなっており、長辺(平板部311の下面の所定の一辺に垂直な辺)の長さが、0.8〜4.0mmとなっている。従って、平板部311は、平面視して、短辺(第一柱部312aが沿って設けられている平板部311の所定の一辺)の長さが、0.6〜2.8mmとなっており、長辺(平板部311の所定の一辺と交わっている辺)の長さが、0.8〜4.0mmとなっている。平板部311は、上下方向の厚みが、5〜83μmとなっている。また、第一柱部312a、第二柱部312b、第三柱部312cおよび第四柱部312dは、ほぼ同形状となっており、水晶片310の下面を平面視して、平板部311の所定の一辺に平行な辺の長さが、0.6〜2.8mmとなっており、平板部311の所定の一辺に垂直な辺の長さが、0.13〜1.5mmとなっている。また、第一柱部312a、第二柱部312b、第三柱部312cおよび第四柱部312dは、上下方向の厚みが、30〜100μmとなっている。また、貫通穴313の開口部は、水晶片310の下面を平面視して、略矩形形状となっており、平板部311の短辺に平行な辺の長さが0.3〜1.78mmとなっており、平板部311の長辺に平行な辺の長さが0.13〜1.5mmとなっている。また、貫通穴313の四隅は、半径0.005〜0.12mmのR面取りされた円弧形状となっている。
以上のように、第二実施形態に係る水晶素子300は、略直方体形状の平板部311と、平板部311の下面の所定の一辺(第一の辺H31)に沿って設けられている略直方体形状の第一柱部312aと、平板部311の下面の所定の一辺(第一の辺H31)に対向する辺に沿って設けられている略直方体形状の第二柱部312bと、からなる水晶片310と、平板部311の上下面に設けられている励振電極部321と、第一柱部312aの下面または第二柱部312bの下面に設けられている引出部322と、励振電極部321と引出部322とを電気的に接続している配線部323と、を備え、水晶片310の下面を平面視して、第二柱部312bを向く第一柱部312aの辺と、第一柱部312aを向く第二柱部3112bの辺と、の距離が、平板部311で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。また、第二実施形態に係る水晶素子300は、水晶片310の下面を平面視して、平板部311の所定の一辺(第一の辺H31)に平行な第一柱部312aの二辺間の距離が、平板部311で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっており、平板部311の所定の一辺(第一の辺H31)に平行な第二柱部312bの二辺間の距離が、平板部311で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。このような構成は、第一実施形態に係る水晶素子100と同様のため、第二実施形態に係る水晶素子300は、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第二実施形態に係る水晶素子300は、水晶素子300の下面を平面視して、第一柱部312aと励振電極部321との間に形成されており、開口部が略矩形形状となっている第一貫通穴313aと、第二柱部312bと励振電極部321との間に形成されており、開口部が略矩形形状となっている第二貫通穴313bと、を備えており、水晶片310の下面を平面視して、第二柱部312bを向く第一貫通穴313aの辺と、第一柱部312aを向く第二貫通穴313bの辺との距離が、平板部311で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。また、第二実施形態に係る水晶素子300は、水晶片310の下面を平面視して、平板部311の所定の一辺(第一の辺H31)に平行な第一貫通穴313aの二辺間の距離が、平板部311で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっており、平板部311の所定の一辺(第一の辺H31)に平行な第二貫通穴313bの二辺間の距離が、平板部で生じる屈曲振動の波長の整数倍となっている。このような構成は、第一実施形態の変形例に係る水晶素子200と同様のため、第二実施形態に係る水晶素子300は、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第二実施形態に係る水晶素子300は、平板部311の下面の所定の一辺(第一の辺H31)と対向している平板部311の上面の辺に沿って、平板部311の上面に設けられている第三柱部312cと、平板部311の下面の所定の他の一辺(第二の辺H32)と対向している平板部311の上面の辺に沿って、平板部311の上面に設けられている第四柱部312dと、を備えている。従って、第二実施形態に係る水晶素子300では、平板部311の所定の一辺(第一の辺H31)側の縁部で第一柱部312aと第三柱部312cとで挟みつつ、平板部311の所定の他の一辺(第二の辺H32)側の縁部で第二柱部312bと第四柱部312dとで挟んだ状態となっている。このため、平板部311の両主面に設けられている一対の励振電極部321に電圧が印加され、平板部311の一部に屈曲振動が生じた場合であっても、第一柱部312aと第三柱部312cとで挟んでいる部分、および、第二柱部312bと第四柱部312dとで挟んでいる部分において、屈曲振動を低減させることが可能となる。この結果、屈曲振動と厚みすべり振動が結合することにより水晶素子300の等価直列抵抗値が大きくなることを、低減させることができる。
なお、本実施形態の図面では、平板部、第一柱部、第二柱部、第三柱部および第四柱部を直方体形状で示しているが、水晶片がフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて形成されている場合には、結晶軸の軸方向によってエッチング速度が異なるため、エッチング残渣が生じ、完全な直方体形状とはならいない。このようにエッチング残渣を踏まえ、略直方体形状としている。