JP2017016289A - 透明導電フィルム、及び透明導電フィルムの製造方法 - Google Patents

透明導電フィルム、及び透明導電フィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】タッチパネルとして使用する際に電極の視認性に優れる透明導電フィルムを提供する。
【解決手段】複数の層が積層されて形成される透明導電フィルム10であって、基材となる透明フィルム11と、透明フィルムの一方の面上に形成される剥離防止層14と、剥離防止層の一方の面上に形成される光学調整層15と、光学調整層の一方の面上に形成される低屈折率層16と、低屈折率層の一方の面上に形成される透明導電層17と、を備え、透明導電層をエッチング処理して電極を形成する際に、反射光の色度のエッチング処理前後の差と、波長550nmの透過率のエッチング処理前後の差のそれぞれの絶対値の和が1.5未満となるように電極を形成することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、タッチパネルに用いる視認性に優れた透明導電フィルム、及び透明導電フィルムの製造方法に関する。
現在、画面表示に直接触れることにより、情報を入力できるデバイスとしてタッチパネルが用いられている。これは、光を透過する入力装置を液晶や有機EL等のディスプレイ上に配置したものである。タッチパネルの方式としては抵抗式、静電容量式、超音波式、光学式等様々な方法があるが、スマートフォンやタブレットPC端末には、投影型静電容量方式が多く使われている。投影型静電容量方式のタッチパネル装置は、一般的に、透明導電フィルムの導電層をX軸とY軸にパターニングし、これらの相互インダクタンスが指を近づけたときに変化することを利用して位置検出を行っている。
投影型静電容量方式のタッチパネル用の透明導電フィルムとしては、一般にはPETフィルムが使用される。この基板上に、酸化インジウム錫(ITO)や酸化亜鉛等の導電性を有する金属酸化物を積層したものが一般的に用いられている。このようにして得られた透明導電フィルムは、金属酸化物層の反射及び吸収に由来する可視光短波長域の透過率低下により全光線透過率が低下すると同時に、黄色もしくは茶色に呈色することが多い。そのためタッチパネルの下に配置される表示装置の発色を正確に表現することが難しいといった問題があった。
この問題の解決するために、例えば、特許文献1のように、透明基材と透明導電層の間に高屈折率層と低屈折率層を複数組み合わせることにより透過率を向上させようとする技術が提案されている。また、特許文献2のように、透明フィルムの上に透過率の高い導電層を形成する技術も提案されている。
特開2003−004902号公報 特開2001−324707号公報
しかしながら、上記特許文献1の方法による場合は、透明基材としてガラス基板を使用しているため、ガラスよりも耐熱性が低く吸水性の高い透明フィルム上に同じ手法で形成しようとする場合、成膜中の熱によりフィルムがダメージを受けることや、フィルムのアウトガスにより透明導電膜の電気的特性が安定しないこと、またフィルムと積層膜の密着性が十分にとれないという問題点がある。
また、上記特許文献2の方法では、可視光領域の特定の波長に透過率のピークをもつ構造であるため、ある程度透過率の向上には寄与するものの、表示装置の表示波長領域全域にわたり高透過率を確保し、同時に特定の色が反射されない無色透明の色調を両立させる技術は、実現できていない。すなわち、従来の透明導電性フィルムにおいては、透明導電層の屈折率が高いために、透過率の低下、反射の増大、色調の変化が発生することから、これを用いたタッチパネルにおいて、表示品質を損なうという問題がある。
特に、タッチパネルを使用する際に、透明導電フィルムに形成された電極や配線パターン等の界面が反射等によって見えてしまい、当該タッチパネルとしての視認性が劣ってしまうという問題点がある。すなわち、透明電極のパターンニング(エッチング)による電極パターンが見えないようにすることによって、タッチパネルの表示品質を良好なものとすることが求められている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、タッチパネルとして使用する際に電極の視認性に優れる無色透明なフィルムを実現することの可能な、新規かつ改良された透明導電フィルム、及び透明導電フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、複数の層が積層されて形成される透明導電フィルムであって、基材となる透明フィルムと、前記透明フィルムの一方の面上に形成される剥離防止層と、前記剥離防止層の一方の面上に形成される光学調整層と、前記光学調整層の一方の面上に形成される低屈折率層と、前記低屈折率層の一方の面上に形成される透明導電層と、を備え、前記透明導電層をエッチング処理して電極を形成する際に、反射光の色度のエッチング処理前後の差と、波長550nmの透過率のエッチング処理前後の差のそれぞれの絶対値の和が1.5未満となるように前記電極を形成されることを特徴とする。
本発明の一態様によれば、電極の界面における光干渉効果を利用して透過率を向上させ、反射率をより広い波長帯域において低下させることができるので、タッチパネルとして使用する際に電極の視認性に優れる無色透明なフィルムを実現することができる。
このとき、本発明の一態様では、前記剥離防止層がSiO、前記光学調整層がNb、前記低屈折率層がSiOからなることとしてもよい。
このようにすれば、より効率的に電極の界面における光干渉効果を利用して透過率を向上させ、反射率をより広い波長帯域において低下させることができる。
また、本発明の一態様では、前記光学調整層の膜厚は、8nm以上、12nm未満の範囲であることとしてもよい。
このようにすれば、光学調整層により各層ごとの異なる屈折率のバラツキを緩和するように調整できる。
また、本発明の一態様では、前記透明フィルムは、透明樹脂からなる基材の表面にハードコート層が形成される構成となっていることとしてもよい。
このようにすれば、表面強度を向上させた上で視認性に優れた無色透明なフィルムを実現することができる。
また、本発明の他の態様は、複数の層が積層されて形成される透明導電フィルムの製造方法であって、基板となる透明フィルムの一方の面上に剥離防止層を形成する剥離防止層形成工程と、前記剥離防止層の一方の面上に光学調整層を形成する光学調整層形成工程と、前記光学調整層の一方の面上に低屈折率層を形成する低屈折率層形成工程と、前記低屈折率層の一方の面上に透明導電層を形成する透明導電層形成工程と、前記透明導電層をエッチング処理して電極を形成するエッチング処理工程と、を有し、前記エッチング処理工程では、反射光の色度のエッチング処理前後の差と、波長550nmの透過率のエッチング処理前後の差のそれぞれの絶対値の和が1.5未満となるように前記透明導電層をエッチング処理することを特徴とする。
本発明の他の態様によれば、電極の界面における光干渉効果を利用して透過率を向上させ、反射率をより広い波長帯域において低下可能なため、タッチパネルとして使用する際に電極の視認性に優れる透明導電フィルムを効率的に製造できる。
以上説明したように本発明によれば、反射光の色度のエッチング処理前後の差と、波長550nmの透過率のエッチング処理前後の差のそれぞれの絶対値の和を1.5未満とすることにより、電極の界面における光干渉効果を利用して透過率を向上させ、反射率をより広い波長帯域において低下させることができる。このため、タッチパネルとして使用する際に、電極や配線等が見えにくくなる視認性に優れる無色透明なフィルムを実現することができる。
本発明の一実施形態に係る透明導電フィルムの概略を示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る透明導電フィルムの製造方法の概略を示すフロー図である。 (A)及び(B)は、光学調整層の膜厚変化による光学特性(透過率)の変化を示すグラフである。 エッチング処理前後における光学調整層の膜厚変化による光学特性(透過率)の変化を示すグラフである。 エッチング処理前後における光学調整層の膜厚変化による光学特性(色度b)の変化を示すグラフである。 エッチング前後の透過率の差の絶対値とエッチング前後の色度bの差の絶対値の和と光学調整層の膜厚変化との関係を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
まず、本発明の一実施形態に係る透明導電フィルムの概略構成について、図面を使用しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る透明導電フィルムの概略を示す断面図である。
本発明の一実施形態に係る透明導電フィルム10は、複数の層が積層されて形成され、例えば、投影型静電容量方式のタッチパネル用の透明導電フィルムとして適用される。本発明の一実施形態に係る透明導電性フィルム10は、図1に示すように、透明フィルム11の一方の面に、剥離防止層14、光学調整層15、低屈折率層16、及び透明導電層17がこの順に積層された4層の積層膜が形成されて構成される。
すなわち、本実施形態では、基材となる透明フィルム10の一方の面上に透明フィルム10から光学調整層15が剥離、脱落するのを防止するために設けられる剥離防止層14が形成される。そして、剥離防止層14の一方の面上に主に各層の光学特性のバランスを調整して、所望の屈折率になるように維持する機能を有する光学調整層15が形成され、光学調整層15の一方の面上に低屈折率層16が形成され、低屈折率層16の一方の面上に透明導電層17が形成される。
本発明の一実施形態に係る透明導電フィルム10に備わる透明フィルム11の基材12としては、透明な樹脂であれば、特に限定されることはないが、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)等が挙げられる。これらの中で耐薬品性、量産性等の点で、PETが特に好ましい。また、本実施形態に係る透明導電フィルム10に備わる透明フィルム11は、表面強度を向上させるためのハードコート層13が基材12の表面、具体的には、基材12の表面と裏面の両面に形成される構成となっているフィルムを用いることが好ましい。このハードコート層13には、防眩、帯電防止、減反射等の機能を一種類以上付与させることができる。ハードコート層13としては、耐摩耗、傷防止の面でシラン化合物等のSi系の材質やアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の有機系の材質が使用されることが好ましい。
本発明の一実施形態に係る透明導電フィルム10を構成する剥離防止層14としては、コストや成膜のし易さから、二酸化ケイ素SiOが好ましい。剥離防止層14は、次に積層する光学調整層15と透明フィルム11との密着性を高めて、透明フィルム10から光学調整層15が剥離、脱落するのを防止するために設けている。剥離防止層14は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成でき、通常5nm以上15nm以下の膜厚とすることができる。
本発明の一実施形態に係る透明導電フィルム10を構成する光学調整層15として、例えば、TiO、Nb、NbO、CeO、インジウム錫酸化物(ITO)等が好適に使用することができるが、コストや成膜のし易さから、五酸化ニオブNbが特に好ましい。また、高屈折率や偏光性等の光学特性に優れている点においても、五酸化ニオブNbが好ましい。光学調整層15は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成でき、その膜厚は、8nm以上、12nm未満の範囲とすることが好ましい。
本発明の一実施形態に係る透明導電フィルム10を構成する低屈折率層16として、N a F(屈折率1.3) 、NaAlF(屈折率1.35)、LiF(屈折率1.36)、MgF(屈折率1.38)、CaF(屈折率1.4)、BaF(屈折率1.3)、SiO(屈折率1.46)が好適に使用できるが、コストや成膜のし易さから、SiOが特に好ましい。低屈折率層16は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成できる。
本発明の一実施形態に係る透明導電フィルム10を構成する透明導電層17としては、酸化錫、酸化インジウム錫(ITO)、酸化アンチモン錫(ATO)等が好ましい材質として挙げられる。これらの中では、導電性、透明性、安定性の観点から、酸化インジウム錫(ITO)が特に好ましい。透明導電層17は、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法、めっき法等のドライコーティング法等により形成することができる。これらの中では、層の厚み制御の観点より、スパッタリング法が特に好ましい。
そして、本実施形態では、このように透明フィルム10の一方の面上に4層の薄膜を形成してから、透明導電層17をエッチング処理して電極や配線パターン等を形成する際に、反射光の色度のエッチング処理前後の差と、波長550nmの透過率のエッチング処理前後の差のそれぞれの絶対値の和が1.5未満となるように電極を形成されることを特徴とする。なお、色度や透過率等のエッチング処理前後における光学特性変化の解析結果等の詳細については、後述する。
次に、本発明の一実施形態に係る透明導電フィルムの製造方法について、図面を使用しながら説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る透明導電フィルムの製造方法の概略を示すフロー図である。
本実施形態では、複数の層が積層されて形成される透明導電フィルム10の製造方法は、図2に示すように、剥離防止層形成工程S11、光学調整層形成工程S12、低屈折率層形成工程S13、透明導電層形成工程S14、エッチング処理工程S15を有する。
剥離防止層形成工程S11は、基板となる透明フィルム11の一方の面上に剥離防止層14を形成する。本実施形態では、剥離防止層14は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成でき、通常、5nm以上15nm以下の膜厚となるように形成する。特に、連続して膜厚を制御して均一な成膜が可能なスパッタリング法が積層膜を効率よく作製できるため好ましい。
光学調整層形成工程S12は、剥離防止層14の一方の面上に光学調整層15を形成する。本実施形態では、光学調整層15は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成でき、その膜厚は、8nm以上、12nm未満の範囲とすることが好ましい。特に、連続して膜厚を制御して均一な成膜が可能なスパッタリング法が積層膜を効率よく作製できるため好ましい。
低屈折率層形成工程S13は、光学調整層15の一方の面上に低屈折率層16を形成する。本実施形態では、低屈折率層16は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成できる。特に、連続して膜厚を制御して均一な成膜が可能なスパッタリング法が積層膜を効率よく作製できるため好ましい。
透明導電層形成工程S14は、低屈折率層16の一方の面上に透明導電層17を形成する。本実施形態では、透明導電層17は、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法、めっき法等のドライコーティング法等により形成することができる。これらの中では、層の厚み制御の観点より、スパッタリング法が特に好ましい。
エッチング処理工程S15は、透明導電フィルム10の透明導電層17をエッチング処理して電極を形成する。本実施形態では、エッチング処理工程S15では、反射光の色度のエッチング処理前後の差と、波長550nmの透過率のエッチング処理前後の差のそれぞれの絶対値の和が1.5未満となるように、透明導電層17をエッチング処理することを特徴とする。このように、電極の界面における光干渉効果を利用して透過率を向上させ、反射率をより広い波長帯域において低下させることによって、タッチパネルとして使用する際に電極の視認性に優れる透明導電フィルム10を効率的に製造できるようになる。
本発明者は、前述した本発明の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、積層膜の光学特性(透過率、色度等)が透明導電層17のエッチング前後での変化を最小限とすることで、電極見えを防止できることを見出し、かかる知見に基づき更に研究を行った結果、本発明を完成するに至った。具体的には、反射光の色度のエッチング処理前後の差(Δb)と、波長550nmの透過反射率のエッチング処理前後の差(ΔT)のそれぞれの絶対値の和が1.5未満とすることにより、電極の界面における光干渉効果を利用して透過率を向上させ、反射率をより広い波長帯域において低下させることができることを見出し、かかる知見に基づき更に研究を行った結果、本発明を完成するに至った。また、当該透明導電フィルムをタッチパネルとして使用する際に、電極の視認性に優れる無色透明なフィルムを実現することができることを見出し、かかる知見に基づき更に研究を行った結果、本発明を完成するに至った。
前述した成膜方法、条件により作製された透明導電性フィルム10において、本発明の目的である低反射で透明の色調を有する透明導電フィルム10の評価方法として、透明導電層17のエッチング処理により電極を形成し、その光学特性を分光光度計により評価すると共に、エッチング処理による電極の界面の視認性を同時に評価することにより確認した。
すなわち、エッチング処理前の透明導電フィルム10の波長550nmにおける透過率(T1)と、エッチング処理後の透明導電フィルム10の波長550nmにおける透過率(T2)を測定し、この透過率Tの差(T2−T1)をΔTとする。また、エッチング処理前の透明導電フィルム10の380nmから780nmの分光透過率を測定し、ここから、bの値を計算により色度(b1)を求め、続いてエッチング処理後の透明導電フィルム10の380nmから780nmの分光透過率を測定し、ここから、bの値を計算により色度(b2)を求め、この色度bの差(b2−b1)をΔbとする。
ここで、エッチング処理前後の透明導電フィルム10の反射光の色度の差(Δb)、あるいはエッチング処理前後の透明導電フィルム10の波長550nmにおける透過率の差(ΔT)だけが小さくなっても、フィルム上の電極が見える場合があり、両者が共に小さくなることが重要である。すなわち、視認性に優れた透明導電フィルム10を得るためには、エッチング処理前後の透明導電フィルム10の反射光の色度の差(Δb)及び550nmにおける透過率の差(ΔT)のそれぞれの絶対値の和を1.5未満とすることにより実現することができる。
次に、本発明の一実施形態に係る透明導電フィルムの製造方法におけるエッチング処理工程15でのエッチング処理前後の光学特性変化の解析結果の詳細について、図面を使用しながら説明する。図3(A)及び(B)は、光学調整層の膜厚変化による透過率の変化を示すグラフであり、図4は、エッチング処理前後における光学調整層の膜厚変化による透過率の変化を示すグラフであり、図5は、エッチング処理前後における光学調整層の膜厚変化による色度bの変化を示すグラフである。
まず、五酸化ニオブNbからなる光学調整層15の膜厚変化に伴う光学特性変化として、透過率の変化について、エッチング処理前後での測定結果を見ると、エッチング処理前は、図3(A)に示すように、光学調整層15の膜厚が増加するに従って、透過率が何れの波長領域でも大きくなることが分かる。一方、エッチング処理後は、図3(B)に示すように、光学調整層15の膜厚が増加するに従って、透過率が何れの波長領域でも小さくなることが分かる。
前述したエッチング処理前後における光学調整層15の膜厚と透過率との関係について、波長550nmでのプロット結果を図4に示す。図4に示すように、光学調整層15の膜厚が厚くなるにつれて、透過率(550nm)が下がることから、当該透過率が低下傾向であることが分かる。特に、エッチング処理後は、その減少傾向が顕著に現れ、光学調整層15の膜厚が11nmのときに、エッチング処理前後における透過率の変化がないことが分かる。
次に、エッチング処理前後における光学調整層15の膜厚と色度bとの関係について、波長550nmでのプロット結果を図5に示す。図5に示すように、エッチング処理前は、光学調整層15の膜厚が大きくなるにつれて、色度bは、下がる傾向にあるが、エッチング処理後は、色度bが逆に増加する傾向にあることが分かる。また、光学調整層15の膜厚が8nmのときに、エッチング処理前後における色度bの変化がないことが分かる。
これらの解析結果から、エッチング処理前後における透過率の差ΔTや色度bの差Δb*の何れか一方のみを小さくしても、配線が見えてしまうことから、当該透過率の差ΔTと色度bの差Δb*を同時に小さくする必要があることが分かる。このため、本実施形態では、「エッチング前後の透過率の差ΔT」の絶対値と「エッチング前後の色度bの差Δb」の絶対値の和を求めて、当該絶対値の和が所定の範囲となる場合に、透明導電フィルム10に形成された電極や配線パターンが見えずに、本実施形態の透明導電フィルム10を適用したタッチパネルの視認性が向上することを解明した。
具体的には、「エッチング前後の透過率の差ΔT」の絶対値と「エッチング前後の色度bの差Δb」の絶対値の和が1.5未満である場合に、透明導電フィルム10に形成された電極や配線パターンの界面での反射が見られずに、本実施形態の透明導電フィルム10を適用したタッチパネルの視認性が向上することを解明した。
図6は、エッチング前後における透過率の差ΔTの絶対値と、エッチング前後の色度bの差Δbの絶対値の和と光学調整層の膜厚変化との関係を示すグラフである。図6に示すように、エッチング前後における透過率の差ΔTの絶対値と、エッチング前後の色度bの差Δbの絶対値の和は、光学調整層15の膜厚が8nm以上、12nm未満の範囲にあるときに、当該絶対値の和が1.5未満となることが分かる。すなわち、光学調整層15の膜厚を8nm以上、12nm未満の範囲とすることによって、各層ごとの異なる屈折率のバラツキを緩和するように調整されるので、電極等の界面での反射を低減して、タッチパネルの視認性の向上が図れることが分かる。
このように本実施形態の透明導電フィルム10は、透明フィルムの一方の面に剥離防止層14、光学調整層15、低屈折率層16、及び透明導電層17の順に積層された4層の膜より形成されて成る構成としている。そして、当該フィルム10をエッチング処理して透明導電層17を除去したエッチング処理前後の透明導電フィルム10において、当該フィルム10の分光透過率を測定し、反射光の色度のエッチング処理前後の差(Δb)と、波長550nmの透過反射率のエッチング処理前後の差(ΔT)のそれぞれの絶対値の和が、1.5未満であるように構成されていることを特徴とする。
すなわち、上述の本発明構成の透明導電フィルム10において、反射光の色度のエッチング処理前後の差(Δb)と、波長550nmの透過率のエッチング処理前後の差(ΔT)のそれぞれの絶対値の和を1.5未満とすることによって、電極等の界面における光干渉効果を利用して透過率を向上させ、反射率をより広い波長帯域において低下させることができるので、タッチパネルとして使用する際に電極の視認性に優れる無色透明なフィルムを実現することができる。また、本実施形態の透明導電フィルム10は、高透過率で無色透明の色調を必要とする用途に用いることができ、特に、電極をパターニングした場合にその跡が見えにくいという視認性に優れている特徴を有するため、静電容量式のタッチパネルの電極基板に好適なものとすることができる。
次に、本発明の一実施形態に係る透明導電フィルムについて、実施例及び比較例に沿ってより詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例等に限定されるものではない。また、実施例及び比較例で得られた透明導電性フィルムの評価は、透過率、色度、表面抵抗率、膜厚の項目について以下のように行った。
[透過率]
透過率Tは、紫外可視分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製型式 U−4000)に反射率測定ユニットを設置して測定を行った。作製した導電性フィルムの試料に、波長350nm以上780nm以下の範囲の光を照射した際の透過率を測定した。なお、測定に際しては波長350nm以上780nm以下の範囲で、波長を1nmごとに変化させた光を照射し、各波長についての透過率を測定した。波長が550nmの光に対する透過率の測定値を波長550nmの光に対する透過率とした。
[色度]
色度bは、測定した透過率から、JIS Z8781−4:2013に準拠した色彩計算プログラムを用いて、CIE 1976(b)色空間上の座標を計算した。
[表面抵抗率]
表面抵抗率Rs(単位:Ω/□)は、4端子法により測定した。測定装置は、三菱化学社製:MCP−T350を使用した。
[膜厚]
膜厚は、作製した試料を透過電子顕微鏡(TEM)により、積層した導電フィルムの断面を測定し、膜厚を評価した。
[電極の視認性]
電極の視認性は、作製した導電フィルムの半分をマスキングし、シュウ酸エッチングした後に、残された電極との界面を目視で観察し、界面が見えないときは○、界面が何とか見えるときを△、界面が確認できるときを×として評価した。
(実験例1〜実験例6)
透明フィルムとして、両面にハードコート層が形成された厚さ50μmのPETフィルムを用意し、Siターゲットを用いてArとOの混合雰囲気中でRF反応スパッタ法により、光学調整層の剥離防止層としてSiO層を10nm成膜した。その上にNbターゲットを用い、ArとOの混合雰囲気中でDC反応性スパッタ法により光学調整層としてNb層を所定の膜厚を成膜した。次いでその上に低屈折率層としてSiターゲットを用い、ArとOの混合雰囲気中でRF反応スパッタ法によりSiO層を35nm成膜した。更にその上に導電層として酸化錫3%の錫添加酸化インジウム膜をITOターゲットを用いてArとOの混合雰囲気中でDC反応性スパッタ法により22nm成膜し透明導電フィルムを得た。
なお、光学調整層の膜厚を、6nm、8nm、9nm、10nm、11nm、14nmを変更した以外は同じ条件で、実験例1〜実験例6の試料を作製した。
また、光学調整層を形成しないこと以外は、同じ条件で導電フィルムを作製して、これを実験例7(比較例3)とした。
得られた試料についてそれぞれ上記した評価方法により、透明導電フィルムの導電層側の表面抵抗値(Rs)、反射光の色度(b)、波長550nmの透過率(T)を測定した。また、得られた試料についてそれぞれ、当該フィルムの導電層をシュウ酸でエッチング処理した。それぞれの試料について、再度反射光の色度(b)、波長550nmの透過率(T)を測定し、さらに導電層の界面を目視で確認し、視認性を評価した。
評価結果を以下の表1にまとめて示す。
本発明の一実施形態に係る透明導電フィルムの実施例(実施例1乃至4)となる実験番号2〜5は、何れもエッチング処理した電極の界面が見えず、良好な視認性であることが確認できた。また、本発明の一実施形態に係る透明導電フィルムの比較例(比較例1及び2)となる実験番号1、6は、エッチング処理した電極の界面が見えており、視認性が不十分であることが確認できた。
このことから、タッチパネルの視認性を良好なものとするためには、透明導電フィルムの光学調整層の膜厚が8nm以上、12nm未満の範囲であることが好ましいことが分かる。すなわち、透明導電フィルムの透明フィルムを50μm、剥離防止層を10nm、低屈折率層を35nm、及び透明導電層を22nmとした場合に、光学調整層の膜厚が8nm以上、12nm未満の範囲であることが好ましいことが分かる。
また、光学調整層を備えない実験例7の比較例は、エッチング処理した電極の界面が見えており、視認性が不十分であることが確認できた。このことから、電極の界面等を見えにくくしてタッチパネルの視認性を良好なものとするためには、各層の異なる屈折率等の光学特性のバランスを維持する目的で透明導電フィルムに光学調整層を設けることが好ましいことが分かる。
一方、本発明の一実施形態に係る透明導電フィルムの実施例である実験番号2〜5の透明導電フィルムは、何れも良好な視認性、導電性を示すので、タッチパネルとして好適に使用することのできる透明導電フィルムであることが分かった。すなわち、反射光の色度のエッチング処理前後の差(Δb)と、波長550nmの透過率のエッチング処理前後の差(ΔT)のそれぞれの絶対値の和を1.5未満とすることによって、タッチパネルとして使用する際に電極の視認性に優れる無色透明なフィルムを実現することができることが分かった。
なお、上記のように本発明の各実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、透明導電フィルムの構成、動作も本発明の各実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
10 透明導電フィルム、11 透明フィルム、12 基材、13 ハードコート層、14 剥離防止層、15 光学調整層、16 低屈折率層、17 透明導電層、S11 剥離防止層形成工程、S12 光学調整層形成工程、S13 低屈折率層形成工程、S14 透明導電層形成工程、S15 エッチング処理工程

Claims (5)

  1. 複数の層が積層されて形成される透明導電フィルムであって、
    基材となる透明フィルムと、
    前記透明フィルムの一方の面上に形成される剥離防止層と、
    前記剥離防止層の一方の面上に形成される光学調整層と、
    前記光学調整層の一方の面上に形成される低屈折率層と、
    前記低屈折率層の一方の面上に形成される透明導電層と、を備え、
    前記透明導電層をエッチング処理して電極を形成する際に、反射光の色度のエッチング処理前後の差と、波長550nmの透過率のエッチング処理前後の差のそれぞれの絶対値の和が1.5未満となるように前記電極を形成することを特徴とする透明導電フィルム。
  2. 前記剥離防止層がSiO、前記光学調整層がNb、前記低屈折率層がSiOからなることを特徴とする請求項1に記載の透明導電フィルム。
  3. 前記光学調整層の膜厚は、8nm以上、12nm未満の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明導電フィルム。
  4. 前記透明フィルムは、透明樹脂基板の表面にハードコート層が形成される構成となっていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の透明導電フィルム。
  5. 複数の層が積層されて形成される透明導電フィルムの製造方法であって、
    基板となる透明フィルムの一方の面上に剥離防止層を形成する剥離防止層形成工程と、
    前記剥離防止層の一方の面上に光学調整層を形成する光学調整層形成工程と、
    前記光学調整層の一方の面上に低屈折率層を形成する低屈折率層形成工程と、
    前記低屈折率層の一方の面上に透明導電層を形成する透明導電層形成工程と、
    前記透明導電層をエッチング処理して電極を形成するエッチング処理工程と、を有し、
    前記エッチング処理工程では、反射光の色度のエッチング処理前後の差と、波長550nmの透過率のエッチング処理前後の差のそれぞれの絶対値の和が1.5未満となるように前記透明導電層をエッチング処理することを特徴とする透明導電フィルムの製造方法。
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