JP2017013044A - 光触媒 - Google Patents

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浩 板原
晴雄 今川
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晴雄 今川
次雄 佐藤
Tsugio Sato
次雄 佐藤
しゅう 殷
Shu In
しゅう 殷
暁勇 呉
Xiaoyong Wu
暁勇 呉
重英 秩父
Shigehide Chichibu
重英 秩父
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一信 小島
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Abstract

【課題】Ca含有Si化合物を主成分とし、NO浄化に適した安価な光触媒を提供すること。【解決手段】光触媒は、元素比が、0.01<Ca/Si<0.5、0≦O/Si<1、及び、0≦H/Si<1で表されるCa含有Si化合物粉末を含み、XRD測定において、SiO2に帰属されるピークを持たない。光触媒は、導電助剤をさらに含んでいても良い。導電助剤は、カーボンが好ましく、導電助剤の含有量は、1重量%以上30重量%以下が好ましい。また、導電助剤は、金属粒子及び/又は金属シリサイド粒子でも良い。このような光触媒に510nm以下の波長の光を含む照射光を照射すると、NOを除去することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、光触媒に関し、さらに詳しくは、Ca含有Si化合物粉末を主成分として含み、NO浄化に適した光触媒に関する。
金属シリサイドは、Siを多量に含んでいるため、一般に、耐酸化性や耐食性に優れている。また、金属シリサイドの中には、半導体特性や高温における機械的特性に優れたものも知られている。そのため、金属シリサイドは、熱電材料、発熱体、耐酸化コーティング材料、高温構造材料、半導体などへの応用が期待されている。
このような金属シリサイドの製造方法に関しては、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、
(a)CaSiy粉末とMnCl2粉末とを、Mn/Ca比(α)が2又は5となるように混合し、
(b) 得られた混合物を圧粉成形し、圧粉体を550〜700℃×5hr加熱し、
(c) 得られた加熱物を粉砕し、粉末をエタノールで洗浄する
方法が開示されている。同文献には、このような方法により、MnSi相の含有量が極めて少ないMnSix粉末が得られる点が記載されている。
特許文献2には、CaSi2基板と金属ハロゲン化物とを離間して配置し、ハロゲンによりCaを引き抜き、単層のCa欠損カルシウムシリサイド薄膜を得る方法が開示されている。
同文献には、このような方法により、不純物の少ないカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物を簡便に合成することができる点が記載されている。
特許文献3には、
(a)層状CaSi2と、遷移金属塩化物とを、M/Ca<1(モル比、Mは前記遷移金属塩化物に含まれる遷移金属元素)となるように混合し、
(b)得られた混合物を加熱し、前記遷移金属塩化物から発生する塩素ガス成分により前記層状CaSi2からCaの一部を引き抜き、
(c)得られた反応物を、前記遷移金属元素塩化物及び/又は塩化Caを溶解可能な1又は2以上の溶媒で洗浄し、未反応の前記遷移金属元素塩化物及び副生した前記塩化Caを除去する
方法が開示されている。
同文献には、このような方法により、遷移金属シリサイド及びCa欠損層状カルシウムシリサイドを含み、かつ、Siを含まない複合シリサイド粉末が得られる点が記載されている。
また、非特許文献1には、CaSi2を電気化学的に酸化させることにより、Si層の層間にあるCaを引き抜く方法が開示されている。
同文献には、
(a)CaSi2から除去されたCaの割合は、30〜50%である点、
(b)このような方法によりCaSi2からCaを完全に取り除くのは難しい点、及び、
(c)Ca除去の困難性は電気化学的酸化の不均一性に由来する点、
が記載されている。
非特許文献2には、層状構造を有するCaSi1.85Mg0.15を塩酸で処理する方法が開示されている。
同文献には、このような方法によりCaSi1.85Mg0.15からCaが脱離し、Siナノシートが得られる点が記載されている。
非特許文献3には、層状CaSi2粉末を、1Mの塩酸水溶液又は濃硫酸水溶液に分散させ、層状CaSi2からCaを引き抜き、シロキセン(Si636)を合成する方法が開示されている。
特許文献4及び非特許文献4には、遷移金属シリサイド粒子(MnSix、FeSix、NiSix)と、Ca欠損層状Caシリサイドとを含む複合体が開示されている。
これらの文献には、このような材料をLi二次電池の負極材料に使用することができる点が記載されている。
さらに、非特許文献5には、CaSi2とTaCl5とを反応させると、Taシリサイドを生成させることなく、Ca欠損層状Caシリサイドが得られる点が記載されている。
非特許文献2に記載された方法を用いると、CaSi1.85Mg0.15からCa(及びMg)が全量脱離したSiナノシートを得ることができる。しかしながら、同文献に記載された方法では、CaSi2からCaの一部が脱離したCa含有Si化合物を得ることは難しい。
また、非特許文献1に記載された方法を用いると、Ca欠損層状カルシウムシリサイドを得ることができる。しかしながら、同文献に記載された方法では、分離困難なカーボンとの混合圧粉体となり、CaSi2からCaの一部が脱離したCa含有Si化合物の選択的生成が困難である。
また、非特許文献3に記載された方法を用いると、シロキセンを形成することができる。しかしながら、同文献に記載された方法では、Caが完全に脱離するため、Caを含むシロキセンは得られない。
一方、特許文献1に記載された方法を用いると、CaSiyがすべてMnSixの生成に消費され、Ca欠損層状カルシウムシリサイドは得られない。また、合成条件によっては、Siを含む混合物となる。
さらに、特許文献3に記載された方法を用いると、遷移金属シリサイド及びCa欠損層状カルシウムシリサイドの混合物は得られるが、単相のCa欠損層状カルシウムシリサイドは得られない。
これに対し、特許文献2又は非特許文献5に記載された方法を用いると、単相のCa欠損層状カルシウムシリサイドを得ることができる。
しかしながら、この種の材料を光触媒(特に、NO浄化触媒)に応用した例は、従来にはない。
特開2011−126759号公報 特開2014−240314号公報 特開2015−051883号公報 特許第5387613号公報
S.Yamanaka et al., Physica 105B, 230(1981) H. Nakano et al., Angew. Chem. Int. Ed. pp. 6303-6306 (2006) S.Yamanaka et al.,Materials Research Bulletin, Vol 31, No. 3, pp. 307-316 (1996) Song-Yui Oh et al., J. Mater. Chem. A, 2, 12501(2014) H. Imagawa et al., J. Mater. Chem. A, 3, 9411(2015)
本発明が解決しようとする課題は、Ca含有Si化合物を主成分とする光触媒を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、NO浄化に適しており、しかも、安価な光触媒を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る光触媒は、
元素比が、
0.01<Ca/Si<0.5、
0≦O/Si<1、及び、
0≦H/Si<1
で表されるCa含有Si化合物粉末を含み、
XRD測定において、SiO2に帰属されるピークを持たないことを要旨とする。
光触媒は、さらに導電助剤を含んでいても良い。
層状CaSi2は、金属的な性質を持つ。一方、層状CaSi2からCaが引き抜かれるに伴い、次第に半導体的性質を帯びるようになり、ある量以上のCaが引き抜かれると、半導体特性を持つ粉末となる。特に、Ca/Si比が0.03〜0.3の範囲にあるCa含有Si化合物のバンドギャップは、1.0〜1.9eVであり、波長に換算すると650〜1240nmに相当する。そのため、バンドギャップに相当する波長以下の光を含む照射光を照射することで、Ca含有Si化合物が光触媒として機能し、NO浄化反応が可能となる。
Ca含有Si化合物によるNOの光触媒浄化機構は明らかではないが、活性酸素種によるNOのHNO3への酸化や、N2への直接分解が生じていると考えられる。本発明に係るCa含有Si化合物のバンドギャップは、このようなNOを浄化する活性酸素種の形成に相応しい位置にあると考えられる。
Ca/Si比とNO除去率との関係を示す図である。 カーボン量とNO除去率との関係を示す図である。 実施例1〜3及び比較例4で得られた粉末のX線回折パターンである。 実施例1〜3で得られた粉末のFT−IRスペクトルである。
複合粉末の合成方法を示すフロー図である。 実施例21〜23で得られた複合粉末のXRDパターンである。 実施例22で得られた複合粉末のSTEM像である。 実施例24〜25で得られた複合粉末のXRDパターンである。
以下に本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 光触媒]
本発明に係る光触媒は、
元素比が、
0.01<Ca/Si<0.5、
0≦O/Si<1、及び、
0≦H/Si<1
で表されるCa含有Si化合物粉末を含み、
XRD測定において、SiO2に帰属されるピークを持たない。
光触媒は、さらに導電助剤を含んでいても良い。
[1.1. Ca含有Si化合物]
[1.1.1. 平均組成]
本発明において、「Ca含有Si化合物」とは、
(a)層状CaSi2からCaの一部を引き抜くことにより得られるナノシート状の層状物質であって、Ca含有量が0.01at%を超えるもの(以下、これを「Ca欠損カルシウムシリサイド」ともいう)、及び、
(b)Ca欠損カルシウムシリサイドを含む反応生成物をH2OとHClの共存下で洗浄することにより得られるナノシート状の層状物質であって、Ca含有量が0.01at%を超えるもの(以下、これを「Ca、O、H含有Si化合物」ともいう)
をいう。
Ca含有Si化合物の元素比は、形式的には、0.01<Ca/Si<0.5、0≦O/Si<1、及び、0≦H/Si<1と表せる。
光触媒活性を得るためには、Ca/Si比は、0.01超0.5未満である必要がある。Ca/Si比の下限値は、好ましくは、0.03以上、さらに好ましくは、0.05以上である。また、Ca/Si比の上限値は、好ましくは、0.35以下、さらに好ましくは、0.33以下、さらに好ましくは、0.3以下である。
同様に、O/Si比は、0以上1未満である必要がある。O/Si比は、さらに好ましくは、0.3以上0.8以下、さらに好ましくは、0.45以上0.7以下である。
同様に、H/Si比は、0以上1未満である必要がある。
後述するように、層状CaSi2と金属塩化物とを反応させると、原料の層状CaSi2からCaが引き抜かれる。層状物質は、CaSi2相を構成するSiシート層が引き抜き反応の際に剥離することにより生成すると考えられる。
この時、金属塩化物の種類及び反応温度を最適化すると、
(a)金属塩化物から発生する塩素ガス成分と層状CaSi2との固気反応のみが生じ、Ca欠損カルシウムシリサイドを含み、かつ、実質的に金属粒子及び金属シリサイド粒子を含まない粉末が得られる場合と、
(b)原料間の反応がさらに進行し、Ca欠損カルシウムシリサイドに加えて、金属粒子及び/又は金属シリサイド粒子が生成する場合と、
がある。
金属粒子及び金属シリサイド粒子は、いずれも光触媒として機能しないが、導電助剤として機能すると考えられる。
なお、本発明において、「金属粒子」というときは、特に断らない限り、遷移金属を主成分として含む粒子を意味する。
同様に、本発明において、「金属シリサイド粒子」というときは、特に断らない限り、遷移金属シリサイドを主成分として含む粒子を意味する。
剥離した層状物質は、層間から完全にCaが抜き取られている場合と、層間に若干のCa原子が残っている場合とがある。すなわち、反応直後の粉末は、Ca欠損カルシウムシリサイドのみからなる場合と、Ca欠損カルシウムシリサイドに加えて、Siナノシートが含まれている場合とがある。
ここで、「Siナノシート」とは、Siを主成分とする板状又はナノシート状の層状物質であって、Ca含有量が0.01at%以下であるものをいう。
なお、層間にCa原子が残っている場合、電気的中性を保つために、層間には、さらにCl原子が導入されている可能性があると考えられる。
また、得られたCa欠損カルシウムシリサイドは、未反応原料及び副生成物を除去するため、溶媒で洗浄される。この時、溶媒中に微量のH2Oが含まれている場合、H2Oと副生成物により形成されるHClの共存下において、OとHを含むシロキセン類似構造をSi平面が形成し、Ca、O、H含有Si化合物粉末が得られる。
本発明においては、後述するように、原料中のM/Ca比を制御することにより、引き抜きに用いる塩素ガス量、又は金属シリサイドの生成量を制御することができる。そのため、Ca含有Si化合物中のCaの組成制御が可能となる。具体的には、後述する方法を用いると、0.01<Ca/Si<0.5、あるいは、0.05≦Ca/Si<0.5であるCaSi化合物(すなわち、Ca含有量が1.0at%超、あるいは、4.76at%以上であるCa含有Si化合物)が得られる。
[1.1.2. その他の成分]
本発明に係る光触媒は、Ca含有Si化合物及び導電助剤を主成分とするが、それ以外の成分を含むことがある。
例えば、上述したように、Caの引き抜き反応を過度に進行させると、粉末中にSiナノシートが含まれる場合がある。本発明に係る光触媒は、このようなSiナノシートが含まれていても良い。
本発明において、出発原料には層状CaSi2が用いられる。この層状CaSi2をSi過剰の条件で合成すると、合成物中に1〜5μm程度のSi粒子が含まれることがある。これをそのままCa含有Si化合物粉末の合成に用いた場合、生成物には、出発原料に由来する1〜5μmあるいはそれ以上のSi粒子が含まれる。本発明に係る光触媒は、このような出発原料に由来するSi粒子が含まれていても良い。
ここで、「Si粒子」とは、Siを主成分とする粒子であって、Ca含有量が0.01at%以下であるものをいう。
さらに、合成された粉末中には、上記以外の相(異相)が含まれていても良い。但し、合成された粉末の特性に悪影響を及ぼす異相は、少ないほど良い。
異相としては、例えば、
(1)出発原料として用いた金属塩化物の残留物、
(2)金属元素Mの酸化物、SiO2、塩化Caなどの引き抜き反応時の副生成物、
などがある。
本発明に係る光触媒は、これらの異相の内、SiO2粒子を含まない。合成直後の光触媒に含まれるSiを含む化合物は、Ca含有Si化合物のみ、又は、Ca含有Si化合物と金属シリサイドのみからなる。
ここで、「SiO2粒子を含まない」とは、粉末のX線回折パターンにおいて、SiO2に帰属されるピークが存在しないことをいう。
[1.1.3. 細孔]
Ca含有Si化合物粉末は、層状CaSi2からCaを引き抜くことにより製造される。そのため、Caの引き抜き反応に由来する細孔を持つ。細孔の大きさ及び細孔容量は、製造条件に応じて異なる。
後述する方法を用いて粉末を製造すると、粉末の細孔径は、1nm以上10nm以下の範囲となる。
同様に、粉末の細孔容量は、0.03cc/g以上となる。製造条件を最適化すると、細孔容量が0.07cc/g程度の粉末が得られる。
[1.1.4. 比表面積]
Ca含有Si化合物粉末は、層状CaSi2からCaを引き抜くことにより製造されるため、相対的に高い比表面積を持つ。比表面積の大きさは、製造条件に応じて異なる。
後述する方法を用いて粉末を製造すると、粉末の比表面積は、1m2/g以上となる。製造条件を最適化すると、比表面積が10m2/g程度の粉末が得られる。
[1.1.5. バンドギャップ]
層状CaSi2は、金属的な性質を持つ。一方、層状CaSi2からCaが引き抜かれるに伴い、次第に半導体的性質を帯びるようになり、ある量以上のCaが引き抜かれると、半導体特性を持つ粉末となるる。
後述する方法を用いてCa含有Si化合物粉末を製造する場合において、製造条件を最適化すると、半導体特性を持ち、かつ、バンドギャップが0.5eV以上3.0eV以下である粉末が得られる。製造条件を最適化すると、バンドギャップは、0.7eV以上2.8eV以下、0.8eV以上2.5eV以下、あるいは、1.0eV以上1.9eV以下となる。
[1.2. 導電助剤]
[1.2.1. 導電助剤の材料]
光触媒応用では、光励起により生成される電子と正孔を効率的に光触媒反応に使用させるため、電子と正孔の再結合を抑制することが必要である。光触媒に白金等の貴金属を担持し、光触媒で生成した電子を貴金属側に速やかに移動させると、電子−正孔の再結合の抑制が可能であるが、貴金属以外の異種半導体やカーボン等の導電性物質の共存でも同様の効果が期待できる。そのため、Ca含有Si化合物粉末の導電率が不足しているときは、Ca含有Si化合物粉末に導電助剤を添加するのが好ましい。
導電助剤としては、例えば、カーボン、導電性ポリマー、金属粒子、貴金属粒子、金属シリサイド粒子などがある。カーボン材料には、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどがある。光触媒は、これらのいずれか1種の導電助剤を含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。
これらの中でも、カーボン材料は、安価な上に、分散性が高く、軽量であるため、導電助剤として好適である。
また、後述する第2の方法を用いると、適量の金属粒子及び/又は金属シリサイド粒子を含む複合粉末が得られる。金属粒子及び金属シリサイド粒子は、導電率が高いので、これらをそのまま導電助剤として用いることができる。
[1.2.2. 導電助剤の量]
光触媒が導電助剤を含む場合、導電助剤の量は、Ca含有Si化合物粉末の組成及び導電助剤の組成に応じて最適な量を選択する。
一般に、導電助剤の含有量(=光触媒の総重量に対する前記導電助剤の重量の割合)が少なすぎると、光触媒の電子伝導性が不足する場合がある。例えば、導電助剤がカーボンである場合、導電助剤の含有量は、1重量%以上が好ましい。導電助剤の含有量は、さらに好ましくは、3重量%以上、さらに好ましくは、5重量%以上である。
一方、導電助剤の量が過剰になると、光触媒に含まれるCa含有Si化合物の割合が少なくなり、触媒性能が低下する。例えば、導電助剤がカーボンである場合、導電助剤の含有量は、30重量%以下が好ましい。導電助剤の含有量は、さらに好ましくは、20重量%以下、さらに好ましくは、15重量%以下である。
カーボン以外の導電助剤も同様であり、適度な導電率が得られるように、Ca含有Si化合物の組成及び導電助剤の種類に応じて最適な含有量を選択するのが好ましい。
[1.3. 導電率]
光触媒の導電率は、Ca含有Si化合物の組成、並びに、導電助剤の種類及び量により制御することができる。高い触媒性能を得るためには、光触媒の導電率は、高い程良い。製造条件を最適化すると、光触媒の導電率は、1×10-5S/cm以上となる。製造条件をさらに最適化すると、光触媒の導電率は、1×10-4S/cm以上、1×10-3S/cm以上、あるいは、1×10-2S/cm以上となる。
[1.4. 用途]
本発明に係る光触媒は、種々の触媒反応に用いることができる。本発明に係る光触媒は、特に、NO浄化触媒として好適である。
Ca含有Si化合物を光触媒として機能させるためには、バンドギャップに対応する波長以下の波長を持つ光を含む照射光を照射する必要がある。Ca含有Si化合物を光触媒として機能させるためには、510nm以下の波長の光を含む照射光を照射するのが好ましい。
[2. Ca含有Si化合物の製造方法(1)]
本発明の第1の実施の形態に係るCa含有Si化合物粉末の製造方法は、実質的にCa含有Si化合物のみからなる粉末を製造するための方法であって、混合工程と、反応工程と、洗浄工程とを備えている。
[2.1. 混合工程]
まず、層状CaSi2と、金属元素Mを含む金属塩化物(A)とを混合する(混合工程)。
[2.1.1. 金属塩化物(A)]
本実施の形態において、金属塩化物(A)は、塩素ガスを放出することによって金属塩化物(A)よりも塩素量が少ない同系の塩化物を生成するものであって、溶媒可溶性の塩化物からなる。この点が、従来とは異なる。
なお、塩素ガスはCaSi2からCaを引き抜いてCaCl2を生成する。この際、一般に、金属塩化物(A)よりも塩素量が少ない金属塩化物は安定性が高いため、層状CaSi2と反応して金属シリサイドを生成する温度は、CaSi2からのCa引き抜き反応が起こる温度よりも有為に高い。
このような条件を満たす金属塩化物(A)としては、例えば、TaCl5(融点又は分解点:216℃)、NbCl5(融点:194℃)、FeCl3(融点:282℃)などがある。出発原料中には、これらのいずれか1種の金属塩化物(A)が含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
[2.1.2. M/Ca比]
本実施の形態において、原料全体に含まれるCaのモル数に対する金属元素Mのモル数の比(=M/Ca比(モル比))は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。
一般に、M/Ca比が大きくなるほど、Caの引き抜き反応が進行しやすくなる。しかしながら、M/Ca比が大きくなりすぎると、Caの引き抜き反応が過度に進行する。また、反応生成物中には、金属塩化物(A)又は塩素量の少ない同系塩化物が多量に残存し、洗浄除去に要する工数が増大する。従って、M/Ca比は、5以下が好ましく、1以下がより好ましい。
一方、M/Ca比が小さくなりすぎると、Caの引き抜き反応が不十分となる。高い細孔容量を持つ粉末を得るためには、M/Ca比は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましい。M/Ca比は、さらに好ましくは、0.1以上である。
[2.2. 反応工程]
次に、前記混合工程で得られた混合物を加熱する(反応工程)。これにより、前記金属塩化物(A)から発生する塩素ガス成分により、前記層状CaSi2からCaの一部が引き抜かれると同時に、CaCl2が生成する。また、前記金属塩化物(A)は、より塩素量の少ない同系の金属塩化物に変化する。反応後、反応生成物を冷却する。
最適な加熱温度は、金属塩化物(A)の種類、出発原料中のM/Ca比、目的とするCaの引き抜き量などにより異なる。
一般に、加熱温度が低くなるほど、雰囲気中に放出される塩素ガス成分の量が少なくなるので、Caの引き抜き反応が穏やかに進行する。しかしながら、加熱温度が低くなりすぎると、現実的な時間内で引き抜き反応が進行しなくなる。従って、加熱温度は、融点又は分解点の内のいずれか低い方の温度の0.8倍以上が好ましく、より好ましくは0.9倍以上である。
一方、加熱温度が高くなるほど、Caの引き抜き反応が進行しやすくなる。しかしながら、加熱温度が高くなりすぎると、金属塩化物(A)の溶融又は分解が過度に進行し、溶媒不溶性の化合物に変化する場合がある。また、層状CaSi2からCaが引き抜かれると層状CaSi2が微細化するため、反応性が高くなる。そのため、Siと単体金属とを溶融させて金属シリサイドを合成するのに比べると、層状CaSi2と金属塩化物とを反応させた方が、より低温で金属シリサイドを形成する場合がある。特許文献4においては、Fe系では塩素量が最も少ない金属塩化物にあたるFeCl2と層状CaSi2との混合原料を350℃以上で加熱することで、Feシリサイドが生成している。従って、加熱温度は、溶媒不溶性の化合物が生成する温度未満の温度、又は、金属シリサイドの生成温度(金属塩化物と層状CaSi2とが反応して金属シリサイドを生成する温度)未満の温度を選定するのが好ましい。
例えば、金属塩化物(A)がTaCl5である場合、その融点又は分解点は、216℃である。但し、TaCl5の沸点は242℃のため、安全性から沸点以下で反応を進めることが好ましい。
従って、金属塩化物(A)としてTaCl5を用いる場合において、Taシリサイドを生成させることなく、Caの引き抜き反応を効率よく進行させるためには、加熱温度は、170℃以上240℃以下が好ましい。加熱温度は、さらに好ましくは、195℃以上230℃以下である。
なお、原料中に2種以上の金属塩化物(A)が含まれる場合、最も低い金属シリサイド生成温度より低い温度で加熱すれば、金属シリサイドの生成を回避することができる。
加熱時間は、加熱温度に応じて最適な時間を選択する。加熱時間は、加熱温度にもよるが、通常、1〜50時間である。
また、加熱時の雰囲気は、原料の酸化を防ぐために、不活性雰囲気が好ましい。
反応終了後、反応物を冷却する。冷却は、急冷でも良く、あるいは、徐冷でも良い。
[2.3. 洗浄工程]
次に、前記反応工程で得られた反応物を1又は2以上の溶媒で洗浄する(洗浄工程)。これにより、反応混合物から未反応原料及び副生成物が除去され、本発明に係るCa含有Si化合物粉末が得られる。
洗浄は、
(1)未反応の前記金属塩化物(A)、
(2)前記金属塩化物(A)から塩素の一部が放出されることにより生成する同系の塩化物、及び
(3)反応生成物である塩化Ca
を除去するために行う。また、洗浄は、Ca含有Si化合物にO及び/又はHを含有させるために行う場合もある。
洗浄に用いる溶媒は、金属塩化物(A)、同系の塩化物、又は塩化Caのいずれか1種を溶解可能なものでも良く、あるいは、2種以上を溶解可能なものでも良い。
また、その際の溶媒には、微量のH2Oを含むことが好ましい。これにより、溶媒に含まれるH2Oと副生成物により形成されるHClの共存下において、Ca欠損カルシウムシリサイドのCa架橋を維持して、O及びHが含有されたシロキセン類似構造をSi平面が形成し、Ca、O、H含有Si化合物粉末が得られる。この際、SiO2粒子は含まれない。
金属塩化物(A)、同系の塩化物、又は塩化Caのいずれか1種又は2種を溶解可能な2種以上の溶媒を用いる場合、洗浄は、多段階に分けて行うか、あるいは、これらの溶媒の混合溶媒を用いる必要がある。
一方、金属塩化物(A)、同系の塩化物及び塩化Caを同時に溶解可能な溶媒を用いる場合、洗浄は、単一の溶媒を用いて一段階で行うことができる。
例えば、金属塩化物(A)がTaCl5である場合、TaCl5、TaCl5-x及びCaCl2を同時に溶解可能な溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、ジエチルエーテルなどがある。
これらの溶媒は、いずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
洗浄後、固形分を分離すると、本発明に係るCa含有Si化合物粉末が得られる。得られた粉末は、そのまま、又は、必要に応じて粉砕し若しくは導電助剤を添加した後、光触媒として用いることができる。
[3. Ca含有Si化合物の製造方法(2)]
本発明の第2の実施の形態に係るCa含有Si化合物の製造方法は、Ca含有Si化合物と、金属粒子及び/又は金属シリサイド粒子とを含む複合粉末を製造するための方法であって、混合工程と、反応工程と、洗浄工程とを備えている。本実施の形態に係る方法は、さらに磁気選別工程を備えていても良い。
[3.1. 混合工程]
まず、層状CaSi2と、金属元素Mを含む金属塩化物(B)とを混合する(混合工程)。
[3.1.1. 金属塩化物(B)]
本実施の形態において、金属塩化物(B)は、層状CaSi2と反応することが可能なものであれば良く、その融点や分解点は特に限定されない。また、塩素量の少ない同系の塩化物が存在するものである必要もない。
金属塩化物(B)としては、例えば、MnCl2、FeCl2、NiCl2、CuCl2、CoCl2などがある。出発原料中には、これらのいずれか1種の金属塩化物(B)が含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
[3.1.2. M/Ca比]
本実施の形態において、層状CaSi2と金属塩化物(B)とを、M/Ca比(モル比)(α)がα≧1となるように混合するのが好ましい。
例えば、金属塩化物(B)がMnCl2である場合、層状CaSi2とMnCl2との反応は、理想的には、次の(1)式のように表すことができる。
CaSi2+αMnCl2
MnSix+(2−x)Si+(α−1)MnCl2+CaCl2 ・・・(1)
(1)式に従って反応が進む場合において、α(Mn/Ca比)が1であるときには、理想的には、すべてのMnCl2がCaSi2との反応に消費される。αが1を超えると、未反応のMnCl2がそのまま残る。しかしながら、未反応のMnCl2及び副生したCaCl2は、いずれも溶媒(例えば、エタノール)に可溶であるため、反応物からMnCl2及びCaCl2を除去するのは比較的容易である。従って、αは、1以上が好ましい。
一方、MnCl2の必要以上の添加は、実益がないだけでなく、未反応のMnCl2を除去するための工数が増大する。従って、αは、5以下が好ましい。αは、さらに好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。
なお、αが1未満である場合、合成された粉末中にはCaSi2が残留する。CaSi2は、後述する洗浄工程において除去できないが、用途によっては、CaSi2が残留していても実害がない場合がある。このような場合には、αは1未満であっても良い。
また、金属塩化物(B)の種類によっては、金属シリサイド粒子に代えて、又は、これに加えて金属粒子が生成する場合もある。
[3.2. 反応工程]
次に、前記混合工程で得られた混合物を加熱し、冷却する(反応工程)。
加熱温度は、金属塩化物(B)と層状CaSi2との反応が効率よく進行する温度であれば良い。
一般に、加熱温度が低すぎると、実用的な時間内に反応が完結しない。従って、加熱温度は、金属塩化物(B)の融点(Tm)の30%以上が好ましい。加熱温度は、さらに好ましくは、Tmの35%以上、40%以上、あるいは、50%以上である。
一方、加熱温度が高くなりすぎると、原料が溶融して粗大な粉末が生成したり、あるいはCa含有Si化合物の割合が減少する。従って、加熱温度は、金属塩化物(B)の融点(Tm)の98%以下が好ましい。加熱温度は、さらに好ましくは、Tmの95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、あるいは、70%以下である。
最適な加熱温度は、金属塩化物(B)の種類により異なる。また、最適な加熱温度は、実験により求めることもできるが、生成エンタルピーを考慮して熱力学的に予測することもできる。
例えば、金属塩化物(B)としてMnCl2を用いる場合、加熱温度は、400℃〜630℃が好ましい。加熱温度は、さらに好ましくは、500℃〜630℃である。
また、例えば、金属塩化物(B)としてFeCl2を用いる場合、加熱温度は、300℃〜500℃が好ましい。加熱温度は、さらに好ましくは、350℃〜450℃である。
原料中に2種以上の金属塩化物(B)が含まれる場合、加熱温度は、少なくとも1種類の金属塩化物(B)について、上述した条件を満たす温度であれば良い。
加熱時間は、加熱温度に応じて最適な時間を選択する。加熱時間は、加熱温度にもよるが、通常、1〜50時間である。
また、加熱時の雰囲気は、原料の酸化を防ぐために、不活性雰囲気が好ましい。
反応終了後、反応物を冷却する。冷却は、急冷でも良く、あるいは、徐冷でも良い。
[3.3. 洗浄工程]
次に、前記反応工程で得られた反応物を、金属塩化物(B)及び/又は塩化Caを溶解可能な1又は2以上の溶媒で洗浄し、未反応の金属塩化物(B)及び副生した前記塩化Caを除去する(洗浄工程)。洗浄工程の詳細については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
洗浄後、固形分を分離すると、Ca含有Si化合物と、金属粒子及び/又は金属シリサイド粒子とを含む複合粉末が得られる。得られた複合粉末は、そのまま、又は、必要に応じて粉砕し若しくは他の導電助剤をさらに添加した後、光触媒として用いることができる。また、洗浄した粉末は、後述する磁気選別工程に供しても良い。
[3.4. 磁気選別工程]
次に、必要に応じて、洗浄が行われた複合粉末を溶媒に再分散させ、分散液から磁性を持つ粒子を分離する(磁気選別工程)。
金属シリサイドの中には、磁性を持つもの(例えば、Fe3Si)がある。金属シリサイドは、専ら電子伝導体として機能し、通常、光触媒として機能しない。この点は、金属粒子も同様である。そのため、複合粉末に含まれる金属粒子及び金属シリサイド粒子が過剰である場合には、高い光触媒能が得られない場合がある。
これに対し、複合粉末に含まれる金属粒子及び金属シリサイド粒子の中に磁性体が含まれている場合、合成された複合粉末の磁気選別を行うことにより、複合粉末に含まれる金属粒子及び金属シリサイド粒子の割合を制御することができる。その結果、選別後の粉末に含まれるCa含有Si化合物の割合を増大させることができる。
磁気選別を行う際の溶媒は、特に限定されるものではなく、複合粉末を分散可能なものであればよい。
また、磁気選別は、分散液中に磁場を印加することにより行う。磁場を印加する方法としては、例えば、分散液中に磁石を浸漬する方法などがある。
[4. 作用]
Ca含有Si化合物粉末は、通常、合成が困難な化合物である。また、得られたとしても他の化合物との複合体として得られる。しかし、一般に、出発原料の種類や量、あるいは合成条件のみによって、複合体に含まれる他の化合物の量を制御するのは難しい。
これに対し、層状CaSi2と金属塩化物(B)とを反応させると、Ca含有Si化合物に加えて、金属粒子及び/又は金属シリサイド粒子が生成する。これらは導電助剤として機能するため、その含有量が適量である場合には、合成された複合体をそのまま光触媒として用いることができる。
さらに、層状CaSi2と金属塩化物(A)とを反応させる場合において、金属塩化物(A)として、特定の条件を満たす化合物を用いると、金属粒子及び金属シリサイド粒子を生成させることなく、層状CaSi2からのCaの引き抜き反応が生じる。出発原料である金属塩化物(A)、並びに、反応副生成物である塩素量の少ない同系の塩化物及び塩化Caは、何れも溶媒に可溶な化合物である。そのため、反応物から金属塩化物(A)、同系の塩化物、及び塩化Caを除去すれば、Ca含有Si化合物のみを含み、かつ、金属シリサイドを含まない粉末が得られる。
さらに、原料中のM/Ca比の制御を通じて、引き抜きに用いる塩素ガス量を制御することができる。その結果、Ca含有Si化合物の組成制御が可能となる。
例えば、TaCl5は、融点又は分解点が216℃と非常に低い化合物であるため、低温から塩素ガスを放出する。そのため、金属シリサイドの生成が起こらない温度において、塩素ガスによりCaSi2からCaを引き抜く反応を進めることができる。NbCl5(融点:194℃)、FeCl3(融点:282℃)なども同様である。
ある材料を光触媒として機能させるためには、その材料は、光触媒の反応に適したバンドギャップを持つ必要がある。シリコン基材料は、半導体ではあるものの、光触媒としての応用例は少ない。また、他の材料(Fe23やTiO2など)との複合体として光触媒に応用された例も見られるが、シリコン基材料のみをNO浄化触媒に応用した例は皆無である。
本願と同様のNO浄化反応を示す他の材料としては、TiO2が挙げられる。しかし、Tiのクラーク数は0.46とSi(クラーク数:25.8)の1/50以下、Ca(同3.38)の1/7以下である。そのため、豊富に存在し、安価であるシリコン基材料に、新機能としてNOを浄化する光触媒機能を付与することは、原料供給の面から優位性がある。
特に、Ca/Si比が0.03〜0.3の範囲にあるCa含有Si化合物のバンドギャップは、1.0〜1.9eVであり、波長に換算すると650〜1240nmに相当する。そのため、バンドギャップに相当する波長以下の光を含む照射光を照射することで、Ca含有Si化合物が光触媒として機能し、NO浄化反応が可能となる。
Ca含有Si化合物によるNOの光触媒浄化機構は明らかではないが、活性酸素種によるNOのHNO3への酸化や、N2への直接分解が生じていると考えられる。本発明に係るCa含有Si化合物のバンドギャップは、このようなNOを浄化する活性酸素種の形成に相応しい位置にあると考えられる。
(実施例1〜15、比較例1〜3)
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例1〜3]
すべての合成は、Ar雰囲気中で行われた。粉砕されたCaSi2(レアメタリックス製)と、TaCl5(和光純薬製)とを、所定のモル比で混合した。Ta/Ca比(モル比)は、0.5(実施例1)、0.1(実施例2)、又は、1.0(実施例3)とした。混合粉末をステンレス鋼(SUS)管に封入し、これを215℃で5時間加熱した。室温まで冷却した後、反応物をエタノール(和光純薬製)で洗浄・ろ過し、乾燥してCa含有Si化合物粉末を得た。
[1.2. 実施例4〜6]
実施例1で得られたCa含有Si化合物粉末を90wt%、導電助剤(アセチレンブラック、HS100、電気化学工業(株)製)を10wt%の比率で混合し、混合粉末を得た(実施例4)。
実施例2で得られたCa含有Si化合物粉末を用いた以外は、実施例4と同様にして混合粉末を得た(実施例5)。
さらに、実施例3で得られたCa含有Si化合物粉末を用いた以外は、実施例4と同様にして混合粉末を得た(実施例6)。
[1.3. 実施例7〜9]
実施例1で得られたCa含有Si化合物粉末を99wt%、導電助剤(アセチレンブラック、HS100、電気化学工業(株)製)を1wt%の比率で混合し、混合粉末を得た(実施例7)。
実施例2で得られたCa含有Si化合物粉末を用いた以外は、実施例7と同様にして混合粉末を得た(実施例8)。
さらに、実施例3で得られたCa含有Si化合物粉末を用いた以外は、実施例7と同様にして混合粉末を得た(実施例9)。
[1.4. 実施例10〜12]
実施例1で得られたCa含有Si化合物粉末を95wt%、導電助剤(アセチレンブラック、HS100、電気化学工業(株)製)を5wt%の比率で混合し、混合粉末を得た(実施例10)。
実施例2で得られたCa含有Si化合物粉末を用いた以外は、実施例10と同様にして混合粉末を得た(実施例11)。
さらに、実施例3で得られたCa含有Si化合物粉末を用いた以外は、実施例10と同様にして混合粉末を得た(実施例12)。
[1.5. 実施例13〜15]
実施例1で得られたCa含有Si化合物粉末を70wt%、導電助剤(アセチレンブラック、HS100、電気化学工業(株)製)を30wt%の比率で混合し、混合粉末を得た(実施例13)。
実施例2で得られたCa含有Si化合物粉末を用いた以外は、実施例13と同様にして混合粉末を得た(実施例14)。
さらに、実施例3で得られたCa含有Si化合物粉末を用いた以外は、実施例13と同様にして混合粉末を得た(実施例15)。
[1.6. 比較例1]
CaSi2(レアメタリックス製)をそのまま試験に供した。
[1.7. 比較例2]
Si粉末(キシダ化学製)をそのまま試験に供した。
[1.8. 比較例3]
比較例2の粉末を90wt%、導電助剤(アセチレンブラック、HS100、電気化学工業(株)製)を10wt%の比率で混合し、混合粉末を得た。
[1.9. 比較例4]
SiO2(高純度化学製)をそのまま試験に供した。
[2. 試験方法]
[2.1. 平均組成]
TEM(日本電子製、JEOL2010)に付属のEDXを用いて、試料の組成を分析した。分析は、任意の粒子20点に関して行った。
[2.2. 状態解析−バンドギャップ]
紫外可視分光測定によりバンドギャップを求めた。測定には、島津製作所製UV-3600を用いた。
[2.3. 導電率]
各粉末の10MPaの加圧下における2端子法による導電率を測定した。
[2.4. 状態解析]
得られた粉末のX線回折パターンを測定した。測定には、リガク製UltimaVを用いた。また、得られた粉末のFT−IR測定を行った。測定には、AVATOR360を用いた。
[2.5. 光触媒によるNO浄化測定]
各粉末に対して、NO(1ppm)/50vol%Ar(N2バランス)のガスを200mL/minで流通させ、Hgランプ(光量:500W)の照射下にて、NO濃度を化学発光型NOx分析計(ヤナコ製、ECL−88A)にて測定した。照射光は、カットフィルターを用いて、それぞれ>510nm(〜2.4eV)、>400nm(〜3.1eV)、>290nm(〜4.3eV)の波長を透過する3つの異なる条件で測定し、各々NO除去率を求めた。NO除去率は、供給NO濃度と10分間照射時の平均NO濃度の差を取り、供給NO濃度で除した値で算出した。
[3. 結果]
[3.1. 平均組成]
表1に、実施例1〜3で得られた粉末の平均組成を示す。実施例1〜3では、いずれも0.05≦Ca/Si<0.5、0<O/Si<1の値を持つことを確認した。
Figure 2017013044
[3.2. 状態解析−バンドギャップ]
表2に、紫外可視分光測定により求めたバンドギャップを示す。CaSi2は金属特性を示すのに対し、Ca含有Si化合物は半導体特性を示すことを確認した。また、Ca含有Si化合物のバンドギャップを、1.0〜1.9eVの範囲で制御可能であることを確認した。
Figure 2017013044
[3.3. 導電率]
表3に、各粉末の導電率を示す。導電助剤を添加することで導電率が向上すること、及び、導電助剤の添加量により導電率の制御が可能であることを確認した。
Figure 2017013044
[3.4. 状態解析]
図3に、実施例1〜3及び比較例4で得られた粉末のX線回折パターンを示す。実施例1〜3には、SiO2に帰属される2θ=21°付近のハローピークは確認されなかった。
また、図4に、実施例1〜3で得られた粉末のFT−IRスペクトルを示す。610cm-1付近にSi−Hの変角振動に帰属されるショルダーピークが確認されたことから、Hを含有していることが確認された。
[3.5. 光触媒によるNO浄化測定]
表4に、NO除去率を示す。>400nmの光照射時からNOが除去された。また、>290nmの光照射時には、実施例の優位性が確認された。さらに、>510nmの照射光では、ほとんど活性を示さないことから、照射光は、510nm以下の波長の光を含むことが必要であることが確認された。
Figure 2017013044
図1に、Ca/Si比とNO除去率との関係を示す。実施例1〜3(Ca/Si比<0.5)は、比較例1(Ca/Si比=0.5)と比べて優位性が確認された。
図2に、カーボン量とNO除去率との関係を示す。Siのみの試料(Ca/Si比=0、比較例2)は、元々導電率が高い。そのため、Siに導電助剤を添加しても、NO除去率の向上は見られなかった(比較例3)。
これに対しCa含有Si化合物に対して導電助剤を添加すること(実施例4〜15)で、NO除去率はさらに向上した。これは、導電助剤の添加で1×10-5(S/cm)以上の導電率を保持することにより、光触媒活性を有するものの、導電性に劣っていたCa含有Si化合物の特性が改善されたものと考えられる。
但し、導電助剤添加量が増すと、触媒の存在割合が低下し、実施例13〜15(導電助剤30wt%)では、NO除去率が導電助剤1wt%添加試料と同程度まで低下した。従って、導電助剤の含有量は、1wt%以上30wt%以下が好ましいと考えられる。
(実施例21〜25)
[1. 試料の作成]
図5に、複合粉末の合成手順を示す。まず、Ar雰囲気中で、所定量のNiCl2粉末とCaSi2粉末とを混合した。Ni/Ca比(α)は、1又は2とした(表5)。粉末の混合物をBNるつぼに入れ、これをSUS管に密封した。このSUS管を所定の温度Tsynで加熱した。加熱温度Tsynは、300〜500℃とした(表5)。加熱時間は、5時間とした。
SUS管を室温に冷却した後、加熱物をSUS管から取り出した。得られた加熱物をジメチルホルムアミド(DMF)で洗浄及び乾燥させ、複合粉末を得た。
Figure 2017013044
[2. 試験方法]
実施例1と同様にして、平均組成、バンドギャップ、導電率、XRDパターン、及びNO除去率を測定した。
さらに、複合粉末のSTEM(Scanning Transmission Electron Microscope)観察、及び比表面積の測定を行った。比表面積は、N2吸着等温線の測定結果から、BETプロットにより算出した。
[3. 結果]
[3.1. XRDパターン及びSTEM像]
図6に、実施例21〜23で得られた複合粉末のXRDパターンを示す。実施例21〜23については、SiとNiに帰属されるXRDピークが観測された。また、実施例22及び23については、さらにNiシリサイド(Ni3Si)に帰属されるXRDピークが観測された。なお、SiO2に帰属されるピークが観測されないことから、実施例21〜23のいずれも、SiO2は含まれていないと考えられる。
図7に、実施例22で得られた複合粉末のSTEM像を示す。図7中、暗いコントラストの粒子は、Ni又はNi3Si粒子である。一方、下地は、CaSi2からCaが引き抜かれて生成したと考えられるCa含有Si化合物の粒子である。実施例21、23も同様であり、STEM像中にはCa含有Si化合物の粒子が認められた。
Ca含有Si化合物の粒子は、厚み10〜20nm程度の板状粒子が隙間(〜4nm)を開けて集積している構造を備えている。実際には、Caが残存しているCa含有Si化合物粒子と、Caが完全になくなり、Siとなった粒子が混在していると考えられる。
Ca含有Si化合物は結晶性が低く、XRDでは回折ピークが見られない。また、Caが完全に引き抜かれた箇所が、XRD(図6)においてSiのピークとして観測されたと考えられる。
図8に、実施例24〜25で得られた複合粉末のXRDパターンを示す。実施例24については、SiとNiに帰属されるXRDピークが観測された。一方、実施例25については、Ni、及びNiシリサイド(Ni3Si、Ni31Si12)に帰属されるXRDピークが観測された。なお、SiO2に帰属されるピークが観測されないことから、実施例21〜23のいずれも、SiO2は含まれていないと考えられる。
実施例24〜25についてSTEM観察(図示せず)を行ったところ、実施例22と同様に、Ca含有Si化合物が認められた。
[3.2. 平均組成、バンドギャップ、比表面積、及び導電率]
表6に、複合粉末の平均組成、バンドギャップ、比表面積及び導電率を示す。なお、表6には、各複合粉末の合成条件も併せて示した。表6より、
(a)合成温度が高くなるほど、複合粉末の導電率が高くなること、及び、
(b)Ni/Ca比が大きくなるほど、複合粉末の導電率が高くなること、
がわかる。
Figure 2017013044
[3.3. NO除去率]
表7に、実施例21〜23で得られた複合粉末のNO除去率を示す。実施例21〜23は、いずれも、CaSi2(比較例1)、Si粉末(比較例2)、Si粉末とカーボンの混合物(比較例3)、及び、導電助剤を含まない単相のCa含有Si化合物(実施例1〜3)よりも高い触媒活性を示した。
複合粉末に含まれるCa含有Si化合物は、適切なバンドギャップを有するために、NOの光浄化能が発現していると考えられる。また、NiやNiシリサイド(いずれも金属相)が混在することで、複合粉末の導電率が上がり、触媒反応に寄与する電子や活性酸素種の生成を促進していると考えられる。
Figure 2017013044
CaSi2からCaが引き抜かれてCa含有Si化合物が生成する反応は、温度が高いほど進行しやすい。すなわち、実施例21<実施例22<実施例23の順に、Ca含有Si化合物が生成しやすい条件となる。一方、Niシリサイドは、Ca含有Si化合物中のSiとNiCl2中のNiが反応して生成する。この反応もまた、温度が高いほど進行しやすい。すなわち、実施例21<実施例22<実施例23の順に、Ca含有Si化合物の量が減少しやすい条件となる。
Ca含有Si化合物の量は、触媒活性に関連がある。Ca含有Si化合物の生成とNiシリサイドの生成とが競合し、その兼ね合いで実施例22の触媒活性が最も高くなったと考えられる。また、実施例22の比表面積が最も高いことも、触媒活性が高い理由と考えられる。
表8に、Ni及び各種金属シリサイドの導電率を示す。Ca含有Si化合物に導電性を付与する物質は、Niシリサイドに限られるものではなく、導電率の高い物質であれば良い。例えば、金属塩化物(C)として、NiCl2に代えてFeCl2やMnCl2を用いると、FeシリサイドやMnシリサイドを含む複合粉末が得られる。FeシリサイドやMnシリサイドは、導電率が高いので、いずれも導電助剤として機能する。
Figure 2017013044
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
本発明に係る光触媒は、排ガス浄化装置、大気浄化装置などに使用することができる。

Claims (9)

  1. 元素比が、
    0.01<Ca/Si<0.5、
    0≦O/Si<1、及び、
    0≦H/Si<1
    で表されるCa含有Si化合物粉末を含み、
    XRD測定において、SiO2に帰属されるピークを持たない光触媒。
  2. 前記Ca含有Si化合物粉末は、半導体特性を持ち、バンドギャップが0.5eV以上3.0eV以下である請求項1に記載の光触媒。
  3. 導電助剤をさらに含む請求項1又は2に記載の光触媒。
  4. 前記導電助剤は、カーボンである請求項3に記載の光触媒。
  5. 前記導電助剤の含有量は、1重量%以上30重量%以下である請求項4に記載の光触媒。
  6. 前記導電助剤は、金属粒子及び/又は金属シリサイド粒子である請求項3に記載の光触媒。
  7. 導電率が1×10-5S/cm以上である請求項1から6までのいずれか1項に記載の光触媒。
  8. NO浄化に用いられる請求項1から7までのいずれか1項に記載の光触媒。
  9. 510nm以下の波長の光を含む照射光を照射するために用いられる請求項1から8までのいずれか1項に記載の光触媒。
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