JP4888777B2 - 水素貯蔵材料の製造方法 - Google Patents
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最近では、水素貯蔵量が10wt%以上と高いことからAlH3が注目されている。
このAlH3を得る簡単な合成方法としては、
式(1):3LiAlH4+AlCl3→4AlH3+3LiCl
で示すように、(C2H5)2O中で、LiAlH4とAlCl3を反応させて合成する方法が古くから知られている(非特許文献1)。
F.M.BrowerらはAlH3ジエチルエーテル和物を単純に真空加熱しただけでは、AlH3として残らず、Alまで分解してしまうが、
式(2):4LiAlH4+AlCl3→4AlH3+3LiCl+LiAlH4
のように、原料の配合モル比(LiAlH4/AlCl3)を4にして式(1)より1モル分過剰にし、反応後もLiAlH4を存在させることで、ジエチルエーテル和物をほとんど含まないAlH3が得られると報告している(非特許文献2)。その理由は明らかではないが、未反応のLiAlH4が存在すると、AlH3ジエチルエーテル和物からジエチルエーテルが分離しやすくなり、ジエチルエーテルをほとんど含まないAlH3が得られると推察される。
1.十分な量のジエチルエーテル中で、式(2)で示されるように原料の配合モル比(LiAlH4/AlCl3)を4として、合成反応を起こす。このときLiClは析出するが、AlH3はジエチルエーテル和物として存在し、未反応のLiAlH4とともにジエチルエーテル中に溶解している。
2.反応後の溶液をろ過してLiClを除去する。ろ過後の溶液にはAlH3ジエチルエーテル和物とLiAlH4が溶解している。
3.真空処理によりジエチルエーテルを蒸発させ、AlH3ジエチルエーテル和物と未反応のLiAlH4を析出させる。
4.AlH3ジエチルエーテル和物とLiAlH4が混ざった状態で、60℃で加熱真空処理することにより、AlH3ジエチルエーテル和物からジエチルエーテルを除去し、結晶AlH3に変化させる。この方法では、LiAlH4を過剰に存在させるために原料の配合モル比(LiAlH4/AlCl3)を4以上にする必要がある。
5.上記結晶AlH3とLiAlH4が混ざったものをフィルターにのせ、未反応のLiAlH4をジエチルエーテルで洗い流す。LiAlH4はジエチルエーテルに溶けてフィルターの下に落ちるが、AlH3はほとんど溶解しないので、フィルターの上に残る。
6.もう一度真空処理を行い、結晶AlH3に付着したジエチルエーテルを除去し、AlH3を得る。
しかし、LiAlH4を過剰に用いる条件での合成であるため、合成後に多量のLiAlH4が無駄になってしまう。このLiAlH4は非常に高価であり、状況によっては原料費の90%を占めるので、無駄なLiAlH4の使用はAlH3の製造コストを高めてしまうという問題がある。したがって製造コストを削減するためにはLiAlH4の使用量を少なくすることが必要となる。
また、AlH3からのジエチルエーテル除去が不十分であると、放出する水素にジエチルエーテルが混入するため、高純度水素を必要とする燃料電池などには好ましくない。
したがって、ジエチルエーテルを除去するためにはLiAlH4を多く投入した方が良いが、コストを削減するためにはLiAlH4を少なくした方が良いという相反することが要求される。
1.LiAlH4の使用量の低減により、原料コストの削減効果がある。削減量xは0%<x<25%である
2.LiAlH4の使用量の低減により、未反応のLiAlH4の洗い流し作業の容易性の改善効果がある。
3.LiAlH4の使用量の低減により、AlH3中に含まれるLiAlH4量の低減効果がある。
4.AlH3中に含まれるジエチルエーテルの量を1wt%以下にすることができる。
ジエチルエーテルに、LiAlH4とAlCl3とを、3<(LiAlH4/AlCl3)<4の配合比で溶かし、望ましくは水分および酸素量を厳密に管理した不活性ガス(例えば窒素)雰囲気下で反応を生じさせた。この際に、溶液の温度が30℃を超えないように、溶質の混合等を行うのが望ましい。これは溶液の温度が34.5℃を超えるとジエチルエーテルが沸騰、蒸発することによる未反応の原料の析出を抑制するためである。
上記反応が十分に進行した後、溶液をろ過して、反応によって生じた副生成物であるLiClを除去する。LiClは溶液中に溶解せず沈殿するので、該ろ過によって容易に除去することができる。
得られた析出物は、所望により適宜の大きさに粉砕する。粉砕方法としては機械的な方法が一般的に用いられ、例えば数μm〜数十μmの大きさに粉砕される。
例えば、熱伝導性が良好な銅やアルミニウムなどの粒体を粉粒状のジエチルエーテル和物に多数混合してさらに、熱伝導性の良好な銅などの容器に収納して加熱することができる。加熱に際しては容器内を適宜撹拌して加熱均一化を図る。
該加熱によってAlH3ジエチルエーテル和物が分解し、ジエチルエーテルが蒸発・除去される。
上記工程では、LiAlH4の使用量が低減されており、それにも拘わらず、AlH3を効果的に分離抽出することができる。また、分離されたAlH3にはジエチルエーテルは殆ど含まれておらず、良質のAlH3を得ることができる。
以下の実施例では、配合する原料のモル比(LiAlH4/AlCl3)が3<(LiAlH4/AlCl3)<4となるように、従来よりもLiAlH4を少なくしたとき、(LiAlH4/AlCl3)=4のときと同じ効果が得られるかどうかを確認した。
実施例として(LiAlH4/AlCl3)=3.5の結果を示し、また比較のため(LiAlH4/AlCl3)=3および4の結果を示した。
(1)3.33gのAlCl3(無水)を25mLのジエチルエーテルに溶かし、AlCl3ジエチルエーテル溶液を作製した。原料の配合比(LiAlH4/AlCl3)によらず、AlCl3の量は一定とした。
(2)1M−LiAlH4ジエチルエーテル溶液87.5mLを、液温が30℃を超えないように(1)の溶液に徐々に加え、合成反応を起こさせた。このときLiClが沈殿した。また、比較例においては、加えるジエチルエーテルの溶液は(LiAlH4/AlCl3)=3のとき75mL、(LiAlH4/AlCl3)=4のとき100mLとした。
(3)合成反応後、ろ過によりLiClを分離した。ろ過後の溶液にはAlH3ジエチルエーテル和物とLiAlH4(過剰分)が溶けている。なお、(LiAlH4/AlCl3)=3のとき、過剰のLiAlH4はないことになる。
(4)室温、真空排気によりAlH3ジエチルエーテル和物となっているエーテル以外のエーテルを全て蒸発させ、AlH3ジエチルエーテル和物とLiAlH4(過剰分)を析出させた。
(5)析出した試料を乳鉢により細かく粉砕し、70、80、90℃で2時間の3条件で真空加熱処理を行った。このとき試料が均一に加熱されるよう銅製容器に入れ、さらにAlH3の熱伝導が低いので熱が試料全体に伝わるように、直径3mm程度の良伝熱性の銅製ボールを試料全体に行き渡るように入れた。加熱中容器を定期的に振ると、この銅製ボールが試料を十分に攪拌することになり、より均一な試料を得ることができる。
(6)過剰のLiAlH4を除去するため、試料をガラスフィルターにのせ、ジエチルエーテルでLiAlH4を溶かし流した。加熱処理後のAlH3はほとんどジエチルエーテルに溶けないが、LiAlH4はジエチルエーテルに溶けやすいので、ジエチルエーテルをかけ流すと、LiAlH4はエーテルとともにフィルターの下に落ちるが、AlH3はフィルター上に残る。
(7)上記によりLiAlH4を洗浄・除去した後、室温で1時間真空排気し、AlH3に付着したジエチルエーテルを蒸発除去した。
分析結果におけるMassNo.2は水素、MassNo.31はエーテルを示す。(LiAlH4/AlCl3)=3では、水素とエーテルの脱離が何れも400K付近から開始し、ジエチルエーテルの脱離温度と水素放出温度が重なっているので、AlH3のみを得ることが非常に難しいことを示唆している。この結果は、前記したF.M.Browerらの報告に沿ったものである。
(LiAlH4/AlCl3)=4および3.5では、70、80、90℃で脱エーテルし、AlH3を得ることが可能であるが、90℃で150min以上保持すると、徐々に水素が放出してしまう。
(LiAlH4/AlCl3)=3では、全温度においてジエチルエーテル脱離速度が遅く、ジエチルエーテルのみの脱離も困難であることがわかる。
(LiAlH4/AlCl3)=3.5では、析出した後の試料は(LiAlH4/AlCl3)=3で合成したときと同様に、ジエチルエーテル和物の回折パターンを示すが、熱処理後はエーテル和物の回折ピークは見られない。70℃で熱処理した後はγ相、80℃および90℃で熱処理した後はα相とγ相の回折パターンが見られる。
(LiAlH4/AlCl3)=4では、90℃でのαとγ相の構成比が異なるが、(LiAlH4/AlCl3)=3.5の場合と同じく、析出後はジエチルエーテル和物、70〜80℃ではγ相の回折パターンを示した。
Claims (3)
- ジエチルエーテル中でLiAlH4とAlCl3とを、3<(LiAlH4/AlCl3)<4の配合モル比で反応させてAlH3を合成し、該反応によって得られたAlH3を含むジエチルエーテル和物を真空下において、60℃超、90℃以下の温度で加熱してAlH3を分離回収することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法。
- 前記加熱は、前記AlH3を含むジエチルエーテル和物が全体での温度差が3℃以内となるように均一に行われることを特徴とする請求項1記載の水素貯蔵材料の製造方法。
- 前記均一での加熱は、粉末化されたAlH3を含むジエチルエーテル和物に良伝熱性の材料を混合して加熱することにより行われることを特徴とする請求項2記載の水素貯蔵材料の製造方法。
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